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特許7518489乾燥バイオフィルム処理剤、医療機器用洗浄組成物及び乾燥バイオフィルムの処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】乾燥バイオフィルム処理剤、医療機器用洗浄組成物及び乾燥バイオフィルムの処理方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 41/04 20060101AFI20240710BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240710BHJP
   A01N 37/44 20060101ALI20240710BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A01N41/04 Z
A01P3/00
A01N37/44
A01N31/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023573411
(86)(22)【出願日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2023030412
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022171726
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 武
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亮二
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/005897(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068230(WO,A1)
【文献】特開2017-190312(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069296(WO,A1)
【文献】特表2006-512197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N、A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)のいずれかの組み合わせを必須成分とし、MIC(最小生育阻止濃度)未満の濃度範囲で使用されることを特徴とする、乾燥バイオフィルム処理剤。
(a):アントラニル酸、4-クロロアントラニル酸、6-クロロアントラニル酸、4-フルオロアントラニル酸、4-ブロモアントラニル酸、6-ブロモアントラニル酸、N-アセチルアントラニル酸、N-アセトアセチルアントラニル酸、4-ニトロアントラニル酸、6-ニトロアントラニル酸、またはこれらの塩、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸プロピル、アントラニル酸ブチル、アントラニルアミドから選ばれる少なくとも1種であるアントラニル酸類および下記式(3)で示されるジアルキルスルホコハク酸塩
(b):下記式(1)若しくは式(2)で示される芳香族モノアルコールおよび下記式(3)で示されるジアルキルスルホコハク酸塩
式(1)
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
式(2)
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
式(3)
、R :炭素数5~15のアルキル基
X:アルカリ金属、アンモニウム
【請求項2】
アントラニル酸、4-クロロアントラニル酸、6-クロロアントラニル酸、4-フルオロアントラニル酸、4-ブロモアントラニル酸、6-ブロモアントラニル酸、N-アセチルアントラニル酸、N-アセトアセチルアントラニル酸、4-ニトロアントラニル酸、6-ニトロアントラニル酸、またはこれらの塩、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸プロピル、アントラニル酸ブチル、アントラニルアミドから選ばれる少なくとも1種であるアントラニル酸類、下記式(1)若しくは式(2)で示される芳香族モノアルコール及び下記式(3)で示されるジアルキルスルホコハク酸塩をMIC未満の濃度範囲で少なくとも含有することを特徴とする、乾燥バイオフィルム処理剤。
式(1)
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
式(2)
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
式(3)
、R :炭素数5~15のアルキル基
X:アルカリ金属、アンモニウム
【請求項3】
質量比が以下の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の乾燥バイオフィルム処理剤。
