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特許7518656架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020072443
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021169549
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】金澤 太
(72)【発明者】
【氏名】杉江 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】小宮 純二
(72)【発明者】
【氏名】濱田 哲史
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222541(JP,A)
【文献】特開2000-313763(JP,A)
【文献】特開平01-163224(JP,A)
【文献】特開昭56-078028(JP,A)
【文献】特開2013-091769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と塩基性マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物とを含む発泡性組成物を発泡してなり、
前記発泡性組成物における前記II族元素化合物の含有量が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.7~6.5質量部であり、
前記II族元素化合物の平均粒子径が30~80μmであり、
独立気泡率が80~100%であり、
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂を含み、
前記ポリエチレン系樹脂が、炭素数6以上のハイヤーαオレフィンとエチレンとの共重合体の直鎖状低密度ポリエチレンである架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂が、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択される少なくとも1種のαオレフィンを含む炭素数6以上のハイヤーαオレフィンとエチレンとの共重合体の直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含み、
前記ポリオレフィン系樹脂における前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が5~85質量%である請求項2に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記II族元素化合物が酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物である請求項1~のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
前記発泡性組成物がアゾ化合物を含む請求項1~のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項6】
見掛け密度が20~220kg/mである請求項1~のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体。
【請求項8】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に表皮材が積層された請求項に記載の成形体。
【請求項9】
自動車内装材である請求項又はに記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、優れた耐熱性及び断熱性を有しているので、従来から、断熱材、クッション材等として広範な分野で使用されている。特に、自動車用途では、天井、ドア、インストルメントパネル、クーラーカバー等の断熱材及び内装材として使用されている。
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂及び発泡剤を含有する組成物を加熱して発泡させる方法により製造されることが多いが、ポリオレフィン系樹脂の分解物に起因すると考えられる臭気が問題になることがある。例えば、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形体を自動車内装材として組み込んだ自動車内において、臭気が発生し、ユーザーが不快に感じることが多い。
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の臭気を低減する技術として、例えば、活性炭素などの脱臭剤を用いる方法(特許文献1)、カーボンブラックなどを臭気抑制剤として用いる方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-60774号公報
【文献】特開平11-263863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形体からなる自動車内装材を備えた自動車内等において、特に夏場の暑い時期には、従来技術を用いても臭気を十分に低減することができないという問題がある。
そこで、本発明は、臭気の発生を低減できる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定のII族元素化合物を発泡性組成物に含有させることにより、発泡体の臭気の発生を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[13]に関する。
[1]ポリオレフィン系樹脂と塩基性マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物とを含む発泡性組成物を発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[2]前記発泡性組成物における前記II族元素化合物の含有量が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1~7.0質量部である上記[1]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[3]前記II族元素化合物の平均粒子径が1.0~120μmである上記[1]又は[2]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む上記[1]~[3]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂における前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が5~85質量%である上記[4]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[6]前記ポリエチレン系樹脂が、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択される少なくとも1種のαオレフィンとエチレンとの共重合体の直鎖状低密度ポリエチレンである上記[4]又は[5]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[7]前記II族元素化合物が酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物である上記[1]~[6]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[8]前記発泡性組成物がアゾ化合物を含む上記[1]~[7]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[9]見掛け密度が20~220kg/mである上記[1]~[8]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[10]独立気泡率が80~100%である上記[1]~[9]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体。
