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特許7518770軸方向パワー-距離シミュレータ付きの累進レンズシミュレータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】軸方向パワー-距離シミュレータ付きの累進レンズシミュレータ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240710BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/14
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020565273
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019033021
(87)【国際公開番号】W WO2019226501
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】15/984,397
(32)【優先日】2018-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519247958
【氏名又は名称】ニューロレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジマニ ゲルゲリー ティー
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-066002(JP,A)
【文献】特表2015-509406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0316427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
G02B 1/00 - 1/08
G02B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
累進レンズシミュレータであって、
眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカと、
累進レンズ設計に従って軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)を生成する軸外累進レンズシミュレータと、を有し、
前記軸外累進レンズシミュレータは、
像を生成する像発生器と、
生成された前記像を、前記累進レンズ設計に従って軸外PLS信号に変換する軸外累進レンズシミュレータプロセッサと、を有し、前記軸外累進レンズシミュレータプロセッサは、生成された前記像を前記像発生器から受け取り、前記累進レンズ設計を表す局所的に変化する曲率を導入することによって生成された前記像を前記軸外PLS信号に変換するように構成され、
さらに、前記累進レンズシミュレータは、
前記軸外PLS信号に従って前記軸外PLSを表示するための軸外累進レンズシミュレータディスプレイと、
前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートし、前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートすることにより前記軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)を生じさせる軸方向パワー-距離シミュレータとを有する、累進レンズシミュレータ。
【請求項2】
前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイは、第1の眼および第2の眼のための立体視軸外PLSを提供する1対の軸外累進レンズシミュレータスクリーンを含み、各スクリーンは、軸外PLSを表示する、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項3】
前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイは、立体視調節を施した状態で前記第1の眼についての前記軸外PLSの前記表示と、次に前記第2の眼のための前記軸外PLSの前記表示を交番させるための像交番器によって制御される立体視交番式軸外累進レンズシミュレータスクリーンを含む、請求項2記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項4】
前記軸外累進レンズシミュレータプロセッサは、
前記像発生器から生成された前記像を受け取り、
前記累進レンズ設計を表す局所的に変化するブラーを導入することによって生成された前記像を前記軸外PLS信号に変換するよう構成されている、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項5】
前記像発生器、前記軸外累進レンズシミュレータプロセッサ、および前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイのうちの少なくとも2つが一体化されている、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項6】
前記注視距離において表示された前記軸外PLSに関するバージェンスをシミュレートするバージェンス-距離シミュレータを有する、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項7】
前記バージェンス-距離シミュレータは、
前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイのスクリーンを側方に動かすこと、および
前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイ上で側方に前記表示軸外PLSをずらすことのうちの少なくとも一方によって前記注視距離のところでの前記表示軸外PLSについてのバージェンスをシミュレートするよう構成されている、請求項6記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項8】
前記包括的PLSをズームして前記注視距離の変化を表すためのズーム-距離シミュレータを有する、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項9】
前記軸外累進レンズシミュレータプロセッサ、前記軸外累進レンズシミュレータディスプレイ、および前記軸方向パワー-距離シミュレータのうちの少なくとも1つは、バージェンス-距離シミュレータおよびズーム-距離シミュレータのうちの少なくとも一方を含む、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項10】
前記軸方向パワー-距離シミュレータは、調節可能な光屈折力を有する調節可能な光パワーシステムを有する、請求項1記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項11】
前記軸方向パワー-距離シミュレータの前記光屈折力は、前記アイトラッカによって求められた前記注視距離および意図された注視距離のうちの一方と一致するよう調節可能である、請求項10記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項12】
前記軸方向パワー-距離シミュレータは、前記眼軸方向に一致したバージェンスをシミュレートするよう調節可能である、請求項10記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項13】
前記調節可能な光学パワーシステムは、
アルバレスレンズ系を有し、前記アルバレスレンズ系は、
眼のための少なくとも2枚のレンズを含み、前記2枚のレンズのうちの少なくとも一方は、側方に変化する曲率を有し、
前記レンズのうちの少なくとも一方を他方のレンズに対して側方にずらし、それにより前記アルバレスレンズ系の光屈折力を中央領域で変化させるための1つまたは2つ以上のアクチュエータを含む、請求項10記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項14】
前記調節可能な光学パワーシステムは、
調節可能な流体レンズ系を含み、前記調節可能な流体レンズ系は、
1対の調節可能な流体レンズを含み、前記流体レンズは、該流体レンズ中の流体の量によって制御される光屈折力を備え、
流体レンズ中の前記流体の量を調節する流体管理システムを含み、
前記調節可能な光学パワーシステムの前記光屈折力を調節するよう前記1対の調節可能な流体レンズおよび前記流体管理システムを制御するレンズ調節エレクトロニクスを含む、請求項10記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項15】
前記調節可能な光学パワーシステムは、
形状変化レンズ、屈折率変更レンズ、可変ミラー、変形可能な光学部品、調節可能な開口を備えた非球面レンズ、液晶光学素子、調節可能な屈折光学素子、調節可能な光電子素子、および調節可能な相対位置を有する光学コンポーネントを含む光学系から成る群から選択されている、請求項10記載の累進レンズシミュレータ。
【請求項16】
累進レンズシミュレータであって、
眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカと、
累進レンズ設計に従って軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)を生成する軸外累進レンズシミュレータと、を有し、
前記軸外累進レンズシミュレータは、
像を生成する像発生器と、
生成された前記像を、前記累進レンズ設計に従って軸外PLS信号に変換する軸外累進レンズシミュレータプロセッサと、を有し、
さらに、前記累進レンズシミュレータは、
前記軸外PLS信号に従って前記軸外PLSを表示するための軸外累進レンズシミュレータディスプレイと、
左眼及び右目について立体視軸外PLSを提供するように、各々が軸外PLSを表示する一対の軸外累進レンズシミュレータスクリーンと、
前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートし、前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートすることにより前記軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)を生じさせる軸方向パワー-距離シミュレータとを有する、累進レンズシミュレータ。
【請求項17】
累進レンズシミュレータであって、
眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカと、
累進レンズ設計に従って軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)を生成する軸外累進レンズシミュレータと、を有し、
前記軸外累進レンズシミュレータは、
像を生成する像発生器と、
生成された前記像を、前記累進レンズ設計に従って軸外PLS信号に変換する軸外累進レンズシミュレータプロセッサと、を有し、
さらに、前記累進レンズシミュレータは、
前記軸外PLS信号に従って前記軸外PLSを表示するための軸外累進レンズシミュレータディスプレイと、
前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートし、前記累進レンズ設計の累進レンズ屈折力を前記眼軸方向にシミュレートすることにより前記軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)を生じさせる軸方向パワー-距離シミュレータと、
前記注視距離での表示された前記軸外PLSにおけるバージェンスをシミュレートするバージェンス-距離シミュレータと、を有する、累進レンズシミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、累進レンズ(累進屈折力レンズまたは累進多焦点レンズという表現が一般的に用いられるが、本明細書では簡略化して累進レンズという)をシミュレートし、特に誘導式レンズ設計探求システムで累進レンズをシミュレートする方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡またはメガネの処方箋は、今日、何十年も前に開発された器械および方法によって作成されており、これらの基礎的概念は、はるか昔にさかのぼる。これら方法および技術が成熟するとともに十分に患者集団の役に立っているが、これら方法および技術は、電気通信、消費者エレクトロニクスおよび対話型機能の多くの分野に大変革を起こしたオプトエレクトロニクスおよびコンピュータ計算方法の顕著な技術的発展から恩恵を受けていない。最新式のオプトエレクトロニクスおよびコンピュータサイエンスの俯瞰的観点から検眼法を評価して必要性および可能性のある幾つかの分野を見出すことができる。主要な課題および可能性のうちの幾つかを以下に列記してこれらについて再検討する。
【0003】
(1)購入前の試行なし:累進レンズ処方を求めている患者は、今日においては、単一屈折力(シングルパワー)、非累進レンズ、遠見視力用レンズ、および近見視力用レンズを用いて検査される。したがって、患者は、処方された累進レンズ全体を購入前に経験することはない。患者は、累進レンズ処方を「試乗」することはないので、患者は、眼鏡が患者に提供された後でのみ問題点または不都合が分かり、これでは遅すぎる。
【0004】
(2)アナログ式検眼器械しか用いられない:検眼士によって用いられている単一屈折力レンズおよび他の光学系は、今日では、ずっと前に開発されたものである。これらは、アナログ式光学系であり、最新式の光電子技術の多くの技術改良に適合しておらず、しかもこれらを採用してはいない。これは、他の眼科分野、例えば、光コヒーレンストモグラフィ、収差診断器械、および適切な眼内レンズを決定するための白内障手術の準備に用いられる光診断器械への光電子技術の極めて上首尾の適用とは対照的であるというべきである。
【0005】
(3)2種類の距離しか検査されない:これらアナログ式レンズ系は、2種類の距離でしか患者の視力、すなわち近見視力および遠見視力を検査しない。これとは対照的に、たいていの患者は、独特の使用パターンを有し、患者の個々の習慣に応じて3種類または4種類以上の距離について自分のメガネの最適化を必要とする場合が多い。
【0006】
(4)眼が別個独立にしか検査されない:診断法のほとんどは、単一の眼について利用され、他方の眼は覆い隠される。かかる方式は、これら方式が視覚的経験を生じさせるときの眼相互間の協調ならびに両眼による視覚的鮮明度の十分な評価にとって極めて重要であるバージェンスの種々の効果を無視している。
【0007】
(5)累進レンズ処方が確立不足である:累進レンズの設計は、複雑なプロセスである。種々の会社が互いに異なる研究および最適化対策を用いる多くのパラメータを含む種々の独占所有権のある最適化アルゴリズムを有する。これとは対照的に、検眼士は、来所の際に患者の視力について2~3個のパラメータのみを決定する。数学的な意味において、累進レンズの設計について2~3個のパラメータだけを提供することは、レンズ設計の最適化アルゴリズムが深刻に確立不足になる。設計最適化アルゴリズムの持っている情報が不十分である場合、アルゴリズムは、真に最適化ではない設計で停止する場合がありかつこのようにする場合が多く、アルゴリズムは、真に最適な設計を特定することができない。
【0008】
(6)より多くのパラメータを定めることにより患者ごとの治療時間が増大することになる:検眼士は、より多くのパラメータを定めるためにより多くの検査を実行する場合がある。しかしながら、このようにすることにより、個々の患者について費やされる時間が長くなる。これは、検眼士の経済的モデルに悪影響を及ぼすことになる。
【0009】
(7)患者は、多くの場合、調節のためにメガネを戻す必要がある:患者は、統計学的に妥当な症例において自分たちの累進レンズでは不満足である。したがって、患者は、多くの場合、調節を必要として検眼士の診療所に戻る。累進レンズが3回、4回、5回にわたって再調節されなければならないことは珍しいことではない。これら再受診と関連した時間および費用は、患者の満足度に深刻な影響を及ぼし、しかも検眼士の経済的モデルを台無しにする。
【0010】
(8)レンズ設計検証グループが小さい:レンズ設計アルゴリズムは、典型的には、100未満から200~300人の患者までの小さな検査グループとの対話で最適化される。かかる複雑な問題を最適化するためにかかる小さな検査グループしか用いないことにより、最適ではないレンズ設計アルゴリズムが生じる場合がある。その後における多数の実在の患者からの苦情がより大きなグループからフィードバックを生じるが、このフィードバックは、不完全でありかつ一方通行である。
【0011】
(9)検査用の像は患者の実際の視覚的要求を反映していない:眼の検査は、患者の実際の要望を反映することはまれであるような標準化された文字を用いている。検査は、おおむね、個々の患者に適切である像を含むことは決してない。
【0012】
(10)周辺視が検査されることはめったにない:検眼士は、まれにしか周辺視を検査せず、これに対して、幾つかの学会では、周辺視は、全体的な視覚的明瞭度の価値の高い要素である場合がある。
【0013】
(11)最新式の探索アルゴリズムがまだ利用されていない:複雑なメリットランドスケープ(merit-landscapes)と比較した場合の探索アルゴリズムの効率を大幅に高める近年における技術進歩は、累進レンズの設計にはまだ適用されていない。
【0014】
(12)人工知能が用いられていない:システム改良のために人工知能を実施する際の近年における技術進歩もまた、検眼には参入していない。
【0015】
少なくとも、上述の12の問題は、検眼がこれまた最新のコンピュータサイエンスにおける進歩を用いている患者中心のカスタマイズされた仕方において最新式の光電子技術の具体化から多くの仕方で大幅に利益を得ている場合があることを実証している。
【発明の概要】
【0016】
上述の医学的要求に取り組むため、本発明の幾つかの実施形態は、累進レンズシミュレータを含み、この累進レンズシミュレータは、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカ(Eye Tracker)、軸外累進レンズシミュレーションを生成するための軸外累進レンズシミュレータ(軸外PLS)、および累進レンズパワーを眼軸方向にシミュレートし、それにより軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーションを生じさせるための軸方向パワー-距離シミュレータを有する。
【0017】
実施形態はまた、累進レンズシミュレータを作動させる方法をさらに含み、この方法は、アイトラッカによって眼軸方向を追跡して注視距離を求めるステップ、軸外累進レンズシミュレータによって軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)を生成するステップ、および、軸方向パワー-距離シミュレータによって累進レンズ屈折力を眼軸方向にシミュレートすることによって軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーションを生じさせるステップを含む。
【0018】
実施形態は、累進レンズシミュレータをさらに含み、この累進レンズシミュレータは、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカ、軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)の生成と組み合わせて累進レンズ屈折力を眼軸方向にシミュレートすることによって包括的累進レンズシミュレーション(PLS)を生じさせるための一体型累進レンズシミュレータを有する。
【0019】
