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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】光電センサ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/78 20060101AFI20240710BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20240710BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H03K17/78 B
H01H35/00 E
G01V8/12 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020071368
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021168453
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃規
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 研史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗太郎
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-258456(JP,A)
【文献】特開2009-088842(JP,A)
【文献】特開2015-230718(JP,A)
【文献】特開2006-108756(JP,A)
【文献】特開2017-194531(JP,A)
【文献】特開平10-209836(JP,A)
【文献】特開2013-156880(JP,A)
【文献】特開2005-122934(JP,A)
【文献】特開平11-271831(JP,A)
【文献】特開平09-115077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74-17/98
H01H 35/00
G01V 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に向けて測定光を投光する投光部と、
前記検出領域からの前記測定光を光電変換して、受光信号を生成する受光部と、
前記受光部により生成された前記受光信号に基づいて検出対象の状態量を測定する測定部と、
前記投光部から前記検出領域に向けて投光される測定光の光軸の変位を検知して、検知した光軸の変位を示す測定値を提供する角速度センサまたは加速度センサを含むモーションセンサと、
前記角速度センサまたは前記加速度センサからの測定値に基づき得られる、任意の設置姿勢からの前記光軸の変位を示す検出値と、しきい値との対比で前記モーションセンサにより検知された前記光軸の変位が光軸変位の判定条件を満たすか否かを判定し、該光軸の変位が光軸変位の判定条件を満たすと、光軸変位を示す信号を生成する異常検知信号生成部と、
前記光軸変位を示す信号に基づいて光軸変位の発生を報知する報知部とを備えることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記モーションセンサが前記角速度センサおよび前記加速度センサを含み、
前記異常検知信号生成部は、前記角速度センサおよび前記加速度センサからの各測定値に基づいて前記光軸変位の判定条件を満たすか否かを判定する、請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記異常検知信号生成部は、前記光軸の変位を示す検出値として、指示入力に応じて任意に指定される設置姿勢を基準とした値を用いる、請求項1又は2に記載の光電センサ。
【請求項4】
前記報知部は、前記光軸変位を示す信号に基づいて光軸変位の発生を示す報知信号を外部に出力する出力部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光電センサ。
【請求項5】
判定しきい値を設定する設定部と、
検出対象の状態量と判定しきい値に基づいて判定信号を生成する信号生成部とを有し、
前記報知部は、前記光軸変位を示す信号に基づいて光軸変位の発生を示す報知信号を外部に出力するとともに、該光軸変位の発生を報知するまで前記信号生成部が生成する判定信号を外部に出力する出力部とを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の光電センサ。
【請求項6】
前記異常検知信号生成部は、リセット入力部によりリセット指示が入力されるまで前記光軸に変位が生じたことを示す信号を保持し続ける、請求項1~のいずれか一項に記載の光電センサ。
【請求項7】
前記報知部は、前記光軸変位を示す信号に基づいて光軸変位の発生を表示する表示部を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の光電センサ。
【請求項8】
前記表示部には、前記光軸変位を検出した時点からの経過時間が表示される、請求項に記載の光電センサ。
【請求項9】
前記表示部には、前記モーションセンサからの情報に基づく前記光軸の変位を示す検出値が表示される、請求項7又は8に記載の光電センサ。
【請求項10】
前記表示部には、前記光軸変位の判定条件を構成する前記しきい値が表示される、請求項に記載の光電センサ。
【請求項11】
前記しきい値はユーザの操作によって変更可能であり、前記しきい値が変更されたときにはリアルタイムに前記表示部のしきい値表示が変更される、請求項10に記載の光電センサ。
【請求項12】
動作表示灯を更に備え、
前記光軸変位を示す信号に基づいて前記動作表示灯により光軸変位の発生を報知する、請求項1~11のいずれか一項に記載の光電センサ。
【請求項13】
前記モーションセンサが相対変位しないように前記光電センサに組みけられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の光電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電センサに関し、より詳しくは例えば衝撃を受けて設置時の光軸が変位したことを検出する機能を備えた光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサは、代表的には、(1)ワークの通過タイミングを検出する、(2)ワークの位置を検出する、(3)ワークの変位を検出するのに光電センサが用いられている。要求検出精度によって光電センサの光源はレーザダイオードやLEDなどが用いられる。特許文献1はレーザダイオードを光源とする光電センサを開示している。
【0003】
光電センサの運用において、光電センサは取付具を用いて所望の場所に設置され、光電センサの設置時に光軸調整が行われる。この光軸調整は、取付具を設置場所に固定するためのネジや取付具が備えた調整ネジを操作することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-127943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電センサを設置した後、何らかの原因で光軸が変位してしまった場合、変位の程度及び光電センサとワークとの間の検出距離にもよるが、この光電センサは初期の検出性能を発揮できなくなる。具体的に説明すると、何かの物体が光電センサに衝突し、これが原因で光軸が変位してしまった後では、光電センサは誤判定してしまう可能性が大きくなる。しかしながら、光軸変位の原因が多くの場合、光電センサに何かが衝突する等、瞬間的な事象による。このことから、ユーザは光軸変位が発生していることに気付かないことが多い。
【0006】
本発明の目的は、光電センサ自体が光軸変位の発生を検知する機能を備えた光電センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
検出領域に向けて測定光を投光する投光部と、
前記検出領域からの前記測定光を光電変換して、受光信号を生成する受光部と、
前記受光部により生成された前記受光信号に基づいて検出対象の状態量を測定する測定部と、
前記投光部から前記検出領域に向けて投光される測定光の光軸の変位を検知して、検知した光軸の変位を示す測定値を提供する角速度センサまたは加速度センサを含むモーションセンサと、