[12]架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に表皮材が積層された上記[11]に記載の成形体。
[13]自動車内装材である上記[11]又は[12]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、臭気の発生を低減できる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体]
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂と塩基性マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物とを含む発泡性組成物を発泡してなるものである。
【0008】
(ポリオレフィン系樹脂)
上記発泡性組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有する。ポリオレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。軽量で安価であり、耐熱性も優れているという観点から、これらのポリオレフィン系樹脂の中で、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。また、さらに耐衝撃性の観点から、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を組み合わせたものがさらに好ましい。
【0009】
<ポリプロピレン系樹脂>
ポリプロピレン系樹脂には、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが好ましい。したがって、エチレン-プロピレンランダム共重合体がより好ましい。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、好ましくは5~85質量%である。ポリプロピレン系樹脂の含有量を5質量%以上とすることで、機械強度、及び高温下における成形性などを確保しやすくなる。また、85質量%以下とすることでポリエチレン系樹脂などの他の樹脂を一定量配合でき、柔軟性などを確保しやすくなる。ポリプロピレン系樹脂の含有量は、上記観点から、より好ましくは20~75質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂は、その230℃におけるメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)が0.1~20g/10分であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRを上記範囲内とすると、樹脂の流れ性が良好になる一方で、樹脂の流動性が高くなりすぎるのを防止し、後述する発泡性組成物を発泡体シートに加工する際の加工性が良好になる。これら観点から、ポリプロピレン系樹脂の上記MFRは、0.3~15g/10分であることより好ましく、0.3~5g/10分であることがさらに好ましい。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0012】
<ポリエチレン系樹脂>
ポリエチレン系樹脂には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。臭気発生低減の観点から、これらのポリエチレン系樹脂の中で、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンとエチレン以外のαオレフィンとの共重合体が挙げられる。エチレンと共重合するコモノマーには、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらのコモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。臭気発生低減の観点から、これらのコモノマーの中で、1-ヘキセン及び1-オクテンがより好ましい。
【0013】
直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.880~0.940g/cm3のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.900~0.930g/cm3のものである。なお、密度とは、JIS K 7112に準拠して測定したものである。
また、加工性及び柔軟性などの観点から、ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.5~20g/10分が好ましく、1.0~10g/10分がより好ましく、1.5~5.0g/10分がさらに好ましい。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度190℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、好ましくは15~95質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量を5質量%以上とすることで柔軟性を確保しやすくなる。また、95質量%以下とすることでポリプロピレン系樹脂などの他の樹脂を相当量配合でき、発泡体シートの機械強度などを確保しやすくなる。ポリエチレン系樹脂の含有量は、上記観点から、より好ましくは25~80質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%である。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂としては、上記以外の樹脂成分を使用してもよい。具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、エチレン-α-オレフィン系共重合ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレ-ト共重合体、及び無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂におけるポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外の樹脂成分の割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
また、本発明の効果を阻害しない限り、発泡性組成物の樹脂成分として、スチレン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂は、樹脂成分全量に対して、例えば10質量%以下含有され、好ましくは5質量%以下含有される。
【0016】
(II族元素化合物)
上記発泡性組成物は、塩基性マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物を含有する。これにより、発泡剤を効率的に発泡させることができ、発泡剤が分解する際、臭気の原因となる物質の生成を抑制することができる。また、これらのII族元素化合物は、発泡剤の分解温度を大きく低下させずに、発泡剤を効率的に発泡させることができる。これにより、発泡性組成物がポリプロピレン系樹脂等の融点の高いポリオレフィン系樹脂を含む場合でも、発泡性組成物の混練中に発泡剤が発泡することを抑制できる。
例えば、発泡剤がアゾ化合物の場合、分解生成ガスは主に窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素及びアンモニアであり、分解生成残渣は、主に尿素、ウラゾール、シアヌル酸及びビウレアである。そして、これらの中で尿素が臭気発生の主な原因であると考えられる。上記II族元素化合物は発泡剤を効率よく発泡させ、これにより、臭気発生の原因物質の生成を抑制できる。臭気発生低減の観点から、これらのII族元素化合物の中で、塩基性マグネシウムが好ましく、塩基性マグネシウムの中でも酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、酸化マグネシウムがさらに好ましい。なお、発泡剤の発泡が不十分であると、臭気発生の原因物質の生成量が大きくなる。