(a):アントラニル酸類/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1
(b):芳香族モノアルコール/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1
【請求項4】
質量比が、アントラニル酸類/芳香族モノアルコール/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~5/0.1~1であることを特徴とする、請求項2に記載の乾燥バイオフィルム処理剤。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の乾燥バイオフィルム処理剤を含有する医療機器用洗浄組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の乾燥バイオフィルム処理剤を乾燥バイオフィルムと接触させることを特徴とする、乾燥バイオフィルムの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥バイオフィルム処理剤に関するものである。より詳細には、微生物が関与する様々な分野において、乾燥バイオフィルムに起因する危害を防止するための乾燥バイオフィルム処理剤、医療機器用洗浄組成物及び乾燥バイオフィルムの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムとは、菌膜ともよばれ、細菌により形成される粘性の付着物をいう。バイオフィルムの形成は、次のように行われる。細菌が基質に対して付着と脱離を繰り返しながら徐々に集合する。集合した細菌は細胞外多糖やタンパク質などの細胞外マトリックスを分泌して基質表面にバイオフィルムを形成する。
【0003】
バイオフィルムは、バリアーや運搬経路の役割を果たし、環境変化や化学物質から内部の細菌を守っていると考えられている。よって、バイオフィルム内の細菌は抗生物質や洗浄剤では簡単には除去することができず、細胞外マトリックスに守られた病原菌が人体内に侵入し、感染症を引き起こす原因となる。
【0004】
ところで、医療器具や内視鏡等の医療機器は使用後に院内洗浄を行い、繰り返し使用している。複雑構造の医療機器の場合、洗浄ガイドラインに沿って用手洗浄や機械洗浄、滅菌処理をしても、内部にバイオフィルムが残存していることがあり、これを原因とする二次感染症が数多く報告されている。残存したバイオフィルムは、洗浄後の乾燥工程で強固なバイオフィルム(以下、乾燥バイオフィルムという)となり、洗浄液や滅菌処理への抗力が強化されて除去の難易度が増々高くなる。バイオフィルムからの二次感染を防止するために、乾燥バイオフィルムを除去することは非常に重要である。
【0005】
従来、医療機器の洗浄には酵素系洗浄剤や塩化ベンザルコニウムが一般的に知られている。酵素系洗浄剤は、乾燥バイオフィルムに対して酵素の浸透性が低下するため、乾燥バイオフィルムを除去することが難しい。また、一般的にアルカリ性で使用されることが多く、作業者の安全性の低下に対する懸念がある。塩化ベンザルコニウムは洗浄性能を有する殺菌剤であるが、洗浄効果は限定的であるため、バイオフィルムの除去効果自体が低い。加えて、上記2つの薬剤はバイオフィルムの形成抑制効果はないため、残存したバイオフィルム中の菌が再び増殖してバイオフィルムが更に増加していくこととなる。
【0006】
従って、乾燥バイオフィルムに対する除去およびバイオフィルムの再形成を抑制することが望まれている。
【0007】
従来のバイオフィルムに対する防除のための技術としては、以下のものが知られている。
【0008】
特許文献1ではアルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩のいずれかの界面活性剤、酸、アルコール溶媒を含む組成物が記載されているが、乾燥バイオフィルムの除去ではなく殺菌が目的であり本願発明とは課題が異なる。加えて、組成物のpHがpH1~pH6の間であり、好ましくはpH2~pH4の間の酸性であることが殺菌効果の発現に重要との記載があり、人体及び使用する機器等の腐食への影響の懸念がある。
【0009】
特許文献2では芳香族モノアルコール、アントラニル酸類、微生物界面活性剤を組み合わせて使用するバイオフィルム処理剤と処理方法が開示されているが、乾燥バイオフィルムを効果的に除去できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2003-535959号公報
【文献】国際公開第2021/005897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、乾燥バイオフィルムの除去能力およびバイオフィルムの再形成の抑制に優れた処理剤、当該処理剤を含有した医療機器用洗浄組成物及びこれらを用いた乾燥バイオフィルム処理方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するために様々な種類の化学物質について、乾燥バイオフィルムの除去および再形成抑制の可能性について鋭意研究を行ってきた。その結果、化学物質の組合せである以下の(a)または(b)に優れた乾燥バイオフィルムの除去効果および再形成抑制効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(a)アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩
(b)芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩
【0013】
すなわち、本発明は、
<1>下記(a)または(b)を必須成分とし、MIC(最小生育阻止濃度)未満の濃度範囲で使用されることを特徴とする、乾燥バイオフィルム処理剤、
(a)アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩
(b)芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩
<2>MIC未満の濃度範囲でアントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有することを特徴とする、乾燥バイオフィルム処理剤、
<3>質量比が以下の範囲にあることを特徴とする、前記<1>に記載の乾燥バイオフィルム処理剤、
(a)アントラニル酸類/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1
(b)芳香族モノアルコール/アルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1
<4>質量比が、アントラニル酸類/芳香族モノアルコール/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~5/0.1~1であることを特徴とする、前記<2>に記載の乾燥バイオフィルム処理剤、
<5>前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の乾燥バイオフィルム処理剤を含有する医療機器用洗浄組成物
<6>前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の乾燥バイオフィルム処理剤を乾燥バイオフィルムと接触させることを特徴とする、乾燥バイオフィルムの処理方法、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥バイオフィルムの除去およびバイオフィルムの再形成の抑制において、従来の処理剤よりも優れた効果を得ることができる。また、これらの有効成分は、中性pHで使用できるため、適用対象となる部材等の腐食を引き起こし難く、作業者の安全性を確保しやすいというメリットがある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
(乾燥バイオフィルム処理剤)
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、下記(a)または(b)を必須成分とする。
(a)アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩
(b)芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩
【0017】
本発明において、乾燥バイオフィルム処理剤とは、少なくとも乾燥バイオフィルムの除去作用を有する剤をいう。乾燥バイオフィルム処理剤は、乾燥したバイオフィルムの除去作用のほかに異なる作用を有してもよい。特に後述するバイオフィルムの再形成を抑制する作用も有していると、バイオフィルムが除去された後にバイオフィルムの形成が抑制され、恒常的にバイオフィルムが存在しない環境を維持することができるため、より好ましい。
【0018】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、(a)または(b)いずれかでも本発明の効果を有するが、(a)及び(b)両方を用いてもよい。
【0019】
アントラニル酸類の具体例としては、アントラニル酸、4-クロロアントラニル酸、6-クロロアントラニル酸、4-フルオロアントラニル酸、4-ブロモアントラニル酸、6-ブロモアントラニル酸、N-アセチルアントラニル酸、N-アセトアセチルアントラニル酸、4-ニトロアントラニル酸、6-ニトロアントラニル酸、またはこれらの塩、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸プロピル、アントラニル酸ブチル、アントラニルアミド等が挙げられる。塩としては、本発明の効果を奏するものであれば特に制限されないが、例えば、酸や塩基で中和した塩が挙げられる。酸で中和した塩としては、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸との塩、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸及びクエン酸等の有機酸、塩素との塩が挙げられる。塩基で中和した塩としては、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム及びトリエチルアミン等のアミン類との塩が挙げられる。これらのなかでも、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制効果の観点からアントラニル酸およびその塩、アントラニル酸メチル、並びにアントラニルアミドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
