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特許7518659ブロック共重合体を含有する重合生成物および重合生成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ブロック共重合体を含有する重合生成物および重合生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20240710BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240710BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240710BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C09D11/30
B41J2/01 501
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020083821
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021098835
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019095117
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019232967
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
(72)【発明者】
【氏名】林 直宏
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 和博
(72)【発明者】
【氏名】清水 達彦
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/115071(WO,A1)
【文献】特開2011-068865(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135011(WO,A1)
【文献】特開2002-105388(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/136948(JP,A1)
【文献】特開2016-167070(JP,A)
【文献】特開2004-240269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08L 53/00
C09D 11/30
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー組成物を重合することにより得られた重合生成物であって、
酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位と芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を有するAブロックと、下記一般式(1)で表される構造単位を有するBブロックとを有するA-B型ジブロック共重合体を含有し、
前記ジブロック共重合体中のAブロックとBブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)が、25/75~50/50であり、
前記Aブロック中の酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の含有率が、0.5質量%~10質量%であり、
前記Aブロック中の芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率が、90質量%以上であり、
前記Bブロック中の一般式(1)で表される構造単位の含有率が、1質量%~50質量%であり、
前記Bブロック中の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率が、50質量%以上であり、
前記重合生成物の分子量分布(PDI)が2.0以下であり、かつ、
前記ジブロック共重合体の含有率が、前記重合生成物100質量%中において、86質量%以上であることを特徴とする重合生成物。
【化1】
〔式(1)において、X1は、単結合または2価の連結基を示す。Y1は酸性基を示す。R1は水素原子またはメチル基を示す。〕
【請求項2】
前記Y1が、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の重合生成物。
【請求項3】
前記重合生成物の重量平均分子量が、4,000~40,000である請求項1または2に記載の重合生成物。
【請求項4】
前記重合生成物の酸価が、30mgKOH/g~150mgKOH/gである請求項1~3のいずれか一項に記載の重合生成物。
【請求項5】
前記重合生成物が、リビングラジカル重合により製造されたものである請求項1~4のいずれか一項に記載の重合生成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の重合生成物および/またはその中和物から構成されることを特徴とする分散剤。
【請求項7】
請求項6に記載の分散剤、着色材および分散媒体を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の着色組成物により着色されたことを特徴とする着色体。
【請求項9】
請求項7に記載の着色組成物の液滴を記録信号に応じて吐出させ、被記録材に付着させることにより記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の重合生成物の製造方法であって、
一般式(3)で表される有機テルル化合物と油溶性アゾ系重合開始剤との第1混合物、または、一般式(3)で表される有機テルル化合物と油溶性アゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて、酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル系ビニルモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル系ビニルモノマーを含有する第1モノマー組成物を重合するAブロック重合工程と、
前記第1混合物または前記第2混合物を用いて、一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーを含有する第2モノマー組成物を重合するBブロック重合工程とを有し、
全ての重合工程において、前記油溶性アゾ系重合開始剤のトルエン中で測定される10時間半減期温度(T1/2)と反応温度(Tr)との差(T1/2-Tr)が10℃~60℃であることを特徴とする重合生成物の製造方法。
【化2】
〔一般式(3)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。R32およびR33は、それぞれ、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R34は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を表す。
一般式(4)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
【請求項12】
全ての重合工程において、モノマー組成物の重合率が90%以上である請求項11に記載の重合生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体を含有する重合生成物および重合生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる記録方法は、細かいノズルからインク滴を発生させ、これを紙、フィルム、布帛等の被記録材に吐出し、付着させ記録を行う方法である。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが直接接触しないため音の発生が少なく静かである。また、小型化、高速化が容易であることから、産業用だけでなく家庭用にも急速に普及し、今後とも大きな伸長が期待されている。インクジェットプリンタに用いるインク(着色組成物)は、着色材および分散媒体と、必要に応じて配合される界面活性剤等の添加剤で構成されている。
【0003】
インクジェットインクに用いられる着色材としては、水溶性の染料と、顔料、分散染料および油溶性染料のような実質的に水に不溶な着色材との2種類の着色材が知られている。これらのうち、水溶性の染料を着色材として用いた記録画像は、鮮明性といった画質に優れ、水に不溶な着色材(それらの中でも顔料)を用いた記録画像は光、オゾン、水等に対する各種の堅牢性に優れている。この各種の堅牢性に優れる利点から、水に不溶な着色材を含有するインクジェットインクの利用が広がっている。
【0004】
特に産業用途においては、インクジェット技術の向上により、デジタル印刷出力機としての利用が期待され、環境面、安全面等から水性インクが求められている。しかし、水に不溶な着色材をインクジェットインクに使用するときは、着色材を微細化した後、インク中で均一に分散させることが必要となる。このため、均一に分散させるために、分散剤の選定が極めて重要となる。
【0005】
また、インクジェットプリンタによる記録方法は、高い印字濃度(発色性)を得るために、インク中の着色材濃度を高めることが求められている。しかし、着色材濃度が高くなると、例えば、着色材として顔料を用いている場合、着色材粒子の凝集によって経時的に沈降現象が生じたり、増粘したりする。そのため、インク中で濃度勾配が生じ、初期の印字不良や、凝集した粒子によるノズル詰まりを生じるという問題がある。このような問題を解決するためにA-Bブロック共重合体を分散剤として用いられていることが知られている(例えば、特許文献1(段落0038、0052)参照)。
【0006】
一方、A-Bブロック共重合体の製造には、リビング重合法を用いることが知られている(例えば、特許文献2(請求項1、第20頁第18~23行)参照)。リビング重合法には、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等がある。リビングアニオン重合法およびリビングカチオン重合法は厳密な重合条件が必要で、さらに共存できる官能基が限定される。これに対して、リビングラジカル重合法は極性官能基と共存できる汎用性と、モノマーや溶媒の純度等に影響されない簡便性とを保ちつつ、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーを製造できる特徴がある。そのため分子量が制御された狭い分子量分布、均一な組成の、極性基を有するブロック共重合体の製造には、リビングラジカル重合法が用いられている。
【0007】
なお、ブロック共重合体を製造する場合、重合時に副生する重合体不純物が不可避的に含まれることとなる。そこで、このような重合体不純物の含有量を低減する方法が提案されている。例えば、特許文献3には、重合後のブロック共重合体について特定の溶媒を用いて液々抽出することで、重合体不純物を選択的に除去する精製方法が記載されている(特許文献3(段落0017~0024)参照)。しかしながら、特許文献3では、スチレン系ホモポリマーの精製除去について検討されているが、(メタ)アクリル系ホモポリマーの除去方法は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/115071号
【文献】国際公開第2004/096870号
【文献】特開2015-113444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、着色組成物(インク)に求められる特性がより高度になるにともない、従来の分散剤では、着色材の分散性が十分ではないという問題がある。また、分散剤の使用量を多くすると、インク吐出時や吐出後の加熱による色相の変化等の耐熱性が問題となることから、少量でも優れた分散性を有する分散剤が求められている。しかしながら、ブロック共重合体が重合体不純物を含有すると分散性能が低下する傾向がある。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、例えば分散剤として用いることができ、優れた分散性能を有するブロック共重合体を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなブロック共重合体の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することができた本発明の重合生成物は、モノマー組成物を重合することにより得られた重合生成物であって、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、下記一般式(1)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有し、前記重合生成物の分子量分布(PDI)が2.0以下であり、かつ、前記ブロック共重合体の含有率が、前記重合生成物100質量%中において、86質量%以上であることを特徴とする。
【0012】
【化1】
〔式(1)において、X1は、単結合または2価の連結基を示す。Y1は酸性基を示す。R1は水素原子またはメチル基を示す。〕
【0013】