前記角速度センサまたは前記加速度センサからの測定値に基づき得られる、任意の設置姿勢からの前記光軸の変位を示す検出値と、しきい値との対比で前記モーションセンサにより検知された前記光軸の変位が光軸変位の判定条件を満たすか否かを判定し、該光軸の変位が光軸変位の判定条件を満たすと、光軸変位を示す信号を生成する異常検知信号生成部と、
前記光軸変位を示す信号に基づいて光軸変位の発生を報知する報知部とを備えることを特徴とする光電センサを提供することにより達成される。
【0008】
本発明では、上述したように、所定の判定条件を満たしたときに光軸変位を示す信号が生成される。この判定条件はユーザが任意に設定可能であるのが好ましい。これにより検出対象との相対的関係が変化してないにも関わらず光軸変位するような環境下、例えば検出対象と一緒に光電センサが振動するようなシステム全体が振動するような環境下において、このような振動による光軸変位を排除して運用することができる。そして、光軸変位を示す信号を利用して例えばアラームなどの報知を発する等、ユーザに光軸変位の発生を速やかに認識させることができる。光軸変位を知ったユーザは、例えば光電センサを設置し直す等、直ちに適切に対応できる。その結果、光軸が変位したままで運用し続ける事態の発生を未然に防止できる。
【0009】
本発明の作用効果及び他の目的は以下の好ましい実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の光学式三角測距センサを説明するための図である。
図2】実施例の光学式三角測距センサの一部を構成する本体部を所望の位置に固定できることを説明するための図である。
図3図2に図示の本体部の内蔵する構成要素を説明するための模式図である。
図4】実施例の光学式三角測距センサの一部を構成するヘッド部が内蔵する構成要素を説明するための図である。
図5】ヘッド部の出力部動作表示灯の構成を説明するための断面図である。
図6A】ヘッド部の制御系の一部を説明するためのブロック図である。
図6B】ヘッド部の制御系の他の部を説明するためのブロック図である。
図6C】ヘッド部の制御系の残部を説明するためのブロック図である。
図7】本体部の制御系を説明するためのブロック図である。
図8】モーションセンサとしてジャイロセンサを搭載した場合において、光軸変位の検出及びこれに伴う報知処理を説明するためのフローチャートである。
図9】本体部に搭載した表示部の表示に関し、ユーザの選択によりジャイロセンサによる測定値などの表示の一例を説明するための図である。
図10】ジャイロセンサが動作していることを動画的に表示することを説明するための図である。
図11】光軸変位の検出に用いられるしきい値の設定変更及びこの設定変更が幾つかのクラス分けした中でユーザが選択したクラスを表示することを説明するための図である。
図12】光軸変位を検出したときに、運用モードの表示から直ちに切り替わる報知表示を説明するための図であり、この表示は光軸変位を検出した時点からの経過時間の表示を含む。
図13】ジャイロセンサによる各軸の測定に基づいて光軸変位を検出し、これを報知する一連の処理を説明するためのフローチャートである。
図14】報知処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図15】ジャイロセンサによる検出に基づいて光軸変位を検出し、これを報知処理すると共に出力処理して光電センサの判定を出力する出力線を使って光軸変位の発生を出力する処理を説明するためのブロック図である。
図16】光軸変位の発生の出力を光電センサの判定を出力する出力線を使って行う処理を説明するためのブロック図である。
図17】光軸変位の発生の出力を光電センサの判定を出力する出力線を使って行うことを説明するための図である。
図18】内部処理により光軸変位発生のときの出力論理が生成されることを説明するためのフローチャートである。
図19】光軸変位発生のときの出力論理に関する一連の処理を説明するためのフローチャートである。
図20】N.O.論理に基づく通常の判定出力処理を説明するためのフローチャートである。
図21】N.C.論理に基づく通常の判定出力処理を説明するためのフローチャートである。
図22】異常時の出力論理を自動的に生成する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図23】N.C.出力論理が設定されているときにおいて、内部処理により判定出力論理に対応した異常時の出力信号が自動生成されることを説明するためのフローチャートである。
図24】モーションセンサとしてジャイロセンサ及び加速度センサを搭載したときの処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図25】加速度センサから取得した情報に基づいて光軸変位を検知するのに必要とされる基準値に関する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図26】加速度センサから取得した情報に基づいて光軸変位を検知するのに用いられる基準値の設定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0011】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、実施例の光電センサを示し、具体的には光学式三角測距センサ200を示す。図1を参照して、三角測距センサ200は、第1、第2の筐体2、4に分けて構成され、第1、第2の筐体2、4は中継ケーブル6によって接続されている。
【0012】
一般的な三角測距センサに含まれる構成要素のうち、三角測距に必要とされる光学部品及びこれに関連した素子、電源基板などの投受光に関連する必要最小限の構成要素群が第1筐体2に収容され、それ以外の構成要素つまり判定信号を生成して出力するのに必要な要素及びドットマトリックスディスプレイ、例えば有機ELディスプレイ(OELD)で構成される表示部を含むこれに関連した構成要素群が第2筐体4に収容されている。説明を分かり易くするために、第1筐体2を「ヘッド部」と呼び、第2筐体4を「本体部」と呼ぶ。
【0013】
ヘッド部2の検出信号つまり測定信号は中継ケーブル6を通じて本体部4に供給される。本体部4は、ヘッド部2から受け取った検出対象の状態量、例えばヘッド部2から検出対象までの距離、検出対象の測定面と基準面との間の距離、検出対象の第1の面と第2の面との間の距離と、判定しきい値とを比較して判定信号であるON/OFF信号を生成し、出力ケーブル8を通じてON/OFF信号を出力する。
【0014】
図2は本体部4を示す。図3は、本体部4に含まれる要素を説明するための図である。本体部4は、幾分扁平な断面略矩形の細長い外形形状を有している。本体部4には出力ケーブル8が接続され、本体部4から出力ケーブル8を通じてON/OFF信号がPLCなどの制御機器10(図1)に向けて出力される。中継ケーブル6及び出力ケーブル8は共に屈曲可能な可撓性を備え、図1に示すように中継ケーブル6を折り返して束ねることにより、ヘッド部2と本体部4との距離を任意に調整することができる。図2を参照して、本体部4は、その長手方向の両端部に溝状の首部Nを有し、この首部Nの周面は好ましくは円形であるのがよい。首部Nに結束バンドBを掛け渡すことで、ヘッド部2に近い、例えば30cm程度離れた任意の設置場所ILに固定することができる。
【0015】
本体部4はOELD12を有し、また、このOELD12が設置された面においてOELD12に隣接して本体部動作表示灯14を有する。本体部動作表示灯14は赤、緑のLEDで構成されている。赤色LED、緑色LEDは、これを同期して点灯させることにより黄色を生成することができる。更に、本体部4は、ユーザによって操作されるSETボタン16、UPボタン18、DOWNボタン20、モードボタン22を有している。ユーザは、OELD12の表示を見て、SETボタン16、UPボタン18、DOWNボタン20、モードボタン22を操作することにより、判定しきい値の調整を含む各種の設定を行うことができる。
【0016】
図3を参照して、本体部4には、マイクロコンピュータ24、入力回路26、出力回路28、第1電源回路30、メモリ32、通信部34が内蔵されている。マイクロコンピュータ24は、ヘッド部2から受け取った受光信号に基づいてワークの変位又は距離を測定する測定部及び判定部を構成する。
【0017】
図4は、ヘッド部2の内部に配設される要素を説明するための図である。ヘッド部2は、投光部52、投光レンズ54、受光レンズ56、ミラー58、撮像素子(例えばCMOS)60、受光回路62を有し、これらの要素で三角測距のための光路が形成されている。撮像素子60と受光回路62とで受光部64を構成されている。投光部52は好ましくは緑色レーザ光を発する半導体レーザ光源(InGaN/GaNの窒化ガリウム系)で構成される。ヘッド部2は、検出対象の検出領域に向けて測定光である緑色レーザ光を投光する。
