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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】作業用機器
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240710BHJP
   G02B 5/12 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
G02B5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020004579
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109303
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 航
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嵩章
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106601957(CN,A)
【文献】実開昭51-014570(JP,U)
【文献】特開2001-324410(JP,A)
【文献】特開2017-048772(JP,A)
【文献】特開2020-006481(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104605944(CN,A)
【文献】特開2014-076197(JP,A)
【文献】特開平08-064003(JP,A)
【文献】特開昭61-050666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
G02B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用機器であって、
背負い式装置と、
作業者が前記背負い式装置を背負うための肩ベルトと、
第1部分再帰性反射材と、
前記第1部分再帰性反射材と別体である第2部分再帰性反射材と、を備えており、
前記背負い式装置は、第1反射材用領域と、前記第1反射材用領域と離れている第2反射材用領域と、を備えており、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態において、前記作業者の背中に直交する方向を前後方向と規定し、
前記第1反射材用領域と前記第2反射材用領域は、前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で地面に対して水平に前記背負い式装置を切断した断面を前記前後方向に直交する下方向に見た場合に、互いに傾斜して配置されているとともに、前記前後方向に直交する直交平面に対して傾斜して配置されており、
前記第1部分再帰性反射材は、前記第1反射材用領域に配置されており、
前記第2部分再帰性反射材は、前記第2反射材用領域に配置されており、
前記第1部分再帰性反射材と前記第2部分再帰性反射材は、前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で前記地面に対して水平に前記背負い式装置を切断した前記断面を前記下方向に見た場合に、互いに傾斜して配置されているとともに、前記直交平面に対して傾斜して配置されており、
入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度(cd/lx/m)を基準反射輝度とした場合、観測角0.2度において、前記基準反射輝度の30%以上の反射輝度を維持することができる入射角の範囲を反射範囲とした場合、前記作業用機器の前記反射範囲は、前記第1部分再帰性反射材の前記反射範囲と前記第2部分再帰性反射材の前記反射範囲のそれぞれよりも大きく、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で前記地面に対して水平に前記背負い式装置を切断した前記断面を前記下方向に見た場合に、
前記第1部分再帰性反射材の前記反射範囲は、前記第1部分再帰性反射材の一端から延びる第1境界と、前記第1部分再帰性反射材の他端から延びる第2境界により画定され、
前記第2部分再帰性反射材の前記反射範囲は、前記第2部分再帰性反射材の一端から延びる第3境界と、前記第2部分再帰性反射材の他端から延びる第4境界により画定され、
前記第1部分再帰性反射材の前記一端は、前記第1部分再帰性反射材の前記他端よりも前記第2部分再帰性反射材の近くに配置されており、
前記第2部分再帰性反射材の前記一端は、前記第2部分再帰性反射材の前記他端よりも前記第1部分再帰性反射材の近くに配置されており、