本発明の重合生成物は、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(1)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有する。このブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有することで、優れた分散性能を有する。よって、本発明の重合生成物は、分散剤として使用することができる。特に、本発明の重合生成物は、前記ブロック共重合体の含有率が86質量%以上である。換言するとAブロックのみからなる重合物、Bブロックのみからなる重合物のような重合体不純物の含有率が14質量%以下である。そのため、本発明の重合生成物は、分散剤として使用した際に、優れた分散性能を示す。
【0014】
本発明の重合生成物の製造方法は、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物、または、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて、(メタ)アクリル系ビニルモノマーを含有する第1モノマー組成物を重合するAブロック重合工程と、前記第1混合物または前記第2混合物を用いて、一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーを含有する第2モノマー組成物を重合するBブロック重合工程とを有し、全ての重合工程において、前記アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度(T1/2)と反応温度(Tr)との差(T1/2-Tr)が10℃~60℃であることを特徴とする。
【0015】
【化2】
〔一般式(3)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。R32およびR33は、それぞれ、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R34は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を表す。
一般式(4)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
【0016】
本発明の重合生成物の製造方法は、有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物、または、有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と有機ジテルリド化合物との第2混合物の存在下で、モノマー組成物を重合することで、温和な条件下で、精密な分子量および分子量分布を有するブロック共重合体を合成できる。また、本発明のブロック共重合体の製造方法は、全てのブロックの重合工程において、前記アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度(T1/2)と反応温度(Tr)との差(T1/2-Tr)を10℃~60℃に調整している。反応温度を前記範囲に調整することで、重合体不純物の生成を抑制することができる。よって、本発明の重合生成物の製造方法を採用すれば、所望とするブロック共重合体の含有率が高く、かつ、重合体不純物の含有率が低い重合生成物が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重合生成物は、分散剤として使用した際に、優れた分散性能を示す。本発明の重合生成物の製造方法は、所望とするブロック共重合体の含有率が高く、かつ、重合体不純物の含有率が低い重合生成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の重合生成物は、モノマー組成物を重合することにより得られた重合生成物であって、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、後述する一般式(1)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有し、前記重合生成物の分子量分布(PDI)が2.0以下であり、かつ、前記ブロック共重合体の含有率が、前記重合生成物100質量%中において、86質量%以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明の重合生成物は、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(1)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有する。このブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有することで、優れた分散性能を有する。よって、本発明の重合生成物は、分散剤として使用することができる。特に、本発明の重合生成物は、前記ブロック共重合体の含有率が86質量%以上である。換言するとAブロックのみからなる重合物、Bブロックのみからなる重合物のような重合体不純物の含有率が14質量%以下である。そのため、本発明の重合生成物は、分散剤として使用した際に、優れた分散性能を示す。
【0020】
本発明において、「重合生成物」とは、前記ブロック共重合体を得るために重合操作を行った際に得られる生成物を指す。前記「重合生成物」には、所望とするブロック共重合体と、このブロック共重合体を合成する際に副生した重合体不純物を含む。
【0021】
本発明において、「重合体不純物」とは、所望とするブロック共重合体を合成する際に、不可避的に副生する他の重合体である。例えば、A-B型ジブロック共重合体を合成する際に副生する重合体不純物としては、Aブロックと同様の組成を有するランダムポリマー、Bブロックと同様の組成を有するランダムポリマーが挙げられる。A-B-A型トリブロック共重合体またはB-A-B型トリブロック共重合体を合成する際に副生する重合体不純物としては、Aブロックと同様の組成を有するランダムポリマー、Bブロックと同様の組成を有するランダムポリマーが挙げられる。なお、「重合体不純物」は、所望とするブロック共重合体を合成する際に副生した重合体であり、別途添加される重合体は含まない。
【0022】
本発明において、「Aブロック」は「Aセグメント」と言い換えることができ、「Bブロック」は「Bセグメント」と言い換えることができる。本発明において、「ビニルモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示である。本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0024】
<重合生成物>
本発明の重合生成物は、AブロックとBブロックとを有するブロック共重合体と、重合体不純物とを含有する。
【0025】
前記重合生成物は、前記ブロック共重合体の含有率が、重合生成物100質量%中、86質量%以上、好ましくは88質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。重合生成物中のブロック共重合体の含有率が、86質量%以上であれば、重合生成物を分散剤として使用した際に、分散性が向上できる。
【0026】
前記重合生成物が、A-B型ジブロック共重合体を合成することを目的として得られたものである場合、重合生成物中のA-B型ジブロック共重合体の含有率が、重合生成物100質量%中、86質量%以上、好ましくは88質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0027】
前記重合生成物が、A-B-A型トリブロック共重合体またはB-A-B型トリブロック共重合体を合成することを目的として得られたものである場合、重合生成物中のA-B-A型トリブロック共重合体およびA-B型ジブロック共重合体の合計含有率が、重合生成物100質量%中、86質量%以上、好ましくは88質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0028】
前記重合生成物の重量平均分子量(Mw)は4,000以上が好ましく、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、40,000以下が好ましく、より好ましくは35,000以下、さらに好ましくは25,000以下、特に好ましくは20,000以下である。重量平均分子量が上記範囲内にあれば、分散剤として使用した際の分散性能がより良好となる。前記重合生成物の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」という)法により測定される。
【0029】
前記重合生成物の分子量分布(PDI)は、2.0以下であり、1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましい。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(重合生成物の重量平均分子量(Mw))/(重合生成物の数平均分子量(Mn))によって求められるものである。PDIが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった重合生成物となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。重合生成物の分子量分布(PDI)が、2.0を超えると、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになる。
【0030】
前記重合生成物の酸価は、30mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、さらに好ましくは70mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上であり、150mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは135mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。酸価を前記範囲とすることで分散剤として使用した際の分散性能がより一層向上する。
【0031】
(ブロック共重合体)
前記ブロック共重合体の各種構成成分等について以下説明する。
【0032】
(Aブロック)
Aブロックは、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位を含むポリマーブロックである。Aブロックにおける(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位は、1種のみでもあってもよいし、2種以上を有していてもよい。(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位とすることで、着色材との吸着性が高くなると考えられる。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位の含有率は、前記Aブロック100質量%中において、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0034】
前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーは、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレート、酸性基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
前記直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖アルキル基の炭素数が1~20である直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が1~10である直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が1~5である直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートさらに好ましい。前記直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
前記分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、分岐鎖アルキル基の炭素数が3~20である分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖アルキル基の炭素数が3~10である分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。前記分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
前記環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基の炭素数が6~12の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)が挙げられる。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
