(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ウチワノキ抽出物を有効成分として含むアンドロゲン受容体関連疾患治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/63 20060101AFI20240710BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240710BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240710BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240710BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240710BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240710BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240710BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240710BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
A61K36/63
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P13/08
A61P13/02
A61P17/14
A61K31/7048
A23L33/105
A61K127:00
(21)【出願番号】P 2023513744
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2021011564
(87)【国際公開番号】W WO2022045846
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109845
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114027
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】524090404
【氏名又は名称】ケー-バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】K-BIOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン-ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン、サン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン-ジン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164221(WO,A1)
【文献】特開2003-073279(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110328(WO,A1)
【文献】Journal of Nutritional Biochemistry,2014年,25,73-80
【文献】Carcinogenesis,2001年,22(3),409-414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物
であって、
ここで、前記アンドロゲン受容体関連疾患は、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛からなる群から選ばれた1つ以上である。
【請求項2】
前記抽出物が、水、炭素数1~6個のアルコール(alcohol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、酢酸エチル(ethyl acetate)、塩化メチレン(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、石油エーテル(petroleum ether)、亜臨界流体、および超臨界流体からなる群から選ばれた1つ以上の溶媒による抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記ウチワノキ抽出物が、イソクエルシトリンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記ウチワノキ抽出物が、ウチワノキ葉抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物が、アンドロゲン受容体の発現を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物が、5AR2(5α-reductase 2)、SRC1(steroid receptor coactivator 1)、ER(estrogen receptor)、および前立腺特異抗原(PSA)からなる群から選ばれた1つ以上のアンドロゲンシグナル関連因子を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物が、PI3K/AKTシグナリング経路を抑制することを特徴とする、請求項1に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
ウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または改善用食品組成物
であって、
ここで、前記アンドロゲン受容体関連疾患は、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛からなる群から選ばれた1つ以上である。
【請求項9】
前記食品組成物が、健康機能食品であることを特徴とする、
請求項8に記載のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項10】
ウチワノキ抽出物のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療薬剤を生産するための、使用
であって、
ここで、前記アンドロゲン受容体関連疾患は、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛からなる群から選ばれた1つ以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウチワノキ抽出物を有効成分として含むアンドロゲン受容体関連疾患治療用薬学的組成物などに関する。
【0002】
本出願は、2020年8月31日に出願された韓国特許出願第10-2020-0109845号および2021年8月27日に出願された韓国特許出願第10-2021-0114027号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
アンドロゲン(androgen)は、男性生殖系の成長と発達に影響を及ぼすホルモンの総称であり、男性ホルモンとも言い、男性ホルモンの作用を示すすべての物質を称する言葉である。男性の2次性徴の発達に作用するホルモンであり、主に男性の精巣から分泌され、一部は副腎皮質と女性の卵巣からも分泌されるが、炭素原子19個を有するステロイドとして睾丸から分泌されるテストステロンを含み、細胞で還元されて生成されるジヒドロテストステロン(dehydrotestosterone)、それが変化して尿中に排泄されるアンドロステロンやジヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone)などや、副腎皮質から分泌されるアドレノステロンなどが含まれる。
【0004】
