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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20240710BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B25J9/06 D
H01L21/68 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148893
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043563
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】清水 一平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓之
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-197714(JP,A)
【文献】特開2015-230917(JP,A)
【文献】特開平10-321712(JP,A)
【文献】特開2009-176939(JP,A)
【文献】実開平5-29149(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送するためのロボットであって、
移動可能なアーム部と、
前記アーム部から突出するように設けられ、前記基板を保持して搬送するハンド部と、
前記ハンド部の姿勢を傾けることが可能なチルト機構と、
を備え、
前記ハンド部は、前記基板の上面及び下面に接触可能な保持部を備え、
前記チルト機構により、前記保持部は、前記基板を2等分した2つの部分のうち一方のみに力を加えるように当該基板の上面及び下面に接触した状態で、この基板を保持し、前記ハンド部は、前記保持部が前記基板の上面及び下面に接触している状態で前記基板を搬送することを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットであって、
前記アーム部は、水平多関節型のロボットアームから構成され、
前記チルト機構は、前記ハンド部の姿勢を3次元的に傾けることが可能であり、
前記保持部は、前記ハンド部の先端側に配置されていることを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロボットであって、
前記保持部は、前記基板の上面に接触する部分よりも当該基板の中央に近い側で、前記基板の下面に接触する部分を有することを特徴とするロボット。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のロボットであって、
前記基板に対してハンド部が進出する場合に基板の周縁部に接触可能なテーパ状の案内部を備えることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやプリント基板等の基板を搬送するためのロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を搬送するための搬送ロボットが知られている。特許文献1は、この種の搬送ロボットを備える搬送装置を開示する。
【0003】
特許文献1の搬送ロボットは、胴体部と、アーム体と、を備える。アーム体は、胴体部の上部に設けられている。搬送ロボットは、アーム体を伸縮動作させることで基板(ワーク)をカセット(保管装置)と各種処理装置との間などで搬送する。アーム体の端部には、基板を保持するエンドエフェクタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-120861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、一般的に、カセットに収容されている基板を搬送のためにカセットから取り出すとき、エンドエフェクタを基板の下方を通過させてカセットの奥側まで差し込まなければならない。そのため、より簡便な手法で基板を搬送できる構成が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、基板の搬送を効率よく行うことができるロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のロボットが提供される。即ち、このロボットは、基板を搬送するためのものである。前記ロボットは、アーム部と、ハンド部と、チルト機構と、を備える。前記アーム部は、移動可能である。前記ハンド部は、アーム部から突出するように設けられ、前記基板を保持して搬送する。前記チルト機構は、前記ハンド部の姿勢を傾けることが可能である。前記ハンド部は、保持部を備える。前記保持部は、前記基板の上面及び下面に接触可能である。前記チルト機構により、前記保持部は、前記基板を2等分した2つの部分のうち一方のみに力を加えるように前記基板の上面及び下面に接触した状態で、この基板を保持する。前記ハンド部は、前記保持部が前記基板の上面及び下面に接触している状態で前記基板を搬送する。ここで2等分とは、基板を、その厚み方向に平行な平面で、2つに等しく仮想的に分割することをいう。
