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  • 特許-排水用ドレン及び排水用ドレンセット 図1
  • 特許-排水用ドレン及び排水用ドレンセット 図2
  • 特許-排水用ドレン及び排水用ドレンセット 図3
  • 特許-排水用ドレン及び排水用ドレンセット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】排水用ドレン及び排水用ドレンセット
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
E04D13/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019221245
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021092023
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 大徹
(72)【発明者】
【氏名】日高 徳雄
(72)【発明者】
【氏名】森山 知之
(72)【発明者】
【氏名】鈴見 宜隆
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-127532(JP,U)
【文献】実開昭54-028257(JP,U)
【文献】実開平02-137421(JP,U)
【文献】実開平03-033118(JP,U)
【文献】実開平05-069216(JP,U)
【文献】国際公開第2010/103370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床を貫通する排水用ドレンであって、
全体として円筒状に形成され、
中央部と、
前記中央部の上部に位置してストレーナの下部を挿入するストレーナ受け部と、
前記中央部の下部に位置して排水管を挿入する排水管受け部とを備え、
前記ストレーナ受け部の内側面には、前記ストレーナの下部の外側面に形成された溝と嵌合して当該ストレーナを止める凸部と、前記凸部に形成され、前記溝内に前記溝よりも小サイズに形成された小溝と嵌合して当該ストレーナを止める小凸部が形成されており、
前記小凸部は、前記ストレーナ受け部の内側面における前記凸部の周方向端部に設けられている
ことを特徴とする排水用ドレン。
【請求項2】
前記ストレーナ受け部の内径が、前記ストレーナの下部の外径と略同等であり、
前記中央部の内径が、前記ストレーナの下部の内径と略同等である
ことを特徴とする請求項1に記載の排水用ドレン。
【請求項3】
前記中央部の内径が、前記排水管の内径と略同等で、
前記排水管受け部の内径が、前記排水管の外径と略同等である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の排水用ドレン。
【請求項4】
前記ストレーナ受け部の上端の外縁には、周方向かつ角状に凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排水用ドレン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排水用ドレンと、前記ストレーナと、を備え、
前記ストレーナは、前記ストレーナの下部の外側面に形成された前記溝と、前記溝内に前記溝よりも小サイズに形成された前記小溝と、を有し、
前記小溝は、前記ストレーナの下部の外側面における前記溝の周方向端部に設けられている
ことを特徴とする排水用ドレンセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅の共用廊下やベランダ等の排水溝に貫通孔を形成するための排水用ドレン及び排水用ドレンセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅等の共用廊下やベランダに設けられた直線状の排水溝には、雨水を排水するための排水用ドレンが埋設されていた。排水用ドレンは、例えば、上蓋となるストレーナを挿入する矩形状かつ器状のドレン本体と、ドレン本体の下部に形成された孔と直結する円筒部とを備えていた。排水溝に排水用ドレンを埋設する場合、事前に排水用ドレンの円筒部の外側を覆うスリーブを下方から別途挿入した状態で板材に固定していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-39993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の排水用ドレン及びストレーナは、鋳鉄製であることから、互いを固定するためのビスやビスの取り付け部分が発錆してしまい、取り外しにくくなってしまうことがあった。また、排水用ドレンやストレーナ自体も発錆することから、これらの見た目が悪くなるばかりでなく、下方に錆汁が流れて排水管の表面が変色してしまうこともあった。さらに、ドレン本体が矩形状だと、コンクリートの打設時の位置ずれにより、排水溝に対して斜めに固定されてしまうこともあった。
【0005】
