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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/476 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A61F13/476
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020197346
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085587
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 友貴
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-235893(JP,A)
【文献】特開平07-241314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体から側方にそれぞれ延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備え、
前記第1ウィングの前記バックシート側に第1粘着部が、前記第2ウィングの前記バックシート側に第2粘着部が設けられ、
前記第1ウィング及び前記第2ウィングをこの順に前記バックシート側に折り返す装着時に、前記第2ウィングが前記第2粘着部を介して前記第1ウィングに重なるように構成されており、
前記第1ウィングに、前記装着時に前記第2粘着部に対向する易剥離領域が設けられており、
前記易剥離領域が、離型剤層を含むか、又は水流交絡繊維シート若しくは起毛シートを含み、さらに、粘着剤に対する剥離性が低減された複数の剥離機能部を面方向に不連続に含み、
前記剥離機能部以外の部分である非剥離機能部が、幅方向に対する斜め方向で連続している、吸収性物品。
【請求項2】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体から側方にそれぞれ延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備え、
前記第1ウィングの前記バックシート側に第1粘着部が、前記第2ウィングの前記バックシート側に第2粘着部が設けられ、
前記第1ウィング及び前記第2ウィングをこの順に前記バックシート側に折り返す装着時に、前記第2ウィングが前記第2粘着部を介して前記第1ウィングに重なるように構成されており、
前記第1ウィングに、前記装着時に前記第2粘着部に対向する易剥離領域が設けられており、
前記易剥離領域が、水流交絡繊維シート又は起毛シートを含み、
前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートの、前記トップシート側と反対側に、複数の開孔を有し、前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートより剥離性の小さい表面を有する剥離機能調整シートが接合され、前記開孔から前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートが露出している、吸収性物品。
【請求項3】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体から側方にそれぞれ延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備え、
前記第1ウィングの前記バックシート側に第1粘着部が、前記第2ウィングの前記バックシート側に第2粘着部が設けられ、
前記第1ウィング及び前記第2ウィングをこの順に前記バックシート側に折り返す装着時に、前記第2ウィングが前記第2粘着部を介して前記第1ウィングに重なるように構成されており、
前記第1ウィングに、前記装着時に前記第2粘着部に対向する易剥離領域が設けられており、
前記易剥離領域が、第1層と第2層とが積層されてなる積層体から形成され、
前記第1層が前記第1ウィングの前記バックシートに固着され、
前記第2層が前記第2ウィングの前記第2粘着部に対向し、
前記第1層と前記第2層との接合強度が、前記第2層と前記第2粘着部との接合強度より小さい、吸収性物品。
【請求項4】
前記第2粘着部が、前記装着時に前記第1ウィング及び前記第2ウィングを前記バックシート側に折り返した際に、前記第1ウィングに重ならない領域にも形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁パッド、おりものシート等の吸収性物品として、一対のウィングを備えた構成が知られている。一対のウィングは、吸収性物品本体の側方からそれぞれ延出したフラップ状の部分であり、装着時には下着の非肌対向面側へと折り返して下着に固定できるように構成されている。一対のウィングを使用することで、装着中に吸収性物品を下着へより確実に固定できる。そして、吸収性物品の下着への固定をより確実にするために、一対のウィング同士が下着の非肌対向面側で重ねられ、接合されている形態も知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
