(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】非接触電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20240710BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240710BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240710BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
(21)【出願番号】P 2020108345
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144544
【氏名又は名称】レシップホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】村山 裕紀
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208539(WO,A1)
【文献】特開2012-191721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080814(US,A1)
【文献】特開2019-126215(JP,A)
【文献】特開2008-206232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電のための停止範囲に停止する移動体に設けられ
非接触で電力の供給を受ける受電装置と、
前記
移動体の前記停止範囲に設けられ前記受電装置
に電力を送る送電装置と、を含み、
前記受電装置は、
送電された電力を非接触で受電可能な受電部と、光無線通信で情報を送信可能な送信部と、前記受電部および前記送信部を制御可能な受電側制御部と、を備え、
前記送電装置は、前記受電部に前
記電力を非接触で送電可能な送電部と、前記送信部から前記光無線通信で前記情報を受信可能な受信部と、前記送電部および前記受信部を制御可能な送電側制御部と、を備え、
前記受電側制御部は、前記受電装置または前記移動体を識別可能な識別情報と
通常送電の所定電力より十分に小さい電力の送電を要求する送電要求情報とを前記移動体が前記
停止範囲に停止する以前か
ら繰り返し送信するように前記送信部を制御し、
前記送電側制御部は、前記受信部が前記識別情報および前記送電要求情報を受信した場合、前記所定電力
の送電を要求する通常送電要求情報により通常送電
を行う前に
、前記所定電力よりも十分に小さい電力を送る予備送電を開始するように前記送電部を制御する、ことを特徴とする非接触電力供給システム。
【請求項2】
前記受電側制御部は、前記予備送電により受電した電力が予め定められた所定値であるときには前
記通常送電要求情報を前記送信部を介して送信するように前記送信部を制御し、
前記送電側制御部は、前記受信部が前記通常送電要求情報を受信した場合、前記通常送電を開始するように前記送電部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の非接触電力供給システム。
【請求項3】
前記受電側制御部は、前記受電部が前記所定電力を受電している期間中においては前記通常送電要求情報を前記送信部を介して所定タイミングで繰り返し送信するように前記送信部を制御し、
前記送電側制御部は、前記所定タイミングが複数含まれる所定期間内に前記受信部が前記通常送電要求情報を受信しない場合、前記通常送電を停止するように前記送電部を制御する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触電力供給システム。
【請求項4】
前記受電装置は、前記送信部に加えて光無線通信で情報を受信可能な受信部を備え、
前記送電装置は、前記受信部に加えて光無線通信で情報を送信可能な送信部を備え、
前記送電側制御部は、前記送電装置の受信部が受信した前記識別情報または前記識別情報に関する情報を、前記送電装置側の送信部を介して前記受電装置側の受信部に送信し前記受電側制御部に伝える、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の非接触電力供給システム。
【請求項5】
前記受電装置および前記送電装置は、相互に近距離で無線通信可能な無線部をそれぞれ備え、
前記送電側制御部は、前記送電装置の受信部が受信した前記識別情報または前記識別情報に関する情報を、前記送電装置側の無線部を介して前記受電装置側の無線部に送信し前記受電側制御部に伝える、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の非接触電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電のための停止範囲に停止している移動体に対して非接触で電力の供給を行うことが可能な非接触電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体に対して電気的に接触することなく所定電力の供給を行うことが可能な非接触電力供給システムとして、例えば、下記特許文献1に開示される「非接触電力伝送システム」がある。このシステムでは、送電装置と受電装置で構成されて非接触で電力を供給することにより無人搬送車(移動体)が備えるキャパシタに充電を行う。送電装置は、高周波電力を出力する高周波電源装置と、高周波電源装置に接続された送電コイルと、通信を行う通信回路とを備え、受電装置は、送電コイルに磁気的に結合される受電コイルと、通信回路と通信を行う通信回路と、送電開始信号を出力する送電開始スイッチとを備える。
【0003】
これにより、操作者が受電装置の送電開始スイッチを操作することによって、受電側や送電側の通信回路を介して送電装置に送電開始信号が入力されて高周波電源装置が起動されるため、送電装置に送電開始スイッチを設けることなく、送電を開始させることを可能にしている。また同様に、送電を停止させる場合には操作者が受電装置の送電停止スイッチを操作することにより、受電側や送電側の通信回路を介して送電装置に送電停止信号が入力されて高周波電源装置を停止させる。そのため、送電装置に送電停止スイッチを設けることなく、送電を停止させることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の開示された技術によると、無人搬送車に対して送電を開始したり停止したりするためには、操作者が、受電装置の送電開始スイッチや送電停止スイッチを操作する必要がある。そのため、無人搬送車に電力の供給を開始したり停止したりするためには、操作者による人手が必要になる一方で、運行中の無人搬送車は自動運転で移動していることが多い。したがって、そのような操作のために移動中の無人搬送車に作業員(操作者)が乗り込むことは、安全管理面から難しいという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1に開示されているように、例えば、送電開始スイッチや送電停止スイッチを備えた操作リモコンを設けるとともに、受電装置に当該操作リモコンと通信を行うための別の通信回路を設け、操作リモコンと当該通信回路の間で無線通信により操作信号等の送受信を行う構成も採用され得る(特許文献1;段落0076)。ところが、このような操作リモコンを含むシステムは、システム全体の構成が複雑になるとともに、無人搬送車(移動体)が複数台存在する場合には操作対象の搬送車を特定する必要がある。そのため、システムの構成や操作が複雑化し易いという新たな問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、移動体に対して安全かつ自動的に所定電力を供給し得る非接触電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載された非接触電力供給システムは、充電のための停止範囲に停止する移動体に設けられ非接触で電力の供給を受ける受電装置と、前記移動体の前記停止範囲に設けられ前記受電装置に電力を送る送電装置と、を含み、前記受電装置は、送電された電力を非接触で受電可能な受電部と、光無線通信で情報を送信可能な送信部と、前記受電部および前記送信部を制御可能な受電側制御部と、を備え、前記送電装置は、前記受電部に前記電力を非接触で送電可能な送電部と、前記送信部から前記光無線通信で前記情報を受信可能な受信部と、前記送電部および前記受信部を制御可能な送電側制御部と、を備え、前記受電側制御部は、前記受電装置または前記移動体を識別可能な識別情報と通常送電の所定電力より十分に小さい電力の送電を要求する送電要求情報とを前記移動体が前記停止範囲に停止する以前から繰り返し送信するように前記送信部を制御し、前記送電側制御部は、前記受信部が前記識別情報および前記送電要求情報を受信した場合、前記所定電力の送電を要求する通常送電要求情報により通常送電を行う前に、前記所定電力よりも十分に小さい電力を送る予備送電を開始するように前記送電部を制御する、ことを技術的特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の非接触電力供給システムでは、受電装置の受電側制御部は、受電装置または移動体を識別可能な識別情報と通常送電の所定電力より十分に小さい電力の送電を要求する送電要求情報とを移動体が停止範囲に停止する以前から送信部を介して繰り返し送信するように送信部を制御する。これに対し、送電装置の送電側制御部は、受信部が識別情報および送電要求情報を受信した場合、所定電力の送電を要求する通常送電要求情報により通常送電を行う前に、所定電力よりも十分に小さい電力を送る予備送電を開始するように送電部を制御する。
【0010】
