(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】パッケージ型フローセンサ
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
G01F1/684 A
(21)【出願番号】P 2020040837
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山本 克行
(72)【発明者】
【氏名】梶川 健太
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/120990(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/102403(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02693172(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68-1/699
G01P 5/10-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを検知するセンサ部を有するフローセンサチップと、
平板状の基板部を含み、前記フローセンサチップを収容する収容室を形成するパッケージと、
前記基板部の外面に設けられ、外部基板と接続される接続端子と、を備え、
前記基板部には、前記収容室の内外を連通させる第1連通孔が設けられ、
前記パッケージにおいて前記基板部とは異なる位置には、前記収容室の内外を連通させる第2連通孔が設けられ、
前記フローセンサチップは、凹部が形成された本体部と、前記凹部の開口を覆うように配置されるメンブレンと、前記メンブレン上に配置されるヒータと、前記メンブレンを平面視で見たときに前記ヒータを間に挟むように前記メンブレン上に配置される第1サーモパイル及び第2サーモパイルと、を有し、
前記メンブレンを平面視したときに、前記第1連通孔、前記第1サーモパイル、前記ヒータ、前記第2サーモパイル及び前記第2連通孔は、この順に一列に並んで配置さ
れ、
前記接続端子は、前記第1連通孔の周囲を囲むように形成され、
前記パッケージ型フローセンサは、前記外部基板上に載置され、
前記外部基板には、前記接続端子に囲まれた領域に対応する位置に貫通孔が設けられ、
前記貫通孔の周囲を囲むように形成されたランドと前記接続端子とが、前記第1連通孔及び前記貫通孔を連通するように形成されたハンダによって接続され、
前記流体は、前記外部基板において前記パッケージ型フローセンサが載置された面とは反対側の面から、前記貫通孔および前記第1連通孔を介して、前記収容室に案内されることを特徴とする、
パッケージ型フローセンサ。
【請求項2】
前記パッケージ型フローセンサは、前記外部基板において、電子部品が接続される面と同一の面に載置される、
請求項
1に記載のパッケージ型フローセンサ。
【請求項3】
前記パッケージは、天板と前記天板の縁から立設する側壁とによって外部に開口する中空部を形成するケース部材を含み、
前記基板部によって前記開口が閉塞されることで前記収容室が形成され、
前記第2連通孔は、前記ケース部材に設けられる、
請求項1
または2に記載のパッケージ型フローセンサ。
【請求項4】
前記第2連通孔は、前記天板に形成される、
請求項
3に記載のパッケージ型フローセンサ。
【請求項5】
前記第2連通孔は、前記側壁に形成される、
請求項
3に記載のパッケージ型フローセンサ。
【請求項6】
前記収容室には、外部から供給された電圧を昇圧して前記フローセンサチップに供給するチャージポンプがさらに収容される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のパッケージ型フローセンサ。
【請求項7】
前記収容室には、前記フローセンサチップの出力を増幅する増幅器がさらに収容される、
請求項1から
6のいずれか一項に記載のパッケージ型フローセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ型フローセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量や流速、および流れる方向を検知するフローセンサが利用されている。フローセンサは、例えば、薄膜(メンブレン)上にヒーターと、ヒーターを挟むように配置したサーモパイルを有するセンサ部を備える。このようなセンサ部を備えるフローセンサでは、ヒーターが薄膜を加熱することで生じる熱分布が流体の流れによって乱されると、当該乱れをサーモパイルで生じる熱起電力の差として測定する。センサ部はメンブレンを利用していることから、物理的接触等によって破損しやすい部品であるといえる。