前記多環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、多環式構造の炭素数が6~12の多環式構造を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。多環式構造としては、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基)が挙げられる。多環式構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、芳香族基の炭素数が6~12の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、芳香族基の炭素数が6~9の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。芳香族基としては、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールオキシアルキル基、アルキルアリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられ、特にフェニル基、ベンジル基、トリル基、フェノキシエチル基が好ましい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。前記ヒドロキシアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、1つのヒドロキシ基を有することが好ましい。前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートにラクトンを付加したものが挙げられ、カプロラクトンを付加したものが好ましい。カプロラクトンの付加量は、1mol~10molが好ましく、1mol~5molがより好ましい。前記ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン1mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン2mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン3mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン4mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン5mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン10mol付加物等が好ましい。
【0043】
前記アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
前記含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートとしては、4員環~6員環の含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-〔(2-テトラヒドロピラニル)オキシ〕エチル(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
前記酸性基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、リン酸基(-OPO32)、ホスホン酸基(-PO32)、ホスフィン酸基(-PO22)が挙げられる。前記酸性基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー等のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート;スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることでき、好ましくはカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートである。
【0046】
前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーは、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートおよびラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含有することが好ましい。これらのモノマーを使用する場合、Aブロック中の鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートおよびラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の合計含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
【0047】
前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーは、芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含有することが特に好ましい。この場合、Aブロック中の芳香族基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
【0048】
前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーは、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。この場合、Aブロック中の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
【0049】
また、前記(メタ)アクリル系ビニルモノマーは、酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することも好ましく、(メタ)アクリル酸を含有することがより好ましい。この場合、Aブロック中の酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の含有率は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。Aブロック中の酸性基を有する(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の含有率を前記範囲とすることで、着色材との高い親和性を維持しつつ、分散剤の親水性を高めることができる。
【0050】
前記Aブロックは、(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。Aブロックに含まれ得る他の構造単位は、(メタ)アクリル系ビニルモノマー、および後述のBブロックを形成するビニルモノマーの両方と共重合し得るビニルモノマーにより形成されるものであれば特に制限はない。Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、α-オレフィン、芳香族ビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、カルボン酸ビニル、ジエン類等が挙げられる。これらのビニルモノマーはヒドロキシ基、エポキシ基を有していてもよい。
【0052】
α-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
ビニルアミドとしては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-ε-カプトラクタム等が挙げられる。
カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
【0053】
前記Aブロックは、後述する一般式(1)で表される構造単位の含有率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。Aブロック中の一般式(1)で表される構造単位の含有率が低い程、着色材の分散性能が向上する。
【0054】
Aブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Aブロックに含有される各種構造単位は、Aブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等のいずれの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Aブロックが、a1ブロックからなる構造単位とa2ブロックとからなる構造単位との共重合体により形成されていてもよい。
【0055】
(Bブロック)
Bブロックは、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーブロックである。
【0056】
(一般式(1)で表される構造単位)
一般式(1)で表される構造単位は、1種のみでもあってもよいし、2種以上を有していてもよい。一般式(1)で表される構造単位とすることで、分散媒体との高い親和性を維持できると考えられる。
【0057】
【化3】
〔式(1)において、X1は、単結合または2価の連結基を示す。Y1は酸性基を示す。R1は水素原子またはメチル基を示す。〕
【0058】
上記一般式(1)において、2価の連結基X1としては、例えば、炭素数1~10のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-R11-基(アミド基)、-COO-R12-基(エステル基)等が挙げられ、好ましくは-COO-R12-基および/または-CONH-R11-基であり、より好ましくは-COO-R12-基である。なお、アミド基、エステル基の結合方向は特に限定されないが、アミド基の結合態様としてはC-CO-NH-R11-Y1が好ましく、エステル基の結合態様としては、C-CO-O-R12-Y1が好ましい。
前記R11は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または炭素数1~10のエーテル基(アルキルオキシアルキル基)であり、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
前記R12は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または炭素数1~10のエーテル基(アルキルオキシアルキル基)であり、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。
【0059】
1で表される酸性基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、リン酸基(-OPO32)、ホスホン酸基(-PO32)、ホスフィン酸基(-PO22)が挙げられ、好ましくはカルボキシ基(-COOH)である。
【0060】
一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー等のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート;スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、好ましくは(メタ)アクリル酸、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートおよびリン酸基を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0061】
一般式(1)で表される構造単位の含有率は、Bブロック100質量%中において1質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、99質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下ある。一般式(1)で表される構造単位の含有率をこの範囲にすることで、BブロックがAブロックに比べ親水性が高くなり、分散媒体、特に水性溶媒および水との高い親和性を維持できる。
【0062】
Bブロックは、一般式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を有することができる。Bブロックにおいて、他の構造単位を含有する場合、その含有率は、Bブロック100質量%中において1質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、99質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0063】
Bブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルのモノマーの具体例として例示したものと同一のものを挙げることができ、好ましくは(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位である。
【0064】
Bブロックを形成し得る(メタ)アクリル系ビニルモノマーの具体例としては、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
前記Bブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーとしては、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが挙げられる。これらのモノマーを使用する場合、Bブロック中の鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレートおよび含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の合計含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0066】
前記Bブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーは、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。この場合、Bブロック中の鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0067】
Bブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Bブロックに含有される各種構造単位は、Bブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Bブロックが、b1ブロックからなる構造単位とb2ブロックとからなる構造単位との共重合体により形成されていてもよい。
【0068】
(ブロック共重合体)
前記ブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体であることが好ましい。また、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)であっても良いが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の観点から、AブロックをA、BブロックをBと表現したとき、(A-B)m型、(A-B)m-A型、および(B-A)m-B型(mは1以上の整数、例えば1~3の整数)よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を持つ共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱い性、組成物の物性の観点から、A-B型ジブロック共重合体であることが好ましい。A-B型ジブロック共重合体を構成することで、Aブロックに有する(メタ)アクリル系ビニルモノマーに由来する構造単位と、Bブロックに有する一般式(1)で表される構造単位とが局在化し、効率的に着色材と、分散媒体と好適に作用することができると考えられる。前記ブロック共重合体は、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックを有していてもよい。
【0069】
Aブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。Bブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において、10質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。AブロックおよびBブロックの含有率を、上記範囲内に調整することで、分散剤として使用した際の分散性能がより一層向上する。
【0070】
ブロック共重合体中のAブロックとBブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)は、5/95以上が好ましく、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは25/75以上であり、95/5以下が好ましく、より好ましくは70/30以下、さらに好ましくは50/50以下である。AブロックとBブロックとの質量比が前記範囲内であれば、分散剤として使用した際の分散性能がより一層向上する。
【0071】
前記ブロック共重合体における前記一般式(1)で表される構造単位の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0072】
<重合生成物の製造方法>
本発明の重合生成物の製造方法は、ブロックを構成するビニルモノマーを順次重合反応することによって、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックのモノマーを重合する方法;Bブロックを先に製造し、BブロックにAブロックのモノマーを重合する方法等が挙げられる。
【0073】
ビニルモノマーの重合反応による重合生成物の製造方法としては、例えば、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等のリビング重合法があり、本発明においてはリビングラジカル重合法により重合生成物を製造することが好ましい。リビングアニオン重合法およびリビングカチオン重合法は厳密な重合条件が必要で、さらに共存できる官能基が限定されるが、リビングラジカル重合法は極性官能基と共存できる汎用性と、モノマーや溶媒の純度等に影響されない簡便性とを保ちつつ、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーを製造できるため好ましい。すなわち、前記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合により重合されたものが好ましい。
【0074】
また、従来のラジカル重合法は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い傾向がある。これに対してリビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端が失活させる副反応で妨げられることなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
【0075】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法がある。ATRP法は、アミン系錯体を使用するため、酸性基を有するビニルモノマーの酸性基を保護せず使用することができない場合がある。RAFT法は、多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色等の不具合がある場合がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0076】
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0077】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)~(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、一般式(3)で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法。
(b)ビニルモノマーを、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物を用いて重合する方法。
(c)ビニルモノマーを、一般式(3)で表される有機テルル化合物と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法。
(d)ビニルモノマーを、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて重合する方法。
【0078】
【化3】
〔一般式(3)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。R32およびR33は、それぞれ、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R34は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を表す。
一般式(4)中、R31は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。〕
【0079】
31で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0080】
32およびR33で表される基は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0081】
34で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。前記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-COR311で示されるカルボニル含有基(R311は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、炭素数1~8のアルコキシ基またはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個または2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR321322(R321、R322は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、-COOR331(R331は水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
アリル基としては、-CR341342-CR343=CR344345(R341、R342は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R343、R344、R345は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、-CR351352-C≡CR353(R351、R352は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R353は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはシリル基)等を挙げることができる。
【0082】
一般式(3)で表される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-トリメチルシロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロオピオネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネートまたは(3-トリメチルシリルプロパルギル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0083】
一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリドまたはジピリジルジテルリド等を例示することができる。
【0084】
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)(65℃、トルエン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)(67℃、トルエン)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)(52℃、トルエン)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)(88℃、トルエン)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)(66℃、トルエン)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)(69℃、水(Na塩として))、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)(61℃、トルエン)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)(30℃、トルエン)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩(56℃、水)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](61℃、メタノール)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](86℃、水)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(110℃、エチルベンゼン)、またはジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(73℃、トルエン)等を例示することができる。これらの中でもアゾ系重合開始剤としては油溶性アゾ系重合開始剤が好ましく、AIBN、AMBN、ADVN、ACHN、V-70がより好ましい。上記アゾ系重合開始剤の化合物名の後の括弧内に記載した数値は、これらの10時間半減期温度および10時間半減期温度の測定に用いた溶媒である。前記アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度とは、溶媒中でのアゾ基の濃度が10時間で半分となる温度のことをいう。半減期温度の測定に使用する溶媒としては、油溶性アゾ系重合開始剤ではトルエン、エチルベンゼン等が挙げられ、水溶性アゾ系重合開始剤では水、メタノール等が挙げられる。
【0085】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと一般式(3)の有機テルル化合物とに、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または一般式(4)の有機ジテルリド化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。
【0086】
前記(a)、(b)、(c)および(d)におけるビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。一般式(3)の有機テルル化合物1molに対しビニルモノマーを5mol~10000molとすることが好ましい。
【0087】
