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  • 特許-粒子、及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】粒子、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C10M 177/00 20060101AFI20240710BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 27/08 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 31/02 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240710BHJP
   C10M 105/04 20060101ALI20240710BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20240710BHJP
   C10M 105/50 20060101ALI20240710BHJP
   C10M 107/50 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C10M177/00
C08L25/04
C08L27/08
C08L27/12
C08L31/02
C08L33/04
C08L83/04
C08L91/00
C08L101/00
C10M105/04
C10M105/32
C10M105/50
C10M107/50
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197606
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085757
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安永 智彦
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-36212(JP,A)
【文献】特開2002-69473(JP,A)
【文献】特開2013-177497(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150951(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、
前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、
前記内包物が潤滑剤を含む、粒子。
【請求項2】
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が50~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~50重量%である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記単量体(A)が単量体(a1)を含み、前記単量体(a1)がカルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
前記潤滑剤の25℃における動粘度が10~100000mm/sである、請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)が0.05~0.999である、請求項1~5のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の粒子と、基材成分を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物を成形してなる、成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや樹脂は、自動車、建材、家電、OA機器等の部材として、様々な分野・用途で使用されている。部材によっては、摩擦抵抗が少なく、摺動性に優れることが求められる。
摺動性を付与する方法としては、部材に潤滑剤を直接塗布する方法、潤滑性のフィルムを部材に接着させる方法、基材と潤滑剤の混合物を成形して部材を作成する方法等があげられる。例えば、熱可塑性樹脂等の基材に、ウレタン系塗料やシリコン系塗料等を塗布して潤滑性被膜を形成する方法がある。しかし、形成される潤滑性被膜が基材と比べて硬いという問題があり、また、有機溶剤の使用制限や、多くの手間がかかる等の問題がある。
特許文献1には、摺動耐久性に優れた潤滑被膜形成用樹脂組成物として、液体潤滑剤を内包する熱硬化性樹脂からなるマイクロカプセルを含有する潤滑被膜形成用樹脂組成物が例示されている。しかし、特許文献1における方法においても、上記問題は解決できておらず、さらに、摺動性が長期間維持できない問題がある。また、熱可塑性樹脂等にシリコーンオイル等の滑剤を添加し、成形して得られる摺動部材が提案されているが、部材表面に滑剤がブリードアウトしやすく、時間経過とともに外観が損なわれ、また、繰り返し摩擦により、滑剤が除去され、摺動性が低下するという問題がある。
【0003】
特許文献2には、基材であるPPとEPDMにPE粒子を混練した摺動材が例示されている。PE粒子により、摺動材表面が凹凸化し、接触面を減らすため、摩擦係数や摩耗量が減少し、摺動性が良好となる。しかし、粒子の分散性が悪く、摺動性は十分とは言えず、また、摺動材の柔軟性に劣るという問題がある。
【0004】
特許文献3には、熱可塑性樹脂中にシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーとシリコーンパウダーとを混在させたことを特徴とする耐摩耗性熱可塑性樹脂組成物が例示されている。シリコーンパウダーを混在させることにより、シリコーンオイルがシリコーンパウダーに吸収されブリードアウトが抑制される。しかし、特許文献3においては、摺動性を長期間持続できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-73609号公報
【文献】国際公開公報2016/052029号 パンフレット
【文献】特開2000-109702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、摺動性を付与することができ、かつ、摺動性の長期持続性に優れる粒子、及びその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の重合性成分の重合体からなる外殻と、その外殻に内包される特定の内包物とから構成される粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、前記外殻に内包される内包物とから構成される粒子であって、前記単量体(A)が重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、前記単量体(B)が重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体であり、前記内包物が潤滑剤を含む、粒子である。
【0009】
