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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】エンジンルームカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20240710BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B62D25/10 G
F02B77/13 U
F02B77/13 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019130092
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014196
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晶子
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273320(JP,A)
【文献】特表2014-527093(JP,A)
【文献】特開2005-246952(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1316866(KR,B1)
【文献】特開2003-027958(JP,A)
【文献】特開2009-061847(JP,A)
【文献】特開2001-233249(JP,A)
【文献】特開2005-335708(JP,A)
【文献】特開2006-183571(JP,A)
【文献】特開2015-107667(JP,A)
【文献】実開昭55-114321(JP,U)
【文献】実開昭57-082400(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0179460(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006052900(DE,A1)
【文献】中国実用新案第205256453(CN,U)
【文献】特開平08-246313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10 - 25/13
B60R 13/00 - 13/10
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの上部に開口する開口部を塞ぐエンジンフードと、前記エンジンルームに設置された装置との間に配置されるエンジンルームカバーであって、
前記エンジンルームカバーは、多孔質体であり、
前記エンジンルームカバーの下面には、前記装置の上面の高低に合わせた凹部および凸部を有し、
前記エンジンルームカバーの上面の少なくとも一部が、前記エンジンフードの下面と接すると共に、前記エンジンルームカバーの下面の前記凹部及び前記凸部が、前記装置の上面と接して、前記エンジンフードと前記装置との間を埋める
ことを特徴とするエンジンルームカバー。
【請求項2】
エンジンルームの上部に開口する開口部を塞ぐエンジンフードと、前記エンジンルームに設置された装置との間に配置されるエンジンルームカバーであって、
前記エンジンルームカバーは、弾力性を有するポリウレタンフォームのみで構成され、
前記エンジンルームカバーの上面の少なくとも一部が、前記エンジンフードの下面と接すると共に、前記エンジンルームカバーの下面の少なくとも一部が、前記装置の上面と接して、前記エンジンフードと前記装置との間を埋め
前記エンジンルームカバーは、物性又は耐熱性が異なるポリウレタンフォームを重ねて構成される
ことを特徴とするエンジンルームカバー。
【請求項3】
エンジンルームの上部に開口する開口部を塞ぐエンジンフードと、前記エンジンルームに設置された装置との間に配置されるエンジンルームカバーであって、
前記エンジンルームカバーは、多孔質体であり、
前記エンジンルームカバーは、その下面から上方へ向けて設けられたスリットを有し、
前記エンジンルームカバーの上面の少なくとも一部が、前記エンジンフードの下面と接すると共に、前記エンジンルームカバーの下面における前記スリットで区切られた部位毎に、高さが異なる前記装置の上面に接して、前記エンジンフードと前記装置との間を埋め、
背が高い前記装置に対応する部位を区切る前記スリットより、背が低い前記装置に対応する部位を区切る前記スリットの方が浅い
ことを特徴とするエンジンルームカバー。
