(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 59/38 20230101AFI20240710BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240710BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240710BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240710BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H10K59/38
H10K59/122
G02B5/20 101
G09F9/30 365
G09F9/30 309
G09F9/30 349C
G09F9/30 349B
G09F9/30 338
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2020121649
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019157751
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健一
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/022123(WO,A1)
【文献】特開2016-143630(JP,A)
【文献】特開2004-004945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00
G02B 5/20
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配置された複数の発光部と、
前記複数の発光部上に設けられた封止層と、
前記封止層上において行方向に隣接する前記発光部の間隙に設けられ、列方向に延伸する遮光層と、
前記遮光層上に設けられ、列方向に延伸する透明隔壁層と、
前記封止層上において前記遮光層および前記透明隔壁層の間隙に設けられたカラーフィルターと、
前記透明隔壁層及び前記カラーフィルターを覆い、前記透明隔壁層及び前記カラーフィルターと接する保護層と、
を備え
、
前記カラーフィルターは、前記封止層に接しており、
前記カラーフィルターの前記封止層からの高さは、前記遮光層および前記透明隔壁層の前記封止層からの合計高さより低く、
前記保護層の前記カラーフィルターから遠い側の表面は平坦である
表示装置。
【請求項2】
前記封止層上において列方向に隣接する前記発光部の間隙に設けられ、行方向に延伸する遮光層を、さらに備える、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記透明隔壁層は、撥液性を有する、
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光層の厚さは、0.1μm以上2μm以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記透明隔壁層の厚さは、1μm以上5μm以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記カラーフィルターの前記透明隔壁層の間隙の端部の厚さは、前記透明隔壁層の間隙の中央の厚さよりも厚い、
請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記透明隔壁層の幅は、前記遮光層の幅よりも小さい、
請求項1から6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の発光部の各々は、第1の電極と、前記第1の電極の上方に設けられた有機材料を含む発光層と、前記発光層の上方に設けられた第2の電極と、を有し、
行方向に隣接する前記発光部の前記第1の電極の間隙に、列方向に延伸するバンク層が設けられている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記遮光層は、列方向に隣接する発光部の間隙に、行方向に延伸し、
前記カラーフィルターは、列方向に隣接する前記発光部の間隙において、前記遮光層を覆う
請求項1から8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
行列状に複数の発光部を形成する工程と、
前記複数の発光部上に封止層を形成する工程と、
前記封止層上において、行方向に隣接する前記発光部の間隙に、列方向に延伸する遮光層を形成する工程と、
前記遮光層上に、列方向に延伸する透明隔壁層を形成する工程と、
前記封止層上において、前記遮光層および前記透明隔壁層の間隙に、インクジェット法でカラーフィルターを形成する工程と、
前記透明隔壁層及び前記カラーフィルターを覆い、前記透明隔壁層及び前記カラーフィルターと接する保護層を形成する工程と、
を含
み、
前記カラーフィルターは、前記封止層に接しており、
前記カラーフィルターの前記封止層からの高さは、前記遮光層および前記透明隔壁層の前記封止層からの合計高さより低く、
