(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 19/38 20060101AFI20240710BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20240710BHJP
B60B 35/14 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F16C19/38
F16C33/78 Z
B60B35/14 V
(21)【出願番号】P 2020161320
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 誠
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-065049(JP,A)
【文献】特開2018-162830(JP,A)
【文献】特開2008-298106(JP,A)
【文献】特開2001-010304(JP,A)
【文献】ハブユニット軸受,日本,日本精工株式会社,2015年,https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/automotive/4201c.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,
33/30-33/82
B60B 21/00-31/06,
35/00-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、
前記外方部材のアウター側端部に内径嵌合され、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、
前記円錐ころ列は、転動体である複数の円錐台形状の円錐ころを有し、
アウター側に位置するアウター側円錐ころ列は、各々の前記円錐ころの大径側端面が小径側端面よりもアウター側に位置するように設けられ、
前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.25を超えて0.35未満であ
り、
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部は、当該アウター側円錐ころ列における円錐ころの大径側端面のなかで、最もアウター側に位置している部分であることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記アウター側円錐ころ列の円錐ころ中心とインナー側円錐ころ列の円錐ころ中心との間の軸方向長さL2と、前記軸方向長さL0との比L2/L0が、0.30を超えて0.40未満である請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部とインナー側円錐ころ列のインナー側端部との間の軸方向長さL3と、前記軸方向長さL0との比L3/L0が、0.50を超えて0.70未満であり、
前記軸方向長さL1と前記軸方向長さL3との和が前記軸方向長さL0以下である請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、
前記外方部材のアウター側端部に外径嵌合され、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、
前記円錐ころ列は、転動体である複数の円錐台形状の円錐ころを有し、
アウター側に位置するアウター側円錐ころ列は、各々の前記円錐ころの大径側端面が小径側端面よりもアウター側に位置するように設けられ、
前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.20を超えて0.30未満であ
り、
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部は、当該アウター側円錐ころ列における円錐ころの大径側端面のなかで、最もアウター側に位置している部分であることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記アウター側円錐ころ列の円錐ころ中心とインナー側円錐ころ列の円錐ころ中心との間の軸方向長さL2と、前記軸方向長さL0との比L2/L0が、0.35を超えて0.45未満である請求項4に記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部とインナー側円錐ころ列のインナー側端部との間の軸方向長さL3と、前記軸方向長さL0との比L3/L0が、0.55を超えて0.75未満であり、
前記軸方向長さL1と前記軸方向長さL3との和が前記軸方向長さL0以下である請求項4または請求項5に記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、
前記外方部材のアウター側端部に内径嵌合される芯金と、前記芯金に対向して配置され前記内方部材の外周面に嵌合される金属環と、前記芯金に固着され前記金属環に接触するシールリップを有する弾性部材とを備え、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、
前記円錐ころ列は、転動体である複数の円錐台形状の円錐ころを有し、
アウター側に位置するアウター側円錐ころ列は、各々の前記円錐ころの大径側端面が小径側端面よりもアウター側に位置するように設けられ、
前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.30を超えて0.40未満であ
り、
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部は、当該アウター側円錐ころ列における円錐ころの大径側端面のなかで、最もアウター側に位置している部分であることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記アウター側円錐ころ列の円錐ころ中心とインナー側円錐ころ列の円錐ころ中心との間の軸方向長さL2と、前記軸方向長さL0との比L2/L0が、0.25を超えて0.35未満である請求項7に記載の車輪用軸受装置。
【請求項9】
前記アウター側円錐ころ列のアウター側端部とインナー側円錐ころ列のインナー側端部との間の軸方向長さL3と、前記軸方向長さL0との比L3/L0が、0.45を超えて0.65未満であり、