芳香族モノアルコールは、特に限定されないが、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制効果の観点から、好ましくは下記式(1)若しくは式(2)で示される化学物質である。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
【化1】
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
【0022】
【化2】
:任意の1つの水素原子が水酸基で置換された炭素数1~3の直鎖アルキル基
【0023】
式(1)の芳香族モノアルコールの具体例としては、1-フェニルメタノール、1-フェニルエタノール、2-フェニルエタノール、1-フェニル-1-プロパノール、1‐フェニル-2-プロパノール、3-フェニル-1-プロパノールが挙げられる。また、式(2)の芳香族モノアルコールの具体例としては、2-フェノキシエタノール、3-フェノキシ-1-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、3-フェノキシ-2-プロパノール等が挙げられる。これらのなかでも、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制効果の観点から、1-フェニルエタノール、2-フェニルエタノール、2-フェノキシエタノールが好ましい。
【0024】
ジアルキルスルホコハク酸塩は、特に限定されないが、乾燥バイオフィルム除去効果の観点から、好ましくは下記式(3)で示される化学物質である。
【0025】
【化3】
、R:炭素数5~15のアルキル基
X:アルカリ金属、アンモニウム
【0026】
ジアルキルスルホコハク酸塩は、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数5~15が好ましく、6~8のアルキル基を有していることがより好ましい。Xは対イオンを表している。ジアルキルスルホコハク酸塩としては、ジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。ジアルキルスルホコハク酸塩の具体例としては、乾燥バイオフィルム除去の観点から、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらのなかでも、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制効果の観点から、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
(a)において、アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩の質量比は、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制の観点から、アントラニル酸類/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1であることが好ましい。(b)において、芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩の質量比は、乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制の観点から、芳香族モノアルコール/アルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~1であることが好ましい。

【0028】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、より好ましい態様として、MIC未満の濃度範囲でアントラニル酸類、芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有するものが挙げられる。これらを少なくとも含有することにより、乾燥バイオフィルムの除去効果をより高めることができる。
【0029】
前記態様においては、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を、アントラニル酸類/芳香族モノアルコール/ジアルキルスルホコハク酸塩=1/0.2~5/0.1~1の質量比で含むことが好ましい。
【0030】
(最小生育阻止濃度(MIC))
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤が有する乾燥バイオフィルム除去効果やバイオフィルム再形成抑制効果の評価は、あらかじめ、乾燥バイオフィルム処理剤の各成分のバイオフィルム形成細菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)を求め、MIC未満の濃度において行った。