このような問題に対し、発明者等は、コンクリートの打設及び実際の使用に耐え得る強度及び剛性を有する素材及び形状の排水用ドレンであることを前提に、発錆等による取り外し時のトラブル回避、見栄えの低下予防、及び施工の困難性の改善等の課題を解決できる着想に辿り着いた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、発錆せず取り外しやすく、経年劣化しにくく、施工及び組み立て時の省力化を実現する排水用ドレン及び排水用ドレンセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は集合住宅の共用廊下やベランダ等の床を貫通する排水用ドレンであって、全体として円筒状に形成され、中央部と、上記中央部の上部に位置してストレーナの下部を挿入するストレーナ受け部と、上記中央部の下部に位置して排水管を挿入する排水管受け部とを備えることを特徴とする。
上記ストレーナ受け部の内側面には、上記ストレーナの下部の外側面に形成された溝と嵌合して上記ストレーナを止める凸部と、上記凸部に形成され、上記溝内に上記溝よりも小サイズに形成された小溝と嵌合して当該ストレーナを止める小凸部が形成されており、上記小凸部は、上記ストレーナ受け部の内側面における上記凸部の周方向端部に設けられていることが望ましい。
【0008】
上記ストレーナ受け部の内径が、上記ストレーナの下部の外径と略同等であり、上記中央部の内径が、上記ストレーナの下部の内径と略同等であることが望ましい。
【0009】
上記中央部の内径が、上記排水管の内径と略同等で、上記排水管受け部の内径が、上記排水管の外径と略同等であることが望ましい。
【0010】
上記ストレーナ受け部の上端の外縁には、周方向かつ角状に凹部が形成されていることが望ましい。
【0011】
本発明における排水用ドレンセットは、上記排水用ドレンと、上記ストレーナと、を備え上記ストレーナは、上記ストレーナの下部の外側面に形成された上記溝と、上記溝内に上記溝よりも小サイズに形成された上記小溝と、を有し、上記小溝は、上記ストレーナの下部の外側面における上記溝の周方向端部に設けられている
【発明の効果】
【0012】
本発明による排水用ドレンによれば、発錆せず取り外しやすく、経年劣化しにくく、施工及び組み立て時の省力化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における排水用ドレンセットの斜視図である。
図2】上記排水用ドレンセットの断面図である。
図3】別の排水用ドレンの断面図である。
図4】排水用ドレンの設置時の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図4を参照しつつ、本発明の一実施形態における排水用ドレンセットについて説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線をかくれ線(破線)や想像線(二点鎖線)で示し、断面部分をハッチングで示した部分もある。
説明において、上部、下部、上端、下端、内側、外側等の方向を示す用語は、基本的に、通常使用する向きで排水用ドレンセットを設置した状態における位置関係とする。
【0015】
図1に示すように、排水用ドレンセットは、集合住宅における共用の廊下や各居室のベランダ等に形成された排水溝Gの表面から裏面に向かって貫通するポリ塩化ビニル製の排水用ドレン1と、排水用ドレン1の上部に取り付けられて排水以外の汚物を堰き止める高耐候性硬質ポリ塩化ビニル製のストレーナ2とを備えている。共用の廊下や各居室のベランダはコンクリート製で、コンクリートの打設前に所定の位置に固定した排水用ドレン1が排水溝Gに埋設されている。
この構成によれば、素材を熱可塑性樹脂製にすることで、排水用ドレンセットの発錆を回避できるため、補修や交換の頻度が低下する効果を得られる。詳細には、排水用ドレン1とストレーナ2との接続部分の発錆、排水用ドレン1及びストレーナ2の表面の発錆、排水用ドレン1と接する排水溝Gの表面の発錆、及び排水溝Gの発錆に伴う排水管の錆汁汚れを回避できる。
なお、排水用ドレンセットは、共用の廊下や各居室のベランダに対して1つまたは2つ以上備えられてもよい。排水用ドレン1及びストレーナ2は、排水溝Gへの埋設及び通常使用での加重に耐えられる強度や剛性であればよく、熱可塑性樹脂製の種類に限定はない。共用の廊下や各居室のベランダは、コンクリート製以外でもよく、木製や熱可塑性樹脂製でもよい。排水溝Gの表面から裏面までの厚さは、排水用ドレン1の高さより厚ければよく、寸法は限定しない。
【0016】
図1に示すように、排水用ドレン1は、上端から下端に渡って全体として円筒状かつ一体的に形成されており、中央部11と、中央部11の上部に位置してストレーナ2の下部に相当するストレーナ下部21を挿入するストレーナ受け部12と、中央部11の下部に位置して図示しない排水管を挿入する排水管受け部13とを備えている。ストレーナ受け部12及び排水管受け部13は、中央部11より外方に張り出している。
この構成によれば、排水用ドレン1に対してストレーナ2及び排水管を容易に装着できるばかりでなく、排水溝Gに対する排水用ドレン1の位置ずれを回避できる。詳細には、直線状の排水溝Gの辺に対して円筒状の排水用ドレン1は斜めにならないため、排水溝Gに対する排水用ドレン1の埋設時の位置を容易に決定できる。さらに、外方に張り出したストレーナ受け部12及び排水管受け部13により、排水用ドレン1がコンクリートに密着しやすい。
なお、排水用ドレン1の高さまたは太さは、排水溝Gの厚み、排水量、または建築基準に鑑みて決定してもよく、寸法は限定しない。排水用ドレン1の高さは125~145mmでもよい。
【0017】
図2に示すように、中央部11の内径11wが、ストレーナ下部21の内径21wと略同等で、ストレーナ受け部12の内径12wが、ストレーナ下部21の外径22wと略同等である。
