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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】皮剥器の基端部構造、および、皮剥器
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20240710BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20240710BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H02G1/12 026
B26B27/00 G
B26D3/00 603Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019210241
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021083247
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390031934
【氏名又は名称】日本リーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】佃 敏明
(72)【発明者】
【氏名】中曽 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩間 保
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 智春
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02854245(EP,A2)
【文献】登録実用新案第3151876(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 27/00
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮剥対象物の心線の端部の位置を位置決めするストッパと、
前記ストッパをガイドし、且つ、ワンウェイクラッチ機構の構成要素ではないストッパガイドと、
前記ストッパガイドよりも基端側に配置され、ストッパガイドとは異なる構成であり且つ皮剥器刃部に回転力を付与する第1操作部と、
前記第1操作部が前記皮剥器刃部に対して第1回転方向に相対回転することを禁止するとともに、前記第1操作部が前記皮剥器刃部に対して前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に相対回転することを許容するワンウェイクラッチ機構と
を具備する
皮剥器の基端部構造。
【請求項2】
皮剥器基端部から皮剥器先端部に向かう方向を第1方向と定義するとき、
前記第1操作部には鍔部が配置され、
前記鍔部は、作業者が前記第1方向に向かう方向の力を付与することを許容する被押圧面を有する
請求項1に記載の基端部構造。
【請求項3】
前記ストッパの位置を調整する第2操作部を更に具備し、
前記第2操作部は、前記ストッパガイドの外周面、および、前記鍔部の前記第1方向側の面である第1面を含む面によって規定される環状の凹部内に配置される
請求項2に記載の基端部構造。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチ機構は、無段階式のワンウェイクラッチ機構である
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基端部構造。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチ機構は、前記第1操作部の内部に配置される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基端部構造
【請求項6】
前記ワンウェイクラッチ機構は、
内側部材と、
前記内側部材の外側に配置される外側部材と
を備え、
前記外側部材は、前記内側部材に対して前記第1回転方向に相対回転不能、かつ、前記内側部材に対して前記第2回転方向に相対回転可能であり、
前記外側部材は前記第1操作部に支持されているか、あるいは、前記外側部材は前記第1操作部と一体的に形成されている
請求項5に記載の基端部構造。
【請求項7】
金属部を具備し、
前記金属部の表面の少なくとも一部は、カラーコーティング層によって覆われている
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基端部構造。
【請求項8】
前記第1操作部は、非金属製部分を有し、
前記非金属製部分は、前記第1操作部の側面の少なくとも一部と、前記第1操作部の基端側端面の少なくとも一部を構成する
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基端部構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基端部構造と、
前記皮剥器刃部を有する先端部構造と
を具備し、
前記基端部構造と前記先端部構造とは互いに分離不能であるか、あるいは、互いに分離可能である
皮剥器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮剥器の基端部構造、および、皮剥器に関する。
【背景技術】
【0002】
電線(例えば、高圧ケーブル)等の皮剥対象物の被覆層を剥ぎ取る皮剥器が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、絶縁被覆剥取工具が開示されている。特許文献1に記載の絶縁被覆剥取工具は、絶縁電線の端部が挿入される大径の挿入側筒状部と、絶縁体が剥ぎ取られた導体が送り出される小径の送出側筒状部とを備える。送出側筒状部の内側には、剥ぎ取り長さを調整するためのストッパーが配置されている。また、当該ストッパーを固定する固定ネジ部材が、送出側筒状部から外部に向かって突出するように配置されている。
【0004】
特許文献1に記載の絶縁被覆剥取工具では、作業者が送出側筒状部を把持して絶縁被覆剥取作業を行うと、作業者の手と、固定ネジ部材とが干渉する。その結果、固定ネジ部材が移動して、固定ネジ部材によって固定されるストッパーの位置が変化する可能性がある。
【0005】
他方、特許文献1に記載の絶縁被覆剥取工具では、作業者が挿入側筒状部を把持して絶縁被覆剥取作業を行うと、作業者の手と、挿入側筒状部から排出される剥取屑とが干渉する。その結果、絶縁被覆剥取作業が阻害される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3151876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮剥対象物の心線の端部の位置を位置決めするストッパが意図せずして移動することを防止可能な皮剥器の基端部構造、および、皮剥器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す皮剥器の基端部構造、および、皮剥器に関する。
【0009】
(1)皮剥対象物の心線の端部の位置を位置決めするストッパと、
前記ストッパをガイドするストッパガイドと、
前記ストッパガイドよりも基端側に配置され、皮剥器刃部に回転力を付与する第1操作部と、
前記第1操作部が前記皮剥器刃部に対して第1回転方向に相対回転することを禁止するとともに、前記第1操作部が前記皮剥器刃部に対して前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に相対回転することを許容するワンウェイクラッチ機構と
を具備する
皮剥器の基端部構造。
(2)皮剥器基端部から皮剥器先端部に向かう方向を第1方向と定義するとき、
前記第1操作部には鍔部が配置され、
前記鍔部は、作業者が前記第1方向に向かう方向の力を付与することを許容する被押圧面を有する
上記(1)に記載の基端部構造。
(3)前記ストッパの位置を調整する第2操作部を更に具備し、
前記第2操作部は、前記ストッパガイドの外周面、および、前記鍔部の前記第1方向側の面である第1面を含む面によって規定される環状の凹部内に配置される
上記(2)に記載の基端部構造。
(4)前記ワンウェイクラッチ機構は、無段階式のワンウェイクラッチ機構である
