(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20240710BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20240710BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240710BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20240710BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
E04D1/30 603H
H02S20/23 B
H02S20/10 T
(21)【出願番号】P 2020087080
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 善生
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-028283(JP,A)
【文献】特開2008-255715(JP,A)
【文献】特開2013-174113(JP,A)
【文献】特開2019-015123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
E04D 1/30
H02S 20/23
H02S 20/10
E04B 7/02
E04B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根フレームと屋根面材とを有する屋根パネルに、前記屋根面材の上面を覆うように太陽光パネルが複数枚設置され、
該太陽光パネルが設置された前記屋根パネルを、前記屋根フレームどうしを近接させた状態で隣接配置し、
隣接された前記屋根パネルの近接する前記屋根フレーム間を、該屋根フレームに沿って延びる下向きC字断面のカバー材で上から覆った屋根構造であって、
前記屋根フレームと前記カバー材との間には、固定金具が設置され、
前記カバー材は、複数枚の前記太陽光パネルの間の位置にて、前記屋根フレームに前記固定金具を介して、側方から横方向にビスで固定され
、
前記固定金具は、前記カバー材の側面に設けられた固定用の下穴と合致する位置の手前側と奥側とに、大きさの異なる2つの下穴を有し、
前記固定金具は、
手前側の前記下穴が形成された手前側の縦面部と、
奥側の前記下穴が形成された奥側の縦面部と、
二つの前記縦面部の上端部間を連結して、下向きC字断面の前記カバー材の上面を下側から当接支持する第一の横面部と、
奥側の前記縦面部の下端部から奥側へ延びて、前記屋根フレームの上端部に設けられた水平な上面に上側から当接固定可能な第二の横面部と、を有していることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の屋根構造であって、
前記固定金具は、手前側の前記縦面部が、下方へ延びる立下部を有しており、
該立下部は、前記屋根面材の縁部に設けられた、前記屋根フレームの前記上面の位置へ向けて立ち上がる立上部と、下向きC字断面の前記カバー材の前記側面の内面との間を、前記屋根フレームの前記上面よりも低い位置まで延ばされていることを特徴とする屋根構造。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の屋根構造であって、
前記ビスが、防水ワッシャー付きのビスとされていると共に、
前記ビスの頭部がコーキング剤で覆われていることを特徴とする屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の上部には屋根が設置される。このような屋根には、工場で予め製造した屋根パネルを、建築現場で建物(建物本体)の上に並べて設置した屋根構造を有するものが存在している(例えば、特許文献1参照)。そして、このような屋根パネルに対し、工場で予め太陽光パネルを取付けておくことも行われている。
【0003】
屋根パネルは、屋根フレームと屋根面材とを有するものとされている。屋根面材の上には、屋根面材を覆うように太陽光パネルが複数枚設置される。複数枚の太陽光パネルは、各屋根パネルに対して屋根フレームに沿うように並べて設置される。
【0004】
建物本体の上に屋根パネルを複数並べて設置した状態では、隣接する屋根パネルの屋根フレームどうしが互いに近接配置される。
【0005】