前記作業用機器の前記反射範囲は、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で前記地面に対して水平に前記背負い式装置を切断した前記断面を前記下方向に見た場合に、前記第1境界が前記第3境界に交わっており、前記第4境界に交わっておらず、前記第3境界が前記第1境界に交わっており、前記第2境界に交わっていないときには、前記第2境界と前記第4境界により画定され、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で前記地面に対して水平に前記背負い式装置を切断した前記断面を前記下方向に見た場合に、前記第1境界が前記第3境界と前記第4境界に交わっており、前記第3境界が前記第1境界と前記第2境界に交わっているときには、前記第1境界と前記第3境界により画定される、作業用機器。
【請求項2】
前記第1部分再帰性反射材と前記第2部分再帰性反射材は、前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態において、前記第1部分再帰性反射材の前記反射範囲と前記第2部分再帰性反射材の前記反射範囲が前記作業者の背中に垂直な方向における前記作業者の後方を含むように、前記背負い式装置に設けられている、請求項1に記載の作業用機器。
【請求項3】
作業用機器であって、
背負い式装置と、
作業者が前記背負い式装置を背負うための肩ベルトと、
軸を中心にして回動可能に前記背負い式装置に設けられている再帰性反射材と、を備えており、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態において、前記作業者の背中に直交する方向を前後方向と規定するとき、前記軸は、前記前後方向に直交する上下方向に延びており、
入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度(cd/lx/m)を基準反射輝度とした場合、観測角0.2度において、前記基準反射輝度の30%以上の反射輝度を維持することができる入射角の範囲を反射範囲と規定し、
前記作業者が前記背負い式装置を背負った状態で前記上下方向に直交する面に沿って前記背負い式装置を切断した断面を前記上下方向に見た場合、前記再帰性反射材の前記反射範囲は、前記再帰性反射材の一端から延びる第1境界と、前記再帰性反射材の他端から延びる第2境界により画定され、
前記再帰性反射材は、前記第1境界と前記第2境界との間の角度が一定に維持された状態で回動し、前記再帰性反射材の前記反射範囲と回動範囲により、全体の前記反射範囲が拡大される、作業用機器。
【請求項4】
前記背負い式装置は、モータを有する電動作業機に接続され、前記電動作業機の前記モータに電力を供給する背負い式の電源装置である、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業用機器。
【請求項5】
前記背負い式装置は、原動機を有する背負い式の動力作業機である、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、作業用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業用機器が開示されている。作業用機器は、背負い式装置と、作業者が背負い式装置を背負うための肩ベルトと、を備えている。
【0003】
なお、作業用機器には、各種の作業で使用される動力作業機とその補機が広く含まれる。例えば、作業用機器には、モータおよび/またはエンジンといった原動機を有する動力作業機だけでなく、その動力作業機に電力、燃料、資材を供給するような補機(例えば、背負い式の電源装置)も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-048772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
夜間等の周囲が暗い環境下で、作業者が作業用機器を使用する状況を想定して、再帰性反射材が背負い式装置に設けられることがある。再帰性反射材の反射性能によって、第三者は、再帰性反射材を認識することができ、作業者を認識することができる。しかしながら、第三者が再帰性反射材の反射範囲を外れた範囲にいる場合、作業者を認識することができない。本明細書では、第三者による作業者の認知度を向上させることができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、作業用機器を開示する。作業用機器は、背負い式装置と、作業者が背負い式装置を背負うための肩ベルトと、再帰性反射材と、を備えている。入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度(cd/lx/m)を基準反射輝度とした場合、観測角0.2度において、基準反射輝度の30%以上の反射輝度を維持することができる入射角の範囲を反射範囲とした場合、作業用機器の反射範囲は、再帰性反射材の反射範囲よりも大きい。
【0007】
