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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20240710BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240710BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H01F38/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020105953
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001003
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊明
(72)【発明者】
【氏名】松沢 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 実
(72)【発明者】
【氏名】菅藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】山梨 遼太郎
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195693(JP,A)
【文献】特開2015-015852(JP,A)
【文献】特開2020-156180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/70
H02J 50/12
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルを有した機器に対して磁気結合により電力を伝送する送電装置において、
前記受電コイルに対向する平板と、
前記平板上に配設され、発生させた交流磁束を前記受電コイルに貫通させる平板状に巻かれた送電コイルと、
前記送電コイルの周囲に配設され、交流磁場を減衰させる遮蔽体と、
前記遮蔽体の周囲であって、前記送電コイルの配設側と反対側に巻かれ、前記受電コイルに送電した状態での漏れ磁束を消去するためのキャンセルコイルと
を有し、
前記キャンセルコイルは、前記送電コイルに流れる電流が前記漏れ磁束を消去する方向に流れるように、前記送電コイルと直列接続されていて、
前記遮蔽体は前記送電コイルの配設面に垂直な壁面を有する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
受電コイルを有した機器に対して磁気結合により電力を伝送する送電装置において、
前記受電コイルに対向する平板と、
前記平板上に配設され、発生させた交流磁束を前記受電コイルに貫通させる平板状に巻かれた送電コイルと、
前記送電コイルの周囲に配設され、交流磁場を減衰させる遮蔽体と、
前記遮蔽体の周囲であって、前記送電コイルの配設側と反対側に巻かれ、前記受電コイルに送電した状態での漏れ磁束を消去するためのキャンセルコイルと
を有し、
前記キャンセルコイルは、前記送電コイルに流れる電流が前記漏れ磁束を消去する方向に流れるように、前記送電コイルと直列接続されていて、
前記遮蔽体は前記キャンセルコイルの上部を覆う天井部を有する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項3】
受電コイルを有した機器に対して磁気結合により電力を伝送する送電装置において、
前記受電コイルに対向する平板と、
前記平板上に配設され、発生させた交流磁束を前記受電コイルに貫通させる平板状に巻かれた送電コイルと、
前記送電コイルの周囲に配設され、交流磁場を減衰させる遮蔽体と、
前記遮蔽体の周囲であって、前記送電コイルの配設側と反対側に巻かれ、前記受電コイルに送電した状態での漏れ磁束を消去するためのキャンセルコイルと
を有し、
前記キャンセルコイルは、前記送電コイルに流れる電流が前記漏れ磁束を消去する方向に流れるように、前記送電コイルと直列接続されていて、
前記遮蔽体は前記送電コイルの下方であって、前記送電コイルの方向に伸びた底面部を有する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項4】
受電コイルを有した機器に対して磁気結合により電力を伝送する送電装置において、
前記受電コイルに対向する平板と、
前記平板上に配設され、発生させた交流磁束を前記受電コイルに貫通させる平板状に巻かれた送電コイルと、
前記送電コイルの周囲に配設され、交流磁場を減衰させる遮蔽体と、
前記遮蔽体の周囲であって、前記送電コイルの配設側と反対側に巻かれ、前記受電コイルに送電した状態での漏れ磁束を消去するためのキャンセルコイルと
を有し、
前記キャンセルコイルは、前記送電コイルに流れる電流が前記漏れ磁束を消去する方向に流れるように、前記送電コイルと直列接続されていて、
前記遮蔽体と前記キャンセルコイルとの間に強磁性体が配設されている
