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特許7518646太陽電池セル、太陽電池モジュール及び太陽電池セル製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】太陽電池セル、太陽電池モジュール及び太陽電池セル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20240710BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20240710BHJP
【FI】
H01L31/04 460
H01L31/06 455
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020060935
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021163780
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0029625(KR,A)
【文献】特開2018-163988(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084159(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054129(WO,A1)
【文献】特開2015-103789(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054130(WO,A1)
【文献】特開2005-236017(JP,A)
【文献】特開2016-66741(JP,A)
【文献】特開2013-55294(JP,A)
【文献】特表2009-527906(JP,A)
【文献】特開昭56-129340(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189267(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146366(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161127(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0030903(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1816178(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の対向する一対の端縁の一方の受光面側のみ及び他方の裏面側のみにそれぞれレーザ入射痕を備える太陽電池セルを複数備え、
1つの前記太陽電池セルの前記受光面側に前記レーザ入射痕を有する端部の前記受光面側に、他の前記太陽電池セルの前記裏面側に前記レーザ入射痕を有する端部を重ねて配置されている、太陽電池モジュール
【請求項2】
前記太陽電池セルは、前記半導体基板の裏面側に正負両方の電極構造が配設されている、請求項1に記載の太陽電池モジュール
【請求項3】
前記太陽電池セルは、前記受光面側に前記レーザ入射痕を有する端縁に隣接して配設され、外部に接続される第1接続電極と、前記裏面側に前記レーザ入射痕を有する端縁に隣接して配設され、前記第1接続電極と異なる極性を有し、外部に接続される第2接続電極と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール
【請求項4】
半導体ウエハに第1方向に並んで複数の太陽電池セルの構造を形成する工程と、
前記太陽電池セルの境界線の1つおきに、前記半導体ウエハの第1主面に前記境界線に沿ってレーザを照射する工程と、
前記太陽電池セルの境界線の前記第1主面と互い違いの1つおきに、前記半導体ウエハの第2主面に前記境界線に沿ってレーザを照射する工程と、
前記第1主面のレーザ照射位置及び前記第2主面のレーザ照射位置がそれぞれ山の頂点となるよう、前記半導体ウエハをジグザグに折り曲げる工程と、
を備える、太陽電池セル製造方法。
【請求項5】
前記太陽電池セルの構造は、前記第1方向に並ぶ複数の前記太陽電池セルの向きが交互に反転するよう形成される、請求項に記載の太陽電池セル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル、太陽電池モジュール及び太陽電池セル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池セルは、大判の基板(ウエハ)に配列して形成される。基板に並んで形成された複数の太陽電池セルは、太陽電池セル境界に溝を形成し、この溝に沿って基板を折り曲げて割断することによって分離される。このような割断を行うために、例えば特許文献1に記載されているように、レーザを照射することによってレーザ入射痕からなる溝状のスクライブラインを形成するレーザスクライビングと呼ばれる技術が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-84921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザによって溝状の入射痕を形成すると、溝の内面、場合によってはさらに溝の近傍の主面に基板の材料の酸化物が付着する。この酸化物は、光を散乱するので白く見えるため、太陽電池セルの輪郭を識別しやすくすることで、特に複数の太陽電池セルを端部を重ね合わせた状態で接続するいわゆるシングリング構造を採用する場合には、太陽電池セルの配置を容易にできる。しかしながら、レーザ入射痕の酸化物は、キャリアを再結合させて光電変換効率を低下させるという不都合も生じさせる。