前記軸方向長さL1と前記軸方向長さL3との和が前記軸方向長さL0以下である請求項7または請求項8に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピックアップトラックまたはSUV(SportsUtility Vehicle)には、円錐ころ列を備えた車輪用軸受装置が用いられる傾向にある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される車輪用軸受装置では、負荷容量を増大させるために、アウター側の円錐ころ列およびインナー側の円錐ころ列における円錐ころの長さ又は径等を適宜設定することによって軸受の剛性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、負荷容量を増大させる際に、円錐ころ列が占めるスペースを大きく設定すると、車両用軸受装置の軸方向における長さが必要以上に大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明では、円錐ころ列を備えた車輪用軸受装置において、必要な負荷容量に対して適切な大きさに構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、前記外方部材のアウター側端部に内径嵌合され、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.25を超えて0.35未満であることを特徴とする車輪用軸受装置である。
【0008】
第四の発明は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、前記外方部材のアウター側端部に外径嵌合され、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.20を超えて0.30未満であることを特徴とする車輪用軸受装置である。
【0009】
第七の発明は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、一端部に車輪取付フランジを有し、外周に軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪に前記復列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面を有し、前記内輪に前記復列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の円錐ころ列と、前記外方部材のアウター側端部に内径嵌合される芯金と、前記芯金に対向して配置され前記内方部材の外周面に嵌合される金属環と、前記芯金に固着され前記金属環に接触するシールリップを有する弾性部材とを備え、前記外方部材と前記内方部材とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材とを備える車輪用軸受装置であって、前記車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さL1と、前記車輪取付フランジのアウター側端面と前記外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さL0との比L1/L0が、0.30を超えて0.40未満であることを特徴とする車輪用軸受装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば円錐ころ列を備えた車輪用軸受装置において、必要な負荷容量に対して適切な大きさに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る車輪用軸受装置を示す側面断面図。
【
図2】第2実施形態に係る車輪用軸受装置を示す側面断面図。
【
図3】第3実施形態に係る車輪用軸受装置を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[車輪用軸受装置の第1実施形態]
以下に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0013】
図1に示す第1実施形態に係る車輪用軸受装置1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態であり、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、ピックアップトラックまたはSUV等の車両に用いられる。車輪用軸受装置1は、第3世代と称呼される駆動輪用の軸受装置である。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ輪3および内輪4と、転動列である二列のインナー側円錐ころ列5およびアウター側円錐ころ列6と、インナー側シール部材9と、アウター側シール部材10とを具備する。ここで、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、軸方向とは、車輪用軸受装置1の回転軸に沿った方向を表す。
【0014】
外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材9が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材10が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
【0015】
外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cと、アウター側の外側軌道面2dとが形成されている。インナー側の外側軌道面2cは、インナー側に向かうにつれて大径となる傾斜面に形成されている。アウター側の外側軌道面2dは、アウター側に向かうにつれて大径となる傾斜面に形成されている。外輪2の外周面には、図示しない車体側の部材(ナックル)に取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体的に形成されている。車体取り付けフランジ2eには、車体側の部材と外輪2とを締結する締結部材が挿入されるボルト孔2gが設けられている。
【0016】
ハブ輪3のインナー側端部の外周面には、アウター側端部よりも縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、ハブボルトが圧入されるボルト孔3fが設けられている。
【0017】
