(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/117 20060101AFI20240710BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240710BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240710BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240710BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B60C11/117
B60C11/03 B
B60C5/00 H
B60C11/12 D
B60C11/00 H
(21)【出願番号】P 2020166231
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 耕平
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074357(JP,A)
【文献】特開2016-043818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/117
B60C 11/03
B60C 5/00
B60C 11/12
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部の踏面に、1本以上のトレッド周方向に延びる周方向主溝を有し、
トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部に、複数本のトレッド幅方向に延びる幅方向サイプ、及び、複数本のピン状のサイプを有し、
前記ピン状のサイプは、前記幅方向サイプとは連通せずに、前記幅方向サイプの延長線上に配置され、
前記ピン状のサイプは、トレッド周方向に間隔を置いて配置された1列のみからなり、
前記ピン状のサイプは、前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向中点よりもタイヤ幅方向外側に配置され、
前記幅方向最外側陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有さず、
前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のみに、前記ピン状のサイプが配置されていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部は、車両装着時内側の陸部である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、
前記第1の気室部は、平面視において、トレッド周方向一方側から他方側に向かって溝幅が漸増し、
前記第1の狭窄ネック部は、前記第1の気室部のトレッド周方向一方側の端部に連通している、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、前記踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有する、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
2本以上の前記周方向主溝を有し、
トレッド幅方向他方側において幅方向最外側に位置する前記周方向主溝の溝幅が、他の前記周方向主溝のいずれの溝幅よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1の気室部は、トレッド周方向に沿って延びている、請求項3
又は4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び前記周方向主溝と前記第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、
前記第2の気室部は、トレッド幅方向中央側の中央部と、トレッド幅方向両側の溝壁にそれぞれ隣接する、底上げされた2つの側部と、を有し、
前記中央部は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第1の底上げ部分を有し、
前記2つ側部の各々は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第2の底上げ部分を有する、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第2の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、前記踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有する、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
2本以上の前記周方向主溝を有し、
トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
3本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向他方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び該第2の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、
複数個の前記第1の共鳴器及び複数個の前記第2の共鳴器は、トレッド周方向のいずれの位置においても、トレッド幅方向に見た際に、前記第1の気室部及び前記第2の気室部のいずれか又は両方が存在するように配列されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、排水性を向上させることが望まれる。例えば、特許文献1においては、トレッド幅方向に延びる幅方向サイプの延在領域の一部にピン状のサイプを設け、このピン状のサイプに、タイヤと路面との間の水が入り込むことができるようにして、排水性を向上させている。また、ピン状のサイプを設けることにより、排水性を幅方向サイプで向上させる場合よりも幅方向のエッジ成分が減少するため乗り心地性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、陸部の剛性が低下して操縦安定性等の運動性能が低下してしまう場合があった。また、ピン状のサイプ付近に路面の石等が入り込む石噛みが生じる懸念もあった。