【0018】
ワークに照射されたスポットの状態は測定精度に影響する。集光したスポットであるほど測定精度が良い。緑色のレーザ光は赤色よりもスポットの状態が優れている。緑色は比視感度に優れている。この特性を利用して、緑色レーザ光の強度、パワーを制限してもスポットの視認性を確保することができる。ワークの所望の位置に投光ビームが照射されていることをユーザが目視で確認できることは測定を適正に実行する上で望ましいことは言うまでもない。
【0019】
上記のスポットについて、図5を参照して説明すると、投光部52から出射された測定光は投光レンズによって絞り込まれてワークW上にスポットを形成する。ヘッド部2の設置姿勢が変化すると、投光の光軸Laxが軸振れする。この軸振れを「光軸変位」と呼ぶと、光軸変位は三角測距センサ200の測定誤差を招く。投光部52の光軸Laxが正規の位置に位置しているか否かは、ワークWの表面上のスポットの位置を目視で確認できるのが好ましい。すなわち、ワークWのスポットの位置が適正位置に位置しているか否かを目視で確認できることは適正な運用において重要である。
【0020】
ヘッド部2には第2電源回路76及び本体部4の通信部34(図3)と交信するヘッド側通信部78が内蔵されている。本体部2には第1電源回路30が設けられ、この第1電源回路30は外部から受け取った電源の電圧を調整してヘッド部2に供給し、この電源を使って緑色LD520が駆動される。ヘッド部2の第2で源回路76は電圧を調整して、調整後の電圧でモーションセンサ(ジャイロセンサ)50及びマイクロコンピュータ70、プロセッサ68が駆動され。ヘッド部2の第2電源回路78は電圧を調整し、調整後の電圧はリニアレギュレータ82によって安定化された後に、撮像素子60、受光回路62などに供給される。
【0021】
投光部52から出射した緑色レーザ光は投光レンズ54、投光窓66を通じてワークに達する。ワークの表面で反射した反射光は、受光窓68、受光レンズ56を通り、ミラー58で屈折されて受光部64で受け取られる。受光部64は、ワークの検出領域から反射した緑色レーザ光を受光し、これを光電変換して受光信号を生成する。投光部52、受光部64は、ヘッド部2に内蔵されたマイクロコンピュータ70によって制御される。
【0022】
投光部52が発する緑色レーザ光の強度及びパワーは、緑色レーザ光のスポットの位置をユーザが裸眼で確認してもユーザに影響を及ぼさないレベルに制限される。この制限は、受光部64が受け取った受光量に基づいてマイクロコンピュータ70によって行われる。緑色レーザ光の強度及びパワーの制限は、安全規格の「クラス1」又は「クラス2」を念頭に置いて規定されている。ユーザは、「クラス1」又は「クラス2」に対応できる緑色レーザ光の強度及びパワーを設定することができる。緑色は波長が500nm~555nmであり、比視感度(明比視感度及び暗比視感度)が他の色よりも優れている。したがって、緑色レーザ光の強度及びパワーを上記のレベルに制限してもスポットの視認性を確保できる。
【0023】
図4から分かるように、ヘッド部2は、投受光面2aにおいて投光窓66と受光窓68との間のデッドスペースに動作表示灯ユニット72が設けられ、この動作表示灯ユニット72の光は、投光窓66と受光窓68との間に位置する光拡散部材82を通じて放出される。動作表示灯ユニット72及び光拡散部材82は、ヘッド部2の投受光面2aに位置する第1つまり前面動作表示灯Aを構成する。
【0024】
図5はヘッド部2の断面図である。図4図5を参照して、ヘッド部2の長手方向の第1、第2の端2b、2cのうち、投光部52から離れた第2の端2cと、投受光面2aと対抗する背面2dとの間の角部2eは切り欠かれた形状を有し、この角部2eは45°の傾斜面で構成されている。図5を参照して、この角部2eにヘッド部2の出力部が配置されている。角部2eには、LED基板92が配設され、LED基板92に赤色LED94a、緑色LED94bが実装されている。赤色LED94a、緑色LED94bは第2つまり出力部動作表示灯Bの一部を構成する。
【0025】
中継ケーブル6が通過する孔には防水パッキン96が配設され、この防水パッキン96によって中継ケーブル6周りの止水が行われている。防水パッキン96は導光材料で構成されている。導光材料は、好ましくは乳白色のフッ素ゴム、酢酸ビニルゴム、シリコンゴムであるのが良い。この導光防水パッキン96の端は赤色LED94a、緑色LED94bの極く近くに位置している。赤色LED94a、緑色LED94bが発する光は導光防水パッキン96によって拡散されながら導光防水パッキン96を光らせる。ヘッド部2の第2つまり出力部動作表示灯Bは、赤色LED94a、緑色LED94bと導光防水パッキン96とで構成されている。
【0026】
ヘッド部2が備える2つの動作表示灯つまり前面動作表示灯A、出力部動作表示灯Bは、本体部4のマイクロコンピュータ24(図3)によって実質的に制御され、また、これに同期して本体部4の動作表示灯14(図2)が制御される。これら3つの動作表示灯A、B、14は同じ色で点灯又は点滅される。例えば、ON判定のときには緑色で点灯される。OFF判定のときには緑と赤の混色である黄色で点灯される。エラーが発生しているときには、赤色の点滅が行われる。
【0027】
三角測距センサ200の運用において、ヘッド部2は、投受光面2a及び中継ケーブル6が位置する角部2eが露出した状態で設置される。このことから、投受光面2aに位置する前面動作表示灯Aは勿論であるが、中継ケーブル6が位置する角部2eに位置する出力部動作表示灯Bの点灯、点滅が遮蔽されることはない。
【0028】
ヘッド部2は、傾斜面で構成された角部2eから中継ケーブル6が延びている。したがって、ヘッド部2の設置に関し、ヘッド部2の幅広の2つの側面、背面2d、第1、第2の端2b、2cの4つの面をいずれかを使ってヘッド部2を設置することができる。
【0029】
中継ケーブル6を折り返して束ねることにより、ヘッド部2と本体部4との距離を任意に調整することができ(図1)、本体部4を設置してこれを固定する場所も任意である(図2)。本体部4の設置に関し、ヘッド部2に近い場所を選んで、ユーザがOELD12を確認し易い姿勢で本体部4が位置決めされる。このOELD12と同じ面に本体部動作表示灯14が配置されていることからユーザは本体部動作表示灯14を視認し易い。
【0030】
三角測距センサ200の運用において、ヘッド部2の投受光面2aの前面動作表示灯A及び出力部動作表示灯Bと、本体部4の動作表示灯14の合計3つの動作表示灯はユーザが移動しなくても目につき易い場所に位置している。このことから、ユーザは、ヘッド部2の前面動作表示灯A及び出力部動作表示灯Bと本体部動作表示灯14のいずれかによって三角測距センサ200の動作を確認できる。
【0031】
図4を参照して、ヘッド部2はモーションセンサ50を内蔵している。モーションセンサ50はヘッド部2と一体的に設置されている。具体的には、モーションセンサ50はヘッド部2との関係で相対変位しないようにモーションセンサ50がヘッド部2に組み付けられている。これにより、ヘッド部2が外力を受けてヘッド部2の設置姿勢が変化したことをモーションセンサ50によって敏感に検知することができる。モーションセンサ50は、その典型例として、ジャイロセンサ(角速度センサ)、加速度センサ、地磁気センサを含む。ジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサは夫々固有の特徴を有している。ジャイロセンサは、ジャイロセンサが機能している最中の角速度を検出するものであるため、例えば三角測距センサ200の電源がOFFのときに、ヘッド部2に衝撃が加わったとしても、これを検出することができない。加速度センサは重力方向に対する傾きの方向及び変位量を検出することができる。したがって、三角測距センサ200の電源がOFFであろうとONであろうと、ヘッド部2の変位量を検出することができる。なお、加速度センサは、(1)重力方向を軸にする回転は検知できない、(2)検出対象と一緒に光電センサが振動する(システム全体が振動する)環境下において、光軸の変化を伴わない振動を加速度センサが検出して信号を発生するため、この信号を排除するフィルタ処理が必要である、という欠点がある。地磁気センサは、X、Yの2軸やX、Y、Zの3軸の傾きを検知できる。しかしながら、微弱な地磁気を用いているため高感度の地磁気センサを採用する必要がある。