【請求項4】
エンジンルームの上部に開口する開口部を塞ぐエンジンフードと、前記エンジンルームに設置されたバッテリー又はラジエータを含む装置との間に配置されるエンジンルームカバーであって、
前記エンジンルームカバーは、多孔質体であり
前記エンジンルームカバーの上面の少なくとも一部が、前記エンジンフードの下面と接すると共に、前記エンジンルームカバーの下面の少なくとも一部が、前記装置の上面と接して、前記エンジンフードと前記装置との間を埋める
ことを特徴とするエンジンルームカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンフードとエンジンルームに設置された装置との間に配置されるエンジンルームカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両では、エンジンフードに防音材を取り付けて、エンジンルームに設置されたエンジンが発するエンジン音を外部に漏れ難くしている。例えば、特許文献1に開示の防音装置は、エンジンとの間に空間を置いて配置されたカバーと、エンジンフードの内側面に設けられた吸音材とを備えている。また、特許文献2に開示のエンジンカバーは、エンジンを覆う容器状に形成されて、エンジンに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-42633号公報
【文献】特開2005-155599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、エンジンとカバーとの間に隙間をあけてあり、また、カバーとエンジンフード(吸音材)との間にも隙間をあけてある。特許文献2では、エンジンカバーにおけるカバー本体部の外縁から下方に延びる保持構造体がエンジンと接するものの、カバー本体部とエンジンの上面との間に隙間があいている。そして、特許文献2のエンジンカバーについても、特許文献1と同様に、エンジンフードとの間に隙間をあけてある。このように、隙間があいていると、隙間でエンジン音が反響して共鳴が生じ、音を効果的に抑制できないことがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、防音性に優れたエンジンルームカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るエンジンルームカバーは、
多孔質体から構成され、
エンジンルームの上部に開口する開口部を塞ぐエンジンフード側の上面の少なくとも一部が、前記エンジンフードの下面と接すると共に、前記エンジンルームに設置された装置側の下面の少なくとも一部が、前記装置の上面と接するように設置され、
前記エンジンフードと前記装置との間の空間を埋めることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエンジンルームカバーによれば、防音性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るエンジンルームカバーが適用されるエンジンルームを、エンジンフードを開いた状態を示す概略図である。
図2】実施例のエンジンルームカバーを、前後方向に切断して示す概略断面図である。なお、エンジンフードを閉じている。
図3】実施例のエンジンルームカバーを、前後方向に切断して示す概略断面図である。なお、エンジンフードを開いている。
図4】実施例のエンジンルームカバーの一部を、左右方向に切断して示す概略断面図である。なお、エンジンフードを閉じている。
図5】変更例のエンジンルームカバーを、前後方向に切断して示す概略断面図である。なお、(a)はエンジンフードを開いた状態であり、(b)はエンジンフードを閉じた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るエンジンルームカバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、車両の向きを基準として方向を指称する。具体的には、車両のフロント側を前側とし、リア側を後側とし、車両の進行方向を向いたときの右手側を右側とし、同じく車両の進行方向を向いたときの左手側を左側と指称する。
【実施例
【0010】
図1に示すように、乗用車等の車両10には、エンジン、吸気ダクト等の吸気系、バッテリー、ラジエータなどの様々な装置14がエンジンルーム12に設置されている。図2図4に示すように、各装置14は、上面が湾曲したり、凹凸したりするなど、上面が様々な形状になっている。また、エンジンルーム12に設置された装置14は、互いに上面の高さが異なっている。なお、装置14としては、特許文献2のようにエンジンに取り付けられたカバーなどの付属品も含んでいる。