そして、近接する屋根フレームの間には、下向きC字断面のカバー材が、上から被せるようにして取付けられる。カバー材は、屋根フレームに沿って延びる長尺材とされて、互いに近接している屋根フレームを同時に覆い隠す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場で予め製造した屋根パネルを、建物本体の上に並べて設置する屋根構造では、これまで、屋根フレームに対してカバー材を、上側から下へ向けてビスで直接固定するようにしていた。そのため、屋根フレームに対するカバー材のビスによる上下方向の固定部分には、漏水リスクが生じることになる。そこで、ビスによる上下方向の固定部分に対して厳重な防水施工を行うことが必要になっていた。これにより、上記した固定部分の防水構造が複雑になると共に、防水施工に多くの手間を要していた。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対して、本発明は、
屋根フレームと屋根面材とを有する屋根パネルに、前記屋根面材の上面を覆うように太陽光パネルが複数枚設置され、
該太陽光パネルが設置された前記屋根パネルを、前記屋根フレームどうしを近接させた状態で隣接配置し、
隣接された前記屋根パネルの近接する前記屋根フレーム間を、該屋根フレームに沿って延びる下向きC字断面のカバー材で上から覆った屋根構造であって、
前記屋根フレームと前記カバー材との間には、固定金具が設置され、
前記カバー材は、複数枚の前記太陽光パネルの間の位置にて、前記屋根フレームに前記固定金具を介して、側方から横方向にビスで固定され、
前記固定金具は、前記カバー材の側面に設けられた固定用の下穴と合致する位置の手前側と奥側とに、大きさの異なる2つの下穴を有し、
前記固定金具は、
手前側の前記下穴が形成された手前側の縦面部と、
奥側の前記下穴が形成された奥側の縦面部と、
二つの前記縦面部の上端部間を連結して、下向きC字断面の前記カバー材の上面を下側から当接支持する第一の横面部と、
奥側の前記縦面部の下端部から奥側へ延びて、前記屋根フレームの上端部に設けられた水平な上面に上側から当接固定可能な第二の横面部と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、屋根フレームに対するカバー材のビスによる固定部分の防水構造を簡略化しつつ防水信頼性を向上させることなどができる。
また、固定金具は、カバー材の側面に設けられた固定用の下穴と合致する位置の手前側と奥側とに、大きさの異なる2つの下穴を有することにより、カバー材を固定金具に対して(側方から横方向に)、ビスで容易に固定できるようになる。
そして、固定金具は、手前側の下穴が形成された手前側の縦面部と、奥側の下穴が形成された奥側の縦面部と、二つの縦面部の上端部間を連結して、下向きC字断面の前記カバー材の上面を下側から当接支持する第一の横面部と、奥側の縦面部の下端部から奥側へ延びて、屋根フレームの上端部に設けられた水平な上面に上側から当接固定可能な第二の横面部と、を有することで、カバー材を屋根フレームに対して側方から横方向へビスで固定することが可能な固定金具を実際に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】建物本体の上部に、本実施例にかかる屋根構造を有する屋根を設置した建物の斜視図である。
【
図3】建物本体に対する屋根パネルの取付状態を示す斜視図である。
【
図4】屋根フレームに対するカバー材の固定部分の拡大縦断面図である。
【
図5】太陽光パネルの取付金具の部品図(側面図)である。
【
図6】カバー材の固定金具の部品図(側面図)である。
【
図7】比較例にかかるカバー材の固定部分の防水構造を示す部分拡大斜視図である。
【
図8】
図7の固定部分に上方から短いジョイントカバーを被せる状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図8は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0013】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、住宅などの建物1の上部に屋根2を設置する。この屋根2を、
図2に示すように、工場で予め製造した屋根パネル3を、
図3に示すように、建築現場で建物1(建物本体1a)の上に並べて設置する屋根構造とする。そして、この屋根パネル3に対して、工場で予め太陽光パネル5を取付ける。
【0015】
ここで、建物1は、どのような構造ものであっても良いが、ユニット建物とするのが好ましい。ユニット建物は、予め工場で製造した建物ユニット7を建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。建物ユニット7は、ほぼ直方体状のものとされる。建物ユニット7には、鉄骨系のものと木質系のものとが存在している。