【0032】
汎用のジャイロセンサや加速度センサを採用する場合、ジャイロセンサだけでモーションセンサ50を構成してもよいし、加速度センサだけでモーションセンサ50を構成してもよい。好ましくは、ジャイロセンサと加速度センサの組み合わせでモーションセンサ50を構成するのがよい。ジャイロセンサと加速度センサとの組み合わせでモーションセンサ50を構成する場合、互いが補完し合うように使い分けるのが好ましい。つまり三角測距センサ200の実際の運用において想定できるヘッド部2の光軸変位を検出するように局面局面で使い分けるのがよい。例えば、三角測距センサ200の起動時は加速度センサだけで光軸変位を検出することで、三角測距センサ200の電源OFF時の光軸変位を検知することができる。加速度センサが検出した変位量がしきい値よりも小さいときに、ジャイロセンサからの情報を取得してジャイロセンサによって光軸変位を検出することでヘッド部2の光軸変位の検出精度を上げることができる。
【0033】
ジャイロセンサと加速度センサの他の使い分けを例示すれば次の通りである。
(1)起動時は加速度センサで検知し、動作中はジャイロセンサのみで検知する。
(2)ジャイロセンサのみで、運用中に生じた光軸の変位を検知する。
(3)加速度センサの場合、これを搭載した光電センサを設置したとき及び設置し直したときに加速度センサに関するチューニングによって光電センサの原姿勢を決定する必要がある。そして、原姿勢を基準として加速度センサが検知した変位がしきい値以上であれば光軸変位が発生したと判定することができる。
(4)加速度センサで、瞬間的に強い信号を検知すると何らかの衝撃が発生したとして検知する。この場合、しきい値として、予め衝撃が発生したと検知するための衝撃検知しきい値をメモリに記憶しておいて、加速度センサによって検知された加速度の値が、衝撃検知しきい値以上である場合には、光電センサに衝撃が発生したと検知し、そして、アラーム報知すればよい。
【0034】
加速度センサと角速度センサ(ジャイロセンサ)を組み合わせて使用した場合、以下のような組み合わせとすることで、原姿勢からの変化及び重力方向を軸とする回転変化、光電センサに発生した衝撃を検知するようにしてもよい。
【0035】
(1)チューニングを実行することにより、光電センサの原姿勢を決定する。また、光電センサには、重力方向を軸とする回転変化を検知するための第1のしきい値と、光電センサの原姿勢からの変化を検知するための第2のしきい値、衝撃が発生したことを検知するための第3のしきい値を設定するのがよい。
(2)光電センサの起動時には、加速度センサにより加速度が取得されることで算出された傾きが、第2のしきい値以内であるか否かを判定することで、光電センサの姿勢が変化したことを検知することができる。第2のしきい値以内の場合には、そのまま光電センサの運用を続けてもよい。
(3)角速度センサにより検知される角速度が第1のしきい値以内であるか否かによって、光電センサに重力方向を軸とする回転が発生したか否かを判定することができる。
(4)加速度センサにより取得された加速度から、光軸の傾きを算出し、この傾きが第2のしきい値以上のときには光電センサの姿勢が変化したと判定し、傾きが第2のしきい値以下の場合には、光電センサの姿勢に変化なしと判定してもよい。
(5)加速度センサから取得された加速度が第3のしきい値以内かによって、衝撃が発生したか否かを判定してもよい。
以上のような構成を採用することで、光電センサの取付姿勢に変化が発生したことを検知するとともに、光電センサにどのような変位が発生したかを検知することができる。
【0036】
<ジャイロセンサを搭載>
一例としてモーションセンサ50としてジャイロセンサをヘッド部2に搭載したときの処理を説明すると、ジャイロセンサを搭載したときには、X、Y、Zの3軸の角速度を測定することができる。ジャイロセンサが測定した角速度を積分した値が回転方向の移動量つまり光軸の変位量となる。ヘッド部2のマイクロコンピュータ70で各軸の移動量を算出し、その絶対値を計算することで全体の回転量を求めることができる。この回転量の値としきい値とを比較し、しきい値よりも大きいときにはヘッド部2が何らかの原因で光軸変位した、つまりヘッド部2の設置に関する異常が発生したと判定することができる。しきい値を適切に設定することにより、検出精度に影響を及ぼさない光軸変位やヘッド部2が測定対象物と一緒に振動する適用例においてこの振動による誤判定を防止できる。
【0037】
図6A図6B図6Cは、ヘッド部2の制御系を説明するためのブロック図である。図6Aを参照して、投光部52を構成する緑色レーザダイオード(LD)520が発する緑色レーザ光(波長:500nm~555nm、好ましくは500nm~532nm)はフォトダイオード(モニタPD)522で監視され、このモニタPD522の出力電流はI/V変換回路524、A/D変換回路5526を経て投光制御部680(図6B)にフィードバックされる。緑色LD520はLD駆動回路530によって制御され(図6A)、このLD駆動回路530は投光制御部680(図6B)によって制御される。図6Aを参照して、LD駆動回路530は電流制御回路532、投光スイッチ回路534を含む。投光制御部680(図6B)からD/A変換回路536を経て制御信号が電流制御回路532(図6A)に入力され、また、投光制御部680(図6B)から投光スイッチ回路534に制御信号が入力される。これにより、緑色LD520は所定の周期で且つ所定のパワーでレーザ光を投光する。
【0038】
図6Aを参照して、LD駆動回路530を流れる電流は過電流検知回路538によって監視される。過電流検知回路538は電流検知回路1002と、比較器1004とを含み、LD駆動回路530を流れる電流が予め設定された所定値よりも大きいと、比較器1004から投光制御部680(図6B)に過電流検知信号が供給される。具体的には、緑色LD520に電流を電圧に変換して過電流検知用基準電圧と比較し、緑色LD520緑色に電流に基づく電圧が過電流検知用の基準電圧以内であるか否かの判定が比較器1004によって行われる。過電流を検知すると、投光制御部680(図6B)は、投光を停止する又は過電流を抑制する制御が実行される。
【0039】
撮像素子60(図6A)からの受光信号に基づいて、撮像素子60における投光スポットの像の位置が特定され、そして、特定した投光スポットの位置に基づいてワークの変位が測定される。受光部64(図6A)を構成する受光回路62は、COMS制御回路1010、増幅回路1012、ローパスフィルタ1014で構成され、撮像素子60から出力される受光信号は増幅回路1012で増幅される。受光部64が出力する受光情報はA/D変換回路640を経てプロセッサ68(図6B)に入力される。プロセッサ68は、ピーク受光量検出部682、ピーク位置検出部684、距離算出部686、距離判定部688、出力部690を含む。ピーク受光量検出部682は受光量のピーク値を検出し、このピーク値は投光制御部680に入力されて投光制御に反映される。受光部64(図6A)が生成した受光情報に基づいて受光量のピーク位置がピーク位置検出部684(図6B)で検出される。すなわち、ピーク位置検出部684は、受光情報に基づいて受光量のピーク位置を測定して、このピーク位置情報は距離算出部686に供給される。距離算出部686は、ピーク位置と距離との対応関係を示すテーブル692を参照して、ワークまでの距離を算出する。距離算出部686で求められたワークまでの距離は距離判定部688に供給され、距離判定部688は、メモリに保存されている判定しきい値694との対比で判定する。判定しきい値694は、ユーザが例えばUP/DOWNボタン18、20を操作することにより設定することができ、ユーザが設定した判定しきい値694はメモリに登録され、このメモリに登録されている判定しきい値694に基づいて距離判定部688の判定が実行される。ON/OFFに2値化した判定信号は出力部690、通信部80を通じて本体部4に供給される。変形例として、本体部4で判定信号を生成してもよい。また、距離算出部68で求められたワークまでの距離は出力部690、通信部80を通じて本体部4に供給される。
【0040】
