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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】用紙加熱装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240710BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/16 185
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020179905
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070695
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨依 稔
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-109373(JP,U)
【文献】特開2012-155249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部および前記発熱部の両端にそれぞれ配置された支持部を有する熱源と、
前記発熱部が内側に配置され、前記各支持部が外側に配置される円筒状の加熱部材と、
互いに対向して配置される側面部、および前記側面部を連結する連結部を有し、前記加熱部材と前記熱源とを支持するフレームと、
前記フレームに取り外し可能に係止され、前記フレームの外側に設けられる断熱性のカバー部材とを備え、
前記フレームは、前記連結部が前記加熱部材の上方を覆うように配置され、
前記カバー部材の内側には、それぞれ区画されて配設されるとともに、前記連結部側に向かって開放された複数の保熱空間が設けられ
複数の前記保熱空間は、前記支持部の上方に配設される第1空間と、前記連結部の上方に配設される第2空間とを含むことを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項2】
請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記第1空間と前記第2空間は分離して設けられていることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の用紙加熱装置において、
前記カバー部材は、前記第1空間を形成する熱源端対向壁と第1閉塞壁とを有し、
前記熱源端対向壁は、前記支持部の端部に対応する位置で、前記側面部と沿う方向に延設され、
前記第1閉塞壁は、前記熱源端対向壁に接続して設けられ、前記支持部の上方を取り囲むように延設されたことを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項4】
請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記フレームは、前記支持部を支持する熱源ホルダを有し、
前記熱源端対向壁は、前記熱源ホルダの前記発熱部と反対側に、前記熱源ホルダと対向するように配設されていることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項5】
請求項のいずれか1つの請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記カバー部材は、前記加熱部材の長手方向に沿って延びる第2閉塞壁と、前記第2閉塞壁の両端部に接続された側壁部とを有し、
前記第2閉塞壁は前記連結部側の辺縁部が前記連結部との対向位置まで延設されていることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項6】
請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記第2閉塞壁には、前記連結部に向かって開放された複数の切欠部が設けられていることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項7】
請求項またはに記載の用紙加熱装置において、
前記連結部には用紙を搬送方向に案内する用紙搬送ガイドが取り付けられ、
前記第2空間は、前記用紙搬送ガイドと前記連結部との取付部の上部空間を含み、前記長手方向に沿って配設されていることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項8】