前記(b)の一般式(3)の有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対してアゾ化合物を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0088】
前記(c)の一般式(3)の有機テルル化合物と一般式(4)の有機ジテルリド化合物とを併用する場合、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対して一般式(4)の有機ジテルリド化合物を0.01mol~100molとすることが好ましい。
【0089】
前記(d)の一般式(3)の有機テルル化合物と一般式(4)の有機ジテルリド化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対して一般式(4)の有機ジテルリド化合物を0.01mol~100molとすることが好ましく、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0090】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アニソール、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはトリフルオロメチルベンゼン等を例示することができる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0091】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニル組成物1gに対して、0.01ml以上が好ましく、より好ましくは0.05ml以上、さらに好ましくは0.1ml以上であり、50ml以下が好ましく、より好ましくは10ml以下、さらに好ましくは1ml以下である。
【0092】
反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。TERP法は、低い重合温度および短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができる。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
【0093】
重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0094】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の-TeR31(式中、R31は一般式(3)中のR31と同じである。)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。
【0095】
テルル原子を除去する方法としては、トリブチルスタンナンまたはチオール化合物等を用いるラジカル還元方法;活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブスおよび高分子吸着剤等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法;過酸化水素水または過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気または酸素を系中に吹き込むことで共重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液-液抽出法や固-液抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法等を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。前記テルル原子の除去後、テルルが重合生成物中に残存する場合がある。重合生成物中のテルルの含有率は0.05質量%未満とすることが好ましい。なお、重合反応により得られる共重合体の他方端(成長末端と反対側の末端)は、テルル化合物由来の-CR323334(式中、R32、R33およびR34は、一般式(3)中のR32、R33およびR34と同じである。)の形態である。
【0096】
(重合生成物の製造方法の好適態様)
以下、前記重合生成物の製造方法の一態様について説明する。
前記製造方法は、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物、または、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて、(メタ)アクリル系ビニルモノマーを含有する第1モノマー組成物を重合するAブロック重合工程と、前記第1混合物または前記第2混合物を用いて、一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーを含有する第2モノマー組成物を重合するBブロック重合工程とを有し、全ての重合工程において、前記アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度(T1/2)と反応温度(Tr)との差(T1/2-Tr)が10℃~60℃であることが好ましく、より好ましくは10℃~50℃、さらに好ましくは10℃~40℃、特に好ましくは10℃~30℃である。
【0097】
一般的に、TERP法において、ビニルモノマーが酸性基を有していると、これらの酸性基が重合末端ラジカルを失活させやすい。例えば、酸性基では、ドーマント種を形成する有機テルルへプロトン配位が起こり、ドーマント種形成を阻害し重合末端を失活させる可能性がある。そのため、ビニルモノマーが酸性基を有していると、重合生成物中の各ブロック成分が結合していない重合体(「未連結成分」)の含有率が増加する傾向がある。しかしながら、重合温度を、添加するアゾ系重合開始剤の10時間半減期温度よりも10℃以上低い温度とすることで、未連結成分の生成を抑制することができる。
【0098】
前記好適態様では、重合時に第1混合物または第2混合物を使用する。これらの第1混合物または第2混合物は、前記Aブロック重合工程と前記Bブロック重合工程とにおいて共通のものを使用する。つまり、例えば、A-Bジブロック共重合体を製造する場合、第1段目の重合工程を行った後、この反応液(第1段目の重合物と、第1混合物または第2混合物を含有する。)に第2段目のモノマー組成物を添加して、第2段目の重合工程を行う。
【0099】
前記第1混合物において、アゾ系重合開始剤の使用量は、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対して、0.01mol以上が好ましく、より好ましくは0.05mol以上、さらに好ましくは0.1mol以上であり、10mol以下が好ましく、より好ましくは2mol以下、さらに好ましくは1mol以下である。
【0100】
前記第2混合物において、アゾ系重合開始剤の使用量は、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対して、0.01mol以上が好ましく、より好ましくは0.05mol以上、さらに好ましくは0.1mol以上であり、10mol以下が好ましく、より好ましくは2mol以下、さらに好ましくは1mol以下である。
【0101】
前記第2混合物において、一般式(4)の有機ジテルリド化合物の使用量は、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対して、0.01mol以上が好ましく、より好ましくは0.1mol以上、さらに好ましくは0.2mol以上であり、100mol以下が好ましく、より好ましくは5mol以下、さらに好ましくは3mol以下である。
【0102】
前記Aブロック重合工程では、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物、または、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて、(メタ)アクリル系ビニルモノマーを含有する第1モノマー組成物を重合する。
【0103】
前記Aブロック重合工程において、ビニルモノマーの使用量は、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対し、5mol以上が好ましく、より好ましくは10mol以上、さらに好ましくは20mol以上であり、10000mol以下が好ましく、より好ましくは300mol以下、さらに好ましくは200mol以下、特に好ましくは100mol以下である。
【0104】
前記Bブロック重合工程では、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との第1混合物、または、一般式(3)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(4)で表される有機ジテルリド化合物との第2混合物を用いて、一般式(1)で表される構造単位を形成するビニルモノマーを含有する第2モノマー組成物を重合する。
【0105】
前記Bブロック重合工程において、ビニルモノマーの使用量は、一般式(3)の有機テルル化合物1molに対し、5mol以上が好ましく、より好ましくは7mol以上、さらに好ましくは10mol以上であり、10000mol以下が好ましく、より好ましくは300mol以下、さらに好ましくは200mol以下、特に好ましくは100mol以下である。
【0106】
前記好適態様では、前記アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度(T1/2)と全ての重合工程の反応温度(Tr)との差(T1/2-Tr)が、10℃以上あり、60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは30℃以下である。なお、アゾ系重合開始剤を複数使用する場合、全てのアゾ系重合開始剤の10時間半減期温度について、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0107】
前記好適態様において、反応温度は、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、特に好ましくは30℃以上であり、70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。また、反応時間は、1時間以上が好ましく、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、100時間以下が好ましく、より好ましくは60時間、さらに好ましくは50時間以下、特に好ましくは30時間以下である。
【0108】
前記好適態様では、各重合工程における原料となるモノマー組成物中のモノマーの重合率(モノマー転化率)を、90質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0109】
前記好適態様は、少なくともAブロック重合工程とBブロック重合工程とを有する。これらの重合工程の順序は特に限定されず、Aブロック重合工程を先に行い、Bブロック重合工程を後に行ってもよいし、Bブロック重合工程を先に行い、Aブロック重合工程を後に行ってもよい。また、前記好適態様は、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックを重合する工程を有していてもよい。
【0110】
<分散剤>
本発明の分散剤は、前記重合生成物および/またはその中和物から構成される。前記重合生成物は、酸性基を中和せずに使用してもよいし、酸性基の一部または全てを中和して使用してもよく、酸性基の一部または全てを中和して使用することが好ましい。前記重合生成物中の酸性基の一部または全てを中和して用いることで、着色材の分散状態が安定となり、保存安定性がより優れた着色組成物を得ることができる。
【0111】
前記分散剤において、中和されている酸性基の割合(重合生成物が有する未中和の酸性基および中和された酸性基の合計モル量に対する重合生成物が有する中和された酸性基のモル量の比率)は、30モル%以上が好ましく、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、100モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0112】
前記中和には中和剤を用いることができ、中和剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族アミン化合物、アルコールアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。これらの中和剤は1種類を使用してもよく、また複数組み合わせることもできる。
【0113】
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
【0114】
脂肪族アミン化合物としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンが挙げられ、好ましくはトリエチルアミンである。
【0115】
アルコールアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンが挙げられるが、好ましくは3級アミン類であり、さらに好ましくはトリエタノールアミンである。
【0116】
<分散剤溶液>
前記分散剤は、溶液に溶解させて分散剤溶液として使用してもよい。着色組成物の作製前に、分散剤を予め溶液としておくことで、着色材の分散が容易となる。
【0117】
前記分散剤溶液は、溶媒に、重合生成物または重合生成物の中和物を溶解させることで調製できる。また、前記分散剤溶液は、予め溶媒に中和剤を溶解、分散させておき、この中和剤含有液に重合生成物を添加、混合して調製することもできる。前記溶媒は、重合生成物または重合生成物の中和物を溶解でき、かつ、これらの成分と反応しないものが使用できる。前記溶媒は、適度に揮発性を有することが好ましい。