さらに、特許文献1に記載の構成では、少なくとも一方のウィングに前後方向に延びる引裂誘導部が形成されている。特許文献1によれば、吸収性物品を下着から取り外す際に、ウィングを根元から離れた位置にある引裂誘導部で破断できるため、体液の漏れや飛び散りを防止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6301426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸収性物品を取り外す際の持ち方、力の入れ方等は千差万別であり、使用者によっては引裂誘導部に沿って上手くウィングを破断できない場合もある。そのような場合、使用者は、両ウィングを直接掴んで分離させた上で、吸収性物品本体を持って吸収性物品全体を下着から引っ張って剥がすという2段階のステップを行うことになり、物品の取外し動作は煩雑になり得る。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、装着時に下着側に折り返して重なり合うウィングを備えた吸収性物品において、下着から容易に取り外し可能な吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、前記本体から側方にそれぞれ延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備え、前記第1ウィングの前記バックシート側に第1粘着部が、前記第2ウィングの前記バックシート側に第2粘着部が設けられ、前記第1ウィング及び前記第2ウィングをこの順に前記バックシート側に折り返す装着時に、前記第2ウィングが前記第2粘着部を介して前記第1ウィングに重なるように構成されており、前記第1ウィングに、前記装着時に前記第2粘着部に対向する易剥離領域が設けられている。
【0008】
上記第一の態様によれば、吸収性物品の装着時に第1ウィング及び第2ウィングをバックシート側(下着側)に順に折り返した際、第2ウィングが第1ウィングに、第2ウィングのバックシート側に設けられている第2粘着部を介して接合するように構成されている。その際、第2粘着部に、第1ウィングに設けられた易剥離領域が対向するようになっている。本明細書において、易剥離領域は、粘着部と接触して接合するが、粘着部から剥がすように力を加えると比較的容易に剥離可能な領域を指す。本態様においては、装着時に第1ウィングと第2ウィングとが重ねられた部分では、第1ウィングと、第2ウィングに形成された第2粘着部との間に易剥離領域が介在するので、第1ウィングと第2ウィングとの接合強度は、易剥離領域がない場合と比較して弱くなっている。そのため、装着中は第1ウィングと第2ウィングとが接合しているが、吸収性物品を取り外す際に吸収性物品本体を持って下着から剥がそうとした場合には、第2粘着部と易剥離領域とが容易に離れ、これにより第1ウィングと第2ウィングとが容易に分離する。よって、吸収性物品を下着から取り外すために、両ウィングを直接掴んで接合を解除し、続いて吸収性物品本体を持って下着から剥がすという煩雑な動作を行う必要がない。すなわち、吸収性物品の取外し動作を簡単に1つのステップで行うことができる。
【0009】
本発明の第二の態様では、前記易剥離領域が離型剤層を含む。
【0010】
上記第二の態様によれば、離型剤層の塗布又は被着という比較的簡便な手段で、易剥離領域の形成ができる。
【0011】
本発明の第三の態様では、前記易剥離領域が、水流交絡繊維シート又は起毛シートを含む。
【0012】
上記第三の態様によれば、公知の素材を利用して易剥離領域を構成できるので、コスト上昇を抑えることができる。また、ウィングに水流交絡繊維シート又は起毛シートの小片を配置した場合には、ウィングに剛性が付与され、ウィングが折り返しやすくなる。
【0013】
本発明の第四の態様では、前記易剥離領域が、粘着剤に対する剥離性が低減された複数の剥離機能部を面方向に不連続に含み、前記剥離機能部以外の部分である非剥離機能部が、幅方向に対する斜め方向で連続している。
【0014】
装着中にウィング同士の接合が解除されることは望ましくないが、特に歩行時には、接合されたウィングにも斜め前方又は斜め後方に引っ張られる力が掛かりやすく、装着者の動きによってはウィング同士が分離しやすく、分離が懸念される場合もある。これに対し、上記第四の態様によれば、剥離機能部以外の部分である非剥離機能部が斜め方向に連続するようにしておくことで、粘着部の斜め方向での剥離性が小さくなり(斜め方向の力に対して剥がれにくくなり)、装着中のウィング同士の接合の不要な解除を防止できる。
【0015】
本発明の第五の態様では、記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートの、前記トップシート側と反対側に、複数の開孔を有し、前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートより剥離性の小さい表面を有する剥離機能調整シートが接合され、前記開孔から前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートが露出している。