【0011】
車両10は、エンジンルーム12の上部に開口する開口部12aを、エンジンフード16で開閉可能に覆っている。車両10は、エンジンフード16を閉じることで開口部12aを塞ぎ、このとき、エンジンフード16とエンジンルーム12に設置された装置14とが対向して配置される(図2および図4参照)。車両10は、エンジンフード16を開くことで開口部12aを開放し、これにより開口部12aを介してエンジンルーム12に外部からアクセス可能となる(図3参照)。
【0012】
図2および図4に示すように、車両10には、エンジンフード16とエンジンルーム12に設置された装置14との間に、エンジンルームカバー18が設置されている。エンジンルームカバー18は、エンジンフード16側の上面の少なくとも一部が、エンジンフード16の下面と接すると共に、エンジンルーム12に設置された装置14側の下面の少なくとも一部が、装置14の上面と接するように設置されている。そして、エンジンルームカバー18は、エンジンフード16と装置14との間の空間を埋めるように構成されている。
【0013】
エンジンルームカバー18は、多孔質体で構成されている。多孔質体としては、ポリウレタンフォームやポリオレフィンフォームやメラミンフォームなどの発泡体や、不織布やフェルトやグラスウールなどの繊維体などを用いることができる。ここで、エンジンルームカバー18は、エンジン等の高温になる装置14と直接接するため、耐熱性を有することが好ましく、耐熱性を有する多孔質体としては、ポリウレタンフォームやメラミンフォームやグラスウールが挙げられる。この中でも、装置14への形状追従性や圧縮状態から元に戻る弾力性を有する利点から、耐熱性を有するポリウレタンフォームがより好ましい。また、エンジンルームカバー18をポリウレタンフォームで構成することで、軽量化することができる。エンジンルームカバー18は、単層で構成しても、複数の層を重ねて構成してもよく、複層の場合、物性や耐熱性の異なる同じ材質(例えば、物性や耐熱性の異なる2種類以上のポリウレタンフォーム)を重ねても、異なる材質(例えば、耐熱性を有するポリウレタンフォームと不織布)を重ねても何れであってもよい。複層の場合、耐熱性を有する多孔質体を装置14側に配置することが好ましい。また、多孔質体としては、塑性変形し難い硬質なものであってもよいが、圧縮変形可能で、圧縮状態から元に戻る弾力性を有していることが、装置14と干渉させて接するようにする際に望ましい。多孔質体としては、通気性が低いものであれば、遮音性を付与することができ、通気性がある程度高いものであれば、吸音性を付与することができる。複層の場合、通気性の低い多孔質体と通気性の高い多孔質体とを組み合わせて、遮音性と吸音性の両方を付与することができる。
【0014】
図3に示すように、実施例のエンジンルームカバー18は、エンジンフード16側の上面が、エンジンフード16を閉じたときにエンジンルーム12に向くエンジンフード16の下面に、接着剤等によって貼り合わせて取り付けられている。実施例のエンジンルームカバー18は、エンジンフード16側の上面全体が、エンジンフード16の下面に接するように構成されている。また、エンジンルームカバー18は、エンジンフード16の下面と略同じ寸法で形成されて、エンジンフード16の下面を全体的に覆うようになっている。エンジンルームカバー18は、上面を、エンジンフード16の下面の形状に合わせて型成形や切断加工等により予め形成してある構成であっても、上面がエンジンフード16の下面に接した際にエンジンフード16の下面形状に追従させて変形させる構成であっても、何れであってもよい。このように構成することで、エンジンルームカバー18の上面とエンジンフード16の下面との間に隙間を無くすことができ、あるいは隙間があってもわずかにすることができる。
【0015】
