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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20240710BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240710BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240710BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L7/00
C08K3/013
C08K3/36
B60C1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023514917
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2022045073
(87)【国際公開番号】W WO2023106327
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021199169
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】餝矢 理起
(72)【発明者】
【氏名】樋口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋樹
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-530060(JP,A)
【文献】特開2019-199548(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241746(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/241755(WO,A1)
【文献】特開2018-109152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムを30~70質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを30~200質量部配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記変性スチレンブタジエンゴムをゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつ前記変性スチレンブタジエンゴムの分子量分布(PDI)が1.7未満、ビニル含有量が10~45質量%であり、前記タイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度が-50℃以下であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性スチレンブタジエンゴムを40~70質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~200質量部配合したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記タイヤ用ゴム組成物の0℃における損失正接tanδ(0℃)[-]と-20℃における貯蔵弾性率E'(-20℃)[MPa]の比tanδ(0℃)/E'(-20℃)が、0.007[MPa-1]以上0.011[MPa-1]以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記変性スチレンブタジエンゴムを30~50質量%、天然ゴムを70~50質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを30~70質量部配合したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカのCTAB吸着比表面積が100~250m2/gであることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低転がり抵抗性および耐摩耗性を両立させるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に配慮したタイヤとして、燃費性能に優れること、すなわち転がり抵抗が小さいこと求められるが、同時にグリップ性能や耐久性などの基本性能を従来品と同等以上に確保することが重要である。例えば、ウィンタータイヤにおいて雪上性能のみならず、ドライ性能、ウェット性能や耐摩耗性まで高次元で性能をバランスさせることが求められている。ドライ性能、ウェット性能を向上させるため、タイヤ用ゴム組成物の0℃の損失正接(tanδ)を大きくする方法がある。しかし、これによりタイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が高くなって雪上性能と耐摩耗性が悪化する虞がある。また、Tgや雪上性能を補うためブタジエンゴムを多く含有させると、シリカの分散性が悪化し、転がり抵抗やウェット性能が低下する傾向がある。このため、特許文献1では、軟化点が50℃以下のクマロンインデン樹脂を配合したタイヤ用ゴム組成物を提案する。
【0003】
また、例えば、トラックバス等の大型車両に用いるタイヤ(以下、「重荷重用タイヤ」と記すことがある。)においても、環境規制が年々強化されており、欧州では2016年11月からECE R117‐02が導入され、日本でも2023年に同様の法律が施行することが決まっている。そのため、重荷重用タイヤ向けのトレッド用タイヤ用ゴム組成物でも転がり抵抗の低減が課題となっており、フィラーとしてシリカを用いることが多くなっている。しかし、重荷重用タイヤのトレッド用タイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムの含有率が高く、そのためシリカの分散性を良好にするのが難しく、シリカの分散性が悪いと重荷重用タイヤに要求される耐摩耗性、耐カット性などの耐久性が悪化してしまう。このため、特許文献2では、アミン系官能基を含有する変性ポリブタジエンゴムと天然ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いることを提案する。
【0004】
しかし、近年、低転がり抵抗性および耐摩耗性をより高いレベルで両立させたタイヤ用ゴム組成物への需要が高まり、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2013-139522号公報