ハブ輪3には、外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するようにアウター側の内側軌道面3cが設けられている。内側軌道面3cは、アウター側に向かうにつれて大径となる傾斜面に形成されている。また、ハブ輪3においては、車輪取り付けフランジ3bの基部側におけるインナー側の面に、アウター側シール部材10が摺接するリップ摺接面3dが形成されている。ハブ輪3の小径段部3aには、内輪4が設けられている。
【0018】
内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。ハブ輪3のインナー側に、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。内側軌道面4aは、インナー側に向かうにつれて大径となる傾斜面に形成されている。内輪4の内側軌道面4aは、外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向している。
【0019】
転動列であるインナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6は、転動体である複数の円錐ころ7が保持器8によって保持されることにより構成されている。
【0020】
円錐ころ7は、小径側端面7aと、小径側端面7aよりも大径の大径側端面7bとを有した円錐台形状に形成されている。インナー側円錐ころ列5の円錐ころ7は、大径側端面7bが小径側端面7aよりもインナー側に配置されている。アウター側円錐ころ列6の円錐ころ7は、大径側端面7bが小径側端面7aよりもアウター側に配置されている。インナー側円錐ころ列5の円錐ころ7は円錐ころ中心Piを有しており、アウター側円錐ころ列6の円錐ころ7は円錐ころ中心Poを有している。外輪2と、ハブ輪3および内輪4と、インナー側円錐ころ列5と、アウター側円錐ころ列6とから複列円錐ころ軸受が構成されている。
【0021】
第1実施形態に係る車輪用軸受装置1においては、ハブ輪3における車輪取付フランジ3bのアウター側端面3gと外輪2のインナー側端面2hとの間の軸方向長さをL0とし、車輪取付フランジ3bのアウター側端面3gとアウター側円錐ころ列6のアウター側端部との間の軸方向長さをL1としたときに、軸方向長さL1と軸方向長さL0との比L1/L0が、0.25を超えて0.35未満となるように構成されている(0.25<L1/L0<0.35)。この場合、アウター側円錐ころ列6のアウター側端部とは、アウター側円錐ころ列6における円錐ころ7の大径側端面7bのなかで最もアウター側に位置している部分のことである。
【0022】
このように、比L1/L0が、0.25を超えて0.35未満となるように構成することで、車輪用軸受装置1におけるアウター側円錐ころ列6の軸方向の配置位置を、車輪取付フランジ3bの軸方向における厚さ、およびアウター側シール部材10が占める軸方向のスペースを考慮しながら、適切に設定することが可能となる。これにより、車両用軸受装置1の軸方向における長さが必要以上に大きくなってしまうことを抑制して、車両用軸受装置1を必要な負荷容量に対して適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0023】
また、車輪用軸受装置1においては、アウター側円錐ころ列6における円錐ころ7の円錐ころ中心Poとインナー側円錐ころ列5における円錐ころ7の円錐ころ中心Piとの間の軸方向長さをL2としたときに、軸方向長さL2と軸方向長さL0との比L2/L0が、0.30を超えて0.40未満となるように構成されている(0.30<L2/L0<0.40)。
【0024】
このように、比L2/L0が、0.30を超えて0.40未満となるように構成することで、車輪用軸受装置1におけるインナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6との軸方向における間隔を、車輪取付フランジ3bの軸方向における厚さ、およびアウター側シール部材10が占める軸方向のスペースを考慮しながら、適切に設定することが可能となる。これにより、車両用軸受装置1の軸方向における長さが必要以上に大きくなってしまうことを抑制して、車両用軸受装置1を必要な負荷容量に対して適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0025】
また、車輪用軸受装置1においては、アウター側円錐ころ列6のアウター側端部とインナー側円錐ころ列5のインナー側端部との間の軸方向長さをL3としたときに、軸方向長さL3と軸方向長さL0との比L3/L0が、0.50を超えて0.70未満となり(0.50<L3/L0<0.70)、軸方向長さL1と軸方向長さL3との和が軸方向長さL0以下(L1+L3≦L0)となるように構成されている。この場合、インナー側円錐ころ列5のインナー側端部とは、インナー側円錐ころ列5における円錐ころ7の大径側端面7bのなかで最もインナー側に位置している部分のことである。
【0026】
このように、比L3/L0が0.50を超えて0.70未満となるとともに、軸方向長さL1と軸方向長さL3との和が軸方向長さL0以下となるように構成することで、車輪用軸受装置1においてインナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6とが配置される軸方向のスペースの大きさを、車輪取付フランジ3bの軸方向における厚さ、およびアウター側シール部材10が占める軸方向のスペースを考慮しながら、適切に設定することが可能となる。これにより、車両用軸受装置1の軸方向における長さが必要以上に大きくなってしまうことを抑制して、車両用軸受装置1を必要な負荷容量に対して適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0027】
[第1実施形態に係る車両用軸受装置の評価]
次に、アウター側シール部材10が外輪2に内径嵌合された第1実施形態に係る車両用軸受装置1について、ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの強度である「ハブ輪フランジ強度」、車両用軸受装置1の「軸受負荷容量」、およびアウター側シール部材10が占めるスペースである「シールスペース」の評価を行い、これらの評価結果に基づいて総合評価を行った。
