(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ワークデザインプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240710BHJP
G06Q 10/0639 20230101ALI20240710BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2023211381
(22)【出願日】2023-12-14
【審査請求日】2023-12-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年4月25日、https://vis-produce.com/download/recommendation/
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503258890
【氏名又は名称】株式会社ヴィス
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100121924
【氏名又は名称】後藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】金谷 智浩
(72)【発明者】
【氏名】小川 慧
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199441(JP,A)
【文献】特開2022-148018(JP,A)
【文献】特開2022-067120(JP,A)
【文献】特開2022-138227(JP,A)
【文献】特開2016-149167(JP,A)
【文献】特開2016-115005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0385742(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第04207016(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフィスで働く従業員のユーザ端末と、
ネットワークを介して前記ユーザ端末と接続されるホストコンピュータと、
を備え、前記オフィスを最適化するワークデザインプラットフォームであって、
前記ホストコンピュータは、サーベイ手段、現状分析手段、及びシミュレーション手段を備え、
前記サーベイ手段は、
ワークプレイス、ワークスタイル、エンゲージメント、ウェルビーイング、カルチャー及びやりがいの6つの視点からの前記従業員のオフィスに対する満足度調査の回答を前記ユーザ端末から取得し、前記従業員のオフィスに対する満足度調査
を行った結果に基づいて、
前記全ての視点の満足度評価値と、これらの平均のワークデザインスコアを算出するワークデザインスコア算出手段
と、
集中エリア、チームエリア、交流エリア、ネットワーク構築、ブランディング、オンラインMTG、多様性、情報、クリエイティビティ、魅力・愛着に対する満足度調査に基づいて、前記全ての視点の満足度評価と、これらの平均のプレイス満足度とを算出する手段と、
ハイブリッドワーク、デジタル化、コミュニケーション(量)、コミュニケーション(範囲)、コミュニケーション(質)、優先課題、スピード感、情報共有、多様性への取組み、セレンディビティに対する満足度調査に基づいて、前記全ての視点の満足度評価と、これらの平均のスタイル満足度とを算出する手段と、を備え、
前記現状分析手段は、
前記オフィスへの前記従業員の入退出データに基づいて、出社率、滞在率、座席稼働率の少なくともいずれか一つを算出する稼働分析手段と、
前記オフィスの総面積、総タッチポイント数、執務席数、各ゾーンの面積に基づいて、タッチポイント密度、執務席密度、ゾーン別面積割合の少なくともいずれか一つを算出する空間分析手段のうち、少なくともいずれかを備え、
前記シミュレーション手段は、
目標収容人数、フロア面積及びフロア数に基づいて、各エリアの面積割合指標、各エリアの席数割合指標、タッチポイント席密度、執務席密度の少なくともいずれか一つを算出する空間シミュレーション手段と、
在籍人数、賃料、管理費、光熱費、賃貸契約期間、初期工事期間、工事費のデータに基づいて、一人当たりの月額費用、一席当たりの月額費用、賃貸契約期間にかかるオフィス構築・運用費用の少なくともいずれか一つを算出するコストシミュレーション手段と、
現オフィスの住所と、移転候補の新オフィスの住所と、従業員の住居・最寄駅のデータに基づいて、従業員の居住マップ、ハザードマップを作成するエリアシミュレーション手段のうち、少なくともいずれかを備える、ワークデザインプラットフォーム。
【請求項2】
前記ワークデザインスコアは、前記満足度調
査の全回答者数に対する上位のポジティブ評価の数の割合に基づいて算出する、請求項
1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項3】
前記サーベイ手段は、
前記満足度調査を初回よりも設問数の少ない満足度調査を定期的に行い、ワークプレイス、ワークスタイル、エンゲージメント、ウェルビーイング、カルチャー及びやりがいの各項目の推移を表示する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項4】
前記現状分析手段は、Wi-Fiアクセスポイントへの接続データに基づいて、出社率、滞在率を算出する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項5】
前記現状分析手段は、前記オフィスの人が交わるゾーンの席数を総タッチポイント数とすると、前記オフィスの総面積を前記総タッチポイント数で除して、タッチポイント密度を算出する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項6】
前記現状分析手段は、前記オフィスのワークエリア総席数を執務席数とすると、前記オフィスの総面積を前記執務席数で除して、執務席密度を算出する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項7】
前記空間シミュレーション手段は、コミュニティ型、チームワーク型、プロジェクト型から選択される