これらは、生殖器官やその他の性的特徴の発育や維持および機能を担当する。特に骨組織でタンパク質の増加、腎臓の重量とサイズの増加、汗と皮脂泉の活動の増加、赤血球細胞の再生などに関与し、皮膚に作用すると、表皮の角質層が厚くなって皮脂が増加するので、思春期の青少年に発生するにきびの原因となる。また、体毛とも関係があるが、男性のひげの場合は、アンドロゲンが増加するほど増加する傾向を示すが、額や頭頂部の毛が減る脱毛を進行させることがある。
【0005】
このようにアンドロゲンが異常増加して発生するアンドロゲン依存性疾患のうち、前立腺肥大症(Benign prostatic hyperplasia,BPH)は、過去には前立腺が肥大化して膀胱下部の尿が出る通路を塞いで尿道閉塞を起こして尿の流れが減少した状態と定義し、組織学的には前立腺間質や前立腺の上皮組織細胞が増殖したものと定義した。しかしながら、最近では、このような定義や概念で説明するには疾患の病態生理が非常に複雑で、現在は50歳以上の男性で排尿の回数が一日8回以上の頻尿、夜間頻尿、強い突然尿意(小便をしたい感じ)を感じながら、耐えがたい尿意を覚える尿意切迫などの膀胱貯蔵症状と遷延性排尿(すぐに出ず、排尿に時間がかかる現象)、断絶尿(尿の流れが切れる現象)、排尿時に力を入れなければならない現象など膀胱の排出障害を示す症状を総称した下部尿路症状を訴えることを前立腺肥大症と定義している。
【0006】
主要な臨床的特徴としては、前立腺肥大(prostate enlargement)および下部尿路(lower urinary tract)兆候がある。前立腺肥大は、アンドロゲンの存在下に起こり、タンパク質同化ステロイド(anabolic steroids)が前立腺の容量を増加させ、尿流量(urine flow)を減少させて、増加した排尿頻度(urinary frequency)を誘発することが知られている。
【0007】
前立腺は、テストステロンおよびその精巣外前駆体(extratesticular origin)がさらに強力なDHT(dihydrotestosterone)に活性化される、アンドロゲン依存性器官である。通常、前立腺は、DHT形成の重要な器官であり、前立腺の内分泌活性の全身的な効果(systemic effect)は、主にDHT形成および循環(circulation)のためのその排出に関する。DHTの生産は、年齢によって増加し、前立腺成長の増大および肥大症を誘発する。DHTの重要性は、5α-レダクターゼ(5α-reductase)抑制剤がBPH男性患者に適用された臨床研究によって確認される。多くの場合に、5α-レダクターゼ抑制剤を用いた治療法は、前立腺のDHTレベルと前立腺のサイズを顕著に減少させることが知られている。フィナステリド(finasteride)は、アンドロゲン依存性疾患、例えば、男性型脱毛、前立腺肥大症(BPH)および前立腺がんの治療に幅広く用いられている。フィナステリドは、5α-レダクターゼの競合的および特異的抑制剤であり、前立腺、毛嚢細胞(hair follicles)および他のアンドロゲン感受性組織でテストステロンのDHT転換を遮断して血清および前立腺内DHT濃度の抑制を招く。フィナステリドおよびデュタステリド(dutasteride)のような従来用いられた薬物は、BPHの効果的な治療方法であることが証明されたが、これらの使用は、勃起不全(erectile dysfunction)、性欲減弱(loss of libido)、目まい(dizziness)および上気道感染(upper respiratory tract infection)のような副作用のために厳格に制限されている。
【0008】
なお、ウチワノキ(団扇木、学名:Abeliophyllum distichum)は、モクセイ科に属する木であり、ウチワノキ属に属する唯一の種である。朝鮮原産の固有種であり、京畿道と忠清道の日当たりのよい山のふもとでまれに成長する。
【0009】
しかしながら、ウチワノキ抽出物を有効成分として含むアンドロゲン受容体関連疾患の予防、改善または治療用組成物については知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明者らは、ウチワノキ抽出物およびその活性成分であるイソクエルシトリンが、抗アンドロゲン活性があり、アンドロゲンシグナリングおよび関連因子を抑制し、前立腺肥大症動物モデルに対する治療効果が有意であることを確認することによって本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0013】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記本発明の目的を達成するために、本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む、アンドロゲン受容体関連疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0016】
本発明の一実施例において、前記抽出物は、水、炭素数1~6個のアルコール(alcohol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、酢酸エチル(ethyl acetate)、塩化メチレン(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、石油エーテル(petroleum ether)、亜臨界流体、および超臨界流体からなる群から選ばれた1つ以上の溶媒による抽出物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0017】
本発明の他の実施例において、前記アンドロゲン受容体関連疾患は、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0018】
本発明のさらに他の実施例において、前記ウチワノキ抽出物は、イソクエルシトリンを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0019】
本発明のさらに他の実施例において、前記ウチワノキ抽出物は、ウチワノキ葉抽出物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0020】
本発明のさらに他の実施例において、前記組成物は、アンドロゲン受容体の発現を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0021】
本発明のさらに他の実施例において、前記組成物は、5AR2(5α-reductase 2)、SRC1(steroid receptor coactivator 1)、ER(estrogen receptor)、および前立腺特異抗原(PSA)からなる群から選ばれた1つ以上のアンドロゲンシグナル関連因子を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明のさらに他の実施例において、前記組成物は、PI3K/AKTシグナリング経路を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のさらに他の実施例において、前記食品組成物は、健康機能食品であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
また、本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含むアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含む組成物のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用途を提供する。
【0026】
また、本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物のアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療薬剤を生産するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によるウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンは、アンドロゲン受容体抑制活性があり、前立腺肥大症動物モデルに対する治療効果に優れているので、アンドロゲン受容体関連疾患である前立腺肥大症、アンドロゲン依存性脱毛、排尿障害および前立腺がんなど関連産業に広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1aおよび