受電装置の送信部は、送電装置の受信部に対して光無線通信で情報を送信する。光無線通信は、例えば赤外線通信であり、光無線通信の出射光は、電波の送信アンテナの種類にもよるが一般的にレンズ等の集光部を有する赤外線発光モジュールの特性上、電波に比べて指向性が鋭い。受電装置の送信部は、移動体が停止範囲で停止する以前から識別情報と送電要求情報を繰り返し送信していることから、送電装置の受信部が識別情報および送電要求情報を受信した場合には送信部を備えた移動体が停止範囲に存在または停止している可能性が高い。そのため、このような場合には送電装置では、通常送電時の所定電力よりも十分に小さい電力が供給される予備送電を送電部が開始する。これにより、移動体が停止範囲に存在(停止)したときには、送電装置は通常送電に先立って自動的に予備送電を開始するので、例えば、移動体が停止範囲から多少ずれて停止しても、送電装置の故障を招いたり送電に伴って発生する電磁波等が作業員に身体的な悪影響を与えたりし難い。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された非接触電力供給システムは、請求項1に記載された非接触電力供給システムにおいて、前記受電側制御部は、前記予備送電により受電した電力が予め定められた所定値であるときには前記通常送電要求情報を前記送信部を介して送信するように前記送信部を制御し、前記送電側制御部は、前記受信部が前記通常送電要求情報を受信した場合、前記通常送電を開始するように前記送電部を制御する、ことを技術的特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の非接触電力供給システムでは、受電側制御部は、予備送電により受電した電力が予め定められた所定値であるときには通常送電要求情報を送信部を介して送信するように送信部を制御する。また、送電側制御部は、受信部が通常送電要求情報を受信した場合、通常送電を開始するように送電部を制御する。受電した電力が所定値よりも低い場合には、例えば、移動体が停止範囲から多少ずれて存在(または停止)していたり、送電部または受電部が故障していたりする可能性がある。また、受電した電力が所定値よりも高い場合には、例えば、送電部が故障している可能性がある。これにより、予備送電により受電した電力が予め定められた所定値でないときには、通常送電要求情報は送信されないことから、移動体が停止範囲から、ずれて存在(または停止)している場合や、送電装置や受電装置が故障している可能性がある場合には通常送電の開始を回避することが可能になる。したがって、移動体が停止範囲に適正に存在(または停止)している場合や、送電装置および受電装置がいずれも正常である場合に限って通常送電による所定電力が移動体に供給されるので、さらに安全性を高めることができる。
【0013】
さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載された非接触電力供給システムは、請求項1または2に記載された非接触電力供給システムにおいて、前記受電側制御部は、前記受電部が前記所定電力を受電している期間中においては前記通常送電要求情報を前記送信部を介して所定タイミングで繰り返し送信するように前記送信部を制御し、前記送電側制御部は、前記所定タイミングが複数含まれる所定期間内に前記受信部が前記通常送電要求情報を受信しない場合、前記通常送電を停止するように前記送電部を制御する、ことを技術的特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の非接触電力供給システムでは、受電側制御部は、受電部が所定電力を受電している期間中においては通常送電要求情報を送信部を介して所定タイミングで繰り返し送信するように送信部を制御する。また、送電側制御部は、所定タイミングが複数含まれる所定期間内に受信部が通常送電要求情報を受信しない場合、通常送電を停止するように送電部を制御する。これにより、受電装置の送信部が所定タイミングで繰り返し通常送電要求情報を送信しても、例えば、所定電力の受電途中に移動体が移動して停止範囲から離脱したり、受電装置の受電部が故障したりした場合には送電装置の受信部は所定期間内に通常送電要求情報を受信できなくなるため、送電装置は自動的に通常送電を停止することが可能になる。したがって、移動体が停止範囲に適正に存在(または停止)している場合や受電装置が正常である場合に限って通常送電による所定電力が移動体に供給され続けるので、さらに安全性を高めることができる。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された非接触電力供給システムは、請求項1~3のいずれか一項に記載された非接触電力供給システムにおいて、前記受電装置は、前記送信部に加えて光無線通信で情報を受信可能な受信部を備え、前記送電装置は、前記受信部に加えて光無線通信で情報を送信可能な送信部を備え、前記送電側制御部は、前記送電装置の受信部が受信した前記識別情報または前記識別情報に関する情報を、前記送電装置側の送信部を介して前記受電装置側の受信部に送信し前記受電側制御部に伝える、ことを技術的特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の非接触電力供給システムでは、送電側制御部は、送電装置の受信部が受信した識別情報または識別情報に関する情報を、送電装置側の送信部を介して受電装置側の受信部に送信し受電側制御部に伝える。これにより、受電装置は、自分が送信した識別情報を送電装置が受信して当該受電装置を認識したことや、通信手順におけるペアリングが送電装置との間で成立したことを確認することが可能になる。
【0017】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された非接触電力供給システムは、請求項1~4のいずれか一項に記載された非接触電力供給システムにおいて、前記受電装置および前記送電装置は、相互に近距離で無線通信可能な無線部をそれぞれ備え、前記送電側制御部は、前記送電装置の受信部が受信した前記識別情報または前記識別情報に関する情報を、前記送電装置側の無線部を介して前記受電装置側の無線部に送信し前記受電側制御部に伝える、ことを技術的特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の非接触電力供給システムでは、受電装置および送電装置は相互に近距離で無線通信可能な無線部をそれぞれ備える。送電側制御部は、送電装置の受信部が受信した識別情報または識別情報に関する情報を、送電装置側の無線部を介して受電装置側の無線部に送信し受電側制御部に伝える。この無線通信は、電波を情報伝達媒体にするものであり、電波はその送信アンテナの種類にもよるが一般的にレンズ等の集光部を有する光モジュールの出射光を媒体する光無線通信よりも指向性が鈍く広範囲に亘って届き易い。これにより、例えば、光無線通信では受電装置の受信部に伝わり難い環境下においても、電波を情報伝達媒体にすることで、受電装置は、自分が送信した識別情報を送電装置が受信して当該受電装置を認識したことや、通信手順におけるペアリングが送電装置との間で成立したことを確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、移動体が停止範囲に存在(または停止)したときには、送電装置は通常送電に先立って自動的に予備送電を開始する。予備送電では通常送電時の所定電力よりも十分に小さい電力が供給されるので、例えば、移動体が停止範囲から多少ずれて存在(または停止)している場合があっても、送電装置の故障を招いたり送電に伴って発生する電磁波等が作業員に身体的な悪影響を与えたりし難くなる。したがって、移動体に対して安全かつ自動的に所定電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の非接触電力供給システムの一実施形態である無人搬送車の充電システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】本充電システムを構成する送電装置のブロック図(
図2(A))と、受電装置のブロック図(
図2(B))である。
【
図3】本充電システムの送電装置により実行される送電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本充電システムの受電装置により実行される受電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本充電システムにより無人搬送車の充電を開始する前から充電を完了するまでの間において実行される各処理の一連の流れを示すシーケンス図であり、正常時における場合の例である。
【
図6】本充電システムにより無人搬送車の充電を開始する前から充電中おいて実行される各処理の一連の流れを示すシーケンス図であり、無人搬送車の離脱により異常終了した場合の例である。
【
図7】本発明の非接触電力供給システムの他の実施形態である充電システムを構成する送電装置のブロック図(
図7(A))と、受電装置のブロック図(
図7(B))である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の非接触電力供給システムを、無人搬送車(AGV(Automatic Guided Vehicle))に搭載されたバッテリに対して充電を行い得る充電システムに適用した例について図を参照して説明する。以下、無人搬送車のことを「AGV」という。
【0022】
AGVは、搭載されたバッテリからの供給電力で駆動される走行用モータの動力で走行する電動車両であり、物流倉庫や工場構内等において予め定められた走行ルート(ガイドライン)に沿って自動運転で走行して積荷等を搬送する車両である。なお、このような自動運転は、典型的にはAGVに搭載されたドライブコントローラにより行われる。
【0023】