【0003】
例えば、特許文献1では、流体を通過させる流路と一体として形成されたフローセンサが開示されている。特許文献2では、流路とは別体として形成され、流速を検知するセンサ部を外部に露出させたフローセンサが開示されている。特許文献2に開示されるフローセンサは流路に備え付けられ、流路の断面積と合わせて流量が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5652315号公報
【文献】特許第6435389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるフローセンサは流路と一体として形成されるため、小型化することが困難であり、また、製造コストも高くなる。特許文献2に開示されるフローセンサは流路と別体として形成されるため、小型化が容易である。しかしながら、特許文献2に開示されるフローセンサは、外部に露出するセンサ部が物理的接触等によって破損しやすく、取り扱いが難しい。
【0006】
そこで、フローセンサをパッケージ内に収容することで、センサ部を保護するパッケージ型フローセンサが考えられる。パッケージ型フローセンサは、外部基板と接続されて使用される。このようなパッケージ型フローセンサは、外部基板の厚さ方向の流体の流れを検知することはできなかった。
【0007】
開示の技術の1つの側面は、外部基板の厚さ方向の流体の流れを検知できるパッケージ型フローセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の1つの側面は、次のようなパッケージ型フローセンサによって例示される。本パッケージ型フローセンサは、流体の流れを検知するセンサ部を有するフローセンサチップと、平板状の基板部を含み、前記フローセンサチップを収容する収容室を形成するパッケージと、前記基板部の外面に設けられ、外部基板と接続される接続端子と、を備える。そして、本パッケージ型フローセンサでは、前記基板部には、前記収容室の内外を連通させる第1連通孔が設けられ、前記パッケージにおいて前記基板部とは異なる位置には、前記収容室の内外を連通させる第2連通孔が設けられ、前記フローセンサチップは、前記第1連通孔と前記第2連通孔とが形成する前記流体の流路上に配置される。
【0009】
フローセンサチップのセンサ部は、流体の流速を検知するための繊細な部品をその表面に実装しており、物理的接触等によって破損しやすい。開示の技術は、パッケージ内にフローセンサチップを収容することで、物理的接触等からフローセンサチップのセンサ部を保護することができるため、フローセンサの取り扱いが容易になる。また、本パッケージ型フローセンサは流路と一体に形成されないため、流路と一体に形成されるフローセンサよりも小型化が容易である。パッケージ自体が小型であるため、別体として形成される流路に本パッケージ型フローセンサを組み込んで、検知した流速から流量を検知する場合でも、流路への取り付け自由度が向上するとともに、流路まで含めた構造であったとしても小型である。
【0010】
第1連通孔、第2連通孔及び収容室とが、フローセンサチップに流体を案内する流路を形成するため、収容室内に導入された流体はセンサ部上を通過することになる。流路が流体をセンサ部に案内することにより、パッケージにフローセンサチップを収容しても、流体の検知精度の低下が抑制される。
【0011】
本パッケージ型フローセンサでは、基板部の外面には外部基板と接続される接続端子が設けられる。そして、第1連通孔が基板部に設けられ、第2連通孔が基板部とは異なる位置に設けられる。すなわち、本パッケージ型フローセンサでは、外部基板と接続される側の面に第1連通孔が設けられ、外部基板と面しない位置に第2連通孔が設けられる。そのため、本パッケージ型フローセンサは、第1連通孔及び第2連通孔の一方から収容室に導入された流体を、第1連通孔及び第2連通孔の他方から、外部基板に阻害されることなく排出させることができる。このような構成を採用する本フローセンサパッケージは、外部基板の法線方向(外部基板の厚み方向)の流体の流れをセンサチップに検知させることができる。
【0012】
開示の技術は、次の特徴を有してもよい。前記接続端子は、前記第1連通孔の周囲を囲むように形成される。第1連通孔が接続端子で囲まれることで、本フローセンサパッケージを外部基板に実装する際は、第1連通孔のハンダ等で囲むことが可能となる。そのため、外部基板において第1連通孔と対応する位置に貫通孔を設けておけば、外部基板の法線方向(外部基板の厚み方向)の流体を効率よく収容室内に導入させることができる。