上記の構成では、作業用機器の反射範囲が再帰性反射材の反射範囲よりも大きいので、第三者による作業者の認知度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の作業用機器10を後方向から見た側面図である。
図2図1のII-II線で作業用機器10を切断した場合の背負い式装置12と再帰性反射材20の断面図である。
図3】第2実施例の背負い式装置12と再帰性反射材20の断面図である。
図4】第3実施例の背負い式装置12と再帰性反射材20の断面図である。
図5】第4実施例の作業用機器110の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つまたはそれ以上の実施形態において、再帰性反射材は、複数の部分再帰性反射材を備えていてもよい。複数の部分再帰性反射材は、作業者が背負い式装置を背負った状態で地面に対して水平に背負い式装置を切断した断面を見た場合、互いに傾斜して配置されていてもよい。
【0010】
上記の構成では、複数の部分再帰性反射材を互いに傾斜して配置する簡素な構成により、作業用機器の反射範囲を再帰性反射材の反射範囲よりも大きくすることができる。これにより、第三者による作業者の認知度を向上させることができる。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、再帰性反射材は、作業者が背負い式装置を背負った状態において、再帰性反射材の反射範囲が作業者の背中に垂直な方向における作業者の後方を含むように、背負い式装置に設けられていてもよい。
【0012】
上記の構成では、作業者が背負い式装置を背負った状態において、第三者が作業者の後方にいる場合でも、第三者は、再帰性反射材を認識することにより、作業者を認識することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、背負い式装置は、モータを有する電動作業機に接続され、電動作業機のモータに電力を供給する背負い式の電源装置であってもよい。
【0014】
上記の構成では、背負式の電源装置が本来有する機能に加えて、再帰性反射材により、第三者に作業者を認識させることができる機能を、背負い式装置に付加することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、背負い式装置は、原動機を有する背負い式の動力作業機であってもよい。
【0016】
上記の構成では、動力作業機が本来有する機能に加えて、再帰性反射材により、第三者に作業者を認識させることができる機能を、背負い式装置に付加することができる。
【0017】
(第1実施例)
図1から図2を参照し、第1実施例の作業用機器10を説明する。作業用機器10は、作業者が背負うことが可能な背負い式の作業用機器である。図1に示すように、作業用機器10は、背負い式装置12と、肩ベルト14と、腰ベルト16と、接続コード18と、再帰性反射材20と、を備えている。本実施例では、背負い式装置12は、背負い式の電源装置である。背負い式装置12は、例えば、充放電可能な二次バッテリである。背負い式装置12には、背負い式装置12に接続される外部電源(図示省略)を介して、充電電力が外部から供給される。背負い式装置12は、接続コード18を介して、モータを有する電動作業機(図示省略)に接続され、電動作業機のモータに放電電力を供給する。作業者は、背負い式装置12により、電動作業機を長時間に亘って使用することができる。
【0018】
肩ベルト14と腰ベルト16は、背負い式装置12に取り付けられている。肩ベルト14は、作業者の肩に装着可能である。腰ベルト16は、作業者の腰に装着可能である。これらにより、背負い式装置12は、作業者に背負われる。以下では、作業者が背負い式装置12を背負った状態において、地面に対して垂直な方向を上下方向と呼び、作業者の背中に直交する方向を前後方向と呼び、上下方向および前後方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。
【0019】
背負い式装置12の後面には、反射材用領域24、26が設けられている。反射材用領域24、26は、上下方向に延びている。反射材用領域24、26のそれぞれの上下方向の位置は、略同じである。反射材用領域24は、背負い式装置12の後面の左端部に設けられている。反射材用領域26は、背負い式装置12の後面の右端部に設けられている。図2に示すように、作業者が背負い式装置12を背負った状態で地面に対して水平に背負い式装置12を切断した断面Sを下方向(即ち、地面に対して垂直な方向)に見た場合、反射材用領域24、26は、互いに傾斜して配置されており、本実施例では、40度傾斜して配置されている。反射材用領域24は、前後方向と上下方向を含む平面Pに対して、反射材用領域26と面対称の関係にある。反射材用領域24、26のそれぞれは、平面Pに対して70度傾斜して(平面Pに垂直であり上下方向を含む平面に対しては20度傾斜して)配置されている。ここで、作業用機器10は、作業者が背負い式装置12を背負った場合に作業者の背中が背負い式装置12の前面12aと略平行となるように設計されており、平面Pは、作業者の背中と背負い式装置12の前面12aの両方に対して垂直となる。平面Pは、背負い式装置12の中央を通過する。反射材用領域24、26は、平面Pを向く方向と反対の方向に互いに傾斜して配置されている。なお、図2では、平面Pが一点鎖線で図示されており、背負い式装置12の内部構造が図示省略されている。