実施形態はまた、頭部装着式累進レンズシミュレータを含み、この頭部装着式累進レンズシミュレータは、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカ、軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)の生成と組み合わせて累進レンズ屈折力を眼軸方向にシミュレートすることによって包括的累進レンズシミュレーション(PLS)を生じさせるための一体型累進レンズシミュレータを有し、アイトラッカおよび一体型累進レンズシミュレータは、頭部装着式ディスプレイ内に具体化される。
【0020】
実施形態は、累進レンズシミュレータ用の誘導式レンズ設計探求システムをさらに含み、この誘導式レンズ設計探求システムは、累進レンズ設計により患者について累進レンズシミュレーションを生成するための累進レンズシミュレータ、累進レンズシミュレーションに応答して患者による制御およびフィードバックのうちの少なくとも一方を入力するためのフィードバック-制御インターフェース、患者からの制御およびフィードバックのうちの少なくとも一方を受け取り、そしてこの受け取りに応答して累進レンズ設計を改変するためのフィードバック-制御インターフェースに結合されている累進レンズ設計プロセッサを有し、累進レンズシミュレータは、改変された累進レンズ設計により患者に関する改変済み累進レンズシミュレーションを生成するよう構成されている。
【0021】
実施形態は、累進レンズシミュレーション方法をさらに含み、この方法は、(a)累進レンズ設計プロセッサによりレンズ設計をアクティブ状態にするステップ、(b)累進レンズシミュレータの像発生器によって像を生成するステップ、(c)レンズ設計を利用して累進レンズシミュレータによって生成した像からシミュレートされた包括的PLSを生成するステップ、(d)レンズ設計による包括的PLSの生成に応答してフィードバック-制御インターフェースにより視覚フィードバックを収集するステップ、(e)視覚フィードバックに関連して累進レンズ設計プロセッサによってレンズ設計を改変するステップ、および(f)累進レンズシミュレータによる改変後のレンズ設計により包括的PLSを再生成するステップを含む。
【0022】
実施形態は、累進レンズ設計プロセッサのための人工知能エンジン向きの深層学習法をさらに含み、この深層学習法は、累進レンズ設計プロセッサのための視覚フィードバック設計ファクタニューラルネットワークをアクティブ状態にするステップ、入力として視覚フィードバックベクトルを視覚フィードバック設計ファクタニューラルネットワーク中に受け入れさせるステップ、および入力に応答して視覚フィードバック設計ファクタニューラルネットワークにより設計ファクタベクトルを出力するステップを含み、累進レンズ設計プロセッサの視覚フィードバック設計ファクタニューラルネットワークの結合マトリクスは、深層学習サイクルを実施することによって訓練される。
【0023】
実施形態は、累進レンズシミュレータの監視型マルチステーションシステムをさらに含み、この監視型マルチステーションシステムは、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるためのアイトラッカ、軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)を生成するための軸外累進レンズシミュレータ、および累進レンズ屈折力を眼軸方向にシミュレートしそれにより軸外PLSから包括的累進レンズシミュレーションを生じさせるための軸外屈折力-距離シミュレータをここに含む1組の累進レンズシミュレータと、累進レンズシミュレータと連絡状態にあって個々の累進レンズシミュレータの作動のために監視を提供する中央監視ステーションとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】シミュレーション累進レンズの誘導式レンズ設計探求システム(GPS)を示す図である。
図2】シミュレーション累進レンズの誘導式レンズ設計探求システム(GPS)を幾分詳細に示す図である。
図3】累進レンズシミュレータのマルチステージ実施形態を示す図である。
図4A】軸外累進レンズシミュレータOPSを示す図である。
図4B】軸外累進レンズシミュレータOPSを示す図である。
図5】バージェンス-距離シミュレータVDSおよびズーム-距離シミュレータZDSを含む累進レンズシミュレータを示す図である。
図6A】軸方向パワー-距離シミュレータADSの実施形態を示す図である。
図6B】軸方向パワー-距離シミュレータADSの実施形態を示す図である。
図7】累進レンズシミュレータのマルチステージ実施形態を示す図である。
図8】累進レンズシミュレータのマルチステージ実施形態を作用させるための方法を示す図である。
図9】一体型累進レンズシミュレータを示す図である。
図10】MEMSレーザスキャナを示す図である。
図11A】MEMS変形可能ミラーを示す図である。
図11B】MEMS作動式ミラーアレイを示す図である。
図12A】IPLSのマイクロレンズアレイ実施形態を示す図である。
図12B】IPLSのMEMS湾曲ミラーアレイ実施形態を示す図である。
図12C】IPLSのLEDプロジェクタアレイ実施形態を示す図である。
図12D】IPLSの変形可能ディスプレイ実施形態を示す図である。
図13】一体型累進レンズシミュレータを作動させる方法を示す図である。
図14】頭部装着式一体型累進レンズシミュレータを示す図である。
図15A】頭部装着式一体型累進レンズシミュレータの実施形態を示す図である。
図15B】頭部装着式一体型累進レンズシミュレータの実施形態を示す図である。
図16】レンズ設計探求システムを備えた累進レンズシミュレータを示す図である。
図17A】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図17B】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図17C】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図17D】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図17E】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図17F】患者コントローラの実施形態を示す図(A~F)である。
図18A】累進レンズシミュレーション方法を幾分詳細に示す図である。
図18B】累進レンズシミュレーション方法を幾分詳細に示す図である。
図19A】累進レンズシミュレーション方法を幾分詳細に示す図である。
図19B】累進レンズシミュレーション方法を幾分詳細に示す図である。
図20A】設計ファクタを示す図である。
図20B】設計ファクタを示す図である。
図20C】視覚フィードバックを示す図である。
図20D】視覚フィードバックを示す図である。
図21】設計ファクタ空間内の視覚フィードバックに基づく設計ファクタの変更法を示す図である。
図22A】視覚フィードバックレンズ設計移送エンジンの視覚フィードバック設計ファクタマトリクスを示す図である。
図22B】視覚フィードバックレンズ設計移送エンジンの視覚フィードバック設計ファクタマトリクスを示す図である。
図23A】対話型観点を備えた探索管理方法を示す図である。
図23B】対話型観点を備えた探索管理方法を示す図である。
図24A】レンズメリットファクタを示す図である。
図24B】レンズメリットファクタを示す図である。
図25】設計ファクタ空間内における視覚フィードバックおよびレンズメリットファクタに基づく設計ファクタの変更法を示す図である。
図26】視覚フィードバックレンズ設計移送エンジンの視覚フィードバック+レンズメリット-レンズ設計マトリクスを示す図である。
図27】設計ファクタを局所的に変更する方法を示す図である。
図28A】設計ファクタを非局所的に変更する方法を示す図である。
図28B】設計ファクタを非局所的に変更する方法を示す図である。
図29A】探索管理ステップを幾つかの場合において対話的に実施する方法を示す図である。
図29B】探索管理ステップを幾つかの場合において対話的に実施する方法を示す図である。
図30】誘導式レンズ設計探求システムおよび人工知能エンジンを備えた累進レンズシミュレータを示す図である。
図31】視覚フィードバック設計ファクタニューラルネットワークを示す図である。
図32】累進レンズ設計プロセッサ用の人工知能エンジンを示す図である。
図33】勾配下降による逆伝搬を示す図である。
図34】累進レンズ設計プロセッサ用のAIエンジンのための深層学習法を示す図である。
図35】探索誘導エンジン用のAIエンジンのための深層学習法を示す図である。
図36】累進レンズシミュレータの監視式マルチステーションシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願に記載されているシステムおよび方法は、少なくとも以下の観点で、上記において記載した医療用の要望に取り組んでいる。これら観点は、技術の現状の上述の難題に対する対照的なフォーマットで系統立てて記載されている。
【0026】
(1)購入前の試行なし:実施形態では、累進レンズの視覚的経験は、累進レンズシミュレータによってシミュレートされる。このシステムは、患者に権限を与えて患者が互いに異なる設計を有する累進レンズをリアルタイムで能動的にかつ対話的に探究して経験するようにする。患者は、自分が特定の設計に収まる前に望んでいる多くのシミュレートされた累進レンズ設計を探求することができる。要するに、患者は、累進レンズを購入する前に累進レンズを探求し、「試乗」し、そして「試着」することができる。
【0027】
(2)アナログ式検眼器械しか用いられない:実施形態は、アナログ光学技術に代えて最新式のディジタル光電子技術を用いている。
【0028】
(3)2種類の距離しか検査されない:患者は、最新式光電子設計により自分の望んでいる多数の距離で種々の累進レンズ設計の性能を探求することができる。
【0029】
(4)眼が別個独立にしか検査されない:患者は、両眼でシミュレーション式累進レンズにより視覚的経験を同時に探求することができる。この方式により、レンズ設計選択プロセスは、バージェンスの効果の患者の経験を含むとともにこれを最適化することができる。
【0030】
(5)累進レンズ処方が確立不足である:患者は、可能な限り多くの累進レンズ設計を網羅的に探求することができる。探索は、レンズの性能の多くの特定の観点に集中することができる。探索プロセスを詳細にモニタすることにより、新型レンズ設計ソフトウェアのための患者の視力に関する甚大な量のデータが得られる。この多量のデータの収集は、レンズ設計プロセスを確立不足の状態から数学的な意味において適切に確立された状態に向ける。探求プロセスを続行することができ、ついには、レンズ設計ソフトウェアは、これが最適なレンズ設計にズームインするのに十分なデータを有するという結論を出す。
【0031】
(6)より多くのパラメータを定めることにより患者ごとの治療時間が増大することになる:上述の実施形態による最適累進レンズ設計の選択プロセスは、時間が長くかかる場合があり、または今日の典型的な来所の期間よりもそれどころか実質的に長くかかる場合がある。これは、上述のシステムに対して経済的な「過度に高いコスト」議論として認識される場合がある。しかしながら、探索の多くは、スマートソフトウェアによって誘導され、かくして、検眼士の積極的な存在を必要としない。これとは異なり、検眼士は、監視の役割を果たし、かくして、伝統的な方法の場合よりもこれら累進レンズシミュレータによって1日当たり多数の患者でさえも監視することができる。
【0032】
(7)患者は、多くの場合、調節のためにメガネを戻す必要がある:患者は、全ての関連しかつ可能性のある累進レンズ設計をリアルタイムで探求するので、ここで説明している累進レンズシミュレータシステムは、患者の不平および返品を最小限に抑える。これにより、患者の満足度が劇的に高くなるとともに検眼士の経済的モデルが大幅に増進される。
【0033】
(8)レンズ設計検証グループが小さい:探索データを全ての関与している検眼士の診療所から収集する。したがって、累進レンズ設計ソフトウェアは、数百万人の患者の検査グループから記録された探索パターン、患者の挙動、および最終的な患者の選択へのアクセスを有することになる。かかる巨大でかつ迅速に増大するデータベースへのアクセスは、累進レンズ設計アルゴリズムを迅速かつ効果的に向上させるために用いられる。
【0034】
(9)検査用の像が患者の実際の視覚的要求を反映していない:累進レンズシミュレータは、患者が選択する任意の像に対する患者の視力の検査を患者に提供する。有望な具体化が患者の実際の活動にとって適切でありかつこれをシミュレートするユーザ関連像を提供している。
【0035】
(10)周辺視が検査されることはめったにない:ディジタル像投影システムは、患者の視力の完全な特徴づけのために中心像とおよび周辺像の両方を提供することができる。
【0036】
(11)最新式の探索アルゴリズムがまだ利用されていない:患者探求のための誘導システムは、幾つかの実施形態では、複雑で多数の相互依存性のかつ拘束されたメリットランドスケープを探求するよう開発された最新式の探索技術を用いる。
【0037】
(12)人工知能が用いられていない:人工知能エンジンがシステムのソフトウェアをブロックごとに一貫して改良するとともにアップグレードするために用いられる。
【0038】
ここで説明しているシステムは、前向きな結果のみを生じさせ、というのは、かかるシステムを最初に用いて伝統的な手順による伝統的な累進レンズ処方箋を決定することができるからである。その後、累進レンズシミュレータは、ここで説明している実施形態によって種々の進化した探索を実施することができ、そして患者を自分にとって最適な新型の累進レンズ処方箋に誘導する。最終的に、累進レンズシミュレータは、伝統的な累進レンズ経験をシミュレートし、次に新型の累進レンズ経験をシミュレートすることができ、そして行ったり来たり交互に行うことができ、その結果、患者は、2つの累進レンズ経験を比較して自分の最終的な選択を行うことができるようになっている。患者は、常に伝統的な累進レンズ設計に戻ってこれを選択することができるので、プロセスの全体的な結果は、伝統的なプロセスよりも悪くなることはなく、良くなることしかない。
【0039】
本明細書は、多くの実施形態、多くの技術および多くの方法を説明している。本明細書はまた、既存の伝統的システムと比較して12を超える利点を説明している。かくして、上述の利点は、全ての実施形態について限定的ではない。確かに、1つしか利点を備えずまたは2~3の利点を備える実施形態は、既存のシステムと比較して既に新規である。また、本システムを新規にする幾つかの他のまだ記載していない利点が存在する。さらに、説明する上述した観点のうちの幾つかを追加の相乗的利点を得るために種々の実施形態において組み合わせることができる。
【0040】
図1および図2は、シミュレートされた累進レンズの誘導式レンズ設計探求システム(GPS)10を高いシステムレベルで示している。GPS10の実施形態は、以下に示すように上述の特徴および利点のうちの1つまたは2つ以上を備えている。
(1)患者は、購入のために1つを選択する前に多くの異なる累進レンズ設計を探求して「試着」することができる。
(2)実施形態は、最新式のディジタル光電子技術を用いている。
(3)患者は、自分が望むだけ多くの距離のところで視力を検査することができる。
(4)患者の2つの眼を同期して検査することができ、かくしてこれらのバージェンスを視覚的経験に織り込むことができる。
(5)最終的に選択された累進レンズ設計および処方箋は、十分の数のパラメータが決定されているので、明確である。
(6)患者は、スマートソフトウェアによって誘導された状態で、自身で累進レンズ設計を探求しているので、検眼士の時間に対する要求は、実際には、既存のシステムに対して減少し、というのは、検眼士は、患者の探求を監視するためにのみ要求されるからである。
(7)患者は、自分自身の設計を選択するので、メガネは、調節のために戻されるが、それほど頻繁ではない。
(8)レンズ設計検証グループは、大きくしかもさらに大きくなる。
(9)検査像は、患者の実際の視覚的要求を反映している。
(10)患者の周辺視は患者の要望に応じて大々的に検査される。
(11)最先端の探索アルゴリズムが患者の探求を誘導するために利用される。
(12)人工知能がレンズ設計と患者の誘導システムの両方を連続的にアップグレードするとともに向上するために用いられる。
【0041】
GPS10のこれらのシステムレベル概念が図1および図2に全体的に記載されており、次に、図3図36に詳細に記載されている。特に、図3図15は、患者が探求しようと望む多くの累進レンズ設計の本物そっくりの包括的累進レンズシミュレーションを生成する累進レンズシミュレータの多くの実施形態を記載している。図16図29は、累進レンズ設計の患者の探求の際に患者を誘導する誘導システムおよび方法を記載している。図30図35は、累進レンズシミュレータを訓練して向上させるための人工知能システムおよび方法を記載している。最後に、図36は、監視型マルチステーションGPSシステムを記載している。
【0042】
図1は、シミュレート式累進レンズの誘導式レンズ設計探求システム(GPS)10は、種々の累進レンズ設計をシミュレートする累進レンズシミュレータ(PLS)100、患者による考えられる限り多くの累進レンズ設計の探求を知的に案内する累進レンズシミュレータ用のレンズ設計探求システム(LDES)300、およびGPS10システムの考えられる改良策を発見して引き出すために患者によるレンズ設計探求プロセスをモニタし、次に発見した改良策を実際に具体化するGPS用の人工知能エンジン(AI-GPS)500を含むのが良いことを示している。完全一体型GPS10システムのこれら3つの主要なビルディングブロックを効率的な通信が可能であるように全て互いに結合するのが良い。[明細書の残部において、場合によっては、省略した頭字語を参照のために、しかも略して用いる。]
【0043】
図2は、これら3つの主要ビルディングブロックPLS100、LEDS300、およびAI-GPS500の要素を幾分詳細に示している。累進レンズシミュレータPLS100は、患者のがんの軸または注視の方向ならびに眼球運動を追跡するアイトラッカ(ET)110を有するのが良い。アイトラッカ110は、患者が両眼の軸のバージェンスから見ている標的の距離を求めることができる。アイトラッカ設計は、当該技術分野においては知られており、かかるアイトラッカ設計をこのPLS100において適用して具体化するのが良い。PLS100は、選択された累進レンズ設計の軸外視覚的経験をシミュレートする軸外累進レンズシミュレータ(OPS)120をさらに有するのが良い。この経験は、きわめて複雑であり、というのは、累進レンズの有効光学パワーが光軸に対する角度につれて変化するからである。
【0044】
PLS100は、観察した像の距離と累進レンズの軸方向パワーの組み合わせをシミュレートする軸方向パワー-距離シミュレータ(ADS)130をさらに有するのが良い。PLS100が累進レンズをシミュレートするので、光学パワーは、レンズ表面上で実質的に変化する。マルチステージ実施形態では、PLS100は、ADS130による最も重要な軸方向パワーのシミュレートと別個のOPS120による軸外パワーのシミュレートの組み合わせによりこれをシミュレートする。一体型実施形態では、PLS100は、一体型累進レンズシミュレータIPLS200で空間的に漸変する光学パワーをシミュレートする。
【0045】
PLS100は、観察距離を異なる方法でシミュレートするバージェンス-距離シミュレータ(VDS)140をさらに有するのが良い。VDS140は、真正面ではなく、互いに近づけられた2つの眼について像を提供することができ、その目的は、近い観察距離のところに位置している標的像の視覚的経験を生じさせることにある。最終的に、ズーム-距離シミュレータ(ZDS)150は、像をズームインし、またはズームアウトすることによって観察距離の変化(PLS100によって第1の距離から第2の距離まで変化する)をシミュレートすることができる。このようにすることにより、患者に対してPLS100により生成される視覚的経験の現実的感覚を一段と高めることができる。
【0046】