【文献】日本国特開2010-013602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低転がり抵抗性および耐摩耗性を両立させるタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムを30~70質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを30~200質量部配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記変性スチレンブタジエンゴムをゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつ前記変性スチレンブタジエンゴムの分子量分布(PDI)が1.7未満、ビニル含有量が10~45質量%であり、前記タイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度が-50℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形でその分子量分布(PDI)が1.7未満、ビニル含有量が10~45質量%であるアルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴムおよびシリカを含み、ガラス転移温度を-50℃以下にしたので、低転がり抵抗性および耐摩耗性を両立させることができる。
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記変性スチレンブタジエンゴムを40~70質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~200質量部配合したタイヤ用ゴム組成物は、ウィンタータイヤやオールシーズンタイヤのトレッド部に用いるのに好適である。このとき、前記タイヤ用ゴム組成物の0℃における損失正接tanδ(0℃)[-]と-20℃における貯蔵弾性率E'(-20℃)[MPa]の比tanδ(0℃)/E'(-20℃)が、0.007[MPa-1]以上0.011[MPa-1]以下であるとよい。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記変性スチレンブタジエンゴムを30~50質量%、天然ゴムを70~50質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを30~70質量部配合したタイヤ用ゴム組成物は、重荷重用タイヤのトレッド部に用いるのに好適である。このとき、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100~250m2/gであるとよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムに、アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムを含有する。この変性スチレンブタジエンゴムは、アルコキシシリル基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形であり、かつその分子量分布(PDI)が1.7未満であることを特徴とする。このような変性スチレンブタジエンゴムを含有することにより、シリカの分散性を向上させ、低転がり抵抗性および耐摩耗性を高いレベルで兼備することができる。
【0012】
変性スチレンブタジエンゴムが有するアルコキシシリル基として、例えば炭素数1~10のアルコキシを含むアルコキシシリル基を挙げることができる。炭素数の異なるアルコキシを2つ又は3つ有してもよいし、単数または2つのアルキルを有してもよい。アルコキシシリル基として、例えばメトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、イソプロポキシシリル基、ブトキシシリル基、等を挙げることができる。変性スチレンブタジエンゴムがアルコキシシリル基を有することによりシリカとの親和性を高くし、その分散性を向上することができる。
【0013】
変性スチレンブタジエンゴムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量分布曲線が単峰形を有し、かつその分子量分布(PDI;polydis-persity index)が1.7未満である。変性スチレンブタジエンゴムの分子量分布曲線が単峰形であると、分子の均一性が高くなり、ジエン系ゴム中に均質に分配、分散されシリカとの親和性をより高くすることができる。分子量分布(PDI)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)であり、分子量分布(PDI)が1.7未満であると、分子量分布曲線が単峰形であることと同様に、分子の均一性が高くなり、ジエン系ゴム中に均質に分配、分散されシリカとの親和性をより高くすることができる。分子量分布(PDI)は、より好ましくは1.0以上1.7未満、さらに好ましくは1.1~1.6であるとよい。このような変性スチレンブタジエンゴムは、好ましくは連続式重合で得ることができる。
【0014】
本明細書において、変性スチレンブタジエンゴムをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、その分子量分布曲線、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定するとき、例えば以下の条件を挙げることができる。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8020]
カラム:東ソー社製GMH-HR-H(2本直列接続)
測定温度:40℃
キャリアガス:ヘリウム
流量:5mmol/L
試料:10mgを10mLのTHFに溶解
注入量:10μL
検出器:示差屈折率計(RI-8020)
【0015】
アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムは、ジエン系ゴム100質量%中30~70質量%、好ましくは45~70質量%、より好ましくは50~65質量%含有する。アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエンゴムを30質量%以上含有することにより、シリカの分散性を向上することができる。また70質量%以下含有することにより、耐摩耗性を確保することができる。
【0016】