なお、本実施形態に係るAGVは、車両の全体構造をはじめ、駆動、制動および操舵に関する機構や制御(ドライブコントローラによる制御)については、公知のAGVとほぼ同様に構成されている。バッテリは、例えば、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池等の特定種類のバッテリセルが複数、直列に接続された組電池で構成されている。そのため、以下、特に説明を要しない限りこれらについては言及しないことに注意されたい。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の充電システム10は、このようなAGV100のバッテリを充電するための電力を充電ステーションSにおいて供給し得るものである。充電システム10は、例えば、複数のAGV100が走行可能なフロアFの充電ステーションSに設けられる送電装置12と、それぞれのAGV100に搭載されている複数の受電装置15と、により構成されている。
【0025】
本実施形態では、フロアFには走行ルートを案内するガイドラインGが表示されており、例えば、AGV100は、ドライブコントローラが画像認識によってこのガイドラインGに認識して走行することにより所定の経路を走行するように制御されている。送電装置12が設けられる充電ステーションSは、例えば、ガイドラインG(走行ルート)の途中に設けられている。
【0026】
なお、
図1においては、AGV100が充電時に停車する予定位
置を明確にするため充電ステーションSの範囲
(停止範囲)を一点鎖線で表現している。
図1には図示されていないが、例えば、フロアFには、充電ステーションS内の定位置においてドライブコントローラが画像認識可能な停止ライン等が表示されている。
【0027】
図2(A)に示すように、送電装置12は、主に、本体ユニット21とコイルユニット31により構成されており、充電ステーションSに設けられている。本実施形態では、AGV100の車体下側(例えばアンダーパネル等)に近づき得る位置にコイルユニット31を設置する必要から、本体ユニット21とコイルユニット31はそれぞれ別の筐体内に設けられている。例えば、コイルユニット31は、その外形が薄箱状に形成されており、AGV100の走行の妨げにならないように充電ステーションS内のフロアFに埋設される。なお、両ユニット21,31はケーブル30により電気的に接続されている。
【0028】
本体ユニット21は、整流ユニット22、電圧コンバータ23、インバータ24およびコントローラ26を備えており、例えば、メンテナンス作業の安全性を考慮して、コイルユニット31が埋設された搬送路(走行ルート)から離れた位置(例えば、フロアF上に設置された図略の操作盤内)に設けられている。コイルユニット31は、送電コイル25と赤外線ユニット27を備えている。これらのうち、整流ユニット22、電圧コンバータ23、インバータ24および送電コイル25は、送電部20を構成しており、この送電部20は、送電制御部として機能するコントローラ26によって制御される。
【0029】
即ち、交流電源18から供給される交流電力(例えば、三相交流電力や単相交流電力)を整流ユニット22により直流電力に変換した後、電圧コンバータ23により所定電圧に降圧または昇圧し、さらにインバータ24により所定周波数の交流電力に変換することにより得られる所定の交流電力をケーブル30を介して送電コイル25に供給し得るように、送電部20およびコントローラ26が構成されている。
【0030】
電圧コンバータ23やインバータ24には、それぞれの入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流や、それぞれの内部温度を検出可能な図略のセンサが設けられており、それらのセンサ出力がコントローラ26に接続されている。そのため、コントローラ26は、これらのセンサから出力される電圧コンバータ23やインバータ24の電圧、電流、温度等の情報に基づいて、電圧コンバータ23やインバータ24を構成する半導体スイッチング素子のオンオフ制御(スイッチング制御)を行う。つまり、電圧コンバータ23が出力する直流電圧やインバータ24が出力する交流電力の周波数は、コントローラ26のスイッチング制御に基づいて制御することができるように電圧コンバータ23、インバータ24およびコントローラ26が構成されている。
【0031】
整流ユニット22は、例えば、複数のシリコンダイオードからなり交流電力の各相に対応した全波整流回路である。電圧コンバータ23は、例えば、パワーMOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子とインダクタ等からなる電圧変換回路である。インバータ24は、例えば、複数のパワーMOSFETやIGBT等のからなる高周波電力発生回路である。送電コイル25は、受電装置15のコイルユニット61に対して、所定方式で交流電力を伝送し得るインダクタである。所定方式には、磁界共振方式や電磁誘導方式等がある。
【0032】
コントローラ26は、MPU、メモリ(DRAM、ROM)、インタフェース等により構成される制御装置であり、本実施形態では、電圧コンバータ23、インバータ24や赤外線ユニット27を制御し得るように構成されている。電圧コンバータ23およびインバータ24に対してはそれらの半導体スイッチング素子をスイッチング制御し、また赤外線ユニット27に対してはそれが受信する所定情報を取得し得るように構成されている。コントローラ26のメモリ(ROM)には、電圧コンバータ23、インバータ24や赤外線ユニット27をMPUが制御可能に構成される所定のプログラムや、後述の送電制御処理をMPUが実行可能に構成される送電制御プログラム等が格納されている。
【0033】
赤外線ユニット27は、赤外線(赤外光)による光無線データ通信が可能な光無線通信装置であり、例えば、IrDA(Infrared Data Association)規格に準拠した通信プロトコルで情報通信を行い得るように構成されている。本実施形態では、例えば、受電装置15の赤外線ユニット57から送信される光無線データを受信するとともに光の強度信号による受信データを電気信号のデジタルデータにデコードしてコントローラ26に出力し得る機能を有する赤外線データ受信装置である。なお、受信専用の赤外線ユニット27に代えて、受信機能に加えて送信機能も有する送受信可能な赤外線ユニット28を用いてもよい。また、赤外線ユニット27,28は、独自の通信プロトコルで赤外線ユニット57等と光無線データ通信を行ってもよい。
【0034】
図2(B)に示すように、AGV100に搭載される受電装置15は、主に、本体ユニット51とコイルユニット61により構成されている。本実施形態では、本体ユニット51は、送電損失を低減するためAGV100に搭載されたバッテリ110の近くに設けられ、またコイルユニット61は、磁界共振や電磁誘導により伝送される交流電力を効率よく受電する必要から、路面(フロアF)に極力近づいて対向し得るようにAGV100のアンダーパネル等に設けられている。
【0035】
本体ユニット51は、整流ユニット52、充電ユニット53およびコントローラ56を備えており、例えば、AGV100の走行用モータに駆動電力を供給し得るバッテリ110の近くに設けられている。これに対して、AGV100のアンダーパネル等の路面に近い位置に設けられるコイルユニット61は、受電コイル54と赤外線ユニット57を備えている。これらのうち、整流ユニット52、充電ユニット53および受電コイル54は、受電部50を構成しており、この受電部50は、受電制御部として機能するコントローラ56によって制御される。なお、両ユニット51,61はケーブル60により電気的に接続されている。
【0036】
即ち、受電コイル54が受電した交流電力を整流ユニット52により直流電力に変換した後、充電ユニット53により充電に適した電圧に変換してバッテリ110に充電電力を供給し得るように、受電部50およびコントローラ56が構成されている。充電ユニット53には、入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流や、それぞれの内部温度を検出可能な図略のセンサが設けられており、それらのセンサ出力がコントローラ56に接続されている。また、バッテリ110には、バッテリ電圧を検出可能な電圧センサ113やバッテリ電流を検出可能な電流センサ115、さらにはバッテリ110のセル温度を検出可能な図略の温度センサが設けられており、それらのセンサ出力がコントローラ56に接続されている。
【0037】
このため、コントローラ56では、電圧センサ113や電流センサ115から出力される電圧、電流の情報やセル温度の情報に基づいて、充電ユニット53を構成する半導体スイッチング素子をスイッチング制御する。つまり、充電ユニット53が出力する充電電力(充電電圧や充電電流)は、コントローラ56のスイッチング制御に基づいて制御可能に充電ユニット53およびコントローラ56が構成されている。
【0038】
整流ユニット52は、例えば、複数のシリコンダイオードからなる整流回路である。充電ユニット53は、例えば、パワーMOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子とインダクタ等からなり、整流ユニット52から入力された直流電圧をバッテリ110に適した電圧を変換してバッテリ110に出力し得る充電制御回路であり、図略のトリクル充電回路やフロート充電回路も備えている。受電コイル54は、送電装置12の伝送方式(磁界共振方式や電磁誘導方式等)によりコイルユニット31から交流電力を受電し得るインダクタである。
【0039】