【0005】
そこで、本発明は、排水性及び乗り心地性を確保しつつも、他の運動性能を大きく損なうことがなく、また石噛みを抑制し得る、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド部の踏面に、1本以上のトレッド周方向に延びる周方向主溝を有し、
トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部に、複数本のトレッド幅方向に延びる幅方向サイプ、及び、複数本のピン状のサイプを有し、
前記ピン状のサイプは、前記幅方向サイプとは連通せずに、前記幅方向サイプの延長線上に配置され、
前記ピン状のサイプは、トレッド周方向に間隔を置いて配置された1列のみからなり、
前記ピン状のサイプは、前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向中点よりもタイヤ幅方向外側に配置され、
前記幅方向最外側陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しないことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0007】
ここで、「踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に、路面と接することとなる接地面のトレッド周方向全域をいう。
また、「トレッド端」とは、上記接地面のトレッド幅方向両端をいう。
また、「周方向主溝」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際の溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。「周方向サイプ」とは、トレッド周方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際の溝幅(開口幅)が2mm未満のものをいう。「周方向主溝」や「周方向サイプ」が「トレッド周方向に延びる」とは、トレッド周方向に延びる場合(トレッド周方向に対する傾斜角度0°)の他、トレッド周方向に対して5°以下の傾斜角度で延びる場合も含まれる。
また、後述の「幅方向溝」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際の溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。「幅方向サイプ」とは、トレッド幅方向に延び、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際の溝幅(開口幅)が2mm未満のものをいう。
【0008】
上記の「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(すなわち、上記の「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
【0009】
(2)前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部は、車両装着時内側の陸部である、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
(3)前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のみに、前記ピン状のサイプが配置された、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0011】
(4)2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、
前記第1の気室部は、平面視において、トレッド周方向一方側から他方側に向かって溝幅が漸増し、
前記第1の狭窄ネック部は、前記第1の気室部のトレッド周方向一方側の端部に連通している、上記(1)~(3)のいずれに記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(5)前記第1の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、前記踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有する、上記(4)に記載の空気入りタイヤ。
【0013】
(6)2本以上の前記周方向主溝を有し、
トレッド幅方向他方側において幅方向最外側に位置する前記周方向主溝の溝幅が、他の前記周方向主溝のいずれの溝幅よりも大きい、上記(1)~(5)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0014】
(7)前記第1の気室部は、トレッド周方向に沿って延びている、上記(4)~(6)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0015】
(8)2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び前記周方向主溝と前記第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、
前記第2の気室部は、トレッド幅方向中央側の中央部と、トレッド幅方向両側の溝壁にそれぞれ隣接する、底上げされた2つの側部と、を有し、
前記中央部は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第1の底上げ部分を有し、
前記2つ側部の各々は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第2の底上げ部分を有する、上記(7)に記載の空気入りタイヤ。