本発明の粒子は、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が50~99.999重量%であり、前記重合性成分に占める前記単量体(B)の重量割合が0.001~50重量%であると、好ましい。
本発明の粒子は、前記単量体(A)が単量体(a1)を含み、前記単量体(a1)がカルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つであると、好ましい。
本発明の粒子は、前記潤滑剤の25℃における動粘度が10~100000mm/sであると、好ましい。
本発明の粒子は、前記潤滑剤が、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含むと、好ましい。
本発明の粒子は、内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)が0.05~0.999であると、好ましい。
【0010】
本発明の組成物は、上記粒子と、基材成分を含む。
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子は、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れ、分散性に優れる。
本発明の組成物は、上記粒子を含んでいるため、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、優れた外観を有する成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、上記組成物を成形して得られるので、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、優れた外観を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粒子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔粒子〕
本発明の粒子は、重合体からなる外殻と、その外殻に内包される内包物とから構成され、かつ内包物は潤滑剤を含有しており、摺動性を付与することができるものである。
本発明の粒子は、摺動性の長期持続性の効果をより高めるには、内部に1つ以上の独立した孔を有する構造であると好ましく、内部の孔に潤滑剤を含む粒子であると好ましい。特に、図1に示すように、重合体からなる外殻(シェル)1とそれに内包された内包物(コア)2とから構成されるコア-シェル構造を有する粒子であると、高い摺動特性が得られ、好ましい。また、外殻が連続した重合体であると好ましい。
本発明の粒子において、構成する外殻は単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体であり、単量体(A)が(ラジカル)重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体であり、単量体(B)が(ラジカル)重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である。
【0014】
外殻が、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体であることで、重合体の緻密性が向上し、多量の潤滑剤の染み出しや、特に成形加工時の粒子の潰れが抑制でき、好ましい。
【0015】
また成形体においては表面付近が、通常、摺動時の摩擦等の外力を受けるが、その際に、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体を外殻とする本発明の粒子は、外力により潤滑剤を放出し、さらにその量を制御できるため、摺動性の長期持続性に優れる。
【0016】
単量体(A)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体や、N-フェニルマレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体等のアミド結合を有する単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-クロルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル-2-エチルヘキシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル-4-ヒドロキシブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体、ビニルナフタリン塩等が挙げられる。カルボキシル基を有する単量体については、一部または全部のカルボキシル基が重合時に中和されていてもよい。なお本発明では、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また上記単量体(A)は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0017】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50~99.999重量%である。単量体(A)の重量割合が50重量%未満であると、内包する潤滑剤が粒子の外へ放出されないことがあり、単量体(A)の重量割合が99.999重量%超であると、重合体の緻密性が低下することがある。単量体(A)の重量割合の上限は、(1)99.99重量%、(2)99.9重量%、(3)99.7重量%、(4)99.5重量%、(5)99重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。単量体(A)の重量割合の下限は、(1)60重量%、(2)70重量%、(3)80重量%、(4)85重量%、(5)90重量%、(6)93重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0018】
単量体(A)は、カルボキシル基を有する単量体、ニトリル系単量体、アミド基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、ビニルエステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1つである単量体(a1)を含むと、外殻の強度が向上する点で好ましい。
単量体(A)が単量体(a1)を含む場合、単量体(A)に占める単量体(a1)の重量割合としては、特に限定はないが、好ましくは10重量%以上である。単量体(a1)の重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは97重量%、さらに好ましくは95重量%、特に好ましくは90重量%、最も好ましくは85重量%である。一方、単量体(a1)の重量割合の下限は、より好ましくは20重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは70重量%である。
【0019】
単量体(A)がカルボキシル基を有する単量体及び/またはニトリル系単量体を含むと、耐熱性の点で好ましい。