上記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の基端部構造。
(5)前記ワンウェイクラッチ機構は、前記第1操作部の内部に配置される
上記(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の基端部構造
(6)前記ワンウェイクラッチ機構は、
内側部材と、
前記内側部材の外側に配置される外側部材と
を備え、
前記外側部材は、前記内側部材に対して前記第1回転方向に相対回転不能、かつ、前記内側部材に対して前記第2回転方向に相対回転可能であり、
前記外側部材は前記第1操作部に支持されているか、あるいは、前記外側部材は前記第1操作部と一体的に形成されている
上記(5)に記載の基端部構造。
(7)金属部を具備し、
前記金属部の表面の少なくとも一部は、カラーコーティング層によって覆われている
上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の基端部構造。
(8)前記第1操作部は、非金属製部分を有し、
前記非金属製部分は、前記第1操作部の側面の少なくとも一部と、前記第1操作部の基端側端面の少なくとも一部を構成する
上記(1)乃至(7)のいずれか一つに記載の基端部構造。
(9)上記(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の基端部構造と、
前記皮剥器刃部を有する先端部構造と
を具備し、
前記基端部構造と前記先端部構造とは互いに分離不能であるか、あるいは、互いに分離可能である
皮剥器。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、皮剥対象物の心線の端部の位置を位置決めするストッパが意図せずして移動することを防止可能な皮剥器の基端部構造、および、皮剥器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態における皮剥器を模式的に示す概略縦断面図である。
図2図2は、第1の実施形態における皮剥器を模式的に示す概略縦断面図である。
図3図3は、第1の実施形態における皮剥器を模式的に示す概略斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態の変形例における皮剥器を模式的に示す概略縦断面図である。
図5図5は、第1の実施形態における皮剥器を模式的に示す概略2面図である。
図6図6は、ワンウェイクラッチ機構の一例を示す概略断面図である。
図7図7は、ワンウェイクラッチ機構の他の一例を示す概略断面図であり、図1におけるA-A矢視断面図である。
図8図8は、ワンウェイクラッチ機構の更に他の一例を示す概略断面図である。
図9図9は、ワンウェイクラッチ機構の更に他の一例を示す概略断面図である。
図10図10は、第1操作部の一例を模式的に示す概略断面図である。
図11図11は、非金属製部分の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図12図12は、第1の実施形態における皮剥器を模式的に示す分解断面図である。
図13図13は、第2の実施形態における皮剥器を模式的に示す概略縦断面図である。
図14図14は、実施形態における皮剥器を模式的に示す概略2面図である。
図15図15は、実施形態の変形例における皮剥器を模式的に示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施形態における皮剥器1の基端部構造、および、皮剥器1について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0013】
(方向の定義)
本明細書において、皮剥器1の基端部PP(Proximal Portion)から皮剥器1の先端部DP(Distal Portion)に向かう方向を第1方向DR1と定義する。また、第1方向DR1と反対の方向を第2方向DR2と定義する。
【0014】
(用語の定義)
本明細書において、皮剥器の「長手方向中心軸」とは、皮剥器のハウジング部70に設けられた第1孔部73hの中心軸、または、ストッパガイド14に設けられた第2孔部14hの中心軸を意味する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態における皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aについて説明する。図1および図2は、第1の実施形態における皮剥器1Aを模式的に示す概略縦断面図である。図1は、皮剥器1Aに皮剥対象物Wが配置される前の状態を示し、図2は、皮剥器1Aに皮剥対象物Wが配置された後の状態を示す。図3は、第1の実施形態における皮剥器1Aを模式的に示す概略斜視図である。図4は、第1の実施形態の変形例における皮剥器1Aを模式的に示す概略縦断面図である。図5は、第1の実施形態における皮剥器1Aを模式的に示す概略2面図である。図5の上側には、概略平面図が記載され、図5の下側には、概略側面図が記載されている。図6は、ワンウェイクラッチ機構M1の一例を示す概略断面図(長手方向中心軸CLに垂直な断面における断面図)である。図7は、ワンウェイクラッチ機構M2の他の一例を示す概略断面図であり、図1におけるA-A矢視断面図である。図8は、ワンウェイクラッチ機構M3の更に他の一例を示す概略断面図(長手方向中心軸CLに垂直な断面における断面図)である。図9は、ワンウェイクラッチ機構M4の更に他の一例を示す概略断面図(長手方向中心軸CLに垂直な断面における断面図)である。図10は、第1操作部20の一例を模式的に示す概略断面図である。図11は、非金属製部分22の一例を模式的に示す概略斜視図である。図12は、第1の実施形態における皮剥器1Aを模式的に示す分解断面図である。
【0016】
第1の実施形態における皮剥器1Aは、基端部PPを構成する基端部構造と、先端部DPを構成する先端部構造とを有する。基端部構造は、例えば、皮剥器刃部72が取り付けられるハウジング部70よりも第2方向DR2側の部分の構造を意味し、先端部構造は、ハウジング部70の構造(あるいは、ハウジング部70の構造およびハウジング部70よりも第1方向DR1側の部分の構造)を意味する。図1に記載の例では、基端部PPを構成する基端部構造と先端部DPを構成する先端部構造(より具体的には、ハウジング部70)とが互いに分離不能である。代替的に、基端部構造と先端部構造とは互いに分離可能であってもよい。
【0017】
皮剥器1Aの基端部構造は、ストッパ12と、ストッパガイド14と、第1操作部20と、ワンウェイクラッチ機構Mとを具備する。また、皮剥器1Aの先端部構造は、皮剥器刃部72と、ハウジング部70とを具備する。
【0018】
図2に例示されるように、ストッパ12は、皮剥対象物Wの心線W1の端部の位置を位置決めする。より具体的には、ストッパ12は、心線W1がストッパ12のストッパ面12aを超えて第2方向DR2側に移動することを防止する。ストッパ12は、皮剥対象物Wの皮剥長さL1(換言すれば、心線W1の露出部の長さ)を調整する部材であると言うこともできる。
【0019】
皮剥対象物Wは、例えば、導体である心線W1と、心線W1を覆う被覆層W2(より具体的には、絶縁被覆層)とを含む。皮剥対象物Wが、高圧ケーブルである場合、被覆層W2はかなり硬質である。特に、冬場は、被覆層W2が硬質化する傾向がある。硬質で厚さの厚い被覆層W2を剥ぎ取るためには、大きな力が必要である。このため、従来の皮剥器を用いた被覆層の剥ぎ取り作業では、作業者の作業負担が大きかった。また、非熟練の作業者が剥ぎ取り作業を行うと、剥ぎ取りの品質にムラが生じやすかった。第1の実施形態における皮剥器1Aは、このような問題を解決可能である。
【0020】
図1に例示されるように、ストッパガイド14は、ストッパ12をガイドする部材である。ストッパガイド14は、1つの部品によって構成されていてもよく、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。
【0021】