【0118】
分散剤溶液に用いる溶媒としては、適宜に選択して使用でき、例えば、水性溶媒を用いることができる。前記水性溶媒としては、水および水溶性有機溶媒(水と混和可能な有機溶媒)を使用することができ、これらを1種または2種以上混合してもよい。水としては、純水、イオン交換水(脱イオン水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;グリセリン等の多価アルコール;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素化合物類等を用いることができる。
【0119】
前記重合生成物に含まれるブロック共重合体は、例えば、酸性基がBブロックに局在化することにより、親水性を高め、水性溶媒および水との高い親和性を有することができる。さらに、リビングラジカル重合を用いて製造することにより、Bブロック内において酸性基が均一に配置され、より親水性が高められるものと考えられる。すなわち、本発明の分散剤は、この作用によって着色材を良好に分散させる成分であるので、分散させる着色材の種類については特に限定されない。本発明の分散剤は、インクジェットプリンタのインクの分散剤として好適に使用することができる。
【0120】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、前記分散剤、着色材および分散媒体を含有する。前記着色組成物は、分散剤として前記重合生成物を用いているため、着色剤が均一に分散されている。また、前記着色組成物は、分散剤として前記重合生成物を用いているため、乾燥後の再溶解性が優れている。乾燥後の再溶解性に優れた着色組成物は、例えば、インクジェットインクとして使用した場合、ノズル詰まりを生じても簡単なクリーニング操作で再溶解し、直ぐに回復することができる。
【0121】
着色材を配合する目的としては、記録画像の色相調整;着色組成物としたときの保存安定性の向上等が挙げられる。ここでいう色相調整とは、記録画像の濃淡をつけること、記録画像の色域を広げること等を意味する。着色材は、2種類以内を使用することが好ましく、単一の着色剤を用いることが特に好ましい。
【0122】
前記着色材は、特に限定されるものではなく、公知の顔料、染料等がいずれも使用できる。また、必要に応じてこれらを併用してもよい。実質的に水に不溶な着色材が好ましく、有機顔料、無機顔料およびカーボンブラックよりなる群から選択される少なくとも1種類の着色材がより好ましい。本明細書において「実質的に水に不溶な着色材」とは、水1リットルあたりの溶解度が通常0.5g以下、好ましくは0.1g以下、より好ましくは0.03g以下程度である着色材のことを意味する。
【0123】
着色材としては、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、体質顔料、分散染料等が挙げられる。これらの着色材は単独で使用してもよいし、2種類またはそれ以上を配合してもよい。
【0124】
有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;チオインジゴ系顔料;縮合アゾ系顔料;フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が挙げられる。
【0125】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、120、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー色の顔料;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、48:2、48:3、48:4、57、58、58:1、58:2、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド色の顔料;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー色の顔料;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット色の顔料;C.I.Pigment Orange 13、16、36、38、43、64、68、69、71、73等のオレンジ~ブラウン色の顔料;C.I.Pigment Green 7、36、54、58等のグリーン色の顔料;C.I.Pigment Black 1等のブラック色の顔料等が挙げられる。本明細書において「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。
【0126】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。特に黒色の着色材としてはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類としては、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの中では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが好ましい。
【0127】
カーボンブラックの具体例としては、例えば、Raven760ULTRA、Raven780ULTRA、Raven790ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1080ULTRA、Raven1170、Raven1190ULTRA II、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven2500ULTRA、Raven3500、Raven5000ULTRA II、Raven5250、Raven5750、Raven7000(以上、コロンビア・カーボン社製);Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Regal1330R、Regal1400R、Regal1660R、Mogul L(以上、キャボット社製);NEROX-305、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW200、NIPEX 150IQ、NIPEX 160IQ、NIPEX 170IQ、NIPEX 180IQ、Printex 35、Printex U、Printex V、 Printex 140U、 Printex 140V、 Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 5、Special Black 6(以上、オリオンエンジニアドカーボンズ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF-88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(以上、三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0128】
体質顔料として、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらの体質顔料は単独で使用されることはなく、通常、無機顔料または有機顔料と併用して使用される。併用する目的としては、流動性の改良等の効果が挙げられる。
【0129】
分散染料としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系等の分散染料が挙げられる。
【0130】
分散染料の具体例としては、例えば、C.I.Disperse Yellow 9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、237;C.I.Disperse Red 60、73、88、91、92、111、127、131、143、145、146、152、153、154、167、179、191、192、206,221、258、283;C.I.Disperse Orange 9、25、29、30、31、32、37、38、42、44、45、53、54、55、56、61、71、73、76、80、96、97;C.I.Disperse Violet 25、27、28、54、57、60、73、77、79、79:1;C.I.Disperse Blue 27、56、60、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、202、225、257、266、267、281、341、353、354、358、364、365、368等が挙げられる。
【0131】
着色組成物における着色材の含有量は、被記録体に十分な着色濃度を与える濃度であれば特に制限されないが、1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%であることがさらに好ましい。着色材の含有量が30質量%を超えると、分散媒体中での着色材密度が高くなり、着色材粒子の自由な移動が妨げられ、凝集といった問題が発生する可能性がある。
【0132】
着色組成物における着色材に対する分散剤の含有量は、着色材100質量部に対して5質量部~100質量部であることが好ましく、10質量部~70質量部であることが好ましく、10質量部~50質量部であることがさらに好ましい。分散剤の配合量が少なすぎると着色材を十分に分散することができず、分散剤の配合量が多すぎると着色材に吸着していない分散剤が分散媒体中に存在することになり好ましくない。
【0133】
(分散媒体)
前記着色組成物は、分散媒体としては、着色組成物を構成する他の成分を分散または溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度に揮発性を有するものである限り適宜に選択して使用でき、好ましくは水性溶媒である。前記水性溶媒としては、前記分散剤溶液の溶媒として例示した水性溶媒が挙げられる。
【0134】
着色組成物中の分散媒体の含有量は、特に限定されず、適宜調整することができる。着色組成物中の分散媒体の含有量の上限値は、通常99質量%である。また、着色組成物中の分散媒体の含有量の下限値は、インクジェット記録方法に適した粘度を考慮して、通常70質量%であり、80質量%であることが好ましい。
【0135】
(他の配合剤)
前記着色組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記分散剤、着色材および分散媒体以外に、他の配合剤を配合することができる。他の配合剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、防カビ剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物(前記ブロック共重合体を除く。)、水分散性樹脂、酸化防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0136】
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸またはその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型リン酸エステル、アルキル型リン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホコハク酸塩、ジエチルヘキシルスルホコハク酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらの中では、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩が好ましい。
【0137】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系等が挙げられる。これらの中では、サーフィノール、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが好ましい。
【0138】
カチオン界面活性剤としては、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0139】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0140】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0141】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
【0142】
防カビ剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンおよびその塩等が挙げられる。
【0143】
防腐剤としては、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、ペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
【0144】
pH調整剤としては、調製される着色組成物に悪影響を及ぼさずに、着色組成物のpHを例えば5~11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、モノ、ジ、またはトリエタノールアミン;N-メチルジエタノールアミン;モノ、ジ、またはトリプロパノールアミン;メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノ、ジ、またはトリメチルアミン;モノ、ジ、またはトリエチルアミン等のアルキルアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0145】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0146】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0147】