【0016】
鉄骨系の建物ユニット7は、4本の柱7aの上端間を4本の天井梁7bで平面視矩形状に連結すると共に、4本の柱7aの下端間を4本の床梁で平面視矩形状に連結してなるボックスラーメン構造のユニットフレームを有している。
【0017】
屋根2は、建物本体1aの上部に、少なくとも建物本体1aの上面全体を覆うようにほぼ水平に設置される。屋根2は、所要の排水勾配を有して設置されても良い。
【0018】
屋根パネル3は、屋根2を構成するパネルであり、建物ユニット7に合わせた所要の大きさとなるように工場で予め製造される。隣接する屋根パネル3は、連結金具8(
図4)によって互いに連結固定される。
【0019】
建物本体1a(
図1)は、建物ユニット7によって構成された建物1(ユニット建物)の本体部分のことである。
【0020】
屋根構造は、建物本体1aの上部に、屋根パネル3を設置することで構成された屋根2の構造のことである。建物本体1aが多階建ての場合、屋根パネル3は、建物本体1aの最上階の建物ユニット7の上部に設置される。
【0021】
太陽光パネル5は、太陽光によって発電を行わせるようにしたパネル状の発電装置である。太陽光パネル5には、各種のものが存在しているが、例えば、CISモジュールなどとすることができる。CISモジュールは、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)の3つの元素を主原料とする化合物半導体系太陽電池などのことである。太陽光パネル5は、平面視ほぼ矩形状とされ、取付金具9(
図4)によって屋根パネル3に一体的に取付けられる。
【0022】
図2に示すように、屋根パネル3は、屋根フレーム11と屋根面材12とを有するものとなっている。屋根面材12の上には、屋根面材12を覆うように太陽光パネル5が複数枚設置される。複数枚の太陽光パネル5は、各屋根パネル3に対して屋根フレーム11に沿うように並べた状態でほぼ水平に設置される。太陽光パネル5は、それぞれ所要の排水勾配を有して屋根面材12の上に設置されても良い。太陽光パネル5は、その上面の少なくとも一部が、屋根フレーム11よりも高くなるように設置される(
図4)。
【0023】
図3に示すように、建物本体1aの上に屋根パネル3を複数並べて設置した状態では、隣接する屋根パネル3の屋根フレーム11どうしが互いに平行な状態で近接配置される。
【0024】
そして、近接する屋根フレーム11の間には、下向きC字断面のカバー材13(
図4)が、上から被せるようにして取付けられる。カバー材13は、屋根フレーム11に沿って延びる長尺材とされて、互いに近接する屋根フレーム11を同時に覆い隠す。
【0025】
ここで、
図2に示すように、屋根フレーム11は、屋根パネル3の外側の枠部分を構成する部材である。屋根フレーム11は、少なくとも一対設けられる。一対の屋根フレーム11は、間に屋根面材12を設置できる間隔を有してほぼ平行に設置される。屋根フレーム11には、縦向きのウェブ部11aの上縁部と下縁部とに、それぞれ横向きの上フランジ11bと下フランジ11cとを一体に有するC字断面の鋼材などが、内向きの状態にして用いられる。
【0026】
図4に示すように、連結金具8は、縦面8aと横面8bとを有するL型のアングル材とされて、一方の屋根パネル3の屋根フレーム11のウェブ部11aと、(この屋根フレーム11に近接する)他方の屋根パネル3の屋根フレーム11の上フランジ11bとの間を連結固定する。
連結金具8は、工場で一方の屋根パネル3の屋根フレーム11のウェブ部11aの外面に縦面8aが当接配置されて、ビス14などの固定具によって外側から横方向に固定される。ビス14には、屋根面材12に干渉しない長さのものが使われる。
連結金具8は、建築現場で他方の屋根パネル3の屋根フレーム11における、上フランジ11bの上面に横面8bが当接配置されて、ビス15などの固定具によって上側から下方向に固定される。ビス15には、屋根面材12に達しない長さのものが使われる。
【0027】
図5(
図4)に示すように、取付金具9は、太陽光パネル5の下面と、屋根フレーム11の上フランジ11bとの間を固定する。取付金具9は、少なくとも、太陽光パネル5の下面に取付けられるほぼ水平な第一の取付面9aと、屋根フレーム11の上フランジ11bの上面に取付けられるほぼ水平な第二の取付面9bと、高低差を有する両取付面9a,9bの間を連結する段差部9cとを有している。取付金具9は、段差部9cと下側の第一の取付面9aとの間に、第一の取付面9aよりも下方へ延びるように迂回する水切用の下方迂回部9dを有しても良い。