【0017】
上記II族元素化合物の平均粒子径は、好ましくは1.0~120μmである。上記II族元素化合物の平均粒子径が1.0μm以上であると、発泡性組成物中にII族元素化合物を均一に分散させることが容易になる。また、発泡体シートの発泡倍率を高めることができる。上記II族元素化合物の平均粒子径が120μm以下であると、II族元素化合物の比表面積が大きくなるので、II族元素化合物による臭気発生に対する抑制の効果がより大きくなる。このような観点から、上記II族元素化合物の平均粒径は、より好ましくは5.0~110μmであり、さらに好ましくは10~100μmであり、よりさらに好ましくは20~90μmであり、特に好ましくは30~80μmである。
なお、II族元素化合物の平均粒子径は、メディアン径(D50)であり、具体的にはレーザー回折式粒度分布測定器「HELOS(H2731)」(sympatec社製)により、分散圧:2.00bar、引圧:72.00mbarで測定したメディアン径(D50)である。
【0018】
発泡性組成物における上記II族元素化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~7.0質量部である。上記II族元素化合物の含有量が0.1~7.0質量部であると、発泡体シートの臭気発生をさらに抑制できる。このような観点から、発泡性組成物における上記II族元素化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、より好ましくは0.7~6.5質量部であり、さらに好ましくは1.0~6.0質量部であり、よりさらに好ましくは1.5~5.0質量部である。
【0019】
(酸化防止剤)
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に用いる発泡性組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、ポリオレフィン系樹脂の酸化劣化を抑制することができるともに、臭気の発生をさらに低減できる。発泡性組成物中の酸化防止剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~5.0質量部である。酸化防止剤の含有量をポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5質量部以上とすることで、ポリオレフィン系樹脂の酸化劣化がより抑制され、臭気の発生をより低減することができる。また、酸化防止剤の含有量をポリオレフィン系樹脂100質量部に対して5.0質量部以下とすることで、過剰な酸化防止剤が臭気物質になることを抑制することができる。このような観点から、発泡性組成物中の酸化防止剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、より好ましくは1.0~4.0質量部である。
【0020】
酸化防止剤の種類は特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、臭気発生低減の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
酸化防止剤は、1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0021】
(架橋助剤)
発泡性組成物には、架橋助剤を含有することが好ましい。発泡性組成物中の架橋助剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~10.0質量部であり、より好ましくは2.0~7.0質量部である。
【0022】
架橋助剤としては、例えば、3官能(メタ)アクリレート系化合物、2官能(メタ)アクリレート系化合物などの多官能(メタ)アクリレート系化合物、1分子中に3個の官能基を持つ化合物などが挙げられる。これら以外の架橋助剤としては、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレート系化合物としては、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
1分子中に3個の官能基を持つ化合物としては、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、臭気発生低減の観点から、多官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、2官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、1,9-ノナンジオールジメタクリレートがさらに好ましい。
【0023】
(発泡剤)
発泡性組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、発泡性組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を発泡性組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好適に使用され、例えば分解温度が140~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0024】
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)及びアゾビスイソブチロニトリル(AZDN)がより好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)がさらに好ましい。
これらの発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
発泡剤の発泡性組成物への添加量は、発泡体の見掛け密度を上記範囲にしやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~20質量部であり、より好ましくは2.0~15質量部であり、さらに好ましくは3.0~12質量部である。
【0025】
<その他添加剤>
発泡性組成物には、必要に応じて、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、防錆剤、分解温度調整剤等の発泡体に一般的に使用する添加剤を配合してもよい。
【0026】
(見掛け密度)
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の見掛け密度は、特に限定されないが、好ましくは20~220kg/mである。見掛け密度が20kg/m以上であると、発泡体の機械的強度を良好にすることができ、見掛け密度が220kg/m以下であると、発泡体の柔軟性が確保しやすくなる。このような観点から、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の見掛け密度は、より好ましくは25~150kg/mであり、さらに好ましくは30~120kg/mである。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の見掛け密度は後述の実施例に記載の方法で測定される。
見掛け密度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0027】
(独立気孔率)
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の独立気孔率は、好ましくは80~100%である。独立気孔率が80~100%であると、臭気の発生をより低減することができる。
発泡体の独立気孔率は、臭気発生低減の観点から、より好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは93~100%である。
独立気泡率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
(厚さ)
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の厚さは、特に制限されないが、1.0~15mmが好ましく、2.0~10mmがより好ましい。
