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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】車検作業管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240710BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216468
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102013
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】生駒 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】荒金 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 賢祐
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-225017(JP,A)
【文献】特開2020-101880(JP,A)
【文献】特開2004-078275(JP,A)
【文献】特開2020-106898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車検において作業権限が異なる複数の検査工程及び整備工程を管理する車検作業管理システムであって、
一又は複数の作業者における作業者権限情報を取得する作業者情報取得部と、
一又は複数の前記車両における車両情報及び検査内容を取得する車両検査内容取得部と、
前記車両における前記検査内容についての検査結果を取得する検査結果取得部と、
前記作業者による前記検査工程及び前記整備工程における作業状況を判定する作業状況判定部と、を有し、
前記作業状況判定部は、
前記作業者権限情報に基づいて、前記検査工程及び前記整備工程における作業権限に適合する工程に対して作業開始の許可を行うと共に、前記検査結果に基づいて、次工程における作業内容と前記作業者とを判定すること、を特徴とする車検作業管理システム。
【請求項2】
前記検査工程及び前記整備工程の作業状況を通知する作業状況通知部を有し、
前記作業状況通知部は、次工程の作業者に、前工程の完了を通知すること、を特徴とする請求項1に記載の車検作業管理システム。
【請求項3】
前記検査工程及び前記整備工程における作業開始から作業完了までの作業時刻を記録する作業時間情報取得部を有し、
前記作業状況判定部は、前記作業者権限情報に基づいて、前記検査工程及び前記整備工程における作業権限に適合する工程に対して作業開始の許可を行うと共に、前記検査結果及び前記作業時刻の情報に基づいて、次工程における作業内容と前記作業者とを判定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の車検作業管理システム。
【請求項4】
複数の端末装置と、前記端末装置と通信が可能なサーバー装置と、を有し、
前記端末装置が、複数の前記作業者に関連付けられると共に、前記作業者による作業情報を取得して、当該作業情報を前記サーバー装置に送信可能なものであり、
前記サーバー装置が、前記作業情報を蓄積するデータベース部を有し、
前記データベース部に蓄積された前記作業情報に基づいて、前記作業者毎の作業状況を管理可能であること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車検作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車検作業管理システムに関する。さらに詳しくは、自動車等の車両における車検作業を管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車検は、道路運送車両法に定められており、車両における所定の装置について、保安基準に適合するか否かを点検及び検査するものである。また、車検においては、作業者の権限、作業手順、作業順序、結果の記載要領や記録書面の保管期限に至るまで、様々な事項について詳細に法律で規定されている。例えば、作業順序は、受入点検、整備、検査の順に行うことが法律で規定されており、検査時に整備が必要となった場合は、受入点検から手戻りして工程通りの作業をやり直す必要がある。上述のように、車検に係る作業は、非常に複雑である。