(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】混合システム及びポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/60 20060101AFI20240710BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240710BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240710BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240710BHJP
B29C 70/00 20060101ALI20240710BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20240710BHJP
B29C 39/44 20060101ALI20240710BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240710BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20240710BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20240710BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
B29C44/60
C08G18/00 J
C08G18/00 F
C08G18/00 D
C08G18/00 H
C08K3/013
C08L75/04
B29C70/00
B29C39/24
B29C39/44
B29C44/00 A
B29C44/36
B29K75:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2020160124
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】柿本 悠
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218430(JP,A)
【文献】特開平08-276440(JP,A)
【文献】特開2012-219127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/60
C08G 18/00
C08K 3/013
C08L 75/04
B29C 70/00
B29C 39/24
B29C 39/44
B29C 44/00
B29C 44/36
B29K 75/00
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、フィラー、発泡剤及びイソシアネートを含有する原料組成物を用いてポリウレタンフォームを形成する混合システムであって、
2以上の原料容器と、
前記原料容器と流体連通されている連通部分を有し、前記連通部分を介して各原料容器から供給された原料を混合して原料組成物を調製する混合器と、
前記混合器に供給される前記原料の少なくともいずれかを加温
し、前記原料を30℃以上50℃以下に温度を調整する温調装置と、
前記混合器内の圧力を調整するために、前記原料容器内に空気又は不活性ガスを供給する圧力調整ガス供給装置と、
前記混合器で調製した前記原料組成物を吐出する吐出装置とを備える、混合システム。
【請求項2】
前記吐出装置に空気又は不活性ガスを供給するスプレーガス供給装置をさらに備え、
前記スプレーガス供給装置は、前記吐出装置内において、前記原料組成物に空気又は不活性ガスを混入させ、
前記吐出装置が、空気又は不活性ガスが混入した前記原料組成物をスプレー吐出する、請求項1に記載の混合システム。
【請求項3】
前記温調装置は、前記原料容器及び前記連通部分の少なくとも1つを加温する、請求項1
又は2に記載の混合システム。
【請求項4】
前記温調装置は、フィラーを含有する前記原料を加温する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項5】
B型粘度計を用い、25℃においてプローブ回転数を60rpmに設定して測定した場合において、前記混合器で混合する前記原料容器から供給された前記原料の粘度差が、10mPa・s以上2,000mPa・s以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項6】
前記圧力調整ガス供給装置は、前記混合器内の圧力を0.05MPa以上1.0MPa以下に調整する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項7】
前記フィラーは、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤及び臭素含有難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項8】
前記フィラーは、沈降防止剤を含有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項9】
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項10】
前記原料組成物は、触媒を含有する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項11】
前記原料容器は、ポリオール化合物、フィラー及び発泡剤を含有する前記原料組成物が充填された第1の容器と、イソシアネートを含有する前記原料組成物が充填された第2の容器とを備える、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の混合システム。
【請求項12】
ポリオール化合物、フィラー、発泡剤及びイソシアネートを含有する原料組成物を用いたポリウレタンフォームの製造方法であって、
2以上の原料容器に原料を充填する工程と、
前記原料容器と流体連通されている連通部分を有する混合器で、前記連通部分を介して各原料容器から供給された原料を混合して原料組成物を調製する工程と、
前記混合器に供給される前記原料の少なくともいずれかを温調装置で加温
し、前記原料を30℃以上50℃以下に温度を調整する工程と、
前記混合器内の圧力を調整するために、前記原料容器内に空気又は不活性ガスを圧力調整ガス供給装置で供給する工程と、