GPS10は、効率的かつ確かな情報に基づくストラテジーで患者による多数の考えられる累進レンズ設計の探求を誘導する累進レンズシミュレータ用の誘導式レンズ設計探求システム(LDES)300を有するのが良い。LDES300は、フィードバック-制御インターフェース(FCI)310を有するのが良い。このFCI310を患者が用いると、PLS100のためのフィードバックおよび制御信号を入力することができ、その目的は、好みを表すとともにシミュレート式累進レンズ設計123に関するフィードバックを提供することにある。幾つかの実施形態では、LDES300は、累進レンズ設計プロセッサ(PLD)320を有するのが良い。PLD320は、患者の眼の測定に基づき、患者の入力、フィードバック、および制御信号に基づき、しかもレンズ設計アルゴリズムに基づいて特定の累進レンズ設計を作ることができる。作られた特定の累進レンズ設計をPLD320によってPLS100に伝えることができ、それにより患者にとっての対応の累進レンズ視覚的経験を生じさせることができる。
【0047】
LDES300は、探索誘導エンジン(SGE)330をさらに有するのが良い。患者は、多くの場合またはそれどころか典型的には、累進レンズの設計を変化させてその光学性能をどのように向上させるかについて知ってはいない場合がある。患者は、代表的には、設計の最後の変化が視覚的経験を良好にしまたは悪くしたことを感じるだけである。さもなければ、患者は、自分が探しているのがどういった改良であるかをはっきりと述べることができる。しかしながら、累進レンズ設計を多くの互いに異なる仕方で変更してかかる変化を生じさせることができるので、所望の変化に確かな情報に基づくかつ巧妙な仕方で影響を及ぼすための誘導システムが有用であり、かつ事実必要である。かかる誘導方式を提供することは、SGE330の機能のうちの一つである。SGE330は、患者から所望の改良または好みを受け取り、次に、要求された改良をレンズ設計の変化にどのように変換するかを患者に示唆するのが良い。
【0048】
LDES300の幾つかの実施形態は、2つの眼の視覚的経験を同期して監督・制御し、そして2つの眼からの所望の設計改良を一体化するうえで重要な役割を果たす同期眼探求コントローラ(SEC)340をさらに有するのが良い。最後に、LDES300は、周辺像における患者の視力を評価し、そしてこの情報をPLS100によって累進レンズのシミュレーションにフィードバックする周辺視力エクスプローラ(PVE)350をさらに有するのが良い。
【0049】
最後に、PLS100およびLDES300のコンポーネントの性能をモニタし、そして示唆された調節を推し進めてGPSシステム10の管理されたコンポーネントの性能を向上させるためのGPS用の人工知能エンジン(AI-GPS)500をGPS10の幾つかの実施形態に組み込むのが良い。幾分詳細に説明すると、GPS10は、PLD320の性能をモニタしてこれを向上させる累進レンズ設計プロセッサ用の人工知能(AI)エンジン(AI-PLD)510を有するのが良い。他の実施形態は、探索誘導エンジン用のAIエンジン(AI-SGE)520を有するのが良い。最後に、GPS10の幾つかの実施形態は、累進レンズシミュレータ用のAIエンジン(AI-PLS)530を含むのが良い。3つのAIエンジン510/520/530の各々は、対応のシステムブロックPLD320、SGE330、およびPLS100の機能実行状態をモニタし、次にAIを利用した訓練サイクルを実施してこれらブロックの性能を向上させるよう構成されているのが良い。幾つかの実施形態では、これらAIエンジンは、ニューラルネットワークによって具体化される。
【0050】
GPS10の上述のシステムレベルの説明は、いまや多くの特定の実施形態の詳細な説明によりより詳細に拡張される。わかりやすくするために、これら実施形態の表示は、表題のある項目に秩序だって記載されている。
【0051】
1.軸方向パワー-距離シミュレータを含む累進レンズシミュレータ
【0052】
図3は、累進レンズシミュレータPLS100のマルチステージ実施形態を示しており、このマルチステージ実施形態としての累進レンズシミュレータPLS100は、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるアイトラッカ(ET)110、累進レンズ設計123に従って軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)50を生成する軸外累進レンズシミュレータ(OPS)120、および累進レンズパワーを眼軸方向にシミュレートし、それにより包括的累進レンズシミュレーション30を軸外PLS50から生じさせるための軸方向パワー-距離シミュレータ(ADS)130を有する。眼軸方向は、視軸と呼ばれる場合がある。
【0053】
幾つかの実施形態では、軸外累進レンズシミュレータOPS120は、像21を生成する像発生器121、生成した像21を累進レンズ設計123に従って軸外PLS信号20-1,20-2に変換する軸外累進レンズシミュレータプロセッサまたはOPSプロセッサ122、および軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)50を軸外PLS信号20に従って表示する軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124-1/124-2を有する。この場合、以下において、多くの項目Xが各眼について1つずつGPS10ペアワイズに含まれている。これらは、代表的には、項目X-1およびX-2としてラベル表示されている。場合によっては、簡潔にするために、項目X-1およびX-2のひとまとまりを単にXと称する。
【0054】
幾つかのPLS100では、軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124は、1対の軸外累進レンズシミュレータスクリーン124-1,124-2を含み、各スクリーンは、軸外PLS50-1,50-2を表示し、2つのPLSは一緒になって、第1/左眼1および第2/右眼2について立体視軸外PLS50を提供している。
【0055】
幾つかのPLS100では、軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124は、第1の眼1について軸外PLS50-1の表示と、次の第2の眼2についてのPLS50-2を適当な立体視調節を施した状態で交番させる像オルタネータにより制御される単一の立体視交番軸外累進レンズシミュレータスクリーン124を含む。この同期された像交番により左眼/右眼像について迅速に交番する表示、すなわち、非標的眼に対して像を遮断することにより、立体視像および観察経験を生じさせるための単一のスクリーンの使用が可能になる。この像交番技術は、遮蔽または回転ホイールを含む機械的実施形態、迅速な偏光変化を含む光電子実施形態、および像を遮断する液晶実施形態を有する。これら実施形態のうちの任意の1つを立体視交番軸外累進レンズシミュレータスクリーン124に利用することができる。
【0056】
図4Aは、累進レンズ設計123が典型的な累進レンズの特徴領域を含んでいることを示している。これら領域は、累進レンズの上方部分に設けられていて遠方視光学パワーOPdを有する遠方視領域123d、累進レンズの下方部分に設けられていて典型的には鼻側にずらされていて強い近方視光学パワーOPnを有する近方視領域123n、およびチャネルとも呼ばれる場合のある累進領域123pを含み、累進光学パワーOPpは、OPdとOPnとの間で累進的にかつ滑らかに内挿している。累進レンズ設計123は、代表的にはチャネル/累進領域123pの両側に位置する移行領域123tをさらに含み、レンズの前面および後面は、光学パワーがチャネル123p内で累進していることに起因して生じる光学的ひずみを最小限に抑えるよう形作られている。
【0057】
図4Aは、累進レンズシミュレータPLS100において軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122が、(1)像発生器121からの生成像21を受け取り、(2)累進レンズ設計123を表す局所的に漸変しているブラー126を導入することによって生成像21を軸外PLS信号20に変換するよう構成されているのが良い。このブラー126は、累進レンズ設計の光学パワーが移行領域123tおよびチャネルまたは累進領域123p内で局所的に漸変することによって引き起こされ、それにより物体点からの光線が単一の明確に規定された像点にピント合わせされるようにはならない。
【0058】
これと類比して、PLS100の幾つかの実施形態では、OPSプロセッサ122は、(1)生成像21を像発生器121から受け取り、(2)累進レンズ設計123を表す局所的に漸変する曲率またはスイム127を導入することによって生成像21を軸外PLS信号20に変換するよう構成されているのが良い。
【0059】
図4Bは、正方形のグリッドが結像物体として見えるスイム127を示している。典型的な累進レンズ設計123は、正方形グリッドのもともとは直線を曲げてこれを湾曲させて湾曲スイムグリッド128の状態にしている。これら2つの作用効果が図4Aに実証されており、規則的な像の移行領域は、典型的な累進レンズ設計123によってブラー126を生じさせ、直線は、スイム127によって曲げられた状態になる。
【0060】
OPSプロセッサ122は、このブラー126およびスイム127を定量的に生じさせるよう累進レンズ設計123を通って生成像21から出た光の詳細なレイトレーシングコンピュータ計算を実施するのが良い。変形実施形態では、波面伝搬法は、OPSプロセッサ122によって使用されても良い。正確なブラー126およびスイム127を発生させることは、少なくとも以下の理由で本物そっくりの軸外累進レンズシミュレーション(PLS)50を生成するためのOPSプロセッサ122の主要な機能である。患者が特定の累進レンズ設計123の視覚的経験を評価する場合、主な肯定的経験は、遠用領域内のOPdから近用領域内のOPnまでの光学パワーのカスタマイズされた増大であり、主要な否定的経験は、パワー累進によって引き起こされる「肯定面の代償」、すなわち付随するブラー126およびスイム127である。GPS10は、患者について互いに異なる累進レンズ設計123をシミュレートしている。最適累進レンズ設計123のための探索は、患者が個々のシミュレートされた設計123の包括的累進レンズシミュレーション30の否定面に対する肯定面のバランスを評価し、最終的に自分のより好ましい設計123を見分けることによって実施される。OPSプロセッサ122は、設計123のブラー126およびスイム127の最も本物そっくりのシミュレーションによってこの探索プロセスを決定的に助ける。幾つかのPLS100では、像発生器121、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122、および軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124のうちの少なくとも2つを一体化するのが良い。
【0061】
図3および図5は、PLS100が注視距離のところでアイトラッカ110によって定められるかあるいはオペレータによって意図された表示軸外PLS50に関するバージェンスをシミュレートするバージェンス-距離シミュレータVDS140を有するのが良いことをさらに示している。VDS140の有用性は、上記において概述した。包括的PLS30の本物そっくりの視覚的経験をさらに高めるには、軸外累進レンズシミュレーションPLS50-1,50-2を動かし、それにより包括的PLS30-1,30-2を両眼がより近い注視距離でピント合わせをするときに互いに近づけるのが良い。これは、患者がシミュレート式累進レンズ設計123の近方視領域123nを介して見るようになった自分の視軸を下げるとともに内側に回転させたときに起こる場合がある。別の状況は、GPS10のオペレータまたはコンピュータコントローラがより近い注視距離に対応した包括的PLS30を提供して患者の近方視を検査しようと決定する場合である。注視距離に対応したバージェンスをシミュレートすることにより、本物そっくりの視覚的経験が顕著な程度まで正確に高められる。
【0062】
バージェンス-距離シミュレータVDS140は、(1)軸外累進レンズシミュレータディスプレイ24のスクリーンを主として側方に動かすことによって、あるいは、(2)軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124上の表示軸外PLS50を主として側方にずらすことによって、注視距離のところで表示軸外PLS50に関するバージェンスをシミュレートするよう構成されているのが良い。後者の実施形態では、軸外PLS50は、代表的には、OPSディスプレイ124の一部分上でのみ表示され、かくして、軸外PLS50の像を側方に電子的に動かす余地が残される。PLS100の中には、(1)と(2)の組み合わせを含むものがある。他の解決策、例えばミラーを軸外PLS50の光路内で回転させることもまた利用できる。
【0063】
図5は、PLS100の幾つかの実施形態では、VDS140がバージェンス信号40を受け取ってバージェンスシミュレーションを制御するようOPSプロセッサ122にオプションとして結合されたVDSプロセッサ142を有するのが良いことを示している。VDSプロセッサ142は、バージェンスVDSアクチュエータ144-1,144-2に結合されるのが良い。幾つかの実施形態では、これらVDSアクチュエータ144-1,144-2は、OPSディスプレイ124-1,124-2を側方に機械的に動かすのが良い。
【0064】
図3および図5はまた、幾つかのPLS100が注視距離の変化に従って包括的PLS30をズームすることによって包括的PLS30の本物そっくりの視覚的経験を一段と高めるためのズーム-ZDS150を有するのが良いことを示している。このZDS150は、患者が累進レンズ設計123に対して自分の注視を動かすのを決めたときに作動されるのが良い。例えば、患者は、自分の注視を累進レンズ設計の遠方視領域123dから近方視領域123nに動かして近くの物体を見る。ZDS150は、近くの物体上にズームインすることによってこの動きの本物そっくりの経験を高めることができる。図5に示されているように、PLS100は、ズーム信号50を受け取りまたは送るようOPSプロセッサ122に結合されたZDSプロセッサ152を有するのが良い。幾つかの場合、ZDSプロセッサ152は、アイトラッカ110によって、患者が例えばフォアグラウンド物体を見るために全体的生成像21の近くの部分を見るための切り替えプロセスの一部として、自分の注視方向を下方かつ内方に回したことを通知されるのが良い。これに対応して、ZDSプロセッサ152は、ズーム信号50を介してOPSプロセッサ122に通知して、生成像21の近くの部分上、例えばフォアグラウンド物体上にズームインするのが良い。
【0065】
最新式光電子技術では、上述のシミュレータは、種々の度合いに一体化されるのが良い。幾つかのPLS100では、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122、軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124、および軸方向パワー-距離シミュレータADS130のうちの少なくとも1つは、バージェンス-距離シミュレータ140およびズーム-距離シミュレータ150のうちの少なくとも一方を含むのが良い。幾つかの場合、VDSプロセッサ142のみまたはZDSプロセッサ152のみが含まれても良い。
【0066】
次に、説明は、軸方向パワー-距離シミュレータADS130の種々の実施形態に関する。一般に、ADS130は、調節可能な光学屈折力を有する調節可能な光学系であるのが良い。ADS130のこの調節可能な光学屈折力は、アイトラッカ110によって定められた注視距離と一致するよう調節可能であるのが良い。他の実施形態では、ADS130の調節可能な光学パワーは、例えば患者またはGPS10のオペレータが視力を探求して異なる距離で検査することを決定したときに意図した注視距離に合わせて調節されるのが良い。
【0067】
幾つかの実施形態では、ADS130は、光学パワーが調節可能であるが位置が固定されている光学素子、例えばレンズおよびミラーを用いる。他の実施形態では、ADS130は、位置もまた眼軸方向または視軸に一致したバージェンスをシミュレートするよう調節可能な光学素子を用いることができる。ADSの単純な実施形態は、バージェンスのシミュレーションの本物そっくりさを増大させるよう側方に並進可能でありまたは回転可能である1対の調節可能なレンズまたはミラーを有するのが良い。
【0068】
図6Aおよび図6Bは、ADS130の特定の実施形態を示している。図6Aは、アルバレスレンズ系132を含むADS130を示している。アルバレスレンズ系132は、各眼について少なくとも2枚の(滑り)レンズ134-1,134-2(2枚のレンズ134のうちの少なくとも一方は、側方に漸変する曲率を有する)、およびレンズ134のうちの少なくとも一方を他方のレンズに対して側方に滑らせ、それによりアルバレスレンズ系132の中央領域の光学屈折力を変化させる1つまたは2つ以上のアクチュエータ135を含むのが良い。アクチュエータ135は、煩雑になるのを避けるために1度しか示されていない。アルバレスレンズ系132の実施形態では、実質的な収差を導入しないで中央領域の光学パワー(屈折度の強さ)を2ジオプタ(2D)以上だけ変化させることができる。中央領域の直径は、2cm、2.5cm、3cm、または3cm超であるのが良い。2D光学パワーをADS130に付加することにより、遠くから認識される像距離が1/2D=50cmまで変化する。したがって、光学パワーを2Dだけ変化させる能力は、代表的には、遠方視領域123dのOPdから近方視領域123nのOPnまで軸方向光学パワーを変化させ、それにより関心のある範囲全体をシミュレートするのに十分である。上述したように、ADS130の一方の機能は、物体までの注視距離をシミュレートすることにあり、他方の機能は、累進レンズ設計123の軸方向光学パワーをシミュレートすることにある。異なるADS130は、これら2つの機能を一体化して別々に実施することができる。
【0069】
図6Bは、ADS130の別の実施形態を示しており、この別の実施形態としてのADS130は、1対の調節可能な流体レンズ138-1を含む調節可能な流体レンズシステム136を有し、これら流体レンズは、流体レンズ138-1(1枚のレンズしか図示されていない)内の流体の量によって制御される光学屈折力を有し、別の実施形態としてのADS130は、流体レンズ138-1内の流体の量を調節する流体管理システム138-2、および1対の調節可能な流体レンズ138-1および流体管理システム138-2を制御してADS130の光学屈折力を調節するためのレンズ調節エレクトロニクス138-3をさらに有する。図示のように、調節可能な流体レンズ138-1は、液体を収容した変形可能な丸形のポリマースキンを有するのが良い。流体管理システム138-2は、流体をレンズ138-1中に注入しまたは流体をレンズ138-1から排出することができる。このようにすることにより、中心高さがh1からh2に変化する。レンズの基本的な法則によって、この高さの変化により、レンズ138-1の焦点距離が図示のようにf1からf2に変化し、その光学屈折力が調節される。
【0070】
ADS130の他の多くの実施形態が存在し、かかる実施形態は、形状変化レンズ、屈折率変化レンズ、可変ミラー、変形可能な光学部品、調節可能な開口を備えた非球面レンズ、液晶光学素子、調節可能な反射光学素子、調節可能な光電子素子、および調節可能な相対位置を呈する光学コンポーネントを含む光学系を含む。
【0071】
図7は、PLS100の実施形態を詳細に示している。図7のPLS100の要素のうちの大部分は、図3の一般的なPLS100の特定の実施形態であり、これについてはここでは繰り返さない。次に、図7の追加の特徴を次のように記載する。
【0072】
図7のPLS100では、アイトラッカ110は、PLS100のフロントの近くに位置決めされていて、赤外眼球追跡ビームを第1の眼1上および第2の眼2上に投射するための赤外発光ダイオードまたはIR LED112-1,112-2、ならびに第1の眼1および第2の眼2を赤外結像光で照明するための赤外光源111-1,111-2を有するのが良い。この赤外眼追跡ビームおよび赤外結像光は、両方とも、反射IRビームおよびIR結像光11-1,11-2として眼1,2から反射された状態になる。