受光部64が出力する受光情報は、撮像素子60の露光期間の制御及び投光パルス幅の制御に用いられ、これによりユーザが設定した安全規格のクラス1又は2に合致したレーザ光パワーを投光するように制御される。図6Bを参照して、受光部64が出力する受光情報はピーク受光量検出部686に入力され、ピーク受光量検出部686でピーク受光量が検出される。この実ピーク受光量は比較部1020に入力される。比較部1020において、実ピーク受光量は、メモリに保存されているピーク受光量の高さ方向の所定の目標領域1022と比較され、この比較に基づいて露光期間調整部1024は露光期間を調整し、この情報は露光信号生成部1026に供給され、露光信号生成部1026は露光期間情報を生成してCMOS制御回路1010(図6A)に供給する。CMOS制御回路1010は露光期間調整部1024で決定した露光期間に基づいて撮像素子60を駆動する。
【0041】
図6Bを参照して、比較部1020が生成した比較情報は投光パルス幅調整部1030に供給される。投光パルス幅調整部1030は、比較情報に基づいて投光パルス幅を調し、この情報は投光パルス生成部1040に供給され、投光パルス生成部1040は投光パルス幅を決定し、この投光パルス幅及び予め定められた投光周期に基づいて投光スイッチ回路534(図6A)が制御される。投光パルス幅調整部1030及び露光期間調整部1024はピーク受光量のフィードバック制御部1032を構成する。フィードバック制御部1032は、受光部64が出力する受光情報に基づいて露光期間、投光パルス幅、投光電流量の制御にフィードバックされる。なお、投光パルス幅はユーザが操作部402(図5)を使った入力操作によって設定可能であり、操作部402による入力は入力受付部1080(図6C)によって受け付けられる。
【0042】
すなわち、投光パルス幅調整部1030で調整された投光パルス幅は、モニタPD522(図6A)の受光量目標値1042(図6B)に反映されることにより、緑色LED520に供給する電流量の制御に対するフィードバック制御に用いられる。すなわち、モニタ受光量フィードバック制御部1050は、モニタPD522(図6A))の実モニタ受光量と、モニタ受光量目標値1042とを比較する比較部1052を有し、比較部1052による比較情報は、投光電流量制御部1054に供給される。投光電流量制御部1054は、実モニタ受光量が目標値1042よりも多いときには投光電流量を少なくし、実モニタ受光量が目標値1042よりも少ないときには投光電流量を多くする電流量制御信号を生成し、この電流量制御信号は電流制御回路532(図6A)に供給される。前述した過電流信号はリミッタ1056に供給され、リミッタ1056は過電流信号を受けると、投光電流を遮断する又は投光パルス生成部1040及び投光電流量制御部1054を規制して過電流を抑制する。
【0043】
図6Cを参照して、前述したモーションセンサ50を構成するジャイロセンサの出力は光軸変位検知部696に入力される。光軸変位検知部696は、メモリ参照部698からしきい値を読み込み、ジャイロセンサ(モーションセンサ50)の出力がしきい値以上のときに、光軸変位検知情報を出力部690に供給する。この光軸変位検知情報は通信部80を通じて本体部4に供給される。
【0044】
光軸変位検知部696は、光軸変位演算部1060、光軸変位判定部1062、光軸変位判定部1062、光軸変位検知信号部1064を含む。モーションセンサ50(ジャイロセンサ)の出力は光軸変位演算部1060に入力される。光軸変位演算部1060は、モーションセンサ50(ジャイロセンサ)の出力と、前回の演算値1070との対比で現在の光軸変位を演算し、求めた実光軸変位を光軸変位判定値1062として光軸変位信号送信生成部1064に供給する。光軸変位信号送信生成部1064は光軸変位判定値1062と光軸変位しきい値1072とを比較して、実光軸変位がしきい値1072よりも大きいときに光軸変位検知信号を生成して出力部690に供給する。出力部690は光軸変位検知信号及び光軸変位量を通信部80を通じて本体部4に供給する。
【0045】
ヘッド部2は故障検知部1086を有し、ヘッド部2の動作に異常が発生したときには表示灯制御部1082を通じて前面動作表示灯70、出力部動作表示灯76を駆動し、前面動作表示灯70、出力部動作表示灯76は赤色で点滅する。また、表示灯制御部1082は通信部80を通じて本体部4に異常発生信号を供給し、本体部動作表示灯14は赤色で点滅する。
【0046】
図7は、本体部4の制御系を説明するためのブロック図である。本体部4は、マイクロコンピュータ24、入力回路26、出力回路28、電源回路30、メモリ32、通信部34を含んでいる。図示の操作部402は、SETボタン16、UPボタン18、DOWNボタン20、モードボタン22を意味している。ユーザは操作部402を操作することにより、チューニング設定、マスク設定、ジャイロセンサ(モーションセンサ50)のしきい値設定、本体部4の出力論理の設定、クリア入力などを行うことができる。モーションセンサ50の信号に基づいて光軸変位が検出されるとアラーム信号が生成され、このアラーム信号はクリア指示があるまで保持される。ユーザが操作部402を操作すると操作受付部240でこの操作が受け付けられ、ユーザが例えば光軸変位しきい値や距離判定しきい値を変更する操作を行うとメモリ32に保存されている光軸変位しきい値、距離判定しきい値が更新される。
【0047】
通信部34を通じてヘッド部2から受け取った受光情報は、送受信部340を通じて光軸変位制御部242、表示画面生成部244、出力生成部246に供給される。ヘッド部2から受け取った距離判定データは、ユーザが設定可能な出力論理248に基づいて出力生成部246により出力情報が生成され、この出力情報は出力回路28を通じて出力ケーブル8を通じて外部機器に供給される。
【0048】
出力情報つまり判定ON/OFF信号は、上述したようにヘッド部2で生成してもよいし、本体部4で生成してもよい。ヘッド部2と本体部4とを連結する中継ケーブル6の存在によってノイズの影響を受け易い。ヘッド部2で判定ON/OFF信号を生成した場合において、中継ケーブル6を通じて本体部4に供給される判定ON/OFF信号は二値化された信号であるためノイズの影響は受け難い。他方、本体部4で判定ON/OFF信号を生成した場合には、この判定ON/OFF信号をヘッド部で生成する必要がないためヘッド部2の回路基板が複雑になることを回避でき、ヘッド部2を小型化できる。
【0049】
送受信部340を通じてヘッド部2から受け取った受光情報、光軸変位検知信号は出力生成部246に供給される。出力生成部246は、ヘッド部2から受け取った受光情報に含まれる判定情報に基づいて、上述したように、ユーザが設定可能な出力論理248に従って出力情報を生成する。この出力情報は出力回路28を通じて出力ケーブル8を通じて外部機器に供給される。また、出力回路28は光軸変位検知信号を受け取ったときには、警報信号を外部に供給する。
【0050】
送受信部340を通じてヘッド部2から受け取った光軸変位検知信号は光軸変位制御部242に供給される。光軸変位制御部242が光軸変位検知信号を受け取ったときには、光軸変位検知信号を表示画面生成部244に供給する。表示画面生成部244は光軸変位検知信号を受け取ると、直ちにOELD12に表示する表示画面を生成する。表示画面生成部244で生成した表示画面はディスプレイ制御部250に供給され、ディスプレイ制御部250は表示画面生成部244で生成した表示画面に基づいてOELD12の光軸変位発生アラーム表示の描画を制御する。
【0051】
ヘッド部2から受け取った受光情報(判定しきい値を含む)は表示画面生成部244によって受け取られる。表示画面生成部244は受光情報に基づいてOELD12に表示する表示画面を生成する。表示画面生成部244で生成した表示画面はディスプレイ制御部250に供給され、ディスプレイ制御部250は表示画面生成部244で生成した表示画面に基づいてOELD12の現在値表示の描画を制御する。
【0052】
図8はジャイロセンサを搭載したときの処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1は、三角測距センサ200のメーカが出荷時に行う初期設定の工程である。この初期設定ではジャイロセンサのサンプリング周波数や検出レンジが設定される。この初期設定はユーザが行ってもよい。設定したサンプリング周波数毎つまり所定時間毎にリセットされる。
【0053】