【0016】
(9)前記第2の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、前記踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有する、上記(8)に記載の空気入りタイヤ。
【0017】
(10)2本以上の前記周方向主溝を有し、
トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しない、上記(1)~(9)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0018】
(11)2本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、トレッド端と前記周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しない、上記(1)~(10)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0019】
(12)3本以上の前記周方向主溝を有し、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向一方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、
2本の前記周方向主溝間に区画され、前記トレッド幅方向他方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び該第2の中央陸部のタイヤ幅方向外側の前記周方向主溝と前記第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、
複数個の前記第1の共鳴器及び複数個の前記第2の共鳴器は、トレッド周方向のいずれの位置においても、トレッド幅方向に見た際に、前記第1の気室部及び前記第2の気室部のいずれか又は両方が存在するように配列されている、上記(1)~(11)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排水性及び乗り心地性を確保しつつも、他の運動性能を大きく損なうことがなく、また石噛みを抑制し得る、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッド部の踏面を示すトレッド展開図である。
【
図2A】第2の共鳴器及び周方向主溝の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。以下、構成要素の寸法について述べるときは、特に断りにない限り、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際の寸法をいうものとする。
【0023】
本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)の内部構造については、従来と同様の構成とすることができるので説明を省略する。一例としては、一対のビード部にトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたベルトとトレッド部とを備えた構成とすることができる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッド部の踏面を示すトレッド展開図である。
図1に示すように、このタイヤは、トレッド部の踏面1に、1本以上(図示例で3本)のトレッド周方向に延びる周方向主溝2(2a、2b、2c)を有する。
【0025】
そして、トレッド端TEと周方向主溝2との間又は周方向主溝2間に、(図示例で4つの)陸部3(3a、3b、3c、3d)が区画されている。すなわち、トレッド幅方向一方側のトレッド端TEと周方向主溝2aとにより、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部3aが区画されており、また、トレッド幅方向他方側のトレッド端TEと周方向主溝2cとにより、トレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部3dが区画されている。さらに、周方向主溝2a、2b間に、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部3aのトレッド幅方向内側に隣接する、第1の中央陸部3bが区画されており、また、周方向主溝2b、2c間に、トレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部3dのトレッド幅方向内側に隣接する、第2の中央陸部3cが区画されている。
図示例では、タイヤ赤道面CL上に、第2の中央陸部3cが位置しており、周方向主溝2a、2bがトレッド幅方向一方側のトレッド半部に位置し、周方向主溝2cがトレッド幅方向他方側のトレッド半部に位置している。一方で、本発明は、この場合には限られず、例えば、周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に位置していても良い。
図示例では、いずれの陸部3も、リブ状陸部(幅方向溝によって陸部がトレッド周方向に完全に分断されていない陸部)であるが、いずれかの陸部3をブロック状としても良い。なお、本明細書においては、幅方向サイプによって陸部がトレッド周方向に完全に分断されていてもリブ状陸部に含めるものとする。
図示例のタイヤは、上記トレッド幅方向一方側を車両装着時内側とし、上記トレッド幅方向他方側を車両装着時外側とすることができるように構成されている。
なお、周方向主溝2の本数は3本には限定されず、例えば4本とすることもできる。従って、陸部3の個数も、4つには限定されず、例えば5つとすることができる。
【0026】