図1bは、ウチワノキ葉(Abeliophyllum distichum leaf,ADL)の熱水(D.W.)、エタノール(EtOH)、ヘキサン(Hexane)抽出物をLNCaP(前立腺細胞)に処理することにより、テストステロン(TP)誘導AR、5AR2、およびPSA過発現抑制効果を示す図である。
【
図2】
図2は、ウチワノキ葉の熱水抽出物(ADLD)、エタノール抽出物(ADLE)、およびヘキサン抽出物(ADLH)のテストステロン(TP)誘導AR、5AR2、PSA過発現抑制効果を蛍光染色で示す図である。
【
図3】
図3は、ウチワノキ葉の収穫時期によるテストステロン(TP)誘導5AR2、およびPSA過発現抑制効果を示す図である。
【
図4】
図4は、ウチワノキ葉エタノール抽出物の代謝産物(metabolite)分析クロマトグラムを示す図である。
【
図5】
図5aおよび
図5bは、ウチワノキ機能性成分4種(イソクエルシトリン(IQ)、ルチン、クロロゲン酸(CA)、イソラムネチン3-グルコシド-7-ラムノシド(IR))のテストステロン(TP)誘導AR、5AR2、およびPSA過発現抑制効果を示す図である。
【
図6】
図6aおよび
図6bは、イソクエルシトリン(IQ)の濃度によるテストステロン(TP)誘導AR、5AR2、PSAおよびPI3Kの過発現抑制効果を示す図である。陽性対照群:Fi、フィナステリド
【
図7】
図7aおよび
図7bは、イソクエルシトリン(IQ)およびウチワノキ葉抽出物の濃度によるテストステロン(TP)誘導PI3K(Cell Signaling)、PCNA(SantaCruz)およびサイクリンD1(Cell Signaling)の過発現抑制効果を示す図である。
【
図8】
図8は、ウチワノキの抽出時期によるイソクエルシトリンの含有量を分析した結果を示す図である。
【
図9】
図9は、前立腺肥大症動物モデルの作製過程およびウチワノキ抽出物の投与計画を示す図である。陽性対照群:ノコギリヤシ(saw)またはフィナステリド(Fi)。
【
図10】
図10a~
図10eは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後、前立腺インデックスを測定した結果を示す図であり、
図10aは、前立腺のサイズ、
図10bは、前立腺重量、
図10cは、体重対比前立腺重量、
図10dは、前立腺組織のルーメン領域、
図10eは、前立腺組織の上皮の厚さを示す図である。
【
図11a】
図11aは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内5AR2、SCR1、AR、ERおよびPSAの発現量を示す図である。
【
図11b】
図11bは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内5AR2、SCR1、AR、ERおよびPSAの発現量を定量的に示す図である。
【
図11c】
図11cは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内前立腺上皮細胞をH&E染色で観察した結果を示す図である。
【
図11d】
図11dは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた血清内DHTレベルを測定した結果を示す図である。
【
図12a】
図12aは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内PI3K、p-AKT、およびt-AKTの発現レベルを測定した結果を示す図である。
【
図12b】
図12bは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内PI3K、およびp-AKTの発現量を定量的に示す図である。
【
図13a】
図13aは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内EGF(SantaCruz)、IGF-1(ABCam)、TGF-1β(SantaCruz)、およびVEGF(SantaCruz)の発現レベルを測定した結果を示す図である。
【
図13b】
図13bは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内EGF(SantaCruz)、IGF-1(ABCam)、TGF-1β(SantaCruz)、およびVEGF(SantaCruz)の発現量を定量的に示す図である。
【
図14a】
図14aは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内PCNA、およびサイクリンD1の発現レベルを測定した結果を示す図である。
【
図14b】
図14bは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内PCNA、およびサイクリンD1の発現量を定量的に示す図である。
【
図14c】
図14cは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内PCNAを組織化学染色を通じて観察した結果を示す図である。
【
図15a】
図15aは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内Bax(SantaCruz)、およびBcl-2(Cell Signaling)の発現レベルを測定した結果を示す図である。
【
図15b】
図15bは、前立腺肥大症動物モデルにウチワノキ抽出物100mg/kg/dの経口投与後に得られた前立腺組織内Bax(SantaCruz)、およびBcl-2(Cell Signaling)の発現量を定量的に示す図である。
【
図16】
図16は、前立腺肥大症動物モデルにイソクエルシトリン(IQ)1mg/kgまたは10mg/kgの経口投与後に前立腺インデックスを測定した結果を示す図である(A:前立腺のサイズ、B:前立腺重量、C:体重対比前立腺重量)。
【
図17】
図17は、前立腺肥大症動物モデルにイソクエルシトリン(IQ)1mg/kgまたは10mg/kgの経口投与後に得られた前立腺組織内AR、SRC-1、および5AR2の発現抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明は、イソクエルシトリンまたはウチワノキ抽出物を有効成分として含むアンドロゲン受容体関連疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0031】
本発明のウチワノキは、ウチワノキ(Abeliophyllum distichum)、より好ましくは、Abeliophyllum distichum Nakaiであってもよいが、これに制限されるものではない。ウチワノキは、モクセイ科に属する木であり、ウチワノキ属に属する唯一の種である。朝鮮原産の固有種であり、京畿道と忠清道の日当たりのよい山のふもとでまれに成長する。
【0032】
本発明のウチワノキは、その原形を損なうことなくそのまま使用したり、当業者が意図する工程速度および工程(製造)効率を考慮して前処理過程を行った後に使用することができ、前記前処理過程としては、例えば、通常の選別、水洗、切断、粉末化、乾燥などの段階を経ることができる。
【0033】
本発明のウチワノキは、その収穫時期が制限されるものではないが、春または秋に収穫したものであってもよく、好ましくは、秋、より好ましくは、晩秋に収穫したものであってもよい。
【0034】
本発明のウチワノキ抽出物は、植物体全体または植物の一部から得られ、例えば、幹、根元、葉、実、および花からなる群から選ばれた1つ以上を含む部位から得られる。本発明の一実施例では、ウチワノキの葉から抽出物を得られた。