そこで、事業所の管轄エリア毎に整備記録簿の入力様式を提供し、当該入力様式に沿ってユーザー(作業者に相当)に入力させることで、作業者による入力ミスを防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-146922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車検の作業場は、人手不足に伴う作業効率化の要請から、1人の整備士(以下、検査員、整備主任者を含む)が複数の車両の点検・整備を横断的に行っている。また、複数の整備士により、1台の車両の点検・整備を行って欲しいという要請もある。また、上述のように車検に係る作業は、複雑であり、さらに上述のような要請に伴い、効率良く確実に作業を完了させることが一層困難となってきている。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に係る発明は、車検に係る記録簿の入力フォーマットを提供するものであり、作業が適切な整備士(作業者とも称する)によって行われたものであるのかを判断することができない問題がある。そのため、誤った作業が実施される可能性がある。また、権限毎、車両毎、あるいは、作業工程毎に作業者を割り当てるものではないため、効率的に作業を行うことができない問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、車検における複雑な作業を過誤なく、効率的に行うことが可能な車検作業管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車検作業管理システムは、車両の車検において作業権限が異なる複数の検査工程及び整備工程を管理する車検作業管理システムであって、一又は複数の作業者における作業者権限情報を取得する作業者情報取得部と、一又は複数の前記車両における車両情報及び検査内容を取得する車両検査内容取得部と、前記車両における前記検査内容についての検査結果を取得する検査結果取得部と、前記作業者による前記検査工程及び前記整備工程における作業状況を判定する作業状況判定部と、を有し、前記作業状況判定部は、前記作業者権限情報に基づいて、前記検査工程及び前記整備工程における作業権限に適合する工程に対して作業開始の許可を行うと共に、前記検査結果に基づいて、次工程における作業内容と前記作業者とを判定すること、を特徴とするものである。
【0008】
上述した車検作業管理システムは、作業内容に合わせて、作業権限に適合する作業者を選定することができる。これにより、検査工程及び整備工程における作業が、作業者権限を有しない者によって行われることを抑制することができる。すなわち、検査工程及び整備工程における作業を過誤なく確実に行うことができる。そのため、車検作業の信頼性向上が期待できる。また、作業権限に適合する作業者を迅速に選定することができるので、車検における複雑な作業工程を効率良く行うことができる。
【0009】
(2)上述した本発明の車検作業管理システムは、前記検査工程及び前記整備工程の作業状況を通知する作業状況通知部を有し、前記作業状況通知部は、次工程の作業者に、前工程の完了を通知すると良い。
【0010】
かかる構成によれば、次工程の作業者が待ち時間なく、次工程の作業を開始することができる。そのため、検査工程及び整備工程の時間を短縮することができる。なお、作業状況通知部による作業状況の通知は、前工程の完了より所定の時間前に行っても良い。かかる構成によれば、次工程の作業者が、事前に作業準備を行うことが可能となるので、より一層の効率化が期待できる。
【0011】
(3)上述した本発明の車検作業管理システムは、前記検査工程及び前記整備工程における作業開始から作業完了までの作業時刻を記録する作業時間情報取得部を有し、前記作業状況判定部は、前記作業者権限情報に基づいて、前記検査工程及び前記整備工程における作業権限に適合する工程に対して作業開始の許可を行うと共に、前記検査結果及び前記作業時刻の情報に基づいて、次工程における作業内容と前記作業者とを判定すると良い。
【0012】
上述した車検作業管理システムは、作業内容に合わせて、作業権限に適合する作業者を選定することができる。これにより、検査工程及び整備工程における作業が、作業者権限を有しない者によって行われることを抑制することができる。すなわち、検査工程及び整備工程における作業を過誤なく確実に行うことができる。そのため、車検作業の信頼性向上が期待できる。また、上述した車検作業管理システムは、前記検査工程及び前記整備工程における作業開始から作業完了までの作業時刻を記録することができる。そのため、作業時刻を反映させて、作業者を選定することができる。これにより、各作業者(他の作業に従事する作業者を含む)を時間軸に基づいて、検査工程及び整備工程における作業に割り付けることができる。従って、無駄なく車検における各作業工程を処理することができ、車検の作業時間を短縮(効率化)することができる。