【0020】
再帰性反射材20は、例えば、プリズム型の再帰性反射材やビーズ型の再帰性反射材である。再帰性反射材20がプリズム型の再帰性反射材である場合、長期的に再帰性反射材20を使用してもプリズム構造が壊れ難いことから、再帰性反射材20の性能の経時劣化を抑制することができる。
【0021】
再帰性反射材20は、部分再帰性反射材30、32を備えている。図1に示すように、部分再帰性反射材30、32は、上下方向に延びている。部分再帰性反射材30、32のそれぞれの上下方向の位置は、略同じである。部分再帰性反射材30、32は、例えば、接着剤や接着テープにより、背負い式装置12に不動に設けられている。また、部分再帰性反射材30は、反射材用領域24に設けられており、部分再帰性反射材32は、反射材用領域26に設けられている。このため、図2に示すように、断面Sを下方向に見た場合、部分再帰性反射材30、32は、互いに傾斜して配置されており、本実施例では、40度傾斜して配置されている。反射材用領域24、26のそれぞれは、平面Pに対して70度傾斜して(平面Pに垂直であり上下方向を含む平面に対しては20度傾斜して)配置されている。部分再帰性反射材30、32は、平面Pを向く方向と反対の方向に傾斜して配置されている。
【0022】
部分再帰性反射材30、32の性能(例えば、反射性能)は、同一である。部分再帰性反射材30、32の反射輝度(cd/lx/m)は、JIS Z9117に基づいて測定される。部分再帰性反射材30、32のそれぞれは、反射範囲aを有する。なお、図2では、反射範囲aが二点鎖線で図示されている。ここで、反射範囲とは、入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度を基準輝度とした場合、観測角0.2度において、基準反射輝度の30%以上の反射輝度を維持することができる入射角の範囲のことを表す。反射輝度が基準反射輝度の30%以上である場合、作業者は部分再帰性反射材30、32をはっきりと認識することができる。本実施例では、部分再帰性反射材30、32のそれぞれの反射範囲aは、120度である。部分再帰性反射材30、32のそれぞれに入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度は、例えば、333cd/lx/mである。また、観測角0.2度において、基準反射輝度の30%となるときの部分再帰性反射材30、32の反射輝度は、例えば、100cd/lx/mである。
【0023】
部分再帰性反射材30、32のそれぞれの反射範囲aは、平面Pの背負い式装置12よりも後方の部分を含んでいる。これにより、作業者が背負い式装置12を背負った場合、部分再帰性反射材30、32のそれぞれの反射範囲aは、作業者の背中に垂直な方向における作業者の後方を含むこととなる。部分再帰性反射材30、32のそれぞれは、背負い式装置12を背負った作業者の背中に垂直な方向から部分再帰性反射材30、32が第三者に視認可能となるように、反射材用領域24、26に設けられている。第三者は、背負い式装置12を背負った作業者の背中に垂直な方向に関して、作業者の後方にいる場合、その第三者は、部分再帰性反射材30、32の反射範囲aの両方に含まれる。第三者は、部分再帰性反射材30、32の両方を認識することができる。図2を参照して上述したように、部分再帰性反射材30、32のそれぞれの反射範囲aが120度であり、部分再帰性反射材30、32が40度傾斜して配置されている。これらのため、作業用機器10の反射範囲A1は、160度であり、部分再帰性反射材30、32の反射範囲aよりも大きい。作業用機器10の反射範囲A1の左側の境界は、部分再帰性反射材30の反射範囲aの左側の境界であり、作業用機器10の反射範囲A1の右側の境界は、部分再帰性反射材32の反射範囲aの右側の境界である。第三者は、部分再帰性反射材30、32の一方の反射範囲aから外れた範囲にいる場合でも、部分再帰性反射材30、32の他方の反射範囲aにいる場合には、作業者を認識することができる。
【0024】
本実施例では、作業用機器10は、背負い式装置12と、作業者が背負い式装置12を背負うための肩ベルト14と、再帰性反射材20(本実施例では、部分再帰性反射材30、32)と、を備えている。図2に示すように、入射角5度で光を入射させたときの観測角0.2度における白色の反射輝度(cd/lx/m)を基準反射輝度とした場合、観測角0.2度において、基準反射輝度の30%以上の反射輝度を維持することができる入射角の範囲を反射範囲とした場合、作業用機器10の反射範囲A1は、再帰性反射材20、即ち、部分再帰性反射材30、32の反射範囲aよりも大きい。この構成では、作業用機器10の反射範囲A1が部分再帰性反射材30、32の反射範囲aよりも大きいので、第三者による作業者の認知度を向上させることができる。