請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記第2空間は前記長手方向に沿って複数並列され、前記カバー部材は、前記複数の第2空間にまたがって傾斜して設けられ当該カバー部材の外面を構成する傾斜部を有することを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1つの請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記カバー部材は、前記連結部の上方に配置される第1カバー部材と、前記フレームに対して前記第1カバー部材が配置される側と反対側に設けられる第2カバー部材とを備えることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項10】
請求項に記載の用紙加熱装置において、
前記側面部に着脱可能に取り付けられる仕切部材を有し、
前記仕切部材は、前記側面部と前記第1カバー部材および第2カバー部材とで囲われた空間内を仕切る仕切壁部と、前記仕切壁部と反対側にセンサ取付部とを備えることを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項11】
請求項10に記載の用紙加熱装置において、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは、前記センサ取付部と連通する複数の連通口をそれぞれ有することを特徴とする用紙加熱装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つの請求項に記載の用紙加熱装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙加熱装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成処理によって用紙に画像を形成する複写機やプリンタ等の画像形成装置として、熱ローラ定着方式の定着装置を備えたものが広く用いられている。熱ローラ定着方式の定着装置は、加熱ローラと、その加熱ローラに圧接される加圧ローラとを有し、加熱ローラと加圧ローラとの両方、あるいはいずれか一方の内部に配設されたハロゲンヒータ等の熱源により前記ローラ対が所定の定着温度に加熱される。そして、加熱ローラと加圧ローラの圧接箇所により形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された用紙を通過させ、熱と圧接力により未定着トナー画像のトナー粉末を加熱および融解して用紙に定着させる。
【0003】
この種の画像形成装置において、前記の熱源は、画像形成処理のたびに通電されて、処理が終了すると通電を停止するよう制御されている。そのため、次に画像形成処理を行う際には、前記ローラ対を所定の定着温度まで再び加熱するのに要する時間、すなわちウォームアップタイムが長くなる傾向にあるという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、定着装置の上面に断熱カバーを設けて、加熱ローラに備えられた発熱ランプの一方の端部を、プラスチックキャップを介して保持させ、他方の端部をカバー部材により固定して、発熱ランプの端部の断熱を行うようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平2-109373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の装置では、断熱カバーだけでは保熱効果が低く、そのためにさらにカバー部材等で覆った構成とされており、その結果、部品点数が増加してコストが嵩むとともに装置の大型化を招くといった問題がある。また、部品点数が多いことで、取り付けおよび取り外し作業が困難になるという問題もある。
【0007】
近年では、省エネ性能向上への要望がより一層高まっており、装置外への熱流出と装置内の熱損失とを防いで、再加熱に要する消費電力をさらに低減化することが求められている。そのような事情を考慮すれば、前記特許文献1のような構成では保熱効果が十分であるとはいえず、ウォームアップタイムが長くなってしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、取り付けおよび取り外し作業が容易でメンテナンス性に優れ、少ない部品構成で保熱効果を高めて加熱効率を向上させることのできる用紙加熱装置およびその用紙加熱装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、発熱部および前記発熱部の両端にそれぞれ配置された支持部を有する熱源と、前記発熱部が内側に配置され、前記各支持部が外側に配置される円筒状の加熱部材と、互いに対向して配置される側面部、および前記側面部を連結する連結部を有し、前記加熱部材と前記熱源とを支持するフレームと、前記フレームに取り外し可能に係止され、前記フレームの外側に設けられる断熱性のカバー部材とを備え、前記フレームは、前記連結部が前記加熱部材の上方を覆うように配置され、前記カバー部材の内側には、それぞれ区画されて配設されるとともに、前記連結部側に向かって開放された複数の保熱空間が設けられていることを特徴としている。
