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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019127143
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011551
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 彰宏
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0124754(US,A1)
【文献】特表2004-518793(JP,A)
【文献】特表2018-513252(JP,A)
【文献】特開2010-254938(JP,A)
【文献】特開2005-248051(JP,A)
【文献】特開平07-252724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0144624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
A61F 7/00- 7/12
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B29C 44/00- 44/60
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分と、酸化ジルコニウムと、酸化ケイ素とを含む発泡体であって、前記熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂を含み、前記酸化ジルコニウムの割合が、前記樹脂成分100質量部に対して0.01~8質量部であり、前記樹脂成分中に前記酸化ジルコニウムが分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下である発泡体。
【請求項2】
発泡倍率が10倍以上である請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
前記樹脂成分がポリエチレン系樹脂である請求項1または2記載の発泡体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分と、酸化ジルコニウムと、シリカゲルとを含む発泡体であって、前記酸化ジルコニウムの割合が、前記樹脂成分100質量部に対して0.01~8質量部であり、前記樹脂成分中に前記酸化ジルコニウムが分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下である発泡体。
【請求項5】
前記酸化ジルコニウムが、空隙の壁面および/またはスキン層付近に局在化している請求項1~のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項6】
熱を放出可能な温感発泡体である請求項1~のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項7】
原料樹脂成分酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する発泡体の製造方法であって、
前記発泡性樹脂組成物が、マトリックスとしての前記原料樹脂成分中に前記酸化ジルコニウムが分散した分散相を有し、かつ前記分散相の平均径が100nm以下であり、
前記発泡性樹脂組成物が、マトリックスとしての第1の原料樹脂成分中に酸化ジルコニウムが分散相として分子または原子単位で分散したマスターバッチと、第2の原料樹脂成分との組み合わせであり、
前記発泡体が、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分と、酸化ジルコニウムと、酸化ケイ素とを含み、前記酸化ジルコニウムの割合が、前記樹脂成分100質量部に対して0.01~8質量部であり、前記樹脂成分中に前記酸化ジルコニウムが分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下である製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温感性および緩衝性を有する発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活用品(こたつ敷き、キッチンマットなど)、アウトドア用品、防災グッズ、ペット用品、寝装寝具用品などの分野において、温感性(暖かさを付与可能な特性)と緩衝性(クッション性)とを備えた温感グッズとして、アルミ箔を貼り合わせた発泡シートが汎用されている。この発泡シートの利用方法としては、熱源である近赤外線や遠赤外線を反射させて温感性を発現する方法などが挙げられる。
【0003】
特開2019-38198号公報(特許文献1)には、フェノール樹脂発泡層と、この発泡層の少なくとも一方の面に、可撓性面材を介して設けられた表層とを備え、前記表層が、保護層で被覆された金属層である発泡樹脂積層板が開示されている。この文献には、フェノール樹脂発泡層は、断熱材として、種々の分野で採用されていることが記載され、実施例では、勾配のある屋根に設置され、作業性が向上したことが記載されている。
【0004】
特開2017-141342号公報(特許文献2)には、熱可塑性樹脂とエラストマーとを含み、スキン領域およびコア領域からなる発泡体が開示されている。この文献には、発泡成形体が含んでいてもよい任意の成分である充填材として、多数の無機化合物が例示されているが、粒径は記載されておらず、実施例でも配合されていない。
【0005】
特開2019-38997号公報(特許文献3)には、電子機器の放熱に利用される樹脂シートとして、粘着剤層付発泡樹脂シートが開示されている。この文献には、粘着剤層として、平均粒子径0.1μm以上5μm未満の第1の熱伝導性粒子および平均粒子径5~30μmの第2の熱伝導性粒子を含む熱伝導性粘着剤が記載され、粘着剤層が発泡体であってもよいと記載されている。実施例では、粘着剤層として、平均粒子径1μmの水酸化アルミニウム粉末および平均粒子径8μmの水酸化アルミニウム粉末を含む非発泡の粘着剤層が調製されている。