【0028】
取付金具9は、工場で太陽光パネル5の下面に第一の取付面9aがボルト・ナットなどの締結具16によって上下方向17に締結固定される。取付金具9は、工場で屋根フレーム11の上フランジ11bの上面に第二の取付面9bが直接または間接的に当接配置されて、ビス18などの固定具によって上側から下方向に固定される。
【0029】
図2(
図4)に示すように、屋根面材12は、屋根パネル3の面を構成する部材であり、一対の屋根フレーム11の内側にほぼ水平に設置される。屋根面材12は、一対の屋根フレーム11に対し、所要の排水勾配を有して取付けられても良い。屋根面材12は、木製の屋根下地材21や、防水シート22(
図4)や、下地鋼板23などからなる多層構造を備え、これらは下から上に順に積み重ねられた状態で設置される。
【0030】
図4に示すように、屋根下地材21は、平坦な板状をしており、屋根フレーム11のウェブ部11aの内面にネジ24などの固定具で外側から横方向に取付けられた取付桟部25の上に、両側縁部を載置した状態で、取付桟部25に釘26などの固定具で上側から下方向に固定される。取付桟部25は、屋根フレーム11に沿って延びるものとされる。取付桟部25は、屋根フレーム11に対し、ほぼ水平に取付けられても良いし、所要の排水勾配を有して取付けられても良い。屋根面材12の設置角度は、屋根フレーム11に対する取付桟部25の取付角度によって設定される。
【0031】
屋根下地材21の両側縁部は、屋根フレーム11のウェブ部11aの内面にほぼ達するか若干達しない程度の長さに形成される。
【0032】
防水シート22は、薄いシート状をした防水材である。防水シート22の本体部分は、屋根下地材21の上面全体を覆うように、屋根下地材21の上に重ねて敷設される。更に、防水シート22は、本体部分の側縁部22aが屋根フレーム11のウェブ部11aに達する以上の長さに形成され、ウェブ部11aの内面に沿って上方へ曲げられる。
【0033】
下地鋼板23は、防水性や耐食性を有する鋼板とされる。下地鋼板23の本体部分は、防水シート22の上面のほぼ全体を覆うように、防水シート22の上に重ねて設置される。下地鋼板23は、本体部分の両側縁部に屋根フレーム11の上面(上フランジ11b)の位置へ向けて立ち上がる立上部23aを一体に有している。立上部23aは、屋根フレーム11の上フランジ11bの先端部のほぼ真下の位置から上へ向けてほぼ垂直に立ち上げられる。立上部23aの上端部には、上フランジ11bの上面に上から面接触されて、上フランジ11bに上下方向17に係止されるほぼ水平な横曲部23b(外曲部)が一体に形成される。横曲部23bは、上フランジ11bとほぼ同じか、それよりも若干広い幅となるように形成されて、上フランジ11bを上からほぼ覆い隠す。
【0034】
そして、取付金具9の段差部9cは、下地鋼板23の立上部23aの内面側(屋根パネル3の幅中央へ向かう面の側)に設置される(図では、都合上、取付金具9の取付位置を外側にズラして立上部23aと重なるように描いている)。取付金具9の第二の取付面9bは、下地鋼板23の横曲部23bの上側に設置される。
【0035】
カバー材13は、隣接する屋根パネル3間に設置される保護部材および化粧部材である。下向きのC字断面形状をしたカバー材13は、上面部13aと、上面部13aの両側縁部から下方へ延びる一対の側面部13bとを一体に有している。カバー材13の上面部13aは、互いに隣接する屋根パネル3の近接する屋根フレーム11間に跨る幅寸法を有している。カバー材13の上面部13aの裏側(下面側)には、所要の厚みのスペーサ27などを取付けることができる。カバー材13の側面部13bは、屋根面材12(の下地鋼板23の本体部分)の上面に僅かに達しない程度またはそれよりも若干短い長さに形成される。この実施例では、カバー材13の一対の側面部13bは、取付金具9の下方迂回部9dと干渉しない長さに形成されている。なお、下方迂回部9dは、屋根面材12に僅かに達しない程度の長さに形成されている。
【0036】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0037】
(1)上記したような、屋根フレーム11と屋根面材12とを有する屋根パネル3に、屋根面材12の上面を覆うように太陽光パネル5が複数枚設置され、
太陽光パネル5が設置された屋根パネル3を、屋根フレーム11どうしを近接させた状態で隣接配置し、
隣接された屋根パネル3の近接する屋根フレーム11間を、屋根フレーム11に沿って延びる下向きC字断面のカバー材13で上から覆った屋根構造に対し、
