(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ルビプロストン含有整粒物、ルビプロストン含有錠剤およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20240710BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20240710BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240710BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240710BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240710BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240710BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240710BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240710BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240710BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P1/10
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2020085536
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】隈元 信貴
(72)【発明者】
【氏名】及川 倫徳
(72)【発明者】
【氏名】杉田 優
(72)【発明者】
【氏名】土佐 絵理香
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/221215(WO,A1)
【文献】特表2019-529467(JP,A)
【文献】国際公開第2018/065826(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106692160(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108186597(CN,A)
【文献】特開2013-103899(JP,A)
【文献】特表2003-511445(JP,A)
【文献】国際公開第01/027099(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/104205(WO,A1)
【文献】特開2008-150342(JP,A)
【文献】特開2018-127446(JP,A)
【文献】特開2014-015459(JP,A)
【文献】特開2013-010751(JP,A)
【文献】特開2019-218313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルビプロストンと、
中鎖脂肪酸トリグリセリドと、
エチルセルロース、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上を含む吸着剤と、を含有するルビプロストン含有
整粒物。
【請求項2】
前記吸着剤はエチルセルロースである請求項
1に記載のルビプロストン含有
整粒物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のルビプロストン含有
整粒物を含むルビプロストン含有錠剤。
【請求項4】
ルビプロストンを
中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解し、
エチルセルロース、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上を含む吸着剤に吸着させること、
を含む、ルビプロストン含有
整粒物の製造方法。
【請求項5】
前記吸着剤はエチルセルロースである請求項
4に記載のルビプロストン含有
整粒物の製造方法。
【請求項6】
請求項
4または5に記載のルビプロストン含有
整粒物を含む混合物を打錠する、ルビプロストン含有錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルビプロストン含有組成物、ルビプロストン含有錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルビプロストン(7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1―ジフルオロペンタン-1-イル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸)は、小腸上皮に存在するClC-2クロライドチャネルを特異的に活性化するプロスタグランジン(PG)化合物である。ClC-2クロライドチャネルを活性化することで小腸における水分分泌が促進されるので、便の水分含有量が低下している便秘症に対して有効である。ルビプロストンを含有する慢性便秘症治療薬として、例えば、アミティーザ(登録商標)カプセル(Amitiza(登録商標)Capsules)がある(非特許文献1)。アミティーザカプセルは、中鎖脂肪酸トリグリセリドにルビプロストンを溶解させた溶液を軟カプセルに封入した製剤である。軟カプセルあたりルビプロストンは12μgないし24μgという極めて少ない量で含有する。
【0003】
軟カプセル製剤は、原薬含有溶液ないし懸濁液をカプセル封入するための設備が必要であるため製造コストが高く、封入工程の管理も煩雑である。また、軟カプセル製剤は分割投与ができないため、投与量の調節が難しく、必ずしも利便性が高いとは言えない剤形である。従って、錠剤や顆粒剤などこれらの欠点をなくした剤形で製剤化されることが望まれる。
【0004】
しかしながら錠剤や顆粒剤などの剤形での製剤化にあたっては、製剤単位当たりのルビプロストン含量が極めて少量であるため、含量が均一であり、また、製造工程でのルビプロストンないしルビプロストン含有組成物のハンドリング性に優れた製剤とするのは困難であった。
【0005】
また、ルビプロストンが熱、水の存在によりその安定性が著しく低下することにも注意する必要があり、ルビプロストンの安定性向上のためにこれまでにいくつかの検討がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1にはポビドン等で安定性が向上されたルビプロストン含有多層ビーズが開示されている。また、特許文献2にはルビプロストンと高分子化合物からなる固体分散体を用いて製造される錠剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2019-529467号公報