前記保護層の前記カラーフィルターから遠い側の表面は平坦である
表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記遮光層は、列方向に隣接する発光部の間隙に、行方向に延伸し、
前記カラーフィルターは、列方向に隣接する前記発光部の間隙において、前記遮光層を覆う
請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特にはカラーフィルター付きの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば赤、緑、青といった異なる色(異なる波長)の光を発生する複数の発光部が基板上に周期的に配置されたカラー画像表示装置(以下、単に表示装置という)が知られている。発光部に有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機EL表示パネルは、そのような表示装置の一例である。
【0003】
表示装置では、所望の色特性を得るため、各発光部の光の出射側において、発光色に対応したカラーフィルターが設けられることがある。例えば、特許文献1には、(1)光取り出し側に感光層を有する自発光型のパネルデバイスを作成すること、(2)感光層上に、パネルデバイスの発光素子の光を用いて電子写真方式で着色剤によるブラックマトリクスを形成すること、および(3)ブラックマトリクスをバンクとして利用して、インクジェット法によりカラーフィルターを形成すること、が開示されている。
【0004】
特許文献1の技術によれば、発光部上にインクジェット法によりカラーフィルターを直接形成するので、インク、つまりカラーフィルターの材料の利用効率を高め、表示装置の低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インクジェット法でカラーフィルターを形成する従来の表示装置では、異なる発光色に対応するカラーフィルターの材料の混合を回避して優れた色特性を得るために、ブラックマトリクスを十分な高さに設ける必要がある。ところが、ブラックマトリクスを高く設けると、ブラックマトリクスによって出射光が遮られることで、輝度視野角特性が損なわれる不都合が生じ得る。
【0007】
つまり、従来の表示装置は、コストの低減に優れる反面、色特性と輝度視野角特性との両立が必ずしも容易ではない。
【0008】
そこで、本発明は、コストの低減に優れ、かつ色特性と輝度視野角特性との両立が容易なカラーフィルター付きの表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置の一態様は、行列状に配置された複数の発光部と、前記複数の発光部上に設けられた封止層と、前記封止層上において行方向に隣接する前記発光部の間隙に設けられ、列方向に延伸する遮光層と、前記遮光層上に設けられ、列方向に延伸する透明隔壁層と、前記封止層上において前記遮光層および前記透明隔壁層の間隙に設けられたカラーフィルターと、を備える。
【0010】
このような構成は、封止層上において遮光層および透明隔壁層の間隙にカラーフィルターを設ける点で、インクジェット法でカラーフィルターを形成するために適している。インクジェット法で封止層上に直接、カラーフィルターを形成することで、従来と同様、低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、インクジェット法で封止層上に直接、カラーフィルターを形成する際、透明隔壁層を用いて、異なる発光色に対応するカラーフィルターの材料の混合を回避できる。透明隔壁層であれば、ブラックマトリクスとは異なり、出射光を透過するので、高く設けても出射光が遮られない。
【0012】
その結果、製造コストの低減に優れ、かつ色特性と輝度視野角特性との両立が容易な表示装置が得られる。
【0013】
また、本発明に係る表示装置の製造方法の一態様は、行列状に複数の発光部を形成する工程と、前記複数の発光部上に封止層を形成する工程と、前記封止層上において、行方向に隣接する前記発光部の間隙に、列方向に延伸する遮光層を形成する工程と、前記遮光層上に、列方向に延伸する透明隔壁層を形成する工程と、前記封止層上において、前記遮光層および前記透明隔壁層の間隙に、インクジェット法でカラーフィルターを形成する工程と、を含む。
【0014】
このような方法によれば、上述した効果を有する表示装置を製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表示装置およびその製造方法によれば、製造コストの低減に優れ、かつ色特性と輝度視野角特性との両立が容易なカラーフィルター付きの表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る表示装置の構成の一例を模式的に示す平面図
【
図2】実施の形態に係る表示装置の構成の一例を模式的に示す断面図
【
図3】実施の形態に係る表示装置の構成の一例を模式的に示す断面図
【
図4】実施の形態に係る表示装置の製造方法の一例を示す工程図
【
図5】実施の形態に係る表示装置における出射光の光路の一例を模式的に示す図
【
図6】比較例に係る表示装置における出射光の光路の一例を模式的に示す図
【