【0013】
(4)上述した本発明の車検作業管理システムは、複数の端末装置と、前記端末装置と通信が可能なサーバー装置と、を有し、前記端末装置が、複数の前記作業者に関連付けられると共に、前記作業者による作業情報を取得して、当該作業情報を前記サーバー装置に送信可能なものであり、前記サーバー装置が、前記作業情報を蓄積するデータベース部を有し、前記データベース部に蓄積された前記作業情報に基づいて、前記作業者毎の作業状況を管理可能であると良い。
【0014】
上述した車検作業管理システムは、サーバー装置のデータベース部に蓄積された作業情報から必要な作業情報を検索することができる。また、検索された前記作業情報を、作業者に関連付けられた端末装置に送信することができる。そのため、作業者毎に作業状況(作業進捗)を管理することができる。従って、作業権限と合致する作業者を作業工程毎に割り当てることができるので、効率の良い作業を行うことができる。
【0015】
(5)上述した本発明の車検作業管理システムは、前記端末装置が、音声処理部を有し、前記音声処理部は、音声による作業情報の入力、及び音声による作業の指示のいずれか一方又は双方が可能であると良い。
【0016】
かかる構成によれば、車検作業を行う作業者が、作業中に手を離すことなく、作業情報の入力及び音声による作業の指示のいずれか一方又は双方を行うことができる。そのため、作業効率を向上させることができると共に記録漏れを抑制することができる。また、音声による作業の指示を作業者に行うことにより、作業者が、端末装置等の画面等を見て点検項目や整備項目等を確認しなくても、これらの作業を開始することができる。ここで、音声処理部は、音声を入力するためのマイクロフォン等の音声入力手段を備えたものとすると良い。また、音声処理部は、作業者への指示を行うためのスピーカー等の音声出力手段を備えたものとしても良い。
【0017】
(6)上述した本発明の車検作業管理システムは、前記作業者情報取得部における前記作業者権限情報の取得が、前記検査工程及び前記整備工程の工程毎に行われると良い。
【0018】
かかる構成によれば、検査工程及び整備工程における作業が、作業者権限を有しない者によって行われることを抑制することができる。すなわち、検査工程及び整備工程における作業を過誤なく確実に行うことができる。そのため、車検作業の信頼性向上が期待できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車検における複雑な作業を過誤なく、効率的に行うことが可能な車検作業管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る車検作業管理システムの一実施形態を表すシステム構成図である。
図2】本発明に係る車検作業管理システムの一実施形態を表すフロー図である。
図3図2に続くフロー図である。
図4図3に続くフロー図である。
図5図4に続くフロー図である。
図6図5に続くフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る車検作業管理システム1の一実施形態について、図1を参照しながら以下に詳細を説明する。
【0022】
図1に示すように、車検作業管理システム1は、LANやインターネット等のネットワークを介してサーバー装置20に接続された端末装置10と、車検に係る各種の情報を管理するサーバー装置20等を備えている。
【0023】
端末装置10は、ディーラー、整備工場、車両メーカー等の事業場等に配置されている。また、端末装置10は、パソコンやモバイル端末等から形成されている。上述のように、ディーラーや整備工場等の整備や点検等を行う現場に配置する端末装置10として、いわゆるタブレット端末やスマートフォン、携帯電話等からなるモバイル端末を採用することにより、整備や点検に係る情報の入力作業等の利便性が向上する。端末装置10は、整備工場等の作業者(整備士とも称する)に関連付けられ、作業者からの作業情報を取得することができる。端末装置10と作業者との関連付けは、例えば、端末装置10への作業者のサインイン(ログインとも称する)により、行うものとすれば良い。端末装置10として、整備士が保有するモバイル端末の他、例えば、事業所に配置されるパソコン等を設けることができる。また、端末装置10は、単数のものだけではなく、複数のものとすることができる。また、端末装置10を複数設ける場合は、それぞれの端末装置10をネットワークを介して通信可能にすると良い。
【0024】
