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  • 特許-プリフォームの加熱方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】プリフォームの加熱方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20240710BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020094990
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187067
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】矢野 尚之
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131253(JP,A)
【文献】特開2002-264203(JP,A)
【文献】特開2004-345646(JP,A)
【文献】特表2012-524681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形状に成形され、PET樹脂製の外層(11、21)と、所定の赤外線吸収性を有する層を内層(12、22)に備えて構成される2層構造のプリフォーム(1、2)を、壜体状に2軸延伸ブロー成形するために熱源により加熱するプリフォームの加熱方法であって、
前記プリフォーム(1、2)を970nm以上2500nm以下のピーク波長を有する熱源で加熱することを特徴とするプリフォームの加熱方法。
【請求項2】
前記内層(12)はDLC膜である請求項1に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項3】
前記内層(22)はDLC膜が形成されたPET樹脂のリサイクル品からなるDLC再生材層である請求項1に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項4】
前記熱源の前記ピーク波長が1400nm以上1500nm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項5】
前記熱源の前記ピーク波長が1000nm以上1040nm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項6】
前記熱源がハロゲンヒータである請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリフォームの加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET樹脂製のプリフォームを2軸延伸ブロー成形する際に用いるプリフォームの加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET製射出成型品であるプリフォームを2軸延伸ブロー成形して所定形状のボトルとする際、一般的に外側からハロゲンヒータ等の熱源で加熱することで、プリフォームを2軸延伸ブロー成型に適した温度まで加熱することが行われる。
【0003】
しかしながら、プリフォームを外側から加熱する場合には、外面が温まりやすい一方で内面側は温まりにくいため、内面と外面との間で温度差が生じやすく、外面がブロー成形に適した温度以上に加熱されて結晶化する一方で、内面がブロー成形に適した温度に到達せずにブロー成形時に十分に延伸されない等の問題が生じていた。
【0004】
そこで、プリフォームの加熱時に内面と外面との温度差を少なくするため、例えば特許文献1に記載のプリフォームの加熱方法においては、まずプリフォームを100~110℃の温度の高温槽内に2~4時間程度置いた後(第1の加熱工程)、更に140℃~160℃の温度まで急速加熱すること(第2の加熱工程)が行われている。
【0005】
また、特許文献2に記載のプリフォームでは、プリフォームを所定の形状及び所定の厚みに設定し、局所的な延伸や過延伸を防止しやすくすることで、プリフォーム加熱時の内面と外面の温度差に起因する問題の発生を防止することが行われている。
【0006】
更に、プリフォームの加熱時間を短縮するため、プリフォームのPET原料中に赤外線吸収剤を添加することも行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-254705号公報
【文献】特開2008-105199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のプリフォームの加熱方法においては、プリフォームの加熱に長時間を要し、迅速な加工を行えないと共に、この加熱方法を既存設備に応用しようとすると、既存設備の大幅な改造が必要となるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のプリフォームにおいては、プリフォームの形状を厳密に管理する必要があるため、設計の自由度に制限が生じてしまうという問題があった。
【0010】
更に、プリフォームのPET原料中に赤外線吸収剤を添加する場合には、こうしたPET原料を用いて製造したPETボトルは赤外線吸収剤の種類によってはリサイクルすることができないという問題や赤外線吸収剤の添加によるコストアップという課題があった。