【0025】
また、再帰性反射材20は、2個の部分再帰性反射材30、32を備えている。図2に示すように、2個の部分再帰性反射材30、32は、作業者が背負い式装置12を背負った状態で地面に対して水平に背負い式装置12を切断した断面Sを見た場合、互いに傾斜して配置されていている。この構成では、2個の部分再帰性反射材30、32を互いに傾斜して配置する簡素な構成により、作業用機器10の反射範囲A1を部分再帰性反射材30、32の反射範囲aよりも大きくすることができる。これにより、第三者による作業者の認知度を向上させることができる。
【0026】
また、再帰性反射材20、即ち、部分再帰性反射材30、32は、作業者が背負い式装置12を背負った状態において、部分再帰性反射材30、32の反射範囲aが作業者の背中に垂直な方向における作業者の後方を含むように、背負い式装置12に設けられている。この構成では、作業者が背負い式装置12を背負った状態において、第三者が作業者の後方にいる場合でも、第三者は、部分再帰性反射材30、32を認識することにより、作業者を認識することができる。
【0027】
また、背負い式装置12は、モータを有する電動作業機に接続され、電動作業機のモータに電力を供給する背負い式の電源装置である。この構成では、背負式の電源装置が本来有する機能に加えて、再帰性反射材20により、第三者に作業者を認識させることができる機能を、背負い式装置12に付加することができる。
【0028】
(第2実施例)
図3を参照し、第2実施例を説明する。第2実施例では、第1実施例と異なる点のみ説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第2実施例では、反射材用領域24、26と部分再帰性反射材30、32の配置が、第1実施例と異なる。図3に示すように、背負い式装置12の後面には、2個の反射材用領域24、26が設けられている。断面Sを下方向に見た場合、反射材用領域24、26は、40度傾斜して配置されている。反射材用領域24、26のそれぞれは、平面Pに対して110度傾斜して(平面Pに垂直であり上下方向を含む平面に対しては20度傾斜して)配置されている。反射材用領域24、26は、平面Pを向く方向に互いに傾斜して配置されている。
【0029】
部分再帰性反射材30は、反射材用領域24に設けられており、部分再帰性反射材32は、反射材用領域26に設けられている。断面Sを下方向に見た場合、部分再帰性反射材30、32は、40度傾斜して配置されている。部分再帰性反射材30、32のそれぞれは、平面Pに対して110度傾斜して(平面Pに垂直であり上下方向を含む平面に対しては20度傾斜して)配置されている。部分再帰性反射材30、32は、平面Pを向く方向に互いに傾斜して配置されている。
【0030】
上述したように、部分再帰性反射材30、32のそれぞれの反射範囲aが120度であり、部分再帰性反射材30、32が40度傾斜して配置されている。これらのため、作業用機器10の反射範囲A2は、160度であり、部分再帰性反射材30、32の反射範囲aよりも大きい。作業用機器10の反射範囲A2の左側の境界は、部分再帰性反射材32の反射範囲aの左側の境界であり、作業用機器10の反射範囲A2の右側の境界は、部分再帰性反射材30の右側の境界である。
【0031】
(第3実施例)
図4を参照し、第3実施例を説明する。第3実施例では、第1実施例と異なる点のみ説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、第3実施例では、再帰性反射材20は、部分再帰性反射材30のみを備えている。部分再帰性反射材30は、背負い式装置12に可動に設けられている。部分再帰性反射材30を背負い式装置12に可動に設ける手段は、特に限定されるものではない。部分再帰性反射材30は、平面P上を上下方向に延びる軸Xを中心にして、回動する。部分再帰性反射材30は、背負い式装置12の前面12aに対して平行な位置を基準として、軸Xの右回りの方向に20度の位置と、軸Xの左回りの方向に20度の位置との間を回動することができる。即ち、部分再帰性反射材30の回動範囲は、40度である。なお、図4では、部分再帰性反射材30の回動範囲を理解し易くするために、背負い式装置12の前面12aに対して平行な位置を基準として、軸Xの右回りの方向に20度の位置にある部分再帰性反射材30が実線で、軸Xの左回りの方向に20度の位置にある部分再帰性反射材30が破線で図示されている。
【0032】