図1に記載の例では、ストッパガイド14は、ストッパ12を第1方向DR1に沿う方向にガイドする孔部(第2孔部14h)を有する。ストッパ12が、ストッパガイド14に沿って第1方向DR1側に移動調整されると、皮剥対象物Wの皮剥長さL1は短くなり、ストッパ12が、ストッパガイド14に沿って第2方向DR2に移動調整されると、皮剥対象物Wの皮剥長さL1は長くなる。なお、ストッパガイド14のうち、ストッパ面12aよりも第1方向DR1側の部分は、心線W1を収容する心線収容部として機能する。ストッパ12が、ストッパガイド14に沿って位置調整されると、心線収容部の長さも調整される。
【0022】
第1操作部20は、皮剥器刃部72に、長手方向中心軸CLまわりの回転力を付与する。換言すれば、第1操作部20と皮剥器刃部72とは、回転力を伝達可能なように機械的に接続されている。例えば、第1操作部20が、第1回転方向R1に回転操作されると、皮剥器刃部72も第1回転方向R1に回転する。
【0023】
図1に記載の例では、第1回転方向R1は、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLまわりの1つの回転方向を意味し、第1回転方向R1は、例えば、第1方向DR1に向かう方向に見て、長手方向中心軸CLまわりの時計回りの回転方向を意味する。
【0024】
ワンウェイクラッチ機構Mは、第1操作部20が皮剥器刃部72に対して第1回転方向R1に相対回転することを禁止する。この場合、第1操作部20が、第1回転方向R1に回転操作されると、回転力が、ワンウェイクラッチ機構Mを含む操作力伝達機構を介して、皮剥器刃部72に伝達される。その結果、皮剥器刃部72が第1操作部20とともに第1回転方向R1に回転する。
【0025】
また、ワンウェイクラッチ機構Mは、第1操作部20が皮剥器刃部72に対して第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に相対回転することを許容する。この場合、第1操作部20が、第2回転方向R2に回転操作されると、回転力は、皮剥器刃部72には伝達されない。その結果、皮剥器刃部72の位置が維持された状態で、第1操作部20を第2回転方向R2に回転させることができる。
【0026】
第1の実施形態における皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aでは、第1操作部20が、ストッパガイド14よりも基端側(換言すれば、第2方向DR2側)に配置されている。このため、作業者は、第1操作部20を把持して皮剥作業を行うことができる。また、第1操作部20を把持する作業者の手と、ストッパ12またはストッパガイド14あるいはストッパ12の位置を調整する第2操作部16との干渉が抑制される。こうして、皮剥対象物Wの心線W1の端部の位置を位置決めするストッパ12が意図せずして移動することが防止される。
【0027】
また、従来の皮剥器を用いた作業では、作業者は、(1)皮剥器を掴む工程、(2)皮剥器を第1回転方向R1に回転させる工程、(3)皮剥器から手を離す工程、(4)別の位置で皮剥器を掴む工程を実行する必要があり、また、作業者は、上述の(2)乃至(4)の工程を繰り返し実行する必要があった。これに対し、第1の実施形態における皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aは、ワンウェイクラッチ機構Mを備える。このため、作業者は、第1操作部20から手を離すことなく、第1操作部20を第1回転方向R1に回転させる第1回転操作と、第1操作部20を第2回転方向R2に回転させる第2回転操作とを交互に繰り返すことにより、皮剥作業を実施することができる。よって、皮剥作業の効率が向上する。
【0028】
また、第1の実施形態における皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aでは、第1操作部20が、ストッパガイド14よりも基端側に配置されており、かつ、皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aは、ワンウェイクラッチ機構Mを備える。このため、作業者が、第1回転操作と第2回転操作とを交互に繰り返し実行する際に、皮剥対象物Wの心線W1の端部の位置を位置決めするストッパ12が意図せずして移動することが防止される。
【0029】
上述の効果は、ストッパ12の位置を調整する第2操作部16が、ストッパガイド14に配置されている場合に、特に顕著である。
【0030】
図1に記載の例では、第2操作部16は、棒状の連結部15を介して、ストッパ12に連結されている。第2操作部16と連結部15とは一体的に形成された1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。
【0031】
図3に例示されるように、ストッパガイド14は、連結部15をスライド可能にガイドするガイド孔141hを有していてもよい。ガイド孔141hは、例えば、第1方向DR1に沿って延在する長孔である。
【0032】
図3に記載の例では、第2操作部16が、第1方向DR1に操作されると、ストッパ12(および連結部15)の位置が第1方向DR1に移動する。また、第2操作部16が、第2方向DR2に操作されると、ストッパ12(および連結部15)の位置が第2方向DR2に移動する。
【0033】
第2操作部16は、ドライバ等の工具を使用することなく作業者の手によって、第2操作部16の固定解除動作、第2操作部16のスライド動作、第2操作部16の固定動作を実行可能な操作部であることが好ましい。第2操作部16は、例えば、操作つまみである。
【0034】
ストッパ12の位置を調整する第2操作部16が、ストッパガイド14に配置されている場合、上述の特許文献1(登録実用新案第3151876号公報)から把握されるように、作業者の手が当該第2操作部に触れやすい。これに対し、第1の実施形態では、第1操作部20が、ストッパガイド14よりも基端側(換言すれば、第2方向DR2側)に配置されているため、第1操作部20を把持する作業者の手が、第2操作部16に触れることが抑制される。
【0035】
ただし、図4に例示されるように、実施形態において、ストッパ12の位置を調整する第2操作部16が、第1操作部20よりも基端側に配置されることは排除されない。また、第2操作部16が、第1操作部20の内部に配置されることも排除されない。
【0036】
図4に記載の例では、第2操作部16に連結された連結部15と第1操作部20とがロック機構等の係合機構(図4には図示されず。)を介して係合する。実施形態においては、第1操作部20を把持する作業者の手が、実質的に、第2操作部16に触れないように構成されていることが好ましい。代替的に、あるいは、付加的に、実施形態においては、第1操作部20を把持する作業者の手が第2操作部16に触れても、ストッパ12の位置が変化しないように構成されていることが好ましい。
【0037】
図1乃至図12を参照して、第1の実施形態において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0038】
(鍔部40)
第1の実施形態における皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aは、鍔部40を備えていてもよい。図1に記載の例では、鍔部40は、第1操作部20(より具体的には、第1操作部20の第1方向DR1側の端部)に配置されている。
【0039】
鍔部40は、作業者の指がストッパガイド14(あるいは、ストッパガイド14に配置された第2操作部16)に触れることを抑制する。この場合、皮剥対象物Wの心線W1の端部の位置を位置決めするストッパ12が意図せずして移動することが、より一層効果的に防止される。
【0040】
図1(皮剥器1Aの長手方向中心軸CLをとおる縦断面図)において、第2操作部16の高さ(すなわち、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLからの高さ)は、鍔部40の高さ(すなわち、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLからの高さ)よりも小さいことが好ましい。この場合、万が一、作業者の指が鍔部40を超えてストッパガイド14側に移動した場合であっても、作業者の指と第2操作部16との間の干渉が抑制される。また、皮剥器1Aが床、地面等の載置面に載置されたとき、第2操作部16と載置面とが互いに干渉することが抑制される。当該構成により、皮剥対象物Wの心線W1の端部の位置を位置決めするストッパ12が意図せずして移動することが、より一層効果的に抑制される。