【0031】
本発明でいうMICとは、化学物質が微生物の増殖を抑制する最小濃度(静菌、防腐効果)をいう。したがって、MIC未満の濃度とは、バイオフィルム形成細菌に対して増殖抑制作用を示さない濃度と同義にとらえることができる。
【0032】
本発明におけるMICの算出方法は、以下のとおりである。
乾燥バイオフィルム処理剤の構成成分となる化学物質(以下、評価対象物質と称することがある)を感受性試験用ブイヨン培地で段階的に希釈し、合計10mLの希釈列(ただし、目的濃度の1.1倍)を調製する。そこに供試菌を10cfu/mLに調製した菌液を20μL添加し、96穴マイクロプレートミキサーで37℃、24時間振盪培養(2000rpm)する。目視で白濁しなかった希釈列のうち最も低い濃度をMICとする。
【0033】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、各成分がMIC未満の乾燥バイオフィルム処理剤濃度において、バイオフィルム形成細菌が生育し、かつ、本発明の効果を奏するものである。言い換えれば、本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、バイオフィルム形成細菌の菌自体を殺菌するあるいは増殖を抑制することにより、本発明の効果を奏するものではない。
【0034】
本発明において、乾燥バイオフィルム除去効果とは、細菌により形成されたバイオフィルムを60℃で1時間乾燥して基材表面に固着した状態のものを除去する作用を示すことによる効果をいう。評価対象物質の乾燥バイオフィルム除去作用の評価方法としては、例えば、細菌を培養することによりマルチウェルプレート壁面に形成されたバイオフィルムを60℃で1時間乾燥させ、該乾燥バイオフィルムに評価対象物質を一定時間接触させた後にプレート壁面に残存しているバイオフィルム量と、評価対象物質を接触させずに一定時間経過した後のプレート壁面に残存しているバイオフィルム形成量(コントロール)とを比較する方法などがある。この場合、バイオフィルムの形成量がコントロールよりも少ない場合には、評価対象物質に乾燥バイオフィルム除去作用があると判断することができる。
【0035】
本発明における乾燥バイオフィルム除去効果の評価方法は、以下のとおりである。
(1)バイオフィルム形成細菌の代表菌株であるPseudomonas aeruginosa(寄託番号:NBRC106052株)は、TSB(BD Bacto (TM) Tryptic Soy Broth:Becton, Dickinson and Company製)培地にグルコースを終濃度0.5%としたものを用い、37℃、120rpmの条件で前培養液を調整する。
(2)前培養液のO.D(濁度)=0.1に調整したものを終濃度0.000005%(v/v)となるようにTSB培地で希釈し、12穴のポリスチレンプレートまたはポリテトラフルオロエチレン製テストピースをポリスチレンプレートの内壁に密着させたものに2mL分注する。ここで、以下O.D(濁度)とは分光光度計(iMarkマイクロプレートリーダー:バイオ・ラッド社製)を用いて測定した、蒸留水をブランクとした波長630nmにおける値をいう。
(3)37℃、130rpmの条件で17時間培養し、バイオフィルムを形成させる。
(4)各穴の培養液を除去し、それぞれ蒸留水で1回リンスする。
(5)水分を除去し、プレートの蓋を開けたまま、恒温乾燥機(MOV-112:Panasonic社製)にて60℃、1時間、バイオフィルムを乾燥させる。
(6)評価対象物質を当該対象物質のMIC未満の適当な濃度になるように蒸留水で希釈し、必要に応じて塩酸もしくは水酸化ナトリウムでpH=7.0に調整したものを各穴に3mL添加する。評価対象物質を含まない蒸留水を各穴に3mL添加したものをコントロールとする。
(7)37℃、3時間、130rpmで振盪し評価対象物質の希釈液と乾燥バイオフィルムを接触させた後、各穴の希釈液と剥離したバイオフィルムを除去し、蒸留水で2回リンスする。
(8)各穴内に付着しているバイオフィルムにクリスタルバイオレット水溶液(0.4w/v%,20w/v%エタノール)3mLを加え、5分間静置、染色した後、蒸留水で3回リンスし、バイオフィルムに結合していないクリスタルバイオレット水溶液を除去する。
(9)各穴に3mLの溶出液(50w/v%エタノール、2w/v%ドデシル硫酸ナトリウム)を添加、1時間静置し、染色されたバイオフィルムからクリスタルバイオレットを溶出させ、吸光度を測定する。ここで、以下吸光度とは分光光度計(iMarkマイクロプレートリーダー:バイオ・ラッド社製)を用いて測定した、蒸留水をブランクとした波長595nmにおける値をいう。
(10)コントロールと各評価対象物質の吸光度は、4穴測定した吸光度の平均値とし、下記計算式からバイオフィルムの除去率を算出する。
乾燥バイオフィルム除去率(%)={1-(評価対象物質の吸光度/コントロールの吸光度)}×100
(11)算出された値について、下記判定基準に基づいて乾燥バイオフィルム除去効果を評価する。
<判定基準>
除去率70%以上:除去効果が非常に高い
除去率40%以上70%未満: 除去効果が高い
除去率20%以上40%未満: 除去効果がある