部分再帰性反射材30の反射範囲aは、120度である。部分再帰性反射材30の回動範囲が40度であることから、作業用機器10の反射範囲A3は、160度であり、部分再帰性反射材30の反射範囲aよりも大きい。ここで、反射範囲A3は、部分再帰性反射材30が回動範囲を回動する場合の(即ち、部分再帰性反射材30が可動範囲を動く場合の)全体の反射範囲のことを表し、瞬間的な反射範囲のことではない。回動により部分再帰性反射材30の向きが変化しても、第三者が背負い式装置12を背負った作業者の後方にいる場合、その第三者は、作業用機器10の反射範囲A3にいることとなり、作業者を認識することができる。
【0033】
(第4実施例)
図5を参照し、第4実施例を説明する。第4実施例では、第1実施例と異なる点のみ説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、第4実施例では、作業用機器110が備える背負い式装置112は、背負い式のブロワである。ブロワは、動力作業機の一例である。背負い式装置112は、主に屋外の園芸作業で使用され、例えば、落ち葉を吹き集めるために使用される。
【0034】
背負い式装置112は、作業者に背負われる。背負い式装置112は、エンジンユニット116と、燃料タンク118と、ノズル120と、を備えている。エンジンユニット116は、エンジンを有する。エンジンユニット116には、作業者が背負い式装置112を背負うための肩ベルト114が取り付けられている。燃料タンク118は、エンジンユニット116に供給する燃料を貯留する。ノズル120は、エンジンユニット116からの送風を吐出する。ブロワである背負い式装置112の基本的な構成については公知であることから、詳細な説明を省略する。
【0035】
作業用機器110が備える再帰性反射材20は、部分再帰性反射材30、32を備えている。部分再帰性反射材30、32は、エンジンユニット116の後面に設けられている。作業者が背負い式装置112を背負った状態で地面に対して背負い式装置112を切断した断面を下方向に見た場合、第4実施例の背負い式装置112の断面は、図2に示す第1実施例の背負い式装置12の断面Sと同様である。また、第4実施例における背負い式装置112に対する部分再帰性反射材30、32の配置は、図2に示す第1実施例における背負い式装置12に対する部分再帰性反射材30、32の配置と同様である。
【0036】
本実施例では、背負い式装置112は、原動機を有する背負い式の動力作業機である。この構成では、動力作業機が本来有する機能に加え、再帰性反射材20により、第三者に作業者を認識させることができる機能を、背負い式装置112に付加することができる。
【0037】
本実施例の背負い式装置112は、原動機としてエンジンを有するブロワであるが、これに限定されず、原動機としてモータを有するブロワに部分再帰性反射材30、32を同様に設けることができる。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0039】
一実施形態において、部分再帰性反射材30の位置は、部分再帰性反射材32の位置に対して上下方向にずれていてもよい。
【0040】
一実施形態に係る部分再帰性反射材30、32は、上下方向に並んで配置されていてもよい。
【0041】
一実施形態において、120度よりも大きい、または120度よりも小さい反射範囲aを有する部分再帰性反射材30、32が選択されてもよく、例えば、30度の反射範囲aを有する部分再帰性反射材30、32が選択されてもよい。
【0042】
一実施形態に係る再帰性反射材20は、3個以上の部分再帰性反射材、即ち、2個の部分再帰性反射材30、32と、追加の部分再帰性反射材と、を備えていてもよい。第1実施例から第3実施例の場合、追加の再帰性反射材は、背負い式装置12と肩ベルト14と腰ベルト16の少なくとも1個の構成要素に設けられていてもよい。また、第4実施例の場合、追加の再帰性反射材は、肩ベルト114とエンジンユニット116と燃料タンク118とノズル120の少なくとも1個の構成要素に設けられていてもよい。
【0043】
一実施形態に係る背負い式装置112は、例えば、刈払い機、ヘッジトリマ、チェーンソー、掃除機、ミストブロワであってもよい。
【0044】
一実施形態に係る作業用機器10、110において、背負い式装置12に設けられる再帰性反射材20の全体の面積は、高視認性安全服(日本工業規格:JIS T8127参照)の基準を満たしていてもよい。再帰性反射材20の全体の面積は、例えば、0.1m以上であり、好ましくは0.13m以上であり、より好ましくは0.2m以上である。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
10、110:作業用機器
12、112:背負い式装置
12a :前面
14、114:肩ベルト
16 :腰ベルト
18 :接続コード
20 :再帰性反射材
24、26:反射材用領域
30、32:部分再帰性反射材
116 :エンジンユニット
118 :燃料タンク
120 :ノズル
A1、A2、A3、a:反射範囲
図1
図2
図3
図4
図5