【0035】
本発明のウチワノキ抽出物は、公知の天然物抽出方法によって抽出することができる。例えば、水、炭素数1~6個の有機溶媒および亜臨界または超臨界流体からなる群から選ばれた1つ以上の溶媒で抽出することができる。前記炭素数1~6個の有機溶媒は、炭素数1~6個のアルコール(alcohol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、酢酸エチル(ethyl acetate)、塩化メチレン(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)および石油エーテル(petroleum ether)からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明のウチワノキ抽出物は、好ましくは、エタノールで抽出することができるが、これに制限されるものではない。抽出方法は、前記溶媒を使用して冷浸、温浸、加熱など通常の抽出方法が使用可能である。
【0037】
本発明において、前記エタノールは、濃度が制限されないが、例えば、30~100%、40~100%、50~100%、60~100%、50~90%、60~90%、60~80%、65~75%、または約70%エタノール抽出物でありうる。
【0038】
本発明において、イソクエルシトリン(isoquercetin)は、IUPAC名「3-(β-D-グルコピラノシルオキシ)-3’,4’,5,7-テトラヒドロキシイソフラボン」とも命名され、分子式C21H20O12であり、分子量が464.379[g/mol]の化合物であり、CAS登録番号が482-35-9である。前記イソクエルシトリンは、下記化学式1で表され得る。
【0039】
【0040】
本発明において、前記組成物は、アンドロゲン受容体の発現を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、前記組成物は、5AR2(5α-reductase 2)、SRC1(steroid receptor coactivator 1)、ER(estrogen receptor)、および前立腺特異抗原(PSA)からなる群から選ばれた1つ以上のアンドロゲンシグナル関連因子を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、前記組成物は、PI3K/AKTシグナリング経路を抑制することができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の一実施例では、ウチワノキ抽出物の溶媒によるアンドロゲンシグナリング関連因子AR、5AR2、およびPSAの発現レベルを確認した結果、ウチワノキエタノール抽出物の抑制効果が最も優れていることを確認し(実施例2参照)、
【0044】
本発明の一実施例では、ウチワノキ葉の収穫時期によるアンドロゲンシグナリング関連因子5AR2、およびPSAの発現レベルを確認した結果、晩秋に収穫したウチワノキ抽出物の抑制効果が、晩春に収穫したウチワノキ抽出物の抑制効果より優れていることを確認し(実施例4参照)、
【0045】
本発明の一実施例では、ウチワノキ葉抽出物の機能性成分の1つであるイソクエルシトリン処理によるアンドロゲンシグナリング関連因子AR、5AR2、およびPSAの発現レベルを確認した結果、イソクエルシトリンのAR、5AR2、およびPSA抑制効果が有意であることを確認し(実施例5-2参照)、
【0046】
本発明の一実施例では、イソクエルシトリン処理によるPI3Kおよび細胞増殖因子PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、cyclin D1の発現阻害効果を確認した結果、イソクエルシトリンおよびウチワノキ葉エタノール抽出物の濃度に依存的にPI3K、PCNA、およびサイクリンD1の発現が有意に減少することを確認し(実施例5-3参照)、
【0047】
本発明の一実施例では、前立腺肥大症動物モデルに対してウチワノキ抽出物およびイソクエルシトリンの前立腺肥大症の治療効果を確認した結果、ウチワノキ抽出物およびイソクエルシトリンが前立腺インデックスを有意に改善し、アンドロゲン受容体および前立腺関連因子のレベルを有意に改善することを確認した(実施例7参照)。
【0048】
したがって、本発明のウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンは、アンドロゲン受容体関連疾患の治療用組成物の有効成分として使用することができる。
【0049】
本発明の用語「アンドロゲン受容体関連疾患」とは、アンドロゲン受容体(AR:androgenic receptor)の異常な過度な刺激により起こり得るシグナル伝達によって引き起こされる多様な疾患を意味し、特に種類を限定するものではないが、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛などを例示することができる。
【0050】
前立腺の正常な発達と保存は、アンドロゲン受容体を通した男性ホルモンアンドロゲンの役割に依存する。正常な前立腺では、一日に1~2%の細胞が死滅し、新しい細胞に代替されるが、これは、アンドロゲン受容体によって制御される正常前立腺機能の一部である。したがって、アンドロゲン受容体機能が正常に維持されることが前立腺健康の核心である。特に、前立腺がん細胞は、成長と生存のために主にアンドロゲン受容体に依存し、これは、アンドロゲン依存性前立腺がんと非依存性前立腺がんの両方に必須である。したがって、アンドロゲン受容体の転写作用を抑制できる療法が前立腺がんの治療に重要な役割をする。
【0051】
また、前立腺肥大症発生の最も大きい誘発因子としては、男性生殖系の成長と発達に影響を及ぼすアンドロゲン性ホルモン(AH:androgenic hormones)であり、アンドロゲン性ホルモンは、アンドロゲン受容体(AR:androgenic receptor)に結合して前立腺の肥大が誘発される。これによって、前立腺肥大症の治療においてアンドロゲン受容体の発現抑制に焦点を合わせて研究が行われている。
【0052】
なお、アンドロゲン受容体は、脱毛とも重要な関連性を有している。テストステロンは、5α-レダクターゼと出会うとDHT(ジヒドロテストステロン)に転換される。過度に形成されたDHTは、毛嚢の中でアンドロゲン受容体と結合することによって、脱毛過程を起こす。アンドロゲン性ホルモン(AH:androgenic hormones)は、アンドロゲン受容体のみを経由して作用するが、テストステロンおよびジヒドロテストステロンの作用機序は、アンドロゲン受容体に対する結合に依存する。したがって、脱毛防止のためには、毛嚢の中のアンドロゲン受容体の発現を抑制することが重要な役割をする。
【0053】
これによって、本発明のウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンは、アンドロゲン受容体の発現を転写レベル(mRNAレベル)で抑制することができるところ、前立腺がん、前立腺肥大症、排尿障害および脱毛などのようなアンドロゲン受容体関連疾患を治療するのに有用に使用することができる。
【0054】
本発明において、イソクエルシトリンは、薬学的に許容可能な塩の形態で有効成分として含まれ得る。本発明において用語「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。
【0055】
好適な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、スクシン酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、グルコン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解させ、この塩をメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルのような水混和性有機溶媒を使用して沈殿させて製造することができる。また、同モル量の化合物および水中の酸またはアルコールを加熱し、引き続いて、前記混合物を蒸発させて乾燥させたり、または析出した塩を吸引ろ過させて製造することができる。