ステップS2において、三角測距センサ200を適正に設置したときのジャイロセンサの初期姿勢(原姿勢)を基準として3軸の角速度情報を取得する。なお、後に説明するようにクリア処理が行われ、三角測距センサ200が設置し直されたときには、この再設置後のジャイロセンサの姿勢を基準として3軸の角速度情報を取得し、現在のセンサの姿勢から一定以上の変位を検知した場合に、光軸変位が発生したことを示す情報を生成するのがよい。次のステップS3において、一定期間の3軸の角速度値を夫々平均して、3軸の現在の角速度情報を生成し、3軸の角速度情報から例えば最も大きな値を検出値とする(S4)。次のステップS5において、検出値がしきい値以上であるか否かを判別しYESつまり検出値がしきい値以上であるときには、ヘッド部2の光軸が変位して判定精度に影響を及ぼすとして、ステップS6に進んで、ON出力及び経過時間表示のための計測を開始する。このON信号及び経過時間の計測は、後に説明するクリア指示を受け付けるまで継続される。ON信号によって例えば動作表示灯A、B、14が赤色で点滅する。これにより、ユーザはヘッド部2の設置に関して異常が発生したことを知ることができる。このON出力及び光軸変位が発生した後の経過時間は本体部4のOELD12に表示される。この表示例は後に説明する。
【0054】
ステップS6のON出力及び経過時間表示のための計測は、例えばSETボタン16にクリア処理機能を割り付けている場合には、ユーザがSETボタン16を押し下げてクリア操作するまで継続される(S7、S8)。したがって、光軸に変位が発生したという報知及び経過時間の表示などは、ユーザがこれを確認してクリア操作を行うまで持続され続ける。そして、ユーザのクリア操作によって初期状態に戻る。このクリア処理は、PLC10(図1)等の外部機器からの信号入力によるクリア指示によって行ってもよい。経過時間のタイマのクリア処理は、カウントの停止とカウント値のリセットとを含む。
【0055】
ユーザは、異常の報知が行われた後、後の説明するOELD12のアラーム表示(「位置ずれ検知」の文字)を見ることで三角測距センサ200を設置し直して光軸調整することになる。クリア処理を行った後、ジャイロセンサが再スタートする際に、ジャイロセンサの原姿勢を基準として3軸の角速度情報を取得するようにしてもよいし、異常報知後に光軸調整のために三角測距センサ200を設置し直したときのジャイロセンサの姿勢を基準に3軸の角速度情報を取得するのがよい。
【0056】
図9はユーザの選択によりOELD12に表示されるジャイロバーモニタ表示の例を示す。図9において参照符号100はジャイロセンサのキャラクタを示す。ジャイロキャラクタ100は互いに対抗する矢印付きの2つの円弧で構成され、ジャイロセンサが角速度を検出している最中は、図10に図示するように例えば3つのコマを順次表示される。これにより2つの矢印付きの円弧がクルクルと回るキャラクタ100をユーザが見ることで、ジャイロセンサが角速度を検出している最中であることを知ることができる。
【0057】
図9のジャイロバーモニタ表示において、参照符号102はバー形式で示す検出値を示す。この検出バー102は左から右に延びる程、大きな値であることを意味している。参照符号104はしきい値を示す縦ラインである。図9のジャイロバーモニタ表示において、参照符号106は、ヘッド部2がこれまでに取得した角度変化(光軸変位)の最大値を示す縦ラインを示す。しきい値を示す縦ライン104との差別化のために、最大値ライン106に例えば「P」というキャラクタ108を表示するのが好ましい。
【0058】
光軸変位に関するしきい値はユーザがUPボタン18及び/又はDOWNボタン20を操作することにより変更することができる。この変更はリアルタイムに、しきい値表示ライン104に反映され、しきい値を例えば大きくする操作が行われたときにはしきい値表示ライン104が左に移動する。
【0059】
ユーザのしきい値変更を簡便化するために、しきい値の大小の設定レベルを例えば5段階のクラスに分けて、僅かな光軸変位に敏感に反応するクラス1から比較的鈍感に反応するクラス5の中からユーザが選択できるようにするのが好ましい。ユーザが選択したクラスを例えば「1」乃至「5」のキャラクタ110で表示するのが好ましい。図11の表示例は、しきい値ライン104の上にクラスキャラクタ110を表示する例を示す。図11に図示のしきい値ライン104の上の「5」のクラスキャラクタ110は、ユーザが選択したクラスが「5」であることを示している。
【0060】
ヘッド部2のマイクロコンピュータ70の処理において、前述したように、ジャイロセンサ50が検出した角速度に基づいて算出した変位量がしきい値よりも大きいときには、異常発生信号として、光軸に変位が発生したことを示す異常検知信号を生成される。この異常発生信号は、光軸に変位が発生した場合、ユーザによるリセット入力または外部機器によるリセット入力を受け付けるまで維持される。
【0061】
異常検知信号は通信部78を通じて本体部4に供給され、本体部4は異常発生信号を受けて、好ましくはOELD12の表示が通常の運用表示から図12に図示のアラーム表示に直ちに切り替わる。アラーム表示は「位置ずれ検知」を文字で表示した第1アラーム表示モードと、ジャイロセンサが検出した角速度に基づく変位量がしきい値以上であることを検出した時点からの経過時間を表示する第2アラーム表示モードを含む。この第1、第2のアラーム表示モードを交互に表示するのが好ましい。
【0062】
ヘッド部2のマイクロコンピュータ70が時計機能を有しているときには、アラーム発生時つまりジャイロセンサが検出した角速度に基づく変位量がしきい値以上であることを検出した時点の時刻を表示してもよい。また、このアラーム発生時刻の表示と上述した経過時間の表示とを共にOELD12に表示してもよいし、アラーム発生時刻の表示と経過時間の表示とを交互に表示してもよい。
【0063】
図13は、上述した図8のステップS2~S6に関する処理を説明するためのフローチャートである。図13を参照して、ジャイロセンサ50が各軸の角速度ωを測定したら(S11)、ジャイロセンサから角速度ωの測定値を取得し(S12)、フィルタ処理を行う(S13)。フィルタ処理は、取得した各軸の角速度ωの急峻な変化を時間方向になまらせるために例えば移動平均処理が行われる。このフィルタ処理した各軸の測定値に基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの判定が行われる(S14)。光軸変位の検知条件を満たすか否かの判定は、前述したしきい値との比較(図8のS5)で行われる。
【0064】
前述した図8のステップS4において、3軸の角速度情報から最も大きな値を検出値としたが、これに代えて次の値を検出値としてもよい。
(1)各軸の角速度ωの合成値、例えば各軸の角速度ωの二乗和を検出値とする。
(2)各軸の角速度ωを積分して各軸の角度θを算出し、各軸の基準角度θrからの角度変化Δθの中から最大の値を検出値として選択してもよい。ここに基準角度θrはチューニングにより設定してもよいし、各軸の角度θの移動平均値を基準角度θrとしてもよい。
(3)各軸の基準角度θrからの角度変化Δθの合成値を検出値としてもよい。
【0065】
図13において、光軸変位の検知条件を満たすときには、ステップS15からステップS16に移行して報知処理が行われる。この報知処理は、図8のステップS6で説明したON出力、動作表示灯A、B、14の赤色点滅、OELD12のアラーム表示(図12)を含む。
【0066】
<報知処理>
図14は報知処理の処理内容を説明するためのフローチャートである。ステップS21において光軸変位の検知フラグをONする。そして、ステップS22において、検知フラグのONと同期してタイマを起動する。このタイマによって、前述した経過時間を計測する。また、ステップS23において、光軸変位を検知したことをユーザに知らせるための報知処理を行う。この報知処理には、図12を参照して説明した経過時間の表示が含まれる(S24)。この報知処理はユーザのボタン操作又は外部機器からのクリア指示があるまで継続される(S25)。クリア指示があれば、ステップS26に移行して、光軸変位の検知フラグをOFFする(S26)。また、タイマをクリアし(S27)、動作表示灯A、B、14の赤色点滅を停止し、OELD12の「位置ずれ検知の文字表示」及び「経過時間」の表示がクリアされ(S28)、OELD12の表示は通常の運用時の表示に戻る。
【0067】
図15は、上記の処理を説明するため機能ブロック図である。ヘッド部2のジャイロセンサ(モーションセンサ50)の出力に基づいて生成された光軸変位発生検出信号は、ヘッド部側通信部78と本体部側通信部34との通信によって本体部4に供給され、本体部4において、前述した報知処理及び出力処理が行われる。
【0068】
実施例の三角測距センサ200は、光軸変位発生検出信号が出力ケーブル8を通じてPLCなどに供給される。出力ケーブル8は、判定用出力線と、光軸変位発生信号をPLCなどに供給する異常検知用出力線とを含んでいるのが好ましい。光軸変位が発生したとしても、これが微小であれば、PLCなどの制御は停止させたくない場合も存在する。その一方で、どのタイミングから光軸変位が発生していたかを追跡できるのが好ましい。このためには、判定用と異常検知用の出力線は独立しているのが良く、PLCの制御動作とは独立して光軸変位の発生を確認できるのが良い。