【0010】
前記構成の用紙加熱装置において、前記複数の保熱空間は、前記支持部の上方に配設される第1空間と、前記連結部の上方に配設される第2空間とを含むことが好ましい。また、前記第1空間と前記第2空間は分離して設けられることが好ましい。このような特定事項により、前記加熱部材に備えらえる熱源の上方で、第1空間と第2空間とを形成して保熱し、装置外への熱流出と装置内での熱損失とを防ぐことが可能となる。
【0011】
また、前記構成の用紙加熱装置を備える画像形成装置も本発明の技術的思想の範疇である。これにより、前記加熱部材の周囲で保熱性を高めて、再加熱に要する消費電力を低減化することが可能となり、画像形成装置の省エネ性能をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、画像形成装置において取り付けおよび取り外し作業が容易でメンテナンス性に優れる用紙加熱装置を備えさせて、保熱効果を高めて加熱効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図2】前記画像形成装置における用紙加熱装置および用紙搬送路を示す断面図である。
図3】前記用紙加熱装置を示す斜視図である。
図4】前記用紙加熱装置における定着フレームの取付構造を示す説明図である。
図5】前記定着フレームと用紙搬送ガイドとの取付構造を示す説明図ある。
図6】前記用紙加熱装置におけるカバー部材の取付構造を示す説明図である
図7】前記カバー部材の内側を下方から見て示す斜視図である。
図8】前記用紙加熱装置を示す図2におけるB-B断面図である。
図9】前記用紙加熱装置を示す図2におけるC-C断面図である。
図10】前記カバー部材を一部破断して内部構造を示す斜視図である。
図11】前記定着フレームと前記カバー部材とを一部破断して内部構造を示す斜視図である。
図12】前記カバー部材の内側に設けられる仕切部材を示す斜視図である。
図13】前記仕切部材の取付構造を示す説明図である。
図14】前記仕切部材の外側の空気の流れを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る用紙加熱装置10および画像形成装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面図である。
【0016】
画像形成装置1は、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能等を有する複合機であり、画像読取装置によって読み取られた原稿の画像を外部に送信し(スキャナ機能に相当する)、また、読み取られた原稿の画像または外部から受信した画像をカラーもしくは単色で用紙に画像形成する(複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能に相当する)。
【0017】
画像読取部18の上側には、画像読取部18に対して開閉自在に支持された原稿搬送部(ADF)20が設けられている。原稿搬送部20では、画像読取部18の原稿載置台19を開放して原稿を手置きすることができる。また、原稿搬送部20は、載置された原稿を自動で搬送する。画像読取部18は、載置された原稿または原稿搬送部20から搬送された原稿を読み取って画像データを生成する。
【0018】
画像形成装置1は、光走査装置11、現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、帯電器15、中間転写ベルト21、定着装置40、用紙搬送路31、給紙部17、排紙トレイ37等を備えている。
【0019】
画像形成装置1では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像形成装置1には、4種類のトナー像を形成するための現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、および帯電器15が4つずつ設けられて、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応するよう、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0020】