【0009】
これにより、ハンド部を基板に対して大きく進出させることなく、ハンド部で保持部により基板を保持することができる。また、アーム部の移動に伴うハンド部のブレを抑制することができる。従って、基板を速やかに保持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の搬送を効率よく行うことができるロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの全体的な構成を示す斜視図。
図2】(a)チルト機構の一例を示す斜視図。(b)チルト機構の一例を示す断面図。
図3】ロボットが搬送予定の基板の姿勢を取得する様子を示す図。
図4】(a)搬送予定の基板の取出時にロボットハンドが当該基板を保持するための動作を開始するときの様子を示す断面図。(b)保持部が備える案内部に基板が接触した様子を示す図。(c)保持部の溝部に基板の周縁部が差し込まれた様子を示す図。
図5】ロボットハンドが傾けられることで基板を保持する様子を示す断面図。
図6】(a)上記実施形態の変形例を示す断面図。(b)変形例のロボットハンドが傾けられることで基板を保持する様子を示す図。
図7】別の変形例を示す断面図。
図8】ロボットハンドが水平な状態で基板を保持する変形例を示す断面図。
図9】保持部の配置の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロボット100の全体的な構成を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すロボット100は、例えば、半導体ウエハ、プリント基板等の基板Wの製造工場、倉庫等に設置される。ロボット100は、複数の位置の間で基板Wを搬送するために用いられる。基板Wは、基板の原料、加工中の半完成品、加工済の完成品のうち何れであっても良い。基板Wの形状は、本実施形態では円板状であるが、これに限定されない。
【0014】
ロボット100は、主として、基台1と、ロボットアーム(アーム部)2と、ロボットハンド(ハンド部)3と、チルト機構4と、ロボット制御部9と、を備える。
【0015】
基台1は、工場の床面等に固定される。しかし、これに限定されず、基台1は、例えば、適宜の処理設備に固定されても良い。また、基台1は、水平方向に移動可能な部材に取り付けられても良い。
【0016】
ロボットアーム2は、図1に示すように、上下方向に移動可能な昇降軸11を介して基台1に取り付けられている。ロボットアーム2は、昇降軸11に対して回転可能である。
【0017】
ロボットアーム2は、水平多関節型のロボットアームから構成される。ロボットアーム2は、第1アーム21と、第2アーム22と、を備える。
【0018】
第1アーム21は、水平な直線状に延びる細長い部材として構成される。第1アーム21の長手方向の一端が、昇降軸11の上端部に取り付けられている。第1アーム21は、昇降軸11の軸線(鉛直軸)を中心として回転可能に支持されている。第1アーム21の長手方向の他端には、第2アーム22が取り付けられている。
【0019】
第2アーム22は、水平な直線状に延びる細長い部材として構成される。第2アーム22の長手方向の一端が、第1アーム21の先端に取り付けられている。第2アーム22は、昇降軸11と平行な軸線(鉛直軸)を中心として回転可能に支持されている。第2アーム22の長手方向の他端には、ロボットハンド3が取り付けられている。
【0020】
昇降軸11、第1アーム21及び第2アーム22のそれぞれは、図示しない適宜のアクチュエータにより駆動される。このアクチュエータは、例えば電動モータとすることができる。
【0021】
昇降軸11と第1アーム21との間、第1アーム21と第2アーム22との間、及び第2アーム22とロボットハンド3との間に位置するアーム関節部には、第1アーム21、第2アーム22、及びロボットハンド3のそれぞれの回転位置を検出する図略のエンコーダが取り付けられている。また、ロボット100の適宜の位置には、高さ方向における第1アーム21の位置変化(即ち昇降軸11の昇降量)を検出するエンコーダも設けられている。
【0022】
ロボット制御部9は、各エンコーダにより検出された第1アーム21、第2アーム22、又はロボットハンド3の回転位置又は高さ位置を含む位置情報に基づいて、昇降軸11、第1アーム21、第2アーム22、及びロボットハンド3のそれぞれを駆動する電動モータの動作を制御する。