図2図4に示すように、エンジンルームカバー18は、装置14側の下面が、装置14の上面自体の凹凸による高低差や、装置14同士の高さの違いによる装置14間の上面の高低差に対応して、装置14の上面に接するように構成されている。より具体的には、エンジンルームカバー18の下面は、装置14の上面自体の凹凸形状のうちの凸部に接するだけでなく、凹部の少なくとも一部にも接するように形成されている。また、エンジンルームカバー18の下面は、隣り合う装置14,14のうちの高い方に接するだけでなく、隣り合う装置14,14のうちの低い方にも少なくとも一部が接するように形成されている。ここで、エンジンルームカバー18の下面が、エンジンルーム12に設置されている全ての装置14の上面に接しているということではない。例えば、装置14の上面が極端に低い位置にある場合や、装置14の上面の凹みが非常に狭い場合など、エンジンフード16の開閉などにエンジンルームカバー18が悪影響を与えるときは、一部の装置14の上面とエンジンルームカバー18の下面とは接しないようにしてもよい。エンジンルームカバー18は、その下面を、閉じたエンジンフード16の下面の下方に配置されている装置14のうち、エンジンやバッテリーや吸気ダクトなどの比較的大きい主要な装置14の上面に接するようにして、配線やホースなどの比較的小さいものには、一部が接する等、適宜設定すればよい。このように、エンジンルームカバー18は、エンジンフード16との間の上下方向の空間だけでなく、複数の装置14間の前後または左右方向の空間の少なくとも一部を埋めている。
【0016】
図2~4に示すように、実施例のエンジンルームカバー18は、その上面がエンジンフード16の下面に取り付けられているので、エンジンフード16を閉じたとき、エンジンフード16とエンジンフード16の下方に配置されている装置14の上面に下面が接して、エンジンフード16と装置14との間の空間を埋めるようになっている。このように、エンジンルームカバー18の下面を装置14の上面に接するように設置するので、エンジンルームカバー18の下面と装置14の上面との間の隙間を無くすことができ、あるいは隙間があってもわずかにすることができる。エンジンルームカバー18は、下面が、ある装置14の上面のうちの凸部に対面すると共に、ある装置14の上面のうちの凹部に対面している。エンジンルームカバー18は、ある装置14のうちの凸部に隣り合う凹部に対応する部分によって、装置14の上面のうちの凸部の外周を囲んでいる。エンジンルームカバー18は、下面が、複数の装置14のうちの背の高いものの上面に対面すると共に、複数の装置14のうちの背の低いものの上面に対面している。エンジンルームカバー18は、複数の装置14のうちの背の高いものに隣り合う背の低いものに対応する部分によって、装置14のうちの背の高いものの上部の外周(装置14の横側)を囲んでいる。
【0017】
エンジンルームカバー18は、その少なくとも一部が、エンジンフード16と装置14の上面との間に挟まれて、上下方向に圧縮されるように構成されている。そして、エンジンルームカバー18は、装置14の上面に押されてエンジンフード16に向けて圧縮された部分の密度が、圧縮前の密度よりも高くなっている。具体的には、エンジンルームカバー18は、上下方向の厚みが、エンジンフード16の下面と装置14の上面との間隔よりも大きく形成されている。エンジンルームカバー18における上下方向の厚みを、エンジンフード16の下面と装置14の上面との間隔よりも全体的に大きく設定してもよいが、例えば、エンジンルームカバー18におけるある装置14に対応する部位を、該装置14の上面の凹凸形状のうちの凹部に合わせて上下方向の厚みを設定することで、装置14の上面の凹凸形状のうちの凸部によって、エンジンルームカバー18を圧縮させることができる。また、エンジンルームカバー18における複数の装置14に対応する部位を、複数の装置14のうちの背の低いものに合わせて上下方向の厚みを設定することで、複数の装置14のうちの背の高いものによって、エンジンルームカバー18を圧縮させることができる。
【0018】
エンジンルームカバー18は、下面を、装置14の上面の高低に合わせて型成形や切断加工等により予め形成してある構成であっても、下面が装置14の上面に接した際に装置14の上面の高低に追従させて変形させる構成であっても、何れであってもよい。図3に示すように、実施例のエンジンルームカバー18の下面は、装置14の上面自体の凹凸形状や、隣り合う装置14,14の高さの差に応じた凹凸形状で予め形成されている。この場合、エンジンルームカバー18は、下面を型成形によって所要の凹凸形状とした型成形品を用いることができる。同様に、エンジンルームカバー18は、上面を型成形によって所要形状とした型成形品を用いて、上面をエンジンフード16の下面に合わせて予め形成してもよい。なお、エンジンルームカバー18の下面を予め装置14の凹凸形状で形成した型成形品に、ブロック状に形成されたポリウレタンフォームをシート状に切出したもの(所謂、スラブウレタンフォーム)や不織布等をエンジンルームカバー18の上面側に積層してもよい。その際、型成形品は耐熱性を有することが好ましいが、上側に積層される多孔質体は、耐熱性を有していなくてもよい。