【0069】
図16は、出力ケーブル8を通じて光軸変位発生をPLCなどに供給することに関連したブロック図である。光軸変位発生検出は一例であり、一般的な異常検出の判定及びその出力についても同様であると理解されたい。出力処理に関し、独立した出力線に異常検知状態出力を割り当てることなく、判定出力用の出力線を使って異常検知の出力を行うのが出力線の数を極力少なくする観点から好ましい。図16のブロック図は、判定出力用の出力線を使って異常検知の出力を行う例を示している。
【0070】
前述したように、三角測距センサ200は、ON/OFFの判定処理部202と、光軸変位発生検出などの異常検出処理部204とを有している。判定処理部202の出力は異常時出力反映部206によって、ON/OFF判定出力に異常検出出力が反映されて、その結果が出力処理部208を通じて出力線210を通じてPLCなどに供給される。出力線210として判定出力用の出力線が用いられる。異常時出力反映部206は、異常検出処理部204から異常発生信号を受け取ると、論理「OFF」から強制的に論理「ON」に、又は論理「ON」から強制的に論理「OFF」に切り替える処理が実行される。これにより、出力処理に関し、独立した出力線に異常検知状態出力を割り当てることなく、判定出力用の出力線210を使って異常検知の出力を行うことができる。これにより、出力ケーブル8の出力線の数を少なくすることができる。
【0071】
ユーザは、異常発生時に出力をどのように動作させるかを設定できるのが好ましい。選択肢として例えば3つの選択肢を用意するのがよい。第1の選択肢は「無効」であり、第2の選択肢は「強制ON」であり、第3の選択肢は「強制OFF」である。
【0072】
図17は、ユーザが「強制ON」を選択した場合を説明するための図である。異常発生を検出するとこれに同期して、判定出力用の出力線210を通じた出力が「OFF」から「ON」に強制的に切り替わる。これにより、運用時の通常の動作状態とは異なる出力状態を作ることで異常検知情報を報知することができ、また、PLCbなどの外部機器で異常検知を確認でき、異常発生のタイミングを追跡できる。なお、この判定出力用の出力線210を使った異常検知信号の出力は、光軸変位の検知に限らず、ジャイロセンサの破損エラー、誤配線エラーなどの汎用の異常状態を含む。
【0073】
判定出力用の出力線を通じた異常検知出力はユーザによる選択に限らず、本体部4の内部処理で異常が発生したときに、判定出力論理の設定に連動して自動的に強制ON又は強制OFFを規定するようにしてよい。図18はこのオート処理を説明するためのフローチャートである。判定出力論理が「N.O.」に設定されているときには、ステップS31からステップS32に移行し、通常時はON判定のときには、ステップS33に進んでON出力される。OFF判定のときにはステップS34をパスしてステップS35でOFF出力される。異常が発生するとステップ34からステップS36に進んで強制的に例えばON出力される。
【0074】
出力論理が「N.C.」に設定されているときには、ステップS31からステップS37に移行し、通常時はON判定のときには、ステップS38に進んでOFF出力される。OFF判定のときにはステップS39をパスしてステップS40でON出力される。異常が発生するとステップ39からステップS41に進んで強制的に例えばOFF出力される。
【0075】
上述したように、判定出力用の出力線を通じて異常検知出力を行うことで、異常検知出力のための出力線を追加で設ける必要が無くなる。この出力処理に関し、図19を参照して一連の処理を説明する。
【0076】
ステップS41において判定に関する判定出力論理の設定が行われ、次のステップS42において、異常検知したときの異常検知出力論理の設定が行われる。ステップS43において、判定に関する出力論理が「N.O.」に設定されているときには、ステップS44に進み、異常検知出力論理が有効か否かを判別し、「有効」であるときには、ステップS45に進んで異常検知出力論理として「強制ON」が選択されているか否かを判定し、YESつまり「強制ON」が選択されているときには、ステップS46乃至S48の処理が行われる。このステップS46乃至S48は、図8などで説明したジャイロセンサが検出した各軸の角速度ωに基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの処理と同じである。ステップS48において、光軸変位の検知条件を満たすときにはステップS49に進んで、図16を参照して説明したように判定出力としてON信号が生成される。つまり、強制的にON信号が生成される。このON信号はクリア指令があるまで継続される(S50)。
【0077】
上記ステップS48において、光軸変位の検知条件を満たさないときには、ステップS51に進んで、N.O.論理に基づいて通常の判定出力処理が実行される。図20は、N.O.論理に基づく通常の判定出力処理を説明するためのフローチャートである。図20を参照して、ステップS511において、受光部64からの受光信号に基づいて測定対象の状態量、例えばワークまでの距離を測定し、次のステップS512において、測定した測定対象の状態量に基づいて判定条件を満たすか否か、つまり状態量がしきい値よりも大きいか否かを判定し、判定条件を満たすときには、ステップS513からステップS514に進んで判定出力としてON信号を生成する。ステップS513において、判定条件を満さないときには、ステップS515に進んで判定出力としてOFF信号を生成する。
【0078】
上記ステップS44において、異常検知出力論理が無効のときには、ステップS52に進んで、図20を参照して前述したN.O.論理に基づいて通常の判定出力処理が実行される。
【0079】
図19のステップS45において、強制OFFが選択されているときには、ステップS53に移行して、強制OFF設定での出力処理が行われる。この強制OFF設定での出力処理では、前述したステップS49に相当する処理として、判定出力としてOFF信号が生成される。つまり、強制的にOFF信号が生成される。このOFF信号はクリア指令があるまで継続される。
【0080】
図19のステップS43において判定出力論理がN.C.論理が設定されているときにはステップS54に進んで、N.C.論理に基づいて出力処理が実行される。図21は、N.C.論理に基づく通常の判定出力処理を説明するためのフローチャートである。図21を参照して、ステップS541において、受光部64からの受光信号に基づいて測定対象の状態量を測定し、次のステップS542において、測定した測定対象の状態量に基づいて判定条件を満たすか否か、つまり状態量がしきい値よりも大きいか否かを判定し、判定条件を満たすときには、ステップS543からステップS544に進んで判定出力としてOFF信号を生成する。ステップS543において、判定条件を満さないときには、ステップS545に進んで判定出力としてON信号を生成する。
【0081】
図22は、異常検知出力論理を自動的に生成する処理の一例を説明するためのフローチャートである。三角測距センサ200の判定結果の出力論理として、N.O.出力論理が設定されているときには、異常検知出力は強制的にONされる。他方、N.C.出力論理が設定されているときには、異常検知出力は強制的にOFFされる。
【0082】
前述した図19のステップS45において、異常検知出力論理がユーザによって設定されていないときには、ステップS45から図22に示す処理が行われ、内部処理により判定出力論理に対応した異常時の出力信号が自動生成される。図22を参照して、ステップS61において、通常の判定における出力論理の変更の有無が判定され、N.O.出力論理が設定されているときには、ステップS62乃至S64の処理が行われる。このステップS62乃至S64は、図8などで説明したジャイロセンサが検出した各軸の角速度ωに基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの処理と同じである。ステップS64において、光軸変位の検知条件を満たすときにはステップS65に進んで、判定出力としてON信号が生成される。つまり、光軸変位発生を意味するON信号が強制的に生成される。このON信号はクリア指令があるまで継続される(S66)。
【0083】