周方向主溝2の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、10~14mmとすることができ、また、周方向主溝2の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、5~9mmとすることができる。また、トレッド幅方向他方側において幅方向最外側に位置する周方向主溝(図示例では周方向主溝3c)の溝幅が、他の周方向主溝(図示例では周方向主溝3a、3b)のいずれの溝幅よりも大きいことが好ましい。また、図示例では、いずれの周方向主溝2もトレッド周方向に真っすぐ延びているが、トレッド周方向にジグザグ状又は湾曲状又は屈曲状に延びていても良い。
【0027】
陸部3のトレッド幅方向の幅の大小関係は、特には限定されないが、例えば図示のように、第1の中央陸部3bのトレッド幅方向の幅を第2の中央陸部3cのトレッド幅方向の幅よりも小さくすることが好ましい。トレッド幅方向一方側が車両装着時内側である場合、(操縦安定性への寄与の大きい)車両装着時外側の剛性を相対的に高くし、(乗り心地性への寄与の大きい)車両装着時内側の剛性を相対的に低くすることで、効果的に操縦安定性と乗り心地性とを両立させることができるからである。
【0028】
図1に示すように、陸部3aは、複数本のトレッド幅方向に延びる幅方向サイプ4、及び、複数本のピン状のサイプ5を有している。一方で、陸部3aは、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有していない。また、陸部3aは、幅方向溝も有していない。
【0029】
陸部3aは、幅方向サイプ4として、トレッド端TEから周方向主溝2aまで連通する、第1の幅方向サイプ4a、及び、周方向主溝2aからトレッド幅方向外側に延びて、陸部3a内で(図示例では陸部3aの幅方向中心付近で)終端する、第2の幅方向サイプ4b、の2種類の幅方向サイプ4を有している。そして、第1の幅方向サイプ4aと第2の幅方向サイプ4bとがトレッド周方向に交互に配置されている。第1及び第2の幅方向サイプ4a、4bは、特には限定されないが、トレッド幅方向に延び(傾斜角度0°)又はトレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びることができる。また、図示例では、第1及び第2の幅方向サイプ4a、4bは、屈曲した部分を有していないが、屈曲した部分を有することもできる。幅方向サイプ4a、4bのサイプ幅(開口幅)は、特には限定されないが、0.5~2mmとすることができ、幅方向サイプ4a、4bのサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、3~9mmとすることができる。なお、第1の幅方向サイプ4aは、必ずしも有していなくても良い。
【0030】
図4は、ピン状のサイプの平面図及び断面図である。
図4に示すように、ピン状のサイプ5は、開口部が平面視で円形の小径の孔である。孔の径(開口部の最大径)は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に、壁面同士が接触しない程度の大きさである。具体的には、特には限定されないが、孔の径を2~6mmとすることができる。孔の径を2mm以上とすることにより排水性を向上させる効果をより発揮し、一方で、孔の径を6mm以下とすることにより陸部の剛性を極力低下させないようにすることができる。孔の深さは、特には限定されないが、3~9mmとすることができる。孔の深さを3mm以上とすることにより排水性を向上させる効果をより発揮し、一方で、孔の深さを9mm以下とすることにより陸部の剛性を極力低下させないようにすることができる。ピン状のサイプ5は、開口部が平面視で円形であることがサイプ5でのクラック発生を抑制するために好適であるが、楕円形とすることもでき、また多角形状とすることもできる。また、孔の径は、孔の深さ方向に一定とすることができ、あるいは、開口部側からサイプ底側に向かって変化(例えば漸減又は漸増)することもできる。例えば、サイプ底(好ましくはサイプ深さの80%~100%)の位置に、拡径部(好ましくはサイプの開口部の径の1.5~3倍の最大径を有する)を設けることもできる。また、ピン状のサイプ5のサイプ底は、サイプ底でのクラック発生を抑制するために丸みを帯びさせることもできる。
図4に示す例では、開口部から溝深さの半分程度まで径の大きさが一定であり、その後サイプ底に向かって径の大きさが漸減している。
【0031】
また、ピン状のサイプ5は、幅方向サイプ4bとは連通せずに、幅方向サイプ4bの延長線上に配置されている。「延長線」は、幅方向サイプのトレッド幅方向外側端と、該外側端から幅方向サイプのペリフェリに沿って1mm内側の点と、を結んだ直線とするものとし、「延長線上に配置」とは、ピン状のサイプの部分と該直線とが交わり、あるいは、ピン状のサイプの部分と該直線との最短距離が0.5m以下である場合も含まれる。さらに、ピン状のサイプ5は、トレッド周方向に間隔を置いて配置された1列のみからなる(図示例では、複数本のピン状のサイプ5は、トレッド幅方向同位置にトレッド周方向に略等間隔に配置されている)。また、ピン状のサイプ5は、幅方向最外側陸部3aのトレッド幅方向中点よりもタイヤ幅方向外側に配置されている。ピン状のサイプ5は、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部3aのみに配置されており、他の陸部3b、3c、3dには配置されていない。
【0032】
次に、第1の中央陸部3bには、該第1の中央陸部内3bで終端する第1の気室部6a及び該第1の中央陸部3bのタイヤ幅方向外側の周方向主溝2aと第1の気室部6aとを連通する第1の狭窄ネック部6bを有する第1の共鳴器6がトレッド周方向に複数個配置されている。本例では、第1の共鳴器6は、ヘルムホルツ型の共鳴器である。
【0033】
本例において、第1の気室部6aは、トレッド周方向一方側(図示上側)からトレッド周方向他方側(図示下側)に向かって、トレッド周方向に沿って延びている。より具体的には、第1の気室部6aは、トレッド周方向に投影したトレッド幅方向の長さよりも、トレッド幅方向に投影したトレッド周方向の長さが長い形状を有しており、例えば上記トレッド周方向長さ/上記トレッド幅方向長さの比を2~4とすることができる。第1の気室部6aの溝体積は、第1の狭窄ネック部6bの溝体積よりも大きい。具体的な体積は、第1の共鳴器6が低減することを所期する音の周波数帯に応じて適宜調整することができる。本例では、第1の気室部6aは、平面視において、トレッド周方向一方側から他方側に向かって溝幅が漸増しており、略三角形状の形状をなしている。なお、第1の気室部6aの形状は、この形状に限定されず、共鳴器としての機能が発揮されるような様々な形状とすることができる。
