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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240710BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240710BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240710BHJP
   G03B 15/00 20210101ALN20240710BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 A
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G03B30/00
H04N23/57
G03B15/00 V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020014720
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121830
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 和輝
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-158506(JP,A)
【文献】特開2014-026253(JP,A)
【文献】特開2016-206682(JP,A)
【文献】特開2009-271409(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104570168(CN,A)
【文献】特開2019-060955(JP,A)
【文献】特開2019-012111(JP,A)
【文献】特開2019-113735(JP,A)
【文献】特開2018-010269(JP,A)
【文献】特開2009-244531(JP,A)
【文献】特開平07-072309(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 30/00
H04N 23/57
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する樹脂製の第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズは、レンズ面と、該レンズ面から径方向外側に延びる座面とを有するとともに、光軸方向で互いに対向するそれらの前記座面同士が当て付いて面接触し、
前記第1のレンズの像側の前記レンズ面には反射防止膜が形成され、
前記第1のレンズの前記座面には遮光用の墨が形成され、
前記第1のレンズの像側の前記レンズ面に隣接した前記第1のレンズの前記座面には、前記反射防止膜上に前記墨が重なり合う重合部が形成され、
前記第1のレンズの前記座面および前記第2のレンズの前記座面のうちの少なくとも一方には、前記第2のレンズの前記座面と接触する前記墨を前記重合部前記第2のレンズの前記座面と接触させないようにする空間を前記座面間に形成する逃げ部が形成されている、
ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記逃げ部が前記座面に形成される凹部であることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第2のレンズの前記座面にシボ加工が施されることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズユニットを備えるとともに、前記レンズユニットにより形成される像を受光する位置に撮像素子が配置されることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7には、従来のレンズユニット100の一例が示されている。図示のように、このレンズユニット100は、円筒状の鏡筒(バレル)120と、鏡筒120の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、最も物体側に位置される第1のレンズ130、第2~第4のレンズ140,150,160、および、最も像側に位置される第5のレンズ170とを備える。鏡筒120に固定されて支持されるこれらのレンズ130,140,150,160,170は、それぞれの光軸を一致させた状態で配置されており、1つの光軸Oに沿って並べられることにより、像側のパッケージセンサ(撮像素子;図示せず)による撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。
【0004】
また、このようにして複数のレンズ130,140,150,160,170が像側から物体側へ向けて順に積み重ねられるように鏡筒120の内側収容空間S内に組み込まれる形態では、隣り合うレンズが座面200同士を当て付けるように面接触する場合が多い。そして、そのような場合、特に、互いに隣り合う第1および第2のレンズ130,140に関し、第1のレンズ130がガラス製で、第2のレンズ140が樹脂製であれば、一般に、図示のごとく、第2のレンズ140のフランジ部の座面200bと当接する第1のレンズ130の像側に、遮光およびゴースト防止の目的で墨210が塗布されるとともに、第2のレンズ140のフランジ部の物体側の座面200bに、内面反射によるゴースト発生を抑制するためにシボ加工が施される(図7では、シボ加工部位が参照符号220により示される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図7に示されるような構成を成すレンズユニット100が高温高湿環境下に晒されると、ガラス製の第1のレンズ130の座面200aと樹脂製の第2のレンズ140のフランジ部の座面200bとが面接触する部位で、第1のレンズ130に塗布された座面200a上の墨210が部分的に剥離して第2のレンズ140のフランジ部の座面200b上に転写する場合がある。
【0007】
また、このような墨210の転写現象は、特に、第1のレンズ130の像側面130aに形成された反射防止膜230上に墨210が重ねて塗布されている場合に生じ易い。反射防止膜230上に墨210が重なり合う重合状態300は、反射防止膜230の形成後に行なわれる心取り加工に伴う削りかす除去のための洗浄工程に対する墨210の低い耐性に起因して反射防止膜230の形成および洗浄工程の後に墨210を塗布せざるを得ない状況で、第1のレンズ130の像側面130a上にレンズ有効径範囲内でのみ形成されるべき反射防止膜230がその形成過程で不可避的にレンズ有効径を越えて墨210の塗布領域である座面200aの領域(レンズのコバ部)にまで侵入してくる場合に起こり得るが、そのような重合状態300では、レンズ130の表面上に直接に墨210が塗布される場合と比べて墨210の密着性が弱まり、墨210と第2のレンズ140の座面200bとの間の接触にも起因して、高温高湿環境下で墨210が剥離し易く、第2のレンズ140の座面200b側への墨210の転写が誘発される。そして、このような墨210の転写は、第2のレンズ140の座面200bのシボ加工部位220によって更に助長されるようになる。
