(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】接着剤組成物、ゴム-有機繊維コード複合体、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C09J 161/12 20060101AFI20240710BHJP
C09J 107/00 20060101ALI20240710BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240710BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240710BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20240710BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20240710BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
C09J161/12
C09J107/00
B60C1/00 C
B60C9/00 B
D06M15/41
D06M15/693
D06M101:32
(21)【出願番号】P 2020042253
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】尾上 真悟
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528337(JP,A)
【文献】特開平06-306344(JP,A)
【文献】特表2014-528970(JP,A)
【文献】特開平10-140123(JP,A)
【文献】特開平06-299134(JP,A)
【文献】特表2008-517588(JP,A)
【文献】特開2013-170086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B60C 1/00,9/00
D06M 15/41,15/693
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール類と、アルデヒド類とを含有し、更にアンモニア水を含有し、
前記ポリフェノール類が、再生可能資源に由来する原材料であるフロログルシノールであり、
前記アンモニア水が、再生可能資源に由来する原材料であるアンモニアを含み、
前記アルデヒド類が、
ベンゼン環を有するアルデヒド類を含み、
レゾルシン及びホルムアルデヒドを実質的に含有せず、
固形分全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が40質量%以上である、ことを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】
25℃で溶液状であり、該溶液全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が65質量%以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記
ベンゼン環を有するアルデヒド類が、2つ以上のアルデヒド基を有する、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ゴム成分を更に含有する、請求項1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分が、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)及びビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
天然ゴム(NR)を更に含有し、
固形分全体のうち、前記天然ゴム(NR)の割合が35質量%以上である、請求項4又は5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
ゴム部材と、有機繊維コードとを備えるゴム-有機繊維コード複合体であって、
前記有機繊維コードの少なくとも一部の表面が、請求項1~6のいずれかに記載の接着剤組成物で被覆されている、ことを特徴とする、ゴム-有機繊維コード複合体。
【請求項8】
前記有機繊維コードが、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードである、請求項7に記載のゴム-有機繊維コード複合体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のゴム-有機繊維コード複合体を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、ゴム-有機繊維コード複合体、及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維等の有機繊維は、高い初期弾性率や、優れた熱寸法安定性を有しているため、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物、帆布等の形態で、タイヤ、ベルト、空気バネ、ホース等のゴム物品における補強材として多用されている。そして、これらの有機繊維とゴム(ゴム部材)とを接着させるため、種々の接着剤組成物が提案されている。