端末装置10は、作業者情報取得部11と、車両検査内容取得部12と、検査結果取得部13と、作業時間情報取得部14と、を備えている(以下、説明の便宜のため、これらの取得部を総称する場合は、取得部11~14とも称する)。また、端末装置10は、車検に関する各種の作業情報を音声として取得可能な音声処理部15を備えている。また、端末装置10は、適宜の通信装置(図示せず)を介して、入力された各種の作業情報をサーバー装置20に送信することができる。送信された作業情報は、サーバー装置20のデータベース部22に登録される。
【0025】
作業者情報取得部11は、端末装置10に設けられた図示しないキーボードや生体認証装置(指紋認証装置等)により、作業者を特定することができる。作業者情報取得部11は、キーボードによるユーザーID(作業者ID)やパスワードの入力、又は生体認証装置による認証により、作業者を特定し、後述するサーバー20のデータベース部22から、当該作業者における作業者権限情報を呼び出して取得することができる。
【0026】
ここで、作業者権限情報は、車検における検査工程や整備工程において法律で規定された作業工程毎の有資格情報である。作業者情報取得部11は、前記作業者権限情報の他、作業者の氏名等、作業者に係る所定の情報を取得することができる。また、作業者情報取得部11における前記作業者権限情報の取得は、検査工程及び整備工程の工程毎に行うようにすると良い。これにより、検査工程及び整備工程における作業が、作業者権限を有しない者によって行われることを抑制することができる。すなわち、検査工程及び整備工程における作業を過誤なく確実に行うことができる。そのため、車検作業の信頼性向上が期待できる。なお、作業者権限情報の取得は、検査工程及び整備工程の工程毎に行うものだけではなく、必要に応じて適宜のタイミングで行うことができる。
【0027】
車両検査内容取得部12は、車検の対象となる一又は複数の車両(以下、単に車両とも称する)における車両情報及び検査内容を取得することができる。車両検査内容取得部12は、上述したキーボードからの入力に基づいて、サーバー20のデータベース部22に予め登録された車両情報及び検査内容を呼び出して取得することができる。なお、新規入庫の車両については、新たに入力を行ってデータベース部22に登録すれば良い。
【0028】
ここで、車両情報は、車検証における車両の型式、年式(初年度登録年月日を含む)、車台番号、所有者情報(名称・氏名、住所等)、使用者情報(名称・氏名、年齢、住所等)等が挙げられる。また、車両情報には、前記の他、使用地域、走行距離等を含めても良い。また、検査内容としては、ブレーキの踏み代、ブレーキパッドの残量、エンジンオイルの量及び汚れ、タイヤの空気圧、タイヤの溝の深さなどが挙げられる。
【0029】
検査結果取得部13は、後述する音声処理部15による音声入力により、車両の検査内容における検査結果を取得することができる。取得された検査結果は、検査工程や整備工程の工程毎に、サーバー装置20に送信される。なお、検査結果取得部13は、音声入力に代えて、キーボード等の入力装置を用いて行っても良い。
【0030】
作業時間情報取得部14は、後述する音声処理部15による音声入力により、検査工程及び整備工程における作業開始から作業完了までの作業時刻を記録することができる。作業時間情報取得部14は、取得した作業時刻から、各工程における作業時間を算出することができる。作業時間情報取得部14で取得された作業時刻や作業時間は、作業を行った作業者毎に、サーバー装置20に送信される。なお、作業時間情報取得部14は、廃することもできる。なお、作業時間情報取得部13は、音声入力に代えて、キーボード等の入力装置を用いて行っても良い。
【0031】
音声処理部15は、音声入力のためのマイクロフォンと、後述する作業指示等を音声として出力するためのスピーカー等を備えている。マイクロフォンやスピーカーは、端末装置10に設けられたものだけではなく、作業者に装着が可能なウエアラブルデバイスであっても良く、作業者が作業する作業場に設置されていても良い。
【0032】
音声処理部15は、検査結果取得部13、作業時間情報取得部14のそれぞれで取得される作業情報を、音声として受け付けることができる。また、音声処理部15は、受け付けた音声を認識し、各取得部13、14で取得可能なデータに変換する。音声処理部15における音声認識は、外部装置や外部サーバー装置の音声認識部を用いるようにしても良い。
【0033】
また、音声処理部15において、検査結果を音声入力する場合は、例えば、良好、交換、調整、清掃、点検済みなどの文言や、数値などの予め設定された用語により行うことができる。また、音声処理部15で音声出力する場合は、認識した検査結果を、予め設定された用語で出力したり、記号で置き換えて出力したりすれば良い。なお、作業者情報取得部11、車両検査内容取得部12における作業情報の取得は、音声処理部15を用いて音声入力により行うようにすることも可能である。
