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特許7518527ゴルフクラブのグリップ及びゴルフクラブのグリップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ゴルフクラブのグリップ及びゴルフクラブのグリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/14 20150101AFI20240710BHJP
   A63B 60/12 20150101ALI20240710BHJP
   A63B 60/10 20150101ALI20240710BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240710BHJP
【FI】
A63B53/14 E
A63B53/14 G
A63B60/12
A63B60/10
A63B102:32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122317
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022024335
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513163487
【氏名又は名称】株式会社 ロア・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇一郎
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3209061(JP,U)
【文献】特開2019-080841(JP,A)
【文献】特許第5579138(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00 - 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブのグリップであって、
前記グリップの長手方向に延在している複数の第1の突起部と、前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面に設けられている第2の突起部とを有するインナーグリップと、
前記インナーグリップの外周面及び前記インナーグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面の外側に設けられており、前記複数の第1の突起部がそれぞれ挿入されている複数の第1の穴が外周面に形成されているアウターグリップと、
を有し、
前記アウターグリップの硬度は前記インナーグリップの硬度よりも小さく、前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の前記アウターグリップの外縁の位置が、前記2つの第1の突起部が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化し、
前記アウターグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の端面には、前記第2の突起部が挿入されている第2の穴が形成されており、
前記端面の中央には、前記第2の突起部が挿入されていない第3の穴が形成されており、
前記第2の穴は、前記第3の穴と異なる位置において文字を示す形状に形成されていることを特徴とするゴルフクラブのグリップ。
【請求項2】
前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の前記アウターグリップの外縁の位置が、前記2つの第1の突起部の端部よりも外側になるように変化することを特徴とする、
請求項1に記載のゴルフクラブのグリップ。
【請求項3】
ゴルフクラブのグリップの製造方法であって、
長手方向において延在している複数の第1の突起部と、前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面に設けられている第2の突起部とを有するインナーグリップを準備する工程と、
前記インナーグリップの外周面及び前記インナーグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面の外側に、前記複数の第1の突起部がそれぞれ挿入されている複数の第1の穴が外周面に形成されており、前記インナーグリップの硬度よりも小さい硬度を有し、前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の外縁の位置が、前記2つの第1の突起部が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化するアウターグリップを設ける工程と、
を有し、
前記アウターグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の端面には、前記第2の突起部が挿入されている第2の穴が形成されており、
前記端面の中央には、前記第2の突起部が挿入されていない第3の穴が形成されており、
前記第2の穴は、前記第3の穴と異なる位置において文字を示す形状に形成されていることを特徴とするゴルフクラブのグリップの製造方法。
【請求項4】
前記インナーグリップを準備する工程は、
前記ゴルフクラブのシャフトの外径に対応する外径の心棒を準備する工程と、
前記インナーグリップの形状に対応する第1の金型を前記心棒の少なくとも一部を覆うように設置する工程と、
前記心棒と前記第1の金型との間に第1の材料を注入することで、前記心棒に支持された状態で前記インナーグリップを成形する工程と、
前記第1の金型を外す工程と、
を有し、
前記アウターグリップを設ける工程は、
前記アウターグリップの形状に対応する第2の金型を準備する工程と、
前記心棒に支持された前記インナーグリップと、前記心棒に支持されたインナーグリップを覆うように前記第2の金型を設置する工程と、
