(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】立体印刷物及び立体印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240710BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 127
B41J2/01 501
B41M3/06 C
(21)【出願番号】P 2023096552
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2022096093
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506047499
【氏名又は名称】大本染工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 尚秦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一真
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203459(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015290(WO,A1)
【文献】特開2015-168186(JP,A)
【文献】特開2003-015528(JP,A)
【文献】特開2013-129154(JP,A)
【文献】特開2016-221770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00 - 3/18
B41M 7/00 - 9/04
B41J 2/01 - 2/215
B42D 15/02
B42D 25/00 - 25/485
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象印刷面にインクジェット印刷機により畝部用インクを用いて印刷することにより、互いに平行な複数列の、頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する畝部を所定幅の間隙をおいて該対象印刷面上に形成し、
前記間隙から前記第1斜面及び前記頂部に至る第1領域と、前記頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域に、それぞれインクジェット印刷機により画像用インクを用いて第1画像層と第2画像層を、前記頂部及び前記間隙における前記第1画像層と前記第2画像層の境界
において前記第1画像層と前記第2画像層の端部同士が噛み合うことで前記第1画像層と前記第2画像層の境界線が凸凹状になるように形成する、立体印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の立体印刷物の製造方法において、
前記複数列の畝部が、前記対象印刷面上に互いに交差するように形成された複数列の第1畝部と複数列の第2畝部とから成る、立体印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の立体印刷物の製造方法において、
前記対象印刷面に前記畝部用インクを用いて印刷することにより畝部用インク層を形成する作業を複数回繰り返し、複数の畝部用インク層を積層することにより前記畝部を形成する、立体印刷物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の立体印刷物の製造方法において、
前記畝部用インクが、紫外線硬化性樹脂インク又は光硬化性樹脂インクである、立体印刷物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の立体印刷物の製造方法において、
前記畝部用インクが、淡色系のインク又は透明なインクである、立体印刷物の製造方法。
【請求項6】
畝部用インクを用いて対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行な複数列の、頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する畝部と、
前記間隙から前記第1斜面及び前記頂部に至る第1領域、及び前記頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域のそれぞれに、画像用インクを用いてインクジェット印刷することにより形成された、第1画像層及び第2画像層と
を備え、
前記頂部及び前記間隙における前記第1画像層と前記第2画像層の境界
線が、
前記第1画像層と前記第2画像層の端部同士が噛み合うことにより凸凹状となっている、立体印刷物。
【請求項7】
請求項6に記載の立体印刷物において、
前記複数列の畝部が、前記対象印刷面上に互いに交差するように形成された複数列の第1畝部と複数列の第2畝部とから成る、立体印刷物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の立体印刷物において、
前記畝部が、前記畝部用インクを用いてインクジェット印刷することにより形成された畝部用インク層が複数層積層されて構成されているものである、立体印刷物。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の立体印刷物において、