【0008】
また、このような墨210の部分的な剥離・転写は、剥離部位が外部から視認可能であるため、結果的に外観を悪化させる。また、剥離領域、特に、剥離・転写されていない墨部位と剥離・転写されている墨部位との境界領域は、ゴースト発生の原因にもなる。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズに形成された反射防止膜上の墨が剥離して隣接するレンズに転写することを防止できるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する樹脂製の第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズは、光軸方向で互いに対向するそれらの座面同士が当て付いて面接触し、
前記第1のレンズの前記座面および前記第2のレンズの前記座面のうちの少なくとも一方は、前記第1のレンズの前記座面の一部と前記第2のレンズの前記座面とが接触しないようにする空間を前記座面間に形成する逃げ部を有する、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の上記構成によれば、第1のレンズの座面の一部を第2のレンズの座面と接触させないようにする空間が、座面の逃げ部によって座面間に形成されるため、たとえ反射防止膜上に遮光用の墨が重なり合う重合部が第1のレンズの座面の一部に存在する場合であっても、墨が剥離して第2のレンズの座面側へ転写されることを逃げ部により防止できる。したがって、反射防止膜上に遮光用の墨が重なり合う重合部を第1のレンズの座面が含む場合、逃げ部は、第2のレンズの座面と重合部とが接触しないようにする空間を座面間に形成することが好ましい。これにより、ガラス製の第1のレンズの座面上に存在して反射防止膜上に遮光用の墨が重なり合う重合部、すなわち、墨の密着性が弱く墨が剥離・転写し易い重合部を樹脂製の第2のレンズの座面と接触させないようにする空間が、座面の逃げ部によって座面間に形成されることとなるため、特に高温高湿環境下で反射防止膜上の墨が剥離して第2のレンズの座面側へ転写されることを防止できる。その結果、墨の剥離に伴う外観不良およびゴースト発生を防止できる。
【0012】
なお、上記構成において、逃げ部は、第1のレンズの座面のみに設けられてもよく、または、第2のレンズの座面のみに設けられてもよく、あるいは、第1のレンズの座面および第2のレンズの座面の両方に設けられてもよい。また、逃げ部は、座面に設けられる溝、屈曲部等により形成される凹部であってもよい。この場合、凹部の深さ寸法(座面間の空間の光軸方向に沿う寸法)は、凹部(逃げ部)がゴースト発生の原因とならないように、0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。凹部の深さ寸法が0.01mm未満であると、例えば第1のレンズを鏡筒内に圧入して組み付けて第2のレンズに押し付けたときに変形により第2のレンズの座面と重合部とが接触する可能性があり、一方、凹部の深さ寸法が1mmを超えると、ゴースト等を含めて光学的性能に悪影響を及ぼす場合がある。また、第2のレンズの座面が第2のレンズの径方向に突出するフランジ部により形成される場合、凹部の深さ寸法は、成形時のヒケを考慮して、フランジ部の肉厚(光軸方向に沿う寸法)の1/3以下であることが好ましい。
【0013】
また、上記構成の逃げ部は、第2のレンズの座面にシボ加工が施されている場合に特に有益である。これは、前述したように、第2のレンズの座面にシボ加工部位が存在すると、第1のレンズ側から第2のレンズ側への墨の転写が助長されるからである。
【0014】
また、本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、前述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス製の第1のレンズの座面上に存在して反射防止膜上に遮光用の墨が重なり合う重合部を樹脂製の第2のレンズの座面と接触させないようにする空間が、座面の逃げ部によって座面間に形成されるため、反射防止膜上の墨が剥離して第2のレンズに転写することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。
図2図1のレンズユニットの第1および第2のレンズの拡大図である。
図3図2のA部の拡大断面図である。
図4】変形例に係る第1および第2のレンズの拡大図である。
図5図4のB部の拡大断面図である。
図6図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
図7】従来のレンズユニットの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した図7および後述する図1図6においてレンズについてはハッチングを省略している。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製(金属製であっても構わない)の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17および第6のレンズ18から成る6つのレンズと、2つの絞り部材22a,22bとを備えている。絞り部材22a,22bは、本実施の形態では、第2のレンズ14と第3のレンズ15との間、および、第4のレンズ16と第5のレンズ17との間に介挿されており、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0019】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,15,16,17,18は樹脂レンズであるが、これに限定されない。また、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面(物体側の表面および/または像側の表面)には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0020】
また、本実施の形態において、像側に位置される2つの第5および第6のレンズ17,18は接合レンズ(貼り合わせレンズ)30を構成している。このような接合レンズ30を構成する第5および第6のレンズ17,18は、図示のように、物体側に位置される第5のレンズ17の像側に面する表面の環状凸部17aが像側に位置される第6のレンズ18の物体側に面する表面の対応する環状凹部18aと嵌合されることにより組み付けられて、接着剤等によって一体的に固定される。
【0021】
また、本実施の形態において、最も物体側に位置される第1のレンズ13と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ13の外周側面13cに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13dが設けられ、この縮径部13dにOリング26が装着されて、第1のレンズ13の外周側面13cと鏡筒12の内周面との間でOリング26が径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。