【0056】
好適な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、およびアンモニウムなどを含んでもよいが、これに制限されるものではない。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得ることができる。この際、金属塩としては、特にナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが製薬上適しており、また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0057】
本発明の組成物内の前記ウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンの含有量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などによって適宜調節可能であり、例えば、全組成物の重量を基準として0.0001~99.9重量%、または0.001~50重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記含有量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とする値である。
【0058】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルムコーティング物質、および制御放出添加剤からなる群から選ばれた1つ以上であってもよい。
【0059】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態に剤形化して使用でき、前記外用剤は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有していてもよい。
【0060】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0061】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0062】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなど賦形剤;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用でき、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、燐酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロベクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、軽質無水ケイ酸など崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、軽質無水ケイ酸などの滑沢剤;が使用できる。
【0063】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキレルエテール類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用できる。
【0064】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用でき、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用できる。
【0065】
本発明による乳剤には、精製水が使用でき、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用できる。
【0066】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が使用でき、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用できる。
【0067】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジー(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含んでもよい。
【0068】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウイテプゾール、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポル、マスポル-15、ネオスポスタル-エン、パラマウンド-B、スポシール(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用できる。
【0069】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0070】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0071】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、 薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0072】
本発明による組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における当業者により容易に決定することができる。
【0073】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与する。投与の全ての方式は、予想可能であるが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼内投与、耳への投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を介した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与することができる。
【0074】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0075】
本発明において「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒト霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0076】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0077】
本発明において「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制したり遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有益に変更される全ての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメーター、例えば、症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0078】
また、本発明は、ウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンを有効成分として含む食品組成物を提供する。
【0079】
本発明において食品は、機能性食品および健康機能性食品を含む。
【0080】