前記混合器で調製した前記原料組成物を吐出装置から吐出する工程とを含む、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合システム及びポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームは、自動車、鉄道車輌、船舶などの乗り物、建築物などにおいて断熱材として使用されている。また、乗り物、建物等に生じた欠損部を埋める補修剤としても利用されている。最近では、これら断熱材及び補修剤等に難燃性を付与するニーズが高まっている。
【0003】
ポリウレタンフォームには、別々の容器に充填されたポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合してフォームを形成する2液型ポリウレタンが広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。近年、防災意識の高まりなどから、断熱材及び補修剤等として使用されるポリウレタンフォームに高い難燃性が求められている。ポリウレタンフォームに難燃性を付与する方法として、難燃効果の高い赤リンなどのフィラーを含有させることが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-218430号公報
【文献】特開2017-075326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、難燃効果の高いフィラーをポリオール液剤に含有させると、ポリオール液剤の粘度が上昇し、イソシアネート液剤との混合性が悪化し、硬化不良や難燃性の悪化が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、フィラーを含有する原料組成物を用いた場合であっても、原料組成物の混合性を良好とし、硬化性及び難燃性に優れるポリウレタンフォームを形成することができる混合システム及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、原料を加温する温調装置を備えることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[13]を提供する。
[1]ポリオール化合物、フィラー、発泡剤及びイソシアネートを含有する原料組成物を用いてポリウレタンフォームを形成する混合システムであって、2以上の原料容器と、前記原料容器と流体連通されている連通部分を有し、前記連通部分を介して各原料容器から供給された原料を混合して原料組成物を調製する混合器と、前記混合器に供給される前記原料の少なくともいずれかを加温する温調装置と、前記混合器内の圧力を調整するために、前記原料容器内に空気又は不活性ガスを供給する圧力調整ガス供給装置と、前記混合器で調製した前記原料組成物を吐出する吐出装置とを備える、混合システム。
[2]前記吐出装置に空気又は不活性ガスを供給するスプレーガス供給装置をさらに備え、前記スプレーガス供給装置は、前記吐出装置内において、前記原料組成物に空気又は不活性ガスを混入させ、前記吐出装置が、空気又は不活性ガスが混入した前記原料組成物をスプレー吐出する、[1]に記載の混合システム。
[3]前記温調装置は、前記原料組成物を30℃以上50℃以下に温度を調整する、[1]又は[2]に記載の混合システム。
[4]前記温調装置は、前記原料容器及び前記連通部分の少なくとも1つを加温する、[1]~[3]のいずれかに記載の混合システム。
[5]前記温調装置は、フィラーを含有する前記原料を加温する、[1]~[4]のいずれかに記載の混合システム。
[6]B型粘度計を用い、25℃においてプローブ回転数を60rpmに設定して測定した場合において、前記混合器で混合する前記原料容器から供給された前記原料の粘度差が、10mPa・s以上2,000mPa・s以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の混合システム。
[7]前記圧力調整ガス供給装置は、前記混合器内の圧力を0.05MPa以上1.0MPa以下に調整する、[1]~[6]のいずれかに記載の混合システム。
[8]前記フィラーは、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤及び臭素含有難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]~[7]のいずれかに記載の混合システム。
[9]前記フィラーは、沈降防止剤を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の混合システム。
[10]前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の混合システム。
[11]前記原料組成物は、触媒を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の混合システム。
[12]前記原料容器は、ポリオール化合物、フィラー及び発泡剤を含有する前記原料組成物が充填された第1の容器と、イソシアネートを含有する前記原料組成物が充填された第2の容器とを備える、[1]~[11]のいずれかに記載の混合システム。
[13]ポリオール化合物、フィラー、発泡剤及びイソシアネートを含有する原料組成物を用いたポリウレタンフォームの製造方法であって、2以上の原料容器に原料を充填する工程と、前記原料容器と流体連通されている連通部分を有する混合器で、前記連通部分を介して各原料容器から供給された原料を混合して原料組成物を調製する工程と、前記混合器に供給される前記原料の少なくともいずれかを温調装置で加温する工程と、前記混合器内の圧力を調整するために、前記原料容器内に空気又は不活性ガスを圧力調整ガス供給装置で供給する工程と、前記混合器で調製した前記原料組成物を吐出装置から吐出する工程とを含む、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィラーを含有する原料組成物を用いた場合であっても、原料組成物の混合性を良好とし、硬化性及び難燃性に優れるポリウレタンフォームを形成することができる混合システム及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る混合システムの模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る混合システムにおける温調装置の別形態を示す模式図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る混合システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る混合システムはポリオール化合物、フィラー、発泡剤及びイソシアネートを含有する原料組成物を用いてポリウレタンフォームを形成する混合システムである。以下、本システムで使用する原料組成物についてまず説明する。