前記畝部用インクが、紫外線硬化性樹脂インク又は光硬化性樹脂インクである、立体印刷物。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の立体印刷物において、
前記畝部用インクが、淡色系のインク又は透明なインクである、立体印刷物。
【請求項11】
対象印刷面にインクジェット印刷機により畝部用インクを用いて印刷することにより、互いに平行な複数列の、第1頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する第1畝部を所定幅の間隙をおいて該対象印刷面上に形成する工程と、
前記対象印刷面に前記インクジェット印刷機により前記畝部用インクを用いて印刷することにより、互いに平行で且つ前記第1畝部と交差する複数列の、第2頂部を挟んで両側に第3斜面と第4斜面を有する第2畝部を所定幅の間隙をおいて形成する工程と、
前記間隙から前記第1斜面及び前記第1頂部に至る第1領域、前記第1頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域、前記間隙から前記第3斜面及び前記第2頂部に至る第3領域、及び前記第2頂部から前記第4斜面を経て前記間隙に至る第4領域のそれぞれに、インクジェット印刷機により画像用インクを用いて第1画像層、第2画像層、第3画像層、及び第4画像層を形成する工程と
を有し、
前記第1頂部における前記第1画像層と前記第2画像層の境界において前記第1画像層と前記第2画像層の端部同士が噛み合うことで前記第1画像層と前記第2画像層の境界線が凸凹状になるように形成し、前記第2頂部における前記第3画像層と前記第4画像層の境界において前記第3画像層と前記第4画像層の端部同士が噛合うことで前記第3画像層と前記第4画像層の境界線が凸凹状になるように形成し、前記間隙における前記第1画像層、前記第2画像層、前記第3画像層、及び前記第4画像層各々の端部同士が噛合うことで前記第1画像層、前記第2画像層、前記第3画像層、及び前記第4画像層の境界線が凸凹状になるように前記第1~第4画像層を形成する、立体印刷物の製造方法。
【請求項12】
畝部用インクを用いて対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行な複数列の、第1頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する第1畝部と、
前記畝部用インクを用いて前記対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行で且つ前記第1畝部と交差する複数列の、第2頂部を挟んで両側に第3斜面と第4斜面を有する第2畝部と、
前記間隙から前記第1斜面及び前記第1頂部に至る第1領域、前記第1頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域、前記間隙から前記第3斜面及び前記第2頂部に至る第3領域、及び前記第2頂部から前記第4斜面を経て前記間隙に至る第4領域に、それぞれ画像用インクを用いてインクジェット印刷することにより形成された、第1画像層、第2画像層、第3画像層、及び第4画像層と
を備え、
前記第1頂部における前記第1画像層と前記第2画像層の境界線、前記第2頂部における第3画像層と第4画像層の境界線、前記間隙における前記第1画像層、前記第2画像層、前記第3画像層、及び前記第4画像層の各々同士の境界線が、前記第1頂部における前記第1画像層と前記第2画像層の端部同士が噛合い、前記第2頂部における前記第3画像層と前記第4画像層の端部同士が噛合い、前記間隙における第1画像層、第2画像層、第3画像層、及び第4画像層各々の端部同士が噛み合うことにより、それぞれ凸凹状となっている、立体印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見る方向や見る角度によって絵柄や色が変わる立体印刷物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の素材をジャバラ折にして山折りと谷折りの折目を交互に形成し、山折りの折目の両側の斜面にそれぞれ異なる絵や模様を描くようにした描画技法がある。この技法で作られた作品は変わり絵、或いはジャバラ絵と呼ばれ、見る方向を変えると見える絵や模様が変化する。この描画技法を使えば、例えば物語の連続する二つの場面を表す絵をそれぞれ一方の斜面と他方の斜面に描くことで、一方の斜面側から他方の斜面側に見る方向を変えることにより物語の場面が切り替わる絵本(ジャバラ絵本と呼ばれている)を作ることができる。
【0003】
近年、インクジェット印刷機を用いて、上記した変わり絵(ジャバラ絵)のような性質を有する印刷物を製造する方法が開発されている(特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、インクジェット印刷機により複数のインク層を重ねてインクジェット印刷することにより、第1の斜面と第2の斜面を有する、断面が略三角形状の直線状の台座を複数列、素材の上面に形成し、各台座の第1斜面に第1画像の印刷層を、第2斜面に第2画像の印刷層を、インクジェット印刷により形成する。これにより、印刷物を第1の斜面側から見たときは第1画像が見え、第2の斜面側から見たときは第2画像が見える印刷物が得られる。特許文献1では、このような印刷物を「視角変化印刷物」と呼んでいる。