【0034】
作業状況通知部16は、後述する作業状況判定部21での判定結果に基づく作業状況(作業進捗とも称する)を受信して、作業者に通知することができる。作業状況通知部16は、音声処理部15のスピーカー等を通じて、作業状況を作業者に通知することができる。なお、作業状況通知部16による通知は、音声処理部15による音声だけではなく、画面表示や印刷によるものなど、各種の通知装置を用いることができる。また、作業状況の通知は、画面表示、印刷、音声出力等をそれぞれ組み合わせて併用するものであっても良い。
【0035】
また、作業状況通知部16は、次工程の作業者に、前工程の完了を通知することができる。すなわち、当該通知により、次工程の作業者に対して、作業指示を行うことができる。上述したように次工程の作業者に対して作業指示を行うことにより、次工程の作業者が待ち時間なく、次工程の作業を開始することができる。そのため、検査工程及び整備工程の時間を短縮することができる。なお、作業状況通知部16による作業状況の通知は、前工程の完了より所定の時間前に行っても良い。かかる構成によれば、次工程の作業者が、事前に作業準備を行うことが可能となるので、さらなる効率化が期待できる。
【0036】
サーバー装置20は、例えば、自動車メーカー、ディーラー、整備工場等に設けられ、車検作業管理システム1を総括して管理することができる。また、サーバー装置20は、作業状況判定部21と、データベース部22等を備えている。
【0037】
作業状況判定部21は、作業者情報取得部11で取得される作業者権限情報に基づいて、検査工程及び整備工程における作業権限に適合する工程に対して作業開始の許可を行う。具体的には、端末装置10にサインインした作業者の作業権限(有資格情報とも称する)が、ブレーキの点検に関するものである場合は、ブレーキの点検に関する工程に対しての作業開始の許可を行うものである。これにより、検査工程及び整備工程における作業が、作業者権限を有しない者によって行われることを抑制することができる。すなわち、検査工程及び整備工程における作業を過誤なく確実に行うことができる。そのため、車検作業の信頼性向上が期待できる。
【0038】
また、作業状況判定部21は、検査結果取得部13によって取得される検査結果に基づいて、次工程における作業内容と前記作業者とを判定することができる。具体的には、例えば、ブレーキパッドの残量が使用限界に達しているという検査結果が得られた場合は、次工程において、ブレーキパッドの交換作業が必要であると判定する。また、ブレーキの分解整備の作業権限を有する作業者が必要であると判定する。これにより、作業権限に適合する作業者を迅速に選定することができるので、車検における複雑な作業工程を効率良く行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、作業状況判定部21は、検査結果と、作業時間情報取得部14で取得された作業時刻の情報に基づいて、次工程における作業内容と作業者とを判定することができる。従って、作業者の作業スケジュール(時間軸)に合わせて、次工程の作業を実施可能な作業者を選定することができる。これにより、作業者の作業時間待ちといった無駄の発生を抑制することができるので、車検における複雑な作業工程を効率良く行うことができる。
【0040】
データベース部22は、例えば、ハードディスクやメモリ等の各種の記憶装置で構成されている。データベース部22は、各取得部11~14で取得される作業情報(作業者権限情報、車両情報、検査内容、検査結果、作業時間等)を作業者権限毎、検査工程毎、整備工程毎、車両毎、系統的に分類して記憶することができる。また、データベース部22は、端末装置10からの要求に応じて、必要な車両情報や作業情報を検索して抽出することができる。抽出された作業情報は、端末装置10に送信され、端末装置10における作業状況通知部16により作業者に通知することができる。
【0041】
以上が、本発明に係る車検作業管理システム1の実施形態の一例であるが、端末装置10の構成やサーバー装置20の構成は、適宜、使用形態に合わせて変更することができる。また、端末装置10やサーバー装置20を廃し、車検作業管理システム1を一体的に構成することもできる。
【0042】
次に、図2図6のフロー図に基づいて、車検作業管理システム1の動作フローの詳細を説明する。なお、説明において、車検作業管理システム1は、単にシステム1と称することがある。
【0043】