【0011】
(原料組成物)
原料組成物は、ポリオール化合物、フィラー、触媒、発泡剤及びイソシアネートを含有する。
<ポリオール化合物>
本発明の原料組成物は、ポリウレタンフォームの原料としてポリオール化合物を含有する。
本発明に用いるポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0012】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0013】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0015】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等の芳香族系ポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0017】
本発明に使用するポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールとしては、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるものがより好ましい。
【0018】
ポリオール化合物の水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオール化合物の水酸基価が上記上限値以下であると原料組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオール化合物の水酸基価が上記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0019】
<フィラー>
本発明の原料組成物は、ポリウレタンフォームの原料としてフィラーを含有する。原料組成物がフィラーを含有することで、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。
フィラーは、液状の原料組成物において固体分として含まれるものであり、一般的に原料組成物において粒状、粉状として存在する成分である。
フィラーは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体であり、かつ液状の原料組成物において溶解しない成分であればよい。
フィラーとしては、固体難燃剤及び沈降防止剤などが挙げられる。固体難燃剤としては、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物及び針状フィラー等が挙げられ、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤及び臭素含有難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0020】
《赤燐系難燃剤》
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0021】
《ホウ素含有難燃剤》
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0022】
《臭素含有難燃剤》
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0023】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0024】
《リン酸塩含有難燃剤》
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0025】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0026】
《塩素含有難燃剤》
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
【0027】
《アンチモン含有難燃剤》
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0028】
《金属水酸化物》
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
《針状フィラー》
本発明に使用する針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0030】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で50個の針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0031】
本発明の原料組成物における固体難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、20~90質量部がより好ましく、30~80質量部がさらに好ましい。固体難燃剤の含有量を上記範囲内であることで、得られるポリウレタンフォームの難燃剤を向上させやすくなる。
【0032】
《沈降防止剤》
本発明のポリオール組成物は、フィラーとして沈降防止剤を含有してもよい。沈降防止剤は、例えば上記した固体難燃剤と併用するとよい。沈降防止剤を使用することにより、ポリオール組成物に分散された固形難燃剤などの沈殿を防止できる。また、沈降防止剤の使用により、固形難燃剤を均一に分散させやすくなる。沈降防止剤は、一般的に常温、常圧で固体となるものであり、通常、ポリオール組成物において固形分(不溶分)となる。
【0033】
沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、粉状シリカ、有機クレー等から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましく、これらの中では粉状シリカがより好ましい。
沈降防止剤に使用するカーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用することができる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