本発明のウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンを食品添加物として使用する場合、前記ウチワノキ抽出物をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法によって適切に使用できる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって好適に決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明のウチワノキ抽出物は、原料に対して15重量%以下、または10重量%以下の量で添加することができる。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の観点から何らの問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも使用できる。
【0081】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、通常の意味における健康機能食品を全部含む。
【0082】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のようなモノサッカライド、マルトースおよびスクロースのようなジサッカライド、デキストリンおよびシクロデキストリンのようなポリサッカライド、およびキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用できる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01~0.20g、または約0.04~0.10gである。
【0083】
上記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用できる。このような添加剤の割合は、大きく重要なことではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0085】
[実施例1.実験方法]
(1-1.熱水抽出物の製造)
ウチワノキは、ウリナム営農組合から提供された。三角フラスコにウチワノキ(Abeliophyllum distichum Nakai)葉100gに蒸留水(DW)1000mLを入れ、100℃で1時間湯煎して抽出した。抽出物を減圧(0.2μm気孔サイズ)下にろ過した後、回転式真空濃縮装置を用いて濃縮させた。その後、凍結乾燥装置を用いて5日間凍結乾燥させた。
【0086】
(1-2.70%エタノール抽出物の製造)
100gのウチワノキ葉と1000mLの70%エタノールを三角フラスコに添加した後、撹拌機を用いて2時間抽出した後、ウチワノキ葉を除いた抽出物をビーカーに移した。その後、三角フラスコにエタノール1000mLをさらに添加し、2時間抽出した後、ビーカーに移した。次のような過程を全3回繰り返した。次に、70%エタノール抽出物を回転式真空濃縮装置を用いて濃縮させた。次に、抽出物を減圧(0.2μmの気孔サイズ)下にろ過し、凍結乾燥装置で5日間凍結乾燥させた。
【0087】
(1-3.95%ヘキサン抽出物の製造)
100gのウチワノキ葉と1000mLの95%ヘキサンを三角フラスコに添加した。以降の過程は、上記の70%エタノール抽出過程と同一に行った。
【0088】
(1-4.免疫蛍光法(Immunofluorescence))
12 well plateにスライドを敷設した後、LNCaP細胞(5×104個)を分注し、スライドに細胞を付着させた。24時間後、テストステロンを100nMで処理し、ウチワノキ葉(Abeliophyllum distichum Nakai leaf,ADL)の熱水(D.W.)、エタノール(EtOH)、ヘキサン(Hexane)抽出物をそれぞれ100μg/mlを処理した。24時間後、細胞を冷メタノールに固定させた後、0.1%Triton X-100を1時間処理させた。5%ヤギ血清を用いて遮断した後、スライドにBSAで希釈したアンドロゲン受容体(AR)抗体(1:300)を4℃で一晩処理した。その後、AlexaFluor 588 2次抗体(1:1,000希釈)を1時間処理した。DAPI染色を通じて核を染色させた後、カバーグラスでマウントした。Zeiss蛍光顕微鏡を用いてARの発現量を確認した。
【0089】
(1-5.ウェスタンブロット)
LNCaP細胞にテストステロンプロピオネート(testosterone propionate,TP)を処理してアンドロゲン受容体シグナルを誘導し、ウチワノキ葉の熱水(D.W.)、エタノール(EtOH)、ヘキサン(Hexane)抽出物を処理してAR(androgen receptor,SantaCruz)、5AR2(5 alpha reductase,ABCam)、PSA(prostate specific antigen,SantaCruz)の発現抑制能を確認して、LNCaP細胞内でウチワノキ葉抽出物別のアンドロゲン受容体シグナル関連因子の抑制能を比較した。LNCaP細胞2×106個を6ウェルプレートにシーディング(seeding)した後、100nMのテストステロンプロピオネート(testosterone propionate,TP、Tokyo Chemical Industry)とウチワノキ葉の熱水(D.W.)、エタノール(EtOH)、ヘキサン(Hexane)抽出物をそれぞれ100μg/mlの濃度で24時間処理した。この際、アンドロゲン抑制薬物であるフィナステリド(finasteride,Fi)1μg/ml処理群は、陽性対照群として使用した。細胞に処理が終わった後、ウェスタンブロット(western blot)を用いてアンドロゲン受容体シグナル阻害効果を分析した。まず、細胞をタンパク質抑制剤カクテル(Sigma)が含まれたRIPA(Radioimmunoprecipitation assay)バッファーに溶解(lysis)させた後、BCAアッセイを用いてタンパク質濃度を推定した後、12%SDS ポリアクリルアミドゲルに電気泳動させた後、Mini Trans-Blot(登録商標)細胞(Bio rad)を用いてゲルをメンブレンに伝達(transfer)した。その後、1次抗体でメンブレンを4℃で12時間処理した。次に、TBSTを用いて5分間3回洗浄した後、2次抗体を1時間処理した。その後、HPR基質(Advansta Inc.,San Jose,CA,USA)で発色させて、Azure c300イメージングシステム(Azure Biosystems)装備を用いてバンドを確認した。バンド強度は、イメージJソフトウェア(NIH ver.1.48,USA)を用いて各サンプルの面積を設定した後、相対するβ-Actinの面積を同じ方法で設定し、当該値を割る方式で計算することによって定量した。
【0090】
(1-6.前立腺肥大症モデルの作製および投与計画)
8週齢の雄SDラット(体重200±5g)実験動物群を
図9に示されたように5グループに分けた後、BPH誘発グループは、1週間安定期後にフェノバルビタール(phenobarbital)50mg/kgを腹腔内注射して麻酔した後、睾丸と副睾丸を除去し、縫合糸を用いて手術部位を縫い合わせた。すべての実験は、無菌環境で行われた。3日間の手術安定期を有した後、前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia)誘発群(BPH)は、テストステロンをとうもろこし油(corn oil)に溶かして3mg/kgの濃度で毎日皮下注射することによって、前立腺肥大症を誘発させた。ウチワノキ葉エタノール抽出物投与群(BPH+ADLE)は、ウチワノキ葉エタノール抽出物を滅菌蒸留水に溶かして100mg/kgを4週間ゾンデを用いて経口投与した。陽性対照群であるノコギリヤシ投与群(BPH+Saw)は、ノコギリヤシを滅菌蒸留水に溶かして100mg/kgの濃度で経口投与し、フィナステリド投与群(BPH+Fi)は、1mg/kgの濃度で4週間毎日ゾンデを用いて経口投与した。実験の終了後、ゾレチル(zoletil)を用いてマウスを犠牲にさせた後、心臓穿孔(heart puncture)を通じて血液を収集した後、血清を分離し、-80℃に保管した。RNaseが除去された手術ツールで前立腺を分離して重量を測定した後、-80℃に保管した後、ウェスタンブロット実験を実施した。
なお、イソクエルシトリン(IQ)投与も、同じ方法および対照群を使用し、低濃度投与群(BPH+IQ1)は、IQを滅菌蒸留水に溶かして1mg/kg、高濃度投与群(BPH+IQ10)は、10mg/kgを4週間ゾンデを用いて経口投与した。