変性スチレンブタジエンゴムは、ビニル含有量が10~45質量%、好ましくは20~45質量%、より好ましくは25~45質量%、さらに好ましくは35~43質量%である。変性スチレンブタジエンゴムのビニル含有量を10質量%以上にすることにより、低転がり抵抗性能を確保することが出来るようになる。また、ビニル含有量を45質量%以下にすることにより、耐摩耗性能を確保出来るようになる。本明細書において、変性スチレンブタジエンゴムのビニル含有量は、JIS K6239-2 2017に基づき、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製)を使用し測定することができる。
【0017】
タイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム以外に他のジエン系ゴムを含有することができる。他のジエン系ゴムとして、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、未変性のスチレンブタジエンゴム、上述した変性スチレンブタジエンゴムを除く変性スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴム、イソプレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、等を挙げることができる。これら他のジエン系ゴムは、1つ以上の官能基で変性されていてもよい。官能基の種類は、特に限定されるものではないが、例えばエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基、等が挙げられる。他のジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量%中30~70質量%、好ましくは30~55質量%、より好ましくは30~50質量%含有するとよい。
【0018】
他のジエン系ゴムとして、好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムが挙げられる。天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムは、通常タイヤ用ゴム組成物に用いられるものであれば特に制限されるものではない。天然ゴムを配合することにより、タイヤの耐摩耗性を確保することができる。また、ブタジエンゴムを配合することにより、タイヤの氷上・雪上性能を確保することができる。更に、スチレンブタジエンゴムを配合することにより、タイヤのウェットグリップ性を確保することができる。
【0019】
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部にシリカを30~200質量部配合する。シリカを配合することにより、転がり抵抗を小さくし、ウェット性能を向上することができる。シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。またシリカの表面をシランカップリング剤により表面処理が施された表面処理シリカを使用してもよい。
【0020】
タイヤ用ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましく、シリカの分散性を良好にすることができる。シランカップリング剤は、通常シリカと共に配合する種類を用いることができる。シランカップリング剤は、シリカ量の好ましくは5~15質量%、より好ましくは8~12質量%を配合するとよい。
【0021】
タイヤ用ゴム組成物は、シリカ以外の他の無機充填材として、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを任意に配合することができる。これら他の無機充填剤は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
カーボンブラックは、ジエン系ゴム100質量部に、好ましくは5~100質量部、より好ましくは5~80質量部配合することができる。カーボンブラックを5質量部以上配合することにより、タイヤ耐久性を確保することができる。また剛性を確保し転がり抵抗を小さくすることができる。カーボンブラックを100質量部以下にすることにより、低転がり抵抗性を確保することができる。カーボンブラックは、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
タイヤ用ゴム組成物は、そのガラス転移温度が-50℃以下である。ガラス転移温度を-50℃以下にすることにより、耐摩耗性を確保することができる。ガラス転移温度は、好ましくは-75℃以上-50℃以下、より好ましくは-70℃以上-50℃以下であるとよい。タイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度は、JIS K6240-2011に基づき、示差走査熱量計(島津製作所製)を使用し、10℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度として求めることができる。
【0024】
タイヤ用ゴム組成物は、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができる。またかかる添加剤は一般的な方法で混練してタイヤ用ゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0025】
ウィンタータイヤ用ゴム組成物およびオールシーズンタイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ウィンタータイヤおよびオールシーズンタイヤのトレッド部を好適に構成することができる。ウィンタータイヤ用ゴム組成物およびオールシーズンタイヤ用ゴム組成物(以下、両者を合わせて「タイヤ用ゴム組成物A」と略記することがある。)として、より好ましくは、以下の特徴を有するとよい。
【0026】
タイヤ用ゴム組成物Aは、上述した変性スチレンブタジエンゴムを40~70質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを60~200質量部配合することが好ましい。ジエン系ゴム100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムを好ましくは40~70質量%、より好ましくは50~65質量%含有するとよい。変性スチレンブタジエンゴムを40質量%以上含有することにより、ドライ操縦安定性、ウェット制動性能を確保することができる。また、70質量%以下含有することにより、スノー制動性能を確保することができる。
【0027】
タイヤ用ゴム組成物Aは、ジエン系ゴム100質量部に、シリカを好ましくは60~200質量部、より好ましくは80~160質量部含有するとよい。シリカを60質量部以上配合することにより、ウェット性能を確保することが出来るようになる。また、200質量部以下配合することにより、耐摩耗性および低転がり抵抗性を確保することができる。