【0023】
ロボットハンド3は、第2アーム22の長手方向の他端(先端)から突出するように設けられている。ロボットハンド3は、図1に示すように、手首部31と、ハンド本体部32と、保持部35と、を備える。ロボットハンド3において、手首部31は基端側(第2アーム22側)に配置され、ハンド本体部32は先端(突出端)3a側に配置されている。
【0024】
手首部31は、チルト機構4を介して、第2アーム22の先端に取り付けられている。手首部31は、昇降軸11と平行な軸線(鉛直軸)を中心として回転可能に支持されている。ただし、チルト機構4によって、手首部31の回転軸を、昇降軸11と平行な直線に対して傾けることができる。手首部31は、図示しない適宜のアクチュエータにより回転駆動される。このアクチュエータは、例えば電動モータとすることができる。
【0025】
ハンド本体部32は、手首部31の先端に連結されている。ハンド本体部32は、板状の部材から構成される。手首部31及びハンド本体部32は一体的に形成されても良い。
【0026】
保持部35は、基板Wを保持するために作用する部分である。保持部35は、ハンド本体部32に設けられている。保持部35は、ハンド本体部32に設けられることで、ロボットハンド3の先端3a側に位置している。保持部35は、ハンド本体部32から上側に突出している。
【0027】
保持部35は、例えば、PP(POLYPROPYLENE)、PEEK(POLY ETHER ETHER KETONE)等の樹脂で構成される。なお、保持部35は、本実施形態ではハンド本体部32に1つ備えられているが、複数であっても良い。
【0028】
ロボットハンド3は、ロボットアーム2等により適宜の位置に移動させられて、保持部35を基板Wの周縁部の一部及びその近傍に接触させる。このとき、ロボットハンド3は、保持部35を用いて基板Wを保持する。ロボットハンド3が基板Wを保持する構成については後述する。
【0029】
チルト機構4は、第2アーム22の先端側(第1アーム21に連結される側と反対側)に取り付けられている。
【0030】
チルト機構4は、図2に示すように、下板部41と、上板部42と、を備える。下板部41は、第2アーム22の上面に固定されている。上板部42には、ロボットハンド3の手首部31が回転可能に支持されている。下板部41と上板部42の間には、高さ調整機構5が配置されている。チルト機構4は、この高さ調整機構5を用いて、上板部42の下板部41に対する傾斜角度及び傾斜方向を調整する。
【0031】
この高さ調整機構5は、例えば、図2に示すように、下板部41及び上板部42の間の異なる位置に設けられた3つの支持部51,52,53を備える。支持部51,52,53は、説明の便宜上、図2(b)においては直線的に並べて描かれているが、実際は図2(a)に示すように、平面視で3角形をなすように配置されている。
【0032】
3つのうち2つの支持部51,52は、オネジ56と、メネジ57と、球面軸受58と、を備える。オネジ56のネジ軸は、下板部41に、軸線を上下方向に向けて回転可能に支持されている。このネジ軸は、図略のアクチュエータ(例えば、電動モータ)によって、2つの支持部51,52で独立して回転させることができる。メネジ57はオネジ56のネジ軸にネジ結合されている。ネジ軸を回転させると、メネジ57が上下方向に移動する。このネジ送りにより、支持部51,52が上板部42を支持する高さを変更することができる。メネジ57と上板部42との間には、球面軸受58が配置されている。
【0033】
残りの支持部53には、球面軸受58が配置されている。この支持部53は、ネジ送りによる支持高さ変更機能を有していない。
【0034】
図略のアクチュエータを駆動し、下板部41に対する上板部42の高さを複数の支持部51,52で独立して変更することで、上板部42の下板部41に対する傾斜角度及び傾斜方向を変更することができる。この結果、ロボットハンド3の第2アーム22に対する姿勢(傾斜角度及び傾斜方向)を調整することができる。なお、高さ調整機構5(ひいてはチルト機構4)はこの構成に限定されない。
【0035】
ロボット制御部9は、図1に示すように、基台1とは別に設けられている。ただし、ロボット制御部9は、基台1の内部に配置されても良い。
【0036】
ロボット制御部9は、公知のコンピュータとして構成されており、マイクロコントローラ、CPU、MPU、PLC、DSP、ASIC又はFPGA等の演算処理部と、ROM、RAM、HDD等の記憶部と、外部装置と通信可能な通信部と、を備える。記憶部には、演算処理部が実行するプログラム、各種の設定閾値、保持部35に関する情報、保管装置7に関する情報等が記憶されている。通信部は、外部装置から基板Wに関する情報等を受信可能に構成される。
【0037】