ゾーン別面積割合のベンチマーク、社員数、及び平均出社率に基づいて、各エリアの面積割合指標、席数割合指標を算出する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項8】
前記コストシミュレーション手段は、イニシャル、ランニング総コストの月割りコストを社員数又は席数で除して、一人当たりの月額費用又は一席当たりの月額費用を算出する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【請求項9】
前記エリアシミュレーション手段は、平均通勤時間、通勤交通費を現オフィスと新オフィスの場合を比較して表示する、請求項1に記載のワークデザインプラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークデザインプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスの環境や移転時の計画をデザインするシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、顧客の嗜好を客観的に分析し、その分析結果にもとづいて、顧客の嗜好傾向に合致した雰囲気を持つデザインをシミュレートするライフスタイルイメージのシミュレーションシステムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、所望のオフィススタイルの構成比、従業者数、および、各業務カテゴリーの面積構成比率の3つのパラメータのうちの2つに関するデータを入力するだけで、他の1つを計算してその結果を出力するオフィス設計支援システムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、オフィスで使用される機器の使用状況情報と、オフィスの環境情報とからオフィス環境に関する提案情報を提供するオフィス環境提案方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、オフィスの物理的な側面の他に雰囲気等の精神的な面も含めた評価を行うオフィス環境分析装置が記載されている。
【0007】
特許文献5には、移転先レイアウト作成手段、移転先配線図作成手段、入居工事費概算表作成手段、移転元原状回復工事費表作成手段、移転計画工程表作成手段を備える、オフィスの移転に関する計画を総合的に支援するオフィス移転計画支援システムが記載されている。
【0008】
特許文献6には、ユーザの主観調査データと客観調査データを含む調査データに基づいて、ユーザが所属する組織を施設内に配置する計画要件を生成する計画要件生成部と、計画要件に基づいてオフィス計画を生成し、生成されたオフィス計画に基づいてユーザの行動をシミュレーションし、オフィス計画の組織の配置に関する有効性を検証する有効性検証部とを備えるオフィス計画支援システムが記載されている。
【0009】
特許文献7には、オフィスの整理対象物の量に関する複数の質問に対する回答に基づいて、オフィスタイプを診断するオフィス診断システムが記載されている。
【0010】
このような従来のシステムを使用するオフィスデザインのプロジェクトは、システムを用いてオフィスをデザインし、そのデザインに従ってオフィスを完成させるまでであり、オフィスが完成した時点でプロジェクトは完了していた。しかし、実際には、完成したオフィスの利用開始後に、オフィスが機能しているか、働きやすいか等が把握できない。また働き方改革やコロナ禍等の影響により、働き方が多様化し、環境が変化することで、新たな要望や課題が生じ、これらを改善しなければ、デザインしたオフィスの満足度や利用価値が低減する。
【0011】
また、従来のシステムは、オフィスの設備、コンピュータ、事務用品等の物的資本への投資効果の検証が中心で、従業員の能力や才能、資格等の見えない人的資本への投資効果が検証できないため、近年義務づけられている人的資本の情報開示に対応しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-141180号公報
【文献】特許第3858569号明細書
【文献】特許第4394305号明細書
【文献】特許第4500846号明細書
【文献】特許第5043909号明細書
【文献】特許第6111238号明細書
【文献】特許第6376625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、ワークデザインのプロジェクトを実施する前後のオフィスの働きやすさ、満足度、プロジェクトの効果を可視化し、継続的なワークデザインの改善を行うことができ、また、人的資本への投資効果を可視化し、定量的に検証することができるワークデザインプラットフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)オフィスで働く従業員のユーザ端末と、
ネットワークを介して前記ユーザ端末と接続されるホストコンピュータと、
を備え、前記オフィスを最適化するワークデザインプラットフォームであって、
前記ホストコンピュータは、サーベイ手段、現状分析手段、及びシミュレーション手段を備え、
前記サーベイ手段は、前記ユーザ端末に入力された前記従業員のオフィスに対する満足度調査結果に基づいて、ワークデザインスコアを算出するワークデザインスコア算出手段を備え、
前記現状分析手段は、
前記オフィスへの前記従業員の入退出データに基づいて、出社率、滞在率、座席稼働率の少なくともいずれか一つを算出する稼働分析手段と、
前記オフィスの総面積、総タッチポイント数、執務席数、各ゾーンの面積に基づいて、タッチポイント密度、執務席密度、ゾーン別面積割合の少なくともいずれか一つを算出する空間分析手段のうち、少なくともいずれかを備え、
前記シミュレーション手段は、
目標収容人数、フロア面積及びフロア数に基づいて、各エリアの面積割合指標、各エリアの席数割合指標、タッチポイント席密度、執務席密度の少なくともいずれか一つを算出する空間シミュレーション手段と、
在籍人数、賃料、管理費、光熱費、賃貸契約期間、初期工事期間、工事費のデータに基づいて、一人当たりの月額費用、一席当たりの月額費用、賃貸契約期間にかかるオフィス構築・運用費用の少なくともいずれか一つを算出するコストシミュレーション手段と、