ドラムクリーニング装置14は、感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。光走査装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。このような一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。
【0021】
感光体ドラム13の上側には、中間転写ベルト21を介して中間転写ローラ16が配置されている。中間転写ベルト21はトナー像が形成される像担持体であり、転写駆動ローラ22および転写従動ローラ23に張架されて矢符Cの方向へ回転(周回移動)する。各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が転写(1次転写)されて重ね合わされることで、中間転写ベルト21の表面にはカラーのトナー像が形成される。
【0022】
2次転写部25の転写ローラ26は、中間転写ベルト21との間にニップ域(2次転写位置)を形成しており、用紙搬送路31を通じて搬送された用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写されて定着装置40に搬送される。中間転写ベルト21上に残ったトナー等はベルトクリーニング装置24によって回収される。
【0023】
定着ローラ41および加熱ローラ42には、定着ベルト45(後述する図2参照)が懸架されている。定着装置40では、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、用紙を定着ベルト45と加圧ローラ44との間に挟み込んで搬送する。
【0024】
給紙部17は、画像形成に使用する用紙を収容しており、光走査装置11の下側に設けられている。用紙は、用紙ピックアップローラ33によって給紙部17から引き出されて、用紙搬送路31を通じて搬送され、転写ローラ26や定着ローラ41等を経由して、排紙ローラ36を介して排紙トレイ37へ搬出される。用紙搬送路31には、用紙を一旦停止させて、用紙の先端を揃えた後、中間転写ベルト21と転写ローラ26との間のニップ域でのカラーのトナー像の転写タイミングに合わせて、用紙の搬送を開始する用紙レジストローラ35、用紙の搬送を促す搬送ローラ34、および排紙ローラ36が配置されている。
【0025】
用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ36から用紙反転経路32へと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙を用紙レジストローラ35へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ37へと搬出する。
【0026】
(用紙加熱装置)
次に、画像形成装置1に設けられる用紙加熱装置10について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る用紙加熱装置10を示す断面図であり、図3は、用紙加熱装置10を示す斜視図である。なお、説明の便宜上、図中の定着ローラ41の回転軸に沿う方向を軸方向Xとして示す。また、図1に示したように、画像形成装置1を正面から見て軸方向Xに交差する左右方向(幅方向)Yについて左側Y1および右側Y2とし、軸方向Xに交差する高さ方向Zについて上側Z1および下側Z2として説明するが、これによって画像形成装置1の使用方向を限定するものではない。
【0028】
用紙加熱装置10は、画像形成装置1の用紙搬送路31に沿って設けられ、定着装置40の加熱ローラ(加熱部材)42を中心として加熱ローラ42の周囲に組み込まれている。図2に示すように、用紙加熱装置10は、定着装置40の定着ローラ41、加熱ローラ42、加圧ローラ44、および定着ベルト45を含み、加熱ローラ42の上方を覆う定着フレーム60と、定着フレーム60の外側のカバー部材50との間に、区画された複数の保熱空間を設けて装置外への熱流出と装置内の熱損失の低減化を図るものである。
【0029】
加熱ローラ42には、定着ローラ41とともに定着ベルト45が懸架されており、定着ベルト45を介して、加熱ローラ42の熱を用紙に伝え、定着ローラ41とこれに圧接する加圧ローラ44とで用紙を挟持して、用紙に形成されたトナー像を定着させる。定着ローラ41は、例えば、図示しない駆動部に接続された円柱状のローラであって、ステンレス鋼で形成された芯金と、芯金の周囲にシリコンスポンジゴム等の耐熱性弾性部材で形成された弾性層とを備えている。
【0030】
加熱ローラ42は、熱源を備える円筒状の加熱部材であって、例えば熱源としてハロゲンランプなどのランプヒータ43を備えている。ランプヒータ43は、発熱部431および発熱部431の両端にそれぞれ配置された支持部432を有している。