【0003】
かかる接着剤組成物として、例えば、レゾルシン、ホルマリン及びゴムラテックス等を含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤が挙げられ、該RFL接着剤を熱硬化させることにより、接着性を発現できることが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
また、上述したもののほか、レゾルシンとホルマリンとを初期縮合させたレゾルシンホルマリン樹脂を用いる技術(例えば、特許文献4、5)や、エポキシ樹脂でポリエステル繊維等からなるタイヤコードを前処理することにより、接着力の向上を図る技術が知られている。
【0005】
ここで、上述したホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)は、レゾルシンを架橋させるための重要な原材料であるものの、近年、作業環境を考慮して使用量の削減が求められている。更に、レゾルシンについても同様に、環境面の観点から、使用量の削減が求められている。そのため、レゾルシン及びホルマリンを用いず、環境への配慮がされた接着剤組成物や、接着方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献6)。
【0006】
しかしながら、従来のレゾルシン及びホルマリンを含有しない組成物は、硬化に時間を要するため、生産性の向上という課題があり、更に、接着性の点での一層の改善が求められている。
【0007】
また、レゾルシン及びホルマリンを含有しない組成物は、特にポリエチレンテレフタレート(PET)繊維とゴムとの接着性能が十分に得られない傾向にあった。その理由として、PETをはじめとした主鎖中にエステル結合を有する線状高分子であるポリエステル繊維材料は、構造的に緻密であること、また、官能基が少ないポリエステル繊維材料は、ラテックスと水溶性フェノールを架橋する原材料とを混合させて得られる接着剤組成物(RFL等)ではほとんど接着性が発現しないこと、などが考えられる。
【0008】
このような状況の下、ポリエステルやアラミド等の不活性な繊維コードへの接着剤処理として、エポキシ等によって前処理を施し、次いで、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)に浸漬する処理(二浴処理)が用いられてきた。しかしながら、この二浴処理は、十分な接着力が得られるものの、加工費の増大や設備的な制約により全体コストが高くなる傾向にある。そのため、一浴処理で高い接着性が得られる技術の開発が望まれている。
【0009】
このような一浴処理の技術としては、ゴムラテックスを含む組成物に、イソシアネート化合物を更に含ませることにより、接着を促進させる方法が挙げられる(例えば、特許文献7)。しかしながら、レゾルシン及びホルマリンを用いないなど、環境に一層配慮し、ゴムと有機繊維材料との接着性が得られる技術については、未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭58-2370号公報
【文献】特開昭60-92371号公報
【文献】特開昭60-96674号公報
【文献】特開昭63-249784号公報
【文献】特公昭63-61433号公報
【文献】特開2010-255153号公報
【文献】特開2013-82923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維とを強固に接着させることが可能な接着剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維コードとが強固に接着したゴム-有機繊維コード複合体、及び当該複合体を用いた高い補強性を有するタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0013】
本発明の接着剤組成物は、ポリフェノール類と、アルデヒド類とを含有し、
固形分全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が35質量%以上である、ことを特徴とする。
かかる本発明の接着剤組成物は、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維とを強固に接着させることが可能である。
【0014】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、25℃で溶液状であり、該溶液全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が65質量%以上である。この場合、環境への負荷を一層低減し、また、将来の石油供給量の減少に備えることもできる。
【0015】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、前記アルデヒド類が、芳香族環を有するアルデヒド類を含む。芳香族環を有するアルデヒド類は、ホルムアルデヒドよりも環境負荷が少ない上、接着性、機械的強度、電気絶縁性、耐酸性、耐水性、耐熱性等の性能の向上に寄与し得るからである。