単量体(A)がカルボキシル基を有する単量体及びニトリル系単量体を含む場合、カルボキシル基を有する単量体とニトリル系単量体の合計重量に占めるニトリル系単量体の重量割合は、好ましくは5~95重量%である。ニトリル系単量体の重量割合の上限は、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは75重量%である。一方、ニトリル系単量体の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0020】
重合性成分に必須に含まれる単量体(B)は、得られる重合体に橋掛け構造(架橋構造)を導入する。これにより、重合体は緻密性が向上し、内包する潤滑剤の放出を制御できる。
単量体(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、ブタジエン等を挙げることができる。なお本発明では、また上記単量体(B)は、1種または2種以上を併用してもよい。また上記で、「PEG#○○○ジ(メタ)アクリレート」と表記されている一連の化合物は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートで、そのポリエチレングリコール部分の平均分子量が○○○であることを意味する。
【0021】
重合性成分に占める単量体(B)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.001~50重量%である。単量体(B)の重量割合が0.001重量%未満であると、有機樹脂の緻密性が低下することがあり、単量体(B)の重量割合が50重量%超であると、内包する潤滑剤が粒子の外へ放出されないことがある。単量体(B)の重量割合の上限は、(1)40重量%、(2)30重量%、(3)20重量%、(4)15重量%、(5)10重量%、(6)7重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。単量体(B)の重量割合の下限は、(1)0.01重量%、(2)0.1重量%、(3)0.3重量%、(4)0.5重量%、(5)1重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0022】
本発明の粒子において、内包物に含まれる潤滑剤は粒子から放出されることで、摺動性を付与することができる成分である。
潤滑剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、変性シリコーンオイル等のシリコーン系オイル;フルオロエチレン、3フッ素塩化エチレン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリアルキルエーテル等のフッ素系オイル;ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステルオイル、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート、一塩基酸及び二塩基酸の混合脂肪酸と多価アルコールとのオリゴエステルであるコンプレックスエステルオイル等のエステル系オイル;ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンとのコオリゴマー、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等の炭化水素系オイル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のエーテル系オイル;グラファイト;二硫化モリブデン(MoS);二硫化タングステン(WS);窒化ホウ素(BN);ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
また潤滑剤としては、上記オイルと増ちょう剤を含んだグリースを用いてもよい。増ちょう剤は、例えば、石鹸、ウレア、ナトリウムテレフタラート、有機ベントナイト、シリカゲル等の一般的なものが挙げられる。上記潤滑剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0023】
潤滑剤は、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、炭化水素系オイル、及びエーテル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含むと、摺動性を持続する点で好ましい。
シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、炭化水素系オイル、及びエーテル系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む場合、潤滑剤全体に占める重量割合は、特に限定はないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上であり、上限は100重量%である。
【0024】
潤滑剤の25℃における動粘度は、特に限定はないが、好ましくは10~100000mm/sである。潤滑剤の動粘度が10mm/s未満であると、潤滑剤が漏出しやすく、長期持続性に劣ることがある。一方、潤滑剤の動粘度が100000mm/s超であると、粒子から潤滑剤を漏出するために強い外力が必要となり、十分な摺動性が得られないことがある。潤滑剤の動粘度の上限は、(1)50000mm/s、(2)25000mm/s、(3)10000mm/s、(4)5000mm/sの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、潤滑剤の動粘度の下限は、(1)50mm/s、(2)100mm/s、(3)200mm/s、(4)500mm/s、(5)700mm/s、(6)1000mm/sの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。動粘度の異なる2種類以上の潤滑剤を併用してもよく、併用した際の動粘度が上記範囲であると好ましい。なお潤滑剤の25℃における動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計を用いて測定することができる。
【0025】
本発明の粒子は、内包物として、潤滑剤以外に、加熱することで気化する成分(以下、気化成分ということがある)を含むと、粒子が加熱により膨張する性質(熱膨張性)を有し、加熱による膨張により粒子の外殻の厚みを調整できる点で好ましい。また粒子が加熱により膨張する性質を利用し、成形体を軽量化できたり、成形体に柔軟性を付与することができ、好ましい。
加熱することで気化する成分としては、例えば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭化水素のハロゲン化物;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。
【0026】
気化成分が沸点を有する場合、気化成分の沸点は、特に限定はないが、好ましくは-30~300℃である。気化成分の沸点が上記範囲であると、粒子の外殻の厚みを効率的に調整することができる傾向がある。気化成分の沸点の上限は、(1)270℃、(2)200℃、(3)150℃、(4)130℃、(5)110℃、(6)100℃、の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、気化成分の沸点の下限は、(1)-15℃、(2)-5℃、(3)0℃、(4)5℃の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)