【0028】
タイヤ用ゴム組成物Aに使用する変性スチレンブタジエンゴムは、そのスチレン含有量が好ましくは25~40質量%で、より好ましくは30~40質量%であるとよい。スチレン含有量を25質量%以上にすることにより、ウェット性能を確保することが出来るようになる。また、40質量%以下にすることにより、スノー性能を確保することが出来るようになる。本明細書において、変性スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量は、JIS K6239-2 2017に基づき、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製)を使用し測定することができる。
【0029】
タイヤ用ゴム組成物Aは、その0℃における損失正接tanδ(0℃)[-]と-20℃における貯蔵弾性率E'(-20℃)[MPa]の比tanδ(0℃)/E'(-20℃)が、好ましくは0.007[MPa-1]以上0.011[MPa-1]以下であるとよい。比tanδ(0℃)/E'(-20℃)が0.007[MPa-1]以上であると、スノー性能を確保出来るようになる。また0.011[MPa-1]以下であると、ドライ操縦安定性およびウェット制動性能を確保出来るようになる。本明細書において、損失正接tanδ(0℃)[-]および-20℃における貯蔵弾性率E'(-20℃)[MPa]は、JIS K6394-2007に基づき、粘弾性試験機(上島製作所製)を使用し、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で測定することができる。
【0030】
重荷重用タイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、トラックバス等の大型車両に用いる重荷重用タイヤのトレッド部を好適に構成することができる。重荷重用タイヤ用ゴム組成物(以下、単に「タイヤ用ゴム組成物B」と略記することがある。)として、より好ましくは、以下の特徴を有するとよい。
【0031】
タイヤ用ゴム組成物Bは、上述した変性スチレンブタジエンゴムを30~50質量%、天然ゴムを70~50質量%含むジエン系ゴム100質量部に、シリカを30~70質量部配合することが好ましい。ジエン系ゴム100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムを好ましくは30~50質量%、より好ましくは30~40質量%含有するとよい。変性スチレンブタジエンゴムを30質量%以上含有することにより、シリカの分散が向上し低転がり抵抗性が良化する。また、50質量%以下含有することにより、耐摩耗性を確保することができる。タイヤ用ゴム組成物Bのジエン系ゴムは、変性スチレンブタジエンゴムおよび天然ゴムの合計が100質量%であるとよい。
【0032】
タイヤ用ゴム組成物Bは、ジエン系ゴム100質量部に、シリカを好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部含有するとよい。シリカを30質量部以上配合することにより、耐摩耗性が向上する。また、70質量部以下配合することにより、低転がり抵抗性が良化する。
【0033】
タイヤ用ゴム組成物Bに配合するシリカは、CTAB吸着比表面積が好ましくは100~250m2/g、より好ましくは150~200m2/gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g以上であると、耐摩耗性が向上する。また、250m2/g以下であると、低転がり抵抗性が良化する。本明細書において、CTAB吸着比表面積は、JIS K6217-3に準拠して、測定するものとする。
【0034】
上述したタイヤ用ゴム組成物は、好ましくはタイヤトレッド用ゴム組成物であり、タイヤのトレッド部を好適に構成することができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を構成したタイヤは、低転がり抵抗性および耐摩耗性を両立させることができる。なお、タイヤは、空気入りタイヤ、非空気式タイヤのいずれでもよい。
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0036】
ウィンタータイヤ用ゴム組成物およびオールシーズンタイヤ用ゴム組成物
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す配合からなるタイヤ用ゴム組成物(実施例1~6、基準例1,2、比較例1~8)を、硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練りした後、ミキサーから放出して室温冷却した。これを上述した1.7Lの密閉式バンバリーミキサーに投入し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合することにより、タイヤ用ゴム組成物を調製した。また表3に記載した配合剤の配合量は、表1,2に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で示した。
【0037】
また得られたタイヤ用ゴム組成物を使用して、15cm×15cm×0.2cmの金型中で、160℃、20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、下記の方法により動的粘弾性、および耐摩耗性を測定した。
【0038】
動的粘弾性
上記で得られた加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、0℃における損失正接tanδ(0℃)[-]および-20℃における貯蔵弾性率E'(-20℃)[MPa]を求めた。更にそれらの比tanδ(0℃)/E'(-20℃)[1/MPa]を算出した。得られた結果は、表1,2のそれぞれの欄に記載した。
【0039】
耐摩耗性
上記で得られた加硫ゴムシートについて、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、JIS K6264-2:2005に準拠し、付加力4.0kg/cm3(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度を室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定し、その逆数を求めた。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数とし、表2では基準例2の値を100とする指数とし、表1~2の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が優れることを意味する。