【0011】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、加熱時間を短縮しつつ加熱時のプリフォームの内側と外側の温度差の発生を抑制することが可能であり、既存の設備に大幅な改造を加えること無く実施をすることが可能であり、プリフォームの設計の自由度を制限すること無く、最終製品であるPETボトルの良好なリサイクル性を実現することのできるプリフォームの加熱方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
有底円筒形状に成形され、PET樹脂製の外層と、所定の赤外線吸収性を有する層を内層備えて構成される2層構造のプリフォームを、壜体状に2軸延伸ブロー成形する熱源により加熱するプリフォームの加熱方法であって、
前記プリフォームを970nm以上2500nm以下のピーク波長を有する熱源で加熱することを特徴とする、と云うものである。
【0013】
また、本発明の他の構成は、上記主たる手段において、内層はDLC膜である、と云うものである。
【0014】
また、本発明の他の構成は、上記主たる手段において、内層はDLC膜が形成されたPET樹脂のリサイクル品が含まれるDLC再生材層である、と云うものである。
【0015】
また、本発明の他の構成は、上記何れかの発明において、熱源のピーク波長が1400nm以上1500nm以下である、と云うものである。
【0016】
また、本発明の他の構成は、上記何れかの発明において、熱源の前記ピーク波長が1000nm以上1040nm以下である、と云うものである。
【0017】
また、本発明の他の構成は、上記何れかの発明において、熱源がハロゲンヒータである、と云うものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
【0021】
本発明の主たる構成においては、プリフォームの内層を所定の赤外線吸収性を有する内層とすることで、熱源加熱時に通常であればプリフォームを透過してしまう波長をその内層で吸収することができる。それにより、こうした内層を備えていないプリフォームと比較して、プリフォームの内側を温まりやすくすることができ、2軸延伸ブロー成形時に要する加熱時間を短縮しつつ加熱時のプリフォームの内側と外側の温度差の発生を抑制することが可能である。また、熱源による加熱のピーク波長を最適化することで、プリフォームの加熱効率を向上することができる。また、既存の設備に大幅な改造を加えること無く実施をすることが可能である。更に、プリフォームの設計の面では、プリフォームに所定の赤外線吸収性を有する内層を形成するだけでよく、プリフォームの設計の自由度を制限することが無く実施をすることが可能である。更に、この加熱方法を用いてプリフォームから製造される製品であるPETボトルについてもリサイクル利用をすることができ、良好なリサイクル性を実現することができる。
【0022】
また、上記他の構成にあっては、DLC膜を用いた簡易な構成でプリフォームの内側の加熱効率を高めることが可能となる。
【0023】
また、上記他の構成にあっては、DLC膜が形成されたPETボトル等のリサイクル品であるDLC再生材のリサイクルと、プリフォームの内側の加熱効率の向上を同時に実現することが可能となる。
【0024】
また、上記他の構成にあっては、熱源のピーク波長を調整することにより、プリフォームの所定の赤外線吸収性を有する内層を発熱しやすくすることが可能となる。
【0025】
また、上記他の構成にあっては、熱源のピーク波長を調整することにより、プリフォームの所定の赤外線吸収性を有する内層を更に発熱しやすくすることが可能となる。
【0026】
また、上記他の構成にあっては、ハロゲンヒータという簡易な構成でプリフォームの加熱を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態に係るプリフォームの加熱方法において用いられるプリフォームを示す、(A)は断面図、(B)は(A)の部分拡大断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るプリフォームの加熱方法において用いられるプリフォームを示す、(A)は断面図、(B)は(A)の部分拡大断面図である。
図3】本発明に係るプリフォームの加熱方法において赤外線のピーク波長を変化させた際のPET樹脂層の裏側にDLC膜を形成した樹脂板の表側と裏側の経時的な温度変化を示すグラフであり、(A)はピーク波長が940nmである場合、(B)はピーク波長が960nmである場合、(C)はピーク波長が980nmである場合、(D)はピーク波長が1020nmである場合、(E)はピーク波長が1060nmである場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すプリフォーム1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を射出成形により有底円筒形状に成形され、外層11と、内層としてのDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜12を備えて構成されている。プリフォーム1の形状は、2軸延伸ブロー成形に用いられるものであれば任意の形状を採用することができる。なお、プリフォーム1は、押出成形等、射出成形以外の任意の成形法によって製造されてもよい。
【0032】