コントローラ56は、コントローラ26と同様に、MPU、メモリ等により構成される制御装置である。本実施形態では、充電ユニット53や赤外線ユニット57を制御し得るように構成されている。充電ユニット53に対してはその半導体スイッチング素子をスイッチング制御し、また赤外線ユニット57に対してはそれが送信する所定情報を送出し得るように構成されている。コントローラ56のメモリ(ROM)には、充電ユニット53や赤外線ユニット57をMPUが制御可能に構成される所定のプログラム、バッテリ110の電圧や電流を監視するバッテリ監視プログラムや、後述の受電制御処理をMPUが実行可能に構成される受電制御プログラム等が格納されている。
【0040】
赤外線ユニット57は、送電装置12の赤外線ユニット27,28(以下「赤外線ユニット27等」という)に対応して、例えば、IrDA規格に準拠した通信プロトコルで情報通信を行い得るように構成される赤外線(赤外光)による光無線通信装置である。本実施形態では、例えば、送電装置12に対して送るID(識別情報)等の電気信号(デジタルデータ)による送信データを光の強度信号にエンコードして送信し得る機能を有する赤外線データ送信装置である。IDは、後述するように、受電装置15またはAGV100を識別可能に各受電装置15等ごとに固有に付与された識別子のことである。なお、送信専用の赤外線ユニット57に代えて、送信機能に加えて受信機能も有する送受信可能な赤外線ユニット58を用いてもよい。
【0041】
次に、送電装置12による送電制御処理と受電装置15による受電制御処理について、
図3~
図6を参照しながら説明する。なお、送電制御処理は、送電装置12のコントローラ26が送電制御プログラムを実行することにより行われる。また、受電制御処理は、受電装置15のコントローラ56が受電制御プログラムを実行することにより行われる。まずは、
図3を主に参照しながら、送電制御処理について説明する。
【0042】
<送電制御処理>
図3に示すように、送電装置12では、その電源が投入されると本体ユニット21のコントローラ26により送電制御プログラムの実行が開始されて送電制御処理が始まる。送電制御処理では最初にステップS101によって所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、コントローラ26が有するメモリのワーク領域やフラグをクリアしたり、電圧コンバータ23、インバータ24や赤外線ユニット27等に対する初期設定用の制御コマンドの送出が行われたりする。
【0043】
続いてステップS103により受信情報取得処理が行われる。ここでは例えば、赤外線ユニット27等が受信した情報が保持される受信バッファを読み出す処理を行う。受信バッファは、赤外線ユニット27等がメモリを備えている場合にはそのメモリに確保され、そのようなメモリを備えていない場合にはコントローラ26のメモリに確保される。コントローラ26は、例えば、赤外線ユニット27等が受信した情報を読み出した後に受信バッファが空になるようにゼロクリアする。
【0044】
次のステップS105では赤外線ユニット27等が予備送電指令等を受信したか否かを判定する処理が行われる。受信した情報が予備送電指令等でないと判定した場合には(S105;No)、再度、ステップS103に戻って受信情報取得処理が行われる。予備送電指令等は、送電装置12に対して電力の供給を要求するAGV100の受電装置15が赤外線ユニット57,58を介して送信する情報であり、例えば、予備送電指令(送電要求情報)とその送信元の受電装置15またはAGV100を識別可能なIDを含む情報である。なお、「受電装置15が送電装置12に対して電力の供給を要求する場合にIDだけを送信する」ことが通信プロトコルにより定められているときには、予備送電指令(送電要求情報)は不要になり、受電装置15は自分のIDだけを送電装置12に送信する。
【0045】
ガイドラインGに沿って走行するAGV100は、後述するように、受電装置15のコントローラ56がバッテリ110の充電が必要であると判定すると、当該コントローラ56は、運転制御を行っている図略のドライブコントローラに対して充電ステーションSに向かう指示を伝えるとともに、
図4の受電制御処理を開始して予備送電指令等の送信を始める。ドライブコントローラは、充電ステーションS内に接近または到着(到達)したことを検出すると、AGV100を充電ステーションS内の定位置で停車させる。
【0046】
したがって、受信した情報が予備送電指令等でないときは、例えば、充電ステーションSから離れた場所でAGV100が走行していたり充電ステーションS内の停止ラインで停車していなかったりして、受電装置15の赤外線ユニット57,58(以下「赤外線ユニット57等」という)から送信された予備送電指令等の情報が送電装置12に届かず赤外線ユニット27等で受信できない(受信バッファが空である)場合等である。つまり、受信した情報が予備送電指令等でないときは、AGV100が充電ステーションS内の定位置で停車していないときである。
【0047】
送電装置12の赤外線ユニット27等と受電装置15の赤外線ユニット57等とが行う通信は赤外線による光無線通信であり、受電装置15の赤外線ユニット57等から送信(出射)される赤外線(赤外光)は、一般的にレンズ等の集光部を有する赤外線発光モジュールの特性上、指向性が鋭い。そのため、送電装置12の赤外線ユニット27等が予備送電指令等を受信した場合には当該AGV100が充電ステーションS内の定位置で停車している蓋然性が高い。
【0048】
つまり、送電装置12と受電装置15とによる赤外線通信の可否判定が、充電ステーションS内の定位置におけるAGV100の存在(停車)判定を兼ねることが可能になる。そのため、ステップS105による判定処理により、ステップS103で受信した情報が予備送電指令およびIDの情報であると判定した場合には(S105;Yes)、当該AGV100が充電ステーションS内の定位置で停車したと判定することが可能になる。
【0049】
このように本実施形態では、充電ステーションSの送電装置12は、電源が投入された後、AGV100の受電装置15が送信する予備送電指令とIDの情報が当該送電装置12に届くまで、つまり充電ステーションSに当該AGV100が到着するまで、ステップS103,105を繰り返し実行して待機し続ける。この様子が
図5に示すシーケンス図において模式的に表されている。
【0050】
即ち、
図5に示すように、送電装置12は、電源投入後、初期化処理(S101)を行った後、受電装置15から送信される予備送電指令等81を受信することができるまで、受信情報取得処理(S103)と受信判定処理(S105)を含む送電側第1フェーズ(S100)を継続して行う。これにより、AGV100が充電ステーションS内の定位置に停車すると、作業員による操作がなくても、送電装置12は、自動的に予備送電に関する処理(S111~S119)に移行することが可能になる。
【0051】
なお、前述したように、受電装置15は、それを搭載するAGV100が充電ステーションSに到着する以前から、予備送電指令等81の送信を開始する。そのため、
図5における矢印付きの破線(符号81’)は、充電ステーションSからAGV100が離れている場合において、受電装置15から送信されても送電装置12に届かない(受信できない)不達の予備送電指令等を表現している。
【0052】
ステップS105により、受信した情報が予備送電指令等であると判定した場合には(S105;Yes)、続くステップS111により予備送電が開始される(予備送電開始処理)。予備送電は、本送電(通常送電)時の所定電力に比べて十分に小さい電力を送電装置12から受電装置15に送るものであり、本実施形態では、例えば、本送電時の所定電力の1/10(10%)に相当するプレ電力を送電する(
図5参照)。なお、本実施形態では、本送電時の所定電力はバッテリ110の充電電力に相当する。また、予備送電時のプレ電力は、バッテリ110の充電に寄与させても寄与させなくてもどちらでもよい。
【0053】
即ち、コントローラ26は、予め設定されているプレ電力を送電コイル25が送電するように電圧コンバータ23およびインバータ24に対するスイッチング制御を行う。なお、プレ電力は、充電ステーションS内のAGV100が充電ステーションS内の定位置から多少離れて停車している(定位置に停車していない)場合において、送電装置12が受電装置15に対して送電を行っても、インピーダンスのミスマッチ等による電力の反射により送電部20が故障したり、送電に伴って発生する電磁波等がコイルユニット31の近傍や周囲で作業をする作業員に身体的な悪影響を与えたりし難い範囲に設定されている。
【0054】
続くステップS113では送電情報取得処理が行われる。この処理では、電圧コンバータ23やインバータ24に設けられている電圧センサ、電流センサや温度センサから得られる情報(電圧コンバータ23の入力電圧・電流、インバータ24の出力電圧・電流や、電圧コンバータ23およびインバータ24の内部温度の各情報)を取得する。これらの送電情報は、次のステップS114による異常発生判定処理に用いられる。
【0055】
ステップS114では、ステップS113により取得された送電情報に基づいて電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生しているか否かの判定処理が行われる。異常が発生している場合とは、例えば、電圧コンバータ23の入力電圧や電流、またはインバータ24の入出力電圧や電流が予め定められている最大許容値を超えている場合や、電圧コンバータ23やインバータ24の内部温度が最大許容温度を超えている場合等である。
【0056】