また、粉状シリカとしては、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、フュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
【0034】
本発明の原料組成物における沈降防止剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1.0~8質量部がより好ましく、1.5~8質量部がさらに好ましい。沈降防止剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形難燃剤の沈降を防止し、その分散性を良好にできる。
【0035】
本発明のポリオール組成物は、フィラーとして、上記固形難燃剤及び沈降防止剤以外の無機充填剤を使用してもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムポレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の原料組成物におけるフィラーの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、10~110質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましく、30~90質量部がさらに好ましい。フィラーの含有量を上記下限値以上とすることで、得られるポリウレタンフォームの機械強度、難燃性などを向上させやすくなる。また、フィラーの含有量を上記上限値以下とすることで、フィラーによって発泡が阻害されにくくなる。
【0037】
<発泡剤>
本発明の原料組成物は、ポリウレタンフォームの原料として発泡剤を含有する。発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含有することが好ましい。本発明では、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、発泡剤の安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくい。ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zdが好ましい。
これらのハイドロフルオロオレフィンは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ハイドロフルオロオレフィンの配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、20~50質量部が好ましく、22~47質量部がより好ましく、25~45質量部がさらに好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの配合量が上記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、ハイドロフルオロオレフィンの配合量が上記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0039】
本発明の原料組成物は発泡剤としての水を含有することが好ましい。含有される水としては、例えば、イオン交換水及び蒸留水等を適宜用いることができる。水は、イソシアネートインデックスを調整する観点、及び取扱い容易性の観点からも配合することが好ましい。
【0040】
水の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部がさらに好ましい。水の配合量が上記範囲内であることで、原料組成物を適切に発泡しやすくなる。
【0041】
本発明の原料組成物は、ハイドロフルオロオレフィン及び水以外の発泡剤を含有してもよい。ハイドロフルオロオレフィン及び以外の発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、及びイソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物等の有機系物理発泡剤などが挙げられる。
【0042】
原料組成物中のハイドロフルオロオレフィン及び水以外の発泡剤の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.4~1質量部がさらに好ましい。発泡剤の配合量が上記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の配合量が上記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0043】
<イソシアネート>
本発明の原料組成物は、ポリウレタンフォームの原料としてイソシアネートを含有する。イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
(イソシアネートインデックス)
本発明のポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスに特に制限はないが、150以上が好ましい。イソシアネートインデックスが下限値以上であると、ポリオール化合物に対するポリイソシアネート化合物の量が過剰になりポリイソシアネート化合物の三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。イソシアネートインデックスは、200以上がさらに好ましく、300以上よりさらに好ましく、350以上が特に好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1,000以下が好ましく、800以下がより好ましく、500以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが上記上限値以下であると、得られるポリウレタンフォームの難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0048】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネート化合物の当量数÷(ポリオール化合物の当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネート化合物の当量数=ポリイソシアネート化合物の使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオール化合物の当量数=OHV×ポリオール化合物の使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオール化合物の水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56,100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0049】