【0005】
本発明は、光電変換効率が高い太陽電池モジュールを比較的容易に製造できる太陽電池セル、太陽電池モジュール及び太陽電池セル製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池セルは、半導体基板の対向する一対の端縁の一方の受光面側及び他方の裏面側にそれぞれレーザ入射痕を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池セルが、前記半導体基板の裏面側に正負両方の電極構造が配設されていてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る太陽電池セルは、前記受光面側に前記レーザ入射痕を有する端縁に隣接して配設され、外部に接続される第1接続電極と、前記裏面側に前記レーザ入射痕を有する端縁に隣接して配設され、前記第1接続電極と異なる極性を有し、外部に接続される第2接続電極と、さらに備えてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る太陽電池モジュールは前記太陽電池セルを複数備え、1つの前記太陽電池セルの前記受光面側に前記レーザ入射痕を有する端部の前記受光面側に、他の前記太陽電池セルの前記裏面側に前記レーザ入射痕を有する端部を重ねて配置されている。
【0010】
本発明の一態様に係る太陽電池せる製造方法は、半導体ウエハに第1方向に並んで複数の太陽電池セルの構造を形成する工程と、前記太陽電池セルの境界線の1つおきに、前記半導体ウエハの第1主面に前記境界線に沿ってレーザを照射する工程と、前記太陽電池セルの境界線の前記第1主面と互い違いの1つおきに、前記半導体ウエハの第2主面に前記境界線に沿ってレーザを照射する工程と、前記第1主面のレーザ照射位置及び前記第2主面のレーザ照射位置がそれぞれ山の頂点となるよう、前記半導体ウエハをジグザグに折り曲げる工程と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る太陽電池せる製造方法において、前記太陽電池セルの構造は、前記第1方向に並ぶ複数の前記太陽電池セルの向きが交互に反転するよう形成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光電変換効率が高い太陽電池モジュールを比較的容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の太陽電池セルの構成を示す模式断面図である。
図2図1の太陽電池セルの模式裏面図である。
図3図1の太陽電池セルの製造の一工程を示す模式図である。
図4図1の太陽電池セルの製造の図3の次の工程を示す模式図である。
図5図1の太陽電池セルの製造の図4の次の工程を示す模式図である。
図6図1の太陽電池セルの製造の図5の次の工程を示す模式図である。
図7図1の太陽電池セルを複数備える太陽電池モジュールの構成を示す模式断面図である。
図8】本発明の変形実施形態に係る太陽電池セルを複数備える太陽電池モジュールの構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、簡略化のために、部材の図示、符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池セル1の模式断面図である。図2は、太陽電池セル1の模式裏面図である。本実施形態の太陽電池セル1は、裏面(受光面と反対側の面)に正負両方の電極構造が配設されたいわゆる裏面電極型の太陽電池セルである。
【0016】
太陽電池セル1は、半導体基板10と、半導体基板10の裏面に設けられる第1半導体層21及び第2半導体層22と、第1半導体層21の裏面側に積層される第1電極パターン31及び第2半導体層22の裏面側に積層される第2電極パターン32と、を備える。
【0017】
半導体基板10は、通常、平面視で方形状に形成される。半導体基板10は、第1方向に対向する一対の端縁の一方の受光面側に第1レーザ入射痕11を有し、他方の端縁の裏面側に第2レーザ入射痕12を有する。通常、レーザ入射痕11,12の表面には、半導体基板10を形成する材料の酸化物が付着している。このため、レーザ入射痕11,12は、光を散乱し、白色化して見え得る。
【0018】
レーザ入射痕11,12は、奥側程幅が小さい形状となり得る。平面視におけるレーザ入射痕11,12の開口部における幅は、30μm以上150μm以下、典型的には、50μm以上100μm以下とすることができる。レーザ入射痕11,12の深さは、半導体基板10の厚みの1/4以上3/5以下、典型的には1/3以上1/2以下とすることができる。
【0019】
レーザ入射痕11,12は、一定の深さで連続して形成されてもよいが、例えばパルス状のレーザを照射することによって深さが繰り返し変化するよう形成されてもよい。また、レーザ入射痕11,12は、平面視で点線状又は破線状になるよう、断続的に形成されてもよい。
【0020】
半導体基板10は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板10は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板10は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板10の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0021】