ステップS114により電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生していると判定したときには(S114;Yes)、予備送電を終了して(S115)、発生している異常に関する情報(異常情報)を、当該送電装置12が設けられている図略の操作盤の表示パネル等に出力する(S131)。つまり、送電装置12の外部に異常情報を出力する。なお、ステップS131による異常情報出力処理に代えて(またはそれに加えて)、再度、送電情報取得処理(S113相当)と異常発生判定処理(S114相当)を行うことによって、異常の発生が解消されていると判定した場合には最初の受信情報取得処理(S103)に戻って最初から処理をやり直すように処理の流れを変更してもよい。
【0057】
これに対して、ステップS114により電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生していないと判定したときには(S114;No)、続くステップS116に処理を移行して受信情報取得処理が行われる。送電装置12による予備送電により受電装置15には、受電コイル54を介して本送電時の所定電力よりも十分に小さいプレ電力が送電されている。これにより、後述するように、受電装置15のコントローラ56がプレ電力を正常に受電したことを検出すると、受電装置15では送電装置12に対して本送電指令を送信するため、ステップS116では、送電装置12の赤外線ユニット27等が受信している可能性のある本送電指令を受信バッファから読み出す処理が行われる。
【0058】
次のステップS117では赤外線ユニット27等が本送電指令を受信したか否かを判定する処理が行われる。受信した情報が本送電指令でないと判定した場合には(S117;No)、再度、ステップS113に戻って送電情報取得処理が行われる。また、所定時間を経過してもステップS116により本送電指令を読み出すことができないと判定した場合には(S117;Time's Up)、AGV100がAGV100またはその受電装置15において問題が生じている可能性があるため、予備送電を終了した後(S119)、最初の受信情報取得処理(S103)に戻って最初から処理をやり直す。
【0059】
一方、受信した情報が本送電指令であると判定した場合には(S117;Yes)、AGV100の受電装置15において正常に予備送電によるプレ電力が受電されていることになるため、続くステップS118により予備送電を終了する。
【0060】
このように本実施形態では、充電ステーションSの送電装置12は、予備送電を開始すると(S111)、AGV100の受電装置15が送信する本送電指令が当該送電装置12に届くまでステップS113,S114,S116,S117を繰り返し実行してプレ電力を送電し続ける。即ち、
図5に表したシーケンス図で示すように、送電装置12は、予備送電開始後、受電装置15から送信される本送電指令83を受信することができるまで、送電情報取得処理(S113)、異常判定処理(S114)、受信情報取得処理(S116)および受信判定処理(S117)を含む送電側第2フェーズ(S110)を繰り返し行うことにより予備送電91によるプレ電力の送電を継続する。
【0061】
これにより、後述するように、AGV100に搭載された受電装置15による受電の準備が整い最適な受電が可能になるまで、送電装置12はプレ電力の送電を継続して本送電を待つことから、受電装置15の受電の準備が整う前に送電装置12による本送電が開始されることがない。したがって、受電装置15は、最適な状態で送電装置12の本送電による所定電力を受電することが可能になる。
【0062】
ステップS118による予備送電終了処理が終わると、所定の待ち時間が経過した後、次のステップS121により本送電が開始される(本送電開始処理)。この所定の待ち時間は、送電部20(電圧コンバータ23やインバータ24等)が出力を予備送電から本送電に切り換える場合に要するインターバル時間である。
【0063】
本送電(通常送電)される電力は、本来、受電装置15に送電すべき所定電力であり、予備送電のプレ電力に比べて非常に大きい電力である。このような本送電による所定電力は、AGV100が備えるバッテリ110や充電ユニット53の仕様に基づいて一律に定められたり、またAGV100や受電装置15ごとにそれぞれのIDに関連付けられて個別具体的に定められたりする。個別の所定電力は、受信情報取得処理(S103)で取得されたIDに基づいてコントローラ26が選択する。
【0064】
続くステップS123では送電情報取得処理が行われる。この処理では、電圧コンバータ23やインバータ24に設けられている電圧センサ、電流センサや温度センサから得られる情報(電圧コンバータ23の入力電圧・電流、インバータ24の出力電圧・電流や、電圧コンバータ23およびインバータ24の内部温度の各情報)を取得する。これらの送電情報は、次のステップS124による異常発生判定処理に用いられる。
【0065】
ステップS124では、ステップS123により取得された送電情報に基づいて電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生しているか否かの判定処理が行われる。異常が発生している場合とは、例えば、電圧コンバータ23の入力電圧や電流、またはインバータ24の入出力電圧や電流が予め定められている最大許容値を超えている場合や、電圧コンバータ23やインバータ24の内部温度が最大許容温度を超えている場合等である。
【0066】
ステップS124により電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生していると判定したときには(S124;Yes)、本送電を終了して(S125)、発生している異常に関する情報(異常情報)を、当該送電装置12が設けられている図略の操作盤の表示パネル等(送電装置12の外部)に異常情報を出力する(S131)。なお、ステップS114による異常発生判定処理の説明で述べたようにステップS131による異常情報出力処理に代えて(またはそれに加えて)、再度、送電情報取得処理(S113相当)と異常発生判定処理(S114相当)を行い、もし異常が解消されている場合には最初の受信情報取得処理(S103)に戻るように処理の流れを変更してもよい。
【0067】
これに対して、ステップS124により電圧コンバータ23やインバータ24に異常が発生していないと判定したときには(S124;No)、続くステップS126に処理を移行して受信情報取得処理が行われる。AGV100の受電装置15では、本送電による電力を受電して充電ユニット53によりバッテリ110の充電が行われているため、時間の経過とともに充電が進むことによってやがてバッテリ110の充電が完了する。
【0068】
後述するように、受電装置15のコントローラ56がバッテリ110の満充電(充電完了)を充電完了フラグの状態に基づいて判定すると、受電装置15では送電装置12に対して送電停止指令を送信し、そうでないとき(充電未了)には、受電装置15では送電装置12に対して、再度、本送電指令を送信する。そのため、ステップS126では、送電装置12の赤外線ユニット27等が受信している可能性のある送電停止指令や本送電指令を受信バッファから読み出す処理が行われる。
【0069】
次のステップS127では赤外線ユニット27等が本送電指令を受信したか否かを判定する処理が行われる。受信した情報が本送電指令でないと判定した場合には(S127;No)、次のステップS128により、赤外線ユニット27等が送電停止指令を受信したか否かを判定する処理が行われる。また、所定期間Twを経過してもステップS126により本送電指令を読み出すことができないと判定した場合には(S127;Time's Up)、AGV100がAGV100またはその受電装置15において問題が生じている可能性があるため、本送電を終了した後(S129)、最初の受信情報取得処理(S103)に戻って最初から処理をやり直す。なお、所定期間Twは、後述する受電制御処理の第2フェーズにおける繰り返し処理の所要時間Trの複数倍の時間に設定される。
【0070】
一方、ステップS127により、受信した情報が本送電指令であると判定した場合(S127;Yes)や、ステップS128により、受信した情報が送電停止指令でないと判定した場合には(S128;No)、再度、ステップS124に戻って異常発生判定処理が行われる。また、受信した情報が送電停止指令であると判定した場合には(S128;Yes)、AGV100の受電装置15においてバッテリ110の充電が完了していることになるため、続くステップS129により本送電を終了して、最初の受信情報取得処理(S103)に戻って、別のAGV100が充電ステーションSに到着するのを待つ。
【0071】
このように本実施形態では、充電ステーションSの送電装置12は、本送電を開始すると(S121)、AGV100の受電装置15が送信する送電停止指令が当該送電装置12に届くまでステップS124,S126,S127,S128を繰り返し実行して送電し続ける。即ち、
図5に表したシーケンス図で示すように、送電装置12は、本送電開始後、受電装置15から繰り返し送信される本送電指令85を受信し続けながら送電停止指令87を受信するまで、異常判定処理(S124)、受信情報取得処理(S126)、本送電指令受信判定処理(S127)および送電停止指令受信判定処理(S128)を含む送電側第3フェーズ(S120)を繰り返し行うことにより本送電93を継続する。
【0072】
これにより、所定期間Tw内に本送電指令85を受信できない場合には(S127;Time's Up)、本送電終了処理(S129)が行われて本送電が中止される。そのため、例えば、
図6に表したシーケンス図で示すように、本送電93が行われている期間中(バッテリ110の充電中)に充電ステーションS内の定位置からAGV100が移動して充電ステーションSから離脱した場合には、本送電が中止されて当該AGV100yには所定電力が供給されなくなる。したがって、充電ステーションS内にAGV100が存在しないにもかかわらず本送電が行われてしまい送電装置12の故障を招くというような事態の発生を防止することが可能になる。
【0073】