<触媒>
本発明の原料組成物は、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、例えば、三量化触媒及び樹脂化触媒からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられるが、三量化触媒を含むことが好ましい。三量化触媒を含むことで、イソシアヌレート化が促進され、難燃性が高められる。また、三量化触媒及び樹脂化触媒の両方を含有することがより好ましい。本発明の原料組成物は、触媒として三量化触媒、樹脂化触媒、又はこの両方を含有することで、触媒の活性を高めて発泡性を向上させることができる。
【0050】
《三量化触媒》
三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させるイソシアヌレート化反応を促進し、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。アンモニウム塩としては、2,2-ジメチルプロパン酸などカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的にはカルボン酸4級アンモニウム塩が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上が好ましく、これら両方を使用する態様も好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンと併用した際の発泡性などを良好にする観点から、三量化触媒は、少なくともカルボン酸4級アンモニウム塩を含むことが好ましい。
【0051】
三量化触媒の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。三量化触媒の配合量がこれら下限値以上であると、ポリイソシアネートの三量化が起こりやすくなり、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一方、三量化触媒の配合量が上記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0052】
《樹脂化触媒》
樹脂化触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換し3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などでもよい。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
また、樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
【0053】
金属系触媒としては、例えば、ビスマス、スズ、銅、鉛、亜鉛、コバルト、ニッケルなどを含む触媒が挙げられ、過剰なイソシアヌレート化反応を抑制する観点から、ビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。金属系触媒は、金属塩であることが好ましい。
金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンとの安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がさらに好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸などが挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸のスズ塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸スズ塩はジアルキルスズカルボン酸塩などであってもよく、好ましくはジオクチルスズカルボン酸塩などである。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチル酸スズ及びジオクチル酸鉛等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
本発明では、樹脂化触媒としてビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属触媒が好ましく、中でもビスマスを含む金属触媒が好ましい。これら金属触媒を使用することで、発泡性が適度に調整され、発泡による伸びを抑えて層間剥離がより一層生じにくくなる。また、金属触媒は、アミン系触媒と併用してもよく、中でもイミダゾール化合物と併用することが好ましい。
【0054】
樹脂化触媒の配合量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。樹脂化触媒の配合量がこれら下限値以上であるとウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、これら上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
【0055】
また、原料組成物における触媒の合計量は、ポリオール化合物100質量部に対して、1~40質量部が好ましく、2~35質量部がより好ましく、3~30質量部がさらに好ましい。これら下限値以上であると、ウレタン結合の形成と三量化が適切に進行しやすくなる。また、これら上限値以下とすると、ウレタン化及び三量化反応の制御が容易となる。
【0056】
<その他成分>
原料組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、無機充填剤、整泡剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等から選択される1種以上の添加剤を含むことができる。
【0057】
<混合システム>
次に、本発明の第1の実施形態に係る混合システムについてさらに詳細に説明する。本発明の第1の実施形態に係る混合システムは、