システム1の処理が開始されると、まず、車検に関する概算の見積りが行われる(ステップS100)。続いて、車検の対象となる現車(車両)を確認し、整備が必要な箇所(検査内容)が端末装置10に入力される(ステップS101)。端末装置10の画面上に概算見積りを提示し、顧客と整備内容を商談する(ステップS102)。
【0044】
次に、概算見積りの修正がないかの判断が行われる(ステップS103)。概算見積りに修正がある場合は、システム1における端末装置10の画面上で見積り項目が修正される(ステップS105)。ステップS105において見積り項目が修正されると、再び、ステップS103に戻る。
【0045】
ステップS103において、概算見積りに修正がない場合は、見積りが確定される(ステップS104)。ステップS104で見積りが確定されると、見積りデータが、後述するステップS113(図3参照)においてシステム1に自動的に反映される。また、見積りデータに基づいて、記録簿がシステム1上で自動的に作成される(ステップS106)。
【0046】
次に、作業者によるシステム1へのサインインが判断される(ステップS107)。ここで、サインインは、例えばユーザーID、パスワード、指紋認証等の生体認証、氏名、資格(作業権限)、職歴等により、行われる。作業者によるサインインが確認できない場合は、サインインの判断が繰り返される(システム1を終了させても良い)。作業者によるサインインが確認できた場合は、図3に示す車検証情報の登録が行われる(ステップS108)。
【0047】
ステップS108が完了すると、検査機器が導入されている事業場であるか否かの判断が行われる(ステップS109)。ステップS109において、検査機器が導入されていると判断された場合は、作業者による検査機器への車検証情報の入力が行われる(ステップS110)。また、ステップS109において、検査機器が導入されていない事業場であると判断された場合は、画像OCR又はQRコード(登録商標)にて車検証情報の取り込みが行われ(ステップS111)、ステップS113に処理が進められる。
【0048】
ステップS110が完了すると、検査機器からシステム1への連携が行われる(ステップS112)。ステップS112での連携が行われると、システム1において、見積り内容から、ユーザー依頼事項(検査内容)を自動的に連携させる(ステップS113)。
【0049】
ステップS113が完了すると、検査工程において、受入点検が行われる(ステップS114)。ステップS114での受入点検に伴い、追加整備が発生した場合は、ステップS101(図2参照)に戻って、再度、整備必要箇所が端末装置10に入力される。また、ステップS114での受入点検に伴い、整備が必要な場合は、作業指示に沿って整備が実施される(ステップS133、図5参照)。
【0050】
ステップS114が完了すると、作業者の職務選択が行われ、作業者が検査工程における資格条件(作業権限)に適合するか否かが判断される(ステップS115)。ステップS115において、作業者が資格条件に適合しない場合は、ステップS115の判断が繰り返される。なお、作業者が資格条件に適合しない場合は、システム1を終了させても良い。作業者が資格条件に適合する場合は、作業権限情報を作業者情報取得部11(図1参照)により取得する(ステップS116)。
【0051】
ステップS116が完了すると、対象車両において搭載していない装置の項目について「該当なし」を入力する(ステップS117)。これにより、関係のない項目に誤って入力することを抑制することができる。
【0052】
また、受け入れ工程において判断できる場合は、点検整備の「検査結果」をシステム1に入力する(ステップS118)。入力された検査結果は、検査結果取得部13(図1参照)により取得される。
【0053】
また、作業者自身が作業しない場合においては、整備実施者(作業者)に対する作業の「指示」を入力する(ステップS119)。このように、本実施形態では、作業権限を有する他の作業者に作業指示をすることができる。そのため、作業者の空き時間を低減することができる。上述のステップS117~ステップS119における入力は、端末装置10の音声処理部15を介して音声にて行うことができる。なお、端末装置10に音声以外の入力方法で入力を行うようにしても良い。
【0054】
ステップS117、ステップS118、あるいはステップS119が完了すると、図4に示すように、検査結果及び作業指示の入力を行った作業者と作業時刻がシステム1におけるデータベース部22(図1参照)に登録される(ステップS120)。続いて、受入点検実施者の氏名と完了年月日がシステム1に自動的に反映される(ステップS121、承認1とも称する)。
【0055】