【0006】
一方では、発泡樹脂そのものに温感性を与えるため、遠赤外線を放射する金属酸化物などを添加した発泡シートも提案されている。
【0007】
実用新案登録第3113678号公報(特許文献4)には、ポリエチレン樹脂に、酸化アルミニウムまたは酸化チタンまたは酸化ジルコニウムの単独、あるいはこれらの併用が混合され、かつ表面がシート状の架橋発泡体を少なくとも有する構造の血流増進用シートが開示されている。
【0008】
特開2003-327733号公報(特許文献5)には、無機系天然鉱物コロマナイトを焼成して焼成コロマナイトを作成する第1のステップと、前記焼成コロマナイトを5部程度、金属酸化物を10部~20部、ポリエチレン樹脂を100部の割合で混ぜ、これに少なくとも発泡剤を加えて混練し発泡させてポリエチレンフォームを得る第2のステップと、前記第2のステップにより得られたポリエチレンフォームを任意の厚みにスライスしてシートを作成する第3のステップとを含むことを特徴とするシートの製造方法が開示されている。
【0009】
特表2004-518793号公報(特許文献6)には、ビヒクル中に約100nm未満の表面修飾ナノ粒子を含む発泡組成物が開示されている。実施例では、前記表面修飾ナノ粒子として、シランカップリング剤で修飾されたナノシリカが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-38198号公報
【文献】特開2017-141342号公報
【文献】特開2019-38997号公報
【文献】実用新案登録第3113678号公報
【文献】特開2003-327733号公報
【文献】特表2004-518793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1~3のいずれにも、発泡体を温感グッズとして利用することは記載されていない。
【0012】
また、特許文献1の発泡体を温感グッズとして利用した場合、発泡体に金属箔を貼り合わせているため、柔軟性および取り扱い性が低い上に、シート形状以外の異形形状に成形するのが困難である。
【0013】
一方、特許文献2および3では、充填材または熱伝導剤として無機粒子を発泡体に配合することは記載されているものの、前記無機粒子を配合した発泡体は調製されていない。
【0014】
特許文献4および5では、多量の金属酸化物を含むため、発泡体の機械的特性が低下する上に、金属酸化物の粒径が不明である。加えて、特許文献5では、いわゆる型枠発泡した発泡体であるため、発泡原料の混練が困難であり、金属酸化物が均一に分散された発泡体も得られない。
【0015】
また、特許文献6および7では、発泡倍率が不明である上に、温感性について記載されていない。さらに、特許文献7の用途では低発泡体が多い。
【0016】
従って、本発明の目的は、温感性と緩衝性(クッション性)とを両立できる発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、各種の三次元形状に容易に成形できる発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、柔軟性に優れ、肌触りにも優れる発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、機械的特性に優れ、保温性も有している発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、発泡体中に少量の酸化ジルコニウムを微分散させることにより、単純で均質な構造であっても、温感性を発現でき、かつ緩衝性(クッション性)も損なわないことを見出し、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明の発泡体は、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分と、酸化ジルコニウムとを含む発泡体であって、前記酸化ジルコニウムの割合は前記樹脂成分100質量部に対して0.01~8質量部であり、前記樹脂成分(マトリックス)中に前記酸化ジルコニウムが分散相として分散し、かつ前記分散相の平均径が10μm以下である。前記発泡体の発泡倍率は10倍以上であってもよい。前記熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。前記樹脂成分はポリエチレン系樹脂であってもよい。前記発泡体は、酸化ケイ素(特に、シリカゲル)をさらに含んでいてもよい。前記酸化ジルコニウムは、空隙の壁面および/またはスキン層付近に局在化していてもよい。前記発泡体は、熱を放出可能な温感発泡体であってもよい。
【0022】
本発明には、原料樹脂成分および酸化ジルコニウムを含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する前記発泡体の製造方法も含まれる。前記発泡性樹脂組成物は、マトリックスとしての原料樹脂成分中に酸化ジルコニウムが分散した分散相を有していてもよい。前記分散相の平均径は100nm以下であってもよい。前記発泡性樹脂組成物は、マトリックスとしての第1の原料樹脂成分中に酸化ジルコニウムが分散相として分子または原子単位で分散したマスターバッチと、第2の原料樹脂成分との組み合わせであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、発泡体中で少量の酸化ジルコニウムが微分散しているため、発泡体とは別に温感性を発現させるための層を形成する必要がなく、単純で均質な構造(簡単な単層構造)であっても、温感性と緩衝性(クッション性)とを両立できる。また、各種の三次元形状に容易に成形できるとともに、柔軟性に優れ、肌触りも向上できる。また、少量の酸化ジルコニウムが微分散しているため、機械的特性にも優れている。さらに、アルミ箔などの反射によって温感性を発現するのではなく、酸化ジルコニウムによって遠赤外線を吸収して放出するため、保温性も有している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[樹脂成分]
本発明の発泡体は、樹脂成分として、熱可塑性樹脂またはその架橋体を含む。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂が好ましい。