【0027】
粒子全体に占める内包物の重量割合(以下、単に内包物の内包率ということもある)は、特に限定はないが、好ましくは5~80重量%である。内包物の内包率が5重量%未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。一方、内包物の内包率が80重量%超であると、摺動性の長期持続性が劣ることがある。内包率の上限は、(1)70重量%、(2)60重量%、(3)55重量%、(4)50重量%、(5)45重量%、(6)40重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、内包率の下限は、(1)10重量%、(2)13重量%、(3)15重量%、(4)18重量%、(5)20重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお本発明の粒子に占める内包物の重量割合は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0028】
内包物に占める潤滑剤の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20~100重量%である。内包物に占める潤滑剤の重量割合が20重量%未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。内包物に占める潤滑剤の重量割合の下限は、(1)30重量%、(2)40重量%、(3)50重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、内包物に占める潤滑剤の重量割合の上限は、(1)99重量%、(2)97量%、(3)95重量%、(4)93重量%、(5)90重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0029】
内包物に占める気化成分の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0~80重量%である。内包物に占める気化成分の重量割合が80重量%超であると、十分な摺動性を付与できないことがある。内包物に占める気化成分の重量割合の上限は、(1)70重量%、(2)60重量%、(3)50重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、内包物に占める気化成分の重量割合の下限は、(1)1重量%、(2)3重量%、(3)5重量%、(4)7重量%、(5)10重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0030】
本発明の粒子は、加熱により膨張させてなる粒子でもよい。
粒子の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.02~2.0g/cmである。真比重が0.02g/cm未満であると、粒子の強度が十分ではなく、摺動性の長期持続性が劣ることがある。一方2.0g/cm超であると、粒子を配合した成形体の比重が大きくなることがある。粒子の真比重の上限は、(1)1.70g/cm、(2)1.65g/cm、(3)1.50g/cm、(4)1.45g/cm、(5)1.30g/cm、(6)1.25g/cmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、粒子の真比重の下限は、(1)0.030g/cm、(2)0.045g/cm、(3)0.060g/cm、(4)0.10g/cm、(5)0.15g/cm、(6)0.20g/cmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0031】
本発明の粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.1~200μmである。粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な摺動性を付与できないことがある。一方、粒子の平均粒子径が200μm超であると、摺動性の長期持続性が劣ることがある。粒子の平均粒子径の上限は、(1)150μm、(2)120μm、(3)100μm、(4)75μm、(5)60μm、(6)50μm、(7)45μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、粒子の平均粒子径の下限は、(1)0.5μm、(2)1μm、(3)3μm、(4)5μm、(5)10μmの順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお本発明の粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0032】
本発明の粒子の内径(d1)と外径(d2)の比(d1/d2)は、特に限定はないが、好ましくは0.05~0.999である。粒子のd1/d2が0.05未満であると、十分な摺動性を付与できないことがあり、d1/d2が0.999超であると、粒子が潰れやすく、摺動性の長期持続性が劣ることがある。d1/d2の上限は、(1)0.995(2)0.990、(3)0.95、(4)0.90、(5)0.85、(6)0.80の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、d1/d2の下限は、(1)0.10、(2)0.20、(3)0.30、(4)0.40、(5)0.45の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。なお本発明の粒子のd1/d2は、実施例に記載の方法で測定されたものを意味する。
【0033】
〔粒子の製造方法〕
本発明の粒子について、その製造方法は特に限定はないが、水性分散媒中に、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体である単量体(A)と重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である単量体(B)を含む重合性成分と、潤滑剤とを分散させて、重合性成分を重合させる工程(重合工程)を含む方法であると、好ましい。重合工程は水性分散媒中に重合性成分と潤滑剤を含む油性混合物を分散させ、重合性成分を重合させる工程であり、油性混合物は、重合性成分と潤滑剤以外に、気化成分を含んでいてもよい。
【0034】
重合工程では、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、油性混合物に含まれるとよい。
重合開始剤としては、例えば、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド等の過酸化物;アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアルキル、高分子アゾ開始剤等のアゾ化合物;レドックス開始剤等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。なお重合開始剤としては、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