図7】実施の形態に係る表示装置の遮光率を比較例と対比して示すグラフ
【
図8】変形例に係る表示装置の構造および出射光の光路の一例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0018】
(実施の形態)
実施の形態に係る表示装置について、カラーフィルター付きの有機EL表示パネルの例を挙げて説明する。
【0019】
図1は、実施の形態に係る表示装置1の構成の一例を模式的に示す平面図である。本明細書では、便宜上、
図1における横方向を行方向と言い、縦方向を列方向と言う。
【0020】
表示装置1において、複数の発光部20が互いに離間して行列状に配置されている。
図1の例では、赤色の光を出射する発光部20、緑色の光を出射する発光部20、および青色の光を出射する発光部20が、行方向に隣接して周期的に配置されている。列方向に並ぶ発光部20は、同じ色の光を出射する。
【0021】
図2および
図3は、実施の形態に係る表示装置1の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2および
図3は、
図1に示すII-II’線およびIII-III’線を矢印の方向に見た断面にそれぞれ対応する。
【0022】
図1~
図3に示されるように、表示装置1は、基板10と、基板10上に形成された平坦化層11と、を備える。
【0023】
基板10には、図示していない薄膜トランジスタを含む画素回路が形成されている。平坦化層11は、基板10を覆って画素回路を保護するとともに、上部構造が配置される平坦面を形成する。
【0024】
平坦化層11上に、第1の電極21、正孔注入層22、正孔輸送層24、発光層25、電子輸送層26、電子注入層27、および第2の電極28がこの順に配置され、これらの積層体により発光部20が構成されている。発光層25には、有機EL発光材料が用いられる。
【0025】
行方向に隣接する発光部20の第1の電極21の間隙に、列方向に延伸するバンク層23yが設けられる。列方向に隣接する発光部20の第1の電極21の間隙に、行方向に延伸するバンク層23xが、さらに設けられてもよい。バンク層23yは、隣接する発光部20の第1の電極21を区切ることで、発光部20ごとに独立した輝度での発光を可能にする。
【0026】
発光部20上およびバンク層23x、23yの上方に、封止層30が設けられる。封止層30は、発光部20を封止する。
【0027】
封止層30上において行方向に隣接する発光部20の間隙に、列方向に延伸する遮光層31が設けられる。列方向に隣接する発光部20の間隙に、行方向に延伸する遮光層31が、さらに設けられてもよい。遮光層31は、隣接する発光部20間での外光反射を抑制することにより表示コントラストを向上させる。遮光層31は、背景技術の欄で説明したブラックマトリクスに対応する。遮光層31は、例えば、クロムなどの金属または黒色樹脂にて構成される。金属を用いることで、薄膜で十分な遮光性を得やすくなる。
【0028】
遮光層31上において列方向に延伸する透明隔壁層32が設けられる。透明隔壁層32は、例えば、アクリル系樹脂などの樹脂材料で構成される。透明隔壁層32には、感光性樹脂を用いてもよい。また、フッ素化合物を添加することで、カラーフィルター材料に対する撥液性を持たせてもよい。
【0029】
透明隔壁層32に感光性樹脂を用いる場合は、ネガ型の樹脂を用いてもよい。これにより、透明隔壁層32形成時の紫外線露光によって生じ得る有機層の劣化を抑えることができる。
【0030】
封止層30上において遮光層31および透明隔壁層32の間隙にカラーフィルター33R、33G、33Bが設けられる。カラーフィルター33R、33G、33Bは、赤、緑、青の発光色にそれぞれ対応して各異なる波長選択性を有するカラーフィルター材料で構成され、例えば、出射光の色度を向上させるなど、所望の色特性を実現する。
【0031】
カラーフィルター33R、33G、33Bは、例えば、遮光層31および透明隔壁層32の間隙にインクジェット法にてカラーフィルター材料を配置することによって形成される。透明隔壁層32に、カラーフィルター材料に対する撥液性を持たせておくことで、カラーフィルター材料が透明隔壁層32を伝って隣接する画素に入り込む混色が生じにくくなる。
【0032】
透明隔壁層32およびカラーフィルター33R、33G、33Bの上に、保護層34が設けられる。保護層34は、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiO2(酸化シリコン)などの無機材料、または、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂材料で構成される。
【0033】
図4は、表示装置1の製造方法の一例を示す工程図である。
【0034】
図4に示されるように、基板10上に画素回路が形成され(S101)、画素回路を含む基板10上に、平坦化層11が成膜およびパターニングにより形成される(S102)。
【0035】
平坦化層11上に第1の電極21が形成され(S103)、第1の電極21上に正孔注入層22が形成され、焼成される(S104)。第1の電極21および正孔注入層22がパターニングされ、平坦化層11の一部が露出される(S105)。平坦化層11上および正孔注入層22上にバンク層23x、23yが成膜され、正孔注入層22の一部が露出するようにパターニングされ、焼成される(S106)。