なお、送電装置12が収容される図略の操作盤に送電停止ボタンが設けられている場合には、そのボタンの操作により前述した予備送電91や本送電93を中断し得るように、上述した送電制御処理のアルゴリズムを構成してもよい。また、同操作盤に通信停止ボタンが設けられている場合には、そのボタンの操作により受電装置15との通信を遮断し得るように、上述した送電制御処理のアルゴリズムを構成してもよい。
【0074】
次に、AGV100に搭載される受電装置15のコントローラ56により実行される受電制御処理について、
図4~
図6を主に参照しながら説明する。
【0075】
<受電制御処理>
受電装置15では、その電源が投入されると本体ユニット51のコントローラ56によりバッテリ監視プログラムの実行が開始されてバッテリ110の端子間電圧(バッテリ電圧)と端子電流(バッテリ電流)の監視処理が始まる。そして、この監視処理によりコントローラ56がバッテリ110の充電が必要であると判定した場合には運転制御を行っている図略のドライブコントローラに対して、当該AGV100を充電ステーションSに向かわせる指示を送出するとともに、受電制御プログラムの実行を開始する。これにより、
図4に示す受電制御処理が始まる。
【0076】
受電制御処理では、まずステップS201によって所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、コントローラ56が有するメモリのワーク領域やフラグをクリアしたり、充電ユニット53や赤外線ユニット57等に対する初期設定用の制御コマンドの送出が行われたりする。
【0077】
続いてステップS203により予備送電指令等送信処理が行われる。前述したように、AGV100に搭載される受電装置15は、当該AGV100が充電ステーションSに到着する以前から予備送電指令等81’の送信を開始する。そのため、本受電制御処理では、処理のほぼ開始直後から予備送電指令等81’を送信する処理を行う。つまり、AGV100”が充電ステーションSから離れた位置を走行している場合にも予備送電指令等81’を送信する(
図5に示す破線枠で表した受電装置15’)。
【0078】
例えば、予備送電指令と送信元である受電装置15または当該AGV100を識別可能なIDを、送信バッファにセットするとともに、送信を指示する制御コマンドを赤外線ユニット57等に対して出力する。送信バッファは、赤外線ユニット57等がメモリを備えている場合にはそのメモリに確保され、そのようなメモリを赤外線ユニット57等が備えていない場合にはコントローラ56のメモリに確保される。
【0079】
次のステップS205では受電電圧情報取得処理が行われる。この処理では、コイルユニット61の受電コイル54により受電した電圧情報を取得する。例えば、本実施形態では、充電ユニット53にはその入力電圧を検出する図略の電圧センサが設けられている。そのため、この処理では、この電圧センサにより検出された電圧情報を受電コイル54の受電電圧の情報として取得する。受電コイル54の受電電圧を正確に得る必要がある場合には、この電圧センサの電圧情報に基づいて算出してもよい。
【0080】
そして、ステップS207による判定処理によって、ステップS205により得た受電電圧が予め定められた所定電圧値以上であるか否かを判定する。この所定電圧値は、前述した送電側第2フェーズS110で送電装置12が予備送電91によってプレ電力を送電している場合において、AGV100が充電ステーションS内の定位置に停車したときに受電コイル54が受電し得る受電電圧であり、実験や計算機シミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。また所定電圧値以上の上限は予め定められた許容範囲内であり、当該許容範囲も実験や計算機シミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。
【0081】
このステップS207では、所定電圧値以上であるか否かではなく、所定電圧値(所定値)であるか否かを判定してもよい。また受電コイル54が受電し得る受電電流が所定電流値(所定値)以上もしくは所定電流値(所定値)であるか否か、または受電し得る受電電力が所定電力値(所定値)以上もしくは所定電力値(所定値)であるか否か、を判定してもよい。なお、電流値は電流センサにより、また電力値は、電圧値と電流値の積をコントローラ56が演算することにより得られる。
【0082】
ステップS205により取得した受電電圧情報が、所定電圧値、所定電流値または所定電力値(以下「所定電圧値等」という)以上でない(所定電圧値等未満である)場合には(S207;No)、当該AGV100’は充電ステーションS内の定位置に停車している蓋然性が低く、未だ充電ステーションSに到着していない可能性もある。そのため、この場合にはステップS203に戻り予備送電指令等送信処理によって予備送電指令等81’を送信した後、再度、ステップS205により受電電圧情報取得処理を行う。
【0083】
これに対して、ステップS205により取得した受電電圧情報が所定電圧値等である場合には(S207;Yes)、プレ電力を正常に受電しており、当該AGV100は充電ステーションS内の定位置に停車している蓋然性が高い。つまり、受電装置15による受電の準備が整ったことにより最適な受電が可能になる。そのため、この場合には、次のステップS209に処理を移行して本送電指令送信処理を行う。
【0084】
即ち、当該AGV100は、充電ステーションS内の定位置に停車していることから、例えば、インピーダンスのミスマッチ等が生じ難く、本送電を開始しても問題が生じる可能性が低い。そのため、ステップS209の本送電指令送信処理では、送電装置12に対して、予備送電から本送電に切り換える指示として本送電指令83を送信する。例えば、本送電指令を送信バッファにセットするとともに、送信を指示する制御コマンドを赤外線ユニット57等に対して出力する。
【0085】
なお、ステップS203~S207の処理を複数回(例えば10回)または所定時間以上(例えば1秒間以上)繰り返し行っても取得した受電電圧情報が所定電圧値等以上にならない(所定電圧値等未満である)場合には、送電部20または受電部50が故障している可能性がある。また、取得した受電電圧情報が所定電圧値等に対して前述の許容範囲を超えて高い場合には、送電部20が故障している可能性もある。そのため、これらの場合には、後述する異常情報出力処理(S235)を行った後、本受電制御処理を終了してもよい。
【0086】
また、前述したように、AGV100の運転制御を行う図略のドライブコントローラは、ガイドラインGや充電ステーションS内の定位置に表示されている停止ライン等を画像認識して当該AGV100の操舵や制動の制御を行っているが、このような画像認識よる情報に加えてステップS205により取得した受電電圧情報に基づいて、AGV100の停車位置を修正する制御を行ってもよい。この場合、ステップS205により取得した受電電圧情報を、逐次、ドライブコントローラに送出する処理を受電制御処理に追加する。
【0087】
これにより、例えば、画像認識よる制動制御を行った後、停車位置付近でステップS205により取得した受電による所定電圧値等が最大値になるように当該AGV100を前進させたり後退させたりする運転制御をドライブコントローラに行わせることによって、当該AGV100に搭載された受電装置15は、非接触電力供給において最適な位置関係で送電装置12から電力の供給を受けることが可能になる。
【0088】
このように本実施形態では、AGV100に搭載された受電装置15は、受電制御処理を開始後、初期化処理(S201)を行った後、受電コイル54が受電する電圧として所定電圧値が得られるまで、予備送電指令等送信処理(S203)、受電電圧情報取得処理(S205)および電圧値判定処理(S207)を含む受電側第1フェーズ(S200)を継続して行う。
【0089】
これにより、受電装置15は、AGV100が充電ステーションSに到着して定位置に停車する以前から予備送電指令等81,81’を繰り返し送信するため、充電ステーションSの送電装置12が予備送電指令等81を受信した場合には当該AGV100が充電ステーションS内の定位置で停車している蓋然性が高い。つまり、送電装置12における送電装置12と受電装置15とによる赤外線通信の可否判定が、充電ステーションS内における停車位置(定位置)の検出判定を兼ねることが可能になる。また、作業員による操作がなくても、受電装置15は、それが搭載されたAGV100が充電ステーションS内に存在することを送電装置12に対して知らせることが可能になり、送電装置12は、当該AGV100の存在を確認することが可能になる。
【0090】
ステップS209による本送電指令送信処理が終わると、それを受信した送電装置12は、前述したように予備送電91を終了した後、所定の待ち時間の経過後に本送電93を開始する。そのため、受電装置15のコントローラ56は、本送電指令送信処理(S209)が終了してからこの所定の待ち時間以上の時間が経過した後に次のステップS211によるバッテリ充電開始処理を行う。これにより、コントローラ56は別のプログラムにより実行されるバッテリ充電処理を起動して、現在のバッテリ110に適した充電を行い得るように充電ユニット53を制御する。
【0091】
このバッテリ充電処理では、バッテリ110のバッテリセルの種類に適した充電方式で充電電圧や充電電流の制御を行う。例えば、バッテリセルが、リチウムイオン二次電池で構成されている場合には定電流定電圧充電(CC・CV(Constant Current, Constant Voltage)方式で充電が行われ、鉛蓄電池で構成されている場合には準定電圧充電方式で充電が行われる。そして、バッテリ110が満充電(充電完了)になった場合には、バッテリ充電処理は、例えば、充電完了フラグをオンにして充電完了を本受電制御処理に知らせて待機する。待機中も充電を停止することなく充電し続けることにより、送電装置12から送電されてくる所定電力の出力先としてバッテリ110に充電電流を流し続ける。