【0016】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、前記芳香族環を有するアルデヒド類が、2つ以上のアルデヒド基を有する。2つ以上のアルデヒド基を有することで、架橋及び縮合の際の架橋度が高くなる結果、接着性をより高めることができる。
【0017】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、前記ポリフェノール類が、3つ以上の水酸基を有する。かかるポリフェノール類は、一般に水溶性であるため、接着剤組成物中で均一に分布することができ、より優れた接着性を発現し得るからである。
【0018】
本発明の接着剤は、ゴム成分を更に含有することが好ましい。この場合、ゴムと有機繊維コードとをより強固に接着することができる。
【0019】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、前記ゴム成分が、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)及びビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)からなる群より選択される少なくとも一種である。かかるゴム成分を用いることで、有機繊維との接着対象であるゴム部材との相互作用及び共加硫が図られ、ゴム部材と有機繊維との接着性をより向上させることができる。
【0020】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、天然ゴム(NR)を更に含有し、固形分全体のうち、前記天然ゴム(NR)の割合が35質量%以上である。この場合、ゴムと有機繊維との良好な接着性を維持しつつ、環境への負荷を一層低減することができる。
【0021】
本発明のゴム-有機繊維コード複合体は、ゴム部材と、有機繊維コードとを備えるゴム-有機繊維コード複合体であって、
前記有機繊維コードの少なくとも一部の表面が、上述した接着剤組成物で被覆されている、ことを特徴とする。
かかる本発明のゴム-有機繊維コード複合体は、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維コードとが強固に接着している。
【0022】
本発明のゴム-有機繊維コード複合体の好適例においては、前記有機繊維コードが、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードである。通常、PET繊維コードは、ゴム部材との高い接着性が得られ難い傾向にあるが、本発明の接着剤組成物を用いることで、ゴムとPET繊維コードとが強固に接着した複合体とすることができる。
【0023】
本発明のタイヤは、上述したゴム-有機繊維コード複合体を用いたことを特徴とする。本発明のタイヤは、上述したゴム-有機繊維コード複合体が用いられているため、環境への負荷が少なく、また、高い補強性を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維とを強固に接着させることが可能な接着剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維コードとが強固に接着したゴム-有機繊維コード複合体、及び当該複合体を用いた高い補強性を有するタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の接着剤組成物、ゴム-有機繊維コード複合体、及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0026】
<接着剤組成物>
本発明の一実施形態の接着剤組成物(以下、「本実施形態の接着剤組成物」と称することがある。)は、ポリフェノール類と、アルデヒド類とを少なくとも含有することを一特徴とする。また、本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、ゴム成分、溶媒、その他の成分等を適宜含有することができる。本実施形態の接着剤組成物を用いれば、ゴムと有機繊維とを強固に接着させることができる。
更に、本実施形態の接着剤組成物は、固形分全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が35質量%以上である、ことも一特徴とする。
なお、本明細書において「固形分」とは、乾燥固形分を指すものとする。
【0027】
(ポリフェノール類)
ポリフェノール類は、芳香族環に複数の水酸基(フェノール性水酸基)が結合した構造を有する化合物群を指し、本実施形態の接着剤組成物において接着性を高め得る樹脂成分である。ポリフェノール類における芳香族環の数、水酸基の数は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態で用いるポリフェノール類は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