【0026】
オレフィン系樹脂は、オレフィン単位を主成分とする重合体であればよく、オレフィン系樹脂にはオレフィンの単独または共重合体が含まれる。
【0027】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのC2-20α-直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどのC2-20α-分岐鎖状オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのC4-12シクロオレフィン;2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネンなどの多環式オレフィンなどが挙げられる。
【0028】
これらのオレフィンは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、α-C2-8オレフィンが好ましく、α-C2-4オレフィンがさらに好ましく、エチレンおよび/またはプロピレンが最も好ましい。
【0029】
オレフィン系樹脂は、前記オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、重合性ニトリル化合物、芳香族ビニル、共役ジエン類、非共役ジエン類などが挙げられる。
【0030】
エチレン性不飽和カルボン酸類としては、エチレン系不飽和カルボン酸およびその酸無水物を利用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。
【0033】
重合性ニトリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0034】
芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0035】
共役ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンなどが挙げられる。
【0036】
非共役ジエン類としては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0037】
これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体の割合は、全単量体中0~50モル%、好ましくは0.1~30モル%、さらに好ましくは1~10モル%である。
【0038】
前記共重合体(オレフィン同士の共重合体およびオレフィンと共重合性単量体との共重合体)には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が含まれるが、通常、ランダム共重合体または交互共重合体である。
【0039】
これらのオレフィン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、発泡性などの点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリC2-3オレフィン系樹脂(特にポリエチレン系樹脂)が好ましい。
【0040】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのエチレンの単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体などのエチレンを主成分とする共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、発泡性などの点から、LDPE、LLDPE、EVA樹脂などが好ましい。
【0041】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量は、例えば1万~30万、好ましくは1.5万~20万、さらに好ましくは2万~10万である。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼン、およびカラム(Shodex GPC AD-806MS)を用いて、ポリスチレンを基準とするユニバーサルキャリブレーションにより測定できる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準じた方法(190℃、荷重21.2N)で、0.1g/10分以上であってもよく、例えば0.1~60g/10分、好ましくは0.2~25g/10分、さらに好ましくは0.25~8g/10分、最も好ましくは0.3~5g/10分である。MFRが大きすぎると、発泡性や強度などが低下する虞があり、逆に小さすぎても、発泡性が低下する虞がある。一般的にMFRが大きくなると、溶融張力の低下により破泡し易くなることが知られているが、MFRの下限も前記範囲に調整することにより、発泡性を向上できる。
【0043】
ポリエチレン系樹脂の融点(DSC法)は、例えば80~150℃、好ましくは90~140℃、さらに好ましくは100~130℃である。ポリエチレン系樹脂のビカット軟化点は、例えば70~140℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは90~120℃である。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン;プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1などのプロピレンを主成分とする共重合体などが挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリプロピレン系樹脂のうち、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などが好ましい。
【0045】
ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、例えば1万~50万、好ましくは1.5万~30万、さらに好ましくは2万~10万である。なお、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定できる。前記ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量は、前記ポリエチレン系樹脂の数平均分子量の測定方法と同じ条件で測定できる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂の融点(DSC法)は、例えば120~180℃、好ましくは130~175℃、さらに好ましくは140~170℃である。ポリプロピレン系樹脂のビカット軟化点は、例えば110~170℃、好ましくは120~165℃、さらに好ましくは130~160℃である。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に準じた方法(230℃、荷重21.2N)で、0.1g/10分以上であってもよく、例えば0.1~50g/10分、好ましくは0.2~30g/10分、さらに好ましくは0.25~10g/10分、最も好ましくは0.3~5g/10分である。MFRが小さすぎても、逆に大きすぎても、発泡性や強度などが低下する虞がある。
【0048】
熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂単独であってもよく、オレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)との組み合わせであってもよい。オレフィン系樹脂と組み合わせる他の熱可塑性樹脂としては、発泡体の剛性を向上できる点から、スチレン系樹脂が好ましく、発泡体の柔軟性を向上できる点から、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましい。
【0049】
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との質量割合は、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=100/0~10/90(例えば100/0~50/50)程度の範囲から選択でき、他の熱可塑性樹脂と組み合わせる場合、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=99/1~30/70、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは95/5~70/30、最も好ましくは93/7~80/20である。オレフィン系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂中50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上(特に90質量%以上)であり、100質量%(オレフィン系樹脂のみ)であってもよい。オレフィン系樹脂の割合が少なすぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0050】
樹脂成分は、耐久性などが要求される用途では、熱可塑性樹脂の架橋体であってもよい。架橋体は、熱可塑性樹脂の種類に応じて慣用の架橋体を利用できる。熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である場合、架橋体は、慣用のオレフィン樹脂架橋体、例えば、水架橋体、化学架橋体、放射線架橋体、電子線架橋体であってもよい。これらのうち、架橋性や生産性などの点から、水架橋体が好ましい。
【0051】
水架橋体は、水架橋可能な加水分解縮合性のシリル基(水架橋性シリル基)を有するオレフィン系樹脂の水架橋体であればよく、主鎖を構成する単量体として、加水分解縮合性のシリル基を有する単量体を用いて得られた重合体の架橋体であってもよく、オレフィン系樹脂の主鎖に加水分解縮合性のシリル基を有する単量体をグラフト重合させた重合体であってもよい。このようなオレフィン系樹脂の水架橋体としては、例えば、特開2016-37551号公報、特開2016-37552号公報に記載の水架橋体などを利用できる。
【0052】
[酸化ジルコニウム]
本発明の発泡体は、発泡体に温感性を付与できる酸化ジルコニウム(ジルコニアまたは二酸化ジルコニウム)を含む。酸化ジルコニウムは、遠赤外線を吸収して放出する作用を有するため、発泡体に保温性などの温感性を付与できる。また、本発明では、樹脂成分中に分散相として酸化ジルコニウムを含むことにより、発泡体の緩衝性、柔軟性を損なうことなく、温感性を付与できる。特に、マトリックスとしての樹脂成分中に酸化ジルコニウムが分散相として微分散することにより、少量であっても、発泡体に対して、高い温感性を付与できるとともに、高い発泡性および機械的特性も付与できる。
【0053】
マトリックス中で微分散した分散相(酸化ジルコニウム)の平均径は10μm以下(例えば0.01~10μm程度)であればよく、例えば0.1~5μm、好ましくは0.3~3μm、さらに好ましくは0.5~2μm、最も好ましくは1~1.5μmである。分散相の平均径は、ナノメータサイズであってもよく、例えば100nm以下であってもよく、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下(例えば0.1~10nm程度)であってもよい。なお、分散相が異方形状である場合、各分散相の径は、長径と短径との平均値を意味する。
【0054】
さらに、マトリックス中で微分散した分散相(酸化ジルコニウム)は、温感性を向上できる点から、空隙の壁面および/またはスキン層付近に局在化しているのが好ましい。
【0055】
本明細書および特許請求の範囲において、分散相の平均径および分散状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察及びエネルギー分散型X線分光器による元素分析(EDS元素分析)に基づいて測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0056】
酸化ジルコニウムは、温感性や分散性などの点から、表面処理されていない酸化ジルコニウムが好ましい。
【0057】