【0004】
インクジェット印刷機では、ノズルから微細な粒状のインクを吐出し、これを印刷対象物に吹き付けることで印刷する。つまり、印刷対象物上に形成される印刷層は多数の微小なインクドットで構成される。特許文献1の方法では、インクジェット印刷機を用いて台座を形成するため、上述した「ジャバラ絵」に比べて非常に小さい幅や高さの台座にすることができ、そのような台座の斜面に高精細な画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット印刷機による印刷では、色が異なるインクの印刷層が隣接する場合に、印刷層の境界部分で異なる色のインクドットが混在し、境界が不鮮明になることがある。上述した視角変化印刷物において、隣接する斜面にそれぞれ形成される印刷層の境界でインクドットが混在すると、第1斜面側、或いは第2斜面側の方向から印刷物を見たときに見える画像に、もう一方の方向から見える画像が滲んで見えてしまい、画像が高精細であるが故に画像が不鮮明になる。そこで、特許文献1では、第1画像の印刷層と第2画像の印刷層の境界となる台座の頂部、及び素材の上面に黒色又は灰色の線状の緩衝帯をインク層により形成し、上述した現象が生じることを防止している。
【0007】
ところが、第1画像の印刷層と第2画像の印刷層の境界に黒色又は灰色の緩衝帯を設けると、印刷物を正面から見たとき(これを「正方向」という)に緩衝帯が黒色又は灰色の筋(すじ)のように見えたり、印刷物全体が黒色や灰色で塗りつぶされたように見えたりするという問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、少なくとも正方向から見たとき、及び正方向を挟んで両側の斜め方向から見たときに、異なる画像が見える立体印刷物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明の一態様に係る立体印刷物の製造方法は、
対象印刷面にインクジェット印刷機により畝部用インクを用いて印刷することにより、互いに平行な複数列の、頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する畝部を所定幅の間隙をおいて形成し、
前記間隙から前記第1斜面及び前記頂部に至る第1領域と、前記頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域に、それぞれインクジェット印刷機により画像用インクを用いて第1画像層と第2画像層を、前記頂部及び前記間隙における前記第1画像層と前記第2画像層の境界が凸凹状になるように形成することを特徴とするものである。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された本発明の一態様に係る立体印刷物は、
畝部用インクを用いて対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行な複数列の、頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する畝部と、
前記間隙から前記第1斜面及び前記頂部に至る第1領域、及び前記頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域のそれぞれに、画像用インクを用いてインクジェット印刷することにより形成された、第1画像層及び第2画像層と
を備え、
前記頂部及び前記間隙における前記第1画像層と前記第2画像層の境界が凸凹状であることを特徴とするものである。
【0011】
上記態様の立体印刷物の製造方法では、対象印刷面にインクジェット印刷機により所定のインクを用いて印刷することにより、対象印刷面上に畝部、第1画像層及び第2画像層が形成される。つまり、畝部、第1画像層及び第2画像層は、いずれもインクジェット印刷に使用されるインクから成る。本発明においては、畝部、第1画像層及び第2画像層を形成するために使用されるインクをそれぞれ、畝部用インク、画像用インクと呼んでいる。第1画像層及び第2画像層を形成するために使用されるインク(以下、「第1画像用インク」、「第2画像用インク」ともいう。)は色、組成等が同じでもよく、異なっていてもよい。
【0012】
対象印刷面は、典型的には紙やプラスチックフィルム、プラスチックシート、織物・編物から成る生地等、シート状の素材の一面であるが、インクジェット印刷機により印刷可能であればどのような素材の一面でも良い。
【0013】
畝部用インク、第1画像用インク、第2画像用インクはインクジェット印刷可能なインクであればどのような種類のものでも良いが、特に、畝部用インクはUV硬化性樹脂インク、光硬化性樹脂インクを用いることが好ましい。UV硬化性樹脂インク、光硬化性樹脂インクを用いて畝部を形成した場合は、インクジェット印刷機により畝部用インクを用いて印刷した後、そこに所定の波長の光を照射すれば、すぐにインクが硬化するため、畝部の形成にかかる時間を短縮できる。また、畝部用インクは、淡色系インク又は透明なインクであるとよい。このようなインクを用いて畝部を形成することにより、第1画像層及び第2画像層によって形成される画像の色彩が畝部の色によって邪魔されることが防止される。