【0073】
アイトラッカ110は、眼1,2から反射された赤外眼追跡ビームおよび赤外結像光11-1,11-2を検出するための赤外(IR)カメラ114-1,114-2を備えた赤外(IR)望遠鏡113-1,113-2をさらに有するのが良い。すると、IRカメラ114-1,114-2は、眼追跡像14-1,14-2を生成し、これらを眼追跡プロセッサ115に送る。眼追跡プロセッサ115は、これら眼追跡像を処理するとともに分析し、それにより眼追跡像/データ15-1,15-2(まとめて15と言う)を生成することができる。幾分詳細に説明すると、IR LED112のIRビームは、角膜で始まって眼の種々の表面から反射するプルキンエ反射光またはプルキンエスポットとして反射される。これらプルキンエスポットを追跡することにより、ピンポイントの上方が送り出されて眼位置および向きを追跡する。IR光源111は、他方において、角膜の前側領域全体を結像するために使用できるワイドアングルIR光を生成する。アイトラッカ110は、反射プルキンエスポットからのピンポイント情報と反射結像光(まとめて11と言う)からのワイドアングル像の両方を用いて包括的眼追跡像/データ15を生じさせることができる。
【0074】
図3の実施形態では、アイトラッカ110は、眼追跡像/データ15をOPSプロセッサ122に直接送り込む。図7の実施形態では、OPSプロセッサ122とは別体の介在眼追跡プロセッサ115が設けられている。幾つかのアナログ変形例がPLS100の種々の実施形態について想定されている。
【0075】
作用を説明すると、OPSプロセッサ122は、像発生器121から生成像21を受け取り、これを調節して軸外累進レンズシミュレーション信号20-1,20-2を生じさせ、そしてこれら軸外PLS信号20をOPSディスプレイ124-1,124-2に送り、その結果、OPSディスプレイ124が軸外PLS50-1,50-2を生成するようになっている。
【0076】
図示のように、幾つかの実施形態では、VDSプロセッサ142とZDSプロセッサ152をOPSプロセッサ122中に一体化することができる。これらの実施形態では、軸外PLS信号20は、バージェンスおよびズーム成分をさらに含む。バージェンス成分は、VDSアクチュエータ144-1,144-2に命令を出してOPSディスプレイ124-1,124-2を側方に動かしまたは回転させて必要とされるバージェンスをシミュレートするのが良い。これら実施形態では、軸外PLS50は、図示のようにバージェンスおよびズームを含む。
【0077】
図7は、PLS100が軸外PLS50-1,50-2の向きをOPSディスプレイ124-1,124-2から眼1,2に変えるよう眼について1つずつ赤外透過可視ミラー146-1,146-2をさらに有するのが良いことを示している。この反射により、軸外PLS50-1,50-2の向きが眼1,2の方向においてPLS100の主光学経路中に向けられる。最終的に、軸外PLS50-1,50-2は、軸方向パワー-距離シミュレータADS130-1,130-2を通過することになる。このPLSでは、ADS130-1,130-2は、上述したアルバレスレンズ系132、調節可能な流体レンズ系136、または他の調節可能な光学素子のうちの任意のものであって良い調節可能な光学パワーシステム131-1,131-2を含む。ADS130は、軸外PLS50を患者の眼について包括的累進レンズシミュレーションPLS30に変換する。
【0078】
注目されるように、赤外透過可視ミラー146-1,146-2は、可視光を反射する一方で赤外光を透過させる。したがって、ミラー146は、軸外PLS50を眼に向かって反射する一方で反射赤外眼追跡ビームおよび赤外結像光11-1,11-2を眼から伝えるよう構成されている。
【0079】
PLS100の上述の実施形態では、OPSディスプレイスクリーン124-1,124-2は、PLS100の主光学経路に対して周辺に位置決めされるのが良く、他方、アイトラッカ110の赤外望遠鏡113-1,113-2は、図示のように主光学経路内に位置決めされるのが良い。他の実施形態では、これらの位置決めを逆にしても良い。ミラー146は、IR反射性でありかつ可視光透過性であるのが良く、この場合、IR望遠鏡113は、周辺に位置決めされるのが良く、他方、OPSディスプレイ124は、主光学経路内に位置決めされるのが良く、実際には、位置を交代させても良い。
【0080】
2.軸方向パワー-距離シミュレータを備えた累進レンズシミュレータの作動方法
【0081】
図8は、累進レンズシミュレータPLS100のマルチステージ実施形態を作動させる方法101mを示している。この場合、“m”という添え字は、PLS100のマルチステージ実施形態を意味している。この方法101mは、以下のステップを含むのが良い。
(a)眼軸方向をアイトラッカ110によって追跡して眼の注視距離を求めるステップ102m、
(b)累進レンズ設計123に従ってブラーおよびスイムを含む軸外累進レンズシミュレータOPS120によって軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)50を生成するステップ103m、
(c)眼軸方向における累進レンズパワーを軸方向パワー-距離シミュレータADS130によってシミュレートすることによって包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)30を軸外PLS50から生じさせるステップ104m、
(d)バージェンス-距離シミュレータVDS140によって軸外PLS50を注視距離に適切なバージェンスにずらすステップ105m、および
(e)ズーム-距離シミュレータZDS150によって軸外PLS50をズームして注視距離の移行をシミュレートするステップ106m。
これらステップの種々の観点は、図1図7のPLS100実施形態と関連して上述してある。
【0082】
軸外PLS50の生成ステップ103mは、以下を含むのが良い。
(a)像発生器121によって像21を生成するステップ、
(b)累進レンズ設計123に従って軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122によって生成像21を軸外PLS信号20に変換するステップ、および
(c)軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124によって軸外PLS信号20に従って軸外PLS50を表示するステップ。
これらステップの種々の観点は、図1図7のPLS100実施形態と関連して上述してある。
【0083】
上述したように、表示ステップは、1対の軸外累進レンズシミュレータディスプレイまたはスクリーン124-1,124-2によって第1の眼1および第2の眼2について立体視軸外PLS50-1,50-2を提供するステップを含むのが良い。
【0084】
他の実施形態では、表示ステップは、像オルタネータによって制御される立体視交番軸外累進レンズシミュレータスクリーン124によって、適当な立体視調整を施した状態で第1の眼1について、そして次に第2の眼2について軸外PLS50-1,50-2の表示を交番させるステップを含むのが良い。
【0085】
幾つかの実施形態では、図4Aおよび図4Bに示されているように、変換ステップは、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122によって生成像21を像発生器121から受け取るステップ、および累進レンズ設計123を表す局所的に漸変するブラー126を導入することによって生成像21を軸外PLS信号20に変換するステップを含むのが良い。
【0086】
幾つかの実施形態では、図4Aおよび図4Bに示されているように、変換ステップは、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122によって生成像21を像発生器121から受け取るステップ、および累進レンズ設計123を表す局所的に漸変する曲率またはスイム127を導入することによって生成像21を軸外PLS信号20に変換するステップを含むのが良い。
【0087】
幾つかの実施形態では、像発生器121、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122、および軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124のうちの少なくとも2つを一体化するのが良い。
【0088】
幾つかの実施形態では、図5に示されているように、方法101mは、バージェンス-距離シミュレータVDS140によって軸外PLS50を注視距離に適したバージェンスにずらすステップ105mをさらに含むのが良い。
【0089】
幾つかの実施形態では、バージェンスをシミュレートするステップは、軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124のスクリーンを主として側方に動かすステップ、および軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124上の表示された軸外PLS50を主として側方にずらすステップを含むのが良い。
【0090】
幾つかの実施形態では、図5に示されているように、方法101mは、注視距離の移行をシミュレートするようズーム-距離シミュレータ150によって軸外PLS50をズームするステップ106mをさらに含むのが良い。
【0091】
幾つかの実施形態では、軸外累進レンズシミュレータプロセッサ122、軸外累進レンズシミュレータディスプレイ124、および軸方向パワー-距離シミュレータADS130のうちの少なくとも1つは、バージェンス-距離シミュレータVDS140およびズーム-距離シミュレータZDS150のうちの少なくとも一方を含むのが良い。
【0092】
幾つかの実施形態では、累進レンズパワーをシミュレートするステップ(生じさせるステップ104m内)は、軸方向パワー-距離シミュレータADS130の調節可能な光学パワーシステム131の光学屈折力を調節するステップを含むのが良い。
【0093】
幾つかの実施形態では、調節ステップは、軸方向パワー-距離シミュレータADS130の光学屈折力を調節して求めた注視距離と一致させるステップを含むのが良い。幾つかの実施形態では、調節ステップは、軸方向パワー-距離シミュレータ130を調節して眼軸方向に一致したバージェンスをシミュレートするステップを含むのが良い。
【0094】
幾つかの実施形態では、図6Aに示されているように、軸方向パワー-距離シミュレータADS130の調節可能な光学パワーシステム131は、眼について少なくとも一方が側方に漸変する曲率を有する少なくとも2枚のレンズ134-1,134-2を含むアルバレスレンズ系132および2つまたは2つ以上のアクチュエータ135を含むのが良い。これらの実施形態では、調節ステップは、1つまたは2つ以上のアクチュエータ135によってレンズのうちの少なくとも一方134-1を他方のレンズ134-2に対して側方に滑らせ、それにより中央領域におけるアルバレスレンズ系132の光学屈折力を変化させるステップを含むのが良い。
【0095】
幾つかの実施形態では、図6Bに示されているように、軸方向パワー-距離シミュレータADS130の調節可能な光学パワーシステム131は、1対の調節可能な流体レンズ138-1を含む調節可能な流体レンズシステム136を有し、これら流体レンズは、これら流体レンズ内の流体の量によって制御される光学屈折力を有し、調節可能な光学パワーシステム131は、流体レンズ138-1内の流体の量を調節する流体管理システム138-2、および1対の調節可能な流体レンズ138-1および流体管理システム138-2を制御するレンズ調節エレクトロニクス138-3をさらに有する。これら実施形態では、調節ステップは、レンズ調節エレクトロニクス138-3の制御下で流体管理システム138-2によって流体レンズ138-1内の流体の量を調節し、それにより調節可能な光学パワーシステム131の光学屈折力を変化させるステップを含むのが良い。幾つかの実施形態では、調節可能な光学パワーシステム131は、形状変化レンズ、屈折率変化レンズ、可変ミラー、変形可能な光学部品、調節可能な開口を備えた非球面レンズ、液晶光学素子、調節可能な反射光学素子、調節可能な光電子素子、および調節可能な相対位置を呈する光学コンポーネントを含む光学系を含むのが良い。上述したように、この方法101mの観点および要素は、図1図7に関して上述してある。
【0096】
3.一体型累進レンズシミュレータ
【0097】
本項では、累進レンズシミュレータ100の別の実施形態について説明する。これら実施形態の多くの要素は、図1図8と関連して上述してあるので、これらについては繰り返さず、ただし、必要な場合にのみ言及する。
【0098】
図9は、累進レンズシミュレータ100を示しており、この累進レンズシミュレータ100は、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるアイトラッカ110、および軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)50の生成と組み合わせて眼軸方向における累進レンズパワーをシミュレートすることによって累進レンズ設計123に従って包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)30を生じさせる一体型累進レンズシミュレータ(IPLS)200を含む。全体的に、IPLS200の実施形態は、各々代表的な記号で示された上述のマルチステージPLS100のOPS120、ADS130、VDS140およびZDS150のうちの幾つかまたは全ての機能のうちの幾つかまたは全てを実施することができる。
【0099】
幾つかの実施形態では、PLS100は、像21を生成する像発生器121、および累進レンズ設計123に従って生成像21を包括的PLS信号20-1,20-2に変換するとともに包括的PLS30-1,30-2を作るために生成されたPLS信号20-1,20-2を一体型累進レンズシミュレータ200に結合する累進レンズシミュレータプロセッサ122を有するのが良い。幾つかの実施形態では、像発生器121および累進レンズシミュレータプロセッサ122をIPLS200中に一体化するのが良い。
【0100】
マルチステージPLS100が単一のOPSディスプレイ124または1対のOPSディスプレイ124-1,124-2を有するのと同様に、図9のPLS100は、図示のように、第1の眼1および第2の眼2について立体視包括的PLS30-1,30-2を提供するための単一のIPLS200または1対のIPLS200-1,200-2をさらに含むのが良い。
【0101】
単一のIPLS200実施形態では、IPLS200は、像オルタネータによって制御され、適当な立体視調節を施して第1の眼1について包括的PLS30-1の生成と、次に第2の眼2について包括的PLS30-2の生成を交番させる立体視交番一体型累進レンズシミュレータ200であるのが良い。
【0102】
幾つかの実施形態では、図4Aおよび図4Bと同様、累進レンズシミュレータプロセッサ122は、生成像21を像発生器121から受け取り、そして累進レンズ設計123を表す局所的に漸変するブラー126を生成像21中に導入することによって包括的PLS信号20の軸外PLS信号成分を生じさせるよう構成されているのが良い。
【0103】
幾つかの実施形態では、図4Aおよび図4Bと同様、累進レンズシミュレータプロセッサ122は、生成像21を像発生器121から受け取り、そして累進レンズ設計123を表す局所的に漸変する曲率またはスイム127を生成像21中に導入することによって包括的PLS信号20の軸外PLS信号成分を生じさせるよう構成されているのが良い。
【0104】
幾つかの実施形態では、図5と同様、累進レンズシミュレータPLS100は、注視距離のところで表示された包括的PLS30についてのバージェンスをシミュレートするバージェンス-距離シミュレータVDS140を含むのが良い。幾つかの実施形態では、VDS140は、IPLS200中に一体化される。幾つかの場合、バージェンス-距離シミュレータVDS140は、一体型累進レンズシミュレータ200-1,200-2を主として側方に動かすステップ、および一体型累進レンズシミュレータ200-1,200-2上の作られた包括的PLS30を主として側方にずらすステップのうちの少なくとも一方によって注視距離のところで包括的PLS30についてのバージェンスをシミュレートするよう構成されているのが良い。
【0105】
幾つかの実施形態では、図5と同様、累進レンズシミュレータPLS100は、包括的PLS30をズームして注視距離の変化を表示するズーム-距離シミュレータ150を含むのが良い。幾つかの実施形態では、一体型累進レンズシミュレータPLS200は、バージェンス-距離シミュレータ140およびズーム-距離シミュレータ150のうちの少なくとも一方を含むのが良い。
【0106】
一体型累進レンズシミュレータ200は、ADS130の主要機能、光線が注視距離に関連付けられたバージェンスを有する包括的PLS30を作ることによって眼軸方向における累進レンズ設計123の光学パワーをシミュレートするよう構成されているのが良い。上述したように、シミュレートされた光学パワーを選択するには、観察された物体の距離のシミュレーションと累進レンズ設計123の軸方向パワーのシミュレーションを組み合わせるのが良い。
【0107】
次に、図10図13を参照してIPLS200の種々の実施形態について説明する。これら実施形態の共有観点は、これら実施形態が包括的PLS30の別の観点、すなわち注視距離に従って観察された物体から出る光線のバージェンス(ダイバージェンス)をシミュレートすることにある。バージェンス(ダイバージェンス)は、多くの場合、観察された像を分析して知覚するために人間の脳によって用いられる全体的視覚的経験の重要な要素として考えられる。図1図8の実施形態の一観点は、PLS100の包括的PLS30を扁平なOPSディスプレイ124に集め、かくして平坦な波面を生じさせたことにある。これら平坦な波面は、真の観察または注視距離を完全に表していない。これとは対照的に、図10図13は、少なくとも、平坦ではない波面を備えた包括的PLS30を生成する能力を有するIPLS200の実施形態を示しており、光線は、あらゆる像点から広がり、それにより観察または注視距離を忠実に、より本物そっくりに表している。
【0108】
図10は、IPLS200が微小電気機械システム(MEMS)レーザスキャナ201を含むのが良いことを示しており、このMEMSレーザスキャナ201は、光を発生させて投射する光源またはレーザ源208、および投射光を反射してこれをXY-走査光209として走査するXY走査ミラー206を有する。このIPLS200では、光源208は、LEDであっても良く、ひとまとまりの互いに異なるカラーLEDであっても良く、レーザであっても良く、ひとまとまりの互いに異なるカラーレーザであっても良く、ディジタル光プロジェクタであっても良い。MEMSレーザスキャナ201は、ベース202、例えばフレームおよびY回転フレーム203を回転させるための第1/Y-スキャナヒンジシステム203hを有するのが良い。Y回転フレーム203は、制御ライン207を通って付勢される駆動コイル204を支持するのが良い。電流が制御ライン207からY回転フレーム203を通って流れているとき、この電流は、駆動コイル204中に磁界を誘起させる。Y回転フレーム203の下に位置決めされた磁石205がトルクを付勢された駆動コイル204に及ぼし、それによりY回転フレーム203を回転させる。
【0109】
IPLS200は、オプションとして第1/Y-スキャナヒンジシステム203h内に埋め込まれていて、投影光をXY-走査ミラー206によって2つの空間次元方向に反射してこれをXY走査光209として走査するための第2/X-スキャナヒンジシステム206hをさらに有するのが良い。このX-スキャナヒンジシステム206hは、電子機械式アクチュエータの種々の実施形態によって駆動されるのが良い。MEMSレーザスキャナ201の走査速度は、患者が包括的PLS30を現実のものとして知覚する十分に高いリフレッシュ速度で包括的PLS30を投射するのに足るほど高いのが良い。有用には、視力を評価する際に用いられる像は、代表的には静的であり、または僅かにゆっくりと動いており、かくして、リフレッシュ速度およびかくして走査速度に対する要求は、例えばファストアクションビデオゲームまたはライブTVの場合よりも低い。