本発明では、酸化ジルコニウムの割合は、比較的少量であるため、発泡体の発泡性や機械特性を向上できる。具体的には、発泡体中の酸化ジルコニウムの割合は10質量%以下(例えば0.001~10質量%程度)であってもよいが、少量でも機能性を発現できるため、発泡体本来の前記特性を向上させる観点から、5質量%以下(例えば0.01~5質量%)であってもよく、例えば0.03~5質量%(例えば0.05~4質量%)、好ましくは0.1~3質量%(例えば0.2~2質量%)、さらに好ましくは0.3~1.5質量%、最も好ましくは0.5~1質量%である。酸化ジルコニウムの割合は、樹脂成分100質量部に対して0.01~8質量部であり、好ましくは0.01~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.3~2質量部、最も好ましくは0.5~1.5質量部である。酸化ジルコニウムの割合が多すぎると、発泡体の発泡性や機械的特性が低下する虞がある。
【0058】
[酸化ケイ素]
本発明の発泡体は、樹脂成分および酸化ジルコニウムに加えて、酸化ジルコニウムの分散性を向上できる点から、酸化ケイ素(シリカまたは二酸化ケイ素)をさらに含んでいてもよい。
【0059】
酸化ケイ素(シリカ)としては、例えば、フュームドシリカなどの乾式シリカ(乾式法ホワイトカーボン);コロイダルシリカ、シリカゲル、沈降シリカなどの湿式シリカ(湿式法ホワイトカーボン)などが挙げられる。これらの酸化ケイ素は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。酸化ケイ素は、表面処理されたシリカであってもよい。これらのシリカのうち、シリカゲルが好ましく、B型シリカゲルが特に好ましい。
【0060】
酸化ケイ素の粒径は、篩分け法によるメッシュ通過粒子として、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である。シリカの粒径が大きすぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞がある。
【0061】
酸化ケイ素は、非多孔質または多孔質のいずれであってもよいが、BET法による窒素吸着比表面積は、例えば100~1000m/g、好ましくは200~800m/g、さらに好ましくは300~700m/g、最も好ましくは400~600m/gである。比表面積が大きすぎると、均一に分散するのが困難となる虞があり、比表面積が小さすぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞がある。
【0062】
酸化ケイ素の割合は、酸化ジルコニウム100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば10~5000質量部、好ましくは50~3000質量部、さらに好ましくは100~1000質量部、より好ましくは200~500質量部、最も好ましくは250~400質量部である。酸化ケイ素の割合が少なすぎると、酸化ジルコニウムの分散性を向上させる効果が低下する虞がある。
【0063】
[発泡剤]
本発明の発泡体は、前記樹脂成分および酸化ジルコニウムを含む発泡性樹脂組成物を発泡して得られ、発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでいてもよい。
【0064】
発泡剤としては、慣用の発泡剤を使用でき、分解性発泡剤(化学発泡剤)であってもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、揮発性発泡剤(物理発泡剤)が好ましい。揮発性発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤(窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水など)、有機系発泡剤(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類など)などが挙げられる。これらのうち、安価で毒性が低い点から、ブタン(n-ブタン、イソブタンなど)やペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が汎用される。
【0065】
発泡剤の割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部、最も好ましくは5~15質量部である。
【0066】
[発泡核剤]
本発明の発泡体は、発泡核剤をさらに含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩または炭酸水素塩など)、有機酸またはその塩(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
発泡核剤の割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、最も好ましくは0.5~2質量部である。
【0068】
[収縮防止剤]
本発明の発泡体は、収縮防止剤をさらに含んでいてもよい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノないしトリグリセリド、ステアリン酸モノないしトリグリセリドなどのC8-24脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8-24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
収縮防止剤の割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0070】
[他の添加剤]
本発明の発泡体は、他の添加剤として、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、坑アレルギー剤、消臭剤などが挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
他の添加剤の合計割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0072】
[発泡体の特性]