【0031】
加熱ローラ42は、内側にランプヒータ43の発熱部431が配置され、加熱ローラ42の両端部より外側に、ランプヒータ43の支持部432がそれぞれ露出させて配置されている。言い換えると、加熱ローラ42は、発熱部431が内側に配置され、各支持部432が外側に配置されている。そのため、加熱ローラ42は、発熱部431からの輻射熱によって内側から全体的に加熱される。なお、加熱ローラ42の内側表面には、輻射熱を吸収するための吸熱層が設けられてもよい。
【0032】
加圧ローラ44は、例えば鉄合金(STKM)で形成された芯金と、芯金の周囲にシリコンソリッドゴムで形成された弾性層と、弾性層の周囲にPFAチューブで形成された離型層等を備えている。加圧ローラ44は、定着ベルト45を介して定着ローラ41に対向する位置に配置されている。
【0033】
定着ベルト45は、無端状のベルトであって、例えばポリイミドで形成された基材と、シリコンゴムで形成された弾性層と、PFAチューブで形成された離型層とが、内側から順に積層された構成を有して周回移動する。
【0034】
定着ローラ41、加熱ローラ42、および加圧ローラ44は、回転軸が軸方向Xに沿うように配置され、定着ベルト45はベルト幅方向が軸方向Xに沿う方向とされている。なお、軸方向Xは、図1に示す画像形成装置1の正面から見て、装置の前後方向に相当する。
【0035】
図2に示すように、定着ローラ41の近傍には、定着ローラ41の回転軸の軸方向Xに沿って剥離部材46が配置されている。剥離部材46は、定着ベルト45に接触している用紙を剥離する。用紙加熱装置10には、さらに、定着済みの用紙を定着ローラ41からガイドローラ72の搬送方向へ導く用紙搬送ガイド70が設けられている。用紙搬送ガイド70は、定着ローラ41および加圧ローラ44の定着ニップ部から、用紙の搬送方向の下流側に配置されている。
【0036】
例示の形態では、用紙搬送ガイド70は、用紙搬送路31に沿って延伸された用紙ガイド部71と、この用紙ガイド部71に貫通して設けられた複数の通気孔74とを有している。用紙搬送ガイド70は、トナー像が定着されて搬送される用紙を用紙ガイド部71で支持しつつ、搬送方向の下流側へと案内する作用をなす。用紙ガイド部71における搬送方向の下流側には回転自在なガイドローラ72が備えられて、用紙をスムーズに送る。
【0037】
また、用紙ガイド部71には、用紙搬送ガイド70と用紙との接触面積を減らして摺動抵抗を小さくするために、表面に複数本のガイドリブ73(図6参照)が設けられている。用紙搬送ガイド70では、用紙ガイド部71に沿って用紙を搬送しつつ、通気孔74を通して空気を流通させることができる。
【0038】
本実施形態に係る用紙加熱装置10は、さらに、加熱ローラ42およびランプヒータ43を支持する定着フレーム(フレーム)60と、定着フレーム60の外側を覆うカバー部材50とを備えている。
【0039】
図4は、用紙加熱装置10における定着フレーム60の取付構造を示す説明図、図5は、定着フレーム60と用紙搬送ガイド70との取付構造を示す説明図、図6は、カバー部材50の取付構造を示す説明図、図7はカバー部材50の内側を下方から見て示す斜視図である。
【0040】
図4に示すように、定着フレーム60は、軸方向Xの前側X1に配置された前フレーム(側面部)62と、前フレーム62に対向し、軸方向Xの後ろ側X2に配置された後ろフレーム(側面部)63と、前フレーム62および後ろフレーム63の各上縁部に結合された天板フレーム(連結部)61とを有する。前フレーム62および後ろフレーム63には、さらに加熱ローラフレーム64の両端部が支持され、この加熱ローラフレーム64を介して加熱ローラ42とランプヒータ43とが支持される。
【0041】
図5に示すように、定着フレーム60の前フレーム62と後ろフレーム63には、加熱ローラ42の両端部と定着ローラ41の両端部とが回転自在に支持されて位置決めされる。より詳細には、図4に示すように、加熱ローラ42は、軸受47を介して加熱ローラフレーム64に回動可能に支持される。加熱ローラ42の両端部から突出したランプヒータ43の支持部432は、ランプホルダ65を介して加熱ローラフレーム64の両端部に支持される。加熱ローラ42とランプヒータ43を支持する加熱ローラフレーム64は、前フレーム62および後ろフレーム63に、図示しない取付部を介して取り付けられる。加熱ローラフレーム64が前フレーム62および後ろフレーム63に取り付けられた状態において、ランプホルダ65の一方は前フレーム62よりも軸方向Xの前側X1に配置され、ランプホルダ65の他方は後ろフレーム63よりも軸方向Xの後ろ側X2に配置される。加熱ローラフレーム64には、定着ベルト45の表面に対向して配置されるサーミスタ等が取り付けられ、定着ベルト45の表面温度を検出するように構成される。
