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特許7518751調芯機構および同機構を備えた自動締結機
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  • 特許-調芯機構および同機構を備えた自動締結機 図1
  • 特許-調芯機構および同機構を備えた自動締結機 図2
  • 特許-調芯機構および同機構を備えた自動締結機 図3
  • 特許-調芯機構および同機構を備えた自動締結機 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】調芯機構および同機構を備えた自動締結機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
B23P19/06 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020210006
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096809
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-112835(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0076078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動を受けて回転する工具の外径より大きい保持穴が形成された保持ブロックと、この保持ブロックの保持穴に内接している弾性保持部と、この弾性保持部に保持され、前記工具を案内するガイド部とから構成されており、
前記ガイド部は、前記工具を昇降自在に案内する滑り軸受と、この滑り軸受を回転自在に保持する転がり軸受けとからなる2層構造であり、前記弾性保持部に前記保持穴の中心に向かって付勢されていることを特徴とする調芯機構。
【請求項2】
前記保持穴の内壁には、環状突起が設けられており、前記弾性保持部はこの環状突起を挟むように設けられた一対のゴム製リングから構成され、
前記ガイド部の外周には、前記ゴム製リングを前記環状突起に向かい押圧する押圧部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の調芯機構。
【請求項3】
締結部品に係合可能な締付工具を回転駆動させるドライバユニットと、このドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備えた自動締結機において、
締付工具の外径より大きい保持穴が形成された保持ブロックと、この保持ブロックの保持穴に内接している環状の弾性保持部と、この弾性保持部に内接し、前記締付工具を案内するガイド部とから構成されており、
前記ガイド部は、前記締付工具を昇降自在に案内する滑り軸受と、この滑り軸受を回転自在に保持する転がり軸受けとからなる2層構造であり、前記弾性保持部に前記保持穴の中心に向かって付勢されていることを特徴とする自動締結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を調芯する調芯機構および同機構を備える自動締結機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバビットやボックスビット等を所定の位置に調芯する調芯機構としては、特許文献1に示されたものが知られている。この調芯機構は、挿通穴の底に締め付けられたねじを外すねじ緩め機に適用されているものであり、ねじ緩め装置のドライバビットが挿通する略円錐状のリング部を有している。このリング部は、前記ドライバビットを挿通穴に挿入した際、この挿通穴の開口部に嵌合可能に構成されており、このリング部が挿通穴に嵌合することにより、ドライバビットの振動を防止して、挿通穴およびねじに調芯している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-133268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の調芯機構は、前記リング部を挿通穴に嵌合させる必要があった。そのため、挿通穴を有さない平坦なワークに締結されたねじを外す場合等、リング部が嵌合していない状態では、ドライバビットの振動を防止できず、ドライバビットをねじに調芯することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、ワークの形状に関係なく工具を所定の作業位置に調芯可能な調芯機構の提供を目的とする。この目的を達成するため、本発明は、回転駆動源の駆動を受けて回転する工具の外径より大きい保持穴が形成された保持ブロックと、この保持ブロックの保持穴に内接している弾性保持部と、この弾性保持部に保持され、前記工具を案内するガイド部とから構成されており、前記ガイド部は、前記弾性保持部に前記保持穴の中心に向かって付勢されていることを特徴とする。これにより、前記工具は、ガイド部を介して常時弾性保持部により付勢されているため、回転時の振動が防止される。また、ガイド部を保持する弾性保持部が変形することにより、ガイド部および工具が傾斜あるいは移動可能となる。なお、前記ガイド部は、前記工具を昇降自在に案内する滑り軸受と、この滑り軸受を回転自在に保持する転がり軸受けとからなる2層構造であることが好ましい。これにより、ガイド部は、工具を回転自在および昇降自在に案内する。また、前記保持穴の内壁には、環状突起が設けられており、前記弾性保持部はこの環状突起を挟むように設けられた一対のゴム製リングから構成され、前記ガイド部の外周には、前記ゴム製リングを前記環状突起に向かい押圧する押圧部が形成されていることが好ましい。これにより、ガイド部は、ゴム製リングを介して保持穴内の環状突起を挟持して固定される。このため、長期間使用しても保持ブロックから外れることがない。