本発明の発泡体は、発泡性が低下することを理由に従来は積極的に添加されていなかった無機化合物を含んでいるにも拘わらず、発泡性を向上できる。具体的な発泡倍率は、3倍以上(特に10倍以上)であればよく、例えば3~100倍、好ましくは5~80倍、さらに好ましくは10~50倍、より好ましくは15~40倍、最も好ましくは20~30倍である。発泡倍率が低すぎると、緩衝性や柔軟性が低下する虞がある。
【0073】
本発明の発泡体は、独立気泡および/または連続気泡構造を有しており、少なくとも独立気泡構造を含むのが好ましく、気泡全体(連続気泡と独立気泡との合計)に対する連続気泡の割合である連続気泡率は90体積%以下であってもよく、例えば0.1~90体積%、好ましくは1~80体積%、さらに好ましくは3~50体積%、最も好ましくは5~40体積%である。連続気泡率が高すぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞がある。本発明では、酸化ジルコニウムが熱可塑性樹脂中に微分散しているため、独立発泡が困難な無機化合物である酸化ジルコニウムを用いているにも拘わらず、このような高い独立気泡率を実現できる。一方、柔軟性が要求される用途では、連続気泡率の高い発泡体であってもよく、例えば連続気泡率が90体積%を超える発泡体であってもよい。連続気泡率は、例えば、マスターバッチ以外の樹脂成分の組成を変更することによって調整してもよい。
【0074】
本発明の発泡体の平均気泡径は、例えば0.2~2mm、好ましくは0.3~1.8mm、さらに好ましくは0.4~1.6mm、最も好ましくは0.5~1.3mmである。平均気泡径が小さすぎると、発泡倍率を高くするのが困難となる虞があり、大きすぎると、機械的特性が低下する虞がある。
【0075】
本発明の発泡体は、表面にスキン層を有するのが好ましく、全表面に対するスキン層の被覆率は60面積%以上(特に80面積%以上)であってもよく、好ましくは90面積%以上であってもよく、100面積%(全表面がスキン層)であってもよい。スキン層は、発泡体の表面において、略均一な厚みで延びる非発泡層を意味する。
【0076】
スキン層の平均厚みは、0.001~1mm程度の範囲から選択でき、例えば0.005~0.1mm、好ましくは0.008~0.05mm、さらに好ましくは0.01~0.03mm、最も好ましくは0.012~0.025mmである。スキン層の平均厚みが薄すぎると、取り扱い性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0077】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径およびスキン層の平均厚みは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0078】
本発明の発泡体は、熱を放出可能な温感発泡体であってもよい。特に、本発明の温感発泡体は、波長10μm以上の遠赤外線の吸収および放出性に優れており、なかでも波長10~20μm程度の遠赤外線の吸収および放出性に優れているため、人体に対して暖かさを有効に付与できる。
【0079】
[発泡体の製造方法]
本発明の発泡体の製造方法は、原料樹脂成分(未発泡の熱可塑性樹脂)および酸化ジルコニウムを含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の方法を利用できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法を利用できるが、発泡性樹脂組成物として、原料樹脂成分中に酸化ジルコニウムが微分散した発泡性樹脂組成物を用いるのが好ましい。
【0080】
発泡性樹脂組成物中に微分散している酸化ジルコニウムの平均径は、100nm未満であってもよく、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下(例えば0.1~10nm程度)であってもよく、分散相は分子または原子単位でマトリックス中に分散するのが特に好ましい。本発明では、発泡前の樹脂組成物として、このように酸化ジルコニウムが微分散した組成物を用いるため、得られた発泡体においても、酸化ジルコニウムを微分散できるとともに、酸化ジルコニウムを空隙の壁面および/またはスキン層付近に局在化できる。
【0081】
酸化ジルコニウムが微分散した発泡性樹脂組成物の調製方法としては、酸化ジルコニウムを溶媒に溶解または分散させた状態で、加熱した前記原料樹脂成分(特にオレフィン系樹脂)と混合し、前記原料樹脂成分が溶融した状態の樹脂組成物から前記溶媒を気体の状態で除去することにより得られる。原料の酸化ジルコニウムは、ナノメータサイズであってもよい。酸化ジルコニウムを溶解または分散する溶媒としては、例えば、水、水性有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、アセトンなどのケトンなど)などが挙げられる。これらの溶媒のうち、水が好ましい。水分散液の濃度は、例えば10~50質量%、好ましくは20~40質量%程度である。酸化ケイ素をさらに含む場合は、酸化ジルコニウム分散液とともに、または別々に、酸化ケイ素をドライブレンドで混合してもよい。詳細には、酸化ジルコニウムが微分散した発泡性樹脂組成物は、特開2016-216573号公報に記載の方法で調製でき、例えば、酸化ジルコニウムを前記溶媒に分散した溶液と、前記原料樹脂成分とを押出機(例えば、一軸またはベント式二軸押出機など)に供給した後、溶融した原料樹脂成分および前記溶液は、複数枚の回転可能な混練プレートを有する混練分散部に送られる。混練分散部では、溶融した原料樹脂成分と前記溶液とは、回転する混練プレートにより、均一に混合された後、減圧ラインから溶媒が気体の状態で除去されることにより、前記原料樹脂成分中に酸化ジルコニウムが平均分散径100nm未満で微分散した発泡性樹脂組成物が調製される。
【0082】
得られた発泡性樹脂組成物は、そのまま発泡成形に供してもよいが、マスターバッチとして発泡成形に供してもよい。発泡性樹脂組成物がマスターバッチとして利用される場合には、溶媒が除去された樹脂組成物は、さらに冷却してペレットなどの形態に調製してもよい。
【0083】