前記インナーグリップと前記第2の金型との間に、硬化した後の硬度が前記第1の材料よりも小さい第2の材料を注入することで、前記インナーグリップの外表面に前記アウターグリップを成形する工程と、
前記インナーグリップの外表面に前記アウターグリップが成形された状態の前記インナーグリップから前記心棒を取り外す工程と、
を有することを特徴とする、
請求項に記載のゴルフクラブのグリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブのグリップ及びゴルフクラブのグリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリップの後端部の所定の領域が二重構造となっているゴルフクラブ用グリップが知られている。特許文献1には、グリップのねじり変形を抑えるために、二重構造の内側に設けられた高硬度の内側の樹脂の一部が、低硬度の外側の樹脂に設けられた開口から突出しているグリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5579138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが、特許文献1に開示されたグリップを握る場合、外側の樹脂の表面よりも突出した高硬度の樹脂がユーザの手に接触しやすい。この場合、ユーザがグリップを握ったときに、ユーザの手の形状に合うようにグリップが変形しづらいので、ユーザの手とグリップとの間の密着性が低下することで、グリップ力が低下してしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ユーザが握ったときに、ユーザの手の形状に合うように変形し易いゴルフクラブのグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、ゴルフクラブのグリップであって、前記グリップの長手方向に延在している複数の第1の突起部を有するインナーグリップと、前記インナーグリップの外側に設けられており、前記複数の第1の突起部がそれぞれ挿入されている複数の第1の穴が外周面に形成されているアウターグリップと、を有し、前記アウターグリップの硬度は前記インナーグリップの硬度よりも小さく、前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の前記アウターグリップの外縁の位置が、前記2つの第1の突起部が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化することを特徴とするゴルフクラブのグリップを提供する。
【0007】
また、前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の前記アウターグリップの外縁の位置が、前記2つの第1の突起部の端部よりも外側になるように変化してもよい。
【0008】
また、前記アウターグリップは、前記インナーグリップの外周面及び前記インナーグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面の外側に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記インナーグリップは、前記インナーグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の面に設けられている第2の突起部をさらに有し、前記アウターグリップの前記長手方向における前記ゴルフクラブの上方側の端面には、前記第2の突起部が挿入されている第2の穴が形成されていてもよい。
【0010】
また、前記端面の中央には、前記第2の突起部が挿入されていない第3の穴が形成されており、前記第2の穴は、前記第3の穴と異なる位置において文字を示す形状に形成されていてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、ゴルフクラブのグリップの製造方法であって、長手方向において延在している複数の第1の突起部を有するインナーグリップを準備する工程と、前記インナーグリップの外側に、前記複数の第1の突起部がそれぞれ挿入されている複数の第1の穴が外周面に形成されており、前記インナーグリップの硬度よりも小さい硬度を有し、前記複数の第1の突起部のうち隣り合う2つの第1の突起部が近づくように変形することにより、前記2つの第1の突起部の間の外縁の位置が、前記2つの第1の突起部が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化するアウターグリップを設ける工程と、を有することを特徴とするゴルフクラブのグリップの製造方法を提供する。
【0012】
また、前記インナーグリップを準備する工程は、前記ゴルフクラブのシャフトの外径に対応する外径の心棒を準備する工程と、前記インナーグリップの形状に対応する第1の金型を前記心棒の少なくとも一部を覆うように設置する工程と、前記心棒と前記第1の金型との間に第1の材料を注入することで、前記心棒に支持された状態で前記インナーグリップを成形する工程と、前記第1の金型を外す工程と、を有し、前記アウターグリップを設ける工程は、前記アウターグリップの形状に対応する第2の金型を準備する工程と、前記心棒に支持された前記インナーグリップと、前記心棒に支持されたインナーグリップを覆うように前記第2の金型を設置する工程と、前記インナーグリップと前記第2の金型との間に、硬化した後の硬度が前記第1の材料よりも小さい第2の材料を注入することで、前記インナーグリップの外表面に前記アウターグリップを成形する工程と、前記インナーグリップの外表面に前記アウターグリップが成形された状態の前記インナーグリップから前記心棒を取り外す工程と、を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴルフクラブのグリップにおいて、ユーザが握ったときに、ユーザの手の形状に合うように変形し易くなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るグリップが設けられているゴルフクラブの構成を示す。