【0016】
上記第五の態様によれば、易剥離領域の粘着部に対する剥離性を、剥離機能調整シートにおける開孔の大きさ、配置等によって調整することができるので、使用する水流交絡繊維シート又は起毛シートの材料の選択の余地が広がる。
【0017】
本発明の第六の態様は、前記水流交絡繊維シート又は前記起毛シートが、部分的に圧搾部を有する。
【0018】
上記第六の態様によれば、水流交絡繊維シート又は起毛シートの剥離性を、圧搾面積、圧搾圧等によって調整できるので、使用する水流交絡繊維シート又は起毛シートの材料の選択の余地が広がる。
【0019】
本発明の第七の態様では、前記易剥離領域が、第1層と第2層とが積層されてなる積層体から形成され、前記第1層が前記第1ウィングの前記バックシートに固着され、前記第2層が前記第2ウィングの前記第2粘着部に対向し、前記第1層と前記第2層との接合強度が、前記第2層と前記第2粘着部との接合強度より小さい。
【0020】
上記第七の態様によれば、吸収性物品の取り外し動作時に、易剥離領域を構成する積層体の第1層と第2層と分離できる。具体的には、重なっていた第1ウィングと第2ウィングとが分離する際、第1層は第1ウィング側に残り、第2層は第2ウィングの第2粘着部にとともに第1ウィングから離れていく。また、第1ウィングと第2ウィングとを分離させた後には、少なくとも第2粘着部は第2層に覆われたままとなる。そのため、粘着部が意図せず手や吸収性物品の別の部分に粘着したりすることがなく、吸収性物品の廃棄時の動作、例えば吸収性物品を丸める等の動作も容易になる。
【0021】
本発明の第八の態様は、前記第2粘着部が、装着時に前記第1ウィング及び前記第2ウィングを前記バックシート側に折り返した際に、前記第1ウィングに重ならない領域にも形成されている。
【0022】
上記第八の態様によれば、第2粘着部が、第2ウィングの、第1ウィングに重ならない部分、すなわち第2ウィングの根元に近い部分にも形成されている。そのため、第1ウィング及び第2ウィングをこの順で折り返した際、第2粘着部が、第1ウィングだけでなく下着にも対向するので、第2ウィングは、その根元に近い部分で、第2粘着部を介して下着と直接接合できる。よって、第2ウィングはより確実に固定される。また、吸収性物品を取り外す際には、本体に近い根元の部分には力が伝わりやすく、ウィングの根元の部分は剥がしやすいので、取り外し動作の妨げになりにくい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、装着時に下着側に折り返して重なり合うウィングを備えた吸収性物品において、下着から容易に取り外し可能な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一形態による吸収性物品の肌側から見た平面図である。
図2】本発明の一形態による吸収性物品の非肌側から見た平面図である。
図3図1のI-I線断面図である。
図4図3に示す吸収性物品の両ウィングが折り返された状態を示す図である。
図5】両ウィングを折り返した状態を、非肌側から見た概略的な平面図である。
図6】一方のウィングを非肌側に折り返した状態を示す部分拡大図である。
図7】両ウィングを非肌側に折り返した状態を示す部分拡大図である。
図8】ウィングに設けられた易剥離領域の変形例を示す図である。
図9】易剥離領域の別の変形例を示す。
図10】易剥離領域のさらに別の変形例を示す。
図11】易剥離領域のさらに別の変形例を示す。
図12】易剥離領域のさらに別の変形例を示す。
図13】易剥離領域のさらに別の変形例を示す。
図14】吸収性物品の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0026】
まず、本発明の実施形態による吸収性物品の基本構造について、生理用ナプキンの例を用いて説明する。図1に、吸収性物品1を、装着時に肌に対向させる側から見た平面図を示す。また、図2には、図1の吸収性物品1を反対の側から見た平面図を示す。図3に、図1のI-I線断面図を示す。
【0027】
図1図3に示すように、吸収性物品1は、不透液性のバックシート2と、透液性のトップシート3と、バックシート2とトップシート3との間に配置された吸収体4とを備えた本体(吸収性物品本体)8を有する。吸収性物品1の装着時には、本体8のトップシート3側を肌に対向させ、本体8のバックシート2側を下着に対向させる。よって、吸収性物品1のトップシート3側を肌側若しくは表側と呼ぶ場合があり、バックシート2側を非肌側若しくは裏側と呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、図1及び図2に示すように、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する方向を吸収性物品1の前後方向D1とし、この前後方向D1に直交する方向を吸収性物品1の幅方向D2とする。本例では、本体8は、平面視で前後方向D1に長い細長形状を有しており、前後方向D1に所定の長さを有し、前後方向D1に直交する幅D2に所定の幅を有する。
【0028】