図1に示すように、原料容器10a,10bと、混合器20と、温調装置30と、圧力調整ガス供給装置40と、吐出装置50とを備える。
【0058】
(原料容器)
原料容器10a,10bは、ポリウレタンフォームを得るための原料が充填される。各原料容器10a,10bに充填された原料は、混合され原料組成物となる。
本実施形態における原料容器は、ポリオール化合物を含有する第1の原料(ポリオール液剤)11aが充填された第1の容器10aと、イソシアネートを含有する第2の原料(イソシアネート液剤)11bが充填された第2の容器10bとを備える。また、第1の原料は、フィラー及び発泡剤を含有するとよく、原料組成物がさらに触媒を含有する場合には、第1の原料にさらに触媒を含有させるとよい。また、上記したその他成分も第1の原料に含有させるとよい。
原料容器10a,10bとしては、下記に示す圧力調整ガス供給装置40による加圧に耐性を有する材質であれば特に限定はなく、例えば、ステンレスが挙げられる。
【0059】
(混合器)
混合器20は、各原料容器10a,10bと流体連通されている連通部分21a,21bを有する。連通部分21a,21bの流路中にはバルブ(図示せず)を備え、バルブの開閉によって、混合器20への原料容器10a,10b内の原料の導入を制御する。
混合器20は、連通部分21a,21bを介して原料容器10a,10bから供給された原料11a,11bを混合して原料組成物を調製する。混合器20は、いわゆるスタティックミキサーと呼ばれる静止型混合器が挙げられる。静止型混合器は、駆動部のない混合器であって、流体が管体内部を通過することで、流体が混合されるものである。静止型混合器は、例えば、管体の内部にミキサーエレメントが配置されたものが挙げられる。ミキサーエレメントとしては、螺旋状に形成されたもの、複数の邪魔板が形成されたものなどがある。また、混合器20としては、その混合器20内部において加圧された原料同士を衝突させて混合させるものでもよい。混合器20で調製された原料組成物は、吐出装置50へ送出される。
【0060】
混合器20は、上記のとおりポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合する場合、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール液剤に対するイソシアネート液剤の体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0061】
混合器20における各原料の混合性を向上させる観点から、各原料容器に充填される原料の粘度差は、B型粘度計を用い、25℃においてプローブ回転数を60rpmに設定して測定した場合において、10mPa・s以上2,000mPa・s以下の範囲内に調整することが好ましい。したがって、本実施形態では、上記した第1の原料(ポリオール液剤)と第2の原料(イソシアネート液剤)との上記粘度差は、10mPa・s以上2,000mPa・s以下であることが好ましい。以上の観点から、上記粘度差は、30mPa・s以上1,500mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以上800mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0062】
B型粘度計を用い、25℃においてプローブ回転数を60rpmに設定して測定した場合の第1の原料(ポリオール液剤)の粘度は、200mPa・s以上2,500mPa・s以下であることが好ましく、230mPa・s以上1,000mPa・s以下であることがより好ましい。
B型粘度計を用い、25℃においてプローブ回転数を60rpmに設定して測定した場合の第2の原料(イソシアネート液剤)の粘度は、100mPa・s以上1,000mPa・s以下であることが好ましく、150mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0063】
(温調装置)
温調装置30は、混合器20に供給される原料少なくともいずれかを加温する。温調装置30は、各原料容器に充填される原料のうち、少なくともフィラーを含有する原料を加温するとよい。したがって、本実施形態では少なくとも第1の原料を加温するとよい。フィラーを含有する原料は、粘度が高くなることでフィラーを含有しない原料との粘度差が高くなり混合性が低下するが、温調装置30によって加温することで粘度を低減させ、フィラーを含有しない原料との粘度差を低減させることで混合性を向上させることができ、反応性に優れる原料を調製することができる。
【0064】
また、温調装置30は、混合器20に供給される原料の全てを加温してもよい。温調装置30によって混合器20に供給される全ての原料を加温して、同程度の温度に調整することで、例えば、第1の原料11aと第2の原料11bの温度差が低減し、混合器20における第1の原料11aと第2の原料11bの反応性を向上させることができる。混合器20における粘度差がより一層低減して、混合性が向上する。
【0065】
温調装置30は、原料を30℃以上50℃以下に温度を調整して、該温度に調整された原料を混合器20に供給することが好ましい。温調装置30によって原料を上記下限値以上の温度に調整することで、発泡性を過度に高くすること無く、フィラーを含有する原料とフィラーを含有しない原料との粘度差を低減させることができ、2以上の原料の混合性を向上させることができる。また、温調装置30によって原料を上記上限値以下の温度に調整することで、形成されるポリウレタンフォーム内部に焦げが発生することを抑制し、火災を防ぐことができる。
【0066】
温調装置30の設置箇所は、混合器20に供給される原料を加温することができれば特に限定はなく、例えば、
図1に示すように、原料容器10a,10bと混合器20とを連結する連通部分21a,21bに設置することができる。また、温調装置30は、
図2に示すように、それぞれの原料容器10a,10bの周囲に設置することができる。つまり、温調装置20は、原料容器10a,10b及び連通部分21a,21bの少なくとも1つを加温することができればよい。
【0067】
温調装置30としては、原料を上記温度範囲に調整することができれば特に限定はなく、連通部分21a,21bに設置する温調装置としては、例えば、バンドヒーター、電気毛布などが挙げられる。また、原料容器10a,10bを加温する装置としては、バンドヒーター、電気毛布、ウォーターバス及び投げ込みヒーター等が挙げられる。
【0068】
(圧力調整ガス供給装置)