【0013】
開示の技術は、次の特徴を有してもよい。前記パッケージ型フローセンサは、前記外部基板上に載置され、前記外部基板には、前記接続端子に囲まれた領域に対応する位置に貫通孔が設けられ、前記流体は、前記外部基板において前記パッケージ型フローセンサが載置された面とは反対側の面から、前記貫通孔および前記第1連通孔を介して、前記収容室に案内される。
【0014】
開示の技術は、次の特徴を有してもよい。前記パッケージ型フローセンサは、前記外部基板において、電子部品が接続される面と同一の面に載置される。このような特徴を有することで、外部基板のパッケージ型フローセンサを実装する面とは反対側の面からの流体の流れが乱れることが抑制される。そのため、本パッケージ型フローセンサは、外部基板のパッケージ型フローセンサを実装する面とは反対側の面からの流体の流れの検知精度を高めることができる。
【0015】
開示の技術は、次の特徴を有してもよい。前記パッケージは、天板と前記天板の縁から立設する側壁とによって外部に開口する中空部を形成するケース部材を含み、前記基板部によって前記開口が閉塞されることで前記収容室が形成され、前記第2連通孔は、前記ケース部材に設けられる。ここで、開示の技術において、第2連通孔は天板に設けられてもよいし、側壁に設けられてもよい。例えば、第2連通孔が側壁に設けられると、フローセンサパッケージを外部基板に実装する際に、センサパッケージの把持が容易になる。
【0016】
開示の技術は、次の特徴を有してもよい。前記収容室には、外部から供給された電圧を昇圧して前記センサチップに供給するチャージポンプや前記センサチップの出力を増幅する増幅器がさらに収容されてもよい。このような特徴を有することで、センサチップとチャージポンプや増幅器との間の配線に混入するノイズが抑制される。ひいては、パッケージ型フローセンサの性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本パッケージ型フローセンサは、外部基板の厚さ方向の流体の流れを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係るセンサパッケージの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、フローセンサチップを上面から見た図である。
【
図4】
図4は、フローセンサチップによる流速の測定方法を模式的に示す第1の図である。
【
図5】
図5は、フローセンサチップによる流速の測定方法を模式的に示す第2の図である。
【
図6】
図6は実施形態に係るセンサパッケージの基板を上方から見た図である。
【
図7】
図7は実施形態に係るセンサパッケージの基板を下方から見た図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るセンサパッケージを平面視した図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るセンサパッケージを外部基板に実装した状態を例示する図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るセンサパッケージを基板に複数並べて配置した状態を例示する図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るセンサパッケージを差圧センサとして利用する構成を例示する図である。
【
図13】
図13は、第1変形例に係るセンサパッケージの分解斜視図である。
【
図14】
図14は、第1変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係るセンサパッケージ100を基板の裏面側から見た図である。
【
図16】
図16は、第1変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、第3変形例に係るセンサパッケージの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、第4変形例に係るセンサパッケージの分解斜視図である。
【
図19】
図19は、第4変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、第4変形例において、箱状に形成された基板の側壁にフローセンサチップを載置した構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、一実施形態に係るセンサパッケージについて説明する。
図1は、実施形態に係るセンサパッケージの分解斜視図である。