図1に示す形態では、本体8は、前後方向D1に延びる中心線(前後方向中心線)に対して略線対称の平面視形状を有しているが、本体8の形状は線対称でなくともよい。また、吸収性物品1全体の形状も、前後方向中心線に対して略線対称であってよい。さらに、吸収性物品1及び本体8の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、ウィングやフラップの形状及び大きさ等を含む)は、中心線を対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0029】
吸収性物品1は、装着時に装着者の股間に主として対向させる中間領域Mと、中間領域Mの前方に隣接する前方領域Fと、中間領域Mの後方に隣接する後方領域Rとを有する。中間領域Mは、体液排出口対向領域Qを含む。体液排出口対向領域Qは、装着時に装着者の膣口、尿道口等の体液排出口及びその周辺領域に対向する領域である。体液排出口対向領域Qの中心は、長方向中心線上に位置し、長さ(前後方向向D1の長さ)10~50mm及び幅(幅方向D2の長さ)5~40mmの領域とすることができる。体液排出口対向領域Qは、図1では、膣口に対向する領域として楕円状に描かれている。しかし、体液排出口対向領域Qの上述の大きさ及び形状は、本形態による吸収性物品1を説明するための例示にすぎない。
【0030】
バックシート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートであってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。バックシート2は、吸収性物品1の外形形状と同じ外形形状を有するシートであってよい。
【0031】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0032】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0033】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0034】
吸収体4は、バックシート2及びトップシート3から前後方向D1にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。そして、前後方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。また、吸収体4は、少なくともバックシート2から幅方向D2にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。
【0035】
吸収性物品1には、本体8の両側部、すなわち幅方向D2の両端部のトップシート3側(肌側若しくは表側)に、前後方向D1にわたって一対のサイドシート7、7が配置されている。サイドシート7、7はそれぞれ、トップシート3の肌側の面の側部に接合されていてよい。サイドシート7、7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。例えば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する効果又は肌触り感を高める場合は、シリコン系、パラフィン系の撥水剤等をコーティングした撥水処理不織布を用いることが好ましい。また、ウィングWにおける経血等の吸収性を高める場合には、不織布の材料として、親水処理された不織布を用いることが好ましい。不織布の種類としては、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいエアスルー不織布が好ましい。サイドシート7、7は、中間領域Mにおいて幅方向D2の外方へ延出し、同様に中間領域Mにおいて幅方向D2に延出したバックシート2と接合されて、ウィング11、12を形成している。
【0036】
図1図3に示すように、本形態の吸収性物品1は、本体8から幅方向D2外側に延出する、対をなす第1ウィング11及び第2ウィング12(単にウィング11、12と呼ぶ場合もある)を備えている。第1ウィング11及び第2ウィング12は、吸収性物品1の装着動作時に(吸収性物品1を装着する際に)、下着側に折り返すことができるようになっている。第1ウィング11及び第2ウィング12は、下着側に折り返した際に互いに重なるような形状及び大きさを有している。
【0037】
第1ウィング11及び第2ウィング12のいずれについても、ウィングの最大長さ(前後方向D1長さ)は40~110mmであってよい。図1図3に示す形態では、各ウィングは、ウィングの基端(本体8との境界)において最大幅を有している。ウィングの最大幅(幅方向D2長さ)は、本体8の幅を超えない大きさであればよく、20~65mmであってよい。また、図1及び図2に示すように、第1ウィング11及び第2ウィング12は、前後方向D1に沿って延びる中心線(幅方向D2の中央に引かれる中心線)を対称軸として線対称の輪郭形状を有するが、両ウィングの輪郭形状は必ずしも線対称でなくともよい。
【0038】