【文献】国際公開第2019/221215号
【非特許文献】
【0008】
【文献】アミティーザ(登録商標)カプセル 医薬品インタビューフォーム 2018年12月改訂(第10版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安定性を向上したルビプロストン含有組成物、ルビプロストン含有錠剤及びその製造方法を提供することを目的の一つとする。また、製剤物性を向上したルビプロストン含有錠剤及びその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によると、ルビプロストンと、エチルセルロース、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上を含む吸着剤と、を含有するルビプロストン含有組成物が提供される。ルビプロストン含有組成物は、さらにグリセリドを含有してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態によると、ルビプロストンと、エチルセルロース、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上を含む吸着剤と、を含有するルビプロストン含有組成物を含むルビプロストン含有錠剤が提供される。ルビプロストン含有組成物は、さらにグリセリドを含有してもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によると、ルビプロストンを溶剤に溶解し、エチルセルロース、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上を含む吸着剤に吸着させること、を含むルビプロストン含有組成物の製造方法が提供される。溶剤はグリセリドであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によると、上記ルビプロストン含有組成物を含む混合物を打錠する、ルビプロストン含有錠剤の製造方法が提供される。
【0014】
グリセリドは中鎖脂肪酸トリグリセリドであってもよい。吸着剤はエチルセルロースであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、保存時にルビプロストンの分解が抑制さるルルビプロストン含有組成物、ビプロストン含有錠剤及びその製造方法が提供される。また、十分な硬度と崩壊時間が両立されるビプロストン含有錠剤及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るルビプロストン含有組成物、ルビプロストン含有錠剤及びその製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明のルビプロストン含有組成物、ルビプロストン含有錠剤及びその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
本発明者らは、後述する実施例にも示すようにルビプロストン含有製剤の安定性を改善するために種々の添加剤について検討を行ったところ、エチルセルロースをはじめとする特定の吸着剤がルビプロストンの安定性に寄与することを見いだした。また、ルビプロストンを溶剤に溶解したルビプロストン溶液を吸着剤に吸着させてルビプロストン含有組成物を製造することで、ルビプロストンが安定に保たれかつ錠剤の製造にも最適な組成物を簡便に製造できることを見いだした。さらに、吸着剤としてエチルセルロースを用いることで十分な硬度と崩壊性を持つ錠剤となることを見いだした。特許文献1、2には、吸着剤がルビプロストンの安定性に寄与し得ることは開示も示唆もされておらず、また、ルビプロストンを溶剤に溶解し吸着剤に吸着させることについては開示も示唆もない。さらに特許文献1、2にはルビプロストンの安定性向上のために、コーティングや固体分散体化を行うことが開示されているが、いずれの手法も実生産においては手間がかかる工程である。
【0018】
本実施形態のルビプロストンは、7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1―ジフルオロペンタン-1-イル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸である。ルビプロストンの含有量は、期待される治療効果に応じて適宜選択可能であるが、例えば、ルビプロストン含有錠剤の1錠中に0.012mgまたは0.024mg含まれている。
【0019】
本発明の一実施形態に係るルビプロストン含有組成物は、ルビプロストンと、溶剤と、吸着剤を含有する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る吸着剤は、例えば、クロスポビドン、ポビドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物、ステアリン酸、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、およびヒプロメロースフタル酸エステルからなる群から選択される一つ以上である。エチルセルロースは、ルビプロストンの安定化に優れ、特に好ましい。本実施形態において、吸着剤は、ルビプロストンを溶剤に溶解したルビプロストン溶液を吸着させることにより、保存時のルビプロストンの残存率を向上し、ルビプロストンの安定性を向上することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係るルビプロストンを溶解する溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの有機溶剤、グリセリドからなる群から選択される一つ以上である。グリセリドは、ルビプロストンの安定化を損ねないため、特に好ましい。グリセリドとしては、分枝鎖を有し得る飽和または不飽和脂肪酸のグリセリドがあげられる。好ましい脂肪酸としては、少なくともC6、好ましくはC6-24の炭素原子を有する中鎖または高鎖脂肪酸であり、例えばカプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、リシノール酸(C18)およびアラキン酸(C20)などをあげることができる。C6-12の炭素原子を有する中鎖脂肪酸トリグリセリドであることが特に好ましい。
【0022】