第1半導体層21は、それぞれ第1方向に帯状に延び、第1方向と交差する第2方向に間隔を空けて配置される複数の第1フィンガー部211と、複数の第1フィンガー部211を第1方向の一方側の端部で接続するよう第2方向に延びる第1接続部212と、を有する。第1接続部212は、第1レーザ入射痕11が形成されている端部の裏面側に形成されている。第2半導体層22は、半導体基板10の裏面の第1半導体層20と相補的な領域に形成され、それぞれ第1方向に帯状に延び、第1フィンガー部211の間に配置される第2フィンガー部221と、複数の第2フィンガー部221を第1方向の他方側の端部で接続するよう第2方向に延びる第2接続部222とを有する。第2接続部222は、第2レーザ入射痕12に隣接して形成されている。
【0022】
第1半導体層21及び第2半導体層22は、互いに異なる導電型を有する。例として、第1半導体層21はp型半導体から形成され、第2半導体層22はn型半導体から形成される。第1半導体層21及び第2半導体層22は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。第1半導体層21及び第2半導体層22は、半導体基板10の裏面に例えばCVD等の成膜技術によって半導体材料を選択的に積層することによって順番に形成することができる。
【0023】
第1電極パターン31は、それぞれの第1フィンガー部211の中央部の裏面に第1方向に延びるよう積層される複数の第1収集電極311と、第1接続部212の中央部に第1方向に延びるよう積層され、複数の第1収集電極311の端部を接続する第1接続電極312と、を有する。第2電極パターン32は、それぞれの第2フィンガー部221の中央部の裏面に第1方向に延びるよう積層される複数の第2収集電極321と、第2接続部222の中央部に第1方向に延びるよう積層され、複数の第2収集電極321の端部を接続する第2接続電極322と、を有する。第1接続電極312は、第1レーザ入射痕11に隣接して第2方向に延びるよう配設され、第2接続電極322は、第2レーザ入射痕12に隣接して第2方向に延びるよう配設される。
【0024】
第1電極パターン31及び第2電極パターン32は、導電性を有する材料から形成される。具体例として、第1電極パターン31及び第2電極パターン32は、銀ペーストの印刷及び焼成によって形成することができる。また、第1電極パターン31及び第2電極パターン32は、例えばスパッタリング、メッキ等によって積層した金属層をエッチングによりパターニングすることで形成してもよい。さらに、第1電極パターン31及び第2電極パターン32は、第1半導体層21及び第2半導体層22に接する薄層状の透明電極層と、この透明電極に積層される金属電極層と、を有する多層構造を有してもよい。
【0025】
第1電極パターン31は第1半導体層21から電荷を取り出し、第2電極パターン32は第2半導体層22から電荷を取り出す。したがって、第1電極パターン31と第2電極パターン32とは互いに異なる極性を有する。より詳しくは、第1電極パターン31及び第2電極パターン32の第1収集電極311及び第2収集電極321は、第1フィンガー部211及び第2フィンガー部221からそれぞれ電荷を取り出す。第1接続電極312及び第2接続電極322は、第1接続部212及び第2接続部222からそれぞれ電荷を取り出すと共に複数の第1収集電極311及び複数の第2接続電極321が取り出した電荷と合わせて外部に出力する。このため、第1接続電極312及び第2接続電極322は、他の太陽電池セル1や配線等の外部の構成に接続される。
【0026】
太陽電池セル1は、以下に説明する本発明に係る太陽電池セル製造方法の一実施形態によって製造することができる。本実施形態に係る太陽電池セル製造方法は、図3に示すように、大判の半導体ウエハWに、少なくとも第1方向に並んで複数の太陽電池セル1の構造を形成する工程(構造形成工程)と、図4に示すように、半導体ウエハの第1主面の太陽電池セル1の境界線の1つおきに境界線に沿ってレーザを照射する工程(第1レーザ照射工程)と、図5に示すように、半導体ウエハの第2主面の太陽電池セル1の境界線の第1主面と互い違いの1つおきに境界線に沿ってレーザを照射する工程(第2レーザ照射工程)と、図6に示すように、第1主面のレーザ照射位置及び第2主面のレーザ照射位置がそれぞれ山の頂点となるよう、半導体ウエハWをジグザグに折り曲げる工程(折り曲げ工程)と、を備える。
【0027】
構造形成工程では、半導体ウエハWに、太陽電池セル1の光電変換に係る構造、つまり第1半導体層21、第2半導体層22、第1電極パターン31及び第2電極パターン32等を形成する。ここで、第1方向に並ぶ複数の太陽電池セル1は、向きが交互に反転するよう形成される。つまり、隣接し合う太陽電池セル1は、第1接続電極312同士又は第2接続電極322同士を隣接させるよう配向される。
【0028】
第1レーザ照射工程では、太陽電池セル1の境界線のうち第1接続電極312が近接する境界線に沿って半導体ウエハWの第1主面にレーザを照射することで、第1レーザ入射痕11によって画定される第1スクライブラインL1を形成する。
【0029】