【0006】
本発明のもう一つは、締結部品に係合可能な締付工具を回転駆動させるドライバユニットと、このドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備えた自動締結機において、締付工具の外径より大きい保持穴が形成された保持ブロックと、この保持ブロックの保持穴に内接している環状の弾性保持部と、この弾性保持部に内接し、前記締付工具を案内するガイド部とから構成されており、前記ガイド部は、前記弾性保持部に保持穴の中心に向かって付勢されていることを特徴とする自動締結機である。この構成によれば、締結工具の回転時の振動を防止するとともに、締結時、締結工具およびガイド部が締結部品に従動可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調芯機構によれば、ガイド部が常時弾性保持部に付勢されており、工具の振動を防止されるとともに、弾性保持部が変形可能な範囲でガイド部および工具の傾斜等が許容されるため、ワークの形状に影響されることなく、工具を所定の作業位置に調芯可能等という利点がある。また、弾性保持部が変形することにより、ガイド部および工具の破損を防止可能等の利点もある。また、ガイド部が工具を回転自在および昇降自在に案内するため、工具とガイド部との接触抵抗が減少する。これにより、回転駆動源が発した回転トルクを所定の作業対象にまで効率よく伝達可能となる等の利点がある。さらに、ガイド部がゴム製リングを介して保持穴内の環状突起を挟持するため、ガイド部が保持ブロックから外れることがなく、長期間使用可能等の利点がある。
【0008】
また、本発明の自動締結機によれば、締結工具が予め所定の位置に固定されている保持ブロックにガイドされているため、締結個所の形状に関係なく常時締結工具の振れを防止でき、締結工具を締結個所に調芯可能等の利点がある。また、弾性保持部が変形することにより、締付工具とガイド部との間で接触抵抗が生じ難く、回転駆動源が出力した締付トルクを締結部品まで円滑に伝達可能となる。このため、適正な締付トルクでの締付が可能となり、締付不良を防止できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る調芯機構の要部を示す概略斜視図である。
図2】本発明に係るねじ締め機を示す全体図である。
図3図2のA-A線に沿った要部拡大断面図である。
図4図3から次の状態に移る動作図であり、(a)は、ガイド部がビット軸に従い移動している状態を示す要部拡大断面図であり、(b)は、ガイド部がビット軸に従い傾斜している状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る調芯機構4および当該機構が付設される作業機の一例である自動締付機、特に、ワークWに仮止めされたボルトBを増し締めするボルト締結機1について、図面に基づき説明する。このボルト締結機1は、別途設けられる水平多関節ロボット等の移動操作機構の駆動を受け、前記ボルトBの上方まで搬送されるものであり、図2に示すように移動操作機構に連結される位置制御機構2と、この位置制御機構2の駆動を受けて昇降可能に構成されるドライバユニット3とを備えている。
【0011】
前記位置制御機構2は、前記移動操作機構に支持される基台21を有しており、この基台21は、鉛直方向に延びる鉛直部材211と、この鉛直部材211の上下端それぞれに固定される上板212および下板213とからなるコの字状に構成されている。この基台21の上板212および下板213の間には、ボールねじ22が回転自在に支持されているとともに、上板212上には、ボールねじ22を回転駆動させる昇降モータ23が載置されている。また、前記ボールねじ22には、当該ボールねじ22の回転により昇降ブロック24が螺合しており、この昇降ブロック24には、ガイドシャフト25が貫通している。このガイドシャフト25は、前記基台21の上板212および下板213の間に設けられる棒状部材であり、前記昇降ブロック24が軸方向の摺動自在に構成されている。これにより、前記昇降ブロック24が位置制御機構2に対して、傾斜することが防止される。さらに、前記昇降ブロック24には、前記ドライバユニット3が一体に連結されている。このため、ドライバユニット3は、前記移動操作機構の駆動を受け、ボルトBの上方まで搬送されるとともに、これら位置制御機構2の駆動を受け、ボルトBの上方で昇降可能となる。
【0012】
前記ドライバユニット3は、回転駆動源の一例として、ACサーボモータ31(以下、締付モータ31という)を備えており、この締付モータ31は、前記位置制御機構2の昇降ブロック24に固定される中空状のハウジング32上に設置されている。このハウジング32の内部には、締付モータ31の出力軸311が連結する接続継手33が回転自在に内包されており、この接続継手33には、下方に向かい延びるビット軸34が連結されている。このビット軸34は、その下端にボックスビット35が連結されており、このボックスビット35の下面には、ボルトBの頭部と嵌合可能な嵌合部351が形成されている。また、接続継手33とビット軸34との連結個所には、ビット軸34を常時下方に向かい付勢するクッションばね36が設けられており、ビット軸34は、締付モータ31に対して軸方向に相対移動可能に構成されている。さらに、前記ビット軸34は、前記基台21の下板213に貫通形成された保持穴214を通過して下方に向かって延びており、この保持穴214には、本発明の要部である調芯機構4が設けられている。
【0013】