本発明に係るルビプロストン含有組成物は、一実施形態において必要な添加物とともに、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤等とすることができる。本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤は、錠剤の形態であれば、特に制限はなく、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠も含まれる。
【0023】
添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、着色剤、滑沢剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また2種以上である場合、あらかじめ複数の添加剤を混合して造粒した、いわゆるプレミックス添加剤を含有していても良い。
【0024】
賦形剤としては、例えば、デンプン、結晶セルロース、セルロース誘導体およびその塩、デキストリン、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、メタクリル酸コポリマー、無水リン酸水素カルシウム、白糖、タルク(天然合水ケイ酸マグネシウム)、カオリン、沈降炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
結合剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、トラガント、ゼラチン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒプロメロース、エチルセルロース、カルメロース、メタクリル酸コポリマー、白糖、水あめ、アラビアゴム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カンテン末等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、レシチン、α-トコフェロール、ヒドロキノン、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸イソアミル、ノルジヒドログアイアレティック酸、グアヤク脂、α-ナフチルアミン、プロトカテキュ酸エチル(EPG)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、システイン塩酸塩、アスコルビン酸ステアリン酸ナトリウム、チオグリセロール、チオソルビトール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、タール色素等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
滑沢剤としては、例えば、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ホウ酸、パラフィン、ココアバター、マクロゴール、ロイシン、安息香酸ナトリウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤は、ルビプロストン含有組成物と添加剤を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することで、保存時のルビプロストンの残存率が向上し、ルビプロストンの安定性を向上することができる。さらに、エチルセルロースを吸着剤として用いた本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤は、実用面で問題のない硬度と良好な崩壊性を有する。ルビプロストン含有錠剤は、1錠当たりのエチルセルロース含量が6mg以上24mg以下となるルビプロストン含有組成物を含有することが好ましい。
【0031】
本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤の製造方法は、まずルビプロストン含有組成物を製造し、次いでルビプロストン含有組成物を含む混合物を打錠することでルビプロストン含有錠剤を製造する。本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤は、薬学分野において公知の製造方法に従って製造することができる。
【0032】
本実施形態に係るルビプロストン含有組成物は、まずルビプロストンを溶剤と混合し、ルビプロストンを溶剤に溶解させる。次いでルビプロストン溶液を、吸着剤に吸着させる。このとき、他の添加剤を吸着剤と混合し、この混合物に、ルビプロストン溶液を吸着させてもよい。
【0033】
吸着剤にルビプロストン溶液を吸着させる方法としては、吸着剤にルビプロストン溶液を混合して吸着させる方法、ルビプロストン溶液に吸着剤を混合して吸着させる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以上の工程により、本発明に係るルビプロストン含有組成物を製造することができる。
【0034】
本実施形態に係るルビプロストン含有錠剤は、ルビプロストン含有組成物を整粒し、得られた整粒物に添加剤を混合して打錠することで製造することができる。また打錠によって形成された錠剤は、例えばフィルムコーティングしてもよい。
【実施例】
【0035】
本発明に係るルビプロストン含有組成物及びルビプロストン含有錠剤の製造方法の一例を以下に示すが、この記載は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
【0036】
(ルビプロストン含有組成物の製造)
ルビプロストン0.024mg当たり黄色5号0.004mgを混合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド0.452mgに溶解した。ルビプロストンを溶解したルビプロストン溶液と各吸着剤24mgとを乳鉢にて混合して、ルビプロストン含有組成物を得た。
【0037】
(ルビプロストン含有組成物の安定性)
ルビプロストン含有組成物は、褐色瓶に密栓し、加速条件下(40℃75%RH)で1週間保存した。保存前後のルビプロストン含有組成物におけるルビプロストン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC分析)で3回測定し、加速条件保存前のルビプロストン量を100%とした加速条件保存後のルビプロストンの平均残存率(%)を算出した。各試料に含まれる吸着剤の種類と、HPLC分析の結果を表1に示す。
【0038】
HPLC分析の具体的な条件としては、Develosil ODS-UG-5、φ3.0×100mm、5μmを用いて、0.1%ギ酸溶液及びアセトニトリルを移動相として、ESIイオン化法、ネガティブイオンモードにて検出した。
【0039】
【0040】