【0040】
スノー制動性能
上記ゴム組成物をタイヤトレッドに使用して製造されたサイズ205/55R16のタイヤを排気量2000ccのABSを搭載した試験車両に、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧をともに220kPaとして装着した。試験車両を圧雪路面上を走行させ、初速40km/時で制動をかけたときの制動距離を測定した。得られた結果は、それぞれの逆数を算出し、表1では基準例1の値を100とする指数とし、表2では基準例2の値を100とする指数とし、表1~2の「スノー制動性能」の欄に示した。この指数が大きいほど、スノー制動性能が優れることを意味する。
【0041】
ドライ操縦安定性
上記ゴム組成物をタイヤトレッドに使用して製造されたサイズ205/55R16のタイヤを排気量2000ccのABSを搭載した試験車両に、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧をともに220kPaとして装着した。試験車両を比較的凸凹の少ない乾燥路面上を走行させ、ハンドルをきったときの応答性を官能評価した。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数とし、表2では基準例2の値を100とする指数とし、表1~2の「ドライ操縦安定性」の欄に示した。この指数が大きいほど、ドライ操縦安定性が優れることを意味する。
【0042】
ウェット制動性能
上記ゴム組成物をタイヤトレッドに使用して製造されたサイズ205/55R16のタイヤを排気量2000ccのABSを搭載した試験車両に装着し、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧をともに220kPaとして、水深2.0~3.0mmに散水したアスファルト路面上で速度100km/hからの制動停止距離を測定した。得られた結果は、それぞれの逆数を算出し、表1では基準例1の値を100とする指数とし、表2では基準例2の値を100とする指数とし、表1~2の「ウェット制動性能」の欄に示した。この指数が大きいほど、ウェット制動性能が優れることを意味する。
【0043】
低転がり抵抗性
上記で得られた加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、60℃における損失正接tanδ(60℃)を測定し、その逆数を求めた。得られた結果は、表1では基準例1の値を100とする指数とし、表2では基準例2の値を100とする指数とし、表1~2の「低転がり抵抗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、低転がり抵抗性が優れることを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1~3において、使用した原材料の種類は、以下の通りである。
・変性SBR-1:ヒドロキシ基を有するスチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE581、ガラス転移温度が-31℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が2.3、スチレン含有量が37質量%、ビニル含有量が42質量%。
・変性SBR-2:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、重合例1で製造したゴム、ガラス転移温度が-31℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が1.3、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が42質量%。
・変性SBR-3:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NS540、ガラス転移温度が-29℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が二峰形で、その分子量分布(PDI)が1.9、スチレン含有量が42質量%、ビニル含有量が30質量%。
・SBR-4:未変性のスチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデン1834、ガラス転移温度が-72℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が2.9、スチレン含有量が19質量%、ビニル含有量が10質量%。
・変性SBR-5:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、重合例2で製造したゴム、ガラス転移温度が-53℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が1.5、スチレン含有量が25質量%、ビニル含有量が28質量%。
・NR:天然ゴム、TSR20、ガラス転移温度が-65℃
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、ガラス転移温度が-105℃
・シリカ-1:Evonik社製Ultrasil 9100GR
・シリカ-2:Solvay社製ZEOSIL 1165MP
・カーボンブラック-1:東海カーボン社製シースト7HM N234
・カップリング剤-1:Evonik Degussa社製Si69、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:Korea Kumho Petrochemical社製6PPD
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤-1:大内新興化学社製ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤-2:住友化学社製ソクシノールD-G
【0048】
[製造例1]