ことを特徴とする送電装置。
【請求項5】
前記漏れ磁束は前記送電コイルによる漏れ磁束であることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項6】
前記キャンセルコイルは前記送電コイルの配設面に垂直な面に巻かれていることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項7】
前記キャンセルコイルは前記送電コイルの配設面と平行な面に巻かれている平板状のコイルであることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項8】
前記遮蔽体は前記送電コイルの配設面に垂直な壁面を有することを特徴とする請求項乃至請求項の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項9】
前記遮蔽体は前記キャンセルコイルの上部を覆う天井部を有することを特徴とする請求項1、請求項3または請求項4に記載の送電装置。
【請求項10】
前記遮蔽体は前記送電コイルの下方であって、前記送電コイルの方向に伸びた底面部を有することを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項4に記載の送電装置。
【請求項11】
前記平板は強磁性体であることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項12】
前記遮蔽体と前記キャンセルコイルとの間に強磁性体が配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項13】
前記遮蔽体は非磁性の導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項1の何れか1項に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電コイルを有する機器に致して電力を磁気結合により送電する送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電器機器、電子機器に対して電磁結合により給電する方式として、大きくは、次の2つの方式に分類される。第1は、非放射による電力伝送であり、第2は、放射による電力伝送である。第1の方式には、主として、トランスの原理を用いた周波数100kHz程度以下で用いる電磁誘導方式と、周波数に数十MHz程度を用いた近接場(近接場に蓄積される静的エネルギー)の電磁共鳴による電磁結合方式とがある。
【0003】
電磁誘導方式を用いた電力伝送として、下記特許文献1、2に開示の方式が知られている。特許文献1では、携帯端末装置に対する非接触充電装置として、一次コイルから無線電力を供給して、一次コイルと磁気結合する2次コイルで受電して、2次コイルに接続されたバッテリーに充電する装置が開示されている。そして、この装置において、1次コイル、2次コイルで発生する磁場を遮蔽する遮蔽板を設けることが開示されている。特許文献2には、電気自動車に対する非接触給電装置が開示されている。そして、この装置において、磁束の漏れを防止するためのシールド部材を受電コイルの上方に設けることが開示されている。また、特許文献3には、電気自動車に対する非接触給電装置が開示されており、送電コイルによる漏れ磁束をキャンセルするためにキャンセルコイルを設けることが開示されている。また、電磁共鳴による電磁結合方式として、下記特許文献4に開示の方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-268334
【文献】特開2016-103613
【文献】特開2014-110726
【文献】特開2011-205750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触による磁気結合で送電する場合には、漏れ磁束が存在すると送電効率が低下するという問題や、他の機器への影響を与えるなどの問題がある。特許文献1、2の技術は磁束が外部に漏れないように、磁気学的に磁束をシールドするという思想である。特許文献3は送信コイルによる漏れ磁束を、キャンセルコイルに通電することで、消去するという思想である。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、送電コイルの外側と受電コイルの外側に遮蔽板を設けるものであり、側方からの漏れ磁束には考慮されていない。受電コイルを有した機器が送電コイルを有した送電装置に対して着脱可能とするためには、全方位に渡り遮蔽することは不可能なため、特許文献1の方法では遮蔽が不十分である。特許文献2の方法は受電コイルの上側(送電コイルと反対側)にシールド部材が設けられて、上側の車体側に磁束が漏れることを防止するに過ぎず、依然として漏れ受電コイルの周囲に存在する。
【0007】