ステップS121が完了すると、受入点検実施者が、当該車検の検査員か否かが判断される(ステップS122)。ステップS122において、受入点検実施者が、当該車検の検査員である場合は、目視による検査(受入工程とも称する)が行われる(ステップS123)。続いて、検査結果を入力した作業者及び作業時刻がシステム1のデータベース部22に登録される(ステップS124)。
【0056】
続いて、整備実施が行われる(ステップS125)。ステップS122において、受入点検実施者が、当該車検の検査員ではない場合も、ステップS125として整備実施が行われる。
【0057】
ステップS125が完了すると、受入点検結果から作業指示が自動的に作成される(ステップS126)。続いて、作業権限が取得されると共に作業の指示があるか否かの判断が行われる(ステップS127)。
【0058】
ステップS127において、作業の指示がない場合は、該当箇所の点検を実施する(ステップS128)。ステップS127において、作業の指示がある場合は、作業指示に沿った整備が実施される(ステップS129)。
【0059】
ステップS128が完了すると、図5に示すように、整備の必要があるか否かの判断が行われる(ステップS130)。ステップS130において、整備の必要がある場合は、ステップ131として再度作業指示を受けると共にステップS114(図3参照)に戻って、受入点検が実施される。ステップS130において、整備の必要がない場合は、良好であるとして、整備点検結果を登録し、整備点検結果を入力した作業者及び作業時刻をシステム1のデータベース部22に登録する(ステップS134)。
【0060】
また、ステップS129(図4参照)が完了すると、前記ステップS134の処理が実行される。また、ステップS133が完了した場合も、前記ステップS134の処理が実行される。なお、ステップS133では、一度ステップS114の受入点検に戻った後の処理となるため、それまでに実施した目視による検査(ステップS123)を再度行う必要がある。そのため、ステップS133での整備の実施に伴い、ステップS123(図4参照)の目視による検査が実行される。
【0061】
ステップS134が完了すると、分解整備が必要か否かの判断が行われる(ステップS135)。また、ステップS135と並行して、点検及び整備において使用した交換部品並びに、整備実施者(作業者)の氏名が、システム1に自動的に反映される(ステップS136)。また、ステップS136において、別途設けられた部品管理システム(図示せず)における交換部品マスタの在庫情報データが更新される。
【0062】
ステップS135において、分解整備が必要な場合は、作業権限を取得すると共に、中間検査項目を有資格者(作業権限を有する作業者)へ割り振りする(ステップS137)。ステップS137での有資格者への作業の割り振りは、作業状況判定部21(図1参照)により行うことができる。続いて整備主任者による中間検査結果、作業者、及び作業時刻がシステム1のデータベース部22に登録される(ステップS138)。
【0063】
ステップS138が完了すると、図6に示すように整備主任者の氏名、整備の完了日、点検時の総走行距離がシステム1により自動的に反映される(ステップS139、承認2とも称する)。なお、前記ステップS135で分解整備が必要ないと判断された場合も、上述したステップS139の処理が実行される。
【0064】
続いて、作業権限の取得が行われる(ステップS140)。ステップS140が完了すると、整備記録と整備内容との同一性の確認が行われる(ステップS141、承認3とも称する)。また、ステップS141が完了すると、目視による検査(完成工程とも称する)が行われる(ステップS142、承認4とも称する)。続いて、機器による検査が行われる(ステップS143、承認5とも称する)。
【0065】
ステップS141~S143の各ステップが実行されると、ステップS141~S143の各ステップにおける検査結果を入力した作業者と、作業時刻と、がシステム1に登録される(ステップS144)。
【0066】
続いて、保安基準に適合しているか否かが判断される(ステップS145)。ステップS145において、保安基準に適合していると判断された場合は、承認1~承認5が完了したとして記録簿印字を可能にする(ステップS146)。
【0067】
ステップS145において、保安基準に適合していないと判断された場合は、再度作業指示を行う(ステップS147)。ステップS147において、必要であれば見積りをユーザーに提示することができる。ステップS147が完了すると、ステップS114(図3参照)に戻って受入点検実施が行われる。
【0068】