図4に示すように、屋根フレーム11とカバー材13との間には、固定金具31が設置されるようにする。
そして、カバー材13は、複数枚の太陽光パネル5の間の位置A(
図1)にて、屋根フレーム11に固定金具31を介して、側方から横方向にビス32で固定されるようにする。
【0038】
ここで、固定金具31は、屋根フレーム11とカバー材13とを間接的に固定する金具である。固定金具31は、カバー材13の両側面部13bに合わせて、互いに近接する屋根フレーム11の両方に取付けられる。固定金具31は、工場で屋根フレーム11の上フランジ11bの上面に、下地鋼板23の横曲部23bの上から設置されて、下地鋼板23の横曲部23bと共に、上方から下方へ向けてビス33で上フランジ11bに予め取付けられる(なお、図では、ビス33は、太陽光パネル5の取付金具9を屋根フレーム11の上フランジ11bに取付けるビス18と、奥行き方向の同じ位置に取付けられている)。
【0039】
そして、固定金具31は、建築現場で、近接する屋根フレーム11間に被せたカバー材13の側面部13bを、ビス32で側方から固定する。固定金具31は、最終的に、カバー材13で覆われることにより、屋根フレーム11とカバー材13との間に、外部からは見えないように隠される。固定金具31が設置されることによって、カバー材13の上面部13aと、屋根フレーム11の上フランジ11bまたは下地鋼板23の横曲部23bとの間には、空間が形成される。
【0040】
太陽光パネル5の間の位置Aは、屋根パネル3に、屋根フレーム11に沿って設置された複数枚の太陽光パネル5における、各屋根パネル3内で隣接する太陽光パネル5の間の隙間となる部分のことである。なお、隣接する屋根パネル3で、太陽光パネル5の間の位置Aは異なっていても良いが、この実施例では、太陽光パネル5の間の位置Aは、隣接する屋根パネル3で同じになっている。
【0041】
側方は、カバー材13の側面部13bや屋根フレーム11の側面(ウェブ部11a)のほぼ真横となる方向のことである。
【0042】
横方向は、カバー材13の側面部13bとほぼ面直、または、カバー材13や屋根フレーム11の延設方向とほぼ垂直な水平方向のことである。この実施例では、横方向は、屋根パネル3の内側から外側へ向かう向きとなっている。
【0043】
ビス32は、頭部32aと胴部32bとを有する固定具である。胴部32bの周囲には、雄ネジが形成されている。ビス32は、図では太陽光パネル5の上面やカバー材13の上面部13aの近くで、それよりも僅かに低い位置(ビス32の頭部32aのほぼ半径程度分だけ低い位置)に取付けられている。
【0044】
(2)固定金具31は、カバー材13の側面に設けられた固定用の下穴35と合致する位置の手前側と奥側とに、大きさの異なる2つの下穴36,37(
図6)を有しても良い。
【0045】
ここで、カバー材13の側面は、カバー材13の側面部13bのことである。
【0046】
固定用の下穴35は、ビス32を取付けるために予めカバー材13の側面部13bに形成される穴であり、カバー材13の側面部13bにおける、太陽光パネル5の間となる位置Aに形成される。固定金具31も上記位置Aに設置される。
【0047】
手前側は、カバー材13の下穴35に対して横方向(屋根パネル3の隣接方向)に近い側である。奥側は、カバー材13の下穴35から横方向に遠い側である。
【0048】
大きさの異なる2つの下穴36,37は、ビス32を取付けるために予め固定金具31に形成される穴であり、固定金具31に対して、ビス32の取付方向(上記した横方向)に、所要距離だけ離した状態で二箇所形成される。大きさの異なる2つの下穴36,37は、手前側の下穴36が大きく、奥側の下穴37が小さくなるように形成される。例えば、手前側の下穴36は、直径45Φとされ、奥側の下穴37は、直径36Φなどとされる。但し、下穴36,37の直径は、上記に限るものではない。
【0049】
(3)
図6(
図4)に示すように、固定金具31は、
手前側の下穴36が形成された手前側の縦面部31aと、
奥側の下穴37が形成された奥側の縦面部31bと、
二つの縦面部31a,31bの上端部間を連結して、下向きC字断面のカバー材13の上面を下側から当接支持する第一の横面部31cと、
奥側の縦面部31bの下端部から奥側へ延びて、屋根フレーム11の上端部に設けられた水平な上面に上側から当接固定可能な第二の横面部31dと、を有しても良い。
【0050】