【0041】
図1に記載の例では、鍔部40は、作業者が第1方向DR1に向かう方向の力を付与することを許容する被押圧面40aを有する。被押圧面40aは、皮剥器1Aの基端側を向く面(換言すれば、概ね第2方向DR2を向く面)である。
【0042】
被押圧面40aが第1方向DR1に押されることにより、皮剥対象物Wが皮剥器1Aに効果的に押し込まれる。その結果、第1操作部20を第1回転方向R1に回転させることによって得られる剥離被覆層(すなわち、心線W1から剥離した被覆層W2)の幅が大きくなる。こうして、効率的に短時間で皮剥作業を完了することが可能となる。
【0043】
以上のとおり、鍔部40は、作業者の指が、ストッパガイド14(あるいは、ストッパガイド14に配置された第2操作部16)に触れることを抑制する効果と、作業者が第1方向DR1に向かう力を付与し易くする効果という異なる2つの効果を奏する。
【0044】
鍔部40がない場合には、作業者が第1操作部20に付与する力が大きくなるほど、作業者の指が、ストッパガイド14に向かって滑り易くなる。他方、作業者が第1操作部20に付与する力が小さくなるほど、剥離被覆層の幅が小さくなる。これに対し、鍔部40は、作業者が第1操作部20に付与する力を増大させることと、作業者の指がストッパガイド14に向かって移動するのを防ぐこととを、同時に実現する構成であると言える。
【0045】
なお、鍔部40の被押圧面40aは、作業者の右手親指の側部および右手人指し指の側部によって押圧されてもよい。例えば、作業者が、皮剥器1Aの外側面(側周面)に正対している場合には、鍔部40の被押圧面40aが、作業者の右手親指の側部および右手人指し指の側部によって押圧されることが想定される。
【0046】
代替的に、鍔部40の被押圧面40aは、作業者の指先(例えば、親指の指先、人指し指の指先、および/または中指の指先)によって押圧されてもよい。例えば、作業者が、皮剥器1Aの基端側端面20eに正対している場合には、鍔部40の被押圧面40aが、作業者の指先によって押圧されることが想定される。
【0047】
第2操作部16が、ストッパガイド14に配置される場合には、当該第2操作部16は、ストッパガイド14の外周面14a、および、鍔部40の第1方向DR1側の面である第1面40bを含む面によって規定される環状の凹部140内に配置されることが好ましい。図1に記載の例では、第2操作部16が配置される凹部140は、ハウジング部70の第2方向DR2側の端面70e、ストッパガイド14の外周面14a、および、上述の第1面40bによって規定される環状の凹部である。
【0048】
(窓部13)
図5に例示されるように、ストッパガイド14は、ストッパ12のストッパ面12aを視認可能な窓部13を備えていてもよい。なお、ストッパ面12aは、皮剥対象物Wの心線W1の端部と接触することとなる面である。図5に記載の例では、ストッパ面12aは、第1方向DR1を向く面である。
【0049】
図5に記載の例では、窓部13は、ストッパガイド14に形成された孔部142hによって構成されている。孔部142hは、例えば、第1方向DR1に沿う方向に延在する長孔部である。窓部13(孔部142h)と、ガイド孔141hとは、平行に配置されていることが好ましい。
【0050】
ストッパガイド14が窓部13を備える場合、作業者が、皮剥対象物Wの心線W1の端部がストッパ12に接触するまで挿入されたか否かを容易に認識することができる。このため、作業者は、適切なタイミングで、皮剥作業を終了させることができる。
【0051】
第1操作部20が、ストッパガイド14よりも基端側に配置される場合には、第1操作部20を把持する作業者の手と、窓部13とが干渉することが抑制される。換言すれば、作業者の手によって、ストッパ面12aの視認が妨げられることがない。なお、第1操作部20に鍔部40が設けられる場合には、第1操作部20を把持する作業者の手と、窓部13とが干渉することがより一層効果的に抑制される。
【0052】
(目盛り17)
ストッパガイド14は、皮剥長さL1の設定値を示す目盛り17を備えていてもよい。図5に記載の例では、目盛り17と、窓部13とが、隣接配置されている。このため、作業者は、ストッパ12(より具体的には、ストッパ面12a)の位置と、目盛り17(換言すれば、皮剥長さL1の設定値)との関係を容易に認識することができる。図5に記載の例では、皮剥長さL1の設定値が、5.5cmとなるように、ストッパ12の位置が調整されている。
【0053】
図5に記載の例では、ストッパガイド14に形成された孔部142hの側壁142wに目盛り17が設けられている。この場合、目盛り17が、ストッパガイド14の内周面の近傍に配置されることとなる(換言すれば、目盛り17が、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLにより近い位置に配置されることとなる。よって、作業者は、ストッパ12の位置と、目盛り17との関係をより一層容易に認識することができる。
【0054】
(ワンウェイクラッチ機構M)
図6を参照して、第1の実施形態(または、後述の第2の実施形態)において採用可能なワンウェイクラッチ機構Mの第1例について説明する。
【0055】
図6に記載のワンウェイクラッチ機構M1は、内側部材51と、内側部材51の外側に配置される外側部材56とを備える。
【0056】
図6に記載の例では、内側部材51は、皮剥器の長手方向中心軸CLまわりに環状に配置されたラチェット歯車51aと、ラチェット歯車51aを支持する軸部材51bとを含む。内側部材51(より具体的には、軸部材51b)は、皮剥器の長手方向中心軸CLに沿って延在する。
【0057】
図6に記載の例では、外側部材56は、内側部材51(より具体的には、ラチェット歯車51a)に向かう方向に付勢された係合部材56aを含む。係合部材56aは、第1操作部20の少なくとも一部を構成する第1部分21によって支持される。また、図6に記載の例では、外側部材56と第1部分21との間に、ばね等の付勢部材57が配置されており、当該付勢部材57は、外側部材56を内側部材51に向かう方向に付勢する。
【0058】
図6に記載の例では、第1部分21と内側部材51(より具体的には、軸部材51b)との間に、ベアリング部材54が配置されている。ベアリング部材54の存在により、内側部材51に対する第1部分21の相対回転が円滑に行われる。
【0059】
図6に記載の例では、第1ステップST1において、第1操作部20が第1回転方向R1に回転操作されると、外側部材56と、外側部材56に係合する内側部材51(より具体的には、ラチェット歯車51a)とが一体的に、第1回転方向R1に回転する。図1に記載の例では、皮剥器刃部72が、ハウジング部70、ストッパガイド14等を介して、内側部材51に連結されている。このため、内側部材51が第1回転方向R1に回転すると、皮剥器刃部72も第1回転方向R1に回転する。その結果、皮剥器刃部72によって皮剥対象物Wの皮剥(換言すれば、心線W1からの被覆層W2の分離)が行われる。
【0060】
他方、図6に記載の例では、第2ステップST2において、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作されると、外側部材56は、内側部材51のラチェット歯車51aを乗り越えて、第2回転方向R2に回転する。このため、内側部材51(ひいては、皮剥器刃部72)の回転が抑制された状態で、第1操作部20および外側部材56が、第2回転方向R2に回転する。よって、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作される時には、皮剥器刃部72による皮剥対象物Wの皮剥は実行されない。
【0061】
図7を参照して、第1の実施形態(または、後述の第2の実施形態)において採用可能なワンウェイクラッチ機構Mの第2例について説明する。
【0062】
図7に記載のワンウェイクラッチ機構M2は、内側部材51と、内側部材51の外側に配置される外側部材56とを備える。
【0063】
図7に記載の例では、内側部材51は、皮剥器の長手方向中心軸CLに沿って延在する軸部材51bを含む。
【0064】