除去率20%未満: 除去効果がない、または弱い
乾燥バイオフィルム除去率は、40%以上で実用レベルである。
【0036】
本発明において、バイオフィルム再形成抑制効果とは、バイオフィルム除去後に基材表面に残存するバイオフィルム中の細菌によるバイオフィルムの再形成を抑制する作用を示すことによる効果をいう。評価対象物質の当該作用の有無を確認する方法としては、例えば、細菌を培養することによりマルチウェルプレート壁面に形成されたバイオフィルムを60℃で1時間乾燥させ、該バイオフィルムに評価対象物質を一定時間接触させた後に、評価対象物質と剥離してきたバイオフィルムを除き、残存しているバイオフィルムに再び評価対象物質を含む培地を加え、一定時間振盪し、バイオフィルムを再形成させる。同様の操作を、評価対象物質を接触させずに行い(コントロール)、それぞれのバイオフィルム量を比較する方法などがある。この場合、バイオフィルム形成量がコントロールよりも少ない場合には、評価対象物質は、バイオフィルム再形成抑制作用があると判断することができる。
【0037】
本発明におけるバイオフィルム再形成抑制効果の評価方法は、以下のとおりである。
(1)バイオフィルム形成細菌の代表菌株であるPseudomonas aeruginosa(寄託番号:NBRC106052株)は、TSB(BD Bacto (TM) Tryptic Soy Broth:Becton, Dickinson and Company製)培地にグルコースを終濃度0.5%としたものを用い、37℃、120rpmの条件で前培養液を調整する。
(2)前培養液のO.D(濁度)=0.1に調整したものを終濃度0.000005%(v/v)となるようにTSB培地で希釈し、12穴のポリスチレンプレートまたはポリテトラフルオロエチレン製テストピースをポリスチレンプレートの内壁に密着させたものに2mL分注する。
(3)37℃、130rpmの条件で17時間培養し、バイオフィルムを形成させる。
(4)各穴の培養液を除去し、それぞれ蒸留水で1回リンスする。
(5)水分を除去し、プレートの蓋を開けたまま、恒温乾燥機(MOV-112:Panasonic社製)にて60℃、1時間、バイオフィルムを乾燥させる。
(6)評価対象物質を当該対象物質のMIC未満の適当な濃度になるように蒸留水で希釈し、必要に応じて塩酸もしくは水酸化ナトリウムでpH=7.0に調整したものを各穴に3mL添加する。評価対象物質を含まない蒸留水を各穴に3mL添加したものをコントロールとする。
(7)37℃、3時間、130rpmで振盪し評価対象物質の希釈液と乾燥バイオフィルムを接触させた後、各穴の希釈液と剥離したバイオフィルムを除去し、蒸留水で2回リンスする。
(8)評価対象物質を当該対象物質のMIC未満の適当な濃度で培地に添加し、必要に応じて塩酸もしくは水酸化ナトリウムで培地pH=7.0に調整したものを各穴に3mL添加する。評価対象物質を含まないものをコントロールとし(pH=7.0)、各穴に3mLずつ添加する。
(9)37℃ 、130rpmの条件で17時間培養し、バイオフィルムの再形成を行う。
(10)各穴の培養液を除去し、それぞれ蒸留水で2回リンスする。
(11)各穴内に付着しているバイオフィルムにクリスタルバイオレット水溶液(0.4w/v%,20w/v%エタノール)3mLを加え、2分間静置、染色した後、蒸留水で3回リンスし、バイオフィルムに結合していないクリスタルバイオレット水溶液を除去する。
(12)各穴に3mLの溶出液(50w/v%エタノール、2w/v%ドデシル硫酸ナトリウム)を添加、1時間静置し、染色されたバイオフィルムからクリスタルバイオレットを溶出させ、吸光度を測定する。
(13)下記計算式からバイオフィルムの再形成抑制率を算出する。
バイオフィルム再形成抑制率(%)={1-(評価対象物質の吸光度/コントロールの吸光度)}×100
(14)算出された値について、下記判定基準に基づいてバイオフィルム再形成抑制効果を評価する。
<判定基準>
再形成抑制率70%以上:抑制効果が非常に高い
再形成抑制率40%以上70%未満:抑制効果が高い
再形成抑制率20%以上40%未満:抑制効果がある
再形成抑制率20%未満:抑制効果がない、または弱い
バイオフィルム再形成抑制率は、40%以上で実用レベルである。
【0038】
発明者らはこれまでの検証結果などから、以下のように考えている。すなわち、本発明の乾燥バイオフィルム処理剤において、(a)アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩は、アントラニル酸類が乾燥バイオフィルムの構造を緩め、緩んだ隙間から浸透性の高い界面活性剤の一種であるジアルキルスルホコハク酸塩が入り込むことで乾燥バイオフィルムを除去する役割を果たす。一方、(b)芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩は、芳香族モノアルコールがジアルキルスルホコハク酸塩自体の浸透性を高め、基材とバイオフィルムの間にジアルキルスルホコハク酸塩が入り込むことで乾燥バイオフィルムに対して高い除去作用を示している。
【0039】