図1に例示されるセンサパッケージ100は、基板1、フローセンサチップ2およびリッド3を備える。以下、本明細書において、基板1側を下、リッド3側を上とする。本明細書において、板状に形成される基板1の一方の辺に沿った方向をX方向、他方の辺に沿った方向をY方向、上下方向をZ
方向とも称する。センサパッケージ100は、「パッケージ型フローセンサ」の一例である。
【0020】
(フローセンサチップ2)
フローセンサチップ2は、流体(例えば、気体)の流速を測定するセンサである。
図2は、フローセンサチップを上面から見た図であり、
図3は
図2におけるA-A線断面図である。フローセンサチップ2は、本体部21およびメンブレン22を備える。本体部21は、上面が開口した中空形状(すり鉢形状)に形成されており、その素材は、例えばシリコンである。メンブレン22は、薄膜であり、
図3に例示されるように、本体部21が有する開口において中空状の構造となっている。メンブレン22には、ヒーター23およびサーモパイル24、24が設けられる。ヒーター23およびサーモパイル24、24は、Y方向に沿って一列に並んで配置される。サーモパイル24、24の一端の接点は、本体部21と重なる位置に配置される。サーモパイル24、24のそれぞれを区別するときは、サーモパイル24、24の一方をサーモパイル241と称し、他方をサーモパイル242と称する。
【0021】
ヒーター23は、メンブレン22を加熱する加熱器である。メンブレン22は薄膜であるため熱容量が小さく、ヒーター23によって効率的に加熱される。サーモパイル24、24はメンブレン22からの熱を受けることで熱起電力を発生させる熱電対である。サーモパイル24、24の一端の接点が本体部21の上にあるため、メンブレン22と本体部21との温度差が熱起電力として検出できる。サーモパイル24、24は、高い温度になるほど高い熱起電力を生じる。また、サーモパイル24、24のいずれもが同じ温度の場合、サーモパイル24、24が発生させる熱起電力は等しくなる。フローセンサチップ2は、例えば、ヒーター23によってメンブレン22を加熱し、メンブレン22における熱分布の差によって生じるサーモパイル24、24の熱起電力の差を基に流量を測定する熱式フローセンサである。フローセンサチップ2は、例えば、Micro Electro
Mechanical Systems(MEMS)によって製造される。
【0022】
フローセンサチップ2のメンブレン22には、ヒーター23の両端に接続され、外部電源40からヒーター23への給電を受ける被給電端子231、231も設けられる。また、メンブレン22には、サーモパイル24、24のそれぞれが発生させる熱起電力の差Voutを測定するための被測定端子243、243も設けられる。サーモパイル24、24および被測定端子243、243は、配線25によって直列に接続される。フローセンサチップ2は、例えば、ヒーター23およびサーモパイル24、24が設けられたメンブレン22が外部に露出する表面実装型のフローセンサである。メンブレン22、ヒーター23およびサーモパイル24、24は、「センサ部」の一例である。
【0023】
図4および
図5は、フローセンサチップによる流速の測定方法を模式的に示す図である。
図4は、フローセンサチップ2の周囲において風が吹いていない状態を例示する。フローセンサチップ2の周囲で風が吹いていない場合、ヒーター23からの位置が離れるにしたがって温度が下がり、熱分布H1によって例示するように、メンブレン22における熱分布はヒーター23を中心として均等になる。そのため、サーモパイル24、24はいずれもヒーター23によって同じ温度に加熱され、サーモパイル24、24で生じる熱起電力も等しくなる。
【0024】
図5は、フローセンサチップ2の周囲において風が吹いている状態を例示する。サーモパイル24、24のうち一方をサーモパイル241、他方をサーモパイル242とすると、
図5では、サーモパイル241からサーモパイル242の方向に向けて風が吹いている状態が例示される。風の上流側は風によって冷やされて温度が下がるため、熱分布H2によって例示するように、メンブレン22における熱分布は、ヒーター23の上流側よりも
下流側にずれる(下流側の方が上流側より高温になる)。そのため、ヒーター23よりも下流側に位置するサーモパイル242の方が、ヒーター23よりも上流側に位置するサーモパイル241よりも高温となる。その結果、サーモパイル241の熱起電力V
1と、サーモパイル242の熱起電力V
2との間に差が生じる。
【0025】