図2】本実施形態に係るグリップの構成を示す。
図3】インナーグリップの構成を示す。
図4】アウターグリップの構成を示す。
図5】グリップが変形する様子を模式的に示す。
図6】グリップの製造方法の手順を説明するための図である。
図7】変形例3としてのインナーグリップの構成を示す。
図8】変形例3~5としての第3の突起部の構成を示す。
図9】変形例3としてのインナーグリップが設けられているグリップの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ゴルフクラブTの構成]
図1は、本実施形態に係るグリップ3が設けられているゴルフクラブTの構成を示す図である。
【0016】
ゴルフクラブTは、例えばウッドであるが、ゴルフクラブTの種類は任意である。ゴルフクラブTは、ユーティリティ、アイアン、ウェッジ、パターであってもよい。ゴルフクラブTは、ゴルフクラブヘッド1、シャフト2、及びグリップ3を有する。ゴルフクラブヘッド1は、ゴルフクラブTの下方側の端部に設けられており、ゴルフクラブTにおけるボールを当てる部位である。シャフト2は、ゴルフクラブヘッド1に接続されている棒状の部位である。グリップ3は、ゴルフクラブTの上方側の端部に設けられており、ユーザが把持する部位である。
【0017】
[グリップ3の構成]
図2は、本実施形態に係るグリップ3の構成を示す図である。グリップ3は、インナーグリップ31、及びアウターグリップ32を有する。図2(a)は、グリップ3を正面側から見た構成を示す図である。図2(b)は、グリップ3を上方から見た構成を示す図である。図2(c)は、図2(a)のX-X線断面図である。図2(d)は、グリップ3を下方から見た構成を示す図である。
【0018】
インナーグリップ31は、アウターグリップ32の内側において、グリップ3の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の端部に設けられている。インナーグリップ31の長手方向における長さは、アウターグリップ32の長手方向における長さよりも短い。インナーグリップ31の長手方向における長さは、例えば20cm以下である。インナーグリップ31の長手方向における長さがこのように20cm以下であることで、インナーグリップ31を製造する際に、インナーグリップ31を金型から抜き易くし、かつグリップ3を両手で握った範囲にインナーグリップ31が存在するようにすることができる。インナーグリップ31の詳細は後述する。
【0019】
アウターグリップ32は、インナーグリップ31の外側に設けられている。アウターグリップ32の硬度は、インナーグリップ31の硬度よりも小さい。すなわち、アウターグリップ32は、インナーグリップ31よりも変形し易い。アウターグリップ32には、複数の第1の穴321が外周面に形成されており、インナーグリップ31の複数の第1の突起部311が複数の第1の穴321にそれぞれ挿入されている。
【0020】
インナーグリップ31及びアウターグリップ32は、弾性を有する材料により形成されている。弾性を有する材料は、例えばエラストマーであるが、他の材料であってもよい。一例として、インナーグリップ31の色とアウターグリップ32の色とは異なっている。
【0021】
アウターグリップ32は、インナーグリップ31の外周面及びインナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の面の外側に設けられている。具体的には、グリップ3においては、グリップ3の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の面及び角もアウターグリップ32で覆われている。よって、グリップ3においては、インナーグリップ31の硬度よりも小さい硬度を有するアウターグリップ32が、ゴルフクラブTの上方の領域を覆っているので、ユーザがグリップ3の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の端部を握ったとしても、グリップ3は変形し易く、適切なグリップ力を提供することができる。
【0022】
図3は、インナーグリップ31の構成を示す図である。図3(a)は、インナーグリップ31を正面側から見た構成を示す図である。図3(b)は、インナーグリップ31を上方から見た構成を示す図である。図3(c)は、インナーグリップ31を下方から見た構成を示す図である。
【0023】
インナーグリップ31は、複数の第1の突起部311、第2の突起部312、穴313、及び穴314を有する。第1の突起部311は、グリップ3の長手方向に延在している。第1の突起部311は、断面が例えば長方形状である。8つの第1の突起部311がインナーグリップ31の周方向において45度毎に間隔をずらしてインナーグリップ31の外周面に設けられている。インナーグリップ31には、8つの第1の突起部311が設けられているが、第1の突起部311の数は任意である。
【0024】
第2の突起部312は、インナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の面に設けられている。第2の突起部312は、文字を示す形状に形成されている。
【0025】
穴313は、インナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の面に形成されている。穴313は、円形状であり、インナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の円形状の面の中心に形成されている。穴313は、第2の突起部312以外の領域に形成されている。
【0026】