特許文献3の方法は、送電コイルに対する通電電流の逆相電流をキャンセルコイルに流して送電コイルによる漏れ磁束を消去する方法である。また、受電コイルに流れる電流の位相を検出してその逆位相の電流をキャンセルコイルに流して受電コイルを流れる電流による漏れ磁束をキャンセルしている。また、キャンセルコイルに送電コイル又は受電コイルを流れる電流の逆位相の電流を流すには、独立した発振器を用いる方法の他、逆相電流が流れるように両コイルの接続の向きを設定することが提案されている。さらに、送電コイルとそのキャンセルコイルとの間の結合や、受電コイルとそのキャンセルコイルとの間の結合を小さくするため、送電コイル及び受電コイルとそれらに対するキャンセルコイルとの間に導体板が設けられている。
【0008】
しかし、特許文献3によるキャンセルコイルを用いても、板状に巻かれた送電コイルの全円周外側の側周部に漏れる磁束を伝送効率を低下させずに消去することは困難である。
本発明は、この問題を解決するために成されたものであり、板状に巻かれた送電コイルの全円周外側の側周部に漏れる磁束を伝送効率を低下させずに消去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、受電コイルを有した機器に対して磁気結合により電力を伝送する送電装置において、受電コイルに対向する平板と、平板上に配設され、発生させた交流磁束を受電コイルに貫通させる平板状に巻かれた送電コイルと、送電コイルの周囲に配設され、交流磁場を減衰させる遮蔽体と、遮蔽体の周囲であって、送電コイルの配設側と反対側に巻かれ、受電コイルに送電した状態での漏れ磁束を消去するためのキャンセルコイルとを有し、キャンセルコイルは、送電コイルに流れる電流が漏れ磁束を消去する方向に流れるように、送電コイルと直列接続されていて、遮蔽体は送電コイルの配設面に垂直な壁面を有することを特徴とする送電装置である。
【0010】
本発明において、キャンセルコイルは、送電コイルに流れる電流が漏れ磁束を消去する方向に流れるように、送電コイルと直列接続されていても良い。また、送電コイルとキャンセルコイルとは分離独立しており、キャンセルコイルには漏洩磁束を消去するように、送電コイルに給電する電流に対して所定位相の電流が給電されても良い。また、基本的には、漏れ磁束は送電コイルによる漏れ磁束である。しかし、受電コイルを流れる電流による漏れ磁束を消去するものであっても良い。
【0011】
キャンセルコイルの配設面は任意であるが、キャンセルコイルは送電コイルの配設面に垂直な面に巻かれていても良い。また、キャンセルコイルは送電コイルの配設面と平行な面に巻かれている平板状のコイルであっても良い。遮蔽体は送電コイルの配設面に垂直な壁面を有することが望ましい。また、遮蔽体はキャンセルコイルの上部を覆う天井部を有することが望ましい。さらには、遮蔽体は送電コイルの下方であって、送電コイルの方向に伸びた底面部を有していても良い。送電コイルを配設する平板の材料は任意であるが、強磁性体であることが望ましい。遮蔽体とキャンセルコイルとの間に強磁性体が配設されていることが望ましい。遮蔽体は非磁性の導体であることが望ましい。遮蔽体は例えばアルミニウムなどの磁場を透過させるが、渦電流損により交流磁場を減衰させる非磁性の導電性材料であることが望ましい。すなわち、遮蔽体は送電コイルとキャンセルコイルとの間の磁気結合を小さくするように機能する。
【0012】
上記発明において、伝送方式は任意である。たとえば、数100kHz以下の範囲の周波数を用いた電磁誘導方式(磁界結合方式)であっても良い。10MHz程度の周波数を用いた電磁共鳴方式や磁気共鳴伝送方式と呼ばれる方式であっても良い。送信コイルには共振のためのコンデンサやコイルなどの共振回路が接続されていても良い。また、送電コイルの軸とキャンセルコイルの軸は同軸であることが望ましい。遮蔽体は送電コイルの側周の外側の全周に渡り配設されていることが望ましいが、周囲の一部は存在しなくとも良い。送電コイルやキャンセルコイルの巻き形状は円形、矩形、角を円弧状にした矩形など平面状に形成されたものであれば任意である。キャンセルコイルは、送電コイルの形成面と平行な面上に形成しても、垂直な面に形成されても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、キャンセルコイルと遮蔽板により、板状に巻かれた送電コイルの全円周外側の側周部に漏れる磁束を、受電コイルに対する伝送効率を低下させずに減衰させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の具体的な実施例1の送電装置と、送電された電力を受電する受電装置との全体構成を示した断面構成図。
図2】実施例1の送電装置の平面図。
図3】実施例1の送電装置と、その装置からの電力を受電する受電装置の回路図。
図4】実施例1における磁界強度分布のシミュレーションに用いた送電コイルと受電コイルとの位置関係を示した説明図。
図5】実施例1の送電装置によるx軸方向の磁界強度分布を示した特性図。
図6】実施例2に係る送電装置と、その装置からの電力を受電する受電装置の回路図。