本実施形態で用いるポリフェノール類は、水等の溶媒に溶解して均一に分散した接着剤組成物を得る観点から、水溶性であることが好ましい。更に、本実施形態で用いるポリフェノール類は、環境負荷低減に十分に配慮する観点から、レゾルシン(レゾルシノール)以外のポリフェノール類であることが好ましい。換言すると、本実施形態の接着剤組成物は、レゾルシン(レゾルシノール)を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、接着剤組成物中の割合が0.5質量%未満であることを指すものとする。
また、本明細書において「水溶性」とは、必ずしも完全な水溶性のみを意味するのではなく、部分的に水溶性であること、或いは水を含む溶媒中で相分離しないことも包含するものとする。
【0029】
上記ポリフェノール類において、芳香族環における複数の水酸基の結合位置は、特に限定されず、例えば、互いの水酸基が、オルト位、メタ位、又はパラ位の位置関係にあってもよい。
【0030】
上記ポリフェノール類は、複数の芳香族環を有してもよい。この場合、全ての芳香族環にそれぞれ、複数の水酸基が結合していることが好ましい。
【0031】
上記ポリフェノール類は、3つ以上の水酸基を有することが好ましい。かかるポリフェノール類は、一般に水溶性であるため、接着剤組成物中で均一に分布することができ、より優れた接着性を発現し得るからである。
【0032】
3つ以上の水酸基を有するポリフェノール類としては、例えば、下記式(I)で表されるフロログルシノール、下記式(II)で表されるモリン(別名:2’,4’,3,5,7-ペンタヒドロキシフラボン)、下記式(III)で表されるフロログルシド(別名:2,4,6,3’,5’-ビフェニルペントール)、並びにこれらのうち任意の2種以上の混合物、等が挙げられる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0033】
特に、本実施形態の接着剤組成物は、接着性をより向上させる観点から、ポリフェノール類としてフロログルシノールを少なくとも含有することが好ましい。
【0034】
本実施形態の接着剤組成物においては、より優れた接着性を確保する観点から、固形分全体のうちのポリフェノール類の含有量が、1.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の接着剤組成物においては、アルデヒド類を確実に溶解させるとともに、良好な作業性を確保する観点から、固形分全体のうちのポリフェノール類の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
(アルデヒド類)
アルデヒド類は、アルデヒド基を有する化合物群を指し、本実施形態の接着剤組成物において、上述したポリフェノール類との併用により接着性を高め得る成分である。アルデヒド類におけるアルデヒド基の数は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態で用いるアルデヒド類は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
本実施形態で用いるアルデヒド類は、環境負荷低減に十分配慮する観点から、ホルムアルデヒド以外のアルデヒド類であることが好ましい。換言すると、本実施形態の接着剤組成物は、ホルムアルデヒドを実質的に含有しないことが好ましい。
【0037】
上記アルデヒド類は、芳香族環を有するアルデヒド類を含むことが好ましい。芳香族環を有するアルデヒド類は、ホルムアルデヒドよりも環境負荷が少ない上、接着性、機械的強度、電気絶縁性、耐酸性、耐水性、耐熱性等の性能の向上に寄与し得るからである。
【0038】
また、上記芳香族環を有するアルデヒド類は、2つ以上のアルデヒド基を有することが好ましい。2つ以上のアルデヒド基を有することで、架橋及び縮合の際の架橋度が高くなる結果、接着性をより高めることができる。更に、上記芳香族環を有するアルデヒド類は、1つの芳香族環上に2つ以上のアルデヒド基が存在することがより好ましい。この場合のアルデヒド類において、芳香族環における上記2つ以上のアルデヒド基の結合位置は、特に限定されず、例えば、互いのアルデヒド基が、オルト位、メタ位、又はパラ位の位置関係にあってもよい。
【0039】
このようなアルデヒド類としては、例えば、1,2-ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボアルデヒド、及び2-ヒドロキシベンゼン-1,3,5-トリカルボアルデヒド、並びにこれらのうち任意の2種以上の混合物、等が挙げられる。特に、本実施形態の接着剤組成物は、接着性をより向上させる観点から、アルデヒド類として1,4-ベンゼンジカルボアルデヒドを少なくとも含有することが好ましい。
【0040】
なお、芳香族環を有するアルデヒド類には、ベンゼン環を有するものだけでなく、複素芳香族化合物も含まれる。複素芳香族化合物であるアルデヒド類としては、例えば、下記一般式(IV):
【化4】
・・・(IV)
[式中、Xは、Oであり;Rは、-H、-CHO又はメチロールを示す]で表されるフラン環を有するアルデヒド類が挙げられる。上記のフラン環を有するアルデヒド類として、より具体的には、下記式でそれぞれ表される5つの化合物が挙げられる。