穴314は、インナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの下方側の面に形成されている。穴314は、シャフト2の少なくとも一部が挿入される穴である。穴314は、円形状であり、インナーグリップ31の長手方向におけるゴルフクラブTの下方側の円形状の面の中心に形成されている。
【0027】
図4は、アウターグリップ32の構成を示す図である。図4(a)は、アウターグリップ32を正面側から見た構成を示す図である。図4(b)は、アウターグリップ32を上方から見た構成を示す図である。図4(c)は、図4(a)のY-Y線断面図である。図4(d)は、アウターグリップ32を下方から見た構成を示す図である。
【0028】
アウターグリップ32には、複数の第1の穴321、第2の穴322、第3の穴323、及び第4の穴324が形成されている。第1の穴321の形状は任意であるが、例えば長方形状である。複数の第1の穴321には、複数の第1の突起部311がそれぞれ挿入されている。アウターグリップ32の外周面には、アウターグリップ32の周方向において45度毎に間隔をずらして、8つの第1の穴321が形成されている。アウターグリップ32には、8つの第1の穴321が形成されているが、第1の穴321の数は任意である。
【0029】
第2の穴322は、アウターグリップ32の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の端面に形成されている。第2の穴322は、文字を示す形状に形成されている。第2の穴322には、第2の突起部312が挿入されている。第2の穴322に第2の突起部312が挿入されていることで、インナーグリップ31の色とアウターグリップ32の色とが異なる場合、ユーザがグリップ3の上方側からグリップ3を視認した場合、図4(b)に示すように、第2の穴322の形状により表される文字を視認することができる。
【0030】
第3の穴323は、アウターグリップ32の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の端面の中央に形成されている。第3の穴323は、第2の穴322と異なる位置に形成されている。第3の穴323は、円形状である。第3の穴323には第2の突起部312が挿入されていない。ユーザは、第3の穴323にマーカーを挿入することができる。
【0031】
第4の穴324は、アウターグリップ32の長手方向におけるゴルフクラブTの下方側の面に形成されている。第4の穴324は、シャフト2の少なくとも一部が挿入される穴である。第4の穴324は、円形状であり、アウターグリップ32の長手方向におけるゴルフクラブTの下方側の円形状の面の中心に形成されている。
【0032】
[グリップ3の変形]
グリップ3においては、アウターグリップ32よりも硬度が大きいインナーグリップ31の第1の突起部311が、アウターグリップ32の外周に露出している。第1の突起部311が露出している領域をユーザが握った場合、複数の第1の突起部311の間のアウターグリップ32が変形するので、グリップ力が大きくなる。
【0033】
図5は、グリップ3が変形する様子を模式的に示す図である。図5(a)は、グリップ3が変形する前の状態におけるアウターグリップ32の外縁付近の拡大図である。図5(b)は、グリップ3が変形した後の状態におけるアウターグリップ32の外縁付近の拡大図である。
図5(a)に示すように、グリップ3が変形する前の状態においては、2つの第1の突起部311の間のアウターグリップ32の外縁の位置は、2つの第1の突起部311の端部とほぼ同じ位置である。
【0034】
ユーザがグリップ3を握ることで、図5(b)に示すように、複数の第1の突起部311のうち隣り合う2つの第1の突起部311が近づくように変形する。その結果、2つの第1の突起部311の間のアウターグリップ32の外縁の位置が、2つの第1の突起部311が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化する。アウターグリップ32がこのように変形することで、ユーザがグリップ3を握ったときに、ユーザの手の形状に合うようにグリップ3が変形し易くなる。この結果、ユーザがグリップ3を握ったときに、ユーザの手とグリップ3との間の密着性が高くなり易くなるので、グリップ力が向上する。
【0035】
図5(b)に示すように、ユーザがグリップ3を握ったときに、2つの第1の突起部311の間のアウターグリップ32の外縁の位置は、2つの第1の突起部311の端部よりも外側になるように変化してもよい。アウターグリップ32の外縁の位置が、隣接する2つの第1の突起部311の端部よりもユーザの手に近づくように変形することで、ユーザの手とグリップ3との間の密着性が高くなり易くなるので、さらにグリップ力が向上する。
【0036】
[グリップ3の製造方法]
図6は、グリップ3の製造方法の手順を説明するための図である。図6(a)は、グリップ3の製造方法におけるインナーグリップ31を準備する工程を説明するための図である。図6(b)は、グリップ3の製造方法におけるアウターグリップ32を設ける工程を説明するための図である。
【0037】
グリップ3の製造においては、まず、長手方向において延在している複数の第1の突起部311を有するインナーグリップ31を準備する。次に、インナーグリップ31の外側に、複数の第1の突起部311が複数の第1の穴321から露出するようにアウターグリップ32を形成する。
【0038】
以下、図6(a)を参照しながら、インナーグリップ31を準備する工程について具体的に説明する。
図6(a)に示すように、まず、ゴルフクラブTのシャフト2の外径に対応する外径の心棒4を準備する。次に、インナーグリップ31の形状に対応する第1の金型5を心棒4の少なくとも一部を覆うように設置する。次に、心棒4と第1の金型5との間に第1の材料を注入することで、心棒4に支持された状態でインナーグリップ31を成形する。注入した材料が硬化した後に、第1の金型5を外す。このようにして、インナーグリップ31を準備することができる。