図1図3に示すように、第1ウィング11には第1粘着部21が、第2ウィング12には第2粘着部22が設けられている。第1粘着部21及び第2粘着部22(合わせて単に粘着部20と呼ぶ場合がある)はいずれもバックシート2側(折り返す前の状態での非肌側)に形成されている。
【0039】
粘着部21、22はいずれも、粘着剤を塗布することによって、又は粘着剤成分からなる層を被着させることによって形成できる。粘着剤としては、例えば、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組合せを主成分とするものであってよく、ホットメルトタイプのものであると好ましい。
【0040】
スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。
【0041】
また、粘着付与剤及び可塑剤としては、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
【0042】
一対のウィングが折り返される順序は、いずれが先であってもよいが、以下においては、理解しやすいように、先に折り返される方を第1ウィング、後から折り返される方を第2ウィングとする。すなわち、第1ウィング11及び第2ウィング12をこの順で下着側に折り返す例を主として説明する。
【0043】
図4に、図3に示す吸収性物品1の第1ウィング11及び第2ウィング12が下着S側に折り返された状態を示す。また、図5に、第1ウィング11及び第2ウィング12が下着側に折り返された状態の吸収性物品1を非肌側から見た平面図を示す。但し、図5においては、下着及び部材の一部の図示を省略している(後述の易剥離領域の図示も省略している)。図5のように第1ウィング11及び第2ウィング12が重ねられた場合、重なり部分の幅は、10~40mmであると好ましい。
【0044】
図4に示すように、第1ウィング11を折り返すことにより、第1ウィング11のバックシート2側(折り返す前の状態での非肌側)に形成されている第1粘着部21が下着Sに対向する。そして、第1粘着部21と下着Sの非肌側の面とが接触して、第1ウィング11は、第1粘着部21を介して下着Sに接合される。その後さらに、第2ウィング12が第1ウィング11に重なるように折り返されると、第2ウィング12のバックシート2側(折り返す前の状態での非肌側)に形成されている第2粘着部22が第1ウィング11に対向する。
【0045】
ここで、本形態においては、図1図4に示すように、第1ウィング11の肌側の面(折り返す前の状態での肌側の面)に、第1易剥離領域31が形成されている。第1易剥離領域31は、粘着部と接触させると接合するが、粘着部から剥がす力を加えると比較的容易に剥離可能な(剥離性の高い)領域を指す。
【0046】
第1ウィング11に形成された第1易剥離領域31は、第2ウィング12の第2粘着部22に対向するように形成されている。第1易剥離領域31が存在することによって、第2ウィング12を第1ウィング11に重ねるように折り返した際に、第1ウィング11に形成された第1易剥離領域31が、第2ウィング12に形成された第2粘着部22に対向する。すなわち、第1易剥離領域31の介在によって、第1ウィングのバックシート2側の面が第2粘着部22に直接接触しないか、又は第1ウィングのバックシート2側の面と第2粘着部22とが直接接触する面積が低減する。そのため、第1ウィング11と第2ウィング12との接合強度は、第1ウィングのバックシート2側の面と第2ウィング12の第2粘着部22とが直接接触している場合に比べて、弱くなる。よって、吸収性物品1を装着している間は(吸収性物品1の装着中は)、第1ウィング11と第2ウィング12とが接合しているが、吸収性物品を取り外す際には、第2粘着部22と第1易剥離領域31とが比較的小さな力で離れ、これにより第1ウィング11と第2ウィング12とが容易に分離される。
【0047】
吸収性物品1を下着から取り外す際には、大抵の使用者は、吸収性物品1の本体8の前方を持って下着から離れる方向に引っ張ることで、吸収性物品1全体を下着から剥がす。しかしながら、第1ウィング11と第2ウィング12とが下着の非肌面側に折り返され接合されている場合には、本体8を引っ張るだけでは、両ウィングの接合を解除できないことが多かった。そのため、使用者は、最初に両ウィングを直接持って開き、続いて吸収性物品本体8を持って下着から剥がすことになり、取外し動作が煩雑になる傾向があった。また、本体8を無理に引っ張ることで取り外しできたとしても、吸収性物品1が下着から外れた時の衝撃によって、吸収性物品に吸収されていた体液が飛び散る懸念もあった。これに対し、本形態によれば、大きな力を加えなくとも、本体8を引っ張ることで、第1ウィング11と第2ウィング12とが容易に分離できる。すなわち、吸収性物品1の取外し動作を1つのステップで行うことができる。
【0048】
また、第1易剥離領域31と第2粘着部22との接合は、厚み方向には解除されやすいが、面方向(せん断方向)には解除されにくい。両ウィング11、12の接合部分は装着中にも力を受けるが、その力は主として面方向に働くため、本形態によれば、装着中での両ウィング11、12同士の接合は維持しつつ、取り外し動作時には取りはずしやすい吸収性物品を得ることができる。
【0049】