水溶性紫外線吸収剤としては、スルホ化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0148】
水溶性高分子化合物(前記ブロック共重合体を除く。)としては、水へ溶解する高分子であれば特に限定されないが、分散安定性の観点からアニオン性高分子およびノニオン性高分子が好ましい。アニオン性高分子の具体例としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸等のアクリル酸誘導体、およびポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン誘導体が挙げられる。ノニオン性高分子の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられる。
【0149】
水分散性樹脂は、常温で被膜化することにより着色組成物中の着色材を被記録材に定着させる働きを有する。水分散性樹脂に使用される樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂等が挙げられる。
【0150】
酸化防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0151】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。
【0152】
前記着色組成物をインクジェット記録に用いるときは、着色組成物中における金属陽イオンの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量は、少ないものが好ましい。無機不純物は、着色材の原末中に混在していることも多く、必要に応じて原末を精製することも好ましい。無機不純物の含有量の目安としては、おおよそ着色材の総質量に対して1%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。着色材から無機不純物を除去する方法としては、例えば、色素の乾燥品あるいはウェットケーキを適当な水溶性溶媒(例えば、メタノール等の炭素数が1~4のアルコール)および、必要に応じて水溶性有機溶剤と水との混合溶媒中で撹拌し、析出物を濾過分離して、乾燥する等の方法;イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法等で脱塩処理すればよい。
【0153】
前記着色組成物のpHは、保存安定性を向上させる目的およびインクジェットプリンタ部材との適合性から、通常pH7~11、pH8~10が好ましい。また、着色組成物の表面張力としては、通常10mN/m~50mN/mであり、20mN/m~40mN/mが好ましい。さらに、着色組成物の粘度(25℃)としては、通常2mPa・s~30mPa・sであり、3mPa・s~20mPa・sが好ましい。
【0154】
<着色組成物の製造方法>
前記着色組成物は、着色材、分散剤および分散媒体、ならびに必要に応じて、他の配合剤を混合することで調製できる。混合は、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダー等の混合分散機を用いることができる。着色組成物は、混合後に濾過することが好ましい。
【0155】
前記着色組成物中における着色材の個数平均粒子径は、着色組成物の保存安定性および吐出性の観点から、通常200nm以下、好ましくは50nm~200nm、より好ましくは70nm~170nm、さらに好ましくは80nm~130nmである。
【0156】
前記着色組成物は、各種分野において使用することができる。例えば、筆記、印刷、情報記録、捺染等の用途が挙げられ、特にインクジェット記録用途に好適に用いることができる。
【0157】
<着色体>
本発明の着色体は、前記着色組成物により着色された物質を意味する。前記着色体の材質は、前記着色組成物により着色される物質であれば特に制限されない。前記着色体としては、後述するインクジェット記録方法により着色された着色体(被記録材)が挙げられる。
【0158】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、前記着色組成物(以下、「インク」と称する場合がある。)の液滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0159】
前記記録方法に用いる方式としては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式等の、いずれの公知の方法も採用することができる。
【0160】
また、フォトインク等と呼称する、色素含有量の少ないインクを、小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相で、色素濃度の異なる複数のインクを併用して画質を改良する方式;無色透明のインクを用いる方式等の方式も含まれる。
【0161】
前記の被記録材としては、特に制限はないが、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。これらの中では情報伝達用シートが好ましい。
【0162】
情報伝達用シートとしては、紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが挙げられる。インク受容層は、例えば、上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは、通常、インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等と呼ばれる。
【0163】
これらのシートは表面光沢度が高く、また耐水性も優れるため、写真画像の記録に適している。このようなシートの市販品としては、例えば、キヤノン(株)製 商品名:プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールドおよびマットフォトペーパー;セイコーエプソン(株)製 商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製 商品名:アドバンスフォト用紙(光沢);富士フィルム(株)製 商品名:画彩写真仕上げPro等が挙げられる。
【0164】
インク受容層を有さない情報伝達用シートとしては、グラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙(例えば、王子製紙製のフォームグロスTM、OKトップコートTM、日本製紙製のオーロラコートTM、三菱製紙製のパールコートTM等);ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙等が挙げられる。
【0165】
また、インク受容層を有さない情報伝達用シートとしては、例えば、日本製紙社製のNpi70、三菱製紙社製のPD-W70等の普通紙も挙げられる。一般に普通紙は、表面に露出したパルプの繊維方向に沿ってインクの滲み(フェザリング)が発生し易い。そのため、多くの場合、水性インクの滲みを抑制するために、パルプ重量に対し、0.1%程度のサイズ剤が添加されている。このサイズ剤の添加は、インクの滲みを抑制し、画質を向上させる効果がある反面、インクの浸透速度を低下させることから、付着したインクの乾燥が遅くなる欠点を有する。インクの乾燥が遅くなると、例えば両面印刷するときに、インクの乾燥不良から画像の汚れや乱れ等が生じる。しかし、上記インク組成物を用いることにより、このような普通紙であっても良好な記録画像を得ることができる。
【0166】
インク受容層を有さない情報伝達用シートを用いるときは、表面改質処理を施すことも好ましく行われる。
【0167】
表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、およびフレーム処理から選択される、公知の表面改質処理が好ましい。ここで、表面改質処理の効果は、経時的に減少していくことが一般的に知られている。このため、表面改質処理工程とインクジェット記録工程とは連続して行うことが好ましく、表面改質処理工程をインクジェット記録工程の直前に行うことが好ましい。
【0168】
コロナ放電処理は、接地された金属ロールと、それに数mmの間隔で置かれた針金状の電極との間に数千ボルトの高電圧をかけてコロナ放電を発生させる処理方法である。
【0169】
コロナ放電中の電極-ロール間に、情報伝達用シートを配置して処理することにより、その表面が親水化される。
【0170】
プラズマ処理は、情報伝達用シートをアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化窒素、酸素、空気等を含む容器内におき、グロー放電により生ずるプラズマに暴露し、その表面に酸素、窒素等を含む官能基を導入することにより親水化処理が施される。アルゴンやネオン等の不活性ガスが低圧で存在するとき、プラズマにより、情報伝達用シートの表面にラジカルが発生すると考えられている。その後、空気に晒されることにより、ラジカルは酸素と結合して、該シートの表面にカルボキシ基やカルボニル基、アミノ基等が導入されると考えられている。
【0171】
フレーム処理は火炎処理ともいい、情報伝達用シートの表面にバーナー等から噴射したガス酸化炎等を吹きかけ、その表面を酸化することにより親水性を向上させる処理をいう。
【0172】
上記の表面改質処理は、所望の効果が得られるように、処理の回数;処理の時間;印可する電圧等を適宜調整して行うこともできる。
【0173】
<インクジェットプリンタ>
本発明のインクジェットプリンタは、前記着色組成物を収容する容器が装填されたインクジェットプリンタである。インクジェットプリンタは、インク(着色組成物)を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、インクを収容するための容器とを備え、前記容器には、前記記録ヘッドにインクを供給する供給部が備えらえている。また、インクジェットプリンタは、制御装置を備えており、この制御装置から前記記録ヘッドに記録信号を送信することで、記録動作が行われる。前記インクジェット記録方法で被記録材に記録を行うときは、例えば、前記着色組成物を収容する容器が装填されたインクジェットプリンタを使用する。前記着色組成物を収容する容器は、インクジェットプリンタの所定の位置に装填される。
【0174】
前記着色組成物は、含有する着色材を選択することにより、各色の着色組成物とすることができる。例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローの少なくとも4種類のインクを備えたインクセットとして、フルカラーの記録を行うこともできる。上記インクセットは、これら4種類のインクのうち少なくとも1種類のインクが、上記インク組成物であるインクセットである。また、上記インクセットは、より豊かな色彩等を表現するために、必要に応じて、グリーン、ブルー(またはバイオレット)、レッド(またはオレンジ)等の各色の着色組成物をさらに併用してもよい。各色の着色組成物はそれぞれの容器に注入され、その各容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録を行う。
【0175】
本発明の分散剤(ブロック共重合体)は、インクジェット専用紙のみならず、普通紙に記録したときであっても印字濃度が高く、耐水性、耐光性、耐擦化性等の堅牢性の高い、高品位で画像安定性の優れる印刷物が得られる。さらに、用紙の種類を変更した場合においても、色相変化が小さい色安定性の高い印刷物が得られる。
【実施例
【0176】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。また、各種物性測定は以下の機器により測定を行った。なお、略語の意味は下記のとおりである。
【0177】
BzMA:ベンジルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
BTEE:エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
DBDT:ジブチルジテルリド
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
AN:アセトニトリル
MEK:メチルエチルケトン
MeOH:メタノール
THF:テトラヒドロフラン
【0178】
[評価方法]
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(Bruker社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、1H-NMRを測定(溶媒:重水素化クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基と、ポリマー由来のエステル側鎖のピークの積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
【0179】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI))