【0110】
図11Aは、IPLS200の別の実施形態を示している。このIPLS200は、微小電気機械システム(MEMS)変形可能ミラー210を有し、このMEMS変形可能ミラー210は、光を発生させてこれを投射する光/レーザ源215、および投射された光を反射してこれをXY-走査光216に走査する変形可能ミラー214を有する。光/レーザ源215は、LEDであっても良く、ひとまとまりの互いに異なるカラーLEDであっても良く、レーザであっても良く、ひとまとまりの互いに異なるカラーレーザであっても良く、ディジタル光プロジェクタであっても良い。変形可能ミラー214は、ベース211、アクチュエータ電極212、および変形可能ミラー214をセグメント化方式で変形させるアレイ状に配置されたアクチュエータ213を有するのが良い。図示のIPLS200では、アクチュエータ213もまた変形可能である。変形可能ミラー214の各セグメントは、光が変形可能ミラー214を横切って走査されているときにXY-走査光/レーザ216の向きを変えることができる。
【0111】
図11Bは、IPLS200の別の実施形態を示しており、この別の実施形態は、光を発生させて投射する光/レーザ/ディジタル光源225を備えた微小電気機械システム(MEMS)作動式ミラーアレイ220を有する。光源225は、LED、LED群、レーザ、レーザ群、走査光源、およびディジタル光プロジェクタのうちの少なくとも1つを含むのが良い。MEMS作動式ミラーアレイ220は、アクチュエータアレイ222、アクチュエータ222のための制御信号を運ぶアクチュエータ電極223、およびレーザ/光源225からの光を作動的に反射してXY-走査光/レーザ226にするためのアレイ状に配置された作動可能なミラー224を支持するベース221を含むのが良い。
【0112】
図11Aおよび図11Bの実施形態では、光を走査されたやり方でまたは同時のやり方で提供することができ、この光は、図11Aの全てのミラーセグメントまたは図11Bの全ての作動可能なミラーを本質的に同時に照明する。後者の実施形態は、例えばディジタル光プロジェクタ225を使用するのが良い。
【0113】
図12Aは、IPLS200を示しており、このIPLS200は、軸外PLS50を発生させるための軸外累進レンズシミュレータ231を含むマイクロレンズアレイ光フィールドシステム230を有する。この軸外累進レンズシミュレータ231は、図1図7の軸外PLS120であるのが良い。マイクロレンズアレイ光フィールドシステム230は、発生させた軸外PLS50を受け取ってこれを末広がりに伝搬する光フィールド233として送って、上述したように眼軸方向における累進レンズパワー、注視距離に関連付けられたバージェンス、またはこれら2つの組み合わせをシミュレートするためのマイクロレンズアレイ232をさらに含むのが良い。マイクロレンズアレイは、光フィールドを平坦ではない波面を備えた状態で発生させることによってまさに本物そっくりの視覚的経験を生じさせるための関連光電子システム、例えばバーチャルリアリティゴーグルにおいて好都合である。
【0114】
図12Bは、IPLS200の別の実施形態を示している。このIPLS200は、図11BのIPLS200と類似しているが、1つの相違点があり、これは、図11BのIPLS200の扁平なミラーに代えて湾曲したミラーを利用していることである。したがって、このIPLS200は、光を発生させてこれを投射するためのディジタル光プロジェクタまたは光源245を含む微小電気機械システム(MEMS)湾曲ミラーアレイ240を有し、光源245は、LED、LED群、レーザ、レーザ群、走査光源、およびディジタル光プロジェクタのうちの少なくとも1つを含む。IPLS200は、ベース241、アクチュエータ電極に制御されるアクチュエータアレイ242、光を反射して注視距離に関連付けられたバージェンスを発生させるためのアレイ状に配置された作動可能な湾曲ミラー244をさらに有し、湾曲ミラー244は、固定ミラーおよび作動可能ミラーのうちの少なくとも一方を含む。湾曲ミラーから反射されたミラーは、末広がりに伝搬する光フィールド246を形成する。幾つかの実施形態では、作動可能湾曲ミラー244の曲率は、波面の本物そっくりの発散度を増大させるために注視距離に従って変更可能である。
【0115】
図12Cは、LEDプロジェクタアレイ250を有するIPLS200のさらに別の実施形態を示しており、LEDプロジェクタアレイ250は、ベース251、制御電極253によって制御され、軸外累進レンズシミュレーションの発生と組み合わせて眼軸方向における累進レンズパワーをシミュレートするための末広がりに伝搬する湾曲波面254を備えた包括的PLS30を作るためのLEDアレイ252を有する。
【0116】
図12Dは、作動可能な変形可能ディスプレイ259を有するIPLS200のさらに別の実施形態を示している。他の実施形態の場合と同様、この実施形態もまた、ベースまたは基材256上に形成されるのが良い。1組の制御電極257が制御信号をアクチュエータアレイ258の制御アクチュエータに伝えることができる。変形可能ディスプレイ259は、アクチュエータアレイ258の頂部に変形可能に設けられるのが良い。変形可能ディスプレイ259は、OLEDディスプレイであっても良く、任意の軟質、可撓性、または変形可能な均等例であっても良い。アクチュエータ258は、垂直の法線方向に伸縮することによってディスプレイ259を変形させることができる。この変形可能ディスプレイ255実施形態の一観点は、これが平坦ではない波面を放出することができ、かくして放出された波面の本物そっくりの発散度を向上させることができるということにある。
【0117】
図13は、累進レンズシミュレータ100を作動させる方法101iを示している。この場合、添え字“i”は、PLS100が一体型であること、例えばIPLS200を意味している。この方法101iは、次のステップを含むのが良い。
(a)アイトラッカET110により眼軸方向を追跡して注視距離を求めるステップ102i、
(b)軸外累進レンズシミュレータOPS120の効果および軸方向パワー-距離シミュレータADS130の効果をシミュレートすることによって、一体型累進レンズシミュレータIPLS200により包括的累進レンズシミュレーション(PLS)を生じさせるステップ103i、
(c)包括的PLSをバージェンス-距離シミュレータVDS140によって注視距離に適したバージェンスまでずらすステップ104i、および
(d)包括的PLSをズーム-距離シミュレータZDS150によってズームして注視距離の移行をシミュレートするステップ105i。
【0118】
4.頭部装着式累進レンズシミュレータ
【0119】
図14および図15は、ヘッドマウント262によって患者の頭に固定された頭部装着式PLS260を示している。頭部装着式PLS260は、一体型累進レンズシミュレータ(IPLS)200およびXYZ位置または運動センサ263を有するのが良い。IPLS200は、図9図13と関連して説明したIPLS200の実施形態のうちの任意のものであって良い。頭部装着式PLS260の幾つかの実施形態は、PLS100の任意の実施形態を含むことができる。
【0120】
幾分詳細に説明すると、PLS100の実施形態は、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるアイトラッカ110、および軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS)50の生成と組み合わせて眼軸方向における累進レンズパワーをシミュレートすることによって包括的累進レンズシミュレーション(PLS)30を生じさせる一体型累進レンズシミュレータ200を含むのが良い。これらの実施形態では、アイトラッカ110および一体型累進レンズシミュレータ200は、頭部装着式ディスプレイ、バーチャルリアリティビューワ、またはゴーグルの状態に具体化できる。次に、頭部装着式PLS260の2つの特定の実施形態について詳細に説明する。
【0121】
図15Aは、頭部装着式PLS260の一実施形態として二重LCD頭部装着式PLS270を示している。二重LCD頭部装着式PLS270は、バックライト271、バックライト271の前に位置決めされた第1の液晶ディスプレイ272、スペーサ274によって第1の液晶ディスプレイ272から間隔を置いて配置されていて、光フィールド効果を生じさせ、それにより包括的PLS30を生じさせることによって累進レンズ設計123を一緒にシミュレートするための第2の液晶ディスプレイ273を有するのが良い。二重LCD頭部装着式PLS270は、双眼観察レンズ275、および一実施形態としてのアイトラッカ110であるのが良いアイトラッカ277をさらに有するのが良い。極端なスペース上の制約のゆえに、アイトラッカ277は、ハイアングルから眼球運動を追跡するよう構成されているのが良い。他の実施形態では、IR反射可視透過ミラーが図7の実施形態における同様なミラー146と類似した仕方でアイトラッカ277の一部として使用することができる。最後に、上述の要素は、駆動エレクトロニクス276によって付勢されるとともに制御されるのが良い。要素271~276は一緒になって、IPLS200を形成するものと考えることができる。
【0122】
バーチャルリアリティゴーグルのフィールドは、迅速に拡張する。これらゴーグルは、本物そっくりの視覚的経験をますます生成することができ、したがって、これらの技術は、包括的PLS30を作るために頭部装着式PLS260の実施形態に有望に具体化できるとともにかかる実施形態に使用可能に応用できる。
【0123】
具体的に説明すると、頭部装着式PLS260によって生成される光フィールド効果は、三次元であっても良くまたは四次元であっても良い。後者(4D)技術はまた、焦点深度知覚を表し、物体平面の前または後ろに位置する物体をぼかした状態にする。このようにすることにより、視覚的近くの本物そっくりさが一段と高められる。
【0124】
PLS100の幾つかの実施形態は、XYZ位置センサを使用するだけではなく、XYZ運動センサ263を使用するのが良い。頭部装着式PLS260/270の位置および方向をピックアップするだけでなく、頭部装着式PLS260/270の着用者の動きを検出することは、駆動回路エレクトロニクス276上でまたは別個のコンピュータでランする制御ソフトウェアに組み込まれるのが良い。XYZ運動センサ263または運動センサは、加速度計、ジャイロスコープ、および磁力計のうちの少なくとも1つを含むのが良い。これらは全て、運動、位置、およびユーザの注視方向の検出に寄与することができる。
【0125】
図15Bは、頭部装着式PLS260の別の関連実施形態であるマイクロレンズアレイ頭部装着式PLS280を示している。マイクロレンズアレイ頭部装着式PLS280は、バックライト281、バックライト281の前に位置決めされた液晶ディスプレイ282、およびスペーサ284によって液晶ディスプレイ282から間隔を置いて配置されていて、光フィールド効果を生じさせ、それにより包括的PLS30を生じさせることによって一緒になって累進レンズ設計123をシミュレートするマイクロレンズアレイ283を有するのが良い。図12Aとの関係で上述したように、マイクロレンズアレイは、光フィールド効果および平坦ではない波面を特に効果的に作ることができ、それにより包括的PLS30の視覚的経験の本物そっくりさを高める。光フィールド効果は、三次元であっても良くまたは四次元であっても良い。
【0126】
マイクロレンズアレイ頭部装着式PLS280は、双眼観察レンズ285およびアイトラッカ287をさらに有するのが良い。上述したように、アイトラッカ287は、一実施形態としてのアイトラッカ110であるのが良い。幾つかの場合、アイトラッカ287は、ハイアングルで、または図7のミラー146と類似したIR反射可視透過ミラーの助けにより働くことができなければならない。最後に、上述の要素は、駆動回路エレクトロニクス286によって付勢されるとともに制御されるのが良い。要素281~286は一緒になって、IPLS200を形成するものと考えることができる。
【0127】
この実施形態は、頭部装着式PLS280の着用者の位置、方向、または運動を検出するための少なくとも1つのXYZ位置、方向、または運動センサ263をさらに有するのが良い。このセンサは、頭部装着式PLS280の位置、方向、または運動を検出することができ、それにより包括的PLS30の発生を助けることができる。
【0128】
図14図15Aおよび図15Bの全ての実施形態は、アイトラッカ277/287および一体型累進レンズシミュレータ200を収容するハウジング278/288をさらに有するのが良い。また、PLS100およびIPLS200で用いられるコンピュータのうちの幾つか、例えば累進レンズシミュレータプロセッサ122は、ヘッドマウントとは別体の自立型コンピュータ内に具体化できる。自立型コンピュータは、ワイヤード接続方式またはBluetooth 接続方式により頭部装着式PLS260/270/280と通信することができる。
【0129】
最後に、幾つかの実施形態では、頭部装着式PLS260/270/280は、拡張現実メガネを含むのが良く、この場合、包括的累進レンズシミュレーション30は、拡張現実メガネにより観察された像から生成される。
【0130】
5-6.累進レンズシミュレータのための誘導式レンズ設計探求システムおよび方法
【0131】
導入部分に記載したように、図3図15は、患者が高品質の本物そっくりの視覚的経験により多くの累進レンズ設計123を探求することができるようにするために包括的累進レンズシミュレーション30を生成する累進レンズシミュレータ100を記載している。ある等級のこれらPLS100システムは、患者からの口頭のフィードバックだけを用いて検眼士により伝統的なしかたで操作可能である。本項では、患者が自分自身の制御下で望むほど多くの累進レンズ設計の探求を患者が制御して管理することができるようにするシステムの追加の等級について説明する。
【0132】
図16図29は、重要な追加のシステムが相当多くの累進レンズ設計の探求を制御し、管理し、そして促進するためにGPS10の幾つかの実施形態において採用できることを示している。これらGPS10システムを、患者によって、検眼士によって、または視覚技術者によって管理して制御することができる。これら実施形態では、患者は、累進レンズ設計123の包括的累進レンズシミュレーション30に応答してフィードバックおよびオプションとして制御信号を提供することができる。上述の項で説明したように、この特徴は、少なくとも一覧表示した12の理由で既存の検眼システムからの有力な逸脱例である。
【0133】
図16は、実施形態においてPLS100を累進レンズシミュレータ用のレンズ設計探求システム(LDES)300と組み合わせることを示している。この組み合わせシステムは、患者について設計ファクタ420を備えた累進レンズ設計123を利用して包括的累進レンズシミュレーション30を生成するとともに包括累進レンズシミュレーション(PLS)30に応答して視覚フィードバック430を受け取るための累進レンズシミュレータ100を含む。PLS100の幾つかの実施形態については図3図15と関連して説明してある。これら実施形態のうちの任意の1つおよびこれらの組み合わせのうちの任意の1つを以下の説明において使用することができる。
【0134】
LEDS300は、累進レンズシミュレータ100に結合されていて、視覚フィードバック430に応答して累進レンズ設計123を変更し、そして変更後の累進レンズ設計123を累進レンズシミュレータ100に送って累進レンズ設計123を設計変更した状態で患者のための変更後の包括的累進レンズシミュレーション30を生成するための累進レンズ設計プロセッサ320をさらに有するのが良い。累進レンズ設計プロセッサ320は、OPS120の一部であっても良くまたはそれどころかこれに一体化されても良い。
【0135】
LEDS300は、累進レンズ設計プロセッサ320に結合されていて、オペレータから視覚フィードバック430を受け取り、そして受け取った視覚フィードバックをフィードバック-制御信号311の形態で累進レンズ設計プロセッサ320に転送するためのフィードバック-制御インターフェース310をさらに有するのが良く、フィードバック-制御インターフェース310は、ジョイスティック、タッチパッド、マウス、音声インターフェース、外部タブレットGUI、および内部視覚的インターフェースGUIから成る群から選択される。他の実施形態は、累進レンズ設計プロセッサ320に結合されていて、視覚フィードバック430を客観的患者視力測定値の形態で受け入れるアイトラッカ110を含むのが良い。他の実施形態では、プルキンエスポット利用像、シャインプルーフシステム、およびOCTシステムを含む他のシステムが客観的フィードバックを提供することができる。
【0136】
また、累進レンズ設計プロセッサ320は、眼モデル化のその計算値のうちの幾つかを利用することができる。これは、眼中のオフサルミック層のうちの幾つかを画像化し、次に広く用いられているホラデイモデルのように眼モデルを構築するステップを含むのが良い。
【0137】
LEDS300の実施形態の幾つかの作用モードがフィードバックに関して想定されている。(1)幾つかのLDES300は、患者自身によって操作される。PLS100は、患者のための包括的PLS30を生成し、患者は、視覚的経験を評価し、主観的なフィードバックを直接FCI310に入力する。
【0138】
(2)LEDS300の他の実施形態では、視覚フィードバックは、間接的であるにすぎない場合がある。患者は、口頭によるフィードバック、例えば、最新の変更によって包括的PLS30の視覚的経験が良くなったのか悪くなったのかを表現するに過ぎない場合があり、熟練オペレータ、技術者、または眼科医自身は、FCI310を介して制御信号311を入力することができる。
【0139】
(3)他のLDES300は、客観的な患者のフィードバックを利用するのが良く、かかる他のLDES300は、アクティブなまたは主観的な患者のフィードバックを必要としない。例えば、アイトラッカ110は、患者の眼球運動をモニタしてモニタから結論を引き出すことができる。例えば、患者の眼のジッター動作(ぴくっとした動き)が増大する場合、または患者が包括的PLS30の変更に応答して焦点を合わそうともがいている場合、アイトラッカ110は、これをLEDS300の累進レンズ設計プロセッサ320に報告するのが良い。これに応答して、累進レンズ設計プロセッサ320のソフトウェアは、変更が望ましくなかったと結論し、そして変更を取り消し、または別の変更を試みる場合がある。
【0140】
(4)最後に、LDES300の幾つかの実施形態では、客観的な患者のフィードバックまたは客観的な患者の視力測定値、例えば、患者の眼球運動の迅速性、またはピント合わせができないことをコンピュータソフトウェアによってではなく、LDES300のオペレータ、例えば検眼士自身によって患者の即座のまたは主観的な協力なしにモニタすることができる。かかる実施形態では、モニタを行っているオペレータは、フィードバックまたは制御をFCI310に入力するのが良く、FCIは、これをフィードバック-制御信号311に変換する。
【0141】
次に説明するPLS100とLDES300の組み合わせを上述の4つのモードのうちの任意のモードで、またはこれらモードの幾つかの組み合わせの状態で操作することができる。場合によっては、患者、技術者、検眼士、またはフィードバックまたは制御入力を一緒に提供するこれら可能性のある源のうちの2つ以上の幾つかの組み合わせを「オペレータ」と言う。また、この理由で、FCI310への入力、およびFCI310によって出力される信号311は、フィードバック、制御、およびフィードバックおよび制御入力の任意の組み合わせならびにフィードバックおよび制御信号の任意の組み合わせであって良い。これらの可能性および組み合わせを包括的にフィードバック-制御入力およびフィードバック-制御信号311と称する。
【0142】