なお、図1図4の例には、第2ウィング12の肌側の面にも第2易剥離領域32が形成されている。この第2易剥離領域32は、第2ウィング12及び第1ウィング11をこの順に下着側に折り返した場合に、第1易剥離領域31と同様に機能する。
【0050】
第1易剥離領域31及び第2易剥離領域32(合わせて単に易剥離領域30と呼ぶ場合がある)は、周囲の領域に比べて粘着部との剥離性が低くなっていればよい。易剥離領域30は、例えば離型剤層を配置することによって形成できる。離型剤層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の成分を含有する塗工液を塗布することによって形成できる。或いは、上記の離型剤成分を少なくとも表面に含有する薄い層を被着させることによって形成することもできる。離型剤を含有する塗工液の塗布又は離型剤層の被着は簡便な手法であるので、複雑な工程を経ずに吸収性物品の製造ができる。
【0051】
易剥離領域30は、水流交絡繊維シート又は起毛シートを用いて形成してもよい。その場合、サイドシート7に水流交絡繊維シート又は起毛シートを貼り付けてもよいし、後述のようにサイドシート7自体を水流交絡繊維シート又は起毛シートから形成してもよい。水流交絡繊維シートは、天然繊維又は合成繊維を水圧により交絡させて形成されたシートであり、熱や接着剤を用いて形成された繊維シートと比較して、より低密度であり、表面がより粗くなっている。そのため、粘着部20と接触させても接触面積が小さいため、粘着剤に対する剥離性が高く(粘着強度が小さく)、小さな力で粘着部20から剥がすことができる。また、水流交絡繊維シートは、繊維同士が緩く結合しているため繊維がほどけやすいので、粘着部と接触して粘着部を再び離した場合、粘着部に繊維が残って水流交絡繊維シートから繊維が抜けるということも、剥離性が高い(粘着強度が小さい)ことの要因となっている。水流交絡繊維シートの例としては、コットン等が挙げられる。
【0052】
起毛シートは、織物、編物、又は不織布において、繊維を毛羽立たせる起毛加工を行ったシートである。繊維が立ち上がっているため、表面が粗くなっているので、粘着部20と接触させても接触面積が小さい。よって、上述の水流交絡繊維シートと同様に、粘着剤に対する剥離性が高く(粘着強度が小さく)、小さな力で粘着部20から剥がすことができる。
【0053】
水流交絡繊維シート又は起毛シートとしては公知の材料を使用できる。また、ウィングに部分的に水流交絡繊維シート又は起毛シートの小片を配置した場合には、ウィングに厚み及び剛性を付与できるので、ウィングを折り返しやすくなるという利点も得られる。
【0054】
第1易剥離領域31及び第2粘着部22の構成及び両者の位置関係を分かりやすくするために、図6及び図7に、吸収性物品1の中間領域M付近の部分を拡大した平面図を示す。説明を分かりやすくするために、図6及び図7においては、下着S、第1粘着部21、及び第2易剥離領域32の図示は省略する。
【0055】
図6には、両ウィングが広げられた状態(図2)から、第1ウィング11のみを折り返した状態が示されている。第1ウィング11のみを折り返した状態では、第1易剥離領域31が露出している。続いて、第2ウィング12を折り返すことで、第2ウィング12のバックシート2側に形成されている第2粘着部22が、第1易剥離領域31に重ねられる(図7)。
【0056】
図7の例では、第1ウィング11と第2ウィング12とが重ねられた状態で、平面視で、第2粘着部22は、第1易剥離領域31に含まれるようになっている。しかしながら、第2粘着部22及び第1易剥離領域31の大きさ及び形状は、通常のやり方でウィングを下着側に折り返した際に、両者が少なくとも部分的に接触して接合できるのであれば、特に限定されない。よって、第2粘着部22の面積が、第1易剥離領域31の面積よりも大きくなっていてもよい。但し、第1易剥離領域31の面積がより大きい方が、第1易剥離領域31と第2粘着部22とが重なる領域の面積を大きくでき、ウィングの折り位置がずれても第2粘着部22を受け止めることができるので、好ましい。また、図示の例では、第2粘着部22及び第1易剥離領域31の形状はいずれも略四角形であるが、形状は互いに大きく異なっていてもよい。
【0057】
図8に、第1易剥離領域31の変形例を示す。図8は、下着側に折り返された第1ウィング11のみを非肌面から見た図であり、図6の左側部分に対応する図である。図8に示す例では、第1易剥離領域31内に、複数の剥離機能部311Aが面方向で不連続に形成されている。剥離機能部311Aは、剥離性の高い部分であり、易剥離領域の粘着部に対する剥離性を高める機能を実際に有する部分である。すなわち、剥離機能部311Aが、上述の離型剤層、又は水流交絡繊維シート若しくは起毛シートを有していてよい。よって、易剥離領域のために離型剤層を用いる場合には、第1易剥離領域31内の所定の複数の部分に、離型剤を不連続に塗布することができる。また、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートを用いる場合には、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの小部分を、不連続に貼り付けることができる。