【0091】
(1-7.ヘマトキシリンおよびエオシン染色(Hematoxylin & Eosin staining,H&E staining))
前立腺組織を10%ホルムアルデヒドに固定し、脱水した後、パラフィンに包埋した。ミクロトーム(Leica)を用いてパラフィンブロックを4μmに切断した。H&E染色のために、切断された切片をキシレンを用いてパラフィンを除去し、洗浄した後、ヘマトキシリンで5分間染色した後、水で5分間洗浄した。その後、30秒間エオシンで染色した後、脱水した後、封入した。Leica DM6 Research Inverted Phase顕微鏡(Leica,Werzlar,Germany)を使用して組織を分析した。Leica Application Suite(LAS)顕微鏡ソフトウェアを使用して上皮の厚さとルーメン(lumen)領域を測定した。
【0092】
(1-8.アンドロゲンシグナリング関連因子発現抑制能の分析)
動物実験群に対してアンドロゲンシグナリング(androgen signaling)関連因子5AR2(5alpha reductase)、SRC-1(steroid receptor coactivator)、AR(androgen receptor)、ER(estrogen receptor)、PSA(prostate specific antigen)のタンパク質発現を分析した。切除した前立腺組織のうち前立腺(ventral prostate)葉(lobe)部位をタンパク質抑制剤カクテル(Sigma)が含まれたRIPAバッファーを添加した後、組織破砕機(tacoPrep Bead beater)を用いて前立腺組織をホモゲナイズ(homogenize)した。その後、タンパク質BCAアッセイを用いてタンパク質濃度を推定した後、12%SDSポリアクリルアミドゲルに電気泳動させた後、Mini Trans-Blo(登録商標)細胞(Bio rad)を用いてゲルをメンブレンに伝達した。その後、各タンパク質に対する1次抗体をメンブレンに4℃に12時間処理した後、TBSTを用いて5分間3回洗浄し、2次抗体を1時間処理した。その後、HPR基質(Advansta Inc.,San Jose,CA,USA)で発色させて、Azure c300イメージングシステム(Azure Biosystems)装備を用いてバンドを確認した。バンド強度は、イメージJソフトウェア(NIH ver.1.48,USA)を用いて各サンプルの面積を設定し、相対するβ-Actinの面積を同じ方法で設定し、当該値を割る方式で計算することによって定量した。
【0093】
(1-9.組織化学染色(Immunohistochemistry))
4μm厚さのセクションを脱パラフィン化し、水洗した後、抗原賦活化(antigen retrieval)のために、切片を0.01Mシトレートバッファー(pH、6.0)に入れた後、電子レンジで10分間反応させた。その後、常温で10分間放置した後、DWで洗浄した後、3%H2O2を10分間処理した。次に、ヤギ血清を処理して非特異的結合を遮断した。次に、セクションを抗PCNA、抗ARを分注して4℃で一晩中反応させた。その後、1時間2次抗体で処理した後、すべての免疫染色されたセクションをヘマトキシリンで計数染色した後、Leica DM6 Research Inverted Phase顕微鏡(Leica,Werzlar,Germany)を用いて組織を分析した。
【0094】
(1-10.PI3K/Aktシグナリング経路(signaling pathway)関連因子発現抑制能の分析)
アンドロゲンシグナリングを抑制し、これによって表皮成長因子(EGF)の発現を抑制することを確認した。なお、これによるPI3K/Aktシグナリング経路(signaling pathway)関連因子であるPI3K(phosphatidylinositol-3-kinase)、Akt(protein kinase B)発現がウチワノキ葉エタノール抽出物によって抑制されるかを確認するために、上述したウェスタンブロット実験を行った。
【0095】
(1-11.成長因子(Grow factor)発現抑制能の分析)
アンドロゲンシグナリングによってARE(androgen response element)で成長因子(Grow factor)が転写されて発現量が増加する傾向を示す。成長因子は、前立腺肥大症を誘導する大きな要因と見ることができる。これによって、ウチワノキ葉エタノール抽出物の投与が前立腺肥大症を誘導させたマウスの前立腺内成長因子の発現を減少させるかを確認するために、上述したウェスタンブロット実験を行った。成長因子であるEGF(Epidermal growth factor)、IGF-1(Insulin like growth factor I)、TGF-1β(Transforming growth factor beta 1)、VEGF(Vascular endothelial growth factor)の発現量を確認した。
【0096】
(1-12.前立腺組織内細胞増殖関連因子発現抑制能の分析)
前立腺組織内細胞増殖に関連した代表的な因子であるPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)とサイクリンD1(サイクリンD1)タンパク質発現を分析するために、上述したウェスタンブロット実験を行った。
【0097】
(1-13.UPLC-MSを用いたメタボローム分析)
Vion UPLCTMシステム(Vion,Waters,Milford,MA,USA)を用いてウチワノキ葉エタノール抽出物のメタボローム分析を実施した。LC条件は、Acquity UPLC BEH C18カラム(2.1mm×100mm、1.7μm、Waters)を使用し、カラム温度は55℃に設定した。流速は0.35mL/minに設定した。移動相は、0.1%ギ酸(FA)が含まれた水および0.1%FAが含まれたアセトニトリル(ACN)を使用した。MS作動条件は、次のとおりである:capillary voltage 2.5kV、sample cone 20V、ion source temperature 200℃、desolvation temperature 400℃、cons gas 30L/h、desolvation gas 900L/h、スキャン時間0.2秒、スキャン範囲m/z50-1500、collision energy ramp 10-30eV(m/z50-1000)。
【0098】
[実施例2.ウチワノキ抽出物の溶媒によるアンドロゲンシグナリング関連因子の発現の確認]
実施例1-1~1-3で作製したウチワノキ葉の熱水、エタノールおよびヘキサン抽出物を前立腺細胞LNCaPに処理することによって、テストステロンで誘導されたAR、5AR2、およびPSAの発現レベルを確認した。5AR2は、正常前立腺の発達と老年の前立腺肥大において重要な役割を担当することが知られており、ARの発現が増加する場合、前立腺内DHTがより多くのARと結合することによって、前立腺の肥大を誘発することが知られている。また、ARは、DHTと結合して前立腺特異抗原であるPSAの生成を促進する。
【0099】
図1aおよび
図1bに示されたように、ウチワノキ熱水抽出物は、テストステロンによって増加したAR、5AR2を有意に減少させ、ヘキサン抽出物は、5AR2およびPSAの発現を有意に減少させ、エタノール抽出物は、AR、5AR2およびPSAを全部有意に抑制するだけでなく、熱水抽出物およびヘキサン抽出物と比較して、顕著に優れた抑制能を示すことを確認した。
【0100】
[実施例3.ウチワノキ抽出物の溶媒によるアンドロゲン受容体の発現の確認]
実施例2のウェスタンブロットに加えて、蛍光染色を通じてAR抑制効果を再確認した。
【0101】
図2に示されたように、ウチワノキ葉エタノール抽出物(ADLE)において顕著に優れたAR抑制効果を示すことを確認することができた。
【0102】
[実施例4.ウチワノキ収穫時期によるアンドロゲンシグナリング関連因子の発現の確認]