ここで、手前側の縦面部31aは、下地鋼板23の立上部23aのほぼ真上の位置に設置される。奥側の縦面部31bは、屋根フレーム11の上フランジ11bの中間部(中央部よりも若干先端部寄り)の位置の真上に設置される。手前側の縦面部31aおよび奥側の縦面部31bは、ビス33の頭部よりも高く、太陽光パネル5の上面とほぼ同じか若干低い高さとなるような長さ(高さ)に形成される。なお、カバー材13の上面部13aの裏側のスペーサ27も奥側の縦面部31bの長さ(高さ)とほぼ同じ厚みに形成される。
【0051】
カバー材13の上面は、カバー材13の上面部13aのことである。カバー材13の上面は、太陽光パネル5の上面とほぼ同じ高さかそれよりも若干低い高さに設置される。
【0052】
第一の横面部31cは、手前側の縦面部31aと奥側の縦面部31bとの間の距離を設定する。第一の横面部31cは、例えば、ビス32の胴部32bのほぼ半分程度の長さでほぼ水平に形成されても良い。
【0053】
屋根フレーム11の上端部に設けられた水平な上面は、屋根フレーム11の上フランジ11bのことである。
【0054】
第二の横面部31dは、ビス33の頭部の直径よりも長い寸法を有して、屋根フレーム11の上フランジ11bのウェブ部11a側の位置にほぼ水平に形成される。第一の横面部31cと第二の横面部31dとの間には、奥側の縦面部31bの高さ分の段差が形成される。 手前側の縦面部31aと、奥側の縦面部31bと、第一の横面部31cと、第二の横面部31dとは、金属板を曲げ加工することによって一体に形成される。
【0055】
(4)固定金具31は、手前側の縦面部31aが、下方へ延びる立下部38を有しており、
立下部38は、屋根面材12の縁部に設けられた、屋根フレーム11の上面の位置へ向けて立ち上がる立上部23aと、下向きC字断面のカバー材13の側面の内面との間を、屋根フレーム11の上面よりも低い位置まで延ばされても良い。
【0056】
ここで、立下部38は、手前側の縦面部31aを、屋根フレーム11の上面(上フランジ11b)の位置よりも下に延長したものであり、縦面部31aの下端側の部分のことである。立下部38は、手前側の縦面部31aと一体に形成される。この実施例では、立下部38は、手前側の縦面部31aから直線的に下方へ延ばされているが、立下部38と手前側の縦面部31aとの間には、横方向に若干の段差などを付けて位置を横へズラせるようにしても良い。立下部38は、手前側の縦面部31aの下側における、立上部23aの内面と側面部13bの内面との間に介在される部分(下方延長部)となる。立下部38は、立上部23aの内面に位置を合わせて設置することで、立上部23aの内面に横方向に当接係止されるようにするのが好ましい。これにより、立下部38は、屋根フレーム11に対する横方向の位置決め部として機能される。
【0057】
屋根面材12は、この実施例では、下地鋼板23のことである。立下部38は、下地鋼板23の本体部分の上面の位置へ向けて、上面に達しない程度に延ばされる。
【0058】
屋根フレーム11の上面の位置は、上フランジ11bの上面の位置のことである。立上部23aは、上記したように下地鋼板23の側縁部に設けられるものである。
【0059】
カバー材13の側面は、側面部13bのことである。カバー材13の側面の内面は、カバー材13の一対の側面部13bの対向面のことである。
【0060】
屋根フレーム11の上面よりも低い位置は、上フランジ11bの上面よりも低い位置のことであり、上フランジ11bの上面から、下地鋼板23の本体部分の上面までの範囲内のいずれかの位置となる。この実施例では、立下部38は、カバー材13の側面部13bの上下方向17のほぼ中央の位置まで延ばされている。
【0061】
(5)ビス32が、防水ワッシャー41の付いたビス32とされても良い。
ビス32の頭部32aがコーキング剤42で覆われるようにしても良い。
【0062】
ここで、防水ワッシャー41は、防水機能を有する樹脂製のリング状部材のことである。防水ワッシャー41は、例えば、ビス32の頭部32aとほぼ同じ径か、それよりも大径で、金属製のワッシャーと比べて十分に厚肉のものとされる。防水ワッシャー41は、ビス32の胴部32bの先端の側からビス32の胴部32bの外周に装着され、頭部32aに係止されることで、防水ワッシャー付きのビスとなる。防水ワッシャー41は、ビス32をカバー材13に取付けたときに、カバー材13の側面部13bに外側から密着される。
【0063】
コーキング剤42は、ビス32の取付後にビス32の頭部32aや防水ワッシャー41の周囲に塗布されるペースト状をした現地施工用の防水材である。
【0064】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0065】