【0036】
列方向に延伸する複数のバンク層23yの間隙に(つまり正孔注入層22上に)正孔輸送層24が成膜され、焼成される(S107)。列方向に延伸する複数のバンク層23yの間隙の正孔輸送層24上に、発光層25が成膜され、焼成される(S108)。発光層25上およびバンク層23y上に電子輸送層26が成膜され(S109)、電子輸送層26上に電子注入層27が成膜される(S110)。電子注入層27上に第2の電極28が形成され(S111)、第2の電極28の上に封止層30が形成される(S112)。
【0037】
封止層30上において隣接する発光部20の間隙に、遮光層31が成膜およびパターニングにより形成される(S113)。遮光層31の上に、透明隔壁層32が成膜、パターニングおよび焼成により形成される(S114)。
【0038】
封止層30上において遮光層31および透明隔壁層32の間隙に、カラーフィルター33R、33G、33Bがインクジェット法により形成される(S115)。透明隔壁層32上およびカラーフィルター33R、33G、33B上に、保護層34が形成される(S116)。
【0039】
以上説明した表示装置1は、封止層30上において遮光層31および透明隔壁層32の間隙にカラーフィルター33R、33G、33Bを設ける点で、インクジェット法でカラーフィルターを形成するために適している。インクジェット法で封止層30上に直接、カラーフィルター33R、33G、33Bが形成された表示装置1は、発光部を含む第1の基板とカラーフィルターを含む第2の基板とを別体に作成してから貼り合わせた構造の表示装置と比べて、次の点で優れている。
【0040】
インク、つまりカラーフィルターの材料の利用効率を高められる点で、低コスト化に優れている。
【0041】
フレキシブルシートパネルへの適用に優れている。貼り合わせ構造の表示装置では、所望の柔軟性および応力耐性が得られない場合があり、フレキシブルシートパネルへの適用が難しい。
【0042】
発光部上にカラーフィルターを直接形成できる点で輝度視野角特性に優れている。貼り合わせ構造の表示装置は、貼り合わせのための接着層によって発光部とカラーフィルターとの距離が離れることで、輝度視野角特性の観点で不利になりやすい。
【0043】
また、表示装置1では、異なる発光色に対応するカラーフィルター33R、33G、33Bを、遮光層31および透明隔壁層32の間隙に配置している。これにより、遮光層31を高く設けずとも、透明隔壁層32を用いて、カラーフィルター33R、33G、33Bの材料の混合を回避できる。透明隔壁層32であれば、遮光層31とは異なり、出射光を透過するので、高く設けても出射光が遮られない。
【0044】
その結果、製造コストの低減に優れ、かつ色特性と輝度視野角特性との両立が容易な表示装置1が得られる。
【0045】
上述の効果のうち、特に、透明隔壁層32を用いたことによる輝度視野角特性の改善について、比較例と対比しながら具体的に説明する。
【0046】
図5は、実施の形態に係る表示装置1における出射光の光路の一例を模式的に示す図である。
図5では、一例として、
図2のA部に対応する部分が拡大して示されている。
図5に示される構成要素は、
図2において同じ符号で参照される構成要素と同一であるため、説明を省略する。
【0047】
図5には、発光部20から出射される光のうち、視野角θで見たときに遮光層31で遮られず、かつ発光部20の一方端(
図5での左端)に最も近い地点から出射される光の光路が示されている。ここで、視野角θとは、表示装置1の正面方向を0°とする角度を言う。
【0048】
視野角θで見たとき、発光部20の不可視領域Bから出射される光は、遮光層31に遮られる。なお、発光部20の他方端(
図5での右端)における出射光の光路は、
図5の左右対称形状により同様に説明される。
【0049】
出射光が遮光層31に遮られる不可視領域Bの幅を遮光幅s、発光部20の幅を画素幅wと表記し、画素幅wに対する遮光幅sの割合を遮光率rと定義する。すなわち、遮光率rは、パーセント表示で、遮光幅s/画素幅w×100である。遮光幅sおよび遮光率rは、視野角θに依存する。
【0050】
図6は、比較例に係る表示装置9における出射光の光路の一例を模式的に示す図である。
図6の表示装置9は、
図5の表示装置1と比べて、遮光層31および透明隔壁層32に代えて背高の遮光層39が用いられる点で相違する。表示装置9におけるカラーフィルター33R、33G、33Bは、遮光層39の間隙に、インクジェット法で形成される。
【0051】
表示装置9では、遮光層39が背高であることから、表示装置1の不可視領域Bと比べて、同じ視野角θにおいてより大きい不可視領域Cが生じる。つまり、同じ視野角θでは、表示装置1と比べて、遮光幅sがより大きくなり、その結果、遮光率rがより大きくなる。
【0052】
図7は、実施例である表示装置1の遮光率rと比較例である表示装置9の遮光率rとを対比して示すグラフである。
図7に示される遮光率rは、表示装置1、9の双方に次の寸法条件を適用した上で、赤色光に対応する画素について、計算により求めた。
【0053】