マスターバッチとして供される場合、第1の原料樹脂成分(特に、第1のオレフィン系樹脂)中に酸化ジルコニウムが平均分散径100nm未満で微分散したマスターバッチと、残部の原料樹脂成分である第2の原料樹脂成分(特に第2のオレフィン系樹脂)とは、慣用の溶融混練機、例えば、一軸またはベント式二軸押出機などを用いて溶融混練してもよい。また、マスターバッチと第2の原料樹脂成分との溶融混練において、他の成分(発泡剤および必要に応じて発泡核剤、添加剤など)を配合してもよい。酸化ジルコニウムが微分散した発泡性樹脂組成物の溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸またはベント式二軸押出機などを用いて溶融混練してもよい。また、溶融混練に先だって、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて、前記マスターバッチと、第2の原料樹脂成分と、他の成分(発泡剤及び必要に応じて発泡核剤、添加剤など)とを予備混合してもよい。
【0084】
発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。これらのうち、高い発泡性を有する発泡体を高い生産性で製造できる点から、押出成形法が好ましい。
【0085】
押出成形法において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用でき、発泡条件を調整し易く、高発泡率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押出機が好ましい。
【0086】
押出成形法において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
【0087】
口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、特に制限されず目的の形態に応じて選択でき、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状、スリット状、L字状、コ型状、パイプ状またはリング状などの三次元的形状であってもよい。
【0088】
押出発泡された発泡体は、慣用の方法、例えば、冷却器を用いた冷却方法で冷却してもよい。冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアー、水(冷却水)、空気(ブロア)などの冷却媒体が挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射する方法、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば0~60℃、好ましくは5~55℃、さらに好ましくは10~50℃である。
【0089】
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.2~5MPa、さらに好ましくは0.3~1MPaである。圧縮エアーの噴射量は、例えば100~1000リットル/分、好ましくは200~500リットル/分、さらに好ましくは250~400リットル/分である。
【0090】
なお、樹脂成分が熱可塑性樹脂の架橋体である場合、得られた押出発泡体は架橋工程に供してもよい。水架橋体における架橋工程では、空気中の水分によりシリル変性ポリオレフィンを水架橋してもよい。架橋処理は、非加熱状態(15~25程度の室温)で架橋させてもよいが、生産性を向上させるために、加熱して架橋してもよい。加熱温度は、例えば40~100℃、好ましくは50~80℃、さらに好ましくは55~70℃である。
【0091】
また、必要により、得られた発泡体(特に、シート状発泡体)を二次加工[例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形などの熱成形(例えば、金型を用いる熱成形)]してもよい。
【0092】
なお、発泡成形または二次加工もしくは成形温度は、例えば70~300℃、好ましくは80~280℃、さらに好ましくは85~260℃程度であってもよい。
【0093】
発泡体の形状は、用途に応じて任意の形状に適宜選択でき、例えば、棒状、シート状、三次元形状などであってもよい。
【実施例
【0094】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた原料は以下の通りであり、得られた発泡体の特性は以下の方法で評価した。
【0095】
[原料]
LDPE:低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン(株)製「ノバテック(登録商標)LD LF640MA」、MFR5g/10分
イソブタン(発泡剤):市販品
発泡核剤:タルク、平均粒子径15μm
収縮防止剤:ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」
酸化ジルコニウム:堺化学工業(株)製「SZR-W」、平均粒径3nm
シリカ:豊田化工(株)製「トヨタシリカゲルB白400下」、粒径37μm以下(篩分け法によるメッシュ通過粒子)、BET比表面積450m/g。
【0096】
[発泡体の目付]
直径74mm、内径70mmの円筒状の発泡体を1mで切断し、電子比重計(ミラージュ貿易社製「MD200S」)を用い、測定した(n=3)。
【0097】
[発泡倍率]
発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
【0098】
発泡倍率(倍)=発泡体用樹脂組成物の密度/発泡体の見掛け密度。
【0099】
[連続気泡率]
実施例および比較例で得られた発泡体を、予め質量を測定し、水中に静置した後、-400mmHg(ゲージ圧)の減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して質量を測定した後、下記式(1)により連続気泡率を算出した。
【0100】
連続気泡率(%)={(w-w)/d}/(w/d-w/d)×100 (1)
(式中、wは吸水後の発泡体質量、wは吸水前の発泡体質量、dは発泡体の見掛密度、dは発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、dは測定時の水の密度を示す)。
【0101】
[気泡径(セルサイズ)]