【0028】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価、ならびに総合評価は、比L1/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1、比L2/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1、および比L3/L0が0.40~0.80の範囲に設定された車両用軸受装置1について行い、シールスペースの評価は、比L2/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1について行った。
【0029】
第1実施形態に係る車両用軸受装置1についての評価結果を表1に示す。なお、表1における評価結果に関し、「◎」は極めて良好、「○」は良好、「×」は悪い、をそれぞれ意味する。
【0030】
【0031】
(比L1/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L1/L0が0.50~0.55の範囲にあるときに「◎」であり、0.25~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.10~0.20の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L1/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.35の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.40~0.55の範囲にあるときは「×」であった。
【0032】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L1/L0が0.25~0.35のときが最適であることが分かった。
【0033】
(比L2/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L2/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.50~0.55の範囲にあるときは「×」であった。シールスペースは、比L2/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.50~0.55の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L2/L0が0.50~0.55の範囲にあるときに「◎」であり、0.30~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.10~0.25の範囲にあるときは「×」であった。
【0034】
ハブ輪フランジ強度、シールスペース、および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L2/L0が0.30~0.40のときが最適であることが分かった。
【0035】
(比L3/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L3/L0が0.40~0.45の範囲にあるときに「◎」であり、0.50~0.70の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.75~0.80の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L3/L0が0.75~0.80の範囲にあるときに「◎」であり、0.50~0.70の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.40~0.45の範囲にあるときは「×」であった。
【0036】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L3/L0が0.50~0.70のときが最適であることが分かった。
【0037】
[車輪用軸受装置の第2実施形態]
次に、車輪用軸受装置の第2実施形態について説明する。
図2に示すように、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aは、アウター側シール部材10に代えてアウター側シール部材20を有している点で第1実施形態に係る車輪用軸受装置1と異なっている。その他の部分は第1実施形態に係る車輪用軸受装置1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0038】
アウター側シール部材20は、外輪2のアウター側端部に外径嵌合されており、外輪2のアウター側端部とハブ輪3との隙間を塞いでいる。アウター側シール部材20の芯金21は、外輪2のアウター側端部における外周面に嵌合される円筒状の嵌合部21aと、嵌合部21aのアウター側端部から外径側および内径側へ延びる側板部21bとを有している。
【0039】
グリースリップ22bは、弾性部材22が有するシールリップの中で最も内径側に配置されており、芯金21に接合された基部22aから内径側かつインナー側へ向けて延出している。グリースリップ22bの先端部はリップ摺接面3dに摺動可能に接触している。第1サイドリップ22cは、グリースリップ22bよりも外径側に配置されており、基部22aから外径側かつアウター側へ向けて延出している。第1サイドリップ22cの先端部はリップ摺接面3dに摺動可能に接触している。第2サイドリップ22dは、第1サイドリップ22cよりも外径側に配置されており、基部22aから外径側かつアウター側へ向けて延出している。第2サイドリップ22dの先端部はリップ摺接面3dに摺動可能に接触している。
【0040】
ラビリンスリップ22eは、第2サイドリップ22dよりも外径側に配置されており、基部22aから外径側かつアウター側へ向けて延出している。ラビリンスリップ22eの先端部はリップ摺接面3dとラビリンス隙間を介して対向している。
【0041】
グリースリップ22bおよび第1サイドリップ22cは、外輪2のアウター側端部における外周面よりも内径側に配置されており、第2サイドリップ22dおよびラビリンスリップ22eは、外輪2のアウター側端部における外周面よりも外径側に配置されている。
【0042】
第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、軸方向長さL1と軸方向長さL0との比L1/L0が0.20を超えて0.30未満となるように構成している(0.20<L1/L0<0.30)。
【0043】