プリフォーム1の重量は31g、ネック下からの高さは81mmである。外層11はPET樹脂により形成されていて、層厚は4.2mmである。
【0033】
DLC膜12は、外層11の内面に形成されている薄膜である。DLC膜12は、プラズマCVD法等の一般的な手法を用いてPET樹脂の表面に形成される。DLC膜12の膜厚は120nmである。DLC膜12は所定の赤外線吸収性を備えている。ここでいう所定の赤外線吸収性とは、PET樹脂とは異なる波長の赤外線を吸収する特性をいい、具体的には、PET樹脂に照射した場合には90%程度透過してしまう波長の赤外線を吸収する特性をいう。
【0034】
本発明の第1の実施形態に係るプリフォームの加熱方法においては、上述した構成を備えるプリフォーム1を、970nm以上2500nm以下のピーク波長を有する、熱源としてのハロゲンヒータを用いて赤外線Iで加熱することが行われる。なお、図示しないが、ハロゲンヒータはプリフォーム1の側方において、プリフォーム1の長手方向に沿って7本載置されている。また、本実施形態においては、ハロゲンヒータとしてウシオ電機製のハロゲンヒータ(色温度2600K、色温度3000K)を使用した。
【0035】
このような第1の実施形態に係るプリフォームの加熱方法を実施した場合の、プリフォーム1の外面と内面の加熱の様子について説明する。表1は、DLC膜12が形成されていないプリフォーム1についてピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(比較例)、DLC膜12が形成されたプリフォーム1についてピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(実施例1)、及びDLC膜12が形成されたプリフォーム1についてピーク波長が1027nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(実施例2)のそれぞれについて、プリフォーム1の内面温度が95℃に到達するまでに要する時間と、その時のプリフォーム1の外面温度、及び外面と内面の温度差を示す表である。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、比較例では、プリフォーム1の内面温度が95℃に到達するまで60秒を要し、このときのプリフォーム1の内面と外面の温度差は18℃であった。
【0038】
一方、実施例1では、プリフォーム1の内面温度が95℃に到達するまで56秒を要し、このときのプリフォーム1の内面と外面の温度差は18℃であった。すなわち、比較例と比較して、内面温度が95℃に到達するまでの時間が4秒短縮されている。このことから、ピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合には、内側にDLC膜12が形成されているプリフォーム1の方が、DLC膜12が形成されていないプリフォーム1よりも、内面温度が上昇し易くなっていることがわかる。
【0039】
また、実施例2では、プリフォーム1の内面温度が95℃に到達するまで40秒を要し、このときのプリフォーム1の内面と外面の温度差は18℃であった。すなわち、比較例と比較して、内面温度が95℃に到達するまでの時間が20秒短縮されている。このことから、ピーク波長が1027nmであるハロゲンヒータにより内側にDLC膜12が形成されているプリフォーム1を加熱した場合には、ピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより内側にDLC膜12が形成されていないプリフォーム1を加熱した場合、更にはピーク波長が1450nmのハロゲンヒータにより内側にDLC膜12が形成されているプリフォーム1を加熱した場合よりも、内面温度が上昇し易くなっていることがわかる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態に係るプリフォームの加熱方法について説明する。
【0041】
図2に示すプリフォーム2は、有底円筒形状に射出成形され、外層21と、内層としてのDLC再生材層22を備えて構成されている。プリフォーム2の形状は、2軸延伸ブロー成形に用いられるものであれば任意の形状を採用することができる。プリフォーム2は重量が23g、ネックからの高さが65mmとなっている。
【0042】
外層21はPET樹脂により形成されていて、層厚は3.0mmとなっている。
【0043】
DLC再生材層22は、外層21の内側に一体的に設けられ、DLC膜が形成されたPET樹脂のリサイクル品により形成されているDLC再生材層である。DLC再生材層22は、PET樹脂とDLC膜とが混然一体となって形成されている層である。DLC再生材層22は、DLC膜に由来する所定の赤外線吸収性を備えている。本実施形態において、DLC再生材層22を構成する樹脂として、容量3Lサイズ、ボトル重量80gのPETボトルに、膜厚が15~20nmのDLC膜を形成したものを粉砕し、再ペレット化した樹脂を利用している。成形されたDLC再生材層22の層厚は1.2mmとなっている。本実施形態では、まずDLC再生層22のみのプリフォームを成形した後、外側にPETを射出成形によりオーバーモールドする所謂2色成形により形成したが、形成方法についてはこうした態様に限らず、射出成形でそれぞれ2種類のプリフォームを組み合わせて形成してもよいし、共射出成形によって形成してもよい。
【0044】