図17A図17Fは、オペレータがフィードバックまたは制御入力を入力することができるフィードバック-制御インターフェースFCI310が多くの実施形態を有することができるということを示している。これらは、図17Aのジョイスティック(ツインジョイスティック)FCI310-1、図17Bのタッチパッド-マウスFCI310-2、図17Cの音声インターフェースFCI310-3、図17Dの外部タブレットGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)FCI310-4、および場合によっては図17Eの包括的PLS30の視覚的経験に重ね合わされた内部視覚-インターフェースGUI FCI310-5を含む。LDES300の第2の実施形態において言及したように、幾つかの場合では、患者は、主観的フィードバックしか提供することができず、かかる主観的フィードバックをオペレータまたは技術者が用いて入力を間接的FCI310-6に実際に入力することができる。図17Fは、かかる組み合わせオペレータモードを象徴的に示している。類似の実施形態では、検眼士は、入力をタブレット、iPad(登録商標)、固定ターミナルまたはLDES300のGUIに入力することができる。
【0143】
累進レンズ設計123をフィードバックに応答してどのように変更するかについてのフィードバックを実施可能な指令に「翻訳」することは、非自明的な難易度の高い仕事である。次に、フィードバックまたは「視覚フィードバック」に応答してこの翻訳を実施するための幾つかの実施形態について説明する。累進レンズ設計を視覚フィードバック一般に応答して探求するとともに変更する方法を累進レンズシミュレーション方法400と称する。次に、この方法の幾つかの実施形態について説明する。
【0144】
図18Aは、累進レンズシミュレーション方法400を示しており、この方法は、
(a)累進レンズ設計プロセッサ320によって設計ファクタ420を有する累進レンズ設計123をアクティブ状態にするステップ401、
(b)累進レンズシミュレータ100の像発生器121によって像21を生成するステップ402、
(c)累進レンズ設計123を用いて累進レンズシミュレータ100による生成像21からシミュレートされた包括的累進レンズシミュレーション(PLS)30を生成するステップ403、
(d)累進レンズ設計123による包括的PLS30の生成に応答して視覚フィードバック430を収集するステップ404、
(e)視覚フィードバック430に関連して累進レンズ設計プロセッサ320によって累進レンズ設計123を変更するステップ405、および
(f)累進レンズシミュレータ100による変更済み累進レンズ設計123により包括的PLS30を再生成するステップ406を含む。
【0145】
方法400は、代表的には、ステップ(d)-(e)-(f)を繰り返し実施し、ついには、視覚フィードバック430がこの方法の満足のゆく結果を示すようにするステップを含むのが良い。
【0146】
累進レンズ設計プロセッサ320により累進レンズ設計123をアクティブ状態にするステップ401は、予備測定に基づいて累進レンズ設計の選択に応答しているのが良い。像発生器121による像21の生成ステップは、像選択に応答しているのが良い。アクティブ状態にするステップ401の実施形態は、広義に理解される。累進レンズ設計123をアクティブ状態にするステップ401は、累進レンズ設計123をメモリまたは記憶媒体から呼び戻すステップを含むのが良い。アクティブ状態にするステップ401は、累進レンズ設計プロセッサ320が幾つかのモデルパラメータから累進レンズ設計123をコンピュータ処理しまたはモデル化することをさらに含むのが良い。累進レンズ設計123をどのような仕方でアクティブ状態にするにせよ、累進レンズシミュレータ100は、アクティブ状態にされた累進レンズ設計123を利用することによって包括的累進レンズシミュレーションPLS30を生成像21から生成するステップ403であるのが良い。
【0147】
方法400の上述のステップは、代表的には、PLS100およびLDES300によって実施される。図18Bは、方法400を実施するためにオペレータがLDES300と対話する方法410のステップを示している。方法410は、以下のステップを含むのが良い。
(a)オプションとして、予備測定に基づいて累進レンズ設計プロセッサ320により累進レンズ設計123を選択するステップ411、
(b)オプションとして、像発生器121により像21を選択するステップ412、
(c)累進レンズ設計123により選択された像21から累進レンズシミュレータPLS100によってシミュレートされた生成後の包括的PLS30の視覚的経験を評価するステップ413、
(d)オプションとして、検査方向における包括的PLS30の生成の像領域を検査するステップを含む評価ステップ414、および
(e)フィードバック-制御インターフェース310を介して評価に基づいて視覚フィードバック430を累進レンズ設計プロセッサ320に提供するステップ415。
【0148】
図19Aおよび図19Bは、図18Aおよび図18Bに記載された方法ステップを示している。図19Aは、図18Aと関連して説明した方法400のステップを幾分詳細に示している。アクティブにするステップ401に関し、累進レンズ設計123は、累進レンズ設計123が等高線によって定められた状態で示されている。像を生成するステップ402に関し、生成された21が示されている。包括的PLSを生成するステップ403に関し、包括的PLS30を生成像21から生成するステップがブラー126を像21の周辺領域に導入し、像21の直線を曲げることによってスイム127を導入するステップを含むのが良く、これら導入ステップは両方とも、詳細な光学的計算に基づいている。収集ステップ404は、図示のように眼の視軸の角度αのジッター動作の測定を含むのが良く、過度のジッター動作は、累進レンズ設計123の包括的PLS30による過度の不快感を指示している場合がある。
【0149】
図19Bは、PLS100-LDES300システムのオペレータによって実行される方法410のステップを示している。方法410のステップは、組み合わせ型PLS100-LDES300システム自体によって実行される方法400のステップと関連して示されている。これらステップは、これまた、図18Bに記載されたステップと密接に対応している。
【0150】
図20Aおよび図20Bは、設計ファクタ420を示している。多くの設計ファクタを用いるのが良く、互いに異なるレンズ製造業者は、多くの場合、これら製造業者自身の特定の組を成す設計ファクタを有する。一例を挙げると、設計ファクタ420は、等高線421、瞳孔高さまたは光学中心422、コリドー(corridor)、またはチャネル幅423、コリドー長さ424、近見鼻オフセット425、累進ピッチ426、プリズム、またはプリズム角度427、シリンダ向き428、累進プリズム、ゼルニケ係数、および非常に多くのその他を含む場合がある。シュナイダー自由形状レンズ製造技術の絶えず強化されている影響により、レンズトポグラフィー、輪郭または高さマップのコード化を設計ファクタとして使用することができる。
【0151】
幾つかの設計ファクタを検眼士による予備測定によって補うことができる。一例は、検眼士がメガネ位置決め高さを観察することができるということにあり、この場合、患者は、自分の鼻の上にメガネをのせて着用する。検眼士は、患者の個別的なメガネ位置決め高さを考慮するよう設計ファクタの光学中心422の高さをずらすことができる。
【0152】
図20Bは、これら個々の設計ファクタDF1,DF2,……,DFkのひとまとまりを、設計ファクタ空間を定めるものとして考えることができるということを示している。この設計ファクタ空間では、特定の累進レンズ設計を設計ファクタベクトルDFで表すことができる。この場合、累進レンズ設計123の探求は、一連の反復DF(1)、DF(2)、……を通じて誘導されつつ設計ファクタベクトルDFを探し求めてさまよい、ついには最適設計ファクタベクトルDF(最終)に達するようになることとして考えることができる。(分かりやすくするために、添え字1,2,……kは、DFベクトルの成分として個々の設計ファクタを意味しており、これに対し、括弧に入れた1,2,……nは、累進レンズ設計123の反復探求中の反復ステップの数を意味している。)
【0153】
図20Cおよび図20Dは、視覚フィードバック430の類似組織化を示している。視覚フィードバック430は、互いに異なる形式または等級のものであるのが良く、かかる視覚フィードバックとしては以下が挙げられる。
(a)フィードバック-制御インターフェースを介する主観的患者フィードバック、
(b)客観的な患者の視力測定、
(c)アイトラッカからのアイトラッカ像/データ、
(d)直接的な患者フィードバック
(e)間接的な患者フィードバック
(f)オペレータ制御入力、
(g)オペレータ指令、
(h)命令に対するオペレータ応答、および
(i)オペレータ選択。
【0154】
「視覚フィードバック」という用語は、本明細書では広義に用いられている。視覚フィードバックは、患者が視覚的経験の主観的評価を表すように主観的フィードバックを含むのが良い。視覚フィードバックは、患者の視軸のジッターネス(jitteriness)の測定のような客観的なフィードバックであっても良い。視覚フィードバックは、患者によってFCI310に直接入力される直接フィードバックであっても良い。視覚フィードバックは、間接フィードバックであっても良く、患者は、口頭で経験または好みを述べ、オペレータは、対応のフィードバックをFCI310に入力する。フィードバックは、単一のオペレータ、例えば患者から、または2人以上のオペレータ、例えば部分視覚フィードバックを入力する患者および別の相補フィードバックを入力するオペレータから来ても良い。また、視覚フィードバック430は、単に、フィードバック、制御、または指令入力であって良く、この場合、オペレータは、視覚的経験を制御、指令、選択、または応答に翻訳する。
【0155】
上述の等級の各々に関し、多数の特定の視覚フィードバック430が存在する場合がある。例示によって敷衍すると、主観的視覚フィードバックとしては、下鼻四分円をブラーであると、下側頭四分円をブラーであると、鼻累進領域が多すぎると言っていいほどのスイムを有すると、累進コリドーが長すぎると、累進コリドーが広すぎると、患者が主観的に知覚することが挙げられる。主観的視覚フィードバック430は、要求、指令、または他の制御入力を含む場合があり、例えば、患者がシリンダの配向角度を回転し、プリズムを増大し、そしてプリズム累進を減少させることを要求することを含む。客観的視覚フィードバック430は、検眼士が、患者の視覚検査方向または視軸がジッター動作しすぎであること、または患者が提供された物体にピントを合わせるのに困難を覚えていることを観察し、そして対応のフィードバック制御入力をFCI310に入力することを含む場合がある。これら可能性の全てが「視覚フィードバック430」の範囲に含まれる。
【0156】
図20Dは、個々の視覚フィードバックVF1,VF2,……、VFlを設計ファクタベクトルDFとそっくりに視覚フィードバックベクトルVF430を形成するものとして考えることができる。種々の実施形態では、DFベクトルの長さは、VFベクトルの長さに等しくない場合がある。この方式では、方法400による累進レンズ探求の各反復の際に、新たな視覚フィードバックベクトルVF(n)をオペレータ、患者、または測定システム、例えばアイトラッカ110から受け取り、そしてこれに応答して、組み合わせ型PLS100-LDES300システムは、設計ファクタベクトルDFを変更する。
【0157】
図16は、累進レンズシミュレータ100用のレンズ設計探求システム300の幾つかの実施形態で、累進レンズ設計プロセッサ320が視覚フィードバック-レンズ設計移送エンジンFLE325を含み、このFLE325が視覚フィードバック430に応答して累進レンズ設計123を変更する際に重要な役割を果たすことを示している。
【0158】
この視覚フィードバック-レンズ設計移送エンジンFLE325の重要な役割は、受け取った視覚フィードバック430を設計ファクタ420の変更に「翻訳」することにある。一実施例では、患者が「下鼻領域がブラーすぎる」という視覚フィードバック430をフィードバック制御インターフェース310に入力した場合、この特定の視覚フィードバック430を下鼻領域内のブラーをどの程度まで減少するかを変更するためにどの設計ファクタに翻訳するということは、非自明な仕事である。多量の光学モデル化、光線追跡、患者検査、および微調整が種々の視覚フィードバック430に応答するためにどの程度まで変更される必要があるのか、それが設計ファクタ420のどの組であるかを確立するために必要とされる。この複雑な知識が視覚フィードバック-レンズ設計移送エンジンFLE325において具体化され、管理され、そして実現される。
【0159】
図21は、累進レンズ設計の探求を視覚化するための上記において導入されたベクトル概念の有用性を示している。設計ファクタDF1,DF2,……,DFnは、多次元設計ファクタ空間を定める。特定の累進レンズ設計30がこの空間内において特定の設計ファクタベクトルDF=(DF1,DF2,……,DFk)によってあらわされている。PLS100は、今や設計ファクタベクトルDF(1)によってあらわされた特定の累進レンズ設計123を用いて患者について初期の包括的PLS30を生成する。次に、PLS100は、累進レンズDF(1)の包括的シミュレーションに応答して視覚フィードバックベクトルVF(1)=(VF1,VF2,……,VFl)を得る。LDES300システムは、視覚フィードバックベクトルVF(1)に応答して設計ファクタベクトルDF(1)をDF(2)に変更する。図21は、n番目の反復によるこのプロセスを示している。LDES300は、追加により視覚フィードバックベクトルVF(n)に応答して次のように設計ファクタベクトルDF(n)をDF(n+1)に変更する。
ΔDF(n)=DF(n+1)-DF(n) (1)
【0160】
見て分かるように、ΔDF(n)増分ベクトルは、設計ファクタ空間において探索経路を形成する。組み合わせ型PLS100・LDES300システムが方法410に従ってオペレータ、患者、または検眼士と対話して方法400を実施するので、この探索経路は、患者の要望に最もよく合うカスタマイズされた最適設計ファクタベクトルDF420に収斂する。
【0161】
図22Aおよび図22Bは、視覚フィードバックベクトルVF430と設計ファクタベクトルDF420との間の関係がほぼ局所的に線形であるときの場合を示している。かかる場合、視覚フィードバック-レンズ設計移送エンジン325は、マトリクス(行列)法によって累進レンズ設計を変更するために視覚フィードバック-設計ファクタマトリクスVFDF326を利用することができる。(マトリクスおよびベクトルは、原文ではボールド体で示されている。)
【0162】
図22Aは、VFDFマトリクス326の4×4表示を示している。以下の方程式は、上述の方程式(1)の拡張形態である。上述したように、一般に、DFベクトル420の長さ“k”は、VFベクトル430の長さ“l”に等しくはなく、したがって、多くの場合、VFDFマトリクス326は、非正方の矩形行列である。
【0163】
VFDFマトリクス326の要素は、視覚フィードバックベクトル430の要素を設計ファクタベクトル420の変化にどのように翻訳するかを表している。代表的には、DFベクトル420のうちの2つ以上の要素が相関方式で変更されるのに必要である。これらの入力された視覚フィードバックベクトルVF430を設計ファクタベクトルDF420に翻訳するこれらの相関は、VFDFマトリクス326の要素を構成している。
【0164】
図22Bは、この翻訳を示している。VFDFマトリクス326は、この実施形態では7×9マトリクスである。見てわかるように、視覚フィードバックベクトルVF430は、光学中心が高すぎることを患者が指示するような患者の主観的フィードバック、ならびに視覚検査方向または患者の視軸がジッター動作しすぎるということをアイトラッカ110が測定するような客観的フィードバックを含む。一例として、患者の視覚フィードバックがVF=(0,1,0,0,0,0,0)の二値視覚フィードバックベクトル430または定量的表現xで表現可能な「下側頭四分円のブラー」である場合、像がどれほどブラーであるかを表すことは、例えば、観察検眼士によって定められるVF=(0,x,0,0,0,0,0)である。VFDFマトリクス326の第2列のゼロではない要素がVFDF32およびVFDF72である場合、このことは、上述の視覚フィードバックに対する最適応答がΔDF=VFDF×VF=(0,0,VFDF32,0,0,0,VFDF72,0,0)で設計ファクタベクトルDF420を変更し、すなわち、VFDF32の符号に応じてVFDF32だけ累進コリドー幅を増減し、そしてVFDF72の符号に応じてシリンダの時計回りまたは反時計回りのVFDF72を回転させることである。多様な関連および類似の実施形態が存在し、かかる実施形態としては、VFDFマトリクス326のサイズおよびDFベクトル420とVFベクトル430の両方におけるファクタの選択が挙げられる。
【0165】
図23Aは、多くの場合、累進レンズ設計123の探求が非局所的および非線形ステップを必要とする場合があり、それにより、かくしてVFDFマトリクス326によっては十分には表現されないことを示している。例えば、患者の探求は、視覚的経験を向上させる変化がないということを視覚フィードバック430に患者が与え続けている設計ファクタ空間の領域で終わる場合がある。簡単に言えば、探索が袋小路で行き詰まり、そして、恐らくは、最適解が容易には到達することができない設計ファクタ空間の遠くの別個の領域にある。かかる場合、患者の探索は、設計ファクタ空間内の別の領域への大幅なジャンプによってまたは他の何らかの堅固な動きによって最適に支援されるのが良い。一般的に言って、かかる動きを探索管理ステップ450の実施と称する。かかる非局所的および/または非直線の動きを容易にするため、レンズ設計探求システム300は、累進レンズ設計プロセッサ320に結合されていて、探索管理ステップ450を実施するための探索誘導エンジンSGE330を含むのが良く、この探索管理ステップ450は、
(a)探索経路を設計ファクタ空間内で逆行するステップ、
(b)設計ファクタ空間内の探索経路中の先行する分岐部まで戻るステップ、
(c)別の設計ファクタベクトルにジャンプするステップ、
(d)設計ファクタの数を変更するステップ、
(e)設計ファクタを固定するステップ、
(f)本方法を実施する速度を変えるステップ、および
(g)探索が上首尾であったかどうかを評価するステップのうちの少なくとも1つを含む。
【0166】
図23Bは、これら探索管理ステップ450を幾つかの実施形態では対話方式で実施できることを示している。かかる実施形態では、探索誘導エンジン330は、
(a)オペレータに探索管理ステップ450を選択するよう提案し、
(b)オペレータから探索管理ステップ450の選択を受け取り、そして
(c)選択された探索管理ステップ450の実行を開始することによって探索管理ステップを対話的に(455)実行するためにフィードバック-コントローラインターフェース310に結合されるのが良い。開始ステップ455(c)は、探索誘導エンジン330が累進レンズ設計プロセッサ320に命令を出して選択された探索管理ステップ450を実施するステップを含むのが良い。
【0167】
これら実施形態では、探索誘導エンジンSGE330は、それ自体の指令で、例えば設計ファクタを固定して探索管理ステップ450を単に実施することができない。その代わりに、探索誘導エンジンは、計画された探索管理ステップ450を患者に対話的に提案するのが良く、そして応答の受け取り時にのみ働くのが良い。一例を挙げると、SGE300は、FCI310を介してステップ455(a)において、「我々が光学中心の存在場所を固定して探索を残りの設計ファクタに制限するべきでしょうか?」という指示メッセージを患者に出し、次にステップ455(b)において、例えば「はい」という選択をオペレータから受け取り、そして、ステップ455(c)において選択の伝達を開始し、例えば、設計ファクタの数を1だけ減少させ、それにより設計ファクタ空間の次元を1だけ減少させる。幾つかの実施形態では、探索誘導エンジン330は、選択肢、すなわち「我々は設計ファクタ空間内の探索経路内の先行する分岐部に戻るべきであるか、または我々は探索経路を逆行すべきでしょうか」を提供し、そして患者またはオペレータの応答的要望を実施するのが良い。
【0168】
幾つかの実施形態では、探索管理方法455は、