つまり、車輪用軸受装置1Aが、外輪2のアウター側端部に外径嵌合され、外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材20を有し、アウター側シール部材20が3枚以上の接触リップ22b、22c、22dを有する構成の場合は、比L1/L0を0.20を超えて0.30未満となるように設定している。
【0044】
アウター側シール部材20は、外輪2に内径嵌合されるアウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが小さくなる傾向にある。よって、アウター側円錐ころ列6を車輪取付フランジ3bに近づけて配置することが可能である。従って、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、アウター側シール部材20を用いた場合の比L1/L0の大きさの範囲(0.20<L1/L0<0.30)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L1/L0の大きさの範囲(0.25<L1/L0<0.35)よりも小さくさせている。これにより、車両用軸受装置1Aを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0045】
また、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、軸方向長さL2と軸方向長さL0との比L2/L0が0.35を超えて0.45未満となるように構成している(0.35<L2/L0<0.45)。
【0046】
アウター側シール部材20は、アウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが小さくなる傾向にあるため、インナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6とを軸方向に離して配置することが可能である。従って、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、アウター側シール部材20を用いた場合の比L2/L0の大きさの範囲(0.35<L2/L0<0.45)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L2/L0の大きさの範囲(0.30<L2/L0<0.40)よりも大きくさせている。これにより、車両用軸受装置1Aを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0047】
さらに、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、軸方向長さL3と軸方向長さL0との比L3/L0が0.55を超えて0.75未満となるように構成している(0.55<L3/L0<0.75)。
【0048】
アウター側シール部材20は、アウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが小さくなる傾向にあるため、インナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6とが配置される軸方向のスペースの大きさを大きくすることが可能である。従って、第2実施形態に係る車輪用軸受装置1Aにおいては、アウター側シール部材20を用いた場合の比L3/L0の大きさの範囲(0.55<L3/L0<0.75)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L3/L0の大きさの範囲(0.50<L3/L0<0.70)よりも大きくさせている。これにより、車両用軸受装置1Aを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0049】
[第2実施形態に係る車両用軸受装置の評価]
次に、アウター側シール部材20が外輪2に外径嵌合された第2実施形態に係る車両用軸受装置1Aについて、ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの強度である「ハブ輪フランジ強度」、車両用軸受装置1Aの「軸受負荷容量」、およびアウター側シール部材10が占めるスペースである「シールスペース」の評価を行い、これらの評価結果に基づいて総合評価を行った。
【0050】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価、ならびに総合評価は、比L1/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1A、比L2/L0が0.20~0.60の範囲に設定された車両用軸受装置1A、および比L3/L0が0.45~0.85の範囲に設定された車両用軸受装置1Aについて行い、シールスペースの評価は、比L2/L0が0.20~0.60の範囲に設定された車両用軸受装置1Aについて行った。
【0051】
第2実施形態に係る車両用軸受装置1Aについての評価結果を表2に示す。なお、表2における評価結果に関し、「◎」は極めて良好、「○」は良好、「×」は悪い、をそれぞれ意味する。
【0052】
【0053】
(比L1/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L1/L0が0.50~0.55の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.10~0.15の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L1/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.30の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.35~0.55の範囲にあるときは「×」であった。
【0054】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L1/L0が0.20~0.30のときが最適であることが分かった
【0055】