【0014】
上記態様においては、畝部は、畝部用インクを用いて印刷することにより畝部用インク層を形成する作業を複数回繰り返し、複数の畝部用インク層を積層することにより形成することができる。複数の畝部用インク層を積層して畝部を形成する場合は、或る畝部用インク層が硬化するまで次の畝部用インク層を積層することができない。UV硬化性樹脂インク、又は光硬化性樹脂インクを用いて畝部用インク層を形成すれば、畝部用インク層を迅速に硬化させることができるため、畝部の作成にかかる時間を一層、短縮できる。
【0015】
上記態様の立体印刷物は、1個の畝部が有する第1斜面と第2斜面に対応して第1画像層と1個の第2画像層が形成されるため、畝部の数と同数の第1画像層と第2画像層を有することになる。そして、立体印刷物を第1斜面側の方向から見たときは、複数列の畝部の第1斜面それぞれに形成された第1画像層が見える。これら複数の第1画像層から一つの画像(第1画像)が構成されるように、各第1斜面に形成される第1画像層の内容(模様、色等)を調整することにより、立体印刷物を第1斜面側の方向から見ると一つのまとまりをもった第1画像を視認することができる。同様に、第2斜面側の方向から見たときは、複数列の畝部の第2斜面それぞれに形成された第2画像層が見え、これら複数の第2画像層から1つの画像(第2画像)が構成されるように、各第2斜面に形成される第2画像層の内容を調整することにより、立体印刷物を第1斜面側の方向から見ると一つのまとまりをもった第2画像を視認することができる。第1画像層及び第2画像層が見える方向は、第1斜面及び第2斜面の傾斜角度によって決まる。第1斜面と第2斜面の傾斜角度は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0016】
上記態様の立体印刷物では、前記間隙及び前記畝部の頂部において、凸凹状の境界を挟んで第1画像層と第2画像層が隣接する。このため、従来技術のような黒色や灰色の緩衝帯を前記間隙及び前記畝部の頂部に設けなくても、第1斜面側の方向から見たときは第1画像が、第2斜面側の方向から見たときは第2画像が鮮明に見える。また、前記間隙及び前記畝部の頂部には、交互に配置された第1画像層と第2画像層が存在するため、正方向から立体印刷物を見たときは、第1画像層と第2画像層の両方が見えることになる。したがって、例えば第1画像と第2画像を、色彩や配色は異なるが同じ絵模様にすれば、正方向から見たときに視認される画像(これを第3画像という)は、第1画像及び第2画像と同じ絵模様であって両画像の色を混ぜ合わせたような色(混色)の画像となる。なお、第1画像と第2画像が異なる絵模様の場合は、正方向から見たときに視認される第3画像は、第1画像や第2画像とは色だけでなく絵模様も異なる画像となる。
【0017】
本発明の上記態様に係る立体印刷物の製造方法及び印刷物においては、前記複数列の畝部が、前記対象印刷面上に互いに交差するように形成された複数列の第1畝部と複数列の第2畝部とから成るものでもよい。
【0018】
上記構成においては、複数列の第1畝部の間隙の幅と複数列の第2畝部の間隙の幅が同じ場合、対象印刷面上には、複数列の第1畝部と複数列の第2畝部とから、菱形格子状又は正方格子状の凸条部が形成されることになる。また、複数列の第1畝部の間隙の幅と複数列の第2畝部の間隙の幅が異なる場合、対象印刷面上には、複数列の第1畝部と複数列の第2畝部とから、長方格子状又は平行四辺形の格子状の凸条部が形成されることになる。格子を構成する単位に着目すると、各格子単位の内側面は、隣り合う2本の第1畝部の一方の第1斜面の一部と他方の第2斜面の一部、隣り合う2本の第2畝部の一方の第1斜面の一部と他方の第2斜面の一部から構成される。第1畝部の第1斜面及び第2斜面、第2畝部の第1斜面及び第2斜面が見える方向はそれぞれ異なるため、例えば第1畝部の第1斜面側の方向から見たときは、複数の第1畝部の第1斜面それぞれに形成された第1画像層が視認され、第2畝部の第1斜面側の方向から見たときは、複数の第2畝部の第1斜面それぞれに形成された第1画像層が視認される。第1畝部の第2斜面、第2畝部の第2斜面についても同様である。したがって、上記構成においては、第1畝部の第1斜面及び第2斜面、第2畝部の第1斜面及び第2斜面にそれぞれ異なる画像層を形成することにより、立体印刷物を正方向から見たとき、第1畝部の第1斜面側及び第2斜面側、第2畝部の第1斜面側及び第2斜面側の4方向から見たとき、つまりこれら5方向から見たときに視認される画像をそれぞれ異ならせることができる。
【0019】
対象印刷面上に形成される凸条部の形状は、菱形格子、長方格子状、正方格子状、平行四辺形から成る格子状のいずれでもよいが、菱形格子状にすることにより、上記5方向から見たときに視認される画像をより明確に異ならせることができ、より優れた視差効果、視認効果が得られる。
【0020】
本発明の別の態様に係る立体印刷物は、
畝部用インクを用いて対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行な複数列の、第1頂部を挟んで両側に第1斜面と第2斜面を有する第1畝部と、
前記畝部用インクを用いて前記対象印刷面にインクジェット印刷することにより、該対象印刷面上に所定幅の間隙をおいて形成された、互いに平行で且つ前記第1畝部と交差する複数列の、第2頂部を挟んで両側に第3斜面と第4斜面を有する第2畝部と、