図7】実施例3に係る送電装置と、その装置からの電力を受電する受電装置の回路図。
図8】実施例4に係る送電装置を示した構成図。
図9】実施例5に係る送電装置を示した構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例1に係る送電装置100と、その送電装置100により送電される携帯機器の受電装置200との関係を示した断面図である。図2は送電装置100の平面図である。直方体形状の筐体6は上面6a側に平板であるフェライト2が埋め込まれており、そのフェライト2の上面に銅線で構成された送電コイル1が配設されている。送電コイル1は平面状に巻かれている。送電コイル1の発生する磁束が垂直に貫通する主面は、受電コイル7の主面に平行に対面するように位置決めされる。送電コイル1は線状であっても平板状(テープ状)であっても良い。送電コイル1とフェライト2の全側周を取り囲むように遮蔽体である金属体3が配設されている。金属体の材料は任意であるが、本実施例ではアルミニウムを用いている。金属体3は送電コイル1と受電コイル7との間の漏れ磁束に対してはキャンセルコイル4に電磁誘導させるが、送電コイル1の発生する主磁束は減衰させて、送電コイル1 とキャンセルコイル4 との間の磁気結合を小さくし、両者の相互インダクタンスを小さくするためにある。これにより送電コイル1 と受電コイル7 との間の結合係数を大きくさせることができる。したがって、金属体3 は漏れ磁束は透過させるが、主磁束は渦電流損により減衰させる材料が望ましく、透磁率は小さいが導電率は大きい材料が望ましい。
【0017】
金属体3は送電コイル1 の主面に垂直な側壁部3aと天井部3bと底面部3cとを有している。天井部3bは側壁部3aから送電コイル1の配設側とは反対の外側に屈曲され、送電コイル1の主面に平行に形成されている。底面部3cは側壁部3aから送電コイル1の存在する側の内側に、送電コイル1の主面に平行に屈曲形成されている。底面部3cはフェライト2の側周付近の下方に入り込んでいる。
【0018】
金属体3の側壁部3aの外面に矩形枠状にフェライト5が配設されている。そして、そのフェライト5の外面には矩形状に巻かれたキャンセルコイル4が配設されている。キャンセルコイル4とフェライト5は金属体3の天井部3bにより上部を覆われている。天井部3bが存在することにより、送電コイル1とキャンセルコイル4との結合がより効果的に抑制される。フェライト2、金属体3、フェライト5、キャンセルコイル4は筐体6と共にモールド成形されている。
【0019】
受電装置200は、筐体9、フェライト8、受電コイル7と制御装置や表示装置等を有している。この受電装置200は、たとえばスマートフォンなどの携帯端末や、携帯端末を駆動させるバッテリである。送電装置100は携帯端末のバッテリーを充電するための装置である。受電装置200は、受電コイル7が送電装置100の送電コイル1と対面するように、送電装置100に対して非接触で着脱可能に配設される。
【0020】
図1において、送電装置100のフェライト2は送電コイル1の発生する磁束が受電装置200とは反対側(図面上、下側)に漏れるのを防止している。同様に、受電装置200のフェライト8は受電コイル7の発生する磁束が送電装置100とは反対側(図面上、上側)に漏れるのを防止している。これらのフェライト2、8により送電コイル1と受電コイル7との結合係数を増加させている。
【0021】
遮蔽体である金属体5は、送電コイル1とキャンセルコイル4との結合係数を小さくするために設けられている。金属体5は送電コイル1から受電コイル7に貫通する主磁束がキャンセルコイル4を貫通しないか低減させるようにするために設けられている。金属体5は送電コイル1の出力する漏れ磁束や、受電コイル7の出力する漏れ磁束がキャンセルコイル4を貫通するようにさせている。
【0022】
図3は送電装置100と受電装置200の回路図である。送電コイル1とキャンセルコイル4に高周波電源21から給電される。送電装置100のコンデンサC1 と受電装置200のコンダンサC2 は、送電コイル1とキャンセルコイル4と受電コイル7のインダクタンスと共に高周波電源21の周波数に対して共振状態を実現してQ値を大きくするための素子である。
【0023】
キャンセルコイル4と送電コイル1とは直列接続されており、同一電流が流れている。送電コイル1の発生する磁束の向きと、キャンセルコイル4の発生する磁束の向きが逆方向となるように、送電コイル1とキャンセルコイル4とは直列接続されている。受電装置200の負荷Rは抵抗で表記されているが、実際は整流回路とバッテリーである。送電装置100からの送電電力が送電コイル1から交流電磁場として送電され、非接触により受電コイル7で受電され、整流されて携帯端末装置を駆動するためのバッテリーに充電される。
【0024】