【0034】
図示例では、第1の狭窄ネック部6bは、トレッド端TE側の周方向主溝2aに連通しているが、タイヤ赤道面CL側の周方向主溝2bに連通することもできる。また、第1の狭窄ネック部6bは、本例では、第1の気室部6aのトレッド周方向一方側の端部に連通している。代わりに、第1の狭窄ネック部6bは、第1の気室部6aのトレッド周方向他方側の端部に連通することもできる。狭窄ネック部6bの溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、例えば0.4~1.2mmであることが好ましく、溝幅が0.4mm以上であれば、接地時に第1の狭窄ネック部6aが閉じないようにして、第1の共鳴器6の機能を発揮することができ、一方で、溝幅が1.2mm以下であれば、第1の狭窄ネック部6b周辺の陸部剛性を確保して、偏摩耗を抑制することができる。同様の理由により、第1の狭窄ネック部6の溝幅は、0.5~0.7mmであることがより好ましい。また、第1の狭窄ネック部6bは、溝底側に、溝幅が、踏面1への開口部での溝幅(開口幅)より大きくなっている拡径部を有する。これにより、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。一方で、第1の狭窄ネック部6bは、溝底側に拡径部を有しないこともできる。拡径部は、溝深さの80%~100%の位置に設けることが好ましく、また、開口幅の1.5~3倍の最大径を有することが好ましい。
【0035】
また、第1の中央陸部3bには、タイヤ赤道面CL側の周方向主溝2bからトレッド幅方向内側に延びて第1の中央陸部3b内で終端する、複数本の第3の幅方向サイプ7も(トレッド周方向に間隔を置いて)形成されている。これにより、幅方向エッジ成分を多くしてトラクション性能等の運動性能を向上させることができる。なお、第3の幅方向サイプ7は、第1の共鳴器6とは連通していない。第3の幅方向サイプ7のサイプ幅(開口幅)は、特には限定されないが、0.2~1mmとすることができ、第3の幅方向サイプ7のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、2~6mmとすることができる。第1の中央陸部3bは、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有していない。また、第1の中央陸部3bは、幅方向溝も有していない。
【0036】
次に、第2の中央陸部3cに、該第2の中央陸部3c内で終端する第2の気室部8a及び周方向主溝2b(2c)と第2の気室部8aとを連通する(本例で1つの第2の気室部8bに対して各2本の)第2の狭窄ネック部8b(8c)を有する第2の共鳴器8がトレッド周方向に複数個配置されている。本例では、第2の共鳴器8は、ヘルムホルツ型の共鳴器である。図示例では、第2の共鳴器8は、2種類の狭窄ネック部を有し、一方の狭窄ネック部8bが、タイヤ赤道面CL側の周方向主溝2bに連通し、他方の狭窄ネック部8cが、トレッド端TE側の周方向主溝2cに連通している。これにより、第2の共鳴器8は、周方向主溝2bで発生する音及び周方向主溝2cで発生する音の両方に対する低減効果を発揮することができる。一方で、いずれかの周方向主溝のみに狭窄ネック部を連通させても良い(この場合、例えば1つの気室部に対して1本の狭窄ネックを設けることができる)。第2の中央陸部3cは、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有していない。また、第2の中央陸部3cは、幅方向溝も有していない。
【0037】
図2Aは、
図1における第2の共鳴器及び周方向主溝を抜き出して示す拡大図である。
図2Aに示すように、第2の気室部8aは、トレッド幅方向中央側の中央部8a1と、トレッド幅方向両側の溝壁にそれぞれ隣接する、底上げされた2つの側部8a2、8a3と、を有している。図示例では、中央部8a1は、トレッド周方向一方側の端部からトレッド周方向の中央部側に向かって溝幅が漸増し、且つ、トレッド周方向の中央部側からトレッド周方向他方側の端部に向かって溝幅が漸減している。また、図示例では、周方向主溝2c側の側部8a2は、中央部8a1のトレッド周方向一方側の端部側から中央部8a1の中央付近までトレッド周方向に延びている。また、側部8a2の溝幅は、トレッド周方向一方側から中央部8a1の中央付近まで漸増している。また、図示例では、周方向主溝2b側の側部8a3は、中央部8a1のトレッド周方向他方側の端部側から中央部8a1の中央付近までトレッド周方向に延びている。また、側部8a3の溝幅は、トレッド周方向他方側から中央部8a1の中央付近まで漸増している。側部8a2と側部8a3とは、トレッド幅方向に投影した際に、互いに重なる部分を有するように配置されている。なお、中央部及び側部については、後に断面図を用いて別途詳細に説明する。
第2の気室部8aは、トレッド周方向に投影したトレッド幅方向の長さよりも、トレッド幅方向に投影したトレッド周方向の長さが長い形状を有しており、例えば上記トレッド周方向長さ/上記トレッド幅方向長さの比を2~4とすることができる。第2の気室部8aの溝体積は、第2の狭窄ネック部8b、8cの溝体積よりも大きい。具体的な体積は、第2の共鳴器8が低減することを所期する音の周波数帯に応じて適宜調整することができる。なお、第2の気室部8aの形状は、この形状に限定されず、共鳴器としての機能が発揮されるような様々な形状とすることができる。
【0038】