現オフィスの住所と、移転候補の新オフィスの住所と、従業員の住居・最寄駅のデータに基づいて、従業員の居住マップ、ハザードマップを作成するエリアシミュレーション手段のうち、少なくともいずれかを備える。
このワークデザインプラットフォームのサーベイ手段によるワークデザインスコアから、オフィスの多角的客観的な評価を得ることができ、オフィス構築における課題や方向性を探ることができる。また、現状分析手段における稼働分析によりオフィスの使用状況を可視化し、空間分析により最適な空間になっているかを可視化することで、オフィスの改善に活用することができる。さらに、シミュレーション手段における空間シミュレーションにより、オフィスの席数や面積の適正化を図ることができ、コストシミュレーションにより、オフィス構築におけるコストを削減することができ、エリアシミュレーションにより、オフィス移転先や、サテライトオフィス、シェアオフィスの候補地として、通勤に最適なエリアを導くことができる。
(2)前記手段1において、
前記サーベイ手段は、
ワークプレイス、ワークスタイル、エンゲージメント、ウェルビーイング、カルチャー及びやりがいの6つの視点からのオフィスに対する満足度調査に基づいて、各視点の満足度評価値と、これらの平均のワークデザインスコアを算出する。
ワークプレイス、ワークスタイル、カルチャーのスコアは、環境、仕組み、組織を数値で可視化し、ウェルビーイング、エンゲージメント、やりがいのスコアは、人が組織に対する評価を数値で可視化することで、組織目線だけでなく、多角的客観的な評価を得ることができる。ワークデザインスコアは、ワークプレイスの総合的な満足度を示し、他社のワークデザインスコアとの比較も可能で、相対的に評価することができる。
(3)前記手段2において、
前記ワークデザインスコアは、前記満足度調査結果の全回答者数に対する上位のポジティブ評価の数の割合に基づいて算出する。
(4)前記手段1から3のいずれかにおいて、
前記サーベイ手段は、
前記満足度調査を初回よりも設問数の少ない満足度調査を定期的に行い、ワークプレイス、ワークスタイル、エンゲージメント、ウェルビーイング、カルチャー及びやりがいの各項目の推移を表示する。
設問数を削減することにより、回答者の負担を減少させ、回答率を高めることで、計測精度の低下を防ぎ、推移の計測が可能になる。
(5)前記手段1から4のいずれかにおいて、
前記サーベイ手段は、
集中エリア、チームエリア、交流エリア、ネットワーク構築、ブランディング、オンラインMTG、多様性、情報、クリエイティビティ、魅力・愛着に対する満足度調査に基づいて、各視点の満足度評価と、これらの平均のプレイス満足度とを算出し、
ハイブリッドワーク、デジタル化、コミュニケーション(量)、コミュニケーション(範囲)、コミュニケーション(質)、優先課題、スピード感、情報共有、多様性への取組み、セレンディビティに対する満足度調査に基づいて、各視点の満足度評価と、これらの平均のスタイル満足度とを算出する。
ワークスタイル、ワークプレイスに特化し、深堀りしたサーベイを行うことで、ワークデザインにエビデンスを与え、従業員インサイトにかなうワークデザインを実施することができる。
(6)前記手段1から5のいずれかにおいて、
前記現状分析手段は、Wi-Fiアクセスポイントへの接続データに基づいて、出社率、滞在率を算出する。
働き方が変則的になっている現在において、稼働分析により、出社率や、滞在率、座席稼働率が把握され、チームや職種にどのような席種が必要かを再考することができる。
(7)前記手段1から6のいずれかにおいて、
前記現状分析手段は、前記オフィスの人が交わるゾーンの席数を総タッチポイント数とすると、前記オフィスの総面積を前記総タッチポイント数で除して、タッチポイント密度を算出する。
(8)前記手段1から7のいずれかにおいて、
前記現状分析手段は、前記オフィスのワークエリア総席数を執務席数とすると、前記オフィスの総面積を前記執務席数で除して、執務席密度を算出する。
空間分析により、現状のオフィス空間をエリアの種類や職種で分類し、最適な空間構成になっているかを再考することができる。また、数値の低下がみられる部署などを特定することで改善施策の立案に活用することができる。
(9)前記手段1から8のいずれかにおいて、
前記空間シミュレーション手段は、コミュニティ型、チームワーク型、プロジェクト型から選択されるベンチマーク、社員数、及び平均出社率に基づいて、各エリアの面積割合指標、席数割合指標を算出する。
空間シミュレーションにより、オフィスの方向性と席数の適正化から、全体の必要な面積算出を行うことで、より精度の高いオフィス設計の前提条件の算出が可能になる。
(10)前記手段1から9のいずれかにおいて、
前記コストシミュレーション手段は、イニシャル、ランニング総コストの月割りコストを社員数又は席数で除して、一人当たりの月額費用又は一席当たりの月額費用を算出する。
コストシミュレーションにより、構築したいオフィスの方向性、適正な坪数、内訳を割り出し、従来の手法(本発明によるワークデザインプラットフォームを利用しない場合)によるコストと比較することで、コストの削減を図ることができる。
(11)前記手段1から10のいずれかにおいて、
前記エリアシミュレーション手段は、平均通勤時間、通勤交通費を現オフィスと新オフィスの場合を比較して表示する。
エリアシミュレーションにより、現状と移転後の通勤状況を比較し、通勤により最適なエリアを導くことができる。また、サテライトオフィス開設や、シェアオフィス入居を検討するときの指標とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーベイ手段による定期的なサーベイにより、ワークデザインのプロジェクトを実施する前後のオフィスの働きやすさ、満足度、プロジェクトの効果を可視化し、継続的なワークデザインの改善を行うことができ、さらに、空間シミュレーションとコストシミュレーションにより、人的資本への投資効果を可視化し、定量的に検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るワークデザインプラットフォームを使用するシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】ワークデザイン装置の構成を示すブロック図。
【
図4】ワークデザインサーベイパルスのフローチャート。
【
図5】プレイススタイルサーベイのフローチャート。
【