【0042】
図4に示すように、定着フレーム60には、加圧ローラ44が加圧レバー441を介して取り付けられる。加圧ローラ44の両端部は加圧レバー441に回動自在に支持され、加圧レバー441の一端が定着フレーム60に回動可能に支持されるとともに、加圧レバーの他端は付勢部材442を介して定着フレーム60に接続される。加圧ローラ44は、定着ローラ41側へ付勢された状態で支持され、定着ローラ41に圧接されて配設される。
【0043】
図5に示すように、定着フレーム60には、さらに用紙搬送ガイド70が取り付けられる。用紙搬送ガイド70は、用紙ガイド部71と交差する方向に延設された板状の取付部76を備えている。取付部76には止着部が設けられて、ビス等の止着具を用いて用紙搬送ガイド70を天板フレーム61に固定できるように構成されている。用紙ガイド部71と取付部76との間には複数の補強リブ75が立設されている。
【0044】
例示の形態では、特に、用紙搬送ガイド70の取付部76は、天板フレーム61と平行に延設されて天板フレーム61側(図5では図中Y1方向)へ延びる板状の部分を有している。これにより、用紙搬送ガイド70が取付部76を介して天板フレーム61に固定されると、取付部76の下面と天板フレーム61の上面とが近接して配置されて互いに接続されるものとなる(図2参照)。
【0045】
図6に示すように、用紙搬送ガイド70が取り付けられた定着フレーム60の外側にはカバー部材50が備えられる。カバー部材50は、断熱性を有しており、定着フレーム60に取り外し可能に係止されて、定着フレーム60の外側に設けられている。例示の形態では、カバー部材50は、定着フレーム60の天板フレーム61の上方に配置されて天板フレーム61の上側Z1を覆う第1カバー部材51と、この第1カバー部材51の反対側に設けられて定着フレーム60の下側Z2を覆う第2カバー部材52とを備えている。
【0046】
カバー部材50には、互いに区画された複数の保熱空間が設けられている。本実施形態に係る用紙加熱装置10では、第1カバー部材51の内側に、それぞれ区画されて配設されるとともに、定着フレーム60の天板フレーム61側に向かって解放された複数の保熱空間が設けられている。
【0047】
図7に示すように、第1カバー部材51の内側には、それぞれ複数の壁部によって区画された第1空間S1と第2空間S2が形成される。詳しくは後述するが、第1空間S1は、第1カバー部材51が天板フレーム61に取り付けられた状態において、各支持部432の上方に配設される保熱空間であり、第2空間S2は、天板フレーム61の上方に配設される保熱空間である。これらの第1空間S1と第2空間S2とは、互いに連通することなく、分離するように第1カバー部材51に設けられている。
【0048】
第1空間S1を構成する壁部として、第1カバー部材51は熱源端対向壁512と第1閉塞壁513とを有している。熱源端対向壁512は、ランプヒータ43の両端の支持部432の端部に対応する位置で、側面部(前フレーム62もしくは後ろフレーム63)と沿う方向(ここでは下側Z2の方向)に延設されている。また、第1閉塞壁513は、熱源端対向壁512に接続して設けられ、支持部432の上方を取り囲むように略コ字状に延設されている。
【0049】
これらの熱源端対向壁512と第1閉塞壁513とは、第1カバー部材51の内側で下方に向かって垂設されており、この場合、天板フレーム61の上面に向かって延設されている。第1空間S1は、軸方向Xおよび左右方向Yには閉じられ、上下方向Zには天板フレーム61に向かって開放された空間として形成されている。
【0050】
図8は、図2におけるB-B断面図であり、図9は、図2におけるC-C断面図である。図10は、カバー部材50を一部破断して内部構造を示す斜視図である。
【0051】
図示するように、熱源端対向壁512は、ランプホルダ65の発熱部431と反対側に、ランプホルダ65と対向するように配設されている。ランプホルダ65の内側にはランプヒータ43の発熱部431が配設されており、ランプホルダ65の外側にはランプヒータ43の支持部432の端部が突出して配設されている。第1カバー部材51が定着フレーム60の上方を覆うように取り付けられると、第1カバー部材51の熱源端対向壁512がランプホルダ65に近接し、熱源端対向壁512の下端部がランプホルダ65の外側に位置するように配置される。
【0052】