上記の通り、サーモパイル24、24は、高温になるほど熱起電力が高くなり、風の下流側に位置するサーモパイル24の方が、風の上流側に位置するサーモパイル24よりも高温となる。そのため、サーモパイル241の起電力V1とサーモパイル242の起電力V2の差(すなわち、V2-V1)を測定することで、フローセンサチップ2は風の向きを検知するとともに、風の強さを検知することができる。
【0026】
V2-V1が正である場合には、サーモパイル242の方がサーモパイル241よりも高温となっているため、フローセンサチップ2はサーモパイル241からサーモパイル242に向かう方向に風が吹いていることを検知できる。また、V2-V1が負である場合には、サーモパイル241の方がサーモパイル242よりも高温となっているため、フローセンサチップ2はサーモパイル242からサーモパイル241に向かう方向に風が吹いていることを検知できる。さらに、V2-V1が0(ゼロ)である場合には、いずれのサーモパイル24、24も同じ温度となっているため、フローセンサチップ2は風が吹いていない(または、吹いている風が検知範囲の下限未満)であることを検知できる。また、フローセンサチップ2は、V2-V1の値が大きいほど強い風が吹いていると検知できる。フローセンサチップ2は、「センサチップ」の一例である。ここではヒーター23の熱を検出する温度検知素子をサーモパイル24としたが、温度検知素子がダイオード、サーミスタ、白金等の測温抵抗体であるセンサチップであってもよい。
【0027】
(リッド3)
リッド3は、フローセンサチップ2を上方から覆う蓋である。
図1に例示されるリッド3は、天板31及び天板31の縁から立設される側壁32によって中空の直方体状に形成される。リッド3は、基板1に向けて開口する箱状に形成されるということもできる。リッド3は、中空となっている領域にフローセンサチップ2を収容可能である。リッド3の天板31には、天板31を厚さ方向に貫通する通気孔33が設けられる。通気孔33は、「第2連通孔」の一例である。
【0028】
図1に例示されるリッド3は底面が開口した中空の直方体状に形成されているが、リッド3の形状が直方体に限定されるわけではなく、円柱形状や五角柱等の多角柱であってもよい。リッド3の形状は、その内部にフローセンサチップ2を収容可能な中空の領域を有すればよい。リッド3の素材には特に限定はないが、収容したフローセンサチップ2を外部からの衝撃等から保護可能な剛性を有し、かつパッケージ内の流路を形成できる素材であればよい。金属、プラスチック、セラミックやシリコンなどでもよい。リッド3の素材が金属など導電性を有していれば、電磁ノイズに対する耐性が得られるなどの利点もある。リッド3は、「ケース部材」の一例である。
【0029】
(基板1)
基板1は、一方の面(リッド3の開口に対向する面)にフローセンサチップ2が載置される平板状の基板である。基板1は、例えば、フローセンサチップ2と外部基板とを接続する接続端子を有してもよい。基板1は、プリント基板であってもセラミック基板であってもよい。また、基板1はリジッドな基板であってもフレキシブルな基板であってもよい。
図1において、基板1は四角形の板状に形成されているが、基板1の形状がこのような形状に限定されるわけではない。基板1は、円形状や三角形状、五角形状等の他の形状に形成されてもよい。基板1は、リッド3の開口全体を覆うことが可能な形状に形成されることが好ましい。基板1には、基板1を厚さ方向に貫通する通気孔13が設けられる。リ
ッド3の開口を基板1が閉塞することで、フローセンサチップ2を収容する収容室が形成される。通気孔13は、「第1連通孔」の一例である。
【0030】
図6は実施形態に係るセンサパッケージの基板を上方から見た図であり、
図7は実施形態に係るセンサパッケージの基板を下方から見た図である。
図6では、基板1の上面11に載置されるフローセンサチップ2も図示されている。基板1は、上面11において、フローセンサチップ2の被給電端子231、231と電気的に接続される給電端子112、112と、フローセンサチップ2の被測定端子243、243と電気的に接続される測定端子113、113を備える。フローセンサチップ2の被給電端子231、231と給電端子112、112、および、被測定端子243、243と測定端子113、113とは、例えば、金属ワイヤーW1を用いたワイヤーボンディングによって接続される。金属ワイヤーW1は、例えば、金によって形成される。また、基板1は、裏面12において、上面11に設けられた給電端子112、112や測定端子113、113と電気的に接続されたランド122、122、122、123を有する。ランド123は、基板1の裏面12において通気孔13の周囲を囲むように配置される。基板1は、「基板部」の一例である。リッド3と基板1とは、「パッケージ」の一例である。基板1の裏面12は、「基板部の外面」の一例である。ランド122、122、122、123は、「接続端子」の一例である。