前記間隙から前記第1斜面及び前記第1頂部に至る第1領域、前記第1頂部から前記第2斜面を経て前記間隙に至る第2領域、前記間隙から前記第3斜面及び前記第2頂部に至る第3領域、及び前記第2頂部から前記第4斜面を経て前記間隙に至る第4領域に、それぞれ画像用インクを用いてインクジェット印刷することにより形成された、第1画像層、第2画像層、第3画像層、及び第4画像層と
を備える。
【0021】
上記態様の立体印刷物では、前記菱形単位の4個の斜面の各々の方向から見ると菱形格子状の凸条部を構成する複数の菱形単位の各々に形成された第1~第4画像層のいずれかが見える。複数の菱形格子に形成された第1画像層から一つの画像(第1画像)が構成されるように各第1画像層の内容(模様、色等)を調整することにより、立体印刷物を第1画像層側の方向から見ると一つのまとまりをもった第1画像を視認することができる。第2~第4画像層の場合も第1画像層と同様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、立体印刷物を正方向から見たとき、及び正方向を挟んで両側の斜め方向(第1斜面側の方向、第2斜面側の方向)から見たときの、少なくとも3方向から見たときに、視認される画像を異ならせることができる。
【0023】
また、本発明の別の態様によれば、立体印刷物を正方向から見たとき、及び正方向を挟んで両側の斜め方向(第1斜面側及び第2斜面側の方向、第3斜面側及び第4斜面側の方向)から見たときの、5方向から見たときに、視認される画像を異ならせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る立体印刷物の概略的な構成を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る立体印刷物の概略的な構成を示す平面図(a)、側面図(b)、第1及び第2画像層が形成される前の平面図(c)。
【
図3】畝部を構成するインク層が2層積層された状態を示す側面図(a)、インク層が9層積層されて畝部が形成された状態を示す側面図(b)。
【
図4】畝部の頂部又は間隙における第1画像層と第2画像層の境界の形状の例を示しており、(a)は矩形波状の境界、(b)は三角波状の境界、(c)はサイン波形状の境界を示す。
【
図5】対象印刷面に畝部が形成された素材に対して第1画像及び第2画像を形成する作業の説明図。
【
図6】第1実施形態に係る方法で製造された立体印刷物を正方向から見たときの写真。
【
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る立体印刷物の画像層が形成される前の状態を示す概略的な構成図、(b)は(a)の図におけるb1-b2線に沿う断面図、(c)は(a)の図におけるc1-c2線に沿う断面図。
【
図8】(a)は第2実施形態に係る立体印刷物を構成する菱形単位の正面図、(b)は視点1から見たときに視認される画像、(c)は視点2から見たときに視認される画像、(d)は視点3から見たときに視認される画像、(e)は視点4から見たときに視認される画像、(f)は視点5から見たときに視認される画像。
【
図9】第2実施形態に係る立体印刷物を構成する第1および第2畝部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る立体印刷物について
図1~
図6を参照しつつ説明する。
図1は、第1実施形態に係る立体印刷物の概略的な構成を示す斜視図である。
図1に示すように、この立体印刷物は、素材1と、該素材1の上面である対象印刷面2に形成された互いに平行な複数列の畝部3と、畝部3の表面及び対象印刷面2のうち畝部3が形成されていない領域21に設けられた第1画像層4及び第2画像層5とを含む。なお、
図1では、一部の畝部3の表面及び一部の前記領域21にのみ第1画像層4及び第2画像層5が設けられているが、実際は、畝部3及び前記領域21のほぼ全体に第1画像層4及び第2画像層5は設けられている。畝部3、第1画像層4及び第2画像層5は、いずれもインクジェット印刷機により所定のインクを用いて印刷することによって形成されている。
【0026】
素材1は、典型的には紙、プラスチック製のフィルムやシート、織物・編物から成る生地等、シート状の素材であるが、インクジェット印刷が可能であれば、どのような材料でもよく、また、シート状でなくてもよい。
【0027】
畝部3は、頂部31とその両側の斜面(第1斜面32及び第2斜面33)を有する、断面が略台形状の直線状の凸条部からなる。畝部3は、所定の間隔をおいて対象印刷面2に形成されており、隣り合う畝部3の間には間隙が存在する。つまり、前記領域21が間隙に相当する。以下の説明では領域21を間隙21と呼ぶこととする。
【0028】
第1画像層4は間隙21から第1斜面32を経て頂部31に至る領域に設けられ、第2画像層5は頂部31から第2斜面33を経て間隙21に至る領域に設けられている。詳細は後述するが、間隙21及び頂部31においては、畝部3が延びる方向に第1画像層4と第2画像層5が交互に位置するように、第1及び第2画像層4,5が形成されている。
【0029】