【0019】
図4に示すように、エンジンルームカバー18には、下縁から横方向に張り出したフランジ部22が設けられている。エンジンルームカバー18は、エンジンフード16を閉じたとき、フランジ部22が車体24の受部24aに重なるようになっている。エンジンフード16を閉じたとき、フランジ部22の下面が受部24aの張り出し部に接して、エンジンフード16と車体24との合わせ目を塞ぐようになっている。これにより、エンジンルーム12内で生じた音が車体24とエンジンフード16との合わせ目から車外に漏れることを効果的に抑えることができる。なお、受部24aは、例えばエンジンルームカバー18と同様に多孔質体で構成しても、ゴムなどの弾力性を有する他の材料で構成してもよい。
【0020】
エンジンルームカバー18は、エンジンフード16とエンジンフード16の下方に設置された装置14との間の空間を埋めるように設置することで、エンジンフード16と装置14との間の空間において、エンジン音が共鳴することを抑えることができる。また、エンジンルームカバー18は、上面の少なくとも一部がエンジンフード16に接すると共に、下面の少なくとも一部が装置14に接しているので、エンジンフード16および装置14の振動を低減することができる。このように、エンジンルームカバー18は、多孔質体特有の防音性(吸音性や遮音性)に加えて、エンジン音が共鳴する空間を埋めているので、エンジン音の防音性に優れている。従って、エンジンルームカバー18によれば、エンジンフード16および装置14から生じる音の量を相対的に低減するだけでなく、エンジンフード16や、エンジンフード16と車体24の合わせ目を介して外部に漏れ出るエンジン音を効果的に抑えて、車両10の静粛性(防音性)の向上に大きく寄与し得る。
【0021】
エンジンルームカバー18は、エンジンフード16に接するように設けてあるので、エンジンフード16の剛性をエンジンルームカバー18によって向上させることができる。特に、エンジンフード16が合成樹脂製である場合、エンジンルームカバー18の物性(硬さ等)や厚み等を調整することによってエンジンフード16の剛性向上に大きく寄与し得る。
【0022】
エンジンルームカバー18は、エンジンフード16およびエンジンフード16の下方に設置された装置14の間に設けてあるので、エンジンフード16に荷重が加わった場合におけるエンジンフード16の変形をエンジンルームカバー18によって制御(低減)することができる。具体的には、エンジンフード16に瞬間的に外部から衝撃が加わったとき、エンジンフード16の変形を許容して、エンジンルームカバー18が荷重を受けつつ変形することで、衝撃を逃がすことができる。従って、エンジンルームカバー18によれば、車両10の歩行者安全性能を向上することができる。
【0023】
エンジンルームカバー18は、エンジンフード16および装置14の両方に接するように設けてあるので、車両10の走行時に装置14が振動することが抑えられる。また、エンジンルームカバー18は、エンジンフード16に接しているので、エンジンフード16の振動を抑えることができる。エンジンフード16は、エンジンルーム12の先端部と末端部とで固定されているだけなので、エンジンフード16自体が振動し易い。エンジンルームカバー18を設置することで、先端部と末端部との固定に加えて、エンジンフード16の下面を、エンジンルームカバー18を介して装置14で複数個所押して(支えて)、エンジンフード16自体の振動を抑えることができる。このように、エンジンフード16がエンジンルームカバー18を介して、装置14の上面で支持されるため、制振性を付与することができる。
【0024】
エンジンルームカバー18は、エンジン等の発熱する装置14を覆うように配置することで、エンジン等の発熱する装置14が冷えないように保温することができる。これにより、例えば、アイドリングストップからの再始動時などにおいて、エンジンを始動し易くすることができる。
【0025】
エンジンルームカバー18は、閉じたエンジンフード16と装置14との間に挟まれて圧縮される構成とすることで、装置14の上面の凹凸形状や複数の装置14の上面間の高低に、適切に追従させることができる。これにより、エンジンフード16と装置14との間にできる空間を最小限に抑えることができ、防音性を向上させることができる。また、装置14とエンジンルームカバー18との間にできる空間を最小限に抑えることができ、防音性を向上させることができる。
【0026】