真空乾燥させた、4Lのステンレス鋼製の圧力容器を2つ準備した。第1の圧力容器に、シクロヘキサン6,922g、下記化学式(1)で表される化合物85g、およびテトラメチルエチレンジアミン60gを投入し、第1反応溶液を製造した。これと同時に、第2の圧力容器に、液状の2.0Mのn-ブチルリチウム180gおよびシクロヘキサン6,926gを投入し、第2反応溶液を製造した。この際、化学式(1)で表される化合物、n-ブチルリチウム、およびテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1であった。各圧力容器の圧力を7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて、連続式反応器内に、第1連続式チャンネルを介して第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャンネルを介して第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入した。この際、連続式反応器の温度は-10℃に維持し、内部圧力は背圧レギュレータ(backpressure regulator)を用いて3barに維持し、反応器内での滞留時間は10分以内となるように調節した。反応を終了し、変性開始剤を得た。
【化1】
【0049】
[重合例1]
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n‐ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を6.5kg/h、n‐ヘキサンに1,3‐ブタジエンが60重量%で溶解された1,3‐ブタジエン溶液を7.7kg/h、n‐ヘキサンを47.0kg/h、n‐ヘキサンに1,2‐ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2‐ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n‐ヘキサンにN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が10重量%で溶解された溶液を50.0g/h、製造例1で製造された変性開始剤を400.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は55℃になるように維持し、重合転換率が41%となった時に、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0050】
次に、第2反応器に、n‐ヘキサンに1,3‐ブタジエンが60重量%で溶解された1,3‐ブタジエン溶液を2.3kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
【0051】
前記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミンが溶解された溶液(溶媒:n-ヘキサン)を連続的に第3反応器に投入した[変性剤:act.Li(重合開始剤)=1:1mol]。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0052】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を170g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体(変性SBR-2)を製造した。
【0053】
[重合例2]
重合例1において、n‐ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を、4.6kg/h、n‐ヘキサンに1,3‐ブタジエンが60重量%で溶解された1,3‐ブタジエン溶液を11.5kg/h、極性添加剤として、n‐ヘキサンにN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が10重量%で溶解された溶液を40.0g/hで、第1反応器に連続的に投入したことを除き、前記重合例1と同様に行って、変性共役ジエン系重合体(変性SBR-5)を製造した[カップリング剤:act.Li(重合開始剤)=1:1mol]。
【0054】
表1から明らかなようにオールシーズンタイヤに好適な実施例1~3のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗性、および耐摩耗性に優れることが確認された。また、オールシーズンタイヤに求められるスノー制動性能、ドライ操縦安定性およびウェット制動性能にも優れる。
比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-2)が70質量%を超え、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が、-50℃より高いので、スノー制動性能が劣る。
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-2)が30質量%未満なので、ドライ操縦安定性およびウェット制動性能が劣る。
比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-3)の分子量分布曲線が二峰形で分子量分布(PDI)が1.7より大きいので、耐摩耗性が劣る。
比較例4のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが200質量部を超えるので、耐摩耗性および低転がり抵抗性が劣る。
【0055】
表2から明らかなようにウィンタータイヤに好適な実施例4~6のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗性、および耐摩耗性に優れることが確認された。また、ウィンタータイヤに求められるスノー制動性能、ドライ操縦安定性およびウェット制動性能にも優れる。
比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-5)が70質量%を超えるので、スノー制動性能が劣る。
比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-5)が30質量%未満なので、ドライ操縦安定性およびウェット制動性能が劣る。
比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-3)の分子量分布曲線が二峰形で分子量分布(PDI)が1.7より大きいので、耐摩耗性、低転がり抵抗性およびスノー制動性能が劣る。
比較例8のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが200質量部を超えるので、耐摩耗性および低転がり抵抗性が劣る。
【0056】
重荷重用タイヤ用ゴム組成物