この構成によれば、ストレーナ受け部12が中央部11よりストレーナ下部21の厚み分外側に張り出しているため、排水溝G及び排水用ドレン1に対してストレーナ2を所望の高さに装着しやすく、中央部11の内側面とストレーナ下部21の内側面とが面一になるため、排水効率の向上を期待できる。
なお、中央部11の内径11w及びストレーナ下部21の内径21wは45~55mmでよく、好ましくは49~52mmである。ストレーナ受け部12の内径12w及びストレーナ下部21の外径22wは55~65mmでよく、好ましくは58~62mmである。ストレーナ受け部12の外径は60~70mmでよく、好ましくは65~68mmである。
【0018】
中央部11の内径11wが、排水管Hの内径と略同等で、排水管受け部13の内径13wが、排水管Hの外径と略同等である。
この構成によれば、排水管受け部13が中央部11より排水管Hの厚み分外側に張り出しているため、排水用ドレン1に対して排水管Hを所望の奥行まで装着しやすく、中央部11の内側面と排水管受け部13の内側面とが面一になるため、排水効率の向上を期待できる。
なお、排水用受け部13の内径13wは、ストレーナ受け部12の内径12wと同等でもよい。排水管受け部13の外径は65~80mmでよい。
【0019】
中央部11は、垂直の内側面及び外側面を有し、均一の厚みに形成されている。中央部11は、対称の位置にそれぞれ縦方向かつストレーナ受け部12及び排水管受け部13と連接する板状の付番しない補強部を有する。
なお、中央部11は、所定の高さかつ周方向に排水用ドレン1と排水溝Gとの隙間を浸透する水分を堰き止める図示しない防壁部を有してもよい。
【0020】
ストレーナ受け部12及び排水管受け部13は、中央部11の内側面と略直角状かつ中央部11の外側面と所定の角度で傾斜状にそれぞれ一体的に形成されている。
なお、ストレーナ受け部12及び排水管受け部13は、部位毎に異なる厚みで形成されてもよい。ストレーナ受け部12の高さは、15~20mmでもよい。排水管受け部13の高さは、30~40mmでもよい。
【0021】
ストレーナ受け部12の上端の外縁には、周方向かつ角状に凹部12aが形成されている。換言すれば、ストレーナ受け部12は、排水溝Gへの設置状態で、排水用ドレン1と排水溝Gとの境界部分に溝を形成するために上端の外縁かつ周方向に切り欠き状の凹部12aを有する。
この構成によれば、打設後に排水溝Gを含むコンクリートの表面に塗装した防水塗料が凹部12aに流れて溜まるため、排水溝Gと排水用ドレン1との隙間に水分が浸透するのを予防できる。
なお、凹部12aの高さは2~6mmでもよい。
【0022】
ストレーナ受け部12の内側面には、ストレーナ下部21に嵌合してストレーナ2を止める凸部12bと、凸部12bに形成され、凸部12bより小サイズであり、ストレーナ下部21に嵌合してストレーナ2を止める小凸部12bmが形成されている。換言すれば、ストレーナ受け部12が、ストレーナ下部21の外側面に形成された溝21a及び溝21a内に溝21aより小サイズにストレーナ下部21の外側面に形成された小溝21amに嵌合してストレーナ2を止める凸部12b及び小凸部12bmを有する。小凸部12bmと小溝21amとは、溝21aに凸部12bが通されてストレーナ2が回転可能となる範囲内において、互いに対向する位置に設けられ、例えば、小凸部12bmはストレーナ受け部12の内側面における凸部12bの周方向端部に設けられ、小溝21amは、ストレーナ下部21の外側面における溝21aの周方向端部に設けられている。
この構成によれば、ストレーナ受け部12の内側面に雌ネジを形成しなくても、ストレーナ受け部12の凸部12b及び小凸部12bmとストレーナ下部21の溝21a及び小溝21amとにより、ストレーナ受け部12に対してストレーナ2を内嵌合して止めることができる。
なお、ストレーナ受け部12の内側面に対して、凸部12b及び小凸部12bmは矩形状でも半球状でもよく、凸部12b及び小凸部12bmの突出量は限定しない。
【0023】
図3に示すように、排水管受け部13の外側面には、最下部から上方に向かって幅広なテーパ状を形成するための羽部13aが複数設けられており、さらに外側に突出して羽部13aの上端が連結している突出部13bが形成されている。
この構成によれば、排水用ドレン1の最下部が排水溝Gの裏面より奥に位置する設計の場合、全体としてテーパ状を構成する羽部13aの各々を覆うように突出部13bまで差し込んだサヤ管Sを抜けにくくできる。
【0024】
図1及び図2に示すように、ストレーナ2は、ドーム状で、水分を除く汚物を堰き止めるために天井部分及び側壁部分に付番しない貫通孔が複数形成されている。ストレーナ下部21の外側面に形成された嵌合用の溝21a及び小溝21amは、周方向かつ横長状に3つ形成されており、外れにくいようにストレーナ受け部12に対してストレーナ2を左回りに回転させて凸部12b及び小凸部12bmを嵌める。
【0025】
次に、排水用ドレン1による排水溝の貫通孔の生成方法について説明する。
図4に示すように、まず、コンクリートの打設前の板Bの上に載置した排水用ドレン1に対し、ストレーナ受け部12に挿入したカバーCを介して、ねじで排水用ドレン1を板Bに固定する。そして、コンクリートの打設後、板B及びカバーCを取り外すと、埋設した排水用ドレン1により排水溝の表面から裏面に渡って貫通孔が生成される。
【符号の説明】
【0026】
1 排水用ドレン
11 中央部
12 ストレーナ受け部
13 排水管受け部
2 ストレーナ
21 ストレーナ下部
G 排水溝
H 排水管
S サヤ管
B 板
C カバー
図1
図2
図3
図4