【0058】
よって、剥離機能部311Aは、第1易剥離領域31内に全面にわたって形成されていてもよいし(図6、7等)、部分的に形成されていてもよい(図8)。剥離機能部311Aが部分的に形成されている場合、そのパターンは特に限定されないが、図8に示すように、剥離機能部311A以外の部分である非剥離機能部315が、幅方向D2(又は前後方向D1)に対して所定の角度をなす斜め方向(d、d')に連続していることが好ましい。当該斜め方向は、幅方向D2に対して30~60°の角度をなしていてよい。
【0059】
吸収性物品1の装着中、特に歩行時には、接合された第1ウィング11及び第2ウィング12は、斜め方向(図8の斜め方向d、d')に引っ張られやすい。そのため、装着者の動きによってはウィング同士が斜め方向に外れやすい傾向がある。これに対し、図8にしめすように非剥離機能部315が斜め方向d、d'に連続していることで、斜め方向d、d'で、粘着部に対する剥離性が小さくなる(斜め方向の力に対して剥がれにくくなる)ので、装着中のウィング同士の意図しない接合解除を防止できる。
【0060】
一方、吸収性物品1を下着から取り外す際には、接合された第1ウィング11及び第2ウィング12は主として幅方向D2の力を受けるため、幅方向D2の力に対する剥離性が大きいと(幅方向D2ではがれやすくなっていると)、吸収性物品1の取り外しが容易である。図8の例では、非剥離機能部315が幅方向D2で見て連続していない。すなわち、幅方向D2に沿った任意の直線に、剥離機能部311Aが重なるようになっているので、幅方向D2では、粘着部に対する剥離性が大きくなっている(幅方向D2の力に対して剥がれやすくなる)。そのため、吸収性物品1を取り外す際には、大きな力を要することなく、第1ウィング11の第1易剥離領域31と第2ウィング12の第2粘着部22とを離すことができる、すなわち、第1ウィング11と第2ウィング12とを分離させることができる。
【0061】
このように、剥離機能部311Aのパターンを方向によって相違させておくことで、方向による剥離性(剥がれやすさ)を調整できる。
【0062】
図9に、第1易剥離領域31の別の変形例を示す。図9(a)は、下着側に折り返された第1ウィング11のみを非肌面から見た図であり、図6の左側部分に対応する図である。また、図9(b)は、図9(a)のII-II線断面図である。図9の例では、第1易剥離領域31において、第1ウィング11のサイドシート7側の面(ウィングを広げた状態での肌側の面)に接触して、層状の剥離機能部311Bが設けられている。このような層状の剥離機能部311Bは、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの小片であってよい。さらに、本例では、層状の剥離機能部311Bに重なるように、複数の開孔OPを備えた剥離機能調整シート312が固着されている。剥離機能調整シート312は、粘着剤に対する剥離性が小さい(粘着部から剥離しにくい)表面を有するシートであり、剥離機能調整シート312によって、層状の剥離機能部311Bが部分的に被覆される。言い換えれば、剥離機能調整シート312の開孔OPを通して層状の剥離機能部311Bが露出する。開孔OPの形状、大きさ、及び数を調整することによって、第1易剥離領域31の剥離性を調整することができる。そのため、層状の剥離機能部311Bを自由に選択しておいて、剥離機能部311Bの剥離性に応じて剥離機能調整シート312の開孔を設計してもよい。
【0063】
図10に、第1易剥離領域31のさらに別の変形例を示す。図10(a)は、下着側に折り返された第1ウィング11のみを非肌面から見た図であり、図6の左側部分に対応する図である。図10(b)は、図10(a)のIII-III線断面図である。図10に示す例では、層状の剥離機能部311Bが水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの小片からなっているのではなく、サイドシート7自体が、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートから形成されている。よって、図9に記載する例に比べて、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの使用量が多くなるが、製造上の工程が減るという点では好ましい。図10に示す例においても、開孔OPを備えた剥離機能調整シート312が、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートであるサイドシート7の上に、少なくとも部分的に重ねることができる。図9に示す例と同様に、開孔OPを通して剥離機能部311B(サイドシート7)が露出しており、開孔OPの形状、大きさ、及び数を調整することによって、第1易剥離領域31の剥離性を調整することができる。
【0064】