圧力調整ガス供給装置40は、原料容器10a,10bのそれぞれに連通するガス供給路41a,41bを備え、原料容器10a,10b内に空気又は不活性ガスを供給する。原料容器10a,10b内は、圧力調整ガス供給装置40から供給された空気又は不活性ガスによって加圧され、その圧力によって原料11a,11bが連通部分21a,21bを通って混合器20へ送出される。つまり、圧力調整ガス供給装置40によって、原料容器10a,10bを加圧することで、混合器20内の圧力を調整することができる。
圧力調整ガス供給装置40は、混合器20内の圧力を調整するように、空気又は不活性ガスを供給する。混合器20内の圧力は、例えば0.05MPa以上1.0MPa以下であり、また、混合器20内の圧力は、大気圧より高いほうがよく、0.11MPa以上0.9MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上0.85MPa以下であることがさらに好ましく、0.4MPa以上0.85MPa以下であることがよりさらに好ましい。なお、混合器20内の圧力を上記範囲内とするためには、各原料容器10a,10b内の圧力を上記範囲内とするとよい。
圧力調整ガス供給装置40が供給する不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン及び炭酸ガス等が挙げられる。
圧力調整ガス供給装置40としては、例えば、エアコンプレッサーが挙げられる。
【0069】
(吐出装置)
吐出装置50は、混合器20で調製した原料組成物を吐出し、発泡させてポリウレタンフォームに形成する。
【0070】
(スプレーガス供給装置)
混合システムは、
図1に示すように、スプレーガス供給装置60を備えるとよい。
スプレーガス供給装置60は、吐出装置50内において、混合器20で調製した原料組成物に空気又は不活性ガスを混入させ、空気又は不活性ガスが混入した原料組成物とする。空気又は不活性ガスが混入した原料組成物は、空気又は不活性ガスにより均一に混合し、混合性及び反応性が向上する。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン及び炭酸ガス等が挙げられる。
スプレーガス供給装置60としては、例えば、エアコンプレッサーが挙げられる。
【0071】
スプレーガス供給装置60によって、空気又は不活性ガスが混入した原料組成物は、吹付けノズルを備える吐出装置50から被塗物にスプレー吐出し、発泡させてポリウレタンフォームに形成する。吐出装置50としては、空気又は不活性ガスが混入した原料組成物をスプレー吐出することができれば特に限定はなく、例えば、スプレー装置が挙げられる。
【0072】
<ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明の第1の実施形態に係る混合システムを用いることでポリウレタンフォームの形成することができる。具体的には、ポリウレタンフォームの製造方法は、以下の工程(1)~(5)を含む。
(1)2以上の原料容器に原料を充填する工程
(2)原料容器と流体連通されている連通部分を有する混合器で、連通部分を介して各原料容器から供給された原料を混合して原料組成物を調製する工程
(3)混合器に供給される前記原料の少なくともいずれかを温調装置で加温する工程
(4)混合器内の圧力を調整するために、原料容器内に空気又は不活性ガスを圧力調整ガス供給装置で供給する工程
(5)混合器で調製した原料組成物を吐出装置から吐出する工程
【0073】
本発明の第1の実施形態に係る混合システムは、原料組成物を加温する温調装置を備えることで、フィラーを含有する原料組成物を用いた場合であっても、原料組成物の混合性を良好とし、硬化性及び難燃性に優れるポリウレタンフォームを形成することができる。
本発明のポリウレタンフォームの用途は特に限定されないが難燃性及び断熱性に優れているため、建築物の壁、天井、屋根、床等の建築物を施工対象面として好適に用いることができる。また、本発明のポリウレタンフォームは、補修等に用いることもでき、建築物の構造材の間に生じる目地や穴を含め、建築物に生じる任意の開口部を埋める部材としても用いることもできる。
【0074】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、
図3に示すように、圧力調整ガス供給装置40が吐出装置50と連通するガス供給路41cをさらに備える構成である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0075】
本実施形態における圧力調整ガス供給装置40は、
図1で示したスプレーガス供給装置を兼ね、吐出装置50に空気又は不活性ガスを供給する。この態様では、原料組成物に混入されるガスの種類および圧力は、原料容器10a,10bに供給される圧力調整ガスと略同一である。この態様は、コストおよび簡便な装置構成の観点で好ましい。
【0076】
[その他の実施形態]
以上のように各実施形態を示して説明した混合システム、及びポリウレタンフォームの製造方法は、本発明の一例であり、本発明は、上記実施形態の構成に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な改良及び変更が可能であり、構成要素を適宜加えてもよい。
例えば、以上の説明では、原料容器は、2つとして示したが、3つ以上であってもよい。具体的には、原料容器が3つの場合は、第1の原料容器にはポリオールを充填し、第2の原料容器にはイソシアネートを充填し、第3の原料容器には発泡剤を充填する。第1の原料容器は、フィラーを含有するとよく、原料組成物がさらに触媒を含有する場合には、第1の原料容器にさらに触媒を含有させるとよい。この場合には、第1の原料容器の原料には、上記したその他の成分を含有させるとよい。また、この際には、第1の原料容器に充填される原料と、第2の原料容器に充填される原料の粘度差を、上記範囲内に調整することが好ましい。
【0077】
また、以上の説明では、吐出装置はスプレー装置として示したが、スプレー装置に限定されない。例えば、吐出装置の吐出口から吐出した原料組成物を噴霧させずに、パネル、柱部材などの建材の内部に充填させてもよい。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
実施例及び比較例で用いた各成分を下記に示し、各成分の含有(質量部)を表1に示す。
【0080】
・ポリオール化合物:ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087)