【0031】
(風の流れ)
図8は、実施形態に係るセンサパッケージを平面視した図である。
図9は、実施形態に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。
図9は、
図8のB-B線における断面図となっている。
図8では、リッド3内に収容されているフローセンサチップ2、フローセンサチップ2の上面に設けられたサーモパイル24、24および基板1に設けられた通気孔13を点線で図示している。通気孔13は、基板1を厚さ方向に貫通する孔である。リッド3の上面には、通気孔33が設けられる。通気孔33は、リッド3の上面を厚さ方向に貫通する孔である。通気孔13及び通気孔33は、センサパッケージ100のフローセンサチップ2を収容する収容室101と外部とを連通する貫通穴ということもできる。
図8を参照すると理解できるように、センサパッケージ100を上方から見た平面視において、フローセンサチップ2は、通気孔13と通気孔33との間に位置するようにリッド3に収容される。その結果、通気孔13、サーモパイル241、サーモパイル242、通気孔33は、Y方向に沿って一列にこの順に並べられる。
【0032】
このように通気孔13、通気孔33およびサーモパイル24、24が並べられると、
図9に例示されるように、通気孔13からリッド3内に導入された空気は、2つのサーモパイル24、24上を通過して、通気孔33からリッド3外に排出される。すなわち、基板1に設けられた通気孔13、リッド3の上面に設けられた通気孔33及び収容室101で、2つのサーモパイル24、24上に風を通過させる流路を形成することができる。換言すれば、フローセンサチップ2は、通気孔13、通気孔33及び収容室101によって形成される流路上に配置されるということもできる。なお、通気孔33からリッド3内に空気が導入されると、2つのサーモパイル24、24上を通過して、通気孔13からリッド3外に排出される。なお、
図9では便宜的に一方向の風向を矢印で例示してあるが、実際には通気孔13から通気孔33への流体の流れおよび通気孔33から通気孔13への流体の流れの両方向を検知できる。前述の通り、フローセンサチップ2はサーモパイル24、24の起電力差の電位の正負によって風向を区別して検知できる。
【0033】
(実装例)
図10は、実施形態に係るセンサパッケージを外部基板に実装した状態を例示する図である。
図10では、センサパッケージ100は、基板200の電子部品が実装される表面
201に設けられる。基板200は、センサパッケージ100のランド123によって規定される枠に対応する位置に、基板200の厚み方向に貫通する貫通孔206が設けられる。また、基板200の表面201には、貫通孔206の周囲を囲むようにランド204が設けられる。また、基板200の表面201には、センサパッケージ100のランド123に対応する位置に、ランド203が設けられる。基板200は、「外部基板」の一例である。
【0034】
本実装例では、センサパッケージ100のランド122と基板200ランド203とがハンダ205によって接続される。また、センサパッケージ100のランド123と基板200のランド204とがハンダ205によって接続される。ランド123が通気孔13の周囲を囲む枠状に形成され、ランド204が貫通孔206の周囲を囲む枠状に形成されることからら、ランド123とランド204とを接続するハンダ205も枠状に形成される。そのため、基板200に載置されたセンサパッケージ100を基板200の裏面202側から見ると、基板200の貫通孔206、ハンダ205によって規定される枠内、および、ランド123によって規定される枠内を介して、通気孔13を見ることができる。換言すれば、基板200の貫通孔206、ハンダ205によって規定される枠内、および、ランド123によって規定される枠内、通気孔13によって、リッド3の内部と外部とが連通するということができる。
【0035】
このような実装例では、センサパッケージ100は、例えば、貫通孔206及び通気孔13から収容室101に導入し、通気孔33を経て収容室101から排出される流体の流れをフローセンサチップ2に検知させることができる。また、センサパッケージ100は、例えば、通気孔33から収容室101に導入し、収容室101から貫通孔206及び通気孔13を経て収容室101から排出される流体の流れをフローセンサチップ2に検知させることができる。すなわち、センサパッケージ100は、基板200の厚み方向(基板200の表面201の法線方向)の流体の流れを検知することができる。
【0036】