次に、畝部3、第1画像層4及び第2画像層5の詳細な構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2(a)は立体印刷物の平面図、(b)は側面図、(c)は対象印刷面2に畝部3が形成された状態(つまり第1画像層4及び第2画像層5が形成される前の状態)の平面図である。また、
図3は、畝部3の形成工程の説明図である。
図2(b)、(c)では、紙面左右方向の位置によって畝部3の高さが異なることを表すために、明るさの異なる灰色で畝部3を塗りつぶしているが、畝部3は全て同じインクを使って形成されている。
【0030】
畝部3は、インクジェット印刷機によって対象印刷面2にインクドットを吹き付け、インク層30を形成する作業を複数回繰り返し、複数のインク層30を積層することによって形成される。
図3(a)はインク層30が2層積層されている状態を示している。インク層30の上に次のインク層30を積層する作業は、先に形成されたインク層30を構成するインクドットが硬化してから行われる。したがって、インク層30の形成に用いられるインクは、複数のインク層30の積層作業を短縮できる点でUV硬化性樹脂インク、或いは光硬化性樹脂インクが好ましい。
【0031】
1個の畝部3を構成する各インク層30は、畝部3の頂部31に対応する箇所におけるノズルからのインク吐出量を100%とすると、第1斜面32及び第2斜面33に対応する箇所のインク吐出量は100%よりも少なく、且つ、畝部3の頂部31側から裾野側に向かって段階的に減少するように調整されている。例えば
図3(b)は、頂部31側から裾野側に向かって第1及び第2斜面を3分割し、それぞれのインク吐出量を60%、40%、20%に調整したときに、9個のインク層30を積層して形成された畝部3の概略的な側面図である。このように複数のインク層30を積層することにより、インク層30と同じ幅を有し、インク層30の積層分に応じた高さの畝部3を形成することができる。
【0032】
対象印刷面2に畝部3が形成されると、次は、その上面に対してインクジェット印刷機によってインクドットを吹き付け、間隙21から第1斜面32を経て頂部31に至る領域(以下、第1領域と呼ぶ)に第1画像層4を、頂部31から第2斜面33を経て間隙21に至る領域(以下、第2領域と呼ぶ)に第2画像層5を形成する。このとき、間隙21及び頂部31においては、第1画像層4と第2画像層5の境界が凸凹状になるように第1及び第2画像層4,5が形成されている。このため、間隙21及び頂部31においては、畝部3が延びる方向に第1画像層4と第2画像層5が交互に位置する。ここで、「境界が凸凹状」の例として、境界線が矩形波状である場合、三角波状である場合、サイン波形状である場合(
図4(a)~(c)参照)が挙げられる。
【0033】
素材1には、畝部3の数と対応する数の第1領域及び第2領域が存在する。そして、複数の第1領域にそれぞれ形成される第1画像層4によって、第1斜面32側の所定の方向から立体印刷物を見たときに見える画像(これを第1画像という)が構成され、複数の第2領域に形成される第2画像層5によって、第2斜面33側の所定の方向から立体印刷物を見たときに見える画像(これを第2画像という)が構成される。
【0034】
そこで、第1画像の画像データ、畝部3の数、畝部3の幅及び高さ、頂部31の幅、第1斜面の幅及び傾斜角度、間隙の幅等に基づいて、第1画像合成用分割データを作成する。同様にして、第2画像合成用分割データも作成する。インクジェット印刷機は、これら第1及び第2画像合成用分割データに従い、所定の色のインクドットを第1及び第2領域に吹き付け、第1領域及び第2領域にそれぞれ第1画像層4及び第2画像層5を形成する。
図2(a)は、第1画像合成用分割データ及び第2画像合成用分割データによって表される第1画像層及び第2画像層の例を示している。
【0035】
対象印刷面2に畝部3が形成された素材1に対して、インクジェット印刷機により第1画像層4及び第2画像層5を形成する作業は例えば次のように行うことができる。
図5(a)、(b)は、インクジェット印刷機は、プリンターヘッド100と、該プリンターヘッド100を保持するヘッドホルダ
100aと、作業台(図示せず)とを備えている。ヘッドホルダ
100aは、作業台に対して矢印110方向に移動自在に設けられており、プリンターヘッド100は矢印111方向に移動自在にヘッドホルダ
100aに取り付けられている。
図5(a)は、移動方向111と畝部3の方向が直交するように作業台に前記素材1を載置して、第1画像層4及び第2画像層5を形成する作業を行う場合、
図5(b)は、移動方向111と畝部3の方向が平行になるように作業台に前記素材1を載置して、第1画像層4及び第2画像層5を形成する作業を行う場合を示している。
【0036】
次に、実際に、立体印刷物を製造した例について説明する。
平台型UVプリンター「JFX-200-2513EX」(株式会社ミマキエンジニアリング)を使用し、白色のUV硬化型樹脂インクを用いて、樹脂製シートの表面(対象印刷面)にインク層30を形成する作業を9回繰り返し、9個のインク層30を積層して、高さが約0.3mm、幅が約0.2963mmの畝部3を、幅0.0846mmの間隙21をあけて形成した。各インク層30は、頂部31側から裾野側に向かって第1及び第2斜面をそれぞれ3分割して7区分に分け、各区分のインク吐出量の比が20%、40%、60%、100%、60%、40%、20%となるように調整した。
【0037】