(比L2/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L2/L0が0.20~0.25の範囲にあるときに「◎」であり、0.30~0.45の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.50~0.60の範囲にあるときは「×」であった。シールスペースは、比L2/L0が0.20~0.25の範囲にあるときに「◎」であり、0.30~0.45の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.50~0.60の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L2/L0が0.55~0.60の範囲にあるときに「◎」であり、0.35~0.50の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.20~0.30の範囲にあるときは「×」であった。
【0056】
ハブ輪フランジ強度、シールスペース、および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L2/L0が0.35~0.45のときが最適であることが分かった。
【0057】
(比L3/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L3/L0が0.45~0.50の範囲にあるときに「◎」であり、0.55~0.75の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.80~0.85の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L3/L0が0.80~0.85の範囲にあるときに「◎」であり、0.55~0.75の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.45~0.50の範囲にあるときは「×」であった。
【0058】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L3/L0が0.55~0.75のときが最適であることが分かった。
【0059】
[車輪用軸受装置の第3実施形態]
次に、車輪用軸受装置の第3実施形態について説明する。
図3に示すように、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bは、アウター側シール部材10に代えてアウター側シール部材30を有している点で第1実施形態に係る車輪用軸受装置1と異なっている。その他の部分は第1実施形態に係る車輪用軸受装置1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0060】
アウター側シール部材30は、金属環33を有している。金属環33は、ハブ輪3のリップ摺接面3dに嵌合されており、芯金31に対向して配置されている。弾性部材32のグリースリップ32b、第1サイドリップ32c、および第2サイドリップ32dは、金属環33と対向しており、グリースリップ32bの先端部、第1サイドリップ32cの先端部、および第2サイドリップ32dの先端部は、金属環33に摺動可能に接触している。このように、グリースリップ32b、第1サイドリップ32c、および第2サイドリップ32dは、内方部材であるハブ輪3に嵌合される金属環33に摺動可能に接触する接触リップとして構成されている。
【0061】
第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、軸方向長さL1と軸方向長さL0との比L1/L0が0.30を超えて0.40未満となるように構成している(0.30<L1/L0<0.40)。
【0062】
つまり、車輪用軸受装置1Bが、芯金31と金属環33と弾性部材32とを有し、外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材30を備えており、弾性部材32が3枚以上の接触リップを有する構成の場合は、比L1/L0を0.30を超えて0.40未満となるように設定している。
【0063】
金属環33を有するアウター側シール部材30は、アウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが大きくなる傾向にあるため、アウター側シール部材30を用いた場合はアウター側シール部材10を用いた場合よりも、アウター側円錐ころ列6を車輪取付フランジ3bから離れた位置に配置する必要がある。従って、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、アウター側シール部材30を用いた場合の比L1/L0の大きさの範囲(0.30<L1/L0<0.40)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L1/L0の大きさの範囲(0.25<L1/L0<0.35)よりも大きくさせている。これにより、車両用軸受装置1Bを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0064】
また、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、軸方向長さL2と軸方向長さL0との比L2/L0が0.25を超えて0.35未満となるように構成している(0.25<L2/L0<0.35)。
【0065】
金属環33を有するアウター側シール部材30は、アウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが大きくなる傾向にあるため、インナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6とを軸方向に近づけて配置することが好ましい。従って、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、アウター側シール部材30を用いた場合の比L2/L0の大きさの範囲(0.25<L2/L0<0.35)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L2/L0の大きさの範囲(0.3<L2/L0<0.4)よりも小さくさせている。これにより、車両用軸受装置1Bを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0066】
さらに、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、軸方向長さL3と軸方向長さL0との比L3/L0が0.45を超えて0.65未満となるように構成している(0.45<L3/L0<0.65)。