ウチワノキ葉の収穫時期によるテストステロンで誘導されたAR,およびPSAの発現レベルの差異を確認した。晩春に収穫した葉は、5月中旬頃に収穫し、晩秋に収穫した葉は、9月中旬頃に収穫し、抽出物は、実施例1-2のエタノール抽出物製法によって製造した。なお、アンドロゲンシグナリング関連因子は、実施例2と同じ方法で確認された。
【0103】
図3に示されたように、晩春に収穫したウチワノキ葉よりも晩秋に収穫したウチワノキ葉エタノール抽出物の5ARおよびPSA発現抑制効果に顕著に優れていることを確認した。
【0104】
[実施例5.ウチワノキエタノール抽出物の成分の確認]
(5-1.成分分析結果)
ウチワノキ葉エタノール抽出物の活性成分を分析するために、UPLC-MSを使用した。
【0105】
【0106】
【0107】
前記結果を基にウチワノキ葉エタノール抽出物の機能性成分としてイソクエルシトリン(Isoquercetin,IQ)、ルチン(rutin)、クロロゲン酸(CA)、イソラムネチン3-グルコシド-7-ラムノシド(IR)を選定し、前立腺肥大症関連因子の発現に及ぼす影響を確認した。
【0108】
(5-2.ウチワノキエタノール抽出物活性成分の効果の確認)
実施例5-1で選定された機能性成分の候補物質4種(IQ、ルチン、CA、IR)のテストステロンで誘導されたAR、5AR2、およびPSAの発現レベルの差異を確認した。方法は、実施例2と同一に行われた。
【0109】
図5aおよび
図5bに示されたように、4種の候補のうち、イソクエルシトリンの効果が最も優れていることを確認した。
【0110】
それだけでなく、
図6aおよび
図6bに示されたように、イソクエルシトリンの濃度に依存的にAR、PI3K、および5AR2の発現が有意に減少することを確認した。
【0111】
5-3.イソクエルシトリン(IQ)のアンドロゲンシグナリング関連因子の発現の確認
BPH-1細胞にテストステロンを100nM処理して細胞増殖を誘導し、イソクエルシトリン(IQ)を25、50、100μM、ウチワノキ葉エタノール抽出物を25、50、100μg/mlの濃度でそれぞれ24時間処理して、PI3Kおよび細胞増殖因子PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、cyclin D1の発現阻害効果を確認した。方法は、実施例2と同一に行われた。PCNAは、前立腺肥大症が誘発されたときに増加する因子であり、サイクリンD1は、前立腺細胞において細胞周期の正の調節因子に該当する。
【0112】
図7aおよび
図7bに示されたように、イソクエルシトリンおよびウチワノキ葉エタノール抽出物の濃度に依存的にPI3K、PCNA、およびサイクリンD1の発現が有意に減少することを確認した。
【0113】
[実施例6.ウチワノキ抽出時期によるイソクエルシトリンの含有量の確認]
ウチワノキ葉の抽出時期による活性成分イソクエルシトリンの含有量を分析するために、UPLC-MSを使用した。
【0114】
図8に示されたように、秋の含有量(20.8849mg/g)が春の含有量(12.4916mg/g)より高いことが確認された。
【0115】
すなわち、ウチワノキの機能性成分として機能性および時期による差別性を全部示すイソクエルシトリンが適切と判断した。
【0116】
[実施例7.前立腺肥大症動物モデルに対する効果の確認]
(7-1.ウチワノキ抽出物の前立腺肥大症治療効果の確認)
ウチワノキ抽出物がin vivoでも効果を示すが確認するために、前立腺肥大症動物モデルを作製し、実験を行った(
図9参照)。
【0117】
図10a~
図10eに示されたように、秋に収穫したウチワノキ葉抽出物(ADLE)を摂取したマウスは、前立腺インデックスが陽性対照群に比べて有意的に低くなることを確認した。具体的には、ADLE投与群は、前立腺重量が有意に減少し、体重対比前立腺重量も、前立腺肥大症誘発モデルと比較して有意に低くなり、前立腺上皮の厚さも、前立腺肥大症モデルと比較して顕著に減少し、陽性対照群ノコギリヤシおよびフィナステリドと比較して、その効果が優れていることを確認した。
【0118】
また、
図11aおよび
図11bに示されたように、前立腺組織内5AR2、SRC1、AR、ER、PSAの発現量がADLE摂取によって有意に減少することを確認した。
【0119】
また、
図11cに示されたように、前立腺組織をH&E染色して前立腺上皮細胞を観察した結果、対照群(BPH)に比べてADLE摂取群において上皮細胞の厚さがCONレベルに顕著に減少することを確認した。これは、陽性対照群ノコギリヤシおよびフィナステリドと同様または優秀な結果である。
【0120】
また、
図11dに示されたように、血清内DHTレベルが有意に減少することを確認したところ、前立腺成長の増大および肥大症を誘発するDHTレベルを減少させることによって前立腺肥大症の治療効果に優れていることを裏付ける結果である。
【0121】
また、
図12aおよび
図12bに示されたように、前立腺組織内PI3K、およびp-AKTの発現量がADLE摂取によって有意的に減少することを確認した。
【0122】
また、
図13aおよび
図13bに示されたように、前立腺組織内EGF,IGF-1,TGF-1β、およびVEGFの発現量がADLE摂取によって有意的に減少することを確認した。
【0123】
また、
図14aおよび
図14bに示されたように、前立腺組織内PCNAおよびサイクリンD1の発現量がADLE摂取によって有意的に減少することを確認した。
【0124】
また、
図14cに示されたように、前立腺組織内PCNAの発現量がADLE摂取によって有意的に減少することを確認した。
【0125】
また、
図15aおよび
図15bに示されたように、前立腺組織内Bcl-2の発現量がADLE摂取によって有意的に減少し、Baxの発現量がADLE摂取によって有意的に増加することを確認した。
【0126】
以上の実施例を総合して、ウチワノキ抽出物は、アンドロゲン受容体シグナル関連因子である5AR2、SRC1、AR、ER、PSAの発現量を減少させるなど、アンドロゲン受容体および前立腺関連因子のレベルを有意に改善するだけでなく、前立腺肥大症動物モデルに対して有意味な治療効果を示すことを確認した。したがって、本発明のウチワノキ抽出物をアンドロゲン受容体および前立腺に関連した疾患の治療剤に用いることができることが分かる。
【0127】
(7-2.イソクエルシトリンの前立腺肥大症の治療効果の確認)
前記実施例7-1に加えて、ウチワノキ抽出物の機能性成分であるイソクエルシトリンがin vivoでも効果を示すが確認するために、前立腺肥大症動物モデルを作製し、実験を行った。
【0128】
図16に示されたように、イソクエルシトリンを低濃度(1mg/kg)および高濃度(10mg/kg)で経口投与した結果、イソクエルシトリンの濃度依存的に前立腺インデックスが低くなることを確認した。具体的には、イソクエルシトリン投与群は、前立腺重量が有意に減少し、体重対比前立腺重量も、前立腺肥大症誘発モデルと比較して有意に低くなることを確認した。
【0129】
また、
図17に示されたように、前立腺組織内AR、SRC-1、5AR2の発現量がイソクエルシトリンの摂取濃度に依存的に減少することを確認した。
【0130】
したがって、イソクエルシトリンがアンドロゲン受容体シグナル関連因子である5AR2、SRC-1、ARの発現量を減少させるなど、アンドロゲン受容体および前立腺関連因子のレベルを有意に改善するだけでなく、前立腺肥大症動物モデルに対して有意味な治療効果を示すことを確認した。したがって、ウチワノキ抽出物の機能性成分であるイソクエルシトリンをアンドロゲン受容体および前立腺に関連した疾患の治療剤に用いることができることが期待される。
【0131】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明によるウチワノキ抽出物またはイソクエルシトリンは、アンドロゲン受容体抑制活性があり、前立腺肥大症動物モデルに対する治療効果に優れているので、アンドロゲン受容体関連疾患である前立腺肥大症、アンドロゲン依存性脱毛、排尿障害および前立腺がんなど関連産業に広く活用することができ、産業上の利用可能性がある。