上記のようにして複数の畝部3が形成された樹脂製シートの第1領域及び第2領域に、平台型UVプリンター「JFX-200-2513EX」を使用し、UV硬化型樹脂インクを用いて、第1画像層及び第2画像層を形成し、立体印刷物を製造した。この実施例では、第1斜面側の方向から見たときに見える第1画像と、第2斜面側の方向からみたときに見える第2画像は、同じ絵柄で色彩が異なるものとした。
【0038】
図6は、得られた立体印刷物を正方向から見たときの写真である。
図6では白黒写真として示されているが、実際はカラー写真である。正方向から見たときに見える画像は、第1画像及び第2画像と同じ絵柄であって、第1画像の色彩と第2画像の色彩を混ぜ合わせたような色彩であった。また、図示しないが、第1斜面側の方向から見たとき、及び第2斜面側の方向から見たときのいずれにおいても、第1画像及び第2画像を鮮明な画像として視認することができた。
【0039】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る立体印刷物について
図7~
図9を参照しつつ説明する。
図7は第2実施形態に係る立体印刷物であって画像層が形成される前の状態(以下、画像形成前印刷物という。)を示している。
図7の(a)は画像形成前印刷物の平面図、(b)は
図7(a)におけるb1-b2線に沿う断面図、(c)は
図7(a)におけるc1-c2線に沿う断面図である。この画像形成前印刷物は、素材101と、該素材101の上面である対象印刷面102に形成された互いに平行な複数列の第1畝部130及び互いに平行で且つ前記第1畝部130と交差する複数列の第2畝部140とを含む。
【0040】
なお、
図7(a)では、高さが異なることを表すために、種類の異なる模様で第1畝部130及び第2畝部140を塗りつぶしている(模様が密で色が濃い領域は最も高い領域であることを、模様が疎で色が薄い領域はもっとも低い領域であることを表している。)が、第1実施形態と同様、第1畝部130及び第2畝部140はすべて同じインクを使って形成されている。第1畝部130及び第2畝部140の形成方法は後述する。
【0041】
素材101は、典型的には紙、プラスチック製のフィルムやシート、織物・編物から成る生地等、シート状の素材であるが、インクジェット印刷が可能であれば、どのような材料でもよく、また、シート状でなくてもよい。
【0042】
第1畝部130は、頂部131とその両側の斜面(第1斜面132及び第2斜面133)を有する、断面が略台形状の直線状の凸条部からなる。第1畝部130は、所定の間隔をおいて対象印刷面102に複数形成されており、隣り合う畝部130の間には間隙が存在する。また、第2畝部140は、頂部141とその両側の斜面(第3斜面142及び第4斜面143)とを有する、断面が略台形状の直線状の凸条部からなる。第2畝部140は、第1畝部130の間隙と同じ幅の間隙をおいて対象印刷面102に複数形成されている。
【0043】
第1畝部130と第2畝部140は、所定の角度で交差するように対象印刷面102上に形成されている。第1畝部130と第2畝部140が交差する角度は45°~135°の範囲であることが好ましい。第1畝部130と第2畝部140が交差する角度が上記角度範囲にあれば、本実施形態の立体印刷物は視角変化印刷物として機能し得る。また、第1畝部130と第2畝部140が交差する角度は、45°~80°あるいは100°~135°の範囲であることがより好ましい。第1畝部130と第2畝部140が交差する角度が45°~80°あるいは100°~135°の範囲にあるときは、対象印刷面102上には菱形格子状の凸条部が形成される。また、第1畝部130と第2畝部140が交差する角度が90°のときは、対象印刷面102上には正方格子状の凸条部が形成される。なお、第1畝部130の間隙と第2畝部140の間隙が異なる幅(長さ)のときは、平行四辺形の格子状の凸条部或いは長方形の格子状の凸条部となる。
【0044】
なお、
図7に示す例では、第1畝部130と第2畝部140が交差する角度は約60°である。菱形格子状の凸条部は複数の菱形枠状の単位(以下、菱形単位150)から構成される。各菱形単位150の中央には、第1畝部130の間隙でもあり第2畝部140の間隙でもある菱形状の領域121が存在する。この領域121は、対象印刷面102の一部が露出した領域である。各菱形単位150は、第1畝部130の頂部131と第2畝部140の頂部141から構成される菱形状の頂部と、該頂部から中央の領域121に向かって傾斜する4個の斜面とを有する。4個の斜面は、第1畝部130の第1斜面132及び第2斜面133と、第2畝部140の第3斜面142及び第4斜面143から成る。
【0045】
菱形格子状の凸条部を構成する第1畝部130及び第2畝部140は、第1実施形態の畝部3と同様、インクジェット印刷機によって対象印刷面102にインクドットを吹き付け、インク層を形成する作業を複数回繰り返し、複数のインク層を積層することによって形成される。この場合、例えば
図9に示すように、第1畝部130及び第2畝部140をそれぞれ独立して対象印刷面102上に形成し、それら第1畝部130及び第2畝部140から菱形格子状の凸条部を構成することができる。
【0046】
1個の第1畝部130、1個の第2畝部140を構成する複数のインク層の積層方法は基本的には第1実施形態の畝部3における複数のインク層の積層方法と同じである。この場合、