これにより、ランプヒータ43の支持部432の上方には、熱源端対向壁512と第1閉塞壁513とで囲まれた第1空間S1が形成される。図9および図10に示すように、第1閉塞壁513の下端部は天板フレーム61の上面に当接するが、熱源端対向壁512と天板フレーム61とは当接せず、両者の間に間隙が設けられている。ランプヒータ43の発熱部431から放射される熱で暖められた空気は、ランプヒータ43の両端部で、ランプホルダ65と熱源端対向壁512で仕切られた空間を上昇し、天板フレーム61と熱源端対向壁512との間隙から第1空間S1に流入する。したがって、発熱部431の熱で暖められた空気をランプホルダ65の両端部および第1空間S1に留めて保熱することができる。
【0053】
また、図7に示すように、第1カバー部材51は、第2空間S2を構成する壁部として、加熱ローラ42の長手方向(軸方向X)に沿って延びる複数の第2閉塞壁515と、第2閉塞壁515の長手方向の両端部に接続された側壁部514とを有している。
【0054】
例示の形態では、第1カバー部材51の内側に、3つの第2閉塞壁515が互いに平行に配設されている。各第2閉塞壁515は、天板フレーム61の上面に向かって延び、下端部(辺縁部)が天板フレーム61との対向位置まで延設されている。2つの第2閉塞壁515と、側壁部514とで囲まれた第2空間S2は、軸方向Xに長く形成され、第1カバー部材51に2つ並列されている。
【0055】
第2閉塞壁515には、天板フレーム61に向かって開放された凹状の複数の切欠部516が設けられている。第2閉塞壁515における切欠部516の箇所では、天板フレーム61との間の間隔が広く形成される。そして、図9に示すように、第2閉塞壁515に複数の切欠部516が設けられることで、天板フレーム61との距離を、切欠部516を有する部分と有しない部分とで変化させることができ、第2閉塞壁515の熱反りを防止することができる。つまり、第2閉塞壁515における熱膨張による変形(軸方向Xに伸張する変形)を、切欠部516で吸収させて、その変形量を緩和することが可能となる。
【0056】
また、切欠部516の位置には、用紙搬送ガイド70の補強リブ75が嵌め込まれる。第2閉塞壁515と側壁部514とによって形成される第2空間S2は、第1空間S1とは連通することなく個別に設けられ、軸方向Xおよび左右方向Yには閉じ、上下方向Zには天板フレーム61に向かって開放された空間として形成される。
【0057】
図11は、カバー部材50と定着フレーム60とを一部破断して内部構造を示す斜視図である。図示するように、用紙搬送ガイド70の取付部76は、天板フレーム61の上面に接続して配置されている。第2空間S2は、取付部76が配置された天板フレーム61の上方に形成され、この天板フレーム61の上部空間を含み、軸方向Xに沿って長く設けられている。天板フレーム61の上部空間は、取付部76が接続された箇所を除き、そのほぼ全体が第1カバー部材51で覆われて、2つの第2空間S2が設けられている。
【0058】
これにより、ランプヒータ43の発熱部431の上方には、天板フレーム61、第2閉塞壁515および側壁部514とで囲まれた第2空間S2が形成される。ランプヒータ43の発熱部431から放射される熱で暖められた空気は、天板フレーム61を介して伝導し、第2空間S2に留まって保熱される。天板フレーム61の上部空間には広い範囲で第2空間S2が形成されているので、保熱効果を高めることができる。
【0059】
また、図11に示すように、第1カバー部材51は傾斜部511を有している。傾斜部511は、左右方向Yに並ぶ2つの第2空間S2にまたがるとともに、右側Y2から左側Y1の方向に下り勾配で傾斜して設けられている。また、傾斜部511は、加熱ローラ42の上方で、第1カバー部材51の外面を構成している。第1カバー部材51は、このような傾斜部511を有することによって、図2に示すように、第1カバー部材51の外側で、上方へ向かう空気の流れを形成するものとなり、加熱ローラ42の周囲が過度に冷却されるのを抑制することができる。
【0060】
図12は、カバー部材50の内側に設けられる仕切部材80を示す斜視図、図13は、仕切部材80の取付構造を示す説明図、図14は仕切部材80の外側の空気の流れを一部破断して示す斜視図である。なお、図12では、用紙加熱装置10における第2カバー部材52を取り外して斜め下方から見た様子を示すとともに、他の構成部材との区別のために仕切部材80に薄墨色を付して示している。
【0061】
図13に示すように、仕切部材80は、定着フレーム60の前フレーム62に対して着脱可能に設けられている。また、仕切部材80は、前フレーム62の外側を覆うように、前フレーム62に対向して設けられる。例示の形態では、仕切部材80は、前フレーム62、第1カバー部材51および第2カバー部材52で囲われた空間内を仕切る複数の仕切壁部81と、仕切壁部81の上側Z1に傾斜させて設けられるセンサ取付部82とを有している。
【0062】