エンジンルームカバー18は、エンジンフード16の下面全体を覆うように構成されている。このようにすることで、エンジンフード16と装置14の間の空間全域にエンジンルームカバー18が配置されるため、装置14から発せられるエンジン音等の音がエンジンルーム12内で共鳴することを抑えることができる。
【0027】
エンジンルームカバー18は、下面を、装置14の上面自体の凹凸形状や、隣り合う装置14,14の高さの差に応じた凹凸形状で予め形成した成形品であることで、装置14の上面形状や装置14の上面間の高低に、適切に追従させることができる。これにより、装置14とエンジンルームカバー18との間(エンジンフード16と装置14との間)にできる空間を最小限に抑えることができ、防音性を向上させることができる。ここで、少なくともエンジンルームカバー18の下面を予め装置14の上面の凹凸形状に合わせて形成することで、エンジンフード16を閉じた際に、エンジンルームカバー18の下面と装置14の上面との密着性を向上させることができる。従って、エンジンルームカバー18の下面と装置14の上面との間の空間を、エンジンルームカバー18で効果的に埋めることができる。これにより、エンジンルーム12内に生じたエンジン音等が共鳴することを抑えることができる。
【0028】
エンジンルームカバー18をエンジンフード16に取り付けて一体化することで、部品点数を減らすことができる。また、エンジンフード16の開放に併せて、エンジンルームカバー18を装置14から外すことができ、装置14のメンテナンスなどに際して、エンジンルームカバー18が邪魔にならない。
【0029】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
(1)実施例では、エンジンルームカバーをエンジンフードに取り付けたが、これに限らず、例えば、エンジンルームカバーをエンジンルーム側に取り付けても、別体のエンジンルームカバーを、エンジンルームに置くようにしてもよい。
(2)エンジンルームカバーは、装置の高低に合わせて下面を凹凸形状に予め形成する構成に限らず、エンジンルームに設置した際に装置の高低に合わせて下面が変形することで、下面が凹凸するようにしてもよい。
(3)実施例では、エンジン等の装置に直接接するようにエンジンルームカバーを設置したが、装置の外殻を構成するカバー(例えば、特許文献2のようなエンジンカバー)に接するようにエンジンルームカバーを設置してもよい。
(4)エンジンルームカバーは、シートまたはブロック形状に成形した型成形品であっても、スラブ品を所要形状に切断加工して得られるシートまたはブロックであってもよい。
【0030】
(5)例えば図5に示すように、エンジンルームカバー18は、装置14側の下面から上方へ向けて設けられたスリット18aで区切られた部位毎に、各部位があたる該装置14の上面の高低に合わせて変形可能に構成するようにしてもよい。この場合、エンジンルームカバー18における装置14の外形に合わせた位置に、下面から上方に切り込んだスリット18aを、装置14の上面の高低に合わせた深さで形成するとよい。すなわち、背の高い装置14に対応する部位を区切るスリット18aを深く形成し、背の低い装置14に対応する部位を区切るスリット18aを浅く形成すればよい。このように、スリット18aがあることで、エンジンルームカバー18が装置14の上面と干渉するように接したときに、装置14の上面への追従性を向上させることができ、エンジンルームカバー18の下面と装置14の上面との間の空間をより減らすことができる。
(6)図5の変更例では、エンジンルームカバーにおける装置の外形に合わせた位置に対応して、下面から上下方向に切り込んだスリットを設けたが、例えば、格子状等のスリットを全体に設けてもよい。この場合であっても、エンジンルームカバーが装置の上面と干渉するように接したときに、装置の上面への追従性を向上させることができ、エンジンルームカバーの下面と装置の上面との間の空間をより減らすことができる。なお、エンジンルームカバーの下面から上方に切り込むスリットの深さは、背の高い装置の上面と背の低い装置の上面との高低差を考慮して適宜設定すればよい。例えばスリットの深さを揃える場合は、最も背の高い装置と最も背の低い装置との高低差分の深さでスリットを形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
12 エンジンルーム,12a 開口部,14 装置,16 エンジンフード,
18 エンジンルームカバー,18a スリット
図1
図2
図3
図4
図5