(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】伸縮門扉
(51)【国際特許分類】
E06B 11/02 20060101AFI20240710BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20240710BHJP
E06B 11/06 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
E06B11/02 E
B60B33/00 R
E06B11/06
(21)【出願番号】P 2018166308
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220929
【氏名又は名称】株式会社TOKO
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】島田 珠代
(72)【発明者】
【氏名】松田 純平
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】有家 秀郎
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-209880(JP,A)
【文献】実開昭59-47097(JP,U)
【文献】特開2001-207762(JP,A)
【文献】特開2016-88418(JP,A)
【文献】特開平10-82264(JP,A)
【文献】登録実用新案第3087530(JP,U)
【文献】特開2005-199779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に伸縮自在な扉体と、扉体の引手框の下部に設けたキャスターと、扉体の中間の縦桟の下部に設けたキャスターを備え、引手框の下部に設けたキャスターは、接地面の凹凸を吸収するバネを有し、中間の縦桟の下部に設けたキャスターは、バネを有しないものであり、バネを有するキャスターは、無負荷状態でバネを有しないキャスターと高さが略同じであり、扉体は、戸先側に縦軸まわりに回動して門柱の受けに係脱自在なカマを有し、受けは、上下方向に設けてあることを特徴とする伸縮門扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の伸縮門扉は、引手框の下端部と中間の縦桟の下端部とにキャスターが設けてあり、開閉時にキャスターの車輪が地面の上を転動する(例えば、非特許文献1参照)。かかる伸縮門扉においては、
図7に示すように、地面の上に石などの障害物91があると、キャスター90が障害物91に当たってストップしてしまい、開閉に支障が出ることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社 三協アルミ社発行のカタログ「エクステリア 総合カタログ」(カタログNo.STX1175A KY.18.02-3000)、2018年2月、p.1257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、石などの障害物があっても支障なく開閉できる伸縮門扉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による伸縮門扉は、左右方向に伸縮自在な扉体と、扉体の引手框の下部に設けたキャスターと、扉体の中間の縦桟の下部に設けたキャスターを備え、引手框の下部に設けたキャスターは、接地面の凹凸を吸収するバネを有し、中間の縦桟の下部に設けたキャスターは、バネを有しないものであり、バネを有するキャスターは、無負荷状態でバネを有しないキャスターと高さが略同じであり、扉体は、戸先側に縦軸まわりに回動して門柱の受けに係脱自在なカマを有し、受けは、上下方向に設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による伸縮門扉は、扉体の引手框の下部に設けたキャスターが接地面の凹凸を吸収するバネを有していることで、石などの障害物があってもキャスターが障害物を乗り越えることができるので、支障なく開閉できる。また、扉体は、戸先側に縦軸まわりに回動して門柱の受けに係脱自在なカマを有し、受けは、上下方向に設けてあるので、バネ付きのキャスターを採用したことで扉体の戸先側が多少上下に動いたとしても、施解錠が問題なく行える。バネを有するキャスターは、無負荷状態でバネを有しないキャスターと高さが略同じであり、扉体の中間の縦桟の下部に設けたキャスターはバネを有しないものとしたので、コストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る伸縮門扉の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】(a)は同伸縮門扉の引手框の下部に取付けられるキャスターの平面図、(b)は同キャスターの正面図、(c)は同キャスターの側面図である。
【
図3】(a)は引手框に設けた施錠装置のカマが門柱の受けと係合した状態を示す横断面図であり、(b)は施錠装置のカマが門柱の受けから抜けるときの状態を示す横断面図であり、(c)は施錠装置のカマが門柱の受けに係合するときの状態を示す横断面図である。