【化5】
【0041】
なお、本実施形態の接着剤組成物においては、上記ポリフェノール類と上記アルデヒド類とが縮合された状態で存在していてもよい。また、本実施形態の接着剤組成物において、上記ポリフェノール類に対する上記アルデヒド類の質量比(アルデヒド類の含有量/ポリフェノール類の含有量)は、0.1以上であることが好ましく、また、3以下であることが好ましい。この場合、ポリフェノール類及びアルデヒド類の縮合反応の生成物の硬度及び接着性がより適したものとなる。同様の観点から、上記ポリフェノール類に対する上記アルデヒド類の質量比(アルデヒド類の含有量/ポリフェノール類の含有量)は、0.25以上であることがより好ましく、また、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。
【0042】
本実施形態の接着剤組成物においては、固形分全体のうちのポリフェノール類及びアルデヒド類の合計含有量が、3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この場合、作業性を悪化させることなく、より優れた接着性を確保することができる。同様の観点から、固形分全体のうちのポリフェノール類及びアルデヒド類の合計含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、また、25質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
(ゴム成分)
本実施形態の接着剤組成物は、上述したポリフェノール類及びアルデヒド類に加え、ゴム成分を更に含有することが好ましい。この場合、ゴムと有機繊維コードとをより強固に接着することができる。また、本実施形態の接着剤組成物がゴム成分を含有することで、比較的柔軟で且つ可撓性である利点を生かし、有機繊維コードの変形にも良好に追随することができる。
【0044】
上記ゴム成分としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)の他、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴムなど)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)等の合成ゴムを用いることができる。これらゴム成分は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。かかるゴム成分を用いることで、有機繊維との接着対象であるゴム部材との相互作用及び共加硫が図られ、ゴム部材と有機繊維との接着性をより向上させることができる。なお、上記ゴム成分は、通常、ゴムラテックスを配合することで接着剤組成物中に含有させることができる。
【0045】
本実施形態の接着剤組成物は、天然ゴム(NR)を含有するとともに、固形分全体のうちの当該天然ゴム(NR)の割合が30質量%以上であることが好ましい。この場合、ゴムと有機繊維との良好な接着性を維持しつつ、環境への負荷を一層低減することができる。同様の観点から、本実施形態の接着剤組成物の固形分全体のうちの当該天然ゴム(NR)の割合は、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
【0046】
本実施形態の接着剤組成物においては、より優れた接着性を確保する観点から、固形分全体のうちのゴム成分の含有量が、40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の接着剤組成物においては、耐凝集破壊抗力を十分に確保するために、固形分全体のうちのゴム成分の含有量が、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
(溶媒)
本実施形態の接着剤組成物は、溶媒を更に含有してもよい。溶媒としては、上記ポリフェノール類を確実に溶解させて均一に分散させる観点からは、水、水酸化ナトリウム溶液等の塩基性溶媒が好ましい。また、溶媒としては、上記アルデヒド類を十分に溶解させる観点からは、アンモニア水等の塩基性溶媒が好ましい。そして、同様の観点から、溶媒としては、水及び水酸化ナトリウム溶液を併用することが好ましく、水、水酸化ナトリウム溶液及びアンモニア水を併用することがより好ましい。
【0048】
(その他の成分)
本実施形態の接着剤組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、上述したもの以外のその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0049】
(再生可能資源に由来する原材料)
本実施形態の接着剤組成物は、固形分全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が35質量%以上である。このように、接着剤組成物の原材料のうち一定以上の割合を再生可能資源に由来する原材料とすることで、環境への負荷を低減し、また、将来の石油供給量の減少に備えることもできる。同様の観点から、本実施形態の接着剤組成物において、固形分全体のうちの再生可能資源に由来する原材料の割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0050】