工場で建物ユニット7を製造する。また、工場で屋根パネル3を製造する。そして、工場にて屋根パネル3の上に太陽光パネル5を取付ける。
【0066】
この際、屋根パネル3は、一対の屋根フレーム11の間に屋根下地材21や防水シート22や下地鋼板23などからなる屋根面材12を取付けたものとされる。太陽光パネル5は、取付金具9を用いて屋根フレーム11に取付けられる。
【0067】
そして、建物ユニット7と屋根パネル3とを建築現場へ搬送し、建築現場で基礎の上に建物ユニット7を組み立てて建物本体1aを構築した後で、建物本体1aの上部に屋根パネル3を並べて設置することで、屋根2を構築する。
【0068】
この際、隣接する屋根パネル3は、近接する屋根フレーム11の間を連結金具8で連結固定され、一体化される。
【0069】
その後、隣接配置された屋根パネル3の近接する屋根フレーム11の間に上からカバー材13を被せて、カバー材13を屋根フレーム11に固定する。
【0070】
この際、カバー材13の下穴35を固定金具31の下穴36に合わせて、カバー材13の下穴35にビス32を側方から横方向に取付けることで、カバー材13を、固定金具31を介してビス32で間接的に屋根フレーム11に固定する。固定金具31は、工場にて、屋根フレーム11に予めビス33で固定されている。
【0071】
その後、ビス32の頭部32a(の周囲)にコーキング剤42を塗布して、コーキング剤42でビス32の頭部32a(の周囲)覆うようにし、同時に、または、後から、ビス32の頭部32aに対するコーキング剤42の施工状態を確認する。
【0072】
以上により、カバー材13が屋根パネル3の屋根フレーム11に固定されて、屋根フレーム11がカバー材13で保護されると共に、建物本体1aの上の屋根構造が完成され、ユニット建物も建物1としての外観部分がほぼ完成される。
【0073】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
(効果 1)カバー材13を、屋根フレーム11に対し固定金具31を介して、側方から横方向にビス32で固定するようにしている。これにより、カバー材13と屋根フレーム11との間に、上下方向17へ向いた固定部分がなくなり、例えば、
図7、
図8の比較例に示すように、屋根フレーム11に対してカバー材13の上面部13aを上側から下方向にビス51で直接固定する場合と比べて、漏水リスクを減らして、ビス51による固定部分の防水信頼性を向上させることができる。そのため、カバー材13の屋根フレーム11に対する固定部分の防水構造を簡略化して、固定部分に対する防水施工などの手間を削減することができる。
【0075】
この際、屋根パネル3における複数枚の太陽光パネル5の間の位置Aで、カバー材13を屋根フレーム11に対し、側方から横方向にビス32で固定するようにしている。これにより、太陽光パネル5間に形成される狭い隙間をビス32による固定スペースとして有効に活用して、カバー材13を屋根フレーム11に側方から横方向に固定することができる。
【0076】
(効果 2)固定金具31は、カバー材13の側面に設けられた固定用の下穴35と合致する位置の手前側と奥側とに、大きさの異なる2つの下穴36,37を有しても良い。これにより、カバー材13の側面に設けられた固定用の下穴35と固定金具31の2つの下穴36,37との位置を合わせることで、カバー材13を固定金具31に対して(側方から横方向に)、ビス32で容易に固定できるようになる。
【0077】
そして、固定金具31の2つの下穴36,37を手前側が大きく、奥側が小さくなるように大きさを異ならせることで、大きさの異なる2つの下穴36,37がビス32のガイドとなるため、太陽光パネル5の間の位置Aで、カバー材13の側面にビス32を側方から横方向に取付ける際に、ビス32の斜め打ちを防止することができる。よって、施工のバラ付きをなくすことができる。
【0078】
また、固定金具31の手前側と奥側の2つの下穴36,37を、下穴36,37の奥行方向に対し、十分に離して設置するようにすれば、固定金具31に対してビス32が奥行方向に二点止め状態となるので、固定金具31に対するビス32の取付状態が安定し、強固な固定状態が得られると共に、下穴35,36,37からのビス32の脱落や落下などを防止することができる。
【0079】