次に漏れ磁束の大きさをシミュレーションにより求めた。図4は送電コイル1と受電コイル7との位置関係を示している。図1に示すようにo-xyz座標系を設定した。原点はxy平面における送電コイル1の円形の中心で、xz平面における送電コイル1の主面と受電コイル7の主面との間隔の中点に原点oをとる。図4において、横方向にx軸、高さ方向にy軸、中心軸方向にz軸をとる。送電コイル1の中心軸の座標(x,y,z)は(0,0,-2.5)、受電コイル7の中心軸の座標(x,y,z)は(0,5,2.5)である。単位はmmである。送電コイル1と受電コイル7のz軸方向の離間距離(主面間距離)は5mmである。送電電力は15W、周波数は140kHz、送電コイル1の送電電流は2.67A、受電コイル7の負荷電流は1.42Aで、送電電流に対して90度の進み位相とした。キャンセルコイル4のアンペアターンは10ATとした。すなわち、巻数は3.75である。送電コイル1と受電コイル7とを図4に示す位置関係に設定して、キャンセルコイル4を設けた場合と設けない場合の2通りについてx軸方向の磁界強度、すなわち、座標(x,0,0)おける磁界強度をシミュレートした。その結果を図5に示す。ただし、図5のx軸の原点0は上記の座標系のx座標で39.5である。すなわち、キャンセルコイル4の外周のx座を基準にして、その外周から外側に向かうx軸上での値である。漏れ磁束がキャンセルコイル4を設けることにより低下していることが分かる。
【実施例2】
【0025】
実施例1においては、送電コイル1とキャンセルコイル4とは、送電コイル1の漏れ磁束をキャンセルする方向の送電電流がキャンセルコイル4に流れるように直列接続されている。すなわち、電流に対する巻方向が逆向きになるように両コイルは接続されている。これに対して本実施例では図6に示すように、送電コイル1とキャンセルコイル4とは接続されておらず独立しており、送電コイル1は高周波電源21aで駆動され、キャンセルコイル4は高周波電源21bで駆動されている。そして、同期回路23により高周波電源21aと高周波電源21bの出力電流の位相が逆相に同期制御されている。キャンセルコイル4を流れる電流が、キャンセルコイル4を貫く磁束を消去するように、その電流の送電電流に対する位相が制御されている。本実施例では実施例1と異なり送電コイル1とキャンセルコイル4との電流に対する巻方向(両コイルの極性の接続方法)が任意となる。
【実施例3】
【0026】
実施例1では、送電コイル1とキャンセルコイル4とは、送電コイル1の漏れ磁束をキャンセルする方向の送電電流がキャンセルコイル4に流れるように直列接続され、実施例2はキャンセルコイル4に送電コイル1に流れる送電電流と逆相の電流を流すように、独立した2つの高周波電源が用いられている。これに対して本実施例では、図7に示すように、送電コイル1とキャンセルコイル4とは接続されておらず独立しており、送電コイル1は高周波電源21aで、キャンセルコイル4は高周波電源21bで駆動されている。そして、位相制御回路24により高周波電源21aと高周波電源21bの出力電流の位相が独立して制御されている。キャンセルコイル4を流れる電流が、キャンセルコイル4を貫く磁束を消去するように、その電流の送電電流に対する位相が制御されている。この方式によっても、送電コイル1の漏れ磁束をキャンセルコイル4により消去することができる。この方式では、キャンセルコイル4の通電電流の位相を、送電コイル1の送電電流の位相と独立して制御しているので、送電コイル1の漏れ磁束と受電コイル7の漏れ磁束との合成磁束を、キャンセルコイル4で消去することができる。
【実施例4】
【0027】
本実施例は遮蔽体の別の構成を採用した例である。本実施例では遮蔽体である金属体30は、図8(a)に示すように矩形枠形状に構成されている。すなわち、実施例1の金属体3は天井部3bと底面部3cとを有するが、本実施例では金属体30では、金属体30は実施例1の側壁部3aのみから成る。図8(a)、(b)に示すように、金属体30の外周面には枠形状のフェライト5が設けられており、そのフェライト5の外周面にキャンセルコイル4が巻かれている。なお、実施例1における筐体6は、図示が省略されている。
【実施例5】
【0028】
本実施例は図9に示すように、遮蔽体である金属体31は実施例4と同じく矩形枠形状をしている。そして、金属体31は平板状のフェライト2aの上に設けられている。この平板状フェライト2aの上で、金属体31の枠の外側に、平面状のキャンセルコイル4aが巻かれている。したがって、平板状の送電コイル1の主面と平板状のキャンセルコイル4aの主面とは平行である。なお、実施例1における筐体6は、図示が省略されている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、携帯端末などの機器のバッテリーへの給電を非接触で行う装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…送電コイル
2,5,8…フェライト
7…受電コイル
3,30,31…金属体
3a…側壁部
3b…天井部
3c…底面部
100…送電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9