図11に、第1易剥離領域31のさらに別の変形例を示す。図11(a)は、下着側に折り返された第1ウィング11のみを非肌面から見た図であり、図6の左側部分に対応する図である。また、図11(b)は、図11(a)のIV-IV線断面図である。図11の例では、第1易剥離領域31において、第1ウィング11のサイドシート7側の面(ウィングを広げた状態での肌側の面)に層状の剥離機能部311Bが設けられている。本例においても、層状の剥離機能部311Bは、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの小片であってよい。但し、本例では、層状の剥離機能部311Bに複数の圧搾部EBが形成されている。圧搾部EBが形成された部分は密度が高くなっているので、表面粗さが小さく(より平坦に)なっている。そのため、第2粘着部22に対する剥離性は小さく、第2ウィング12の第2粘着部22が重ねられた場合に第2粘着部22と接合しやすくなっている。
【0065】
図11に示す例では、圧搾部EBの大きさ、形状、数、及び圧搾の度合を調整することによって、第1易剥離領域31の剥離性を調整することができる。そのため、層状の剥離機能部311Bを自由に選択しておいて、剥離機能部311Bの剥離性に応じて圧搾部EBの構成を設計してもよい。
【0066】
図12に、第1易剥離領域31のさらに別の変形例を示す。図12(a)は、下着側に折り返された第1ウィング11のみを非肌面から見た図であり、図6の左側部分に対応する図である。また、図12(b)は、図12(a)のV-V線断面図である。図11に示す例では、層状の剥離機能部311Bが水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの小片からなっているのではなく、サイドシート7自体が、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートから形成されており、この点では、図10に示す例と同様である。そのため、水流交絡繊維シート若しくは起毛シートの使用量が多くなるが、製造上の工程が減るという点で好ましい。図12に示す第1易剥離領域31においては、図11の例と同様、複数の圧搾部EBが形成されている。圧搾部EBが形成されている部分は、表面粗さが小さいため、第2粘着部22に対する剥離性が小さくなるので、圧搾部EBの大きさ、形状、数、及び圧搾度合を調整することによって、第1易剥離領域31の剥離性を調整できる。
【0067】
図13に、易剥離領域30のさらに別の変形例を備えた吸収性物品1を示す。図13(a)は、第1ウィング11及び第2ウィング12を下着側に折り返して接合させた状態を示す図であり、図4に対応する図である。また、図13(b)は、吸収性物品1の取り外し動作の途中であり、第2ウィング12が分離した状態を示す。
【0068】
図13の例では、易剥離領域30(第1易剥離領域31及び第2易剥離領域32)は、それぞれ2層の積層体から形成されている。より具体的には、例えば第1易剥離領域31である積層体は、第1ウィング11に直接固着された第1層BLと、第1層BLと接合された第2層ULとから構成されている。第1層BLと第2層ULとは、熱融着等によって互いに接合されていてよいが、第1層BLと第2層ULとの接合強度は、第2ウィング12の第2粘着部22と第2層ULとの接合強度より小さい。そのため、吸収性物品1の取り外し動作時に、第2ウィング12に力がかかって引っ張られた場合、第1層BLと第2層ULが分離する(図13(b))。このように、第1易剥離領域31を分離可能な積層体によって形成した場合、取外し動作によってウィング同士が分離した後には、少なくとも第2粘着部22は第2層ULによって覆われた状態になっている。よって、粘着部が意図せず手や吸収性物品1の他の部分に貼り付くことを防止でき、使用済みの吸収性物品を丸める等の廃棄時の動作が容易になる。
【0069】
図14に、吸収性物品1の変形例を示す。本例では、図4の例に比べて、第1粘着部21及び第2粘着部22がそれぞれ幅方向D2に広がっている。より具体的には、第2粘着部22は、第1ウィング11と第2ウィング12とが重ならない領域、すなわち第2ウィングの根元部分にも形成されている。そのため、第1ウィング11及び第2ウィング12を下着側にこの順に折り返した際、第2粘着部22は、第2ウィング12の根元部分では、第1ウィング11ではなく下着Sに対向できるので、第2ウィング12を直接下着Sに接合させることができる。これにより、先に折り返された第1ウィング11のみならず、第2ウィング12も下着に固定されるので、ウィングがより確実に下着に固定される。また、吸収性物品1を取り外す際には、本体8に近いウィングの根元部分には力が伝わりやすく、ウィングの根元部分の粘着部20は下着Sから剥がしやすいため、取り外し動作を妨げることはない。
【符号の説明】
【0070】
1 吸収性物品
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
8 吸収性物品本体
11 第1ウィング
12 第2ウィング
20 粘着部
21 第1粘着部
22 第2粘着部
30 易剥離領域
31 第1易剥離領域
32 第2易剥離領域
311A、311B 剥離機能部
312 剥離機能調整シート
315 非剥離機能部
D1 前後方向
D2 幅方向
EB 圧搾部
F 前方領域
M 中間領域
OP 開孔
R 後方領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14