図7に記載の例では、外側部材56は、ベース部材56cと、ローラまたはボール等の介装部材56d(interposed member)とを備える。ベース部材56cは、例えば、中央部に孔が形成されたリング状の部材である。ベース部材56cは、上述の第1部分21に支持(より具体的には、固定)されていてもよいし、第1部分21と一体的に形成されてもよい。介装部材56dは、ベース部材56cと内側部材51との間に介装される。また、介装部材56dは、ベース部材56cの傾斜面560(内側部材51の表面に漸近するように傾斜する傾斜面)に向けて、付勢部材57によって付勢される。その結果、介装部材56dは、デフォルト状態において、傾斜面560に接触するとともに、内側部材51に接触する。付勢部材57は、例えば、コイルばね、板ばね等のばねである。
【0065】
図7に記載の例では、第1ステップST1において、第1操作部20が第1回転方向R1に回転操作されると、介装部材56dは、ベース部材56cと内側部材51との間の間隔がより狭い領域に向かって移動する。その結果、介装部材56dは楔部材として機能し、外側部材56(ベース部材56cおよび介装部材56d)と、内側部材51とが一体的に、第1回転方向R1に回転する。図1に記載の例では、皮剥器刃部72が、ハウジング部70、ストッパガイド14等を介して、内側部材51に連結されている。このため、内側部材51が第1回転方向R1に回転すると、皮剥器刃部72も第1回転方向R1に回転する。その結果、皮剥器刃部72によって皮剥対象物Wの皮剥(換言すれば、心線W1からの被覆層W2の分離)が行われる。
【0066】
他方、図7に記載の例では、第2ステップST2において、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作されると、介装部材56dは、ベース部材56cと内側部材51との間の間隔がより広い領域に向かって移動する。その結果、介装部材56dは楔部材としての機能を発揮せず、外側部材56(ベース部材56cおよび介装部材56d)は、内側部材51に対して相対的に、第2回転方向R2に回転する。こうして、内側部材51(ひいては、皮剥器刃部72)の回転が抑制された状態で、第1操作部20および外側部材56が、第2回転方向R2に回転する。よって、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作される時には、皮剥器刃部72による皮剥対象物Wの皮剥は実行されない。
【0067】
図8を参照して、第1の実施形態(または、後述の第2の実施形態)において採用可能なワンウェイクラッチ機構Mの第3例について説明する。
【0068】
図8に記載のワンウェイクラッチ機構M3は、内側部材51と、内側部材51の外側に配置される外側部材56とを備える。
【0069】
図8に記載の例では、内側部材51は、軸部材51bと、ローラまたはボール等の介装部材51d(interposed member)とを備える。軸部材51bは、皮剥器の長手方向中心軸CLに沿って延在する。介装部材51dは、軸部材51bと外側部材56との間に介装される。また、介装部材51dは、軸部材51bの傾斜面510(外側部材56の内表面に漸近するように傾斜する傾斜面)に向けて、付勢部材52によって付勢される。その結果、介装部材51dは、デフォルト状態において、傾斜面510に接触するとともに、外側部材56に接触する。付勢部材52は、例えば、コイルばね、板ばね等のばねである。
【0070】
図8に記載の例では、外側部材56は、ベース部材56cを備える。ベース部材56cは、例えば、中央部に孔が形成されたリング状の部材である。ベース部材56cは、上述の第1部分21に支持(より具体的には、固定)されていてもよいし、第1部分21と一体的に形成されてもよい。
【0071】
図8に記載の例では、第1ステップST1において、第1操作部20が第1回転方向R1に回転操作されると、介装部材51dは、外側部材56と軸部材51bとの間の間隔がより狭い領域に向かって移動する。その結果、介装部材51dは楔部材として機能し、外側部材56と、内側部材51(軸部材51bおよび介装部材51d)とが一体的に、第1回転方向R1に回転する。図1に記載の例では、皮剥器刃部72が、ハウジング部70、ストッパガイド14等を介して、内側部材51に連結されている。このため、内側部材51が第1回転方向R1に回転すると、皮剥器刃部72も第1回転方向R1に回転する。その結果、皮剥器刃部72によって皮剥対象物Wの皮剥(換言すれば、心線W1からの被覆層W2の分離)が行われる。
【0072】
他方、図8に記載の例では、第2ステップST2において、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作されると、介装部材51dは、外側部材56と軸部材51bとの間の間隔がより広い領域に向かって移動する。その結果、介装部材51dは楔部材としての機能を発揮せず、外側部材56は、内側部材51に対して相対的に、第2回転方向R2に回転する。こうして、内側部材51(ひいては、皮剥器刃部72)の回転が抑制された状態で、第1操作部20および外側部材56が、第2回転方向R2に回転する。よって、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作される時には、皮剥器刃部72による皮剥対象物Wの皮剥は実行されない。
【0073】
図9を参照して、第1の実施形態(または、後述の第2の実施形態)において採用可能なワンウェイクラッチ機構Mの第4例について説明する。
【0074】
図9に記載のワンウェイクラッチ機構M4は、内側部材51と、内側部材51の外側に配置される外側部材56とを備える。
【0075】
図9に記載の例では、内側部材51は、皮剥器の長手方向中心軸CLに沿って延在する軸部材51bを含む。
【0076】
図9に記載の例では、外側部材56は、ベース部材56cと、ピン部材56eと、カム部材56fとを備える。ベース部材56cは、例えば、中央部に孔が形成されたリング状の部材である。図9に記載の例では、ベース部材56cは、上述の第1部分21と一体的に形成されている。代替的に、ベース部材56cは、第1部分21に固定されていてもよい。ピン部材56eは、ベース部材56cに取り付けられている。カム部材56fは、ピン部材56eのまわりを回転可能なようにピン部材56eに支持されている。また、カム部材56fの一端部561には付勢部材57の一端部が接続されている。付勢部材57は、例えば、ばね部材であり、付勢部材57の一端部は、カム部材56fに接続され、付勢部材57の他端部は、ベース部材56cに直接的または間接的に取り付けられている。
【0077】
図9に記載の例では、第1ステップST1において、第1操作部20が第1回転方向R1に回転操作されると、内側部材51とカム部材56fとの間の接触点がカム部材56fの一端部561に近づく方向に移動する。その結果、内側部材51とカム部材56fとの間の接触力が増加し、外側部材56(ベース部材56cおよびカム部材56f)と、内側部材51とが一体的に、第1回転方向R1に回転する。図1に記載の例では、皮剥器刃部72が、ハウジング部70、ストッパガイド14等を介して、内側部材51に連結されている。このため、内側部材51が第1回転方向R1に回転すると、皮剥器刃部72も第1回転方向R1に回転する。その結果、皮剥器刃部72によって皮剥対象物Wの皮剥(換言すれば、心線W1からの被覆層W2の分離)が行われる。
【0078】
他方、図9に記載の例では、第2ステップST2において、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作されると、内側部材51とカム部材56fとの間の接触点がカム部材56fの一端部561から遠ざかる方向に移動する。その結果、内側部材51とカム部材56fとの間の接触力は増加せず、外側部材56(ベース部材56cおよびカム部材56f)は、内側部材51に対して相対的に、第2回転方向R2に回転する。こうして、内側部材51(ひいては、皮剥器刃部72)の回転が抑制された状態で、第1操作部20および外側部材56が、第2回転方向R2に回転する。よって、第1操作部20が第2回転方向R2に回転操作される時には、皮剥器刃部72による皮剥対象物Wの皮剥は実行されない。
【0079】
図6乃至図9に記載の例では、上述の第1ステップST1と第2ステップST2とが繰り返し実行されることにより、皮剥対象物Wの皮剥を実行することができる。また、図6乃至図9に記載の例では、皮剥器1Aが、ワンウェイクラッチ機構Mを備えるため、第1ステップST1と第2ステップST2とが繰り返し実行される際に、作業者は、第1操作部20を把持している把持位置を変更する必要がない。このため、作業者は、迅速に、皮剥作業を実行することができる。