図10】エリアシミュレーションのフローチャート。
【
図11】ワークデザインサーベイ結果の表示例を示す図。
【
図12】ワークデザインサーベイパルス結果の表示例を示す図。
【
図13A】プレイススタイルサーベイ結果の表示例を示す図。
【
図13B】プレイススタイルサーベイ結果の表示例を示す図。
【
図13C】プレイススタイルサーベイ結果の表示例を示す図。
【
図15】空間分析におけるゾーン毎色分け平面図の表示例を示す図。
【
図18】空間シミュレーション結果の表示例を示す図。
【
図19】コストシミュレーション結果の表示例を示す図。
【
図20】エリアシミュレーション結果の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0018】
<システム構成>
図1は、本発明に係るワークデザインプラットフォームを使用するシステム1の構成を示す。このシステム1は、ワークデザインプラットフォームを用いるワークデザイン装置2と、ネットワーク3を介してワークデザイン装置2と接続される複数のユーザ端末4及びユーザ代表端末5とからなる。
【0019】
ワークデザイン装置2は、
図2に示すように、サーベイ部6、現状分析部7、及びシミュレーション部8で構成される演算部9と、入力部10と、出力部11と、サーベイ回答データ記憶部12及び月毎サーベイ回答データ記憶部13を有する記憶部14とを備えるホストコンピュータからなる。
【0020】
演算部9は、本発明のサーベイ手段、現状分析手段、シミュレーション手段をそれぞれ構成するサーベイ部6、現状分析部7及びシミュレーション部8で、ユーザのワークプレイスに対するサーベイ、ユーザのワークプレイスの現状分析、及びユーザのワークプレイスのシミュレーションを実行する。
【0021】
入力部10は、ネットワーク3を介して接続されたユーザ端末4からサーベイ部6で使用する各従業員のサーベイ回答を受信し、ユーザ代表端末5からサーベイ部6、現状分析部7、及びシミュレーション部8で必要な会社情報等のクライアント全体の情報を受信し、外部サイトからハザードマップ等の外部情報を受信する。
【0022】
出力部11は、サーベイ部6、現状分析部7、及びシミュレーション部8で演算した結果をネットワーク3を介して接続された各ユーザ端末4に出力する。
【0023】
サーベイ回答データ記憶部12は、ユーザ端末から受信したサーベイ回答を記憶し、月毎サーベイ回答データ記憶部13は、ユーザ端末から受信した月毎サーベイ回答を記憶する。
【0024】
ネットワーク3は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network),イントラネット等からなり、ワークデザイン装置2とユーザ端末4及びユーザ代表端末5とを接続し、それらの間で情報の送受信を行う。
【0025】
ユーザ端末4は、本システムを利用するクライアントの各従業員が利用するパーソナルコンピュータからなる。また、ユーザ代表端末5は、本システムを利用するクライアントの代表者又は代表部署が所有するパーソナルコンピュータからなる。
【0026】
次に、演算部9のサーベイ部6、現状分析部7及びシミュレーション部8について詳述する。
【0027】
<サーベイ部>
サーベイ部6は、クライアントの従業員に対して、ワークデザインサーベイ、ワークデザインサーベイパルス、プレイススタイルサーベイの3つのサーベイを実施する。
【0028】
[ワークデザインサーベイ]
サーベイ部6は、
図3に示すように、ステップ101で、予め用意した設問をネットワーク3を介して各ユーザ端末4に配信し、ステップ102で、各ユーザ端末4からネットワーク3を介して返信された回答を取得する。
【0029】
ワークデザインサーベイにおける設問は、社歴、年代、性別、職種の基本設問及びeNPS(Employee Net Promoter Score)の他、ワークプレイス、ワークスタイル、カルチャー、ウェルビーイング、エンゲージメント及びやりがいの6項目52問である。
【0030】
「ワークプレイス」に関する設問は、オフィス環境に関するもので、全体満足度、集中エリア、チームエリア、交流エリア、ネットワーク環境、ブランディング、オンラインMTG、多様性、情報、クリエイティビティ、魅力・愛着について、5段階評価で回答し、1週間における働き場所の割合については合計100になるようにパーセントで回答し、課題を感じる場所については、複数選択で回答する。5段階評価は、例えば、満足している、やや満足している、どちらでもない、あまり満足していない、満足していない、の5つの選択肢から1つ選択する。
【0031】
「ワークスタイル」に関する設問は、働きやすさに関するもので、全体満足度、ハイブリッドワーク、デジタル化、コミュニケーション(量)、コミュニケーション(範囲)、コミュニケーション(質)、優先課題、スピード感、情報共有、多様性、セレンディビティについて、5段階評価で回答し、一体感については択一選択で回答し、1週間における働き方に費やす時間については合計100になるようにパーセントで回答する。
【0032】
「カルチャー」に関する設問は、企業風土に関するもので、習慣、教育、親和性、リーダーシップ、社会貢献について、5段階評価で回答し、企業風土については複数選択で回答する。
【0033】
「ウェルビーイング」は、企業全体の健康状態に関するもので、心理的安全性、人間関係、身体的健康、精神的健康、上機嫌について、5段階評価で回答する。
【0034】
「エンゲージメント」は、愛着心に関するもので、誇り、ビジョン共有(個人)、ビジョン共有(会社(組織))、熱心さ、キャリアパスについて、5段階評価で回答する。
【0035】
「やりがい」は、やりがいに関するもので、感謝、社内承認、充実感、チャレンジ精神、やりがいについて、5段階評価で回答する。
【0036】
eNPS(Employee Net Promoter Score)は、自社を自分の家族や友人、知人に奨めるかの推奨度を、そう思う(推奨者)、ややそう思う(中立者)、どちらでもない、あまりそう思わない、そう思わない(批判者)の5段階評価で回答する。
【0037】
サーベイ部6は、回答を集計し、サーベイ回答データ記憶部12に記憶し、ステップ103で、ワークデザインスコアを算出する。このために、まず、ワークプレイス、ワークスタイル、カルチャー、ウェルビーイング、エンゲージメント及びやりがいの6項目について数値化する。各設問の5段階評価のうち、例えば「満足している」と「やや満足している」の上位2選択肢を選択したポジティブ評価に基づいて、以下の数式により算出する。