なお、本実施形態において「再生可能資源に由来する原材料」とは、石油以外の資源に由来する原材料を指すものとする。そして、本実施形態の接着剤組成物においては、上述した材料、即ち、必須であるポリフェノール類及びアルデヒド類、並びに任意であるゴム成分、溶媒及びその他の成分の少なくとも一部を、再生可能資源に由来する原材料とし、且つ、固形分全体として35質量%以上とするものである。
【0051】
また、本実施形態の接着剤組成物は、25℃で溶液状であり、該溶液全体のうち、再生可能資源に由来する原材料の割合が65質量%以上であることが好ましい。この場合、環境への負荷を一層低減し、また、将来の石油供給量の減少に備えることもできる。同様の観点から、本実施形態の接着剤組成物において、溶液全体のうちの再生可能資源に由来する原材料の割合は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において「溶液状」は、コロイド状も包含するものとする。
【0052】
以下、再生可能資源に由来する原材料となり得るものについて、例示説明する。
【0053】
例えば、ポリフェノール類として既述したフロログルシノールは、植物又は細菌等による生合成によって得ることができる。そのようなフロログルシノールは、再生可能資源に由来する原材料として用いることができる(例えば、WO2019/002798A1、WO2019/002799A1等を参照)。
【0054】
例えば、アルデヒド類として既述したフラン環を有するアルデヒド類は、木材やトウモロコシ等の石油以外の資源から得ることができる。そのようなフラン環を有するアルデヒド類は、再生可能資源に由来する原材料として用いることができる。
【0055】
例えば、既述したゴム成分のうち、天然ゴム(NR)及び改質天然ゴムは、再生可能資源に由来する原材料である。また、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の原料であるスチレン系モノマー及びブタジエンモノマーについてはいずれも、石油以外の資源から得る手法が開発されており、再生可能資源に由来する原材料として用いられる可能性がある。
【0056】
例えば、溶媒としての水や、各種成分の希釈用の水分は、固形分には含まれないが、再生可能資源に由来する原材料である。
【0057】
例えば、溶媒として既述した水酸化ナトリウム溶液中の水酸化ナトリウムは、石油以外の資源から得ることができ、また、乾燥固形分中に固定化される。そのような水酸化ナトリウムは、再生可能資源に由来する原材料として用いることができる。また、例えば、溶媒として既述したアンモニア水中のアンモニアは、石油以外の資源から得ることができ、また、乾燥固形分中に固定化される。そのようなアンモニアは、再生可能資源に由来する原材料として用いることができる。
【0058】
(接着剤組成物の製造)
本実施形態の接着剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、再生可能資源に由来する原材料の割合が所定以上となるように原材料を準備し、これらを溶媒に溶解させることで、溶液状の本実施形態の接着剤組成物を得ることができる。
【0059】
特に、本実施形態の接着剤組成物は、溶媒としての水にポリフェノール類を溶解させて溶液を得、次いで、必要に応じて上記溶液に塩基性溶媒を追加し、次いで、上記溶液にアルデヒド類を溶解させる、ことにより製造することが好ましい。これにより、ゲル化を回避しつつ、溶解性及び分散性を高めることができ、安定的且つ効率的に本実施形態の接着剤組成物を製造することができる。
【0060】
上記溶媒としての水の温度は、ポリフェノール類及びアルデヒド類をより確実に溶解させる観点から、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
【0061】
塩基性溶媒としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、アンモニア水等が挙げられる。
【0062】
また、アルデヒド類をより確実に溶解させつつ、生産性の低下を抑える観点から、上記アルデヒド類は、ポリフェノール類を含有する溶液に漸次的に加えて溶解させることが好ましい。
【0063】
アルデヒド類を溶解させる際には、撹拌及び熟成を行うことが好ましい。上記撹拌及び熟成時の温度は、接着性をより高める観点から、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、また、溶媒の蒸発に伴う高粘度化を抑制する観点から、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。
【0064】
上記撹拌及び熟成の時間は、接着性をより高める観点から、30分間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、また、生産性の低下を抑制する観点から、6時間以下であることが好ましく、4時間以下であることがより好ましい。
【0065】