表6に示す配合剤を共通配合とし、表4,5に示す配合からなるタイヤ用ゴム組成物(実施例7~12、基準例3、比較例9~14)を、硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練りした後、ミキサーから放出して室温冷却した。これを上述した1.7Lの密閉式バンバリーミキサーに投入し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合することにより、タイヤ用ゴム組成物を調製した。また表6に記載した配合剤の配合量は、表4,5に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で示した。
【0057】
また得られたタイヤ用ゴム組成物を使用して、15cm×15cm×0.2cmの金型中で、160℃、20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、下記の方法により耐摩耗性、および低転がり抵抗性(動的粘弾性)を測定した。
【0058】
耐摩耗性
上記で得られた加硫ゴムシートについて、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、JIS K6264-2:2005に準拠し、付加力4.0kg/cm3(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度を室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定し、その逆数を求めた。得られた結果は、基準例3の値を100とする指数とし、表4,5の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が優れることを意味する。
【0059】
低転がり抵抗性(動的粘弾性)
上記で得られた加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、60℃における損失正接tanδ(60℃)を測定し、その逆数を求めた。得られた結果は、基準例3の値を100とする指数とし、表4,5の「低転がり抵抗性」の欄に示した。この指数が大きいほど、低転がり抵抗性が優れることを意味する。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
表4~6において、使用した原材料の種類は、以下の通りである。
・変性SBR-1:ヒドロキシ基を有するスチレンブタジエンゴム、旭化成社製タフデンE581、ガラス転移温度が-31℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が2.3、スチレン含有量が37質量%、ビニル含有量が42質量%。
・変性SBR-2:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、上述した重合例1で製造したゴム、ガラス転移温度が-31℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が1.3、スチレン含有量が36質量%、ビニル含有量が42質量%。
・変性SBR-3:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NS540、ガラス転移温度が-29℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が二峰形で、その分子量分布(PDI)が1.9、スチレン含有量が42質量%、ビニル含有量が30質量%。
・変性SBR-5:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、上述した重合例2で製造したゴム、ガラス転移温度が-53℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が単峰形で、その分子量分布(PDI)が1.5、スチレン含有量が25質量%、ビニル含有量が28質量%。
・変性SBR-6:アルコキシシリル基を有するスチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製NS560、ガラス転移温度が-32℃、GPCで測定したときの分子量分布曲線が二峰形で、その分子量分布(PDI)が1.5、スチレン含有量が41質量%、ビニル含有量が29質量%。
・NR:天然ゴム、TSR20、ガラス転移温度が-65℃
・シリカ-2:Solvay社製ZEOSIL 1165MP、CTAB吸着比表面積が160m2/g
・シリカ-3:Solvay社製Premium 200MP、CTAB吸着比表面積が200m2/g
・カーボンブラック-2:新日化カーボン社製ニテロン#300IH N2SA=115m2/g
・カップリング剤-1:Evonik Degussa社製Si69、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス6PPD
・硫黄:四国化成工業社製ミュークロンOT-20
・加硫促進剤-1:大内新興化学社製ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤-2:フレキシス製Perkacit DPG
【0064】
表4,5から明らかなように重荷重用タイヤに好適な実施例7~12のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗性、および耐摩耗性に優れることが確認された。
比較例9のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-6)の分子量分布曲線が二峰形なので、耐摩耗性が劣る。
比較例10のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-1)の分子量分布(PDI)が1.7より大きいので、耐摩耗性、低転がり抵抗性の効果が出ない。
比較例11のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-2)が70質量%を超え、ゴム組成物のTgが-50℃より高いので、耐摩耗性が劣る。
比較例12のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-2)が30質量%未満なので、耐摩耗性、低転がり抵抗性の効果が出ない。
比較例13のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム組成物のTgが-50℃より高いので、耐摩耗性が劣る。
比較例14のタイヤ用ゴム組成物は、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR-3)の分子量分布曲線が二峰形で分子量分布(PDI)が1.7より大きいので、耐摩耗性が劣る。