第2レーザ照射工程では、太陽電池セル1の境界線のうち第2接続電極322が近接する境界線に沿って半導体ウエハWの第2主面にレーザを照射することで、第2レーザ入射痕12によって画定される第2スクライブラインL2を形成する。なお、第1レーザ照射工程と第2レーザ照射工程とは、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0030】
折り曲げ工程では、半導体ウエハWの第1主面を基準として第1スクライブラインL1が頂点となる山折り、且つ第2主面を基準として第2スクライブラインL2が頂点となる山折り、つまり第1主面を基準として第2スクライブラインL2が底となる谷折りとするよう、半導体ウエハWをジグザグに折り曲げる。これによって、第1スクライブラインL1及び第2スクライブラインL2に曲げ応力が集中して、半導体ウエハWを割断して、複数の太陽電池セル1を互いに分離することができる。
【0031】
このように、一方の主面を基準として山折りと谷折りとを交互に配置することで、複数の太陽電池セル1を一度の動作で割断できる。この割断は、例えば図示する割断治具Jを用いて行うことができる。割断治具Jは、各太陽電池セル1の第1主面及び第2主面にそれぞれ対向する複数の板状部Pを有する。第1主面に対向する複数の板状部Pのうち、第1スクライブラインL1を挟んで隣接する2つの板状部Pは互いに分離され、第2スクライブラインL2を挟んで隣接する2つの板状部Pは互いにヒンジ接続されている。第2主面に対向する複数の板状部Pのうち、第1スクライブラインL1を挟んで隣接する2つの板状部Pは互いにヒンジ接続され、第2スクライブラインL2を挟んで隣接する2つの板状部Pは互いに分離されている。この割断治具Jは、板状部Pがヒンジ接続されている部分を半導体ウエハWに向かって押し込むことで、図示するように、半導体ウエハWをジグザグに折り曲げることができる。
【0032】
これに対し、従来のように、一方の主面を基準として複数の太陽電池セルの境界をすべて同じ方向に折り曲げて割断する場合、全ての境界に同時に曲げを作用させると半導体ウエハが全体としてアーチ状になるため、力を作用させる位置及び方向を複雑に変化させる必要が生じる。このため、従来は、1つの半導体ウエハを複数回に分けて割断する必要があったが、本実施形態では、1つの半導体ウエハWに対して1回力を作用させるだけで全ての太陽電池セル1を分離することができる。
【0033】
続いて、上述の太陽電池セル1を用いる太陽電池モジュールMについて説明する。図7は、太陽電池セル1を複数備える太陽電池モジュールMの構成を示す模式断面図である。太陽電池モジュールMは、1つの太陽電池セル1の受光面側に第1レーザ入射痕11を有する端部の受光面側に、他の太陽電池セル1の裏面側に第2レーザ入射痕12を有する端部を重ねて配置した、いわゆるシングリング構造を有する。隣接する太陽電池セル1の第1接続電極312と第2接続電極322とは、インターコネクタCによって接続されている。
【0034】
太陽電池モジュールMでは、受光面側から見て、太陽電池セル1の受光面側に形成された第1レーザ入射痕11が他の太陽電池セル1によって覆われている。このため、太陽電池セル1の第1レーザ入射痕11によって光電変換効率が低下する部分は利用されないので、太陽電池モジュールMの全体としては、表面側にレーザ入射痕が形成されていない従来の太陽電池セルを用いた場合と同じ光電変換効率が得られる。また、太陽電池モジュールMでは、太陽電池セル1を1つずつ重ねて配置する際には、第1入射痕11を用いて太陽電池セル1の位置を正確に確認することができる。このため、太陽電池モジュールMは、太陽電池セル1の配置誤差に起因する光電変換効率の低下が抑制される。この結果として太陽電池モジュールMは、従来と比べて製造が容易でありながら、光電変換効率に優れる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例えば、本発明に係る太陽電池セルは本発明に係る太陽電池セル製造方法によって製造されたものに限定されない。
【0036】
また、本発明に係る太陽電池セルの半導体層、電極パターン等の構成は、単なる例示であって、他の公知の構成に置き換えることができる。また、本発明に係る太陽電池セルは、上述した構成要素以外に、例えば光の反射を抑制する反射防止膜等のさらなる構成要素を備えてもよい。
【0037】
また、本発明に係る太陽電池セルにおいて、一方が受光面側、他方が裏面側に入射痕を有する側縁の対とは異なる側縁の対がレーザスクライビングによって形成される場合、この側縁の対は、いずれの面側にレーザ入射痕を有していてもよい。
【0038】
本発明に係る太陽電池セルは受光面にも電極構造を有する両面電極型太陽電池セルであってもよい。両面電極型太陽電池セルであっても、電極が微細である場合には受光面側を観察する場合にはその位置を確認することが容易ではないことがある。この場合、図8に示す変形例に係る太陽電池セル1Aのように、上述の実施形態と同様に他の太陽電池セルに覆われる側の端縁の表面側にレーザ入射痕を形成することによって、太陽電池セルを正確に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1,1A 太陽電池セル
10 半導体基板
11 第1レーザ入射痕
12 第2レーザ入射痕
21 第1半導体層
22 第2半導体層
211,221 フィンガー部
212,222 接続部
31 第1電極パターン
32 第2電極パターン
311,321 収集電極
312,322 接続電極
M 太陽電池モジュール
W 半導体ウエハ
L1 第1スクライブライン
L2 第2スクライブライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8