ロボット制御部9は、昇降軸11、ロボットアーム2、ロボットハンド3を制御することができる。例えば、ロボット制御部9は、ロボットハンド3の姿勢に対応するエンコーダの検出結果をロボットハンド3の姿勢情報として記憶する。これにより、ロボット制御部9は、ロボットハンド3の姿勢を検出するエンコーダの検出結果が、記憶している姿勢情報と一致するように、ロボット100の各部(昇降軸11、第1アーム21、第2アーム22、ロボットハンド3等)を駆動する電動モータを制御することで、ロボットハンド3の姿勢を再現することができる。
【0038】
また、ロボット制御部9は、チルト機構4を制御することができる。例えば、ロボット制御部9は、ロボットハンド3を用いて基板Wを保管装置7から取り出して搬送するときに、後述するようにチルト機構4によりロボットハンド3の姿勢を適宜変更させて、ロボットハンド3に保持部35を用いて保管装置7の基板Wを保持させることができる。
【0039】
図3に示すように、保管装置7は、基板Wを保管するために用いられる。保管装置7には、複数枚(例えば100枚以上)の基板Wが、上下方向(保管装置7の高さ方向)において等間隔で並べられた状態で保管されている。保管装置7において、通常、基板Wは水平な姿勢で保管される。保管装置7は、ロボット100と所定の距離をあけて配置されている。
【0040】
次に、ロボットハンド3が基板Wを保持する構成について詳細に説明する。以下では、ロボットハンド3がロボットアーム2の先端部(言い換えれば、チルト機構4)から突出する方向を、単に突出方向と呼ぶことがある。
【0041】
図1に示すように、ロボットハンド3は、基板Wを保持部35により保持する。このとき、基板Wは、ロボットハンド3の上面側に位置する。ロボットハンド3は、基板Wを保持した状態で搬送する。図4に示すように、保持部35は、保持部本体35aと、溝部35bと、を有する。
【0042】
保持部本体35aは、ハンド本体部32の上面に設けられている。図1及び図3に示すように、ロボットハンド3を水平姿勢とした状態で、保持部本体35aは、ロボットハンド3の幅方向に細長いブロック状に形成されている。
【0043】
保持部本体35aにおいて、チルト機構4から遠い側の面には、溝部35bが形成されている。溝部35bは、チルト機構4から遠い側を開放させている。ロボットハンド3を水平姿勢とした状態で、溝部35bは、水平方向に細長く形成されており、保持部本体35aを水平方向に貫通している。溝部35bは、平面視で直線状に形成されても良いし、基板Wの円形に沿う円弧状に形成されても良い。溝部35bには、基板Wの周縁部の一部を嵌め込むことができる。これにより、保持部35が基板Wを保持することができる。
【0044】
ロボットハンド3が水平姿勢となっているときの、溝部35bの底面と、天井面との間の距離は、基板Wの厚みと概ね等しくなっている。従って、溝部35bは、基板Wの上面及び下面の両方に接触することができる。ロボットハンド3の幅を2等分する平面で保持部本体35aを切ったとき、図4(a)に示す溝部35bの断面における開口から奥までの長さ(深さ)L1は、適宜の大きさとなるように定められる。これにより、溝部35bは、基板Wの周縁部の一部を嵌め込み、これを嵌め込んだ状態を保つことができる。
【0045】
保持部35においてロボットアーム2の先端部から遠い側の面に溝部35bが形成する開口の近傍には、テーパ状の案内部35cが形成されている。案内部35cは、横向きV字状となるように配置された2つの案内面を有する。案内部35cの案内面は、溝部35bよりもハンド本体部32に近い側と、溝部35bよりもハンド本体部32から遠い側と、に配置されている。これにより、案内部35cは、チルト機構4に近づくのに従って上下方向の距離が小さくなっている。案内部35cにおいてチルト機構4に最も近い側の端部が、溝部35bに接続されている。
【0046】
このような構成において、例えば、ロボットハンド3が、保管装置7に保管されている搬送予定の基板Wを保管装置7から取り出して搬送する場合、ロボット制御部9が、記憶部に記憶した情報に基づいて、当該ロボットハンド3等の制御を行う。
【0047】
即ち、まず、図4(a)に示すように、ロボットハンド3が保管装置7から離れた状態で、ロボットハンド3の上下位置が搬送予定の基板Wの上下位置に対応するように、ロボットハンド3の上下位置が調整される。ここで、ロボットハンド3の姿勢は、保管装置7に保管された基板Wの姿勢に応じて水平な姿勢とされる。
【0048】
次に、ロボットハンド3の先端3a側が保管装置7に差し込まれ、図4(b)に示すように、ロボットハンド3における保持部35の案内部35cが保管装置7の手前側に位置する基板Wの周縁部の一部に当てられる。
【0049】
次に、ロボットハンド3の先端3a側が保管装置7内に更に差し込まれる。ただし、ロボットハンド3が保管装置7の内部へ進出する距離は、あまり大きくする必要はない。ロボットハンド3の移動に伴って、案内部35cが基板Wの周縁部の一部を溝部35bに案内し、図4(c)に示すように、基板Wの周縁部の一部が溝部35bに入る。