【数1】
【0038】
eNPS(Employee Net Promoter Score)は、そう思う(推奨者)、ややそう思う(中立者)、どちらでもない、あまりそう思わない、そう思わない(批判者)の各選択肢の回答の割合(パーセンテージ)を算出し、推奨者-批判者の割合をポイントとして評価している。日本の国内企業のeNPSの平均スコアは、株式会社ビービッドの調査によると、2017年度で-61.1である。
【0039】
ワークプレイス、ワークスタイル、カルチャーのスコアは、環境、仕組み、組織を数値で可視化し、ウェルビーイング、エンゲージメント、やりがいのスコアは、人が組織に対する評価を数値で可視化することで、組織目線だけでなく、多角的客観的な評価を得ることができる。ワークデザインスコアは、6項目の平均値で、「はたらく」にまつわる総合的な満足度を示し、他社のワークデザインスコアとの比較も可能で、相対的に評価することができる。また、eNPSは、自社に対する推奨度で、客観的な視点で自社の良さを図れる。
【0040】
サーベイ部6は、ステップ104で、6項目のスコア、ワークデザインスコア、及びeNPSを、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図11に示すように、各ユーザ端末のプロジェクタに、グラフ化して、表示する。
【0041】
図11の表示内容において、D1は、ワークデザインサーベイにより得られたワークプレイス、ワークスタイル、カルチャー、ウェルビーイング、エンゲージメント及びやりがいの6項目のスコア、D2は、ワークデザインスコア及び回答者数、D3は、各項目のスコアの全体バランスをレーダーチャートで示す。
【0042】
[ワークデザインサーベイパルス]
ワークデザインサーベイパルスは、定期的に(実施例では1か月)、少数の設問に絞って行うサーベイである。サーベイ部6は、
図4に示すように、ステップ201で、予め用意した設問をネットワーク3を介して各ユーザ端末4に配信し、ステップ202で、各ユーザ端末4からネットワーク3を介して返信された回答を取得する。
【0043】
ワークデザインサーベイパルスにおける設問は、ワークデザインサーベイの55問から、ピックアップした19問でワークデザインスコアを測定する。すなわち、「ワークプレイス」に関する設問のうち、基本設問と、各項目の核となる2設問と、変遷を追いたい設問、及びeNPSである。
【0044】
「ワークプレイス」に関する設問は、全体満足度、魅力・愛着、1週間における働き場所の割合である。「ワークスタイル」に関する設問は、全体満足度、コミュニケーション(量)、1週間における働き方に費やす時間である。「カルチャー」に関する設問は、習慣、親和性である。「ウェルビーイング」は、身体的健康、精神的健康である。「エンゲージメント」は、誇り、ビジョン共有(個人)である。「やりがい」は、チャレンジ精神、やりがいである。
【0045】
サーベイ部6は、回答を集計し、月毎サーベイ回答データ記憶部13に記憶し、ステップ203で、ワークデザインサーベイと同様に、各項目のスコアと、その平均のワークデザインスコアと、eNPSを算出する。
【0046】
サーベイ部6は、ステップ204で、6項目のスコア、ワークデザインスコア、及びeNPSを、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図11、
図12に示すように、各ユーザ端末のプロジェクタに、月ごとの推移が分かるようにグラフ化して、表示する。
【0047】
次に、サーベイ部6は、ステップ205で、予め設定した設定期間(実施例では1か月)が経過したか否かを判断し、経過すれば、ステップ201に戻って、サーベイを繰り返す。
【0048】
図11の表示内容において、D4は、ワークデザインサーベイパルスにより得られたワークプレイス、ワークスタイル、カルチャー、ウェルビーイング、エンゲージメント及びやりがいの6項目のスコアの推移を示し、横軸にサーベイの年月日、縦軸にスコアを示す。
図12の表示内容において、D5は、ワークデザインサーベイパルスにより得られたワークプレイス、ワークスタイル、カルチャー、ウェルビーイング、エンゲージメント及びやりがいの6項目のそれぞれの小項目のスコアと、その推移及び棒グラフを示す。
【0049】
ワークデザインサーベイパルスでは、設問数を削減することにより、回答者の負担を減少させ、回答率を高めることで、計測精度の低下を防ぎ、推移の計測が可能になる。
【0050】
[プレイススタイルサーベイ]
プレイススタイルサーベイは、前述したワークデザインサーベイの6項目のうち、ワークプレイスとワークスタイルを深堀りするサーベイである。サーベイ部6は、
図5に示すように、ステップ301で、予め用意した設問をネットワーク3を介して各ユーザ端末4に配信し、ステップ302で、各ユーザ端末4からネットワーク3を介して返信された回答を取得する。
【0051】
プレイススタイルサーベイにおける設問は、オフィスの移転や改装を計画しているクライアントがワークプレイスとワークスタイルを深堀りして検討するのに使用され、現オフィスへの総合的評価、会議室の利用頻度、業務スペース、コミュニケーション、精神的・身体的健康、ファシリティへの要望等、プレイス満足度とスタイル満足度に関する84の設問であり、5~10段階の評価で回答したり、時間帯や業務割合の問いに答えたりする。
【0052】
プレイス満足度に関する設問は、集中エリア、チームエリア、交流エリア、ネットワーク構築、ブランディング、オンラインMTG、多様性、情報、クリエイティビティ、魅力・愛着の10項目の各満足度に関するもので、ワークデザインサーベイと同様に、ポジティブ評価のものをパーセントで算出し、その平均をプレイス満足度として数値化する。
【0053】
スタイル満足度に関する設問は、ハイブリッドワーク、デジタル化、コミュニケーション(量)、コミュニケーション(範囲)、コミュニケーション(質)、優先課題、スピード感、情報共有、多様性への取組み、セレンディビティの10項目の各満足度に関するもので、ワークデザインサーベイと同様に、ポジティブ評価の割合をパーセントで算出し、その平均をスタイル満足度として数値化する。