(d)患者が選択された第1のレンズ設計123を記憶するステップ、
(e)例えば、ステップ450(a)において探索経路を逆行することによってまたはステップ450(b)において先行する分岐部に戻ることによって方法400の任意の実施形態によってレンズ設計探求を続行するステップ、
(f)次の第2のレンズ設計123を選択するステップ、および
(g)記憶した第1のレンズ設計と第2のレンズ設計を比較するステップを含むのが良い。
【0169】
幾つかの実施形態では、探索誘導エンジンSGE330を累進レンズ設計プロセッサ320と一体化するのが良い。
【0170】
主観的視覚フィードバック430を利用する上述の実施形態のうちの一観点は、探求が主観的メリットおよび尺度によって誘導されるわけではないということにある。実際、これは、探求の反復性を減少させることができ、また減少させる。同一の患者が後に同一のレンズ設計探求を繰り返す場合、患者が異なるレンズ設計に至る場合があり、それにより潜在的に満足のいかない結果をきたすことが観察された。
【0171】
PLS100システムが客観的視覚フィードバック430を得てこれを優先することによってレンズ選択の反復性および安定性を高めることができる。かかる一客観的視覚フィードバック430についてはアイトラッカ110が視軸のジッター動作を測定することによってすでに説明した。別の等級の客観的視覚フィードバック430を生成するには、診断システムをPLS100に一体化するのが良い。かかるシステムとしては、プルキンエスポット利用像ングシステム、OCTシステム、シャインプルーフ像ングシステム、波面分析機、角膜トポグラファ、スリットランプ、および関連の他のシステムが挙げられる。
【0172】
別の等級の技術改良を導入するには、眼モデルを用いて診断測定値を評価し、秩序立て、そして分析するのが良い。眼科では、多くの場合、白内障手術の準備の際に用いられる幾つかの眼モデル、例えばホラデイおよびホッファーモデルが知られている。
【0173】
次の等級の実施形態は、この方向における技術改良を提供する。これら実施形態は、レンズ設計探求をより効果的にして再現可能な結果をもたらすことが非常に有利であることが判明している定量的利点を定める。
【0174】
図24Aおよび図24Bは、累進レンズ設計123の探求を助けるための客観的、定量的尺度およびメトリクスの概念を導入する。かかる客観的尺度は、累進レンズの設計者によって既に用いられている。しかしながら、現時点においてこれら尺度は、ほとんどの場合、患者が検眼士の診療所を訪れた後に患者の探求とは別にコンピュータプログラムによって用いられる。代表的には、コンピュータコードは、数百または数千マイルおよび数百または数千時間だけ患者から離れたレンズ設計研究を実施する。今日における典型的な場合、検眼士は、自分の診療所において対を成す視力矯正パラメータ、例えば、近方視領域および遠方視領域についての光学パワーを求め、次に、これらパラメータを累進レンズ設計者に送る。数週間後、累進レンズ設計者は、送られた光学パワーでレンズ性能を最適化する等高線図をコンピュータ計算するコンピュータコードを実行する。この最適化は、典型的にはレンズ設計会社によって開発されたレンズの性能を特徴づける幾つかの定量的尺度を用いる。
【0175】
しかしながら、今日のやり方では、この最適化は、対話的ではなく、患者には最終製品が与えられるにすぎない。設計プロセス中、患者からの視覚フィードバックはなく、患者は、コンピュータ設計累進レンズが患者の特定の要望にとって最適から離れていることを指示する機会がない。かくして、累進レンズによる視覚的経験が満足のいくものではないということを患者が決断した場合、患者は、レンズを戻し、時間のかかる非効率的な行ったり来たりのプロセスがレンズ設計会社と患者との間で始まり、典型的には、ガラスを行ったり来たり輸送し、そしてレンズの追加の研削を含み、多くの場合、何週間もかかり、しかも関与するすべての人の有用な時間が無駄になる。
【0176】
本明細書において説明している実施形態は一般に、累進レンズ設計123をステップ401~403においてリアルタイムでシミュレートし、次にステップ404において、患者からリアルタイムで視覚フィードバック430を得て、そしてステップ405において累進レンズ設計123をリアルタイムで変更し、そしてこれらのステップを全て反復して実行することによってこの技術の現状に対する相当大きな技術改良を提供する。今説明する実施形態は、主観的レンズメリットファクタ460を導入することによって別の技術改良を提供し、そしてこれらレンズメリットファクタ460を方法400の累進レンズ設計ステップ405の改造に織り込む。
【0177】
これらレンズメリットファクタ460としては、次の項目が挙げられる。
(a)近方視領域と遠方視領域のうちの一方における視力の向上、
(b)近方視領域と遠方視領域のうちの一方における乱視の減少、
(c)近方視領域と遠方視領域のうちの一方におけるスイムの減少、
(d)近方視領域と遠方視領域のうちの一方におけるブラーの減少、
(e)適当な累進領域、
(f)シリンダのアライメント、
(g)適当なプリズム、および
(h)適当な累進プリズム。
【0178】
非常に多くのレンズメリットファクタを開発することができ、かかるレンズメリットファクタとしては、より多くの技術的なファクタ、例えば視力領域にわたる乱視の尺度の積分または場合によっては一領域に細められるレンズのゼルニケ多項式の係数が挙げられる。
【0179】
図24Bは、上述したように、これらレンズメリットファクタ460を成分LM=(LM1,LM2,……,LMm)を含むレンズメリットベクトルLM460として考えることができることを示している。幾つかの場合、これら個々のレンズメリットファクタを組み合わせて適当な重み因子を備えた単一の大域的レンズメリットにすることができる。例えば、この単一の組み合わせレンズメリットは、個々の成分の自乗の和|LM|=[ iLMi 21/2を組み合わせたLMベクトルの|LM|、全体的長さ、または大きさであるのが良い。以下の複雑な説明における表記を単純化するため、ラベルまたは記号420,430,460をDF,VFおよびLMベクトルについて記載しない場合がある。
【0180】
図25は、レンズメリットファクタを定量的メリットとして累進レンズ設計に導入してレンズ設計の探求を助けた場合のインパクトを示している。実施形態では、変更ステップ440を1つまたは2つ以上の設計ファクタステップの変更465に拡張することができ、変更ステップ465は、視覚フィードバック430および1つまたは2つ以上のレンズメリットファクタ460に基づいている。ベクトル表記において、設計ファクタベクトルDF(n)のn番目の反復は、ΔDF(n)=DF(n+1)-DF(n)によって変更された状態になっており、この式において、ΔDF(n)は、視覚フィードバックベクトルVF(n)430およびレンズメリットファクタベクトルLM(n)に基づいてコンピュータ計算される。
【0181】
図26は、VF(n)およびLM(n)がΔDF(n)をほぼ直線状に求めた場合、変更ステップ465が1つまたは2つ以上の設計ファクタDF(n)420を視覚フィードバックVF(n)430および1つまたは2つ以上のレンズメリットファクタ460を視覚フィードバック+レンズメリット-設計ファクタマトリクス329により変更することによってメリット-マトリクス方法ステップの実施を含む変更ステップ470を特に必要とするのが良い。図示のように、この方法470は、視覚フィードバックVF430だけではなく、主観的レンズメリットLM460によっても促進される。これら2つのベクトルVF,LMを組み合わせて複合VF+LMベクトルにすることができ、このベクトルの長さは、2つのベクトルの別個の長さに等しい。次に、VFDFマトリクス326をレンズメリット-設計ファクタマトリクスLMDF328によって拡張することができ、2つのマトリクスの並置は一緒になって、視覚フィードバック+レンズメリット-設計ファクタマトリクス329を形成する。拡張されたVF+LMベクトルを拡張されたVFDF+LMDFマトリクスで乗算することにより、これらの自意志形態におけるΔDF(n)が求められる。
【0182】
図27は、かかるメンズメリット-コンピュータ計算実施形態の利点のうちの幾つかを示している。設計ファクタベクトルDFによってあらわされる特定の累進レンズ設計123に関し、レンズメリットベクトルLMの成分を計算することができる。図27は、LMベクトルのうちのたった1つの成分を示している。ある特定の場合、これは、上述の大域的レンズメリット|LM|であるのが良い。他の実施形態では、以下に説明する方法475をレンズメリット成分のうちの幾つかについて同時に実施することができる。例示的に説明すると、LMベクトルの図示の成分LMjは、近方視領域にわたって積分乱視であるのが良い。LMj、すなわち積分乱視が低ければ低いほど、累進レンズ設計123がそれだけ一層良好になる。図27の関係において、このことは、最適累進レンズ設計123がレンズメリット関数の極値を示唆するDF=(DF1,DF2)ベクトル420に一致することを意味している。他成分レンズメリットベクトルLMの場合、個々のレンズメリットファクタLMiを結合されかつ相互連結方式で最小限に抑えることができる。2つ以上の極値(図27に示されている)を有するレンズメリット関数の問題について以下に説明する。
【0183】
累進レンズ設計123が視覚フィードバック430なしでレンズ設計コードによって決定される幾つかの既存のシステムでは、レンズ設計コードは、設計ファクタDF1,DF2を変更することによってのみレンズ設計を最適化し、その結果、設計ファクタベクトルDFは、図27に示されたレンズメリット関数の極小値の存在場所を示唆するようになっている。かかる極小値は、設計ファクタDF1,DF2の対応の組み合わせが光線追跡、光学測定および多数の集められた患者の経験に従って、しかしながら累進レンズが設計されている特定の患者のフィードバックなしで視覚的経験を最適化することを指示している。かかる最適手段は、互いに異なる設計上の目的相互間の妥協点を反映している。
【0184】
方法465,470,475は、1つまたは2つ以上のレンズメリットファクタ460と組み合わせて視覚フィードバック430に基づいて1つまたは2つ以上の設計ファクタ420を変更することによって上述のシステムに勝っている。したがって、方法465/470/475は、主として視覚フィードバック430を利用するが、レンズメリットファクタ460を使用しない方法440に勝っている。これら方法はまた、レンズメリットファクタ460のコンピュータ計算を利用するが、視覚フィードバック430を使用しない現行の累進レンズ設計コードに勝っている。2つの設計推進手段VF430,LM460を組み合わせることは、幾つかの理由で難題である。第1に、これら設計推進手段を組み合わせることができるようにするためには、視覚フィードバック430を定量化する必要があるが、種々の主観的視覚フィードバック430の定量化は、自明であることからは程遠い。第2に、多くの熟考した決定がVFおよびLMファクタおよび成分を組み合わせる重み因子を選択するうえで必要となる。さらに、計画されたレンズ設計アップデータを患者に関連した仕方で伝えることもまた、とりわけ些細ではない仕事である。
【0185】
代表的には、患者の視覚フィードバックベクトルVF430は、LMの極小値を示唆するDF420とは異なる設計ファクタベクトルDF420の変更を要求し、または促す場合がある。これは、種々の理由で起こる場合があり、かかる理由としては、次のものが挙げられる。(a)レンズ設計コード中のLMの極小値が多数の患者からのフィードバックを平均することによって決定され、かくして、任意特定の患者にとっては最適ではない場合がある。(b)探索には幾つかのLM成分を同時に最適化することが含まれる場合がある。これら互いに結合された探索相互間の妥協点を見出すことは、DF420を結合された探索にとっての最小値以外のベクトルにとって最適にする場合がある。(c)探求は、DFベクトル420を変更するためにVF430とLMベクトル460の組み合わせを用いる。主観的VF430の入力は、探求を新たな設計目的としての妥協点に近づける場合がある。また、幾つかの実施形態では、患者は、混合および重みづけパラメータをシフトさせ、この場合も極小値を動かすことが提案される場合がある。
【0186】
幾つかの実施形態では、変更ステップ475は、勾配下降方法、共役下降方法、およびヒルクライミング方法のうちの少なくとも1つを利用することによって設計ファクタ空間内において設計ファクタを局所的に変更するステップを含むのが良い。図27では、これは、例えば、探求を最も速い仕方で極小値に近づけるようになった局所的に最も険しいダウンヒル勾配を探し出すことによって任意のDF(n)ベクトルで具体化できる。これら方法は、LMi成分がこれらのDFj座標にどのように依存しているかについての局所情報を当てにしているので、方法475は、局所変更として特徴づけられる。
【0187】
しかしながら、図27はまた、大域的最小値が設計ファクタ空間内の極小値から離れてある程度の距離を置いたところに位置している場合、かかる局所法は、レンズメリット関数LM460の大域的最小値に到達することができない場合があることを示している。この代表的な場合に関し、局所的な最も険しい下降勾配方法は、多くの場合、探索を局所最小値にのみ誘導し、この場合、かかる方法は、行き詰まり状態になり、距離を置いたところに位置する大域的最小値には決して到達することができない。
【0188】
図28Aおよび図28Bは、かかる場合、視覚フィードバック430および1つまたは2つ以上のレンズメリットファクタ460に基づいて1つまたは2つ以上の設計ファクタ420を変更するステップ480が設計ファクタ空間内で設計ファクタ420を非局所的に変更するステップ480を含むのが良いということを示している。この非局所変更480は、シミュレート式焼き鈍し法、遺伝的アルゴリズム、平行焼き戻し法、確率論的勾配下降法、確率論的ジャンプ法、および連続モンテカルロ法のうちの少なくとも1つを利用するのが良い。
【0189】
図示の実施例では、レンズ設計探求は、局所探索方法475の実を有する場合には局所最適値482周りで一時的に行き詰まり状態になる場合がある。注目されるように、最適値は、最小値か最大値かのいずれかであるのが良い。図27では、所望の設計は、図28Aおよび図28BではLM関数の最小値に一致し、これは、最大値に一致している。局所変更方法475は、大域的最適値484からはっきりと離れた局所最適値482において行き詰まり状態になる場合がある。方法480の実施形態は、上述の非局所的方法を採用することによって行き詰まり状態の探索をなくすことができる。多数の追加の非局所的変更もまた当該技術分野において知られている。かかる方法の1つは、大きな確率論的ジャンプ法を具体化して行き詰まり状態の探索を「非行き詰まり状態」にすることである。図28Aは、局所技術のみを用いる探索が局所最適値482周りで行き詰まり状態になる場合があったが、非局所方法480の確率論的ジャンプ法実施形態は、探索を非行き詰まり状態にすることができ、しかもこの探索が大域的最適値484を見出すことができるようにすることを示している。図28Bは、方法480の同一の確率論的ジャンプ法実施形態を斜視図で示している。見てわかるように、確率論的ジャンプ法は、設計ファクタ空間内でジャンプ開始点から十分に離れたジャンプ終了点まで行き詰まり状態の探索を採用しており、それにより、この探索が大域的最適値484に達することができる。
【0190】
図29Aは、図23Aの方法450と同様、1つまたは2つ以上のレンズメリットファクタ460と組み合わせて視覚フィードバック430に基づく1つまたは2つ以上の設計ファクタステップを変更する465~480の実施形態のうちの任意の1つが探索誘導エンジン330によって実施される探索管理ステップ490を含むのが良いことを示しており、この探索管理ステップは、以下のステップのうちの少なくとも1つを含むのが良い。 (a)探索経路を設計ファクタ空間内で逆行するステップ、
(b)設計ファクタ空間内の探索経路中の先行する分岐部まで戻るステップ、
(c)別の設計ファクタベクトルにジャンプするステップ、
(d)設計ファクタの数を変更するステップ、
(e)設計ファクタを固定するステップ、
(f)本方法を実施する速度を変えるステップ、および
(g)探索が上首尾であったかどうかを評価するステップ。
【0191】
類似の方法450に関連して説明したように、かかる探索管理方法またはステップ490は、レンズ設計に関する患者の探求が方向性を失っている状態になりまたは行き詰まり状態になっているときに非常に役立つ場合がある。他の実施形態では、これらの主要な価値は、これらが累進レンズ設計探求を加速し、それによりかかる探求を非常に効率的にするということにあると言える。この方法490では、方法450に対する追加のファクタは、定量的メトリクスがレンズメリット460の形態に含まれるということにある。かかる定量的メトリクスの導入は、探索を大幅に絞り込む。例えば、方法440,450を実施する際に評価される必要のある設計ファクタ420を変更する考えられる多数のやり方を実質的に減少させるには、探索をレンズメリット460が局所最適値として識別する経路に絞り込むのが良い。図29Aの実施例では、これは、考えられる全ての設計ファクタ改造を評価することが必要な非メリット誘導探索440~455によって実証され、これに対し、評価するのに幅の狭い稜線に沿う移動のみを評価するのに必要なレンズメリットファクタ誘導探索465~490は、レンズメリット460によってまたはこの稜線の幾分近くにおいて好ましいとされる。
【0192】
上述したように、図29Aは、わかりやすくするためにたった1つのLM成分についての稜線状の探索経路を示している。探索誘導エンジン330が探索をモニタしていてそして稜線が低くなっていること(図示のように)を検出したとき、すなわち、局所変更方法475による探索が場合によってはレンズメリット460の局所最大値を見出すことから遠ざかっているときに、探索誘導エンジン330は、方法490(a)をアクティブ状態にして探索管理ステップを実施し、それにより探索経路を逆行するのが良い。この場合、レンズメリット460の定量的メトリックの利用性は、極めて有用であり、というのは、設計ファクタ空間内の逆方向の探索経路がレンズメリット関数460の明確に定義された稜線だからである。明確に定義された逆方向経路の利用可能性は、探求および探索の効率を大幅に高めることができる。
【0193】
図29Aはまた、設計ファクタ空間内の探索経路中の先行する分岐部に戻る方法490(b)の実施形態を示している。探索または探求中、ある時点で、2つの選択肢が、同等にメリットがあるものとして現れる場合がある。かかる場合、患者または累進レンズ設計プロセッサ320は、これら可能性のうちの1つを選択する必要がある。図29Aは、局所的に最適な稜線に遭遇した探索経路が2つの同等な稜線に分割しまたは分岐するときのかかる場合を示している。探索方法465は、場合によってはその局所実施形態475とともに、左側分岐を選択し、そしてしばらくの間探求を続行する。しかしながら、しばらくの間、左稜線上についての探求をモニタした後、SGE330は、方法490(a)を実施するときがきたと判断して探索を逆行した。有利には、定量的レンズメリット関数460は、LM460の稜線を引っ込めることによって逆行経路をどのように続行するかについての明確な指針を提供した。稜線を引っ込めることにより、探索が、先に探索が左側稜線を選択した分岐部に戻る。この結合部のところで、探索誘導エンジン330は、いまや、これに代えて右側の稜線を選択することができ、次に局所変更方法475を再び働かせて探索を他方の稜線に沿って誘導する。方法475,490のこれらステップ全体にわたって、定量的レンズメリット関数460は、明確な指針を提供するとともに探索を大幅に絞って続行させ(表面探求から稜線探求へ)、それにより全体的探求の効率および速度が高められる。
【0194】
図29Bは、幾つかの実施形態において、探索誘導エンジン330により探索管理ステップを対話的に、
(a)オペレータに探索管理ステップを選択するよう提案し、
(b)オペレータから探索管理ステップの選択を受け取り、そして
(c)選択された探索管理ステップの実行を開始することによって、実施するステップを含む方法495を方法490が含むよう拡張することができるということを示している。