図示例では、第2の狭窄ネック部8bは、第2の気室部8aのトレッド周方向一方側の端部に連通し、第2の狭窄ネック部8cは、第2の気室部8aのトレッド周方向他方側の端部に連通している。一方で、第2の狭窄ネック部8bは、第2の気室部8aのトレッド周方向他方側の端部に連通し、第2の狭窄ネック部8cは、第2の気室部8aのトレッド周方向一方側の端部に連通することもできる。あるいは、第2の狭窄ネック部8b、8cの両方が第2の気室部8aのトレッド周方向の一方側の端部に連通することもでき、また、第2の狭窄ネック部8b、8cの両方が第2の気室部8aのトレッド周方向の他方側の端部に連通することもできる。狭窄ネック部8b、8cの溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、例えば0.4~1.2mmであることが好ましく、溝幅が0.4mm以上であれば、接地時に第2の狭窄ネック部8b、8cが閉じないようにして、第2の共鳴器8の機能を発揮することができ、一方で、溝幅が1.2mm以下であれば、第2の狭窄ネック部8b、8c周辺の陸部剛性を確保して、偏摩耗を抑制することができる。同様の理由により、第2の狭窄ネック部8b、8cの溝幅は、0.5~0.7mmであることがより好ましい。
図2Bは、第2の狭窄ネック部の断面図である。
図2Bに示すように、第2の狭窄ネック部8b、8cは、溝底側に、溝幅が、踏面1への開口部での溝幅(開口幅)より大きくなっている拡径部を有する。これにより、摩耗進展時の排水性を向上させることができる。第2の狭窄ネック部8b、8cは、溝底側に拡径部を有しないこともできる。拡径部は、溝深さの80%~100%の位置に設けることが好ましく、また、開口幅の1.5~3倍の最大径を有することが好ましい。
【0039】
図3Aは、第2の気室部を示す拡大図であり、
図3Bは、第2の気室部を示す断面図である。
図3A、
図3Bに示すように、中央部8a1は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第1の底上げ部分を有している。本例では、中央部8a1の溝幅中心において、トレッド周方向中央側にトレッド周方向端部側よりも底上げされた第1の底上げ部分を有している(b-b断面図参照)。なお、本例では、底上げはテーパ部分を形成して滑らかに底上げされている。従って、b-b断面図に示すように、第1の底上げ部分は、2つの上記テーパ部分と、それらに挟まれた底上げされた溝底一定部分と、からなる。一方で、中央部8a1の溝壁は、第2の気室部8aの端部側から中央部側に向かって溝深さが漸減している(c―c断面図、d-d断面図、e―e断面図参照)。
次に、2つ側部8a2、8a3の各々は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第2の底上げ部分を有している。本例では、第2の気室部の端部側から中央部側に向かって溝深さが漸減している(a―a断面図参照)。なお、側部8a2、8a3での中央部8a1に対する底上げの高さ(底部を起点とする)は、トレッド周方向に略一定である(f-f断面図、g-g断面図、h-h断面図参照)。
第1の底上げ部分及び第2の底上げ部分のそれぞれにより、陸部の剛性を高めることができる。また、当該第1の底上げ部分及び第2の底上げ部分が形成された箇所での石噛みを抑制することもできる。
【0040】
また、第2の中央陸部3cには、周方向主溝2bからトレッド幅方向外側に延びて第2の中央陸部3c内で終端する、複数本の第4の幅方向サイプ9、及び、トレッド端TE側の周方向主溝2cからトレッド幅方向内側に延びて第2の中央陸部3c内で終端する、複数本の第5の幅方向サイプ10も(トレッド周方向に間隔を置いて)形成されている。これにより、幅方向エッジ成分を多くしてトラクション性能等の運動性能を向上させることができる。なお、第4及び第5の幅方向サイプ9、10は、第2の共鳴器8とは連通していない。第4及び第5の幅方向サイプ9、10のサイプ幅(開口幅)は、特には限定されないが、0.5~3mmとすることができ、第4及び第5の幅方向サイプ9、10のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、4~8mmとすることができる。第2の中央陸部3cは、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有していない。また、第2の中央陸部3cは、幅方向溝も有していない。
【0041】
次に、陸部3dは、複数本のトレッド幅方向に延びる幅方向サイプ11を有している。一方で、陸部3dは、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有していない。また、陸部3dは、幅方向溝も有していない。
本例では、陸部3dは、幅方向サイプ11として、トレッド端TEから周方向主溝2dまで連通する、第6の幅方向サイプ11a、及び、周方向主溝2dからトレッド幅方向外側に延びて、陸部3d内で(図示例では陸部3dの幅方向中心を超えて)終端する、第7の幅方向サイプ11b、の2種類の幅方向サイプ11を有している。そして、第6の幅方向サイプ11aと第7の幅方向サイプ11bとがトレッド周方向に交互に配置されている。
第6及び第7の幅方向サイプ11a、11bは、特には限定されないが、トレッド幅方向に延び(傾斜角度0°)又はトレッド幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延びることができる。また、図示例では、第6及び第7の幅方向サイプ11a、11bは、屈曲した部分を有していないが、屈曲した部分を有することもできる。第6及び第7の幅方向サイプ11a、11bのサイプ幅(開口幅)は、特には限定されないが、0.2~3mmとすることができ、第6及び第7の幅方向サイプ11a、11bのサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、3~8mmとすることができる。
【0042】
次に、陸部3間の要素同士の配置関係についても説明する。