前記調芯機構4は、図1および図3に示すように保持穴214が形成された下板213と、この下板213の保持穴214に内接している一対のゴム製リング41,41と、このゴム製リング41,41に内接し、ビット軸34を案内するガイド部42とから構成されており、このガイド部42は、ゴム製リング41,41によって常時保持穴214の中心に向かって付勢されている。また、ガイド部42は、前記ビット軸34を昇降自在に挿通させる滑り軸受43と、この滑り軸受43を回転自在に保持する転がり軸受44,44とからなる2層構造に構成されている。これら構造により、ガイド部42は、ビット軸34を回転自在および昇降自在に案内するとともに、その外周に位置する前記ゴム製リング41,41が許容する範囲で移動および傾斜することが可能となる。
【0014】
なお、本実施形態において、前記保持穴214は、その内周面の高さ方向中央に環状突起215が形成されており、前記ゴム製リング41,41は、この環状突起215を上下に挟むよう設けられている。また、前記転がり軸受44,44の外周には、その上端部あるいは下端部に環状の押圧部45,45が設けられており、この押圧部45,45は、前記ゴム製リング41,41を前記環状突起215に向かって常時押圧している。さらに、前記滑り軸受43は、その上端部に径方向外側に向かい延びるフランジ部431が形成されるとともにその下端部にCリング432が装着されており、これらフランジ部431およびCリング432によって前記転がり軸受44,44を挟持している。これら構造により、ガイド部42は、ゴム製リング41を介して環状突起を挟持するため、長期間使用しても、ゴム製リング41およびガイド部42が下板213から脱落することがない。なお、前記押圧部45は、その断面が前記環状突起215と対向する斜辺を有する直角三角形状に構成されている。
【0015】
次に上記のように構成された調芯機構4およびボルト締結機1の作用を説明する。
前記ボルト締結機1は、前記移動操作機構が駆動して、図2に示すようにドライバユニット3をボックスビット35がワークWに仮止めされたボルトBと同軸上となる位置に移動する。この移動後、昇降モータ23が正転駆動を行いドライバユニット3がねじに向かって降下するとともに、前記締付モータ31が正転駆動を行い、ビット軸34をボルトBの締付方向に回転駆動させる。この時、前記ビット軸34は、図3に示すように調芯機構4により保持穴214の中心に向かい付勢されている。このため、前記締付モータ31の出力軸311と接続継手33との間あるいは接続継手33とビット軸34との間に設けられる若干のクリアランスや、ビット軸34の加工段階に生じた微少な反り等によって、ビット軸34が回転振動することが防止され、前記ボックスビット35の嵌合部351と、前記ボルトBの頭部とが円滑に嵌合可能となる。この時、ビット軸34を付勢しているクッションばね36が撓み、当接時の衝撃を吸収するため、ワークWやボルトB等の破損が防止される。その後、ボックスビット35が締付モータ31の駆動を受けて、回転駆動することで、ワークWにボルトBが締結される。なお、調芯機構4は、ボルト締結機1の下板213に配設されている。このため、ワークWの締付個所周辺の形状に影響されることなくビット軸34の振動を防止可能となる。
【0016】
上述のような締付作業において、ボルトBがワークWに対して傾いて仮止めされていたり、ワークWに形成されたボルト締結用の下穴の位置が正規位置からずれていたりして、ボックスビット35とボルトBの軸線が一致していない場合、ビット軸34は、前記接続継手33を支点として若干揺動して、ボックスビット35をボルトBに調芯させる。これにより、ボックスビット35がボルトBと嵌合可能となる。この時、ビット軸34を保持するガイド部42の外周にゴム製リング41,41が設けられているため、ガイド部42は、図4の(a)および図4の(b)に示すようにゴム製リング41,41が変形可能な範囲でビット軸34に合わせて移動あるいは傾斜する。これにより、ビット軸34がガイド部42を過度に押圧することがなく、滑り軸受43、転がり軸受44,44およびビット軸34等の破損が防止される。また、ビット軸34と滑り軸受43との間に発生する接触抵抗が低減するとともに転がり軸受44,44が過度に押圧されて円滑に回転出来なくなることが防止される。これにより、締付モータ31が出力した締付トルクが接触抵抗等に消費されることがなくボルトBまで伝達される。結果、ボルトBを適正な締付トルクでの締め付けることができ、締付性能が向上する。また、押圧部45の断面が前記環状突起215と対向する斜辺を有しているため、図4の(b)に示すようにビット軸34およびガイド部42が傾斜した際、押圧部45の斜面でゴム製リング41を押圧する構造となる。このため、ゴム製リング41に傷がつきにくくなり、長期間の使用が可能となる。
【0017】
なお、本発明に係る調芯機構4およびボルト締結機1は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、調芯機構4は、回転駆動する工具を有していれば、ボルト締結機1に限らず、ねじ締結機等、他の作業機に適用されていてもよい。また、本実施形態において、前記ゴム製リング41およびガイド部42を保持する保持穴214が形成された保持ブロックの一例として、基台21の下板213を用いたが、これに限定されず、作業機に合わせて、形状、厚さ、連結対象等が変更されても何ら問題ない。
【0018】
また、前記ガイド部42は、工具の種類、用途等に合わせて、滑り軸受43あるいは転がり軸受44,44のどちらか一方のみからなる構成であってもよい。さらに、前記ゴム製リング41,41は、前述のようにガイド部42を付勢する弾性保持部の一例で有り、この弾性保持部は、前記ガイド部42を付勢可能かつ調芯機構4が下板213から脱落しないよう構成されていれば、その他形状であっても何ら問題ない。
【0019】
1 …ボルト締結機
2 …位置制御機構
213…保持ブロック
214…保持穴
215…環状突起
3 …ドライバユニット
31 …回転駆動源
34 …工具
4 …調芯機構
41 …弾性保持部
42 …ガイド部
43 …滑り軸受
44 …転がり軸受け
図1
図2
図3
図4