また、接着剤組成物にゴム成分を含有させる場合には、上述の通りにして得られたポリフェノール類及びアルデヒド類の溶液にラテックスを添加し、その後、熟成することが好ましい。このように熟成を行うことで、より確実にラテックスを凝固させ、接着剤組成物の取り扱い易さを向上できるとともに、接着性の向上を図ることもできる。
【0066】
なお、ラテックス添加後の熟成とは、ラテックスの特性を向上させることを目的として、一定時間経過させる操作を指す。熟成の条件については特に限定されず、例えば、25℃程度で、1時間~1週間経過させて熟成することができる。
【0067】
また、接着剤組成物にイソシアネート化合物を含有させる場合には、上述の通りにしてラテックスを添加し、熟成した後に、当該イソシアネート化合物を添加することができる。
【0068】
<ゴム-有機繊維コード複合体>
本発明の一実施形態のゴム-有機繊維コード複合体(以下、「本実施形態の複合体」と称することがある。)は、ゴム部材と、有機繊維コードとを備えるゴム-有機繊維コード複合体であって、前記有機繊維コードの少なくとも一部の表面が、上述した接着剤組成物で被覆されている、ことを特徴とする。本実施形態の複合体においては、上記ゴム部材と上記有機繊維コードとが、上述した接着剤組成物により接着された構造となっている。本実施形態の複合体は、上述した本実施形態の接着剤組成物が用いられているため、環境への負荷が少なく、また、ゴムと有機繊維コードとが強固に接着している。
【0069】
なお、本実施形態の複合体は、有機繊維コードの少なくとも一部の表面が本実施形態の接着剤組成物で被覆されていればよいが、ゴムと有機繊維コードとの強固な接着が実現できることから、有機繊維コードの全表面が本実施形態の接着剤組成物で被覆されていることが好ましい。
【0070】
有機繊維コードの素材としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ポリケトン、アラミド等の芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、レーヨン、リヨセル等が挙げられる。特に、本実施形態の複合体における有機繊維コードは、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードであることが好ましい。通常、PET繊維コードは、ゴム部材との高い接着性が得られ難い傾向にあるが、上記の接着剤組成物を用いることで、ゴムとPET繊維コードとが強固に接着した複合体とすることができる。
【0071】
有機繊維コードとしては、特に限定されず、複数の単繊維フィラメントを撚り合わせてなる有機繊維コードを用いることができる。この場合の単繊維フィラメントの平均径は、ゴム物品に十分に高い補強性をもたらす観点から、2μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、また、50μm以下であることが好ましい。
【0072】
ゴム部材を構成するゴム成分としては、特に限定されず、ゴム業界で通常的に用いられるゴム成分を用いてゴム部材を作製することができる。また、上記ゴム部材は、通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の各種配合剤を適宜含有することができる。更に、上記ゴム部材は、本実施形態の複合体においては、加硫物とすることができる。
【0073】
本実施形態の複合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、有機繊維コードの表面を上述した接着剤組成物で被覆し、次いで、被覆した接着剤組成物と未加硫状態のゴム部材とを接触させ、次いで、任意に加圧しながら加硫することで、本実施形態の複合体を得ることができる。
【0074】
有機繊維コードの表面を上述した接着剤組成物で被覆する方法としては、特に限定されず、例えば、浸漬、塗布、吹き付け等が挙げられる。また、上述した接着剤組成物が溶媒を含有する場合には、被覆後、乾燥処理により当該溶媒を除去してもよい。更に、乾燥後には、接着性をより効果的に発現させるために加熱処理を行ってもよい。
【0075】
なお、有機繊維コードの表面を上述した接着剤組成物で被覆する前に、該有機繊維コードの表面を所定の前処理用組成物で被覆してもよい。この場合には、いわゆる二浴処理により、有機繊維コードの表面に2つの被覆層を形成することとなる。かかる前処理用組成物としては、例えば、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物を含む組成物が挙げられる。
【0076】
有機繊維コードにおける上記接着剤組成物の被覆量は、例えば、未被覆の有機繊維コード100質量部に対して0.2質量部以上6.0質量部以下であることが好ましい。
【0077】
本実施形態の複合体の用途は、特に限定はされない。例えば、本実施形態の複合体を、タイヤ、ベルト、空気バネ、ホース等のゴム物品に用いることができる。
【0078】
<タイヤ>
本発明の一実施形態のタイヤ(以下、「本実施形態のタイヤ」と称することがある。)は、上述したゴム-有機繊維コード複合体を用いたことを特徴とする。換言すると、本実施形態のタイヤは、上述したゴム-有機繊維コード複合体を備える。本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の複合体が用いられているため、環境への負荷が少なく、また、高い補強性を有する。