【0092】
続くステップS213では本送電指令送信処理が行われる。この処理は、前述したステップS209の本送電指令送信処理と同じである。例えば、本送電指令を送信バッファにセットするとともに、送信を指示する制御コマンドを赤外線ユニット57等に対して出力する。なお、このステップS209による本送電指令送信処理は、後述するように充電が完了するまで繰り返し実行される。そのため、
図5に示すように、本送電93が行われている期間中(バッテリ110の充電中)は、受電装置15から送電装置12に対して所定タイミングで本送電指令85が繰り返し送信される。
【0093】
次のステップS214では受電電圧情報取得処理が行われる。前述したステップS205の場合と同様に、充電ユニット53の入力電圧を検出する電圧センサにより検出された電圧情報を、コイルユニット61の受電コイル54により受電した電圧情報として取得する。また次のステップS215ではバッテリ情報取得処理が行われる。この処理では、バッテリ110に設けられる電圧センサ113、バッテリ電流や図略の温度センサにより、バッテリ電圧、バッテリ電流、セル温度の情報が取得される。
【0094】
これらに取得された受電電圧の電圧情報やバッテリ110の情報(電圧情報、電流情報、温度情報)は、続くステップS217による異常発生判定処理により、受電コイル54、充電ユニット53やバッテリ110に異常が生じているか否かの判定が行われる。
【0095】
ステップS217により、受電コイル54、充電ユニット53やバッテリ110に異常が発生していると判定した場合には(S217;Yes)、バッテリ充電処理を終了する(S231)とともに送電停止指令を送信して(S233)、発生している異常に関する情報(異常情報)を当該受電装置15が搭載されているAGV100の操作パネル等に出力する(S235)。つまり、受電装置15の外部に異常情報を出力する。なお、ステップS235による異常情報出力処理に代えて(またはそれに加えて)、再度、受電電圧情報取得処理(S214相当)、バッテリ情報取得処理(S215相当)および異常発生判定処理(S217相当)を行うことによって、異常の発生が解消されていると判定した場合には充電完了判定処理(S219)に戻るように処理の流れを変更してもよい。
【0096】
これに対して、ステップS217によりバッテリ110に異常が発生していないと判定した場合には(S217;No)、続くステップS219による充電完了判定処理(S219)が行われる。ステップS219による判定処理は、前述した充電完了フラグを参照することにより行われる。即ち、バッテリ充電処理によりバッテリ110の充電が完了した場合には、前述のように充電完了フラグがオンにセットされるため、当該判定処理ではこのフラグの状態に基づいて充電完了の可否を判定する。
【0097】
そして、バッテリ110の充電が完了していない場合には(S219;No)、ステップS213に戻って、再度、本送電指令送信処理を行う。また、バッテリ110の充電が完了している場合には(S219;Yes)、次のステップS221の送電停止指令送信処理に移行するが、ステップS221への移行前の時点では、前述のバッテリ充電処理を停止や終了させることなく、バッテリ110に微小の充電電流を流し余剰電力を放電抵抗等に逃がす図略のトリクル充電回路やフロート充電回路を作動させ得るように制御する。これにより、送電装置12から送電されてくる所定電力の出力先(逃げ場)としてバッテリ110等を利用することが可能になる。
【0098】
このように本実施形態では、AGV100に搭載された受電装置15は、バッテリ充電開始処理(S211)を行った後、バッテリ110の充電が完了するまで、本送電指令送信処理(S213)、受電電圧情報取得処理(S214)、バッテリ情報取得処理(S215)および異常発生判定処理(S217)を含む受電側第2フェーズ(S210)を継続して行う。つまり、ステップS213,S214,S215,S217,S219を繰り返し実行して本送電指令を所定タイミングTmで繰り返し送信する。ステップS213,S214,S215,S217,S219の繰り返し処理に要する時間(所要時間)Trは、本送電指令を繰り返し送信する所定タイミングTmの間隔に相当する。これにより、本送電の期間中においても送電装置12に対して、受電装置15やそれが搭載されたAGV100の存在を知らせることができる。
【0099】
このため、例えば、本送電中に当該AGV100が移動して充電ステーションSから離脱するような場合があると、前述したように、送電装置12では所定期間Tw内に本送電指令85を受信できなくなる。このような場合には、
図6に示すように送電装置12は、本送電93を終了して所定電力の供給を中止することが可能になる。またこの場合、受電装置15では、受電コイル54の受電電圧が急激に低下することによって、受電電圧情報取得処理(S214)で取得された受電電圧の低下情報に基づく判定処理(S217)により異常発生が判定される(S217;Yes)。そのため、バッテリ充電終了処理(S231)、送電停止指令送信処理(S233)、異常情報出力処理(S235)を経て本受電制御処理が終了する。
【0100】
ステップS219によりバッテリ110の充電が完了していると判定した場合には(S219;Yes)、送電装置12から本送電により供給される所定電力が不要になる。そのため、送電装置12による本送電を停止させる必要から、次のステップS221により送電装置12に対して、本送電を停止する指示として送電停止指令87を送信する。例えば、送電停止指令を送信バッファにセットするとともに、送信を指示する制御コマンドを赤外線ユニット57等に対して出力する。
【0101】
続くステップS223により受電電圧情報取得処理が行われる。前述したステップS205の場合と同様に、充電ユニット53の入力電圧を検出する電圧センサにより検出された電圧情報を、コイルユニット61の受電コイル54により受電した電圧情報として取得する。そして、ステップS225による判定処理によって、ステップS223により得た電圧情報から受電がないか否かを判定する。
【0102】
ステップS221により送信された送電停止指令87を送電装置12の赤外線ユニット27等が受信して本送電が停止されている場合には(
図3に示すS128;Yes)、受電装置15の受電コイル54は受電しなくなる。そのため、受電コイル54による受電があると判定した場合には(S225;No)、受電がないと判定するまで(S225;Yes)、ステップS221,S223,S225を繰り返し実行する。
【0103】
受電コイル54による受電がない場合には(S225;Yes)、バッテリ充電処理を終了しても、受電コイル54による受電がある場合に充電ユニット53に入力され得る余剰電力(所定電力)が存在しない。そのため、充電ユニット53がダメージを受けることがないことから、ステップS227によりバッテリ充電終了処理を行って待機していたバッテリ充電処理を終了させる。これにより、一連の本受電制御処理が終了する。充電が終了したAGV100は、充電ステーションSから離脱した後、次の目的地点に向かってガイドラインGに沿って走行する(
図5に示すAGV100x)。
【0104】
このように本実施形態では、AGV100に搭載された受電装置15は、バッテリ110の充電が完了した後(S219;Yes)、コイルユニット61の受電コイル54が受電しなくなるまで、送電停止指令送信処理(S221)、受電電圧情報取得処理(S223)および受電判定処理(S225)を含む受電側第3フェーズ(S220)を継続して行い、受電コイル54の受電がないことを確認したうえで(S225;Yes)、バッテリ充電処理を終了させる(S227)。
【0105】
これにより、受電コイル54による受電がある期間中においては、バッテリ充電処理を停止や終了させることなく、バッテリ110に充電電流を流し続けるように制御するため、送電装置12から送電されてくる所定電力の出力先(逃げ場)としてバッテリ110や放電抵抗等を利用することによって、このような受電した所定電力(余剰電力)の逃げ場がない場合に比べて充電ユニット53や送電装置12が受けるダメージを低減することが可能になる。
【0106】
なお、受電装置15が搭載されるAGV100の操作パネル等に充電停止ボタンが設けられている場合には、そのボタンの操作により、バッテリ充電終了処理(S231)、送電停止指令送信処理(S233)、異常情報出力処理(S235)を経て本受電制御処理を強制的に終了し得るように、上述した受電制御処理のアルゴリズムを構成してもよい。
【0107】
以上説明したように本実施形態の充電システム10では、AGV100に搭載される受電装置15の赤外線ユニット57は、送電装置12の赤外線ユニット27等に対して、電波の送信アンテナの種類にもよるが一般的にレンズ等の集光部を有する赤外線発光モジュールの特性上、電波に比べて指向性が鋭い赤外線通信で情報を送信する。受電装置15の赤外線ユニット57は、AGV100が充電ステーションSで停車する以前から予備送電指令等(IDと予備送電指令)81,81’を繰り返し送信していることから、送電装置12の赤外線ユニット27等が予備送電指令等81を受信した場合にはAGV100が充電ステーションSに停車している可能性が高い。そのため、このような場合には送電装置12では、本送電93の時の所定電力よりも十分に小さいプレ電力が供給される予備送電91を送電部20が開始する。
【0108】