本発明品の形態は、原体のままでも任意の媒体で希釈された溶液、分散液、ゲル状物や顆粒状やタブレット状等の固形物などであっても構わないが、乾燥バイオフィルムへ作用させる際は、通常、水溶液の状態で用いる。希釈された乾燥バイオフィルム処理剤の濃度は特に制限されないが、バイオフィルム形成細菌へ作用させる際に本発明の効果を奏する程度の濃度を要する。
【0040】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩以外の増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、蛍光剤、賦形剤、ソイルリリース剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤、コーティング剤、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂類などと配合することができる。
【0041】
(医療機器用洗浄組成物)
本発明の医療機器用洗浄組成物は上記(a)または(b)を少なくとも含有する。ここで、医療機器としては、内視鏡、カテーテル、人工透析機(特に人工透析液の回路)、コンタクトレンズ等の体液が付着する可能性の高い機器、鉗子、メス、ピンセットなどの鋼製小物が挙げられる。内視鏡としては、咽頭内視鏡、気管支鏡、上部消化器内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡、胸腔鏡、腹腔鏡、膀胱鏡、胆道鏡、間接鏡、血管内視鏡等が挙げられる。
【0042】
本発明の医療機器用洗浄組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、蛍光剤、賦形剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤などと配合することができる。
【0043】
(乾燥バイオフィルムの処理方法)
以下、本発明品の好ましい使用条件について述べる。
本発明品の使用濃度は、乾燥バイオフィルム処理剤に含まれる各構成成分の使用濃度がそれぞれ、バイオフィルムを構成する主要な原因菌種のMIC未満となる濃度である。MIC未満で使用することで、バイオフィルム形成細菌の死滅を抑制し、死滅細菌が基材の表面に非特異的に吸着することを抑えることができるため、新たなバイオフィルムの温床の抑制につながる。乾燥バイオフィルム処理剤は、1剤化したものがハンドリングの点で好ましいが、各成分を個別に準備し、バイオフィルム形成細菌に接触させるときに混合されてもよい。
【0044】
本発明品使用時の溶液pHは、適宜設定することができるが、中性pH領域(6.0~8.0)での使用であれば、人体および使用する水環境への影響を考慮する必要もなく安心である。
【0045】
本発明品は、乾燥バイオフィルムが形成され問題となるような広い分野に使用することが可能である。例えば、菌汚染リスクの高い食品製造又は飲料製造プラント、台所、厨房、浴室、トイレの便器、キッチンまたは厨房などの排水溝、排水管に応用できる。また、産業用の冷却塔、脱塩装置、人工池などの循環水系路に応用できる。バイオフィルムが形成しやすい医療機器、例えば内視鏡やカテーテル、人工透析機等の洗浄剤にも応用できる。
【0046】
本発明品の使用方法としては、浸漬、塗布、あるいは散水するなどがある。さらに、スポンジ、ブラシ、水流などの物理力を加えても良い。作用させておく時間は、付着している乾燥バイオフィルムの量、有効成分の濃度、作用温度、物理力の有無により異なるが、通常は数分から数時間の範囲である。また、作用後は流水などにより、除去されたバイオフィルムを速やかにすすぎ流すことが好ましい。また、本発明品を、バイオフィルムの形成を抑制したい部材に予め数分から数時間程度接触させておくことで、芳香族モノアルコールやアントラニル酸類、ジアルキルスルホコハク酸塩の作用でバイオフィルムの形成を抑制することもできる。
【0047】
(バイオフィルム形成細菌)
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤が適用されるバイオフィルムの形成細菌は、バイオフィルムを形成するグラム陰性細菌のいずれも含まれる。これらのなかでも、プロテオバクテリア門に属するオクロバクテリウム属、エロモナス属、クレブシエラ属、アシネトバクター属、エンテロバクター属、シトロバクター属、ステノトロフモナス属、シュードモナス属、リゾビウム属、カプリアビダス属に対して用いることが好ましい。なお、バイオフィルムの形成は2種以上の細菌で行われる場合がほとんどであり、上記各属に属する細菌が1種以上含まれているバイオフィルムが本発明の対象となる。
【実施例
【0048】
以下、本発明について実施例をもとに具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。実施例においては、バイオフィルム形成細菌としてバイオフィルム形成の代表菌として知られているシュードモナス属菌(グラム陰性細菌)を用い、そのMIC未満の条件で評価試験を行った。
【0049】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤が有する乾燥バイオフィルム除去効果やバイオフィルム再形成抑制効果の評価は、あらかじめ、乾燥バイオフィルム処理剤の各成分のバイオフィルム形成細菌に対するMICを求め、MIC未満の濃度において行った。以下にMICの試験方法を示す。