使用する重合開始剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましく0.05~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、さらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0035】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、分散安定剤、分散安定補助剤、重合助剤、電解質等を配合して調製される。
本発明の粒子について、その製造方法としては、液滴を安定させ、粒子径を制御するために、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤としては、特に限定はないが、有機系分散安定剤及び/又は無機系分散安定剤であると好ましい。
有機系分散安定剤としては、例えば、微粒子安定剤や水溶性高分子、ナノセルロース等が挙げられる。微粒子安定剤としては、例えば、ピッカリングエマルションに用いられているものが挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。
無機系分散安定剤としては、例えば、粘土鉱物、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。使用する分散安定剤の量は、油性混合物100重量部に対して、好ましくは0.05~100重量部、さらに好ましくは0.2~70重量部である。
【0036】
液滴の安定性および粒子径の制御のために、さらに分散安定補助剤を併用してもよい。分散安定補助剤としては、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0037】
水性分散媒は、電解質を含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量は、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部である。
【0038】
水性分散媒は、重合助剤を含有してもよい。重合助剤を含有することで、粒子の凝集や重合反応器内のスケール発生(具体的には、重合性成分の重合において、重合物が粒子の外殻表面に強固に付着することによる凝集体や、重合反応器内壁への重合物の付着)を抑制することができる。
重合助剤としては、例えば、亜硝酸塩、亜硫酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、重クロム酸塩、塩化第二スズ、ヒドロキノン、エチレンジアミン四酢酸塩、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類等が挙げられる。これらの重合助剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0039】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に分散させる。油性混合物を分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、重合を行う。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、油性混合物や重合後の粒子の浮上や沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0040】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~90℃の範囲で制御されるとよい。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については、特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0~5MPa、より好ましくは0.02~3MPaの範囲であるとよい。
【0041】
本発明の粒子は、スラリーの状態でもよく、湿粉の状態でもよく、乾燥した粉末の状態でもよい。本発明の粒子が湿粉の状態のものである場合、例えば、上記製造方法によって得られた粒子を含有するスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて脱水し、得ることができる。このような湿粉の含水率は、特に限定はないが、通常10~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%である。
また、上記で得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末とすることができる。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥した粉末を得てもよい。
【0042】
本発明の粒子について、その製造方法は上記で説明した方法以外にも、例えば、界面重合法、逆相乳化法、乳化重合法等が挙げられる。また水性分散媒中で液滴を作製しない方法として、例えば、液中乾燥法、コアセルベーション法、噴霧乾燥法、乾式混合法等で製造することも可能であると考えられる。
【0043】
〔組成物〕
本発明の組成物は、上記粒子と基材成分を含むものであり、摺動性を有し、摺動性が長期間持続し、且つ優れた外観を有する成形体を得ることができる。
基材成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエーテルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック等が挙げられる。これらの基材成分は、1または2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物は、粒子と基材成分以外に、用途に応じて、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤、溶剤、潤滑剤、本発明の粒子以外の粒子、有機粉末、無機粉末等を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の組成物に含まれる粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~400重量部である。粒子の含有量の下限は、より好ましくは0.3重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは1重量部である。粒子の含有量の上限は、より好ましくは250重量部、さらに好ましくは150重量部、特に好ましくは100重量部である。粒子の含有量が上記範囲内であると、十分な摺動性を有し、摺動性の長期持続性に優れる成形体を得ることができるため好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、粒子と基材成分および必要に応じて各種添加剤を混合することで得られる。また、粒子と基材成分を含む組成物を作成した後、さらに基材成分と混合して組成物とすることもできる。粒子と比較的融点の低い基材成分を含む組成物を作成した後、さらに基材成分と混合して組成物とすることで、粒子の分散性に優れ、好ましい。比較的低い融点としては、特に限定はないが、好ましくは50~200℃、より好ましくは50~170℃、さらに好ましくは50~140℃、特に好ましくは50~110℃、最も好ましくは50~80℃である。