これにより、AGV100が充電ステーションS内の定位置に停車したときには、送電装置12は本送電93に先立って自動的に予備送電91を開始するので、例えば、AGV100が充電ステーションS内の定位置から多少ずれて停車している場合において、送電装置12が受電装置15に対して予備送電91を行っても、インピーダンスのミスマッチ等による電力の反射により送電部20が故障したり、予備送電91に伴って発生する電磁波等がコイルユニット31の近傍や周囲で作業をする作業員に身体的な悪影響を与えたりし難くい。したがって、AGV100に対して安全かつ自動的に所定電力を供給することができる。
【0109】
また、本実施形態の充電システム10では、受電装置15のコントローラ56は、予備送電91により受電したプレ電力が予め定められた所定電圧値等であるときには、所定電力の送電を要求する本送電指令83を赤外線ユニット57等を介して送信するように赤外線ユニット57等を制御する。また、送電装置12のコントローラ26は、赤外線ユニット27等が本送電指令83を受信した場合、本送電93を開始するように送電部20を制御する。受電した電力が所定電圧値等よりも低い場合には、例えば、AGV100が充電ステーションS内の定位置から多少ずれて停車していたり、送電部20または受電部50が故障していたりする可能性がある。また、受電した電力が所定電圧値等に対して許容範囲を超えて高い場合には、例えば、送電部20が故障している可能性がある。
【0110】
これにより、予備送電91により受電した電力が所定電圧値等でないときには、本送電指令83は送信されないことから、AGV100が充電ステーションS内の定位置から、ずれて停車している場合や、送電部20や受電部50が故障している可能性がある場合には本送電93の開始を回避することが可能になる。したがって、AGV100が充電ステーションS内の定位置に適正に停車している場合や、送電部20および受電部50がいずれも正常である場合に限って本送電93による所定電力がAGV100に供給されるので、さらに安全性を高めることができる。
【0111】
さらに、本実施形態の充電システム10では、受電装置15のコントローラ56は、受電部50が所定電力を受電している期間中においては本送電指令85を赤外線ユニット57等を介して所定タイミングTmで繰り返し送信するように赤外線ユニット57等を制御する。また、送電装置12のコントローラ26は、所定タイミングTmが複数含まれる所定期間Tw内に赤外線ユニット27等が本送電指令85を受信しない場合、本送電93を停止するように送電部20を制御する。
【0112】
これにより、受電装置15の赤外線ユニット57等が所定タイミングTmで繰り返し本送電指令85を送信しても、例えば、所定電力の受電途中にAGV100が移動して充電ステーションS内の定位置から離脱したり、受電装置15の受電部50が故障したりした場合には送電装置12の赤外線ユニット27等は所定期間Tw内に本送電指令85を受信できなくなるため、送電装置12は自動的に本送電93を停止することが可能になる。したがって、AGV100が充電ステーションS内の定位置に適正に停車している場合や受電装置15が正常である場合に限って本送電93による所定電力がAGV100に供給され続けるので、さらに安全性を高めることができる。
【0113】
なお、本実施形態の充電システム10では、送電装置12において、受信専用の赤外線ユニット27に代えて受信機能に加えて送信機能も有する送受信可能な赤外線ユニット28を用いる。また受電装置15においては、送信専用の赤外線ユニット57に代えて、送信機能に加えて受信機能も有する送受信可能な赤外線ユニット58を用いる。そのため、送電装置12のコントローラ26と受電装置15のコントローラ56が双方向で赤外線無線通信(光無線通信)を行うことが可能になるので、例えば、送電装置12のコントローラ26は、受信部として機能する赤外線ユニット28が受信したIDやIDに関する情報を、送信部として機能する赤外線ユニット28を介して受電装置15の赤外線ユニット58に送信しコントローラ56に伝えられる。
【0114】
これにより、送電装置12は、自分が受信したIDや、そのIDに関する情報として、当該IDを有する受電装置15を認識、登録または認証して相互通信可能な状態になった(ペアリングが成立した)情報を、受電装置15に知らせることが可能になる。また、受電装置15は、自分が送信したIDを送電装置12が受信して当該受電装置15を認識、登録または認証したことや、それにより相互通信可能な状態になった(ペアリングが成立した)ことを確認することが可能になる。
【0115】
なお、上述した実施形態の充電システム10では、送電装置12は、光無線通信で情報を受信可能な赤外線ユニット27や送受信可能な赤外線ユニット28を備え、また受電装置15は、光無線通信で情報を送信可能な赤外線ユニット57や送受信可能な赤外線ユニット58を備えるように構成したが、本発明の他の実施形態として、例えば、
図7(A)および
図7(B)に示すように、相互に近距離で無線通信可能な無線ユニット29,59を送電装置12および受電装置15がそれぞれ備えるように構成してもよい。
【0116】
即ち、
図7(A)に示すように、送電装置12は、赤外線ユニット27等に加えて、コントローラ26に接続される無線部として、近距離無線データ通信が可能な無線ユニット29を備える。また、
図7(B)に示すように、受電装置15は、赤外線ユニット57等に加えて、コントローラ56に接続される無線部として、近距離無線データ通信が可能な無線ユニット59を備える。これらの無線ユニット29,59は、例えば、Bluetooth(登録商標)や ZigBee(登録商標)等の無線規格に準拠するものである。
【0117】
このため、送電装置12のコントローラ26は、赤外線ユニット27,28が受信した受電装置15のIDや、そのIDに関する情報として、当該IDを有する受電装置15を認識、登録または認証して相互通信可能な状態になった旨のペアリング成立情報を、送電装置12の無線ユニット29を介して受電装置15の無線ユニット59に送信しコントローラ56に伝える。無線ユニット29,59による無線通信は、電波を情報伝達媒体にするものであり、電波はその送信アンテナの種類にもよるが一般的にレンズ等の集光部を有する赤外線ユニット27,28,57,58の赤外線(赤外光)を媒体する光無線通信よりも指向性が鈍く広範囲に亘って届き易い。
【0118】
これにより、例えば、赤外線ユニット27,28,57,58による赤外線無線通信では受電装置15の赤外線ユニット57,58に伝わり難い環境下においても、電波を情報伝達媒体にすることで、受電装置15は、自分が送信したIDを送電装置12が受信して当該受電装置15を認識したことや、認識、登録または認証して相互通信可能な状態になった旨のペアリング成立情報を、受電装置15に確実に知らせることが可能になる。
【0119】
また、無線データ通信は、典型的には、赤外線データ通信等の光無線データ通信に比べて大容量のデータを送受信することが可能である。そのため、受電したプレ電力や所定電力に関する様々な情報やこれ以外の情報も、受電装置15の無線ユニット59から送電装置12の無線ユニット29に送信してそのコントローラ26に伝えることが可能になる。また、予備送電91や本送電93に関する様々な情報やこれ以外の情報も、送電装置12の無線ユニット29から受電装置15の無線ユニット59に送信してそのコントローラ56に伝えることが可能になる。
【0120】
なお、上述した実施形態では、送電装置12が備える本体ユニット21およびコイルユニット31をそれぞれ別体になるように構成したが、本体ユニット21とコイルユニット31が同一の筐体内に収容されるように構成してもよい。また、受電装置15が備える本体ユニット51およびコイルユニット61をそれぞれ別体になるように構成したが、本体ユニット51とコイルユニット61が同一の筐体内に収容されるように構成してもよい。
【0121】
また、上述した実施形態では、送電装置12のコイルユニット31を充電ステーションS内のフロアFに埋設するように構成したが、AGV100の走行の妨げにならない位置であれば、例えば、充電ステーションS内の走行ルートの側方からAGV100の側面に向くようにコイルユニット31を走行ルート脇の支柱や側壁等に設けてもよい。この場合には、AGV100に搭載される受電装置15は、そのコイルユニット61が走行ルート脇のコイルユニット31に対向し得る必要から、当該コイルユニット61がAGV100のサイドパネルやサイドメンバーに設けられる。
【0122】
さらに、上述した実施形態では、本発明の非接触電力供給システムをAVGの充電システム10に適用した構成を例示して説明したが、本発明の適用はこれに限られることはなく、非接触で電力の供給を行うことが可能であり、かつ赤外線通信ユニット等による光無線通信で少なくとも受電側から送電側に情報通信可能な送電側装置と受電側装置を含むシステムであれば、例えば、自走型や歩行型のロボットの充電システム等に適用することもできる。この場合においても上述と同様の技術的な作用および効果を得ることができる。
【0123】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0124】
10…充電システム(非接触電力供給システム)
12…送電装置
15…受電装置
18…交流電源
20…送電部
25…送電コイル
26…コントローラ(送電側制御部)
27…赤外線ユニット(受信部)
28…赤外線ユニット(送信部、送受信部)
29,59…無線ユニット(無線部)
31,61…コイルユニット
50…受電部
54…受電コイル
56…コントローラ(受電側制御部)
57…赤外線ユニット(送信部)
58…赤外線ユニット(受信部、送受信部)
81,81’…予備送電指令等(送電要求情報)
83,85…本送電指令(通常送電要求情報)
87…送電停止指令
91…予備送電
93…本送電(通常送電)
100…AGV(移動体)
110…バッテリ
113…電圧センサ
115…電流センサ
F…フロア
G…ガイドライン
S…充電ステーション(停止範囲)
Tr…所要時間
Tm…所定タイミング
Tw…所定期間