【0039】
続いて、図6(b)を参照しながら、アウターグリップ32を設ける工程について具体的に説明する。
図6(b)に示すように、まず、アウターグリップ32の形状に対応する第2の金型6を準備する。次に、心棒4に支持されたインナーグリップ31と、心棒4に支持されたインナーグリップ31を覆うように第2の金型6を設置する。次に、インナーグリップ31と第2の金型6との間に、硬化した後の硬度が第1の材料よりも小さい第2の材料を注入することで、インナーグリップ31の外表面にアウターグリップ32を成形する。
【0040】
第2の材料が硬化した後に、インナーグリップ31の外表面にアウターグリップ32が成形された状態のインナーグリップ31から心棒4を取り外す。このようにして、複数の第1の突起部311が複数の第1の穴321から露出するように、アウターグリップ32を設けることができる。
【0041】
[変形例1]
上記実施形態においては、インナーグリップ31が、アウターグリップ32の内側において、グリップ3の長手方向におけるゴルフクラブTの上方側の端部に設けられている例を示したが、これに限定されない。インナーグリップ31は、アウターグリップ32の内側において、グリップ3の長手方向における中央位置を含む領域に設けられていてもよい。
【0042】
[変形例2]
上記実施形態においては、1つのインナーグリップ31が、アウターグリップ32の内側に設けられている例を示したが、これに限定されない。アウターグリップ32の内側に設けられているインナーグリップ31の数は任意である。アウターグリップ32の下方付近、アウターグリップ32の中央付近、アウターグリップ32の上方付近に、それぞれ異なるインナーグリップ31が設けられていてもよい。このように複数のインナーグリップ31が異なる位置に設けられていることにより、グリップ3は、ユーザがグリップ3を握る位置によらず適切なグリップ力を発生することができる。
【0043】
[変形例3]
図7は、変形例3としてのインナーグリップ31aの構成を示す図である。なお、図7は、インナーグリップ31aを正面側から見た構成を示す図である。図8は、変形例3~5としての第3の突起部315a~315cの構成を示す図である。図8(a)は、変形例3としての第3の突起部315aの構成を示す図である。図8(b)は、変形例4としての第3の突起部315bの構成を示す図である。図8(c)は、変形例5としての第3の突起部315cの構成を示す図である。図9は、変形例3としてのインナーグリップ31aが設けられているグリップ3aの構成を示す図である。なお、図9は、グリップ3aを正面側から見た構成を示す図である。
【0044】
上記実施形態においては、第1の突起部311は、グリップ3の長手方向に延在しており、断面が長方形状である例を示したが、これに限定されない。図7に示すように、第1の突起部311aとして、複数の第3の突起部315aがグリップ3aの長手方向において設けられていてもよい。複数の第3の突起部315aの数は任意である。図8(a)に示すように、第3の突起部315aは、断面が正方形状である。第3の突起部315aの形状は、これに限定されない。図9に示すように、グリップ3aにおいては、複数の第3の突起部315aは、アウターグリップ32aに形成されている複数の第1の穴321aにそれぞれ挿入されている。第1の穴321aの形状は任意であるが、例えば正方形状である。
【0045】
図8(b)に示すように、第3の突起部315bは、断面が円形状であってもよい。また、図8(c)に示すように、第3の突起部315cには、凹部316cが形成されていてもよい。第3の突起部315cは、第3の突起部315aと同様に、断面が正方形状である。凹部316cの底は視認可能である。凹部316cの内側には、別の異なる部材が設けられていてもよい。別の異なる部材は、例えば、インナーグリップ31の硬度及びアウターグリップ32の硬度とは異なる硬度のエラストマーにより形成されている部材を含んでいてもよい。
【0046】
[本実施形態に係るグリップ3による効果]
本実施形態に係るグリップ3は、グリップ3の長手方向に延在している複数の第1の突起部311を有するインナーグリップ31を有する。また、グリップ3は、インナーグリップ31の外側に設けられており、複数の第1の突起部311がそれぞれ挿入されている複数の第1の穴321が外周面に形成されているアウターグリップ32を有する。そして、アウターグリップ32の硬度はインナーグリップ31の硬度よりも小さい。また、複数の第1の突起部311のうち隣り合う2つの第1の突起部311が近づくように変形することにより、2つの第1の突起部311の間のアウターグリップ32の外縁の位置が、2つの第1の突起部311が変形していない場合の位置よりも外側になるように変化する。
【0047】
グリップ3においては、アウターグリップ32がこのように変形することで、ユーザがグリップ3を握ったときに、ユーザの手の形状に合うようにグリップ3が変形し易くなる。この結果、ユーザがグリップ3を握ったときに、ユーザの手とグリップ3との間の密着性が高くなり易くなるので、グリップ力が向上する。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0049】
T・・・ゴルフクラブ
1・・・ゴルフクラブヘッド
2・・・シャフト
3、3a・・・グリップ
31、31a・・・インナーグリップ
311、311a・・・第1の突起部
312・・・第2の突起部
313・・・穴
314・・・穴
315a、315b、315c・・・第3の突起部
316c・・・凹部
32、32a・・・アウターグリップ
321、321a・・・第1の穴
322・・・第2の穴
323・・・第3の穴
324・・・第4の穴
4・・・心棒
5・・・第1の金型
6・・・第2の金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9