混合方法は、例えば、混合攪拌機、ミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することができる。
【0046】
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。
成形方法としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いにより、押出成形法、射出成形法、真空成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、RIM成形、注型成形法、等の、広く一般的に用いられている成形方法を採用することができる。
本発明の成形体に含まれる前記粒子の量は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.3~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部、特に好ましくは1~8重量部である。
本発明の成形体は、優れた摺動性を有するため、自動車分野、建材分野、OA機器分野、家電、電子機器分野等の様々な部材として、工業的に広く利用することができる。中でも、車両用シール材や建築用シール材として好適に用いることができる。
【実施例
【0047】
以下に、本発明の粒子の実施例について、具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における物性の測定方法、評価項目と評価方法は以下に示す通りである。以下では、「%」および「部」は、それぞれ「重量%」および「重量部」ということがある。
【0048】
<粒子の平均粒子径>
レーザー回折散乱式粒度分析計(Microtrac ASVR、日機装株式会社製)を用いて測定し、体積基準の累積50%粒子径(D50)を平均粒子径とした。
【0049】
<粒子全体に占める内包物の重量割合(内包物の内包率)>
粒子1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量を測定した(W(g))。アセトニトリル30mLを加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥した。減圧乾燥後の試料をヘキサン30mLで3回洗浄後、100℃で10分乾燥し、その重量)を測定した(W(g))。
またカールフィッシャー水分計(MKA-510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて粒子の含水率を測定し、C(重量%)とした。
上記W、W、Cより、粒子における内包物の内包率(C(重量%))を下記式(1)から算出した。
C=100×[(W―W)-C/100]/(1.0-C/100) (1)
【0050】
<粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)>
上記Cより、粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)を下記式(2)から算出した。
d1/d2=(C/100)1/3 (2)
【0051】
<粒子の真比重(D)>
イソプロピルアルコールを用いて、浸液式ピクノメータ法により25℃における粒子の真比重を測定した(D)。
【0052】
<成形体中の粒子の平均粒子径>
作成した成形体の断面を電子顕微鏡にて粒子が50個以上画面上に入る倍率で撮影し、画像解析により平均粒子径を求めた。
【0053】
<成形体中の粒子の真比重>
作成した成形体中の粒子の真比重については、作成した成形体の比重より換算した(D)。なお、成形品比重は測定液にイオン交換水を用い、25℃でアルキメデス法により測定した。
【0054】
<成形体中の粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)>
上記C、D、Dより、作成した成形体中の粒子の内径(d1)と外径(d2)との比(d1/d2)を下記式(3)から算出した。
d1/d2=[{(D/D)-1+(C/100)}/(D/D)]1/3 (3)
【0055】
<摺動性付与評価>
製造した粒子3部とミラストマー8032BS(三井化学株式会社製、熱可塑性オレフィン系エラストマー)97部を混合し、組成物を得た。
次に、ラボプラストミル(2軸押出成形機ME-25、東洋精機工業株式会社製)およびTダイ(リップ幅150mm、厚み0.7mm)を用いて、押出成形機およびTダイの設定温度(成形温度)を180℃に設定し、スクリュー回転数を50rpmに設定した。
得られた組成物をラボプラストミルの原料ホッパーから投入し、成形体であるシートを作成した。作成したシートの動摩擦係数を、摩擦測定器(FRICTION TESTER TR-2、東洋精機工業株式会社製)を用いて測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より粒子の摺動性付与評価を行った。なお、粒子を含有していないシートの動摩擦係数は0.92であった。
○○○:動摩擦係数が0.5未満で、摺動性付与効果に優れる。
○○:動摩擦係数が0.5以上0.65未満で、摺動性付与効果が良い。
○:動摩擦係数が0.65以上0.8未満で、摺動性付与効果がやや良い。
×:動摩擦係数が0.8以上で、摺動性付与効果に劣る。
【0056】
<摺動性持続評価1>
上記摺動性付与評価にて評価したシートの表面を、上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器にて、測定速度100mm/分における動摩擦係数が0.85~0.95になるまで乾布で拭取り、40℃で1ヶ月間保管した。保管後のシートの動摩擦係数を上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器により、測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より粒子の摺動性持続評価(摺動性持続評価1)を行った。なお、摺動性持続係数を下記にて算出した。摺動性持続係数は、数値が小さいほど、摺動性持続に優れることを示す。
摺動性持続係数1=[1ヵ月後の動摩擦係数/初期の動摩擦係数(上記摺動性付与評価時の動摩擦係数)]×100
○○:摺動性持続係数1が90未満で、摺動性持続効果に優れる。
○:摺動性持続係数1が90以上130未満で、摺動性持続効果にやや優れる。
△:摺動性持続係数1が130以上180未満で、摺動性持続効果にやや劣る。
×:摺動性持続係数1が180以上で、摺動性持続効果に劣る。
【0057】
<摺動性持続評価2>