センサパッケージ100は、例えば、基板200に複数並べて配置してもよい。
図11は、実施形態に係るセンサパッケージを基板に複数並べて配置した状態を例示する図である。
図11では、基板200の表面201に複数のセンサパッケージ100が一列に並んで配置される。このようにセンサパッケージ100を複数並べて基板200に配置することで、流体の流速の分布を検知することができる。なお、
図11では、複数のセンサパッケージ100を一列に並べたが、センサパッケージ100は複数列に並べてもよい。
【0037】
(差圧センサとしての利用)
センサパッケージ100は、差圧センサとして利用することもできる。
図12は、実施形態に係るセンサパッケージを差圧センサとして利用する構成を例示する図である。
図12では、部屋P1と部屋P2の気圧の差(差圧)をセンサパッケージ100で検知する構成を例示する。部屋P1と部屋P2は、基板200によって区切られている。例えば、部屋P1の気圧が部屋P2よりも低くなると、通気孔13、収容室101及び通気孔33を介して、部屋P2から部屋P1にむけた風が流れるようになる。部屋P1と部屋P2の気圧の差の大きさに応じて風向及び風速が変化する。そのため、センサパッケージ100は、部屋P1と部屋P2の間で流れる風向及び風速を検知することで、部屋P1と部屋P2の差圧を検知することが可能となる。
【0038】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係るセンサパッケージ100は、基板1に載置したフローセンサチップ2を収容室101に収容する。その結果、フローセンサチップ2は、リッド3と基板1とによって、外部からの物理的接触等から保護される。そのため、センサパッケージ100は、メンブレン22が外部に露出するフローセンサよりも容易に取り扱うことができる。また
、センサパッケージ100は、リッド3及び基板1とによって外部からの物理的接触からフローセンサチップ2を保護できるため、センサパッケージ100を様々な場所で使用することができる。
【0039】
実施形態に係るセンサパッケージ100は、流体を通過させる流路と一体として形成されないため、流路と一体として形成されるフローセンサよりも小型化が容易である。
【0040】
実施形態に係るセンサパッケージ100は、通気孔13、通気孔33とサーモパイル24、24とをY方向に沿って一列に並べることで、流体の流速や流れる方向の測定に好適な流路を形成できる。
【0041】
実施形態に係るセンサパッケージ100は、基板1に通気孔13が設けられリッド3に通気孔33が設けられる。そのため、センサパッケージ100は、基板1から天板31に向かう風や天板31から基板1に向かう風を検知することができる。すなわち、センサパッケージ100は、基板200の厚さ方向の流体の流れを検知することができる。
【0042】
<第1変形例>
実施形態では、リッド3の天板31に通気孔33が設けられる。しかしながら、通気孔33が設けられる位置は、リッド3の天板31に限定されない。
図13は、第1変形例に係るセンサパッケージの分解斜視図である。第1変形例に係るセンサパッケージ100aでは、リッド3aが有する側壁32のうちのひとつが、通気孔33aが設けられた側壁32aとなる。
【0043】
図14は、第1変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。第1変形例に係るセンサパッケージ100aは、リッド3の側壁32aに通気孔33aが設けられる。このようなセンサパッケージ100aによっても、基板1の裏面12からリッド3に向かう風の流れを検知することができる。例えば、
図10に例示する構成において、センサパッケージ100に代えてセンサパッケージ100aを採用することで、センサパッケージ100aは、基板200の厚さ方向の流体の流れを検知することができる。
【0044】
<第2変形例>
実施形態に係るセンサパッケージ100では、基板1の裏面12において、通気孔13の周囲を囲むようにランド123が設けられる。しかしながら、通気孔13の周囲の少なくとも一部はランドによって囲まれなくともよい。
図15は、第2変形例に係るセンサパッケージ100を基板の裏面側から見た図である。第2変形例に係るセンサパッケージ100bでは、略コの字型に形成されたランド123aが基板1の裏面12に設けられる。
【0045】