まず、複数個の第1の共鳴器6及び複数個の第2の共鳴器8は、トレッド周方向のいずれの位置においても、トレッド幅方向に見た際に、第1の気室部6a及び第2の気室部6bのいずれか又は両方が存在するように配列されている。すなわち、任意のトレッド周方向位置でトレッド幅方向に仮想線を引くと、第1の気室部6aのみと交わるか、第2の気室部8aのみと交わるか、両方に交わるかのいずれかとなっている。これにより、タイヤの回転によって、トレッド幅方向に気室部が2個ある状態と0個の状態とが発生してしまい剛性段差による乗り心地性の低下や運動性能の低下や偏摩耗等が生じてしまうのを抑制することができる。特に、共鳴器は消音効果を十分に発揮させるためには、トレッド周方向に十分な個数を配置することが望ましいが、そうするとトレッド幅方向に見て共鳴器が2個配置された周方向位置が多く発生してしまう。このため、上記の構成とすることで、十分な静音性を達成しつつも、乗り心地性の低下や運動性能の低下や偏摩耗の発生等を抑制することができる。
【0043】
また、陸部3aの第2の幅方向サイプ4bと陸部3bの第1の狭窄ネック部6bとが互いに延長線上にある。これにより、排水性を効率良く向上させることができる。
また、陸部3a~3dには、周方向サイプが形成されておらず、一方で、上述したように、陸部3bの第1の共鳴器6の第1の気室部6a及び陸部3cの第2の共鳴器8の第2の気室部8aは、トレッド周方向に沿って延びている。これにより、陸部3a~3dの剛性を確保しつつも、トレッド周方向のエッジ成分を確保してコーナリング時の走行性能等を高めることができる。
また、陸部3a~3dには、幅方向溝が配置されておらず、一方で、陸部3aは、幅方向サイプ4を有し、陸部3bは、幅方向サイプ7を有し、陸部3cは、幅方向サイプ9、10を有し、陸部3dは、幅方向サイプ11を有している。これにより、陸部3a~3dの剛性を確保しつつも、トレッド幅方向のエッジ成分を確保してトラクション性能等を向上させることができる。
また、本例では、陸部3aの幅方向サイプ4は、トレッド周方向一方側に凸に湾曲しているが、陸部3dの幅方向サイプ11は、トレッド周方向他方側に凸に湾曲している。
【0044】
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
本実施形態の空気入りタイヤは、まず、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部3aに、複数本のピン状のサイプ5を有している。これにより、幅方向サイプを設ける場合と比べて、幅方向のエッジ成分を減少させて乗り心地性を向上させつつもピン状のサイプ5の孔の吸水により排水性を向上させることができる。
そして、本実施形態では、ピン状のサイプ5は、トレッド周方向に間隔を置いて配置された1列のみからなることから、2列以上設ける場合と比べて陸部の面積の減少を抑えつつ、また、2列のピン状サイプの間に挟まれるような領域が形成されないため、陸部全体の剛性の減少を抑え、また、局所的に剛性が低下する領域が形成されないようにすることができる。また、ピン状のサイプ5は、幅方向サイプ4とは連通しておらず、また、ピン状のサイプ5が、幅方向最外側陸部3aのトレッド幅方向中点よりもタイヤ幅方向外側に配置されていることから、これらが連通すること、あるいは、これらの距離が近いことによる剛性の低下を生じさせなくて済む。また、これらが連通しないため石噛みを抑制することもできる。さらに、ピン状のサイプ5は、幅方向サイプ4bの延長線上に配置されているため、幅方向サイプ4aと幅方向サイプ4bとの間のトレッド周方向領域には孔が配置されないようにして、該周方向領域の陸部剛性を確保することができる。また、幅方向最外側陸部3aが、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しないことにより、陸部3aの面積を確保しつつ、陸部3aがトレッド幅方向に分断されないようにして、陸部3aの剛性を高めることができる。このように、本実施形態によれば、陸部3aの剛性が確保されて、操縦安定性等の運動性能が低下しないようにすることもでき、また、石噛みを抑制することもできる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、排水性及び乗り心地性を確保しつつも、(操縦安定性等の)他の運動性能を大きく損なうことがなく、また石噛みを抑制することもできる。
【0045】
ここで、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部は、車両装着時内側の陸部であることが好ましい。乗り心地性への寄与が相対的に大きい車両装着時内側の幅方向最外側陸部でピン状のサイプにより排水性を確保することにより、幅方向サイプで排水性を確保する場合と比べて、幅方向エッジ成分による乗り心地性の低下を、効率的に抑制することができるからである。
【0046】
また、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部のみに、ピン状のサイプが配置されていることが好ましい。他の陸部でのピン状のサイプの形成による陸部の剛性の低下を避けて操縦安定性等の運動性能を確保し、また、他の陸部のピン状サイプで石噛みが発生するのを避けることができるからである。特に、車両装着時外側の幅方向最外側陸部は、操縦安定性への寄与が相対的に大きいため、該陸部で剛性の低下を避けることは効率的である。また、幅方向最外側の両陸部以外の陸部では、例えば本実施形態のように共鳴器が配置される場合も多く、陸部の面積が減少しがちであるため、このような陸部の剛性の低下を避けることも効率的である。
【0047】
また、上記の実施形態のように、2本の周方向主溝間に区画され、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の周方向主溝と第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、第1の気室部は、平面視において、トレッド周方向一方側から他方側に向かって溝幅が漸増し、第1の狭窄ネック部は、前記第1の気室部のトレッド周方向一方側の端部に連通していることが好ましい。この構成によれば、第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の周方向主溝で発生する音を共鳴器により低減することができる。その際に、第1の狭窄ネック部が、気室部の溝幅が小さい側の端部と連通することにより、該周方向主溝と第1の狭窄ネック部と第1の気室部とが連通することによる局所的な剛性の低下をなるべく抑えることができる。