上記摺動性持続評価1にて評価したシートの表面を、上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器にて、測定速度100mm/分における動摩擦係数が0.85~0.95になるまで乾布で拭取り、40℃で1ヶ月間保管した。保管後のシートの動摩擦係数を上記摺動性付与評価にて使用した摩擦測定器により、測定速度100mm/分で測定し、以下の基準より粒子の摺動性持続評価(摺動性持続評価2)を行った。なお、摺動性持続係数を下記にて算出した。摺動性持続係数は、数値が小さいほど、摺動性の長期持続性に優れることを示す。
摺動性持続係数2=[2ヵ月後の動摩擦係数/初期の動摩擦係数(上記摺動性付与評価時の動摩擦係数)]×100
○○:摺動性持続係数2が90未満で、摺動性持続効果に優れる。
○:摺動性持続係数2が90以上130未満で、摺動性持続効果にやや優れる。
△:摺動性持続係数2が130以上180未満で、摺動性持続効果にやや劣る。
×:摺動性持続係数2が180以上で、摺動性持続効果に劣る。
【0058】
<粒子の分散性評価>
作成したシートの状態を目視で確認し、粒子の分散性を以下の基準より評価した。
○:粒子が凝集して視認できる粒子塊が確認されない。
×:粒子が凝集して視認できる粒子塊が多く確認される。
【0059】
<成形体の外観評価>
作成したシートを40℃で2ヶ月保管した。2ヶ月保管後のシート表面を目視で確認し、成形体の外観を以下の基準より評価した。なお、ブランクとは、粒子を含有していないシートである。
○:ブランクの外観と差がなく、外観性に優れる。
△:テカリや液体による濡れが確認され、外観性にやや劣る。
×:白化などの色目の変化が確認され、外観性に劣る。
【0060】
(実施例1)
メタクリル酸メチル140部、ジメタクリル酸エチレングリコール2部、ジラウロリルパーオキサイド1.5部、ジメチルポリシロキサン(シリコーンKF-96-100cs、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度100mm/s)63部を混合し、油性混合物を調製した。
これとは別に、イオン交換水550部、塩化ナトリウム110部、ポリビニルピロリドン0.8部、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ60部を加え、pH2~4に調整し、水性分散媒を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーで攪拌し、懸濁液を調製した。この懸濁液を窒素ガスで0.3MPaに加圧した重合容器内で、70℃で6時間重合させた。
重合後に得られた生成物から粒子をろ過、乾燥して、粒子を製造した。製造した粒子の物性の測定と、粒子の評価を上記に示す方法にて実施した。結果を表1、3に示す。
【0061】
(実施例2~13、比較例1、2)
油性混合物を表1~2に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして粒子をそれぞれ製造した。製造した粒子の物性の測定及び評価を実施例1と同様に行った。結果を表1~4に示す。なお、実施例11にて使用した潤滑剤の25℃における動粘度は400mm/sであった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1~2に記載の使用原料の略号の詳細を以下に示す。
EDMA:ジメタクリル酸エチレングリコール
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
1,9ND-A:1,9-ノナンジオールジアクリレート
KF-96-100cs:シリコーンKF-96-100cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が100mm/s
KF-96-1000cs:シリコーンKF-96-1000cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が1000mm/s
KF-96H-1万cs:シリコーンKF-96H-1万cs、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が10000mm/s
KF-96H-10万cs:シリコーンKF-96H-10万、ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、25℃における動粘度が100000mm/s
フッ素オイル:1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、
エステルオイル:ジイソトリデシルアジペート、25℃における動粘度が250mm/s
なお上記略号は以下の記載においても、それぞれの原料を示す。
【0065】
(実施例14)
ミラストマー8032BSを85部と実施例1で製造した粒子15部を二軸混練機にて混練し、ペレット状に裁断して、マスターバッチを作成した。次に、ミラストマー8032BSを80部と作成したマスターバッチ20部を混合し、混合物を得た。得られた混合物を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価と、粒子の分散性評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0066】
(比較例3)
ポリエチレン無水マレイン酸3.5gをイオン交換水50gに溶解した後、pHを約4に調整し、水性混合液を得た。この水性混合液にジメチルポリシロキサン(KF-96-1000cs)35gを加え、攪拌し、乳化液を調整した。この乳化液に、pH12に調整したメラミン6g、37%ホルムアルデヒド水溶液11gの混合溶液を添加し、pHを約4に調整した。80℃で3時間界面重合を実施し、重合後に得られた生成物から粒子をろ過、乾燥して、粒子を製造した。製造した粒子の平均粒子径は8μmであった。
製造した粒子を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価と、粒子の分散性評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。なお、成形体中の粒子については、均一な粒子形状を有しておらず、粒子径の算出ができなかった。
【0067】
(比較例4)
99部のミラストマー8032BSと、1部のKF-96-100csを混合して、混合物を得た。得られた混合物を使用して、上記摺動性付与評価に記載された方法と同様にして成形し、シートを作成した。作成したシートの摺動性付与評価、摺動性持続評価1、摺動性持続評価2及び成形体の外観評価を実施例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
表3~4より、単量体(A)と単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなる外殻と、それに内包される内包物とから構成され、内包物が潤滑剤を含む粒子であれは、摺動性を付与し、摺動性の長期持続性に優れ、分散性に優れる。また、気化成分をさらに内包すると、軽量な成形体を作成することもできる。
一方、潤滑剤を含有していない比較例1では、十分な摺動性が得られない。また、単量体(B)を含まない比較例2や、熱硬化性樹脂からなる潤滑剤内包粒子である比較例3では、初期の摺動性には、優れているものの、長期持続性は十分ではない。
【符号の説明】
【0071】
1 重合体からなる外殻
2 内包物

図1