表1は、試料1から試料21における保存後のルビプロストン含有組成物中のルビプロストン平均残存率を示す。表1に示すように、各種賦形剤を吸着剤として用いた試料1から試料5のルビプロストン含有組成物は、何れも加速条件下で1週間保存後においてルビプロストン含有量が低下した。各種多孔質添加剤を吸着剤として用いた試料6から試料10のルビプロストン含有組成物も、何れも加速条件下で1週間保存後においてルビプロストン含有量が低下した。一方で、試料11:クロスポビドン(コリドン(登録商標)CL-F)、試料12:ポビドン(アイフタクトK-30)、試料13:酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体(コリドン(登録商標)VA64)、試料14:D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物(Smart Ex)、試料15:ステアリン酸(植物)、試料18:エチルセルロース(エトセル-7FP)、試料21:ポリビニルアルコール(PVA)を吸着剤として用いたルビプロストン含有組成物は、加速条件下で1週間保存後においてもルビプロストン含有量がほとんど低下しなかった。
(ルビプロストン含有錠剤の製造)
【実施例1】
【0041】
ルビプロストン0.024mg当たり黄色5号0.004mgを混合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド0.452mgに溶解した。ルビプロストンを溶解したルビプロストン溶液とエチルセルロース(エトセル-7FP)24mgとを乳鉢にて混合して、ルビプロストン含有組成物を得た。得られたルビプロストン含有組成物は、篩30号で整粒した。ルビプロストン含有錠剤1錠当たり整粒したルビプロストン含有組成物24.48mg、D-マンニトール・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ポリビニルアルコール混合物(Smart Ex)171.52mgを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム(植物)4mgを混合し、ロータリー打錠機(VELA5、株式会社菊水製作所)により打錠成形し、200.0mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例2】
【0042】
ルビプロストン含有錠剤1錠当たりの整粒したルビプロストン含有組成物が12.24mgであること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、187.76mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例3】
【0043】
ルビプロストン含有錠剤1錠当たりの整粒したルビプロストン含有組成物が6.12mgであること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、181.64mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例4】
【0044】
エチルセルロースの代わりにクロスポビドン(コリドン(登録商標)CL-F、BASFジャパン株式会社)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例5】
【0045】
エチルセルロースの代わりにポビドン(アイフタクトK-30、第一工業製薬株式会社)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例6】
【0046】
エチルセルロースの代わりに酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体(コリドン(登録商標)VA64、BASFジャパン株式会社)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例7】
【0047】
エチルセルロースの代わりにヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP(登録商標)、信越化学工業株式会社)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例8】
【0048】
エチルセルロースの代わりにアンモニオアルキルメタクリルレートコポリマー(オイドラギットRS100、Evonik Nutrition & Care GmbH)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【実施例9】
【0049】
エチルセルロースの代わりにアンモニオアルキルメタクリルレートコポリマー(オイドラギットRL100、Evonik Nutrition & Care GmbH)を用いること以外は、実施例1と同様に打錠成形し、200.00mg/錠のルビプロストン含有錠剤を得た。
【0050】
(ルビプロストン含有錠剤の安定性)
ルビプロストン含有錠剤は、褐色瓶に移し、加速条件下(40℃75%RH)で1週間保存した。保存前後のルビプロストン含有錠剤におけるルビプロストン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC分析)で測定し、加速条件保存前のルビプロストン量を100%とした加速条件保存後のルビプロストンの残存率(%)を算出した。各試料に含まれる吸着剤の種類と量、HPLC分析の結果(n=3の平均値)を表2に示す。
【0051】
HPLC分析の具体的な条件としては、Develosil ODS-UG-5、φ3.0×100mm、5μmを用いて、0.1%ギ酸溶液及びアセトニトリルを移動相として、ESIイオン化法、ネガティブイオンモードにて検出した。
【0052】
【0053】
表2は、実施例1~9における保存後のルビプロストン含有錠剤中のルビプロストン残存率を示す。表2に示すように、実施例1~9に係る吸着剤としてエチルセルロースを用いたルビプロストン含有組成物を含むルビプロストン含有錠剤はいずれも、加速条件下で1週間保存後においてもルビプロストン含有量がほとんど低下しなかった。
【0054】
(ルビプロストン含有錠剤の製剤物性)
上述のルビプロストン含有錠剤の硬度と崩壊時間を測定した。各試料に含まれる吸着剤の種類と量、硬度と崩壊時間を表3に示す。
【0055】
【0056】
表3は、実施例1~9におけるルビプロストン含有錠剤の硬度と崩壊時間を示す。表3に示すように、実施例1~3に係る吸着剤としてエチルセルロースを用いたルビプロストン含有組成物を含むルビプロストン含有錠剤は、硬度と崩壊時間が良好であった。
【0057】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。