【0050】
保管装置7へのロボットハンド3の差込みが終了すると、ロボットハンド3の姿勢がチルト機構4により傾けられる。図5に示すように、ロボットハンド3は、その先端3a側(溝部35bの開口部側)が基端側(溝部35bの底部側)よりも上方に位置するように傾けられる。これにより、基板Wの自重の一部が、基板Wを溝部35bの奥へ差し込む方向に作用する。このようにロボットハンド3が傾けられた結果、基板Wが、保持部35によって(言い換えれば、ロボットハンド3によって)、当該基板Wの一部(基板Wを2等分した半分の部分)のみに力が加えられるように保持された状態となる。
【0051】
基板Wを、その中央を境にして、ロボットハンド3に近い部分と遠い部分とに分けて考えると、基板Wの両側ではなく片側(ロボットハンド3に近い側)だけに保持部35が接触し、この接触部分を介してロボットハンド3の力が加えられる。その結果、基板Wの重量の全部がロボットハンド3によって支持される。従って、この保持は片持ち的な保持と呼ぶことができる。この状態で、ロボットハンド3が保管装置7から取り出されて、基板Wの搬送が行われる。
【0052】
チルト機構4からロボットハンド3が突出する向きは、平面視で様々に変化する。しかしながら、チルト機構4はロボットハンド3の姿勢を3次元的に傾けることができるので、ロボットハンド3が平面視でどの方向を向いていたとしても、その先端側が高くなる図5の状態を実現することができる。
【0053】
ロボットハンド3による基板Wの保持を解除するには、上記の逆の動作を行えば良い。
【0054】
本実施形態の構成によれば、ハンド本体部32を小型化でき、簡素な構成を実現できる。ハンド本体部32が突出する長さを小さくできるので、移動に伴うハンド本体部32のブレも小さくできる。従って、ハンド本体部32が基板W等に衝突するおそれも低減できる。また、基板Wに対するロボットハンド3の進出距離を短くしながら、基板Wを保持したり保持を解除したりすることができる。従って、ロボットハンド3を用いて基板Wを効率よく搬送することができる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態のロボット100は、基板Wを搬送するためのものである。ロボット100は、ロボットアーム2と、ロボットハンド3と、チルト機構4と、を備える。ロボットアーム2は、移動可能である。ロボットハンド3は、ロボットアーム2から突出するように設けられ、基板Wを保持して搬送する。チルト機構4は、ロボットハンド3の姿勢を傾けることが可能である。ロボットハンド3は、保持部35を備える。保持部35は、基板Wの上面及び下面に接触可能である。チルト機構4により、保持部35は、図5に示すように、基板Wを2等分した2つの部分のうち一方のみに力を加えるように当該基板Wの上面及び下面に接触した状態で、この基板Wを保持する。
【0056】
従来、基板をその保管装置から取り出すときには、この保管装置内の奥側までロボットハンドを差し込まなければならない。しかし、前記の構成によれば、ロボットハンド3を保管装置7内の奥側まで移動させることなく、基板Wを片持ちで保持することができる。即ち、ロボットハンド3をその突出方向において短くして、基板Wの取出時にロボットハンド3を保管装置7内に差し込まなければならない差込量を減らすことができる。また、ロボットアーム2の移動に伴うロボットハンド3のブレを抑制することができる。従って、基板Wを保管装置7から速やかに取り出すことができる。この結果、基板Wの取出作業を効率よく行うことができる。
【0057】
また、本実施形態のロボット100において、保持部35は、ロボットハンド3の先端側に配置される。
【0058】
これにより、ロボットハンド3の小型化を容易に実現することができる。
【0059】
また、本実施形態のロボット100は、基板Wに対してロボットハンド3が進出する場合に当該基板Wの周縁部に接触可能なテーパ状の案内部35cを備える。
【0060】
これにより、ロボットハンド3が基板Wを円滑に保持することができる。
【0061】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0062】
図6(a)に示す本変形例のロボットハンド3において、保持部35xは、保持部本体35aと、支持部37と、を備える。保持部本体35aに形成される溝部35bは、上記の実施形態の溝部35bに比べて浅い。即ち、溝部35bの深さ方向(ハンド突出方向)の長さL2が、図4(a)に示す上記の実施形態における溝部35bの深さ方向の長さL1に比べて短い。
【0063】
支持部37は、例えば、ゴム等の弾力性を有する部材から構成される。支持部37は、ロボットハンド3の先端3aと保持部35xとの間に配置されている。支持部37は、ハンド本体部32から上側に突出するように設けられている。支持部37は、基板Wの周縁部の下面に接触することができる。