発泡体の断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製「S-4800」)またはデジタル顕微鏡(スカラ(株)製)で観察し、TD方向断面の気泡径およびMD方向断面の気泡径を、それぞれ任意の10箇所で測定し、それら20箇所の平均値を気泡径とした。また、各々の気泡径は、長径と短径との平均値とした。
【0102】
[発泡体のスキン層の平均厚み]
電子顕微鏡(スカラ(株)製)およびファイリング&2次元計測ソフトウェア((株)アートレイ製「AR-CNVMF」)を用いて、TD方向のスキン層の厚みを任意の10箇所で測定し、平均値をスキン層の平均厚みとした。
【0103】
[温感性]
発泡体を直径3cmの円形に切り取り試料を作製して、フーリエ変換赤外分光分析装置(パーキンエルマー社製「FT-IR SpectrumOne Frontier T」)を用い、測定温度40℃で遠赤外線分光放射率を測定した。
【0104】
比較例1
LDPE100質量部、発泡核剤1.75質量部および収縮防止剤3.0質量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス8.0質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、幅108mm、厚み1.83mmの筒状であり、目付15g/m、発泡倍率24.5倍、連続気泡率8.8%、セルサイズ1.07mm、スキン層の平均厚み0.020mmであった。
【0105】
実施例1
(酸化ジルコニウム含有マスターバッチの調製)
酸化ジルコニウム3質量部、シリカ10質量部を、酸化ジルコニウムは30質量%濃度のスラリーで、シリカはドライブレンドで、LDPE100質量部に添加して、押し出し機(特開2016-216573号公報記載の押し出し機)に供給し、温度150~160℃の条件で、溶融混練した。溶融混練部では複数枚の混練プレートが回転しており、ここでポリマーと水に分散させた機能剤は均一混合され、次いで真空(負圧)にすることで同時に水分を取り除いた。水分を除去された溶融混練物は、押出部に供給されて押し出され、冷却後、取り出され、ペレタイザーでペレット化し、酸化ジルコニウム含有マスターバッチを得た。
【0106】
(発泡体の製造)
LDPE90質量部、酸化ジルコニウム含有マスターバッチ10質量部、発泡核剤1.75質量部および収縮防止剤3.0質量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス8.0質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、幅97mm、厚み2.37mmの筒状であり、目付15.8g/m、発泡倍率24.5倍、連続気泡率5.5%、セルサイズ1.45mm、スキン層の平均厚み0.015mmであった。
【0107】
実施例2
LDPE90質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ10質量部の代わりに、LDPE80質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ20質量部を用いる以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅98mm、厚み2.14mmの筒状であり、目付16.2g/m、発泡倍率23.0倍、連続気泡率5.0%、セルサイズ1.00mm、スキン層の平均厚み0.018mmであった。
【0108】
実施例3
LDPE90質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ10質量部の代わりに、LDPE70質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ30質量部を用いる以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅100mm、厚み2.13mmの筒状であり、目付18.0g/m、発泡倍率17.7倍、連続気泡率8.3%、セルサイズ1.14mm、スキン層の平均厚み0.018mmであった。
【0109】
実施例4
(酸化ジルコニウム含有マスターバッチの調製)
シリカの使用量を30質量部に変更する以外は実施例1と同様の方法で酸化ジルコニウム含有マスターバッチを得た。
【0110】
(発泡体の製造)
LDPE90質量部、酸化ジルコニウム含有マスターバッチ10質量部、発泡核剤1.75質量部および収縮防止剤3.0質量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス7.7質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、幅93mm、厚み1.49mmの筒状であり、目付15.0g/m、発泡倍率17.7倍、連続気泡率3.3%、セルサイズ1.20mm、スキン層の平均厚み0.019mmであった。
【0111】
実施例5
LDPE90質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ10質量部の代わりに、LDPE80質量部および酸化ジルコニウム含有マスターバッチ20質量部を用いる以外は実施例4と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体は、幅62mm、厚み1.66mmの筒状であり、目付13.6g/m、発泡倍率14.7倍、連続気泡率9.0%、セルサイズ1.24mm、スキン層の平均厚み0.017mmであった。
【0112】
比較例1および実施例1、3および5で得られた発泡体の温感性(遠赤外線の放射率)を評価した結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、比較例1の発泡体よりも遠赤外線の放射率が高い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の発泡体は、温感性と緩衝性とを要求される各種の用途、例えば、生活用品(こたつ敷き、キッチンマット、クッションなど)、アウトドア用品(テント、野外用マットなど)、防災グッズ(カプセルテント、防寒用ジャケットなど)、ペット用品(籠、バスケットなど)、寝装寝具用品(敷布団、マットレスパッドなど)などに利用できる。