画素幅wを33μmとし、赤色光の波長を620nmとした。遮光層31の幅を8μmとし、バンク層23yの幅を14μmとした。カラーフィルター33Rの厚さ(つまり、膜厚)を2μmとした。
【0054】
表示装置1では、遮光層31の厚さを0.1μmとし、透明隔壁層32の厚さを4μmとした。表示装置9では、遮光層39の厚さを4μmとした。計算では、遮光層31、39の上端部に掛かる光は完全に損失となるとしたが、実際には、端部の近傍において、端部に近いほど吸収が少なくなる分布が生じる。
【0055】
保護層34は、厚さが5μmのSiN(窒化シリコン)膜とした。封止層30は、厚さが1μmのSiN膜、厚さが5μmの樹脂膜、および厚さが1μmのSiN膜をこの順に含む積層膜とした。
【0056】
図7に見られるように、実施例に係る表示装置1では、視野角θが38°で不可視領域Bが発生し、視野角θが45°および60°での遮光率rは、それぞれ1.9%および5.3%であった。
【0057】
これに対し、比較例に係る表示装置9では、視野角θが24°で不可視領域Cが発生し、視野角θが45°および60°での遮光率rは、それぞれ8.6%および14.0%であった。
【0058】
上述の結果から、遮光層31の厚さを抑えた表示装置1では、表示装置9と比べて、輝度視野角特性が向上することが確かめられた。なお、上述の結果は、赤色光に対応する画素について得られたものであるが、緑色光に対応する画素、および青色光に対応する画素についても、同様の結果が得られることが確かめられている。
【0059】
表示装置1の例では、遮光層31と透明隔壁層32とは同じ幅に設けられているが、この例には限られない。例えば、透明隔壁層32を遮光層31より幅狭に設けてもよい。
【0060】
図8は、変形例に係る表示装置1aの構造および出射光の光路の一例を模式的に示す図である。
図8に示される表示装置1aは、
図5の表示装置1と比べて、透明隔壁層32が遮光層31aと比べて幅狭に設けられている点で相違する。
【0061】
インクジェット法で形成される実際のカラーフィルター33Rでは、乾燥過程で透明隔壁層32の間隙の端部(つまり、透明隔壁層32の近傍)の厚さが、透明隔壁層32の間隙の中央(つまり、画素中央部)の厚さと比べて厚くなる傾向がある(
図8のD部)。カラーフィルター33Rの厚さが画素内で異なる場合、カラーフィルター33R透過後の出射光の色度も画素内で変化し、分布を生じてしまう。
【0062】
そこで、遮光層31aの幅と透明隔壁層32の幅とに差分dを設け、透明隔壁層32を遮光層31aと比べて幅狭に設けることで、上述の影響を低減または抑制する。具体的に、遮光層31aの幅と透明隔壁層32の幅との差分dは1μm以上2μm以下の範囲から選択されてもよい。
【0063】
表示装置1aでは、透明隔壁層32を遮光層31aと比べて幅狭に設けることから、表示装置1aの不可視領域Eは、表示装置1の不可視領域Bと同程度に抑制される。
【0064】
つまり、表示装置1aでは、表示装置1の効果に加えて、より優れた色特性、具体的には画素面内で均一性の高い色度、を得ることができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態に係る表示装置について、有機EL表示パネルの例を挙げて説明したが、本発明は、個々の実施の形態には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0066】
例えば、実施の形態の例では、遮光層31の厚さを0.1μmとしたが、遮光層31がクロムなどの金属の場合は、厚さを0.1μm以上0.5μm以下とすることができ、遮光層31が黒色樹脂の場合は、厚さを0.5μm以上2μm以下とすることができる。
【0067】
また、実施の形態の例では、透明隔壁層32の厚さを4μmとしたが、透明隔壁層32の厚さを1μm以上5μm以下とすることができる。
【0068】
また、実施の形態の例では、発光部20が対応する色の光を発生したが、この例には限られない。例えば、発光部20は白色光を発生し、カラーフィルター33R、33G、33Bは発光部20で発生した白色光から例えば赤、緑、青といった所望の色度の光を透過させてもよい。
【0069】
カラーフィルター33R、33G、33Bには量子ドットが含まれてもよい。この場合、発光部20で発生する光は、カラーフィルター33R、33G、33Bによって所望の色度の光に変換される光であれば、どのような波長の光であっても構わない。また、発光部20自体に量子ドットが含まれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、表示装置として、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受信機などの様々な映像表示装置に広く利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1、1a、9 表示装置
10 基板
11 平坦化層
20 発光部
21 第1の電極
22 正孔注入層
23x、23y バンク層
24 正孔輸送層
25 発光層
26 電子輸送層
27 電子注入層
28 第2の電極
30 封止層
31、31a、39 遮光層
32 透明隔壁層
33R、33G、33B カラーフィルター
34 保護層