・触媒1:三量化触媒、2-エチルヘキサン酸カリウム含有触媒(エポニックジャパン社製、製品名:DABCO K-15)、濃度75質量%
・触媒2:樹脂化触媒、1,2-ジメチルイミダゾール(花王社製、製品名:カオライザー No.390)濃度65~75質量%
・発泡剤1:トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(ハネウェル社製、製品名:Solstice LBA、HFO)
・発泡剤2:水
・フィラー1:赤燐系難燃剤(赤燐、燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
・フィラー2:ホウ素含有難燃剤(ホウ酸亜鉛、早川商事社製、製品名:Firebrake ZB)
・フィラー3:臭素含有難燃剤(エチレンビス、アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010)
・フィラー4:沈降防止剤(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR976S)
・ポリイソシアネート(イソシアネート化合物):ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、バイエル社製、製品名:DESMODUR(登録商標)44V20L
【0081】
[実施例1]
まず、表1の配合に従って秤取り、ハンドドリルミキサーで混練して、ポリオール液剤を得た。
次に、
図1に示す混合システムを用意した。得られたポリオール液剤を一方の原料容器に充填し、もう一方の原料容器にイソシアネート液剤を充填した。ポリオール液剤とイソシアネート液剤は、同質量となるように充填した。なお、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を充填したそれぞれの原料容器は、圧力調整ガス供給装置から供給された空気によって0.6MPaに圧力設定した。
混合器の連通部分に温調装置としてのバンドヒーターを巻いて設置し、ポリオール液剤及びイソシアネート液剤の温調設定温度を40℃に設定して1時間以上放置した。
その後、石膏ボードの上にポリオール液剤及びイソシアネート液剤を混合器で混合して原料組成物を調製し、調製した原料組成物を吐出装置から吐出してポリウレタンフォームを得た。ポリウレタンフォームの硬化時間及び難燃性を以下のように評価した。
【0082】
[実施例2]
実施例1に対して、ポリオール液剤の温調設定温度を50℃とし、イソシアネート液剤の温調設定温度を30℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0083】
[実施例3]
実施例1に対して、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を充填したそれぞれの原料容器を0.5MPaに圧力設定し、イソシアネート液剤の温調設定温度を50℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0084】
[実施例4,5]
実施例1に対して、ポリオール液剤を表1の配合に従って変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0085】
[実施例6]
実施例1に対して、ポリオール液剤を表1の配合に従って変更し、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を充填したそれぞれの原料容器を0.8MPaに圧力設定した以外は実施例1と同様に実施した。
【0086】
[実施例7]
実施例6に対して、温調装置を
図2に示すように、原料容器の周囲にバンドヒーターを巻いて設置した以外は実施例6と同様に実施した。
【0087】
[比較例1]
実施例1に対して、ポリオール液剤を表1の配合に従って変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0088】
[比較例2]
実施例1に対して、温調装置を無くした以外は実施例1と同様に実施した。
【0089】
[比較例3]
まず、表1の配合に従って秤取り、ハンドドリルミキサーで混練して、ポリオール液剤を得た。
次に、得られたポリオール液剤及びイソシアネート液剤をペール缶に入れた。ペール缶の周囲にバンドヒーターを巻いて設置し、ポリオール液剤及びイソシアネート液剤の温調設定温度を40℃に設定して1時間以上放置した。その後、ポリオール液剤及びイソシアネート液剤をそれぞれ同質量となるように原料容器に充填した。なお、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を充填したそれぞれの原料容器は、圧力調整ガス供給装置から供給された空気によって0.6MPaに圧力設定した。
その後、石膏ボードの上にポリオール液剤及びイソシアネート液剤を混合器で混合して原料組成物を調製し、調製した原料組成物を吐出装置から吐出してポリウレタンフォームを得た。ポリウレタンフォームの硬化時間及び難燃性を以下のように評価した。
【0090】
〔硬化時間〕
石膏ボードの上に、原料組成物を3秒間吐出し、吐出終了後からポリウレタンフォームの表面に粘着性がなくなるまで(触った際に変形しなくなるまで)の時間を硬化時間として測定した。硬化時間が、30秒未満であった場合を「A」、30秒以上90秒以下であった場合を「B」、90秒を超えた場合を「C」とした。結果を表1に示す。
【0091】
〔難燃性〕
石膏ボードの上に、原料組成物を吐出し、12時間放置したポリウレタンフォームを形成した。その後、石膏ボードを含めた厚みが50mmとなるようにポリウレタンフォームを切り出して試料を得た。得られた試料をISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて5分間加熱したときの総発熱量をコーンカロリーメーターにより測定した。5分間の総発熱量が8MJ以下である場合を「A」、8MJを超え10MJ以下である場合を「B」、10MJを超えた場合を「C」とした。結果を表1に示す。
【0092】
【0093】
以上の実施例の結果から、フィラーを含有する原料組成物を用いた場合であっても、原料組成物の混合性を良好とし、硬化性及び難燃性に優れるポリウレタンフォームを形成することができた。
【符号の説明】
【0094】
10a,10b 原料容器
11a,11b 原料組成物
20 混合器
21a,21b 連通部分
30 温調装置
40 圧力調整ガス供給装置
41a~41c ガス供給路
50 吐出装置
60 スプレーガス供給装置