【0080】
また、図6乃至図9に記載の例では、第1操作部20を、皮剥器刃部72に対して相対的に第2回転方向R2に回転させるだけで、上述の第2ステップST2を実行することができる。また、図6乃至図9に記載の例では、第2ステップST2の実行中、第1操作部20を、皮剥器刃部72に対して、軸方向(第1方向DR1に沿う方向)にスライド移動させる必要がない。よって、図6乃至図9に記載の例では、第1操作部20を、往復的に回転操作するだけで、第1ステップST1(皮剥動作)と、第2ステップST2(第1操作部20の回転角度位置を、作業者が力を入れやすい位置に戻す動作)とを実行することができる。
【0081】
図6乃至図9に記載の例では、第1操作部20の回転角度位置を、作業者が力を入れやすい角度範囲内に維持した状態で、皮剥作業を実行することができる。よって、被覆層W2の厚さが厚い場合、あるいは、被覆層W2が硬い場合(特に、冬場は、夏場に比べて、被覆層W2が硬くなる傾向がある)であっても、作業者の作業負担が過度なものとならない。また、作業者は、迅速に皮剥作業を実行することができる。
【0082】
また、皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aが、ワンウェイクラッチ機構Mと、鍔部40との両方を備える場合には、作業者は、第1回転方向R1に第1操作部20に力を伝達し易く、かつ、第1方向DR1にも第1操作部20に力を伝達し易い。この場合、第1操作部20を第1回転方向R1に回転させることによって得られる剥離被覆層(すなわち、心線から剥離した被覆層)の幅を大きくすることができ、皮剥作業を更に迅速に実行することができる。
【0083】
図6に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構M1が、ラチェット式(換言すれば、段階式)のワンウェイクラッチ機構である。この場合、第1操作部20の位置調整(特に、上述の第2ステップST2を実行することによる位置調整、換言すれば、第1操作部20の回転角度位置を作業者が力を入れやすい位置に戻す際の位置調整)を細かく行うことが困難である。これに対し、図7乃至図9に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構M1が、無段階式のワンウェイクラッチ機構である。この場合、第1ステップST1を実行する際にも、第2ステップST2を実行する際にも、第1操作部20の位置調整を細かく行うことが可能である。また、ワンウェイクラッチ機構M1が、無段階式のワンウェイクラッチ機構である場合には、皮剥作業時に不要なクリック音が発生しないため、作業者は作業に集中することができる。
【0084】
また、図1に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構Mが、第1操作部20の内部に配置されている。この場合、ワンウェイクラッチ機構Mが、第1操作部20の外部に配置されている場合と比較して、皮剥器1Aの全体のサイズをコンパクトにすることができる。また、ワンウェイクラッチ機構Mが、第1操作部20の内部に配置されている場合、第1操作部20から、外側部材56を介して、内側部材51に力が伝達される際の力の伝達経路を短くすることができる。その結果、力の伝達機構をシンプルな機構にすることができるとともに、信頼性の高い機構にすることができる。
【0085】
また、ワンウェイクラッチ機構Mが、第1操作部20の内部に配置されている場合、ワンウェイクラッチ機構Mが、第1操作部20の外部に配置されている場合と比較して、皮剥器1Aの全体の重心位置が第1操作部20により近い位置となる。皮剥器1Aの全体の重心位置が第1操作部20に近くなることにより、第1操作部20の操作性が向上する。
【0086】
(カラーコーティング層CC)
図3に記載の例では、皮剥器1Aの基端部構造、および、皮剥器1Aは、金属部MPを有する。図1に記載の例では、ハウジング部70は、金属部MPである。また、ストッパガイド14は、金属部MPである。更に、第1操作部20の第1部分21も金属部MPである。
【0087】
金属部MPの表面の少なくとも一部は、カラーコーティング層CCによって覆われていてもよい。図3に記載の例では、第1操作部20の第1部分21がカラーコーティング層CCによって覆われている。カラーコーティング層CCは、例えば、メッキ層である。金属部MPの表面の少なくとも一部が、カラーコーティング層CCによって覆われる場合、カラーコーティング層CCの色によって、皮剥器1Aのタイプを識別することができる。
【0088】
例えば、第1のタイプの皮剥器1Aのハウジング部70に設けられた第1孔部73hの内径が第1内径であり、カラーコーティング層CCの色が第1カラーである場合を想定する。この場合、第1孔部73hの内径が第1内径よりも大きな第2内径である皮剥器(第2のタイプの皮剥器)において、カラーコーティング層CCの色として、第1カラーとは異なる色の第2カラーが採用される。
【0089】
上述の例では、カラーコーティング層CCが、第1操作部20の第1部分21の表面の少なくとも一部を覆うように配置される例について説明された。代替的に、あるいは、付加的に、カラーコーティング層CCが、ハウジング部70の表面の少なくとも一部を覆うように配置されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、カラーコーティング層CCが、ストッパガイド14の表面の少なくとも一部を覆うように配置されてもよい。
【0090】
(第1操作部20)
図10および図11を参照して、第1操作部20の一例について説明する。
【0091】
図10に記載の例では、第1操作部20は、非金属製部分22を有する。非金属製部分22は、例えば、樹脂、または、ゴムによって形成される。図10に記載の例では、非金属製部分22は、第1操作部20の側面20sの少なくとも一部と、第1操作部20の基端側端面20eの少なくとも一部(より好ましくは、第1操作部20の基端側端面20eの全体)を構成する。
【0092】
第1操作部20の側面20sの少なくとも一部が非金属製部分22(樹脂製部分またはゴム製部分)であって、かつ、親指と人指し指とで輪が作られるように第1操作部20が右手で握られる場合を想定する。この場合、人指し指、中指、薬指のうちの少なくとも一つと非金属製部分22とが接触する。よって、第1操作部20のグリップ特性が向上する。
【0093】
図10に記載の例では、第1操作部20の側面20sは金属部MPである第1部分21と、第1部分21より基端側に配置された非金属製部分22とを含む。この場合、親指と人指し指とで輪が作られるように第1操作部20が右手で握られると、人指し指が、金属部MPに接触し、中指および薬指が非金属製部分22に接触する。
【0094】
次に、第1操作部20の基端側端面20eの少なくとも一部が非金属製部分22(樹脂製部分またはゴム製部分)であって、かつ、手の掌部が基端側端面20eと接触し指先が第1方向DR1を向くように第1操作部20が右手で握られる場合を想定する。この場合、手の掌部が非金属製部分22と接触する。よって、第1操作部20のグリップ特性が向上する。
【0095】
以上のとおり、第1操作部20の側面20sの少なくとも一部が非金属製であり、かつ、第1操作部20の基端側端面20eの少なくとも一部が非金属製である場合には、第1操作部20を握る握り方に関わらず(換言すれば、作業者の立ち位置に関わらず)、第1操作部20の好適なグリップ特性が確保される。
【0096】
図10に記載の例では、第1操作部20の基端側端面20eは、平坦面Fsである。基端側端面20eの全体、あるいは、基端側端面20eの大部分が平坦面Fsである場合、手の掌部と基端側端面20eとを好適に接触させることが可能となる。代替的に、基端側端面20eは、第2方向DR2側に凸である湾曲面(例えば、略半球状の面)であってもよい。この場合、第1操作部20が把持される時、基端側端面20e(第2方向DR2側に凸である湾曲面)を、手の掌部によって好適に包み込むことができる。
【0097】