【0195】
上述の対話方法455の場合と同様、方法490はまた、これを対話的に実施することによって改良されるのが良い。LEDS300の累進レンズ設計プロセッサ320および探索誘導エンジン330が幾つかのアルゴリズムによって選択を行うことに代えて、方法495は、患者またはオペレータに視覚フィードバック430、指令または制御信号を提供し、探索管理ステップを選択し、それによりステップ495(a)-(b)-(c)を実行することによりレンズ設計探求を加速するよう促す。
【0196】
幾つかの別の実施形態では、累進レンズ設計を変更するステップは、非線形視覚フィードバック-設計ファクタ機能的関連性または非線形視覚フィードバック+メリット-設計ファクタ機能的関係を利用して累進レンズ設計プロセッサ320によって累進レンズ設計を変更するステップを含むのが良い。これら実施形態は、二者択一的であって良く、マトリクス方法445,470の相補手段であり、この場合、これらの関係は、主として線形である。
【0197】
PLS100+LDES300システムおよびその作動方法400の幾つかの実施形態は、全体的方法400が伝統的なやり方に対して患者にとって劣った結果を送り出すことがないようにすることを本質的に確かにする追加の要素およびステップを含むのが良い。これら追加のステップは、患者のための第2の累進レンズ設計をシミュレートするステップおよび患者の視覚フィードバックを求めるステップを含まない伝統的な測定に基づいた第2の「伝統的な」累進レンズ設計を決定するステップを含むのが良い。これに続いて包括的PLS30をこの第2の伝統的な累進レンズ設計で生成するのが良い。かかる実施形態では、患者は、伝統的なアプローチが送り出す累進レンズ設計ならびにPLS100+LDES300の助けにより方法400によって識別されるレンズ設計を経験するようになっている。2つの異なる設計の累進レンズ、すなわち、シミュレーションおよびフィードバックによる一方の累進レンズ、伝統的な測定による他方の累進レンズを作成すると、患者は、これら2つの設計の包括的PLSを比較して自分の好みを選択することができる。方法400のこの拡張により、患者は、伝統的な累進レンズよりも出来の悪いレンズで終わることはできず、というのは、患者は、自分が方法400によって定められたレンズ設計で不満足である場合、診療所訪問の最後の最後であっても、伝統的な累進レンズをいつでも選定することができるからである。
【0198】
幾つかの場合、像発生器121によって像21を生成するステップ402は、像選択に応答しているのが良い。この追加のステップは、この場合もまた、患者の満足度を増すことができ、というのは、患者は、本物そっくりの用途を捕捉することがない周知の文字の列に代えて、自分の活動に適切である像を選択することができるからである。例えば、チームスポーツをする人は、周辺視に余剰の重点を置く必要がある場合があり、かくして、周辺に配置された注目に値する特徴を有する像21を選択するのが良い。長距離トラック運転手は、移動している像を選択することができ、というのは、運転手は、動いている像について自分の視力を最適化することを優先する場合があるからである。夜間警備員は、低光条件で像を選択することができ、というのは、夜間警備員は、低光環境について自分の視力を最適化することを必要とする場合があるからである。使用と関連した像に対する患者の視力を検査しようとすることは、カスタマイゼーションを一段と向上させることができ、それにより方法400の満足のゆく結果を向上させることができる。
【0199】
7.人工知能エンジンによる累進レンズシミュレータ用の深層学習法
【0200】
視覚フィードバック430を設計ファクタ420に最も効率的に翻訳することは、かなりの難題である。種々の方法400~495は、有望な実施形態を示している。これら実施形態を最も効率的にするためには、これらの多くのパラメータを最適化する必要がある。これらパラメータとしては、視覚フィードバック-設計ファクタマトリクス326の要素および視覚フィードバック+レンズメリット-レンズ設計マトリクス329の要素が挙げられる。他の実施形態に関し、視覚フィードバック430と設計ファクタ420との間の場合によっては非線形の連結を表にしてパラメータ化する必要がある。また、探索誘導エンジン330を過去の経験に基づいて最もよく作動させる。探索管理方法450-455および490-495もまた、変更する探求のレッスンから学習することによって向上可能である。最後に、局所変更ステップ475および非局所変更ステップ480を実行することは、過去の探索のレッスンを利用することによって最も効率的に実施できる。
【0201】
近年、過去の経験から学習する全体として新規なやり方が極めて有効で新規な仕方で自動化された。種々の技術条約では、これらのやり方は、人工知能、深層学習法、マシン学習法、またはニューラルネットワークと呼ばれている。他の名称もまた、同一の学習法を大まかに捕捉するために用いられている。本項における実施形態は、人工知能を利用した学習法およびシステムをGPS10に一体化してマトリクス326,329の多くのパラメータ、SGE330および方法450/455および490/495の作用ならびに過去の経験からの学習が有益である他の領域を向上させるとともに最適化している。
【0202】
図30は、シミュレート式累進レンズのかかる誘導式レンズ設計探求システム(GPS)10を示している。GPS10は、マルチステージPLS100、一体化PLS200、または頭部装着式PLS260の任意の実施形態を含むことができる。図30は、一例としてマルチステージPLS100実施形態によるこれらの可能性を示している。PLS100をPLS LDES300用のレンズ設計探求システムの任意の上述の実施形態と組み合わせることができる。PLS100とLDES300の組み合わせをGPS用の人工知能(AI)エンジン(AI-GPS)500と一体化することができる。本項では、GPS10は、PLS100の任意の実施形態とLDES300およびAI-GPS500の組み合わせを参照する。
【0203】
AI-GPS500は、累進レンズ設計プロセッサ320に組み込まれまたは少なくともこれに結合された累進レンズ設計プロセッサ用のAIエンジン(AI-PLD)510を有するのが良い。AI-PLD510は、視覚フィードバック-レンズ設計移送エンジンFLE325の機能のうちの大部分を実施することができ、かくして、AI-PLD510をFLE325の一実施形態としてみなすことができる。AI-PLD510の機能は、設計ファクタ420の変更への視覚フィードバック430への翻訳を最も効率的にするために多くの既知の深層学習法のうちの任意の1つを実施することにあると言える。上述したように、これら深層学習法は、視覚フィードバック-設計ファクタマトリクス326のマトリクス要素、および視覚フィードバック+レンズメリット-レンズ設計マトリクス329のマトリクス要素を繰り返しアップデートするとともに向上させることができる。
【0204】
幾つかの実施形態では、GPS10は、探索誘導エンジンSGE330に一体化されまたは少なくともこれに結合された探索誘導エンジン用のAIエンジン(AI-SGE)530をさらに有するのが良い。AI-SGE530の機能は、上述の方法のうちの任意の方法によって累進レンズ設計123の探求を誘導する際にSGE330をより効率的にするために、SGE330を備えた多くの既知の深層学習法のうちの任意の1つを実施することにあると言える。これらの方法は、とりわけ、SGE330で探索管理ステップを実施する方法ステップ450、方法ステップ450を患者との対話により実施する方法ステップ455、レンズメリット460を含むSGE330により探索管理ステップ450を実施する方法ステップ490、および方法ステップ490を患者との対話により実施する方法ステップ495を含む。
【0205】
最後に、AI-GPS500は、幾つかの場合においてはPLS100に一体化されまたは少なくともこれに結合され、場合によっては、そのOPSプロセッサ122に一体化された累進レンズシミュレータ用のAIエンジン(AI-PLS)550をさらに有するのが良い。AI-PLS550の実施形態は、OPSプロセッサ122によって既知のAI深層学習法のうちの任意のものを実施して患者の視覚フィードバック430から学習して累進レンズ設計123を良好にシミュレートすることができる。
【0206】
図31図33は、AI-PLD510の実施形態を示している。AI-SGE530およびAI-PLS550は、極めて類似した設計を有するのが良く、これらについては三度繰り返すのを避けるために明示的には説明をしない。
【0207】
AI-PLD510は、視覚フィードバックVFi(n)を入力として受け入れるよう構成された入力層515を有するのが良い。(以下において、ラベルまたは記号430は、いつでも視覚フィードバック430について明示的に示されているわけではなく、ラベルまたは記号420は、設計ファクタ420についていつでも明示的に示されているわけではなく、その目的は、煩雑になるのを避けることにある)。患者、オペレータまたは客観的フィードバック生成システム、例えばアイトラッカ110または任意他の眼像ングシステムは、視覚フィードバックベクトルVF(n)のVFi要素を入力することができる。上述したように、“n”は、レンズ設計探求法400のn番目の反復を意味している。視覚フィードバック-設計ファクタVFDFニューラルネットワーク520は、VFi(n)視覚フィードバックを入力として受け取ることができる。このVFDFニューラルネットワーク520は、設計ファクタベクトルΔDF(n)=DF(n+1)-DF(n)の提案されたアップデートを出力層525のところで出力するよう構成されているのが良い。この意味では、VFDFニューラルネットワーク520は、視覚フィードバック-レンズ設計ファクタエンジンFLE325として類似の関数を実行する。
【0208】
相違点のうちの1つは、入力VFベクトル430が線形VFDFマトリクス326によって出力DFベクトル420に連結されていないということにある。その代わりに、これは、図示のように一連の隠された層521,522,523によって実施される一連の返還によって生成される。各隠された層は、1組のニューロンを含むのが良い。図示の実施例では、第1の隠された層521は、ニューロンN11,N12,……N16を含む。本説明では、隠された層の特定の数および各層中のニューロンの数は、例示目的であるにすぎない。他の実施形態は、任意の他の数の隠された層および1層あたりの任意他の数のニューロンを含むことができる。
【0209】
第1の層中のニューロンN1iは、結合強度C(1i-2j)で第2の層N2jのニューロンに結合されるのが良い。
【0210】
図32は、VFDFニューラルネットワーク520の作用を説明している。隠された層のニューロンによって処理された状態になっている視覚フィードバックベクトル要素VFiの作用効果は、VFベクトルを結合マトリクスCMで乗算することにある。この場合、CM(m)マトリクスの(ij)要素がニューロンNmiとN(m+1)jとの間の結合係数である表記が用いられている。この表記では、上述の結合定数C(1i-2j)は、CM(1)ij、すなわち、CM(1)マトリクスの(ij)要素である。かくして、K個の隠された層を備えたVFDFニューラルネットワーク520の出力を次のように書き表すことができる。
VF(n)T*CM(1)*CM(2)*……*CM(K)=ΔDF(n)T (2)
【0211】
上式において、VF(n)TおよびΔDF(n)Tの上付き文字Tは、ベクトル転置を示している。これが必要である理由は、ベクトルは、図22Aでは左から、他方、図32では右側からマトリクスで乗算されて図31では、視覚ファクタベクトルVF430の左右への層から層への処理を表しているからである。明らかなこととして、これら2つの説明は、同じである。
【0212】
要するに、出力ベクトルΔDF420は、VFDFマトリクス326の場合のように、単一の直線関係によってではなく、幾つかの双一次関係の積によって入力ベクトルVF430に関連付けられている。注目されるように、個々の結合マトリクスの次元は、結合マトリクスのこの積またはチェーンでは変化する場合がある。これらの次元を広範に選択することにより、レンズ設計探求の効率を高めることができる。例えば、CM(i)マトリクスの次元を最初に縮め、次にこれらを増大させて増やし、それにより一種のトンネルまたはスプールを形成することを推奨するAI方法が存在する。
【0213】
各層中のニューロンは、種々の仕方でこれらの入力に反応するようセットアップされるのが良い。単純で広く用いられているアルゴリズムは、シャープな閾値入力-出力関係、出力=f(入力)である。先行する層iから(i+1)番目の層中の特定のニューロンN(i+1)lまでの入力を合計することができ、この和がしきい値Tを超えている場合、ニューロンN(i+1)lは、値を出力し、これに対し、この和がしきい値Tを超えていない場合、出力は、異なった低い数、典型的にはゼロのままである。公式としては、次の通りである。
【0214】
上式において、f(x)は、その独立変数xのシャープなスイッチング関数であり、典型的には、ゼロに中心のあるステップ関数またはかかるtanh(x)の幾分平滑化されたステップ関数である。このスイッチング関数f(x)のモチベーションは、セルメンブレンを横切るイオンポンプによって実施されるように、ニューロンの作用から現れており、刺激の形態の入力を取り込む幾つかのデンドライトからの入力は、多くの場合、ニューロンの充電プロセスによって合計される。多くの場合、全電荷の形態をしたこれら刺激の合計がしきい値を超えた場合、ニューロンの出力軸索が発火する。充電がしきい値に達しなかった場合、ニューロンは、出力を生じさせることはない。
【0215】
かかるVFDFニューラルネットワーク520をセットアップする一手法は、Googleのテンソルフロー(TensorFlow)マシン学習フレームワークである。これは、準備が制限された状態でセットアップできる便利な高度のフレームワークである。VFDFニューラルネットワーク520の設計者は、隠された層の数、各層中のニューロンの数、およびスイッチング関数f(x)を入力するだけで良い。次に、VFDFニューラルネットワーク520の初期結合定数を入力しまたは定めるのが良い。
【0216】
この初期化後、VFDFニューラルネットワーク520は、多くの教示または学習サイクルによって駆動され、その結果、VFDFニューラルネットワーク520は、不正確なまたは忠実性の低い結果から学習し、初期結合定数は、不正確な出力を減少させるとともにケースの高い割合で正確な出力を生じさせるよう「学習」するとともに発展する。
【0217】
図33は、勾配下降による逆伝搬(BGD)510Tと呼ばれるかかる一教示または学習方式を示している。かかる監視型学習方法では、監視者がどの出力が予想されるかを知っている場合に視覚フィードバックベクトルVF430を入力する。一例として、屈折力が2つ3つ先のサイクルにおける下鼻四分円内で増大した後に像がかかる四分円内でブラーしていることが視覚フィードバック430である場合、予想出力ΔDFは、この四分円内での屈折力の増大を続けることにある。この既知の予想により、このVFを入力層515に入力し、次にVFDFニューラルネットワーク520により処理し、その結果、出力層525のところに出力が生じる。次に、出力評価器526は、この出力と標的出力を比較し、差信号Δi(n+1)をエラーバックフィード527として同じVFDFニューラルネットワーク520に送り戻すのが良い。与えられた実施例では、VFDFニューラルネットワーク520が設計ファクタベクトルDF420の「下鼻四分円内の屈折力をさらに増大させる」ΔDF(n)変更を出力したかどうか、およびどれほどのパワーが増大したかを具体的に出力してある。差信号が後方に伝搬しているときに、結合トレーナ528が個々の結合CM(i)klを変更してこの差を減少させることができる。これら訓練サイクルを多数の入力視覚フィードバックベクトルVF430により多数回にわたって実施すると、結合マトリクスCM(1),CM(2),……CM(K)の要素が訓練され、その結果、訓練後、出力が知られていない新たな視覚フィードバックVFが入力されたとき、VFDFニューラルネットワーク520は、依然として、高い信頼性をもって最も適切なΔDFを出力するようになる。
【0218】
AIエンジンAI-GPS500を勾配下降によるこの逆伝搬(BGD)510Tにより訓練することは、このVFDFニューラルネットワーク520を訓練するための多くの考えられる方法のうちのまさに1つである。また、AI-GPS500のこの特定のニューラルネットワーク具体化例を用いることは、人工知能システムおよび方法を利用してGPS10を向上させるための基本的な概念の多くの実施形態のうちのまさに1つである。これらの組み合わせおよび変形例は全て、以下の2つの基本的な設計原理を共有しており、これらがそのようにする限り、GPS10システムの実施形態とみなすことができる。これらの設計原理としては、次の内容が挙げられる。
【0219】
(1)任意適当なAI-GPSエンジン500中の人工知能の顕著な力を利用してGPS10システムを作動させるのに必要な多数のパラメータ、例えばVFDFマトリクス326または視覚フィードバック+レンズメリット-設計ファクタマトリクス329の要素を微調整すること。
【0220】
(2)GPS10の迅速に増大する数が世界的に設置されているときに、これらGPS10を開発するとともに技術改良し続けること。集中システムが急増する患者によって世界中で毎日実施される極めて多くのレンズ設計探求に関する指数関数的に増大するデータを収集することができるということが想定される。この指数関数的に増大する「ビッグデータ」を中央AI-GPSエンジン500によって分析することができる。この分析結果を中央システムから搭載探索ソフトウェアのためのアップデータの形態で個々のGPS10システムに押し出すことができ、かかるソフトウェアとしては、マトリクス326,329の要素の訓練、探索管理450/455および490/495に含まれる場合のある種々のステップの訓練、およびPLS100による累進レンズ設計123のシミュレーションの訓練が挙げられる。これらの2つの基本的な推進力を共有する任意の実施形態が、GPS10の実施形態である。
【0221】
図34および図35は、AI-GPSエンジン510,530の作動方法を示している。図34は、人工知能エンジン500で累進レンズシミュレータ100を作動させる方法610を示しており、この方法は、
(a)累進レンズ設計プロセッサ320によって生成された設計ファクタベクトルDF420を有する累進レンズ設計123に基づいて累進レンズシミュレータ100により患者のための包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)30を生成するステップ611、
(b)視覚フィードバックベクトルVF430を包括的PLS30に応答して累進レンズ設計プロセッサのための人工知能エンジンAI-PLD510の視覚フィードバック-設計ファクタニューラルネットワーク520に受け入れさせるステップ612、および
(c)受け取るステップ612に応答して視覚フィードバック-設計ファクタニューラルネットワーク520による設計ファクタベクトルDF420の変更ΔDFを出力するステップ613を含み、この場合、
(d)深層学習サイクルを実施する(614)ことによって視覚フィードバック-設計ファクタニューラルネットワーク520の結合マトリクスCM(i)を訓練する。
【0222】
方法610は、
(e)変更済設計ファクタベクトルDF420を用いて累進レンズ設計プロセッサ320によって累進レンズ設計123を変更するステップ、および
(f)変更後の累進レンズ設計123を用いて累進レンズシミュレータ100によって変更後の包括的PLS30を生成するステップをさらに含む。
【0223】
ステップ(b)~(f)を繰り返し実施することは、方法400と関連して説明したように累進レンズ設計の探求のバックボーンとしての役目を果たすことができる。
【0224】
視覚フィードバック-設計ファクタニューラルネットワーク520は、ニューロンNijの層を含むのが良く、かかる層としては、入力層515、1つまたは2つ以上の隠された層521/522/523、および出力層525が挙げられる。ニューロンNijは、スイッチング関数f(x)を有するのが良く、ニューロンNijは