本実施形態のタイヤにおいては、上述した複合体を、例えば、カーカスプライ、ベルト層、ベルト補強層、フリッパー等のベルト周り補強層等として用いることができる。
【0079】
なお、本実施形態のタイヤは、上述した複合体を用いること以外特に制限はなく、常法に従って製造することができる。また、本実施形態のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
(前処理用組成物の調製)
エポキシ化合物(ナガセケムテック株式会社製、「デナコール EX614B」)が1質量%、イソシアネート化合物(第一工業製薬株式会社製、「エラストロン BN77」)が3質量%、及びイソバン(株式会社クラレ製)が6質量%となるように水で希釈し、前処理用組成物を調製した。
【0082】
(接着剤組成物の調製)
40℃以上の水に対し、ポリフェノール類としてのフロログルシノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、10質量%水溶液)を、濃度が10質量%となるように溶解させて、溶液を得た。この溶液に、溶媒としての水酸化ナトリウム溶液(関東化学株式会社製、4質量%水溶液)、水、及びアンモニア水(関東化学株式会社製、25質量%水溶液)を、この順序で追加した。次いで、上記溶液に、アルデヒド類としての1,4-ベンゼンジカルボアルデヒド(東京化成工業株式会社製、98質量%純度)を漸次的に添加した。なお、上記の添加は、溶液を40~60℃に保持し、常時撹拌しながら行った。フロログルシノール及び1,4-ベンゼンジカルボアルデヒドが溶解した後も撹拌を継続し、25±1℃の雰囲気温度、2時間の条件で、熟成した。
【0083】
次いで、上記溶液を27±1℃で撹拌しながら、該溶液に、天然ゴム(NR)のラテックス(Sime Darby社製、「HYTEX HA」)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のラテックス(JSR株式会社製、「SBRラテックス2108」)、及びビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)のラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、「PYRATEX」)を添加し、27±1℃で24時間の熟成を行った。このようにして、溶液状の接着剤組成物を得た。
【0084】
なお、得られた接着剤組成物の組成(固形分の組成、及び溶液の組成)を、表1に示す。
【0085】
【0086】
表1より、上記の接着剤組成物は、固形分全体のうちの再生可能資源に由来する原材料の割合が35質量%以上と高く、また、溶液全体のうちの再生可能資源に由来する原材料の割合が65質量%以上と高いため、環境への負荷が低減されていることが分かる。
【0087】
(ゴム-有機繊維コード複合体の製造)
コード繊度1670dtex/2、下撚り数39回/10cm、上撚り数39回/10cmのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードを、まず、撹拌下の上述の前処理用組成物に浸漬させた。次いで、前処理用組成物中の溶媒を除去するため、160℃×80秒間の乾燥処理を行い、更に、205℃×60秒間の加熱処理を行った。このようにして、PET繊維コードの全表面を、前処理用組成物で被覆した。
【0088】
その後、PET繊維コードを、上述の溶液状の接着剤組成物に浸漬させた。次いで、接着剤組成物中の溶媒を除去するため、160℃×80秒間の乾燥処理を行い、更に、接着性を効果的に発現させるため、245℃×60秒間の加熱処理を行った。このようにして、PET繊維コードの全表面を、接着剤組成物で更に被覆した。
【0089】
一方、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、カーボンブラック、及び加硫剤等を配合し、未加硫状態のゴム組成物(ゴム部材の前駆体)を調製した。このゴム組成物に、上述の被覆済PET繊維コードを埋め込み、160℃で20分間、20kgf/cm2の加圧下で加硫し、次いで23℃まで冷却して、ゴム-有機繊維コード複合体(加硫物)を得た。
【0090】
(接着性の評価)
得られたゴム-有機繊維コード複合体(加硫物)からPET繊維コードを掘り起こす際の接着性を評価した。より具体的に、23±1℃の雰囲気温度下で、PET繊維コードを加硫物から30cm/分の速度で剥離する時の抗力を測定した。その結果、抗力は21.4N/コードであり、十分な接着性が発現していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維とを強固に接着させることが可能な接着剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、環境への負荷が少なく、且つ、ゴムと有機繊維コードとが強固に接着したゴム-有機繊維コード複合体、及び当該複合体を用いた高い補強性を有するタイヤを提供することができる。