【0050】
<MIC(最小生育阻止濃度)の試験方法>
バイオフィルム形成の代表菌株として知られているシュードモナス属菌(グラム陰性細菌)を供試菌として、乾燥バイオフィルム処理剤の構成成分となる化学物質(以下、評価対象物質)のMICを求めた。
(1)供試菌Pseudomonas aeruginosa(寄託番号:NBRC106052株)
(2)評価対象物質
表1に示す化学物質を評価対象物質とした。
(3)試験方法
評価対象物質を感受性試験用ブイヨン培地で段階的に希釈し、合計10mLの希釈列(ただし、目的濃度の1.1倍)を調製した。そこに供試菌株を10cfu/mLに調製した菌液を20μL添加し、96穴マイクロプレートミキサーで37℃、24時間振盪培養(2000rpm)した。目視で白濁しなかった希釈列のうち最も低い濃度をMICとした。
(4)試験結果
結果を表1に示す。表中、「<数値」は、MICが当該数値より小さいことを示す。
(a)、(b)について、以下の乾燥バイオフィルム除去評価およびバイオフィルム再形成抑制評価は、MIC未満となる濃度で行った。
【0051】
【表1】
【0052】
<乾燥バイオフィルム除去およびバイオフィルム再形成抑制効果の評価>
乾燥バイオフィルム除去効果およびバイオフィルム再形成抑制効果の確認は、本発明で定めた評価方法に従って行った。評価未実施の化学物質については「-」と示す。本発明(a)または(b)を必須成分とする乾燥バイオフィルム処理剤の評価結果を表2に、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有する乾燥バイオフィルム処理剤の評価結果を表3にそれぞれ示す。
【0053】
表中の略語は以下のとおりである。これらはバイオフィルムを形成させた基材である。
PS:ポリスチレン
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表2から、本発明(a)または(b)を必須成分とする乾燥バイオフィルム処理剤は、各組み合わせの構成成分を単独で使用する場合に比べて、乾燥バイオフィルム除去効果に優れることが分かる。表3から、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有する乾燥バイオフィルム処理剤は、アントラニル酸類、芳香族モノアルコールを本発明で規定する以外の界面活性剤と組み合わせた場合に比べて乾燥バイオフィルム除去効果に優れることが分かる(実施例5と比較例6の対比、比較例5は先行技術2、比較例6は先行技術1に相当)。 また、(a)または(b)を必須成分とする乾燥バイオフィルム処理剤に比べて、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有する乾燥バイオフィルム処理剤は乾燥バイオフィルムの除去効果がより優れることが分かる。さらに、アントラニル酸類、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩を少なくとも含有する乾燥バイオフィルム処理剤は、乾燥バイオフィルムの除去効果だけでなく、バイオフィルム再形成抑制効果においても、優れた効果を示すことが分かる(実施例6、7)。
【0057】
本発明の乾燥バイオフィルム処理剤はPSのような一般的なプラスチック樹脂だけでなくPTFEに固着する乾燥バイオフィルムに対しても優れた除去効果を示すことがわかる。PTFE等のフッ素樹脂は、医療現場で使用されるラインチューブ、内視鏡の部品、カテーテルシャフトチューブなどの機器や用具で使われる素材であることから、医療機器に固着する乾燥バイオフィルムに対して本発明品が優れた除去効果を示すことが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩、または、芳香族モノアルコール及びジアルキルスルホコハク酸塩の組み合わせを必須成分とすることにより、乾燥バイオフィルムの除去に対して有効な乾燥バイオフィルム処理剤を提供することができる。
【0059】
特に医療機器、食品製造又は飲料製造プラント、台所、厨房、浴室、トイレの便器、キッチンまたは厨房などの排水溝、排水管などに形成される乾燥バイオフィルムに対して有効な処理剤を提供することができる。
また、本発明の処理剤は、中性pHで乾燥バイオフィルム除去効果およびバイオフィルム再形成抑制効果を有することから、人体および使用する機器等の腐食への影響を考慮する必要もなく安心である。
【要約】
[課題]本発明は、乾燥バイオフィルムの除去能力およびバイオフィルムの再形成の抑制に優れた処理剤、当該処理剤を含有した医療機器用洗浄組成物及びこれらを用いた乾燥バイオフィルム処理方法の提供を課題とする。
[解決方法]下記(a)または(b)を必須成分とし、MIC(最小発育濃度)未満の濃度範囲で使用されることを特徴とする、乾燥バイオフィルム処理剤、当該処理剤を含有した医療機器用洗浄組成物及びこれらを用いた乾燥バイオフィルム処理方法
(a):アントラニル酸類およびジアルキルスルホコハク酸塩
(b):芳香族モノアルコールおよびジアルキルスルホコハク酸塩