本発明の第2の実施形態に係るプリフォームの加熱方法においては、上述した構成を備えるプリフォーム2を、970nm以上2500nm以下のピーク波長を有する、熱源としてのハロゲンヒータを用いて赤外線Iで加熱することが行われる。
【0045】
このような第2の実施形態に係るプリフォーム2の加熱方法を実施した場合の、プリフォーム2の外面と内面の加熱の様子について説明する。表2は、DLC再生材層22が形成されていないプリフォーム2についてピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(比較例)、DLC再生材層22が形成されたプリフォーム2についてピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(実施例1)、及びDLC再生材層22が形成されたプリフォーム2についてピーク波長が1027nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合(実施例2)のそれぞれについて、プリフォーム2の内面温度が99℃に到達するまでに要する時間と、その時のプリフォーム2の外面温度、及び外面と内面の温度差を示す表である。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、比較例では、プリフォーム2の内面温度が99℃に到達するまで40秒を要し、このときのプリフォーム2の内面と外面の温度差は14℃であった。
【0048】
一方、実施例1では、プリフォーム2の内面温度が99℃に到達するまで38秒を要し、このときのプリフォーム2の内面と外面の温度差は15℃であった。すなわち、比較例と比較して、内面温度が99℃に到達するまでの時間が2秒短縮されている。このことから、ピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより加熱した場合には、内側にDLC再生材層22が形成されているプリフォーム2の方が、DLC再生材層22が形成されていないプリフォーム2よりも、内面温度が上昇し易くなっていることがわかる。
【0049】
また、実施例2では、プリフォーム2の内面温度が99℃に到達するまで31秒を要し、このときのプリフォーム2の内面と外面の温度差は15℃であった。すなわち、比較例と比較して、内面温度が99℃に到達するまでの時間が9秒短縮されている。このことから、ピーク波長が1027nmであるハロゲンヒータにより内側にDLC再生材層22が形成されているプリフォーム2を加熱した場合には、ピーク波長が1450nmであるハロゲンヒータにより内側にDLC再生材層22が形成されていないプリフォーム2を加熱した場合、更にはピーク波長が1450nmのハロゲンヒータにより内側にDLC再生材層22が形成されているプリフォーム2を加熱した場合よりも、内面温度が上昇し易くなっていることがわかる。
【0050】
次に、本発明に係るプリフォームの加熱方法における最適なピーク波長について説明する。
【0051】
本実験に用いる実験装置は、治具と、治具により支持された被試験体である樹脂板と、樹脂板に赤外線を照射する光源と、樹脂板の表面温度を測定する温度測定器を備えて構成されている。なお、光源として、ここではレーザ装置を使用した。
【0052】
樹脂板(図示せず)は、PET樹脂層と、PET樹脂層の一面側に形成されたDLC膜を備えて構成されている。PET樹脂層の層厚は3mm、DLC膜の層厚は29nmとなっている。
【0053】
上述した樹脂板は、PET樹脂層を光源側に向けた状態で治具に支持され、光源から樹脂板のPET樹脂層側に向けてレーザが照射される。なお、便宜上、PET樹脂層の表面を表、DLC膜の表面を裏としている。
【0054】
光源は、複数の異なるピーク波長のレーザを照射することができる光源であり、具体的には、少なくとも940nm、960nm、980nm、1020nm、及び1060nmの5つの波長のレーザを照射することができるように構成されている。
【0055】
こうした実験装置を用いて、940nm、960nm、980nm、1020nm、及び1060nmの5つの波長のレーザをそれぞれ照射した場合の樹脂板3の表側と裏側の温度変化を調べた。
【0056】
その結果、それぞれの波長について樹脂板の表側と裏側の温度は時間の経過と共に上昇していくが、特に図3(D)に示すようにピーク波長が1020nmのレーザを用いた場合が、昇温のペースが速く、かつ表側と裏側とで各時間における温度差が少ないことが分かった。
【0057】
この実験結果から、樹脂層と、樹脂層の内側にDLC膜を形成したプリフォームを用いる場合、すなわち上述した第1の実施形態に係るプリフォームの加熱方法においては、ピーク波長が1020nmとなるような熱源から加熱を行うことで、2軸伸展ブロー成形時に要する加熱時間を最も短縮することが可能であり、かつ、加熱時のプリフォームの内側と外側の温度差の発生を抑制することが可能であることが確認された。
【0058】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のプリフォームの加熱方法は、PET製射出成形品であるプリフォームを2軸延伸ブローして所定形状のPETボトルを製造する分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1、2 プリフォーム
11、21 外層(PET層)
12 内層(DLC膜)
22 内層(DLC再生材層)
I 赤外線
図1
図2
図3