仕切壁部81は、前フレーム62とカバー部材50との間に納まる軸方向Xに沿う長さを有し、左右方向Yに沿って配設されるものと、上下方向Zに沿って配設されるものとの複数形態を有している。センサ取付部82には、定着ベルト45の斜行を検出するためのセンサ83が設けられている。前フレーム62には、センサ83に対向して検出レバー519が設けられており、仕切壁部81が前フレーム62に取り付けられることでセンサ83が斜行を検出可能とされる。
【0063】
このような仕切壁部81を備えることによって、加熱ローラ42の端部では、前フレーム62、第1カバー部材51および第2カバー部材52で囲われた空間内を仕切ることができる。これにより、ランプヒータ43の熱を前フレーム62側に留めて、仕切部材80の外側(カバー部材50側)へ流出するのを抑制することができる。また、熱に弱いセンサ83が、仕切部材80を挟んで第1カバー部材51側に配置されるので、熱の流通が遮断されて熱影響を受けにくくすることが可能となる。
【0064】
また、図14に示すように、第1カバー部材51と第2カバー部材52とは、仕切壁部81で仕切られたセンサ取付部82と連通する複数の連通口518、521をそれぞれ有する。これらの複数の連通口518、521が上下に配置されていることで、連通口518、521を通して下側Z2から上側Z1へ向かう空気の流れが形成され、熱に弱いセンサ83を冷却でき、センサ取付部82が高温になるのを防ぐことができる。
【0065】
以上のように構成される用紙加熱装置10は、加熱ローラ42に備えらえるランプヒータ43の上方で、第1空間S1と第2空間S2とを形成して保熱し、装置外への熱流出と装置内での熱損失とを防ぐことを可能にする。
【0066】
図8および図9に示したように、第1空間S1は支持部432の上方に配設されるので、加熱ローラ42に備えられるランプヒータ43で熱せられた空気を、ランプヒータ43の端部に留めておくことができる。さらに第1空間S1は、第2空間S2と独立しているので温度が逃げず、ランプヒータ43の端部と対応する空間を効率よく保熱できる。特に、ランプヒータ43の端部は特に熱の逃げ道となりやすいことから、第1空間S1によって保熱されることで、ランプヒータ43の端部周辺を冷え難くすることができる。画像形成装置1において画像形成処理が間欠的に行われる場合でも、熱流出が抑制されていることで、ウォームアップタイムを短くでき、再加熱に要する消費電力を低減化することができる。
【0067】
また、第2空間S2は、ランプヒータ43の発熱部431の上方に配設されるので、加熱ローラ42からの放熱を抑制でき、保熱性を高めて、再加熱に要する消費電力を低減化することができる。したがって、画像形成装置1は、用紙加熱装置10を備えることで、省エネ性能をより一層向上させることができる。
【0068】
加えて、これらの第1空間S1および第2空間S2は、第1カバー部材51を定着フレーム60に取り付ける作業だけで容易に形成することができる。このため、従来の装置構造のように熱源周りを遮蔽する部材を個別に設置する必要がなく、画像形成装置1の部品点数を低減できる。第1カバー部材51は、取り付けおよび取り外し作業が容易であり、第1カバー部材51を取り外すことで直ちにランプヒータ43等の各構成部材の交換作業等を行うことができ、メンテナンス性も高められる。
【0069】
なお、本発明に係る用紙加熱装置10を備える画像形成装置1としては、図1に示したような複合機であるに限られず、カラープリンター、モノクロ複合機、モノクロプリンター、インクジェット記録方式の画像形成部を備えたカラー複合機またはカラープリンター等を含む他の画像形成装置にも適用可能である。
【0070】
本発明の技術的範囲は、前記実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲に基づくものとされる。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置
10 用紙加熱装置
31 用紙搬送路
41 定着ローラ
42 加熱ローラ(加熱部材)
43 ランプヒータ(熱源)
431 発熱部
432 支持部
44 加圧ローラ
45 定着ベルト
47 軸受
50 カバー部材
51 第1カバー部材
511 傾斜部
512 熱源端対向壁
513 第1閉塞壁
514 側壁部
515 第2閉塞壁
516 切欠部
518 連通口
52 第2カバー部材
521 連通口
S1 第1空間
S2 第2空間
60 定着フレーム(フレーム)
61 天板フレーム(連結部)
62 前フレーム(側面部)
63 後ろフレーム(側面部)
64 加熱ローラフレーム
65 ランプホルダ(熱源ホルダ)
70 用紙搬送ガイド
80 仕切部材
81 仕切壁部
82 センサ取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14