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の厚さは後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0029】
(架橋度)
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の架橋度は、好ましくは15~65質量%である。架橋度が20~62質量%であると、発泡体の機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができる。発泡体の機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができるという観点から、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の架橋度は、より好ましくは25~60質量%であり、さらに好ましくは30~57質量%である。
架橋度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0030】
[架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法]
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する製造方法は、例えば、下記の工程1~工程3の工程を含んでもよい。
(工程1)ポリオレフィン系樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程
(工程2)該発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程
(工程3)架橋発泡性シートを発泡させて、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する工程
【0031】
(工程1)
工程1は、ポリオレフィン系樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程である。発泡性組成物を、バンバリーミキサーや加圧ニーダ等の混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティング等によって連続的に押し出すことによりポリオレフィン系樹脂発泡性シートを製造することができる。発泡性組成物を混練するときの温度は、好ましくは170~210℃であり、より好ましくは175~205℃である。発泡性組成物には、ポリオレフィン系樹脂と塩基性マグネシウム及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のII族元素化合物とが含まれる。
【0032】
(工程2)
工程2は、発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程である。
電離性放射線を照射する際の照射線量は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の臭気の発生を低減するという観点から、好ましくは1.2~2.5Mradであり、より好ましくは1.3~2.3Mradであり、さらに好ましくは1.4~2.1Mradである。
臭気発生をより低減する観点から、発泡性組成物中の架橋助剤の量を上記範囲に調整すると共に、電離性放射線の照射条件を上記範囲とすることが好ましい。
電離性放射性の照射は、発泡性シートの一方の面に対して行ってもよいし、両方の面に対して行ってもよいが、臭気発生低減の観点から、両方の面に対して行うことが好ましい。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
【0033】
(工程3)
工程3は、架橋発泡性シートを発泡させて、シート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する工程である。架橋発泡性シートを発泡させる方法としては、オーブンのようなバッチ方式や、架橋発泡性シートを、連続的に加熱炉内を通す連続発泡方式を挙げることができる。
架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、160~300℃であることが好ましい。160℃以上にすることにより、発泡を進行しやすくすることができ、300℃以下とすることにより、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の加熱による劣化を抑制することができる。発泡剤を効率的に発泡させて臭気発生の原因となる物質の生成を抑制するという観点から、架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、高い方が好ましい。このような観点から、架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は200℃以上がより好ましく250℃以上がさらに好ましく、260℃以上がよりさらに好ましく、270℃以上が特に好ましい。また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の加熱による劣化を抑制する観点から290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましい。
上記温度に調整するための方法としては、特に制限されないが、熱風を用いてもよいし、赤外線を用いてもよい。
また、発泡後、又は発泡させながら、MD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に、架橋発泡性シートを延伸してもよい。
【0034】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなるものである。例えば、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を公知の方法で成形することにより、本発明の成形体を得ることができる。成形体を製造するに際し、基材、表皮材等の他の素材を架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に積層し貼合わせて製造してもよい。本発明の成形体は、好ましくは架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に表皮材が積層されたものである。
【0035】
表皮材としては、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー、金属等が挙げられる。また、本革や、石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠が施された成形体としてもよい。
表皮材を架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に貼合わせて成形することで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に表皮材が積層された成形体を得ることができる。
表皮材を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法及び蒸着法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
【0036】
基材は成形体の骨格となるものであり、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。基材用の熱可塑性樹脂としては、上述したポリオレフィン系樹脂、エチレンとα-オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体、ABS樹脂、及びポリスチレン樹脂等を適用することができる。
【0037】
本発明の成形体の成形方法としては、スタンピング成形法、真空成形法、圧縮成形法、射出成形法等が挙げられる。これらの中ではスタンピング成形法、真空成形法が好ましい。真空成形法としては、雄引き真空成形法、雌引き真空成形法のいずれも採用しうるが、雄引き真空成形法がより好ましい。