【0064】
本変形例では、図6(b)のようにロボットハンド3を傾けた状態で、基板Wの周縁部の上面に保持部本体35aの溝部35bの天井面が接触し、下面に支持部37が主に接触する。この状態で、基板Wを片持ち的に保持して搬送することができる。
【0065】
この構成では、支持部37が、保持部本体35aよりも、基板Wの中央に近い側で基板Wの下面を支える。従って、図6(b)の状態で基板Wを安定して保持することができる。また、溝部35bへの基板Wの差込みが浅いので、ロボットハンド3にいったん保持した基板Wを、チルト機構4の動作によって簡単に外すことができる。
【0066】
以上に説明したように、本変形例のロボット100において、保持部35xは、支持部37を有する。支持部37は、基板Wの上面に接触する部分である溝部35bの天井面よりも、基板Wの中央に近い側で、基板Wの下面に接触する。
【0067】
これにより、基板Wの安定した保持を実現できる。また、チルト機構4の動作によって、ロボットハンド3への基板Wの保持/保持解除を容易に切り換えることができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
保持部35は、ロボットハンド3に複数備えられていても良い。保持部35及び支持部37の大きさは、基板Wの形状及び/又は大きさ等に応じて任意に設定可能である。
【0070】
上記の実施形態のような深い溝部35bが保持部35に備えられる場合であっても、ロボットハンド3に支持部37を備えることができる。この場合、上記の変形例のように、ロボットハンド3が、基板Wを保持部35及び支持部37を用いて保持してその保持状態で搬送することができる。
【0071】
図4の構成の保持部35を、ハンド本体部32の上面に代えて下面に配置しても良い。
【0072】
テーパ状の案内部35cは、溝部35bの上側及び下側の何れか一方にだけ設けられても良い。案内部35cが省略されても良い。
【0073】
図7の変形例に示すように、保持部本体35aに、溝部35bの代わりに、広い幅の凹部35dを形成しても良い。この場合、保持部本体35aは、凹部35dに差し込まれた基板Wの周縁部の下面に接触しない。
【0074】
ロボットハンド3のハンド本体部32は、チルト機構4の上板部42と一体的に形成されても良い。
【0075】
チルト機構4は、基台1と昇降軸11の間に配置されても良いし、昇降軸11と第1アーム21の間に配置されても良いし、第1アーム21と第2アーム22の間に配置されても良い。
【0076】
ロボットハンド3が水平姿勢のときに、保持部35の溝部35bの開口が斜め上向きとなるように、溝部35bを構成することもできる。この場合、図8に示すように、ロボットハンド3が水平な状態で基板Wを片持ち的に保持することができる。
【0077】
図7の保持部本体35aを、互いに間隔をあけて2つ備え、その間隔に対応する位置に支持部37が備えられても良い。この例が図9(a)に示されている。図9(a)の構成で、支持部37は、ハンド本体部32の幅方向中央に配置されている。2つの保持部本体35aは、ハンド本体部32の幅方向中央を挟んで対称となるように配置されている。2つの保持部本体35aと、1つの支持部37と、により、保持部35が構成される。
【0078】
図9(a)の構成では、上側から基板Wに接触する2つの部材(保持部本体35a)と、下側から基板Wに接触する1つの部材(支持部37)と、により保持部35が構成されている。これに代えて、図9(b)に示すように、上側から基板Wに接触する1つの部材と、下側から基板Wに接触する2つの部材と、により保持部35が構成されても良い。図9(b)の例では、ハンド本体部32の幅方向両側にストッパ38が設けられている。このストッパ38は、ロボットハンド3によって基板Wを保持するときに、基板Wの縁部に当たることで当該基板Wの滑りを規制することができる。ストッパ38は、図9(a)の構成、図3の構成等に適用することもできる。ストッパ38の形状は任意である。
【0079】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0080】
1 基台
11 昇降軸
2 ロボットアーム(アーム部)
21 第1アーム
22 第2アーム
3 ロボットハンド(ハンド部)
31 手首部
32 ハンド本体部
35 保持部
35x 保持部
35a 保持部本体
35b 溝部
35c 案内部
37 支持部
4 チルト機構
41 下板部
42 上板部
5 高さ調整機構
51,52,53 支持部
56 オネジ
57 メネジ
58 球面軸受
9 ロボット制御部
100 ロボット
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9