【0054】
サーベイ部6は、回答を集計し、サーベイ回答データ記憶部12に記憶し、ステップ303でプレイス満足度を算出し、ステップ304でスタイル満足度を算出する。
【0055】
サーベイ部6は、ステップ305で、各項目の満足度の割合、プレイス満足度及びスタイル満足度を、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図13に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化して、表示する。
【0056】
図13Aの表示内容において、D6は、プレイス満足度のスコアと、各項目のスコア、及び全体バランスを示し、
図13Bの表示内容において、D7は、スタイル満足度のスコアと、各項目のスコア、及び全体バランスを示す。
【0057】
また、プレイススタイルサーベイ結果の表示部には、
図3Cに示すように、KPI、タスク、コミュニケーション方法、生産性とストレス、業務の阻害要因、設備・オフィスに求めること、オフィス基本事項のタブが設けられ、これらのタブに、各タイトルに関連したサーベイの設問の回答データを活用して、自社の指数として表示する。
【0058】
「KPI」タブでは、オフィスの総合的評価、オフィスの改善の余地、リニューアルへの賛同意向、働きやすさ指数、働く上での阻害要因指数、業務内容に対する満足度、テレワーク時のストレス計測、会社へのロイヤルティ、会社への愛着が数値化され、表示される。このKPIタブにより、全体感が把握できる。
【0059】
「タスク」のタブでは、
「あなたは一日の中でどのような行動をしていますか」
等の設問の回答に基づいて、全従業員の行動バランスに関連して、従業員が扱うタスクの全体個数、個人あたりの個数、デスクワーク業務、会議打合せ等、学習や研修の割合を表示し、業務上のコミュニケーションの量と質に関連して、業務上のコミュニケーションの量(できている)、業務上のコミュニケーションの量(できていない)、業務上のコミュニケーションの量(必要ない業務)、業務上のコミュニケーションの質(できている)、業務上のコミュニケーションの質(できていない)、業務上のコミュニケーションの質(必要ない業務)の割合を表示し、また、業務に集中できる時間帯と業務に集中できない時間帯をノルム値と比較して表示する。
【0060】
「コミュニケーション方法」のタブでは、
「業務中に電話を利用する頻度、1日の平均利用回数を教えてください」
「あなたの業務において電話でのコミュニケーションは重要ですか」
「業務中にメールを利用する頻度、1日の平均利用回数を教えてください」
「あなたの業務においてメールでのコミュニケーションは重要ですか」
「業務中にチャットを利用する頻度、1日の平均利用回数を教えてください」
「あなたの業務においてチャットでのコミュニケーションは重要ですか」
等の設問の回答に基づいて、電話、チャット、メールのコミュニケーションツールでコミュニケーションできているかを数値化し、オンライン会議とオンライン以外の会議による1日当たりの開催数を表示し、フリーアドレス導入による業務効率向上への貢献度、業務効率を向上させる方法、従業員がより一層充実して働くのに適したスタイルとして業務効率の向上が期待できるデザインテイストを表示する。
【0061】
「生産性とストレス」のタブでは、
「あなたは今週、どの程度効率的に仕事をできたと感じていますか」
「あなたの業務の弊害になっていることがあえばお選び下さい」
等の設問の回答に基づいて、生産性の高い働き方をしている、していない割合を表示し、業務の阻害要因を表示し、テレワーク時の快適性を数値化して表示し、ストレスを感じる要因を表示し、身体的・精神的健康度合いを数値化して表示する。
【0062】
「業務の阻害要因」のタブでは、
「あなたは会社から伝えられる情報を抜け漏れ無く受け取れていますか」
「業務に関する情報や依頼事項などはどこから収集していますか」
等の設問の回答に基づいて、社内情報伝達方法について受け取れているか、受け取れていないかの割合を全体、年代別及び性別に表示し、業務の阻害要因(オフィス内騒音)の要因を表示するとともに、その選択項目数の平均値を表示し、業務の阻害要因(オフィス内異臭)の要因を表示するとともに、その選択項目数の平均値を表示する。
【0063】
「設備・オフィスに求めること」のタブでは、
「オフィスビル設備に求める利便性や快適性について、以下より当てはまるものをお選びください」
等の設問の回答に基づいて、オフィスビルの利便性・快適性を感じるビル設備を表示するとともにそれらの割合を表示し、その選択項目数の平均値を表示し、オフィスに求める望ましいデザインスタイルを表示するとともにそれらの割合を表示し、その選択項目数の平均値を表示する。
【0064】
「オフィス基本事項」(1)のタブでは、固定以外の座席数は適正か、テレワーク実施率、来客スペースの数、来客スペースのデザイン、オフィス内での連携のしやすさ、執務室の集中可能性、業務効率の向上、共有スペースの適正、共有スペースの活用度、デスクなどの最適性、デスクなどの業務貢献度、デスクの身体的ストレスが、それぞれに関連する設問の回答に基づいて、ポジティブ回答とネガティブ回答の両方をパーセントで表示する。
「オフィス基本事項」(2)のタブでは、部署配置の影響、相性・関係性の座席への反映、会議ツールの利便性、会議室予約の可能性、作業テーブルの最適配置、作業テーブルの貢献性、社内レイアウト最適性、作業テーブルの貢献性、社内レイアウトの最適性、光量の最適性が、それぞれに関連する設問の回答に基づいて、ポジティブ回答とネガティブ回答の両方をパーセントで表示する。
「オフィス基本事項」(3)のタブでは、照明の業務影響力、オフィス家具の貢献性、個人収納スペースの最適性、執務スペースの最適性、個人以外の書類の収納スペースの最適性、空調設備の貢献性、通信快適性、デバイスの快適性、デバイス改善の緊急性、会議室の資料投影設備満足度、会議室の音響設備満足度、OA機器快適性が、それぞれに関連する設問の回答に基づいて、ポジティブ回答とネガティブ回答の両方をパーセントで表示する。
【0065】
プレイススタイルサーベイは、網羅的なワークデザインサーベイに対し、ワークスタイル、ワークプレイスに特化し、深堀りしたサーベイを行うことで、ワークデザインにエビデンスを与え、従業員インサイトにかなうワークデザインを実施することができる。