図16は、第1変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。センサパッケージ100bでは、基板200の表面201と平行に流れる風をランド123aが通気孔13に誘導することができる。そのため、センサパッケージ100bは、基板200の表面201と平行に流れる風を高感度で検知することができる。なお、ランド123aはセンサパッケージ100bと基板200をハンダ205によって物理的、電気的接続を図るものであるが、ハンダによる流路形成を主目的として、電気的接続の機能を有しないランド123aが設けられてもよい。
【0046】
<第3変形例>
センサパッケージにおいて、基板1には、フローセンサチップ2に加えて他の電子部品がさらに実装されてもよい。
図17は、第3変形例に係るセンサパッケージの一例を示す図である。第3変形例に係るセンサパッケージ100cは、フローセンサチップ2に加え
て電子部品4も基板1上に実装される。電子部品4は、任意の電子部品であってよい。電子部品4は、例えば、外部から供給された電圧を昇圧してフローセンサチップ2に供給するチャージポンプであってもよいし、フローセンサチップ2の出力を増幅する増幅器であってもよい。フローセンサチップ2と電子部品4とは、ワイヤで接続してもよいし、基板1上の配線によって接続してもよい。電子部品4を収容室101内で基板1上に実装することで、フローセンサチップ2と電子部品4との間の配線に混入するノイズが抑制される。ひいては、センサパッケージ100cの性能を向上させることができる。
【0047】
<第4変形例>
実施形態及び第1変形例から第3変形例では、リッド3が箱状に形成され、基板1が板状に形成される。しかしながら、リッド3が板状に形成され、基板1が箱状に形成されてもよい。
図18は、第4変形例に係るセンサパッケージの分解斜視図である。また、
図19は、第4変形例に係るセンサパッケージにおける、通気孔から導入された空気の流れを模式的に示す図である。第4変形例に係るセンサパッケージ100dでは、リッド3bは板状に形成される。また、基板1aは、平板状の底板15及び底板15の縁から立設される板状の側壁14によって中空の直方体状に形成される。基板1aは、リッド3aに向けて開口する箱状に形成されるということもできる。基板1aは、中空となっている領域にフローセンサチップ2を収容可能である。基板1aの底板15には、底板15を厚さ方向に貫通する通気孔13が設けられる。このような基板1a及びリッド3bによっても、フローセンサチップ2を収容する収容室101を形成することができる。第4変形例に係るセンサパッケージ100dも、実施形態に係るセンサパッケージ100のように、基板1aからリッド3bに向かう風やリッド3bから基板1aに向かう風を検知することができる。底板15は、「基板部」の一例である。
【0048】
箱状に形成される基板1aでは、底板15以外にも側壁14にも電子部品を実装することが可能である。そのため、第4変形例では、フローセンサチップ2を基板1aの側壁14に載置することも可能である。
図20は、第4変形例において、箱状に形成された基板の側壁にフローセンサチップを載置した構成の一例を示す図である。
図20に例示されるように、通気孔13、通気孔33及び収容室101が形成する流路上であれば、フローセンサチップ2を載置する場所は側壁14であってもよい。
【0049】
本実施の形態は、以下の態様(付記と呼ぶ)を含む。
<付記1>
流体の流れを検知するセンサ部を有するフローセンサチップ(2)と、
平板状の基板部(1、15)を含み、前記フローセンサチップ(2)を収容する収容室(101)を形成するパッケージ(3、1)と、
前記基板部(1、15)の外面に設けられ、外部基板(200)と接続される接続端子(123)と、を備え、
前記基板部(1、15)には、前記収容室(101)の内外を連通させる第1連通孔(13)が設けられ、
前記パッケージにおいて前記基板部(1、15)とは異なる位置には、前記収容室(101)の内外を連通させる第2連通孔(33)が設けられ、
前記フローセンサチップ(2)は、前記第1連通孔(13)と前記第2連通孔(33)とが形成する前記流体の流路上に配置される、
パッケージ型フローセンサ(100)。
【0050】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
100、100a、100b、100c、100d・・・センサパッケージ
1、1a、200・・・基板
11、201・・・表面
112・・・給電端子
113・・・測定端子
12、12a、202・・・裏面
122、123、123a、203、204・・・ランド
2・・・フローセンサチップ
21・・・本体部
22・・・メンブレン
23・・・ヒーター
231・・・被給電端子
24、241、242・・・サーモパイル
243・・・被測定端子
3、3a、3b・・・リッド
13、33、33a・・・通気孔
205・・・ハンダ
W1・・・金属ワイヤー