ステップS64において、光軸変位の検知条件を満たさないときにはステップS67に進んで、図20を参照して説明したN.O.論理に基づいて通常の判定出力処理が実行される。前述したステップS61において、N.C.出力論理が設定されているときには、図23に示す処理が行われ、内部処理により判定出力論理に対応した異常検知出力信号が自動生成される。
【0084】
ステップS68において、N.C.出力論理が設定されていると判定されたときにはステップS69乃至S71の処理が行われる。このステップS69乃至S71は、図8などで説明したジャイロセンサが検出した各軸の角速度ωに基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの処理と同じである。ステップS71において、光軸変位の検知条件を満たすときにはステップS72に進んで、判定出力としてOFF信号が生成される。つまり、光軸変位発生を意味するOFF信号が強制的に生成される。このOFF信号はクリア指令があるまで継続される(S73)。ステップS71において、光軸変位の検知条件を満さないときには、ステップS74に進んで、図21を参照して説明したN.C.論理に基づく通常の出力処理が行われる。
【0085】
<ジャイロセンサ及び加速度センサを搭載>
モーションセンサ50としてジャイロセンサ及び加速度センサをヘッド部2に搭載したときの処理を説明すると、ジャイロセンサは三角測距センサ200の電源がOFFのときのヘッド部2の光軸変位や緩慢な長時間に亘る光軸変位を検知することができない。加速度センサは、基準となる原姿勢又はヘッド部2を設置し直した後の加速度センサの姿勢に基づくチューニング後の変位(「傾き」という。)を検知できる。したがって、加速度センサによって、ジャイロセンサによって検知できない時のヘッド部2の光軸変位を検知することができる。この加速度センサによる補完により、通常の運用におけるヘッド部2の想定可能な光軸変位を検知できる。すなわち、ヘッド部2を設置するときに、その光軸調整のために回転角度を調整することができる取付具によって所望の場所にヘッド部2が固定される。したがって、想定可能な光軸変位は回転方向の動きを伴う。回転方向の光軸変位の動きは、ジャイロセンサ、加速度センサの相互補完によって検知可能である。
【0086】
図24は、モーションセンサ50としてジャイロセンサ及び加速度センサを搭載したときの処理の一例を説明するためのフローチャートである。ステップS81においてユーザが三角測距センサ200の電源をONすると、ジャイロセンサからの現在の3軸の角速度情報を取得する(S82)。次に、加速度センサからの加速度情報を取得し、この加速度情報から傾きを算出する(S83)。傾きの基準値が記憶されているときにはステップS84からステップS85に進んで、算出された傾きと基準値との差がしきい値以上であるか否かを判定する。この判定において、加速度センサの原姿勢に基づいて基準値を決定してもよいし、その後、光軸調整のために三角測距センサ200を設置し直したときの加速度センサの姿勢に基づくチューニング後の値に基づいて決定してもよい。
【0087】
ステップS85において、YESつまり算出された傾きと基準値との差がしきい値以上であるときには、ステップS86に進んで、異常発生(光軸変位発生)のON信号の出力と共に、または、これに代えてOELD12の表示が図12に図示のアラーム表示に直ちに切り替わる。また、前述した経過時間を計測するためのタイマが起動され、アラーム表示にリアルタイムに経過時間が表示される。この報知処理はユーザのボタン操作又は外部機器からのクリア指示があるまで継続される(S87)。クリア指示があれば、ステップS88に移行して、異常検知出力がOFFされ、また、経過時間を計測するタイマがクリアされる。また、動作表示灯A、B、14の赤色点滅を停止し、OELD12の「位置ずれ検知」の文字表示及び「経過時間」の表示がクリアされる。
【0088】
前記ステップS84において、NOつまり傾きの基準値が記憶されていないときには、ステップS89に進んでチューニング要求の有無が判定され、チューニング要求があればステップS90に進んでチューニング要求時に算出された傾きを基準値として記憶する。
【0089】
前記ステップS85において、NOつまり前記算出された傾きと基準値との差がしきい値よりも小さいときには、ステップS91に進んで、ジャイロセンサから3軸の角速度情報を取得し、次のステップS92において、一定期間の3軸の角速度値を夫々平均して、3軸の現在の角速度情報を生成する。次のステップS93において、3軸の角速度情報から例えば最も大きな値を検出値とする(S93)。次のステップS94において、検出値がしきい値以上であるか否かを判別しYESつまり検出値がしきい値以上であるときには、ヘッド部2の光軸が所定値によりも変位したとして、ステップS86に進んで、検知出力をONすると共に報知処理が実行される。このONの検知出力は前述のクリア指示を受け付けるまで継続される。
【0090】
図25は加速度センサから取得した情報に基づいて光軸変位を検知するのに必要とされる基準値に関する処理の一例を説明するためのフローチャートである。ステップS101において、基準値がチューニング済みか否かの判定が行われ、基準値が記憶されていれば、ステップS102に進んでチューニング指示の有無が判定される。チューニング指示が無ければ、ステップS102からステップS103に進んで、加速度センサにより各軸の加速度aが測定され、次のステップS104において、加速度センサから各軸の加速度aの測定値を取得し、この測定値はフィルタ処理される(S105)。このフィルタ処理は、取得した各軸の加速度aの急峻な変化を時間方向になまらせるために例えば移動平均処理が行われる。
【0091】
このフィルタ処理した各軸の加速度aの測定値に基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの判定が行われる(S106)。光軸変位の検知条件を満たすか否かの判定は、しきい値との比較で行われる。光軸変位の検知条件を満たすときには、ステップS108で前述した強制ON出力、報知処理が行われる。
【0092】
上記ステップS106において、例えば下記の2ついずれかに基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かの判定が行われる。
(1)各軸の加速度aと対応する各軸の基準値arの差分値Δaの中から最大の測定値を選択して、この最大の測定値に基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かを判定する。
(2)各軸の差分値Δaの合成値、例えば各軸の差分値Δaの二乗和を測定値として算出して、算出した測定値に基づいて光軸変位の検知条件を満たすか否かを判定する。
【0093】
ステップS102およびステップS109においてチューニング指示があるときには、ステップS110に進んでチューニング処理が実行される。図26はチューニング処理の一例を説明するためのフローチャートである。図26を参照して、ステップS121において、加速度センサにより各軸の加速度aを測定する。次にチューニング指示に従うタイミングで、加速度センサからの各軸の加速度aを取得する(S122)。この取得した各軸の加速度aをフィルタ処理し(S123)、そしてチューニングが完了したらステップS124からステップS125に進んで、チューニングにより得られた各軸の加速度aを基準値として保存する。
【0094】
以上、光学式三角測距センサ200のヘッド部2を例に具体的に説明したが、本発明はヘッド部2と本体部4とを一つの筐体に収容した三角測距センサに適用できるのは勿論であり、また、本発明は、光量タイプ、TOF(Time Of Flight)、距離設定型変位センサを含む光電センサにも適用可能である。また、本発明は、投光部52と受光部64とを一つの筐体2に収容した反射型の光電センサに限定されない。投光部と受光部とを別の筐体に収容した透過型の光電センサにも適用可能であり、この場合、少なくとも投光部にモーションセンサ50を設置するのがよい。
【符号の説明】
【0095】
200 光学式三角測距センサ
2 光学式三角測距センサのヘッド部
4 光学式三角測距センサの本体部
12 本体部のOELD(表示部)
14 本体部の動作表示灯
18 UPボタン
20 DOWNボタン
28 本体部の出力部
50 モーションセンサ
52 ヘッド部の投光部
64 ヘッド部の受光部
70 マイクロコンピュータ
164 光軸変位信号生成部
A ヘッド部の前面動作表示灯ユニット
B ヘッド部の出力部動作表示灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25
図26