(効果 3)固定金具31は、手前側の縦面部31aと、奥側の縦面部31bと、第一の横面部31cと、第二の横面部31dと、を有するものとしても良い。この際、固定金具31では、手前側の縦面部31aの手前側の下穴36に、ビス32が取付けられ、更に、奥側の縦面部31bの奥側の下穴37に、ビス32が取付けられる。第一の横面部31cは、二つの縦面部31a,31bの上端部間を連結して、下向きC字断面のカバー材13の上面を下側から当接支持する。また、第二の横面部31dは、奥側の縦面部31bの下端部から奥側へ延びて、屋根フレーム11の上端部に設けられた水平な上面に対して上側からビス33で当接固定される。これにより、カバー材13を屋根フレーム11に対して側方から横方向へビス32で固定することが可能な固定金具31を実際に得ることができる。
【0080】
(効果 4)固定金具31は、手前側の縦面部31aが、下方へ延びる立下部38を有しても良い。そして、立下部38は、屋根面材12(の下地鋼板23)の側縁部に設けた立上部23aと、下向きC字断面のカバー材13の側面部13bの内面との間を、屋根フレーム11の上面(上フランジ11b)よりも低い位置まで延ばされても良い。これにより、固定金具31の立下部38が水切りとして機能して、カバー材13の下穴35からカバー材13の側面部13bと屋根面材12の立上部23aとの間へ入ったビス32からの伝い水を、固定金具31の立下部38に沿って屋根フレーム11の上面よりも低い位置まで流下させて、屋根面材12(下地鋼板23の本体部分)の上面へと導くことができる。よって、カバー材13の側面部13bの内側への漏水リスクを減らすことができる。
【0081】
(効果 5)ビス32を、防水ワッシャー41の付いたビス32としても良い。これにより、防水ワッシャー41の付いたビス32を側方からカバー材13や屋根フレーム11に取付けたときに、防水ワッシャー41がカバー材13の側面(側面部13bの外面)に密着することによって、防水ワッシャー41でカバー材13の下穴35を確実に外側から塞ぐことができるので、下穴35からの漏水リスクを減らすことができる。また、防水ワッシャー41の付いたビス32を用いることで、均一な施工状態が得られるので、施工のバラ付きによる漏水リスクを抑制することができる。
【0082】
そして、(カバー材13の側面部13bに側方から取付けた)ビス32の頭部32a(の周囲)がコーキング剤42で覆われるようにしても良い。これにより、ビス32の頭部32aの周辺の防水性を更に向上することができる。そして、ビス32の頭部32aの周辺をコーキング剤42によって覆うことで、コーキング剤42の有無を見るだけでビス32による固定部分の施工状態を簡単確実に確認できるので、ビス32の打ち忘れやコーキング剤42の塗布忘れなどを防止することができる。よって、ビス32による固定部分の施工ミスをなくすことができる。
【0083】
また、太陽光パネル5の間の位置Aでのカバー材13の屋根フレーム11への固定部分に対して、コーキング剤42を用いるのが、ビス32の頭部32aに対してのみとなるので、コーキング剤42の使用箇所を最小限に抑えて、防水施工の手間や防水施工のバラ付きを減らすことができる。
【0084】
これに対し、例えば、
図7の比較例に示すように、屋根フレーム11に対してカバー材13の上面部13aを上側から下方向にビス51で直接固定するようにした場合には、カバー材13の上面部13aに対するビス51による上方からの固定部分に漏水リスクがあるため、ビス51による上方からの固定部分にコーキング剤52を施工して、ビス51を隠すように上から防水テープ53を貼り付け、更に、
図8に示すように、防水テープ53の両端部にコーキング剤52を二条に塗布して、その上から防水テープ53を隠すように更に短いジョイントカバー55を被せるなどの何重にも及ぶ対策が必要になり、防水構造が複雑になると共に、防水施工に多くの手間を要する。
【0085】
これに対し、この実施例の場合には、カバー材13の側面に側方からビス32を横方向に取付けてビス32の頭部32a(の周囲)をコーキング剤42で覆うだけで、ビス32の頭部32a(の周囲)の防水信頼性を格段に向上することが可能になるため、防水テープ53やコーキング剤52の二条の塗布やジョイントカバー55を不要にでき、その分、防水構造を簡略化して、ビス32の頭部32a(の周囲)に対する防水施工などの手間を大幅に削減することができるようになる。
【符号の説明】
【0086】
3 屋根パネル
5 太陽光パネル
11 屋根フレーム
12 屋根面材
13 カバー材
13b 側面部
23 下地鋼板
23a 立上部
31 固定金具
31a 手前側の縦面部
31b 奥側の縦面部
31c 第一の横面部
31d 第二の横面部
32 ビス
32a 頭部
35 下穴
36 下穴
37 下穴
38 立下部
41 防水ワッシャー
42 コーキング剤
A 太陽光パネルの間の位置