【0066】
<現状分析部>
現状分析部7は、稼働分析と、空間分析を行う。
【0067】
[稼働分析]
稼働分析は、オフィスの使用状況を数値化し、可視化する。現状分析部7は、
図6に示すように、ステップ401で、ユーザ代表端末5からネットワーク3を介して、必要データを取得する。必要データとしては、既存オフィスのセキュリティ入退館データ、Wi-Fiアクセスポイントのログデータ、既存オフィスの出社管理・勤怠データ、はたらき方実態アンケート調査結果等がある。現状分析部7は、ステップ402で、取得したデータに基づいて、出社率、滞在率、座席稼働率を算出し、ステップ403でそれぞれの平均値、最大値、最小値を算出し、ステップ404で部署毎の平均稼働率を算出する。
【0068】
出社率は、全社員が出社したときの出社率を100%とし、現在出社している社員の割合で、算出する。
滞在率は、営業時間内の1時間毎の出社率の平均値で、算出する。
座席稼働率は、出社人数に対する、1時間毎の座席数の平均値の比で、算出する。
【0069】
現状分析部7は、ステップ405で、算出した出社率、滞在率、座席稼働率を、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図14に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
【0070】
図14の表示内容において、D8は、出社率の平均値、最大値、最小値を半円グラフで示し、出社率の一日毎に推移を折れ線グラフで示している。滞在率、座席稼働率についても、同様に表示する。
【0071】
テレワークと出社のハイブリッドワーク、営業活動等による外出、フレックス制度等により、オフィスの滞在時間が変則的になっているが、稼働分析により、出社率や、滞在率、座席稼働率が把握され、チームや職種にどのような席種が必要かを再考することができる。
【0072】
[空間分析]
空間分析は、現状のオフィス空間をエリアの種類や職種で分類し、最適な空間構成になっているかを可視化する。現状分析部7は、ステップ501で、ユーザ代表端末5からネットワーク3を介して、必要データを取得する。必要データとしては、業種、業界、既存オフィスの住所、既存オフィスの家具付き平面図等がある。ステップ502で、取得したデータに基づいて、ゾーン毎色分け平面図を作成し、ステップ503で席種別席数、ステップ504でタッチポイント密度、ステップ505で執務席密度、ステップ506でゾーン別面積割合をそれぞれ算出する。
【0073】
ゾーン毎色分け平面図は、取得した既存オフィスの家具付き平面図のCADデータを利用して、ゾーン毎に色分けする。これは人為的に行う。
席種別席数は、各ゾーンをコミュニティ、チームオープン、チームクローズ、ワーク、サーキュレーション、サポートの席種(エリア)に割り振り、各席種の席数と面積を入力する。これも人為的に行う。
【0074】
タッチポイント密度は、人が交わるゾーンの席数を総タッチポイント数とすると、下記式で算出することができる。
【数2】
タッチポイント密度が高いほど、1つの空間に収容できる従業員が多くなる。
タッチポイント密度は下記執務席密度より低くなるため、タッチポイント数で社員席をカバーさせた方が空間効率が高まる。
【0075】
執務席密度は、ワークエリア総席数を執務席数とすると、下記式で算出することができる。
【数3】
執務席密度が高いほど、執務席における収容人数が多くなる。
また、タッチポイントでの執務バランスを上げることで、執務席密度を高くすることができ、ゆったりと業務に集中する空間構成が可能となる。
【0076】
ゾーン別面積割合は、オフィス総面積に対する、各ゾーンが占める面積の割合である。ゾーン別面積割合は、コミュニティ型、チームワーク型、プロジェクト型のベンチマークと比較することで、自社の各ゾーンの面積の過不足を検討することができる。
【0077】
既存オフィススペースプログラム表は、各エリアの個数(部屋数)、席数、平米数を表にしたものである。
【0078】
現状分析部7は、ステップ507で、ゾーン毎色分け平面図、席種別席数、タッチポイント密度、執務席密度、ゾーン別面積割合、既存オフィススペースプログラム表を、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図15、
図16に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
【0079】
図15は、ゾーン毎色分け平面図の一例を示し、
図16は、空間分析結果の一例を示す。
図16において、コラボ比は、ワークスペース総席数に対するチーム(ミーティング)席数の割合を示す。
【0080】
空間分析により、現状のオフィス空間をエリアの種類や職種で分類し、最適な空間構成になっているかを再考することができる。
また、数値の低下がみられる部署などを特定することで改善施策の立案に活用することができる。
【0081】
[社員構成サマリ]
社員構成サマリは、ワークデザインサーベイ結果から、性別、年齢帯、勤続年数、所属部署の社員構成を算出する。
【0082】
社員構成サマリは、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図17に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
図17において、在籍年数とプレイス/スタイル満足度は、在籍年数別にプレイス満足度とスタイル満足度を示したもので、これにより、プレイス満足度とスタイル満足度が在籍年数によってどのように変化するが分かる。
【0083】
<シミュレーション部>
シミュレーション部8は、空間シミュレーション、コストシミュレーション、エリアシミュレーションを行う。
【0084】
[空間シミュレーション]
空間シミュレーションは、目標に応じた推奨可能なオフィスのレシピ(空間構成)を提案する。シミュレーション部8は、ステップ601で、ユーザ代表端末5からネットワーク3を介して、必要データを取得する。必要データとしては、目標の収容人数、移転先の面積及びフロア数、特殊要件(社長室、スタジオ等)の必要数等がある。シミュレーション部8は、ステップ602~607で、取得したデータに基づいて、各エリアの面積割合指標、各エリアの席数割合指標、本提案におけるタッチポイント密度、執務席密度を算出する。
【0085】