また、図10に記載の例では、第1操作部20の最も基端側の第1側面20s-1が、第1方向DR1に向かうにつれて、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLから離れる方向に傾斜する傾斜面であり、第1側面20s-1よりも第1方向DR1側に配置される第2側面20s-2が、第1方向DR1に向かうにつれて、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLに近づく方向に傾斜する傾斜面である。この場合、手の掌部が基端側端面20eと接触し指先が第1方向DR1を向くように第1操作部20が右手で握られた時、手の内側が、第1側面20s-1および第2側面20s-2の形状に馴染みやすい。また、図10に記載の例では、基端側端面20eに加えて、第1側面20s-1および第2側面20s-2が非金属製(例えば、樹脂製またはゴム製)である。よって、第1操作部20のグリップ特性が向上する。なお、第1側面20s-1および第2側面20s-2は、それぞれ、環状の側面である。
【0098】
図10に記載の例では、第2側面20s-2よりも第1方向DR1側に配置される第3側面20s-3が、第1方向DR1に向かうにつれて、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLに近づく方向に傾斜する傾斜面である。第3側面20s-3は、環状の側面であり、金属製である。また、図10に記載の例では、第3側面20s-3よりも第1方向DR1側に上述の鍔部40が配置されている。
【0099】
図11に例示されるように、非金属製部分22は、有底筒状の部材(換言すれば、キャップ部材)によって構成されてもよい。この場合、非金属製部分22の内側に、金属製の第1部分21を容易に配置することができる。なお、非金属製部分22と、金属製の第1部分21とは、任意の固着手段により結合される。
【0100】
図11に例示されるように、第1側面20s-1または第2側面20s-2には、少なくとも1つの凹部200(円周面よりも凹んでいる部分)が形成されていてもよい。好ましくは、皮剥器1Aの長手方向中心軸CLまわりに、等間隔で、N個(「N」は、「2」、「3」、「4」、または、「5」以上の自然数)の凹部200が形成される。図11に例示されるように、各凹部200は、第1側面20s-1および第2側面20s-2の両方に跨るように配置されてもよい。
【0101】
凹部200の存在により、第1操作部20のグリップ特性が向上する。
【0102】
図12に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構Mの外側部材56が、第1操作部20に支持(より具体的には、固定)されている。代替的に、当該外側部材56は第1操作部20と一体的に形成されていてもよい。
【0103】
ワンウェイクラッチ機構Mの外側部材56が、第1操作部20に支持(より具体的には、固定)されているか、第1操作部20と一体的に形成されている場合、ワンウェイクラッチ機構Mの組み立て、分解、または、交換を容易に実行することができる。
【0104】
図12に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構Mの組み立ては、以下のように実行される。
【0105】
第1に、ワンウェイクラッチ機構Mの外側部材56が、第1操作部20とともに、内側部材51に対して、第1方向DR1に相対移動される(矢印Fを参照)。こうして、外側部材56および第1操作部20が、内側部材51を覆うように配置される。第2に、第1操作部20(または外側部材56)が、固定ネジなどの固定部材59を介して、内側部材51およびストッパガイド14に対して回転可能なように、ストッパガイド14(または、内側部材51)に固定される。こうして、外側部材56が、内側部材51に対して一方向(すなわち、第1回転方向R1)に回転可能なように、内側部材51によって支持される。なお、固定部材59による固定の後、外側部材56は、内側部材51に対して、第1方向DR1に平行な方向には相対移動不能となることが好ましい。図12に記載の例では、固定部材59は、ストッパガイド14に形成された環状溝145に沿って移動可能であるが、第1方向DR1に平行な方向には、ストッパガイド14に対して相対移動不能である。
【0106】
ワンウェイクラッチ機構Mの分解は、ワンウェイクラッチ機構Mの組み立てと逆の手順で実行される。
【0107】
第1に、固定部材59が取り外される。こうして、外側部材56(および第1操作部20)が、内側部材51(およびストッパガイド14)に対して、第1方向DR1に平行な方向に相対移動可能となる。第2に、外側部材56が、第1操作部20とともに、内側部材51に対して、第2方向DR2に相対移動される。こうして、外側部材56および第1操作部20が、内側部材51から取り外される。
【0108】
(第2の実施形態)
図13を参照して、第2の実施形態における皮剥器1Bの基端部構造、および、皮剥器1Bについて説明する。図13は、第2の実施形態における皮剥器1Bを模式的に示す概略縦断面図である。
【0109】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0110】
第2の実施形態における皮剥器1Bでは、皮剥器1Bの基端部構造(基端部PPの構造)と皮剥器1Bの先端部構造(先端部DPの構造)とが互いに分離可能である点において、第1の実施形態における皮剥器1Aと異なる。その他の点では、第2の実施形態における皮剥器1Bは、第1の実施形態における皮剥器1Aと同様である。
【0111】
図13に記載の例では、皮剥器刃部72が取り付けられるハウジング部70と、ストッパガイド14とが別部材である。また、皮剥器1Bの先端部構造の少なくとも一部を構成するハウジング部70に、皮剥器1Bの基端部構造の少なくとも一部を構成するストッパガイド14が取り付けられる。より具体的には、ハウジング部70と、ストッパガイド14とが、固定ネジなどの固定部材78を介して固定される。
【0112】
図13に記載の例では、ハウジング部70とストッパガイド14とが互いに分離可能である。この場合、任意のタイプのハウジング部70と任意のタイプのストッパガイド14とを組み合わせて、任意の皮剥器1Bを組み立てることができる。また、ハウジング部70およびストッパガイド14のうちの一方が破損した場合、破損した部品のみを交換すればよい。
【0113】
また、図13に記載の例では、第1操作部20とストッパガイド14とが互いに分離可能である。この場合、任意のタイプの第1操作部20と任意のタイプのストッパガイド14とを組み合わせて、任意の皮剥器1Bを組み立てることができる。また、第1操作部20およびストッパガイド14のうちの一方が破損した場合、破損した部品のみを交換すればよい。
【0114】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0115】
(皮剥器1のその他の詳細な構成)
図14を参照して、実施形態の皮剥器1において採用可能なその他の構成について説明する。図14は、実施形態における皮剥器1を模式的に示す概略2面図である。図14の上側には概略縦断面図が記載され、図14の下側には概略平面図が記載されている。
【0116】
図14に記載の例では、皮剥器1は、皮剥器刃部72が取り付けられるハウジング部70と、第1操作部20と、ハウジング部70に一端部が接続され、第1操作部20に他端部が接続されるストッパガイド14とを備える。
【0117】
ハウジング部70は、皮剥対象物Wの端部を収容可能な収容部を有する。より具体的には、当該収容部は、ハウジング部70内に形成された第1孔部73hによって構成される。
【0118】
図14に記載の例では、ハウジング部70は、ストッパガイド14よりも径外方向に突出する膨出部71を含む。皮剥器刃部72は、当該膨出部71に取り付けられている。
【0119】
皮剥器刃部72は、心線W1から被覆層W2を剥離する第1刃72a(すなわち、剥離刃)と、被覆層W2に面取り部WC(必要であれば、図2を参照。)を形成する第2刃72b(すなわち、面取り刃)と、を有する。第1刃72a、第2刃72bの各々は、任意の固定部材を介して、ハウジング部70に取り付けられる。第1刃72a、第2刃72bの各々は、交換可能なようにハウジング部70に取り付けられる。
【0120】