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体は、断熱材、クッション材等として使用することができる。本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体は、夏場の暑い時期においても、臭気が発生しにくいため、特に自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車内装材として好適に使用できる。
【実施例
【0038】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
以下の原料を使用して、実施例及び比較例の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を作製した。
・樹脂(1)PP:エチレン-プロピレンランダム共重合体、住友化学株式会社製、商品名「AD571」、密度0.90g/cm、MFR0.5g/10分(230℃)
・樹脂(2)LLDPE:1-ヘキセン(C6)や1-オクテン(C8)などの炭素数6以上のハイヤーαオレフィンをコモノマーとして共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン、株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトゼックス1020L」、密度0.91g/cm、MFR2.0g/10分(190℃)
・酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤(テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、BASFジャパン株式会社製、商品名「イルガノックス1010」
・架橋助剤:1,9-ノナンジオールジメタクリレート、共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステル1,9ND」、粘度8mPa・s/25℃
・発泡助剤(1):酸化マグネシウム、宇部マテリアルズ株式会社製、商品名「RF-50C-SC」、平均粒子径:50μm
・発泡助剤(2):酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「酸化亜鉛2種」、平均粒子径:0.75μm
・発泡助剤(3):ステアリン酸亜鉛、堺化学工業株式会社製、商品名「SZ-2000」
・発泡剤:アゾジカルボンアミド、大塚化学株式会社製、商品名「SO-L」、分解温度:197℃、平均粒子径:3.2μm
【0040】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(樹脂(1)PP)60質量部、及び直鎖状低密度ポリエチレン(樹脂(2)LLDPE)40質量部、酸化防止剤2.5質量部、架橋助剤4.0質量部、発泡助剤(1)1.0質量部、発泡剤8.0質量部を混合して発泡性組成物を得た。発泡性組成物を、単軸押出機により、温度180℃で溶融混練して、発泡性シートとした。該発泡性シートの両面をそれぞれ加速電圧1000keVにて電離性放射線(電子線)を2.0Mradで照射し、架橋発泡性シートを得た。その後、該架橋発泡性シートを、炉内温度270℃の縦型熱風式発泡炉に供給し、延伸しつつ加熱発泡させ、目的とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。
該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体について、厚さ、見掛け密度、架橋度、独立気泡率、押出一次分解性評価、臭気評価を下記とおり行った。結果を表1に示した。
【0041】
(実施例2~4、比較例1~3)
発泡性組成物の組成及び架橋条件を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例1~3の発泡体を得た。そして、得られた発泡体について、厚さ、見掛け密度、架橋度、独立気泡率、押出一次分解性評価、臭気評価を下記とおり行った。結果を表1に示した。
【0042】
(発泡体の厚さ)
実施例及び比較例の発泡体の厚さを、JIS K6767に準拠して測定した。
【0043】
(発泡体の見掛け密度)
実施例及び比較例の発泡体の見掛け密度を、JIS K7222に準拠して測定した。
【0044】
(独立気泡率)
樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出した。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V1を算出するとともに試験片の重量W1を測定した。次に、気泡の占める見掛け体積V2を下記式に基づいて算出した。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cmとした。
気泡の占める見掛け体積V2=V1-W1
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加えた。水中で圧力を解放後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1し、そして独立気泡率F2を算出した。
連続気泡率F1(%)=100×(W2-W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100-F1
【0045】
(架橋度)
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0046】
(押出時一次分解性評価)
発泡性組成物を単軸押出機により溶融混練して得られた発泡性シートの断面を目視で観察して、発泡剤の発泡の有無を調べた。そして、以下のように評価した。
○:発泡剤の発泡なし
×:発泡剤の発泡あり
【0047】
(臭気評価)
実施例及び比較例で得られた各発泡体について、臭気評価試験を行った。臭気評価試験の条件は以下のとおりであった。
サンプリング日数:発泡体作製直後
サンプリングサイズ:100cm
臭気瓶:100cmガラス容器
試験温度:80℃×2hr→60℃に冷却
嗅ぎ温度:60℃
試験人数:5名
臭いの嗅ぎ方:臭気瓶の蓋を開け、水平面に対して45°臭気瓶を傾けた。そして、鼻孔を臭気瓶の口部中央に置き、鼻孔を臭気瓶の口部から1cm離した状態で、5sec以上10sec以内、臭気瓶からの放散ガスの臭いを嗅いだ。
【0048】
臭気の評価は、以下のように行った。臭気強度の標準溶液として、下記のn-ブタノール濃度を有するn-ブタノール水溶液を使用した。これらの溶液をそれぞれ、1Lのガラス瓶に150mL計り取り、それらを基準臭とした。そして、これらの基準臭の臭気強度に基づいて発泡体の臭気を評価した。
強度等級1:n-ブタノール濃度0ml/L
強度等級1.5:n-ブタノール濃度1.4ml/L
強度等級2:n-ブタノール濃度2.0ml/L
強度等級2.5:n-ブタノール濃度3.6ml/L
強度等級3:n-ブタノール濃度6.0ml/L
強度等級3.5:n-ブタノール濃度9.0ml/L
強度等級4:n-ブタノール濃度18.0ml/L
強度等級4.5:n-ブタノール濃度22.7ml/L
強度等級5:n-ブタノール濃度30.0ml/L
強度等級5.5:n-ブタノール濃度57.0ml/L
強度等級6:n-ブタノールのみ
【0049】
実施例1~4及び比較例1~3の発泡体の厚さ、見掛け密度、独立気泡率、架橋度、押出一次分解性評価の結果及び臭気評価の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記実施例の結果より、ポリオレフィン系樹脂と酸化マグネシウムとを含む発泡性組成物を発泡してなる実施例1~4の発泡体は、押出時に発泡剤が発泡せず、臭気評価において良好な結果が得られた。一方、酸化マグネシウムを含まない比較例1の発泡体は、臭気評価において結果が悪かった。また、発泡剤を効率的に発泡させるために発泡助剤として酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛をそれぞれ配合した比較例2及び3の発泡体は、押出時に発泡剤が発泡し、生成した窒素ガス等が発泡性シートから放出されてしまったので、臭気強度の評価は行わなかった。