【0048】
さらに、第1の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有することも好ましい。摩耗進展時の排水性を向上させることができるからである。
【0049】
また、2本以上の周方向主溝を有し、トレッド幅方向他方側において幅方向最外側に位置する周方向主溝の溝幅が、他の周方向主溝のいずれの溝幅よりも大きいことが好ましい。
【0050】
また、第1の気室部は、トレッド周方向に沿って延びていることが好ましい。幅方向のエッジ成分が増大しないようにしつつ、タイヤの回転時にトレッド周方向の間隔が長くなって、乗り心地性の低下をより一層抑制することができるからである。特に、いずれかの陸部(上記実施形態ではすべての陸部)が周方向サイプを有しない場合においては、周方向のエッジ成分が減少しがちとなるが、上記の構成によれば、第1の気室部により周方向のエッジ成分を確保して、コーナリング時の操縦安定性等の運動性能を確保することができるからである。
【0051】
また、2本の周方向主溝間に区画され、トレッド端と周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び周方向主溝と第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、第2の気室部は、トレッド幅方向中央側の中央部と、トレッド幅方向両側の溝壁にそれぞれ隣接する、底上げされた2つの側部と、を有し、中央部は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第1の底上げ部分を有し、2つ側部の各々は、トレッド周方向中央側にトレッド幅方向端部側よりも底上げされた第2の底上げ部分を有することが好ましい。第1の底上げ部分及び第2の底上げ部分のそれぞれにより、陸部の剛性を高めることができ、また、当該第1の底上げ部分及び第2の底上げ部分が形成された箇所での石噛みを抑制することもできるからである。
【0052】
また、第2の狭窄ネック部は、溝底側に、溝幅が、踏面への開口部での溝幅より大きくなっている拡径部を有することも好ましい。摩耗進展時の排水性を向上させることができるからである。
【0053】
さらに、トレッド端と周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しないことが好ましい。周方向サイプの形成による該陸部の剛性の低下を避けることができるからである。
【0054】
また、2本の周方向主溝間に区画され、トレッド端と周方向主溝とにより区画されるトレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に隣接する、第2の中央陸部が、トレッド周方向に延びる周方向サイプを有しないことが好ましい。周方向サイプの形成による該陸部の剛性の低下を避けることができるからである。
【0055】
また、上記の実施形態のように、2本の周方向主溝間に区画され、トレッド幅方向一方側の幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第1の中央陸部に、該第1の中央陸部内で終端する第1の気室部及び該第1の中央陸部のタイヤ幅方向外側の周方向主溝と第1の気室部とを連通する第1の狭窄ネック部を有する第1の共鳴器が複数個配置され、
2本の周方向主溝間に区画され、トレッド幅方向他方側の前記幅方向最外側陸部のトレッド幅方向内側に隣接する第2の中央陸部に、該第2の中央陸部内で終端する第2の気室部及び該第2の中央陸部のタイヤ幅方向外側の周方向主溝と第2の気室部とを連通する第2の狭窄ネック部を有する第2の共鳴器が複数個配置され、
複数個の第1の共鳴器及び複数個の第2の共鳴器は、トレッド周方向のいずれの位置においても、トレッド幅方向に見た際に、第1の気室部及び第2の気室部のいずれか又は両方が存在するように配列されていることが好ましい。
上述したように、タイヤの回転によって、トレッド幅方向に気室部が2個ある状態と0個の状態とが発生してしまい剛性段差による乗り心地性の低下や運動性能の低下や偏摩耗等が生じてしまうのを抑制することができるからである(上記の構成によれば、トレッド幅方向に気室部が2個ある状態又は1個ある状態となる)。特に、共鳴器は消音効果を十分に発揮させるためには、トレッド周方向に十分な個数を配置することが望ましいが、そうするとトレッド幅方向に見て共鳴器が2個配置された周方向位置が多く発生してしまう。このため、上記の構成とすることで、十分な静音性を達成しつつも、乗り心地性の低下や運動性能の低下や偏摩耗の発生等を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。特に、本発明では、トレッド幅方向の一方側の幅方向最外側陸部以外の陸部については、特に限定されず様々な構成とすることができる。例えば、本実施形態では、2本の周方向主溝に区画される第1の中央陸部及び第2の中央陸部のいずれも共鳴器が配置されているが、2本の周方向主溝に区画される陸部のいずれかが共鳴器を有していなくても良い。また、例えば、トレッド幅方向他方側の幅方向最外側陸部に、トレッド端と連通する幅方向溝を設けても良い。また、トレッド幅方向の一方側の幅方向最外側陸部についても、上記の例では、トレッド端TEから周方向主溝2aまで連通する幅方向サイプ4aを有しているが、幅方向サイプ4aを陸部3a内で終端するものとすることもでき、あるいは、幅方向サイプ4aを設けないこともできる。その他、種々の変形や変更が可能である。
また、本発明の空気入りタイヤは、乗用車用の空気入りタイヤとして好適であり、特にミニバン用の空気入りタイヤとして好適である。
【符号の説明】
【0057】
1:踏面、 2、2a、2b、2c:周方向主溝、
3、3a、3b、3c、3d:陸部、
4、4a、4b:幅方向サイプ、 5:ピン状のサイプ、
6:第1の共鳴器、 6a:第1の気室部、 6b:第1の狭窄ネック部、
7:幅方向サイプ、
8:第2の共鳴器、 8a:第2の気室部、 8b:第2の狭窄ネック部、
9:幅方向サイプ、 10:幅方向サイプ、 11:幅方向サイプ、
CL:タイヤ赤道面、 TE:トレッド端