ステップS146が完了すると、自動車検査員の氏名及び車検の完了年月日が記録簿に自動的に反映される(ステップS148)。ステップS148が完了すると、全てのフローが終了する。なお、完了後にフローの開始に戻って、ステップS100からの動作が繰り返し行われるようにしても良い。
【0069】
以上が、車検作業管理システム1における実施形態であるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0070】
本実施形態では、車検作業管理システム1が、車両の車検において利用されるものとしたが、法定の検査を必要とする各種の点検及び整備において利用することができる。また、本実施形態で、取得される作業者権限情報、車両情報、検査内容、検査結果は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の情報を含めることができる。また、検査工程や整備工程は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の工程を含めることができる。また、本実施形態では、検査結果取得部13及び作業時間情報取得部14での作業情報の取得が、音声処理部15を介して音声により行われるようにしているが、音声によるものだけではなく、キーボード等の各種の入力装置で行うようにしても良い。また、キーボード等による入力と音声入力とが併用されても良い。また、作業者情報取得部11や車両検査内容取得部12による情報の取得を、音声処理部15により行うようにすることも可能である。また、取得部11~14毎にそれぞれの入力装置が異なるものとしても良い。
【0071】
本実施形態では、端末装置10に、取得部11~14、音声処理部15、作業状況通知部16を設けているが、これらの構成は、利用状況に応じて、サーバー装置20に搭載したり、機能毎に別途の装置を設けるようにしたりすることもできる。また、本実施形態では、サーバー装置20に、作業状況判定部21、データベース部22を設けているが、これらの構成は、利用状況に応じて、端末装置10に搭載したり、機能毎に別途の装置を設けるようにしたりすることもできる。また、本実施形態では、端末装置10及びサーバー装置20を設ける構成としたが、サーバー装置20を設けずに、一又は複数のコンピュータや装置に車検作業管理システム1が搭載されるものであっても良い。
【0072】
本実施形態では、端末装置10が複数の作業者に関連付けられたものとしているが、端末装置10が、複数の作業者によって共有されるものでも良い。かかる場合は、サインインにより、端末装置10を使用する作業者の作業権限を特定できるようにすると良い。また、端末装置10は、複数台のものだけではなく、単一のものであっても良い。また、端末装置10は、単一の種類のものだけではなく、例えば、パソコンとモバイル端末などとの組み合わせであっても良い。また、端末装置10からサーバー装置20に送信される作業情報には、各種の情報を含めることができる。また、端末装置10は、作業者に関連付けられたものだけではなく、事業所等に配置されるものなど、各種の場所に設けることができる。
【0073】
本実施形態では、単一のサーバー装置20を設ける構成を例示したが、サーバー装置20が複数設けられていても良い。また、サーバー装置20が端末装置10としての機能を兼用するものであっても良い。また、端末装置10やサーバー装置20は、各種の場所に配置することができる。
【0074】
本実施形態では、作業時間情報取得部14及び音声処理部15の双方を設ける構成を例示したが、作業時間情報取得部14及び音声処理部15のいずれか一方が設けられるものや双方を廃した構成とすることもできる。また、本実施形態では、音声処理部15が、音声入力と音声出力の双方を行うものとしたが、音声処理部15が、音声入力及び音声出力のいずれか一方を行うものとしても良い。
【0075】
以上が、本発明に係る車検作業管理システム1の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の車検作業管理システム1は、車検等の法定検査を実施する車両メーカー、ディーラー、整備工場等において利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 :車検作業管理システム
10 :端末装置
11 :作業者情報取得部
12 :車両検査内容取得部
13 :検査結果取得部
14 :作業時間情報取得部
15 :音声処理部
16 :作業状況通知部
20 :サーバー装置
21 :作業状況判定部
22 :データベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6