図9に示すように、複数の第1畝部130について各畝部130を構成する複数のインク層を全て積層する作業を行ってから、複数の第2畝部140について各畝部140を構成する複数のインク層を全て積層する作業を行ってもよく、複数の第1畝部130について各畝部130を構成する複数のインク層のうちの最下層を形成する作業を行い、次に複数の第2畝部140について各畝部140を構成する複数のインク層のうちの最下層を形成する作業を行い、続いて、複数の第1畝部130について各畝部130を構成する複数のインク層のうちの下から2層目のインク層を形成する作業を行う、というように、第1畝部130を構成するインク層と第2畝部140を構成するインク層を交互に形成(積層)する作業を行ってもよい。第1畝部130を構成するインク層と第2畝部140を構成するインク層を交互に形成することで全ての第1畝部130及び全ての第2畝部140を形成する方法は、第1畝部130と第2畝部140とが交差する箇所が他の箇所よりも目立って突出しない点で良い方法といえる。
【0047】
また、上記方法とは別に、対象印刷面102上に、菱形格子状にインクドットを吹き付け、インク層を形成する作業を複数回繰り返して菱形格子状の凸条部を形成することもできる。
【0048】
対象印刷面102に形成された第1畝部130と第2畝部140の上面には、インクジェット印刷機によってインクドットが吹き付けられて成る第1~第4画像層が形成されている。第1画像層104は、領域121から第1斜面132を経て頂部131に至る領域(以下、第1領域と呼ぶ)に、第2画像層105は頂部131から第2斜面133を経て領域121に至る領域(以下、第2領域と呼ぶ)に、第3画像層106は領域121から第3斜面144を経て頂部141に至る領域(以下、第3領域と呼ぶ)に、第4画像層107は頂部141から第4斜面145を経て領域121に至る領域(以下、第4領域と呼ぶ)に形成される。このとき、領域121、頂部131及び頂部141においては、第1画像層104、第2画像層105、第3画像層106、及び第4画像層107それぞれ相互の境界が凸凹状になるように第1~第4画像層104~107が形成されている。凹凸状の境界としては、矩形波状、三角波状、サイン波形状の境界が挙げられる。
【0049】
素材101には、第1および第2の畝部130及び140の数に対応する複数の菱形単位150が存在する。そして、複数の菱形単位150それぞれに形成される第1画像層によって、第1斜面132側の所定の方向から立体印刷物を見たときに視認される画像(これを第1画像という)が構成され、第2画像層105によって、第2斜面133側の所定の方向から立体印刷物を見たときに視認される画像(これを第2画像という)が構成される。また、複数の菱形単位150それぞれに形成される第3画像層106によって、第3斜面142側の所定の方向から立体印刷物を見たときに視認される画像(これを第3画像という)が構成され、第4画像層107によって、第4斜面143側の所定の方向から立体印刷物を見たときに視認される画像(これを第4画像という)が構成される。
【0050】
そこで、第1画像の画像データ、菱形単位150の数、菱形単位150の形状(大きさ)や頂部131、141の高さ、幅、第1~第4斜面の幅及び傾斜角度、領域121の大きさ等に基づいて、第1画像合成用分割データを作成する。同様にして、第2~第4画像合成用分割データも作成する。インクジェット印刷機は、これら第1~第4画像合成用分割データに従い、所定の色のインクドットを第1~第4領域に吹き付け、これらの領域にそれぞれ第1~第4画像層を形成する。
図8(a)は、1個の菱形単位150の各斜面に形成された、第1~第4画像合成用分割データによって表される第1~第4画像層の例を示している。また、
図8(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、それぞれ菱形単位150を
図8(a)における視点1~5から見たときに視認される画像層の例を示している。本発明者によると、菱形単位150の長辺を3.5mm~1.75mm、短辺を1.7mm~0.85mmとすることにより、視点1~4における画像が異なること(つまり、視差効果が得られること)が確認され、特に、菱形単位150の長辺を2.7mm、短辺を1.3mmにしたときに、45°の入視角度で優れた視差効果が得られることが確認された。
【0051】
このように、本実施形態によれば、立体印刷物を正方向から見たとき、及び正方向を挟んで両側の斜め方向(第1斜面側及び第2斜面側の方向、第3斜面側及び第4斜面側の方向)から見たときの、5方向から見たときに、視認される画像を異ならせることができる。なお、第1~第4画像をすべて異ならせる必要はなく、例えば第1画像と第3画像、第2画像と第4画像が同じになるように、第1~第4画像層を形成しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1、101…素材
2、102…対象印刷面
21、121…間隙(領域)
3、130、140…畝部
30…インク層
31、131、141…頂部
32、132…第1斜面
33、133…第2斜面
142…第3斜面
143…第4斜面
4、104…第1画像層
5、105…第2画像層
100…プリンターヘッド
100a…ヘッドホルダ
106…第3画像層
107…第4画像層
150…菱形単位