【
図4】(a)は戸当り門柱の吊元側の側面図であり、(b)は引手框の戸先側の側面図である。
【
図5】引手框の下部のキャスターの正面図であって、(a)はキャスター単品(無負荷時)の状態、(b)は扉体に取付けた状態、(c)は障害物を乗り越えるときの状態を示す。
【
図6】本発明に係るキャスターの他の実施形態を示す正面図である。
【
図7】従来のキャスターの正面図であって、障害物に当たってストップした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~4は、本発明の門扉の一実施形態である伸縮門扉を示している。本伸縮門扉は、道路と敷地の境界に設置されるものであり、
図1に示すように、左右方向に間隔をおいて地面から立設した吊元門柱14及び戸当り門柱5と、引手框2と吊元框15と複数の縦桟16,16,…をパンタグラフ状のリンク17で連結し、左右方向に伸縮自在に構成された扉体1を備える。扉体1は、吊元框15が吊元門柱14に蝶番(図示省略)で連結してあり、引手框2には開閉操作のための引手18と施錠装置19が設けてある。引手框2の下端部と中間の縦桟16の下端部とには、キャスター(自在キャスター)3,90が設けてある。引手框2の下端部に設けたキャスター3は、後述するように板バネ4を内蔵するダンパー機構付きのキャスターであり、中間の縦桟16の下端部に設けたキャスター90は、板バネを有しない従来どおりのキャスターである。
【0011】
図2は、引手框2の下端部に取付けられるキャスター3を示している。本キャスター3は、ボルトよりなる取付軸8と、取付軸8の下端部が連結されたケース21と、ケース21の内側に設けたホルダ9と、ホルダ9に回転自在に軸支した車輪10と、ケース21とホルダ9とを繋ぐ板バネ4を有している。
ケース21は、上壁22と一対の側壁23,23とを備え、上壁22の略中央位置に取付軸8の下端部を取付けてある。取付軸8の下端部と上壁22との間にはベアリング24が介在しており、取付軸8に対してケース21が回転自在となっている。側壁23,23は、進行方向後側の下部が斜めに形成してある。
ホルダ9は、取付軸8の下方に位置しており、上壁25と一対の側壁26,26を有しており、側壁26,26はケース21の斜めの縁27から進行方向後側に向けて突出し、その先端部に車輪10の軸11が設けてある。車輪の軸11は、取付軸8に対して進行方向後側にずれた位置にある。
板バネ4は、鋭角に曲げてあって、屈曲部28が取付軸8に対して進行方向前側に位置している。板バネ4は、一方の片12が取付軸8の真下のケース21の上壁22の下面にリベット29で取付けてあり、他方の片13がホルダ9の上面にリベット29で取付けてある。
ケース21の側壁23,23間には軸30が取付けてあり、ホルダ9の側壁26,26には軸30の径よりも大きい円形の孔31が設けてあり、その孔31に軸30を通すことでホルダ9の可動範囲を規制している。板バネ4は、
図2(b)に示すように、ホルダ側壁26の孔31の斜め上側の縁に軸30が当接しており、車輪10は板バネ4により常時下向きに付勢されている。
【0012】
このキャスター3は、ボルトよりなる取付軸8を引手框2の下端部に形成された雌ねじ孔に捩じ込み、取付軸8の出入りを調整した上で、取付軸8と螺合するナット32を引手框2の下端に圧着するように締め付けることで、引手框2の下部に高さ調整可能に取付けられる。
扉体1を最も縮めた状態では、キャスター3にはほとんど負荷がかかっておらず、
図5(a)と同じ状態であり、扉体1を伸ばすにつれて引手框2からキャスター3に負荷がかかり、その負荷により
図5(b)に示すように板バネ4が撓み、扉体1の下端が略水平に保持される。キャスター3の走行中、車輪が石などの障害物33に当たると、
図5(c)に示すように、板バネ4がさらに撓んで車輪10が障害物33を乗り越える。その際、キャスター3のケース21上面の高さに変化はなく、引手框2の上下動が抑えられるので、振動や騒音も抑えられる。本キャスター3は、板バネ4が取付軸8の真下にあることで、荷重を直接受けやすく、衝撃吸収性に優れる。また、板バネ4の屈曲部28がキャスター3の進行方向前側に位置していることで、キャスター3が障害物33を乗り越える際、車輪10を押し上げる力が進行方向後側に逃げやすいので、走行性が良い。
【0013】
上記のバネを有するキャスター3は、キャスター単品(無負荷時)の状態での地面からケース21上面までの高さH(
図5(a)参照)が、バネを有しないキャスター90の地面からケース上面までの高さH(
図7参照)と略同じになっている。したがって、引手框2の下部に取付けるキャスターは、バネを有するもの3とバネを有しないもの90のうちから選択自在である。既設の伸縮門扉の引手框2の下部に取付けられているバネを有しないキャスター90を、バネを有するキャスター3に交換することも可能である。
【0014】
引手框2に設けられる施錠装置19には、
図3と
図4(b)に示すように、一対のカマ7,7を有しており、カマ7,7はそれぞれ縦軸35まわりに回動可能に設けてある。戸当り門柱5には受け6が取付けてあり、受け6は、