【0067】
金属環33を有するアウター側シール部材30は、アウター側シール部材10よりも軸方向に占めるスペースが大きくなる傾向にあるため、インナー側円錐ころ列5とアウター側円錐ころ列6とが配置される軸方向のスペースの大きさを小さくすることが好ましい。従って、第3実施形態に係る車輪用軸受装置1Bにおいては、アウター側シール部材30を用いた場合の比L3/L0の大きさの範囲(0.45<L3/L0<0.65)を、アウター側シール部材10を用いた場合の比L3/L0の大きさの範囲(0.50<L3/L0<0.70)よりも大きくさせている。これにより、車両用軸受装置1Bを必要な負荷容量に対してより適切な大きさに構成しつつ、必要な負荷容量を得ることが可能になる。
【0068】
[第3実施形態に係る車両用軸受装置の評価]
次に、金属環33を有するアウター側シール部材30が外輪2に内径嵌合された第3実施形態に係る車両用軸受装置1Bについて、ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの強度である「ハブ輪フランジ強度」、車両用軸受装置1Bの「軸受負荷容量」、およびアウター側シール部材10が占めるスペースである「シールスペース」の評価を行い、これらの評価結果に基づいて総合評価を行った。
【0069】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価、ならびに総合評価は、比L1/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1B、比L2/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1B、および比L3/L0が0.35~0.75の範囲に設定された車両用軸受装置1Bについて行い、シールスペースの評価は、比L2/L0が0.10~0.55の範囲に設定された車両用軸受装置1Bについて行った。
【0070】
第3実施形態に係る車両用軸受装置1Bについての評価結果を表3に示す。なお、表3における評価結果に関し、「◎」は極めて良好、「○」は良好、「×」は悪い、をそれぞれ意味する。
【0071】
【0072】
(比L1/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L1/L0が0.50~0.55の範囲にあるときに「◎」であり、0.30~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.10~0.25の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L1/L0が0.10~0.20の範囲にあるときに「◎」であり、0.25~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L1/L0が0.50~0.55の範囲にあるときは「×」であった。
【0073】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L1/L0が0.30~0.40のときが最適であることが分かった。
【0074】
(比L2/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L2/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.35の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.40~0.55の範囲にあるときは「×」であった。シールスペースは、比L2/L0が0.10~0.15の範囲にあるときに「◎」であり、0.20~0.35の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.40~0.55の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L2/L0が0.50~0.55の範囲にあるときに「◎」であり、0.25~0.40の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L2/L0が0.10~0.20の範囲にあるときは「×」であった。
【0075】
ハブ輪フランジ強度、シールスペース、および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L2/L0が0.25~0.35のときが最適であることが分かった。
【0076】
(比L3/L0に関する評価結果)
ハブ輪フランジ強度は、比L3/L0が0.35~0.40の範囲にあるときに「◎」であり、0.45~0.65の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.70~0.75の範囲にあるときは「×」であった。軸受負荷容量は、比L3/L0が0.70~0.75の範囲にあるときに「◎」であり、0.45~0.65の範囲にあるときに「○」であった。一方、比L3/L0が0.35~0.40の範囲にあるときは「×」であった。
【0077】
ハブ輪フランジ強度および軸受負荷容量の評価結果を総合評価すると、比L3/L0が0.45~0.65のときが最適であることが分かった。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0079】
1、1A、1B 車輪用軸受装置
2 外輪
2b アウター側開口部
2c (インナー側の)外側軌道面
2d (アウター側の)外側軌道面
2h (外輪の)インナー側端面
3 ハブ輪
3a 小径段部
3b 車輪取り付けフランジ
3c 内側軌道面
3g (車輪取付フランジの)アウター側端面
4 内輪
4a 内側軌道面
5 インナー側円錐ころ列
6 アウター側円錐ころ列
7 円錐ころ
10、20、30 アウター側シール部材
31 芯金
32 弾性部材
33 金属環
L0 車輪取付フランジのアウター側端面と外方部材のインナー側端面との間の軸方向長さ
L1 車輪取付フランジのアウター側端面とアウター側円錐ころ列のアウター側端部との間の軸方向長さ
L2 アウター側円錐ころ列の円錐ころ中心とインナー側円錐ころ列の円錐ころ中心との間の軸方向長さ
L3 アウター側円錐ころ列のアウター側端部とインナー側円錐ころ列のインナー側端部との間の軸方向長さ
Pi インナー側円錐ころ列における円錐ころ中心
Po アウター側円錐ころ列における円錐ころ中心