【0022】
また、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23で鏡筒12の物体側端部に固定する。なお、第1のレンズ13の固定は、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,16,17,18を収容した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定キャップによって行なわれてもよい。
【0023】
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18と絞り部材22a,22bとが光軸方向で保持固定されている。
【0024】
図2には、最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズ13と、この第1のレンズ13とその像側で隣接する樹脂製の第2のレンズ14とが、鏡筒12に組み込まれた状態における位置関係を成して拡大して示されている。図示のように、第1のレンズ13および第2のレンズ14は、光軸Oの方向で互いに対向するそれらの座面13a,14a(図1も参照)同士が当て付いて面接触している。
【0025】
光軸Oの方向で第2のレンズ14と対向する第1のレンズ13の対向面(像側の表面)は、物体側へ向けて凹状に窪む凹面13bと、凹面13bの径方向外側端縁から径方向外側へと延びる環状面13eとを有しており、環状面13eは、その径方向内側が前記座面13aを形成している。また、凹面13b上にはその全体にわたって反射防止膜50が形成(例えば塗布)されている。この場合、反射防止膜50は、図3に拡大して示されるように、凹面13bの径方向外側端縁から座面13aの一部(座面13aの径方向内側の一部分)上にわたって径方向外側に延出している。また、環状面13e上には、その全体にわたって、反射防止膜50の形成後に塗布された遮光用の墨52が延在しており、したがって、環状面13eの径方向内側を形成する座面13aは、その径方向内側端部に、反射防止膜50上に墨52が重なり合う重合部70を含んでいる。一方、第2のレンズ14の座面14aには、その全体にわたってシボ加工が施されている(図3には、シボ加工部位が参照符号67で示されている)。
【0026】
また、図3に拡大して明確に示されるように、本実施の形態において、第1のレンズ13の座面13aは、第2のレンズ14の座面14aと重合部70とが接触しないようにする(第1のレンズ13の座面13aの一部と第2のレンズ14の座面14aとが接触しないようにする)空間60を座面13a,14a間に形成する逃げ部13fを有する。特に本実施の形態において、逃げ部13fは、座面13aを光軸方向で物体側へ向けて凹状に屈曲又は窪ませることによって形成される凹部を成しており、重合部70と重合部70を含まない(反射防止膜50と重なり合わない)所定長の墨52の部位とを第2のレンズ14の座面14aに接触させないようにする空間60を座面13a,14a間に形成している。
【0027】
この場合、凹部の深さ寸法L(座面13a,14a間の空間60の光軸方向に沿う寸法)は、凹部(逃げ部13f)がゴースト発生の原因とならないように、0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。凹部の深さ寸法が0.01mm未満であると、例えば第1のレンズ13を鏡筒12内に圧入して組み付けて第2のレンズ14に押し付けたときに変形により第2のレンズ14の座面14aと重合部70とが接触する可能性があり、一方、凹部の深さ寸法が1mmを超えると、ゴースト等を含めて光学的性能に悪影響を及ぼす場合がある。また、本実施の形態のように第2のレンズ14の座面14aが第2のレンズ14の径方向に突出するフランジ部14bにより形成される場合、凹部の深さ寸法Lは、成形時のヒケを考慮して、フランジ部14bの肉厚(光軸方向に沿う寸法)Dの1/3以下であることが好ましい。また、凹部(逃げ部13f;空間60)の径方向に沿う長さ寸法Yは、重合部70の径方向に沿う長さ寸法にも依るが、0.5mmであることが好ましく、例えば、レンズ13,14の座面13a,14a同士が接触する部位(逃げ部13fが設けられていない座面の部位)の径方向寸法X(例えば1.5~2mm)の50%程度であることが好ましい。
【0028】
図4および図5には、逃げ部の変形例が示されている。図示のように、この変形例では、第2のレンズ14の座面14aが逃げ部14cを有している。この逃げ部14cは、座面14aを光軸方向で像側へ向けて凹状に窪ませることによって形成される溝状の凹部を成しており、反射防止膜50上に墨52が重なり合う重合部70のみとほぼ対向してこの重合部70を第2のレンズ14の座面14aに接触させないようにする空間60を座面13a,14a間に形成している。
【0029】
また、図6は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が装着された図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0030】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0031】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12aに鍔状に設けられるフランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0032】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ガラス製の第1のレンズ13の座面13a上に存在して反射防止膜50上に遮光用の墨52が重なり合う重合部70、すなわち、墨52の密着性が弱く墨52が剥離・転写し易い重合部70を樹脂製の第2のレンズ14の座面14aと接触させないようにする空間60が、座面13a(14a)の逃げ部13f(14c)によって座面13a,14a間に形成されるため、特に高温高湿環境下で反射防止膜50上の墨52が剥離して第2のレンズ14の座面14a側へ転写されることを防止できる。その結果、墨52の剥離に伴う外観不良およびゴースト発生を防止できる。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状、並びに、逃げ部の形態等は、前述した実施の形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 第1のレンズ
13a 座面
13f 逃げ部
14 第2のレンズ
14a 座面
14c 逃げ部
50 反射防止膜
52 墨
60 空間
70 重合部
300 カメラモジュール
L レンズ群
O 光軸
S 内側収容空間
S1 レンズ間空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7