まず、シミュレーション部8は、ステップ602で、コミュニティ型、チームワーク型、プロジェクト型のベンチマークと、社員数、平均出社率の入力を受け付け、ステップ603、604で、下記式により、各エリアの面積割合指標、各エリアの席数割合指標を算出する。
【数4】
【0086】
次に、ステップ605、606で、各エリアの収容可能席数から総タッチポイント数と執務席数を求め、この総タッチポイント数と、オフィスの総面積から、前述の数2,数3により、本提案におけるタッチポイント密度と執務席密度を算出する。
【0087】
シミュレーション部8は、ステップ607で、算出した各エリアの面積割合指標、各エリアの席数割合指標、本提案におけるタッチポイント密度・執務席密度は、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図18に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
【0088】
空間シミュレーションにより、各エリアの面積割合と席数割合の指標が得られるので、目標とするオフィスの空間構成を検討することができる。
【0089】
[コストシミュレーション]
コストシミュレーションは、一人当たり、一席当たり費用の改善を軸に、構築・運営費を提案する。シミュレーション部8は、ステップ701で、ユーザ代表端末5からネットワーク3を介して、必要データを取得する。必要データとしては、賃貸ビルの坪単価・管理費・光熱費、賃貸契約期間・初期工事期間、在籍人数、内装工事費・内装家具費・原状回復工事費等がある。シミュレーション部8は、ステップ702~704で、取得したデータに基づいて、一人当たり月額費用、一席当たり月額費用(評価値)、賃貸契約期間にかかるオフィス構築・運用費用、各費用内訳を算出する。
【0090】
一人当たり月額費用は、下記式で算出する。
【数5】
一人当たり月額費用が高い企業ほど、オリジナリティのある空間や生産性の高まるオフィスを用意されていないと、実際の生産性への効果は見込めない。賃料ばかりに比重がいって、実際に実務を行う環境が整っていない場合、それが課題となる。
【0091】
一席当たり月額費用(評価値)は、下記式で算出する。
【数6】
一席当たりの月額費用を下げることができれば、空間効率が高く、有効化されていることにつながる。
【0092】
賃貸契約期間にかかるオフィス構築・運用費用及び各費用内訳は、オフィス賃料、光熱費、管理費から算出する。
【0093】
シミュレーション部8は、ステップ705で、算出した一人当たり月額費用、一席当たり月額費用(評価値)、賃貸契約期間にかかるオフィス構築・運用費用、各費用内訳を、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図19に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
【0094】
構築したいオフィスのデザイン、適正な坪数、レイアウトを割り出し、従来の手法(本発明によるワークデザインプラットフォームを利用しない場合)によるコストと比較することで、契約面積が浮いて来る場合が多くなるため、余剰コストをオフィスに来たくなる仕掛けづくりやアップデート予算として計画することが可能となる。
【0095】
[エリアシミュレーション]
エリアシミュレーションは、従業員の住居最寄駅をもとに、現状と移転後の通勤状況を比較し、可視化する。シミュレーション部8は、ステップ801で、ユーザ代表端末5からネットワーク3を介して、必要データを取得する。必要データとしては、従業員の住居最寄駅情報、各交通機関の駅間所要時間・運賃表、ハザードマップデータ等がある。シミュレーション部8は、ステップ802、803で、取得したデータに基づいて、従業員居住マップ、平均通勤時間・通勤交通費、ハザードマップレイヤーを作成する。
【0096】
従業員居住マップは、移転候補地が入力されると、この移転候補地を中心とする地図上に従業員の居住最寄駅を表示する。
平均通勤時間・通勤交通費は、従業員の居住最寄駅から移転候補地までの通勤時間と、通勤交通費を合計して平均値を算出し、現状と移転後とを比較する。
ハザードマップレイヤーは、従業員居住マップ上に、移転候補地を中心とするハザードマップをオーバーレイし、洪水浸水想定区域、高潮浸水想定区域、津波浸水想定区域、土砂災害警戒区域、雪崩危険個所を表示する。
【0097】
シミュレーション部8は、ステップ804で、作成した従業員居住マップ、平均通勤時間・通勤交通費は、ネットワーク3を介して各ユーザ端末4に出力し、
図20に示すように、各ユーザ端末4のプロジェクタに、グラフ化し、表示する。
【0098】
従業員の居住最寄駅をもとに、現状と移転後の通勤状況を比較し、マップで可視化することで、現オフィスの利便性、通勤時間・交通費を「通勤」という観点からマッピングし、通勤により最適なエリアを導くことができる。また、サテライトオフィス開設や、シェアオフィス入居を検討するときの指標とすることができる。
【符号の説明】
【0099】
1…ワークデザインプラットフォームを使用するシステム
2…ワークデザイン装置(ホストコンピュータ)
3…ネットワーク
4…ユーザ端末
5…ユーザ代表端末
6…サーベイ部
7…現状分析部
8…シミュレーション部
9…演算部
10…入力部
11…出力部
12…サーベイ回答データ記憶部
13…月毎サーベイ回答データ記憶部
14…記憶部
【要約】
【課題】ワークデザインのプロジェクトを実施する前後のオフィスの働きやすさ、満足度、プロジェクトの効果を可視化し、継続的なワークデザインの改善を行うことができ、また、人的資本への投資効果を可視化し、定量的に検証する。
【解決手段】ワークデザインプラットフォーム1は、ユーザ端末4と、ネットワーク3を介してユーザ端末4と接続されるホストコンピュータ2とを備える。ホストコンピュータ2は、サーベイ手段、現状分析手段、及びシミュレーション手段を備える。サーベイ手段は、ユーザ端末に入力された従業員のオフィスに対する満足度調査結果に基づいて、ワークデザインスコアを算出する。現状分析手段は、稼働分析手段と、空間分析手段のうち、少なくともいずれかを備える。シミュレーション手段は、空間シミュレーション手段と、コストシミュレーション手段と、エリアシミュレーション手段のうち、少なくともいずれかを備える。
【選択図】
図2