図14に記載の例では、ハウジング部70の底面70b(換言すれば、皮剥器刃部72が配置される側とは反対側の面)の少なくとも一部は、平坦面である。底面70bの少なくも一部が平坦面であることにより、皮剥器1をテーブル、棚等の載置面に載置した際に、皮剥器1が転動することがない。図14に記載の例では、ハウジング部70の底面70bの少なくとも一部を構成する平坦面は、膨出部71に設けられている。
【0121】
ハウジング部70の第1方向DR1側の端部には、第1開口OP1が形成され、当該第1開口OP1は、ハウジング部70内に形成された第1孔部73hと連通する。第1孔部73hは、皮剥器1の長手方向中心軸CLに沿って延在する。
【0122】
ハウジング部70の側部には、第2開口OP2が形成される。第2開口OP2からは、皮剥器刃部72によって剥離された剥離後の被覆層W2が排出される。皮剥器刃部72は、刃先の少なくとも一部が第2開口OP2に突出するように配置される。
【0123】
ハウジング部70とストッパガイド14との間には、連結孔部74hが配置される。連結孔部74hは、ハウジング部70に設けられた第1孔部73hと、ストッパガイド14に設けられた第2孔部14hとを接続する孔部である。連結孔部74hを規定する壁面は、第2方向DR2に向かうにつれて、皮剥器1の長手方向中心軸CLに近づく方向に傾斜する傾斜面であることが好ましい。
【0124】
第2孔部14hには、被覆層W2が剥ぎ取られた心線W1が挿入される。第2孔部14hの内径は、第1孔部73hの内径よりも小さい。第2孔部14hには、ストッパ12が第1方向DR1に沿う方向に位置調整自在に配置される。
【0125】
ストッパ12には、連結部15に形成されたねじ部と螺合するねじ穴12hが形成されていてもよい。図14に記載の例では、第2操作部16を連結部15の中心軸まわりに回転させることにより、連結部15がねじ穴12h内を進行する。そして、ストッパ12と第2操作部16との間の距離が小さくなることにより、ストッパ12および第2操作部16が、ストッパガイド14に固定される。
【0126】
図14に記載の例では、第2操作部16が、ハウジング部70の底面70bとは反対側(換言すれば、上側)に配置されている。このため、底面70bがテーブル、棚等の載置面に接するように皮剥器1が載置面に載置された際に、第2操作部16と載置面とが干渉することがない。よって、皮剥器1が載置面に載置された際に、第2操作部16の位置がずれることがない。
【0127】
第2操作部16は、皮剥器1の長手方向中心軸CLを通る縦断面において、ハウジング部70の第2方向DR2側の端面70eと、第1操作部20の第1方向DR1側の端面20fと、ストッパガイド14の外周面14aとによって規定される凹部140内に配置されている。端面70eと端面20fとの間の距離L2は、例えば、3cm以上15cm以下、4cm以上9cm以下、あるいは、5cm以上7cm以下である。なお、当該数値の例示、および、本明細書における他の数値の例示によって、特許請求の範囲に記載の発明が限定されないことは言うまでもない。換言すれば、実施形態において、本明細書に記載の数値範囲外の数値が採用されても構わない。
【0128】
図14に記載の例では、端面20fは、鍔部40の第1面40bによって構成されている。鍔部40の直径は、例えば、3cm以上5cm以下である。
【0129】
図14に記載の例では、ストッパガイド14の第2方向DR2側の端部に、内側部材51が固定されている。図14に例示されるように、内側部材51の第1方向DR1側の端部が、ストッパガイド14の第2方向DR2側の端部に挿入されてもよい。
【0130】
内側部材51の外側には外側部材56が配置される。また、内側部材51と外側部材56とによってワンウェイクラッチ機構Mが構成される。
【0131】
図14に記載の例では、外側部材56を覆うように第1操作部20(より具体的には、第1部分21)が配置されている。外側部材56は、第1操作部20に固定されていることが好ましい。
【0132】
図14に記載の例では、第1操作部20のうち第1方向DR1側の端部(すなわち、鍔部40)と第2方向DR2側の端部を除いた部分、すなわち、第1操作部20の中央部分は、第1方向DR1に向かうにつれて径が縮小するテーパ形状を有する。第1操作部20の中央部分は、略円錐台形状を有することが好ましい。
【0133】
第1操作部20のうち鍔部40を除いた部分における最大径L3は、例えば、3cm以上5cm以下である。最大径L3は、鍔部40の直径と概ね等しい。
【0134】
第1操作部20の最小径L4は、2cm以上4cm以下である。(最大径L3-最小径L4)の長さは、例えば、0.5cm以上3cm以下、あるいは、1cm以上2cm以下である。最小径L4に対応する部分は、鍔部40の近傍(例えば、鍔部40の被押圧面40aから1cm以内、あるいは、5mm以内)に配置される。
【0135】
第1操作部20の第1方向DR1側の端面20fから第1操作部20の第2方向DR2側の端面(20e)までの距離L5は、例えば、4cm以上9cm以下、あるいは、5cm以上7cm以下である。
【0136】
図14に記載の例では、皮剥器刃部72が取り付けられるハウジング部70と第1操作部20との間にストッパガイド14が配置されている。このため、第1操作部20を把持する作業者の手が、剥離後の被覆層W2を排出する第2開口OP2と干渉することがない。
【0137】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態にも適用可能である。さらに、各実施形態における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【0138】
例えば、図1乃至図14に記載の例では、ワンウェイクラッチ機構Mが、皮剥器の基端部構造に設けられる例について説明された。代替的に、ワンウェイクラッチ機構Mの少なくとも一部が、皮剥器の先端部構造に設けられてもよい。
【0139】
また、図1乃至図14に記載の例では、皮剥器1が、作業者の力で駆動される手工具である例について説明された。代替的に、あるいは、付加的に、実施形態における皮剥器1は、電動工具等の機械の外部動力を用いて駆動されてもよい。図15に例示されるように、皮剥器1の基端部には、電動工具の回転部材と係合可能な係合部90(例えば、断面正多角形形状の係合孔部)が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の皮剥器を用いると、皮剥対象物の心線の端部の位置を位置決めするストッパが意図せずして移動することが防止される。また、第1操作部を往復的に回転運動させることにより容易に皮剥作業を実行することができる。その結果、皮剥器を用いて作業を行う作業者の負担が軽減され、かつ、皮剥作業に熟練度が要求されない。したがって、本発明は、皮剥器を用いて作業を行う業者、および、皮剥器を製造する製造業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0141】
1、1A、1B…皮剥器、12…ストッパ、12a…ストッパ面、12h…ねじ穴、13…窓部、14…ストッパガイド、14a…外周面、14h…第2孔部、15…連結部、16…第2操作部、17…目盛り、20…第1操作部、20e…基端側端面、20f…端面、20s…側面、20s-1…第1側面、20s-2…第2側面、20s-3…第3側面、21…第1部分、22…非金属製部分、40…鍔部、40a…被押圧面、40b…第1面、51…内側部材、51a…ラチェット歯車、51b…軸部材、51d…介装部材、52…付勢部材、54…ベアリング部材、56…外側部材、56a…係合部材、56c…ベース部材、56d…介装部材、56e…ピン部材、56f…カム部材、57…付勢部材、59…固定部材、70…ハウジング部、70b…底面、70e…端面、71…膨出部、72…皮剥器刃部、72a…第1刃、72b…第2刃、73h…第1孔部、74h…連結孔部、78…固定部材、90…係合部、140…凹部、141h…ガイド孔、142h…孔部、142w…側壁、145…環状溝、200…凹部、510…傾斜面、560…傾斜面、561…一端部、CC…カラーコーティング層、CL…長手方向中心軸、DP…先端部、Fs…平坦面、M。M1、M2、M3、M4…ワンウェイクラッチ機構、MP…金属部、OP1…第1開口、OP2…第2開口、PP…基端部、W…皮剥対象物、W1…心線、W2…被覆層、WC…面取り部
図1
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