高速液体クロマトグラフ(東ソー製、型式:HLC-8320)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。測定試料(重合生成物)は、測定前に、トリメチルシリルジアゾメタン・ヘキサン溶液(濃度:0.6mol/L)を用いて、カルボキシ基をメチル化した。カラムはTSKgel SuperMultipore HZ-H(Φ4.6mm×150mm)(東ソー社製)を2本、移動相にTHF、検出器に示差屈折率検出器を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を10mg/mL、試料注入量を10μL、流速を0.35mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(東ソー社製、TSK Standerd)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。これらの測定値から分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0180】
(酸価)
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。測定試料をTHFに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を数滴加え、0.1mol/L水酸化カリウム/2-プロパノール溶液で中和滴定した。次式により酸価(A)を算出した。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム/2-プロパノール溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化カリウム/プロパノール溶液の力価
w:測定試料の質量(g)(固形分換算)
【0181】
(ブロック共重合体の含有率)
高速液体クロマトグラフィー(商品名:HPLC 11Series、アジレント・テクノロジー製)、カラム(商品名:L-Column2 ODS 5μm、4.6×150mm、CERI製)、カラム温度40℃、検出器(ELSD PL-ELS2100、ポリマーラボラトリー製、エバポレーター温度80℃、ネブライザー温度70℃、ガス流量1.1SLM)、移動相A(アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=100:0.1体積比)、移動相B(THF:トリフルオロ酢酸=100:0.1体積比)を用いて、1mL/分の流速にて、10分間で移動相A100%から移動相B100%になるグラジエント条件で分析した。サンプルは10mg/mLのTHF溶液を10μL打ち込んだ。別途合成した、各ブロックの未連結成分を用いて検量線を作成し、それぞれ定量した。また、全体から未連結成分量を除いた残部をブロック共重合体の含有率とした。
【0182】
(粘度)
E型粘度計(商品名:TVE-22L、東機産業社製)を用い、コーンローター(0.8°×R24)を使用して、25℃下で粘度を測定した。なお、測定は、調製直後の着色組成物について行った。
【0183】
(着色材粒子径)
着色組成物0.6gに脱イオン水5.4gを加え、粒度分布計(FPAR-1000、大塚電子製)にて測定し、キュムラント解析結果の平均粒子径を取得した。なお、測定は、調製直後の着色組成物について行った。
【0184】
(再溶解性)
着色組成物25μlをマイクロピペットでガラスシャーレ上に滴下し、恒温恒湿槽(商品名:プラチナス(登録商標)S PR-2SP、タバイエスペック社製)で温度60℃、湿度40%で4時間乾燥させた。シャーレを取り出した後、室温に冷却した。シャーレ上の乾燥析出物に脱イオン水2mlを滴下し、乾燥析出物の再溶解状態を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:残渣なく乾燥析出物が再溶解した。
〇:残渣が若干残るが、ほとんど再溶解した。
×:残渣が多く、ほとんど再溶解しなかった。
【0185】
<重合生成物の製造>
(製造方法No.1)
窒素置換したグローブボックス内で、予め窒素置換したBzMA 19.92g、MAA 0.20g、BTEE 2.24g、DBDT 1.38g、AIBN 0.25g、AN 10.06g、MEK 10.06gを仕込み、52℃で19時間反応させた。重合率は99%であった。
【0186】
この反応液に、予め窒素置換したMMA 20.92g、MAA 8.96g、AN 14.94g、MEK 14.94gを加え、52℃で43時間反応させた。重合率は100%であった。また、反応液に残存していた重合1段目のモノマーも重合し、これらの反応液に残存していた重合1段目のモノマーの重合率は100%であった。
【0187】
反応終了後、反応液をTHFで希釈し、撹拌下のヘプタン中に注いだ。析出したポリマーを吸引濾過、乾燥し、重合生成物No.1を得た。重合生成物は、Mwは8,978、PDIは1.3、酸価は119mgKOH/g、重合1段目の未連結成分(Aブロックと同様の組成を有するポリマー)の含有率が3.5質量%、重合2段目の未連結成分(Bブロックと同様の組成を有するポリマー)の含有率が4.6質量%、ブロック共重合体の含有率は91.9質量%であった。なお、共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率、重合率および未連結成分の含有率から算出した。
【0188】
(製造方法No.2)
窒素置換したグローブボックス内で、予め窒素置換したBzMA 4.50g、MAA 0.05g、BTEE 0.51g、DBDT 0.31g、AIBN 0.06g、AN 2.25g、MEK 2.25gを仕込み、60℃で23時間反応させた。重合率は99%であった。
【0189】
この反応液に、予め窒素置換したMMA 4.73g、MAA 2.03g、AN 4.92g、MEK 4.92gを加え、60℃で21時間反応させた。重合率は97%であった。また、反応液に残存していた重合1段目のモノマーも重合し、これらの反応液に残存していた重合1段目のモノマーの重合率は100%であった。
【0190】
反応終了後、反応液をTHFで希釈し、撹拌下のヘプタン中に注いだ。析出したポリマーを吸引濾過、乾燥し、重合生成物No.2を得た。重合生成物は、Mwは9,161、PDIは1.4、酸価は114mgKOH/g、重合1段目の未連結成分(Aブロックと同様の組成を有するポリマー)の含有率が9.0質量%、重合2段目の未連結成分(Bブロックと同様の組成を有するポリマー)の含有率が5.6質量%、ブロック共重合体の含有率は85.3質量%であった。なお、共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率、重合率および未連結成分の含有率から算出した。
【0191】
(製造方法No.3~5)
製造方法No.1と同様にして、重合生成物No.3~5を作製した。表1に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、有機ジテルリド化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応条件、重合率を示した。また、表2に、各重合生成物のMw、PDI、酸価を示した。なお、共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率、重合率および未連結成分の含有率から算出した。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
製造方法No.1は、重合工程第1段目および重合工程第2段目の反応温度がいずれも52℃であり、アゾ系重合開始剤(AIBN)の10時間半減期温度(65℃)との差(T1/2-Tr)が13℃である。この製造方法No.1で得られた重合生成物は、所望とするブロック共重合体の含有率が92質量%と高く、重合体不純物が低減されている。
【0195】
製造方法No.2は、重合工程第1段目および重合工程第2段目の反応温度がいずれも60℃であり、アゾ系重合開始剤(AIBN)の10時間半減期温度(65℃)との差(T1/2-Tr)が5℃である。この製造方法No.2で得られた重合生成物は、所望とするブロック共重合体の含有率が85質量%と低く、重合体不純物の含有率が多い。
【0196】
製造方法No.3は、重合工程第1段目および重合工程第2段目の反応温度がいずれも52℃であり、アゾ系重合開始剤(AIBN)の10時間半減期温度(65℃)との差(T1/2-Tr)が13℃である。この製造方法No.3で得られた重合生成物は、所望とするブロック共重合体の含有率が88質量%と高く、重合体不純物が低減されている。
【0197】
製造方法No.4は、重合工程第1段目および重合工程第2段目の反応温度がいずれも60℃であり、アゾ系重合開始剤(AIBN)の10時間半減期温度(65℃)との差(T1/2-Tr)が5℃である。この製造方法No.4で得られた重合生成物は、所望とするブロック共重合体の含有率が81質量%と低く、重合体不純物の含有率が多い。
【0198】
製造方法No.5は、重合工程第1段目および重合工程第2段目の反応温度がいずれも52℃であり、アゾ系重合開始剤(AIBN)の10時間半減期温度(65℃)との差(T1/2-Tr)が13℃である。この製造方法No.5で得られた重合生成物は、所望とするブロック共重合体の含有率が86質量%と高く、重合体不純物が低減されている。
【0199】
<着色組成物>
(着色組成物No.1~4)
重合生成物が有する酸性基の70モル%を中和する量の水酸化カリウムを水に溶解し、その後、重合生成物を添加して重合生成物の部分中和物の水溶液(重合生成物の濃度20質量%)を得た。
【0200】
前記で得た重合生成物の部分中和物の水溶液 30質量部、着色材(C.I.Pigment Blue 15:3、商品名:Heliogen(登録商標) Blue K7097、BASF社製)10質量部、脱イオン水 36質量部、グリセリン 9.2質量部、ポリエチレングリコール1540 2.8質量部、2-ピロリドン 9.2質量部、1,2-ヘキサンジオール 1.8質量部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル 0.32質量部、オルフィン(登録商標)E1004(日信化学工業社製)0.32質量部、トリエタノールアミン 0.64質量部、プロキセルGXL(S)(ロンザジャパン社製)0.05質量部、0.3mmジルコニアビーズ400質量部を加え、ビーズミル(商品名:DISPERMAT CA、VMAGETZMANN GmbH社製)にて2時間混合し十分に分散させた。分散終了後、ビーズをろ別して着色材分散液を得た。
【0201】
得られた着色材分散液 60質量部、グリセリン 4.4質量部、ポリエチレングリコール1540 1.3質量部、2-ピロリドン 4.4質量部、1,2-ヘキサンジオール 0.87質量部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル 0.15質量部、オルフィンE1004(日信化学工業株式会社製)0.15質量部、トリエタノールアミン 0.31質量部、プロキセルGXL(S)(ロンザジャパン株式会社製)0.02質量部、脱イオン水 28質量部の配合で着色組成物を調製した。これらの粘度、着色材粒子径、再溶解性の評価結果を表3に示した。
【0202】
(着色組成物No.5~8)
着色組成物No.1の調製法と同様にして着色組成物No.5~8を調製した。これらの粘度、着色材粒子径の評価結果を表3に示した。なお、着色組成物No.5、6では、着色材をC.I.Pigment Green 58(商品名:FASTOGEN(登録商標) GREEN A310、DIC社製)に変更し、着色組成物No.7、8では、着色材をカーボンブラック(商品名:三菱カーボンブラック MA100、三菱ケミカル社製)に変更した。
【0203】
(着色組成物No.9)
着色組成物No.1の調製法と同様にして着色組成物No.9を調製した。この着色組成物No.9の粘度、着色材粒子径、再溶解性の評価結果を表3に示した。なお、着色組成物No.9では、着色材をC.I.Pigment Red 122(商品名:Cinquasia(登録商標) Magenta D4550J、BASF社製)に変更した。
【0204】
【表3】
【0205】
着色組成物No.1および3は、分散剤として前記重合生成物No.1または3を用いた場合である。これらの着色組成物No.1および3は、粘度が低く、かつ、着色材の粒子径も小さく、着色材の分散性に優れている。
【0206】
着色組成物No.2および4は、分散剤として前記重合生成物No.2または4を用いた場合である。これらの着色組成物No.2および4は、粘度が高く、かつ、着色材の粒子径も大きく、着色材の分散性が劣っている。よって、分散剤として使用する重合生成物の重合体不純物の含有率が高いと、分散性に劣ることがわかる。
【0207】
また、着色組成物No.1~4の再溶解性の評価結果から、分散剤として使用する重合生成物の重合体不純物の含有率が少ないと乾燥後の再溶解性に優れることが分かる。
【0208】
着色組成物No.5~8は、着色材としてGreen 58またはMA100を使用し、分散剤として前記重合生成物No.1または2を使用した場合である。同じ着色材を用いた着色組成物を比較すると、いずれも分散剤として前記重合生成物No.1を用いたものの方が、粘度が低く、かつ、着色材の粒子径も小さく、着色材の分散性に優れている。
【0209】
着色組成物No.9は、分散剤として前記重合生成物No.5を用いた場合である。この着色組成物No.9は、着色材の粒子径が小さく、着色材の分散性に優れ、着色組成物の再溶解性も優れている。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明の重合生成物は、着色組成物の着色材の分散剤として使用することができる。前記着色組成物は、インクジェットプリンタ用のインクに好適に使用できる。