図4(a)に示すように、カマ7,7が係合する孔36が上下方向に長く設けてある。カマ7,7は、
図4(a),(b)に示すように、受け6の孔36の上下方向の略中央に位置している。引手框2の引手18には、
図4(b)に示すように、戸先側に解錠操作用のレバー34を有している。
図3(a)は、伸縮門扉を閉じた状態を示しており、カマ7,7が受け6の孔36と係合して施錠されている。伸縮門扉を開けるために引手18に戸先側から手を掛けると、
図3(b)に示すように、レバー34が押し込まれるのに伴ってアーム38,38が動き、カマ7,7はアーム38,38に押されて縦軸35,35まわりに互いに近づく方向に回動し、受け6の孔36から抜ける。なお、伸縮門扉を閉じる際には、引手18に吊元側から手を掛けるのでレバー34は押し込まれず、
図3(c)に示すように、カマ7,7の傾斜部39,39が受け6の孔36の側縁に当たることでカマ7,7が縦軸35,35まわりに回動して孔36内に進入し、その後カマ7,7はバネ(図示省略)の力で復帰して
図3(a)に示すように孔36と係合する。
【0015】
以上に述べたように本伸縮門扉は、扉体1の引手框2の下部に設けたキャスター3が接地面の凹凸を吸収するバネ(板バネ)4を有していることで、石などの障害物33があってもキャスター3が障害物33を乗り越えることができるので、支障なく開閉することができ、走行時の振動や騒音も抑えられる。
また、引手框2は、縦軸35まわりに回動して門柱(戸当り門柱)5の受け6に係脱自在なカマ7,7を有し、受け6は、上下方向に設けてあり、カマ7,7は受け6の上下方向の略中央に位置しているので、バネ付きのキャスター3を採用したことで引手框2が多少上下に動いたとしても、施解錠が問題なく行える。
本伸縮門扉は、キャスター3のバネ4は引手框2にかかる荷重によって常時撓んで扉体1の下端を略水平に保持しており、凹凸を通過する際にバネ4がさらに撓むので、バネ4を有しないキャスター90を用いた場合と同じように扉体1の下端を略水平に保持でき、尚且つ接地面の凹凸による衝撃を吸収してスムーズに開閉できる。
さらに本伸縮門扉は、キャスターが接地面の凹凸を吸収するバネ4を有するもの3と、バネを有しないもの90のうちから選択自在であり、バネを有するキャスター3は、無負荷状態でバネを有しないキャスター90と高さHが略同じであるので、同じ扉体1を用いながら、客先の求めに応じてキャスターをバネ付きのもの3とバネを有しない通常のキャスター90のどちらかを選択でき、コストを抑えながら客先にアピールするバリエーションを追加できる。また、既設の伸縮門扉のバネを有しないキャスター90を、バネを有するキャスター3に交換することもできる。
【0016】
引手框2の下部に設けられるキャスター3は、取付軸8とホルダ9の間に板バネ4を設けたので、板バネ4が撓むことで地面の凹凸を吸収し、石などの障害物33があっても走行可能である。板バネ4が取付軸8の真下にあることで、荷重を直接受けやすい。また、ホルダ9を板バネ4でつないだだけの簡単な構造のため、キャスター3をコンパクトにでき(特に、高さを低く抑えられる)、且つ容易に安価に作ることができる。
板バネ4は、屈曲部28が取付軸8に対して進行方向前側に位置していることで、車輪10からの衝撃力が進行方向後側に逃げやすいため、走行性が良い。
さらに本キャスター3は、ケース21の側壁23,23間に設けた軸30を有し、ホルダ9の側壁26,26には、前記軸30が挿通されてホルダ9の可動範囲を規制する孔31を有しているので、板バネ4が撓みすぎたり、板バネ4がねじれたりするのを防ぎ、故障を防止できる。
本伸縮門扉は、当該キャスター3を備えることで、石などの障害物があってもキャスター3が障害物33を乗り越えることができるので、支障なく開閉することができる。また、キャスター3をコンパクトにできるので、扉体1の下端と地面との間の隙間をなるべく小さくできる。
【0017】
図6(a),(b)は、本発明に係るキャスター3の他の実施形態を示している。
図6(a)のものは、ホルダ9の側壁26,26に上方に向けて突出する当て部37を設け、板バネ4が撓んだときに当て部37がケース21の上壁22の下面に当たることで、ホルダ9の可動範囲を規制している。
図6(b)のものは、ホルダ9の側壁26,26に外側に向けて突出する当て部37を設け、板バネ4が撓んだときに当て部37がケース21の側壁23,23の斜めの縁27に当たることで、ホルダ9の可動範囲を規制している。
これらの実施形態によれば、ケース21の軸30が不要になるため、より一層容易に安価に作ることができる。
【0018】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。キャスターのバネは、板バネに限らず、コイルバネ等であってもよい。門扉は、扉体が左右方向に伸縮しない引戸門扉であってもよい。扉体の構造は問わない。カマ及び受けの形状は、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 扉体
2 引手框
3 キャスター
4 板バネ(バネ)
5 戸当たり門柱(門柱)
6 受け
7 カマ
8 取付軸
9 ホルダ
10 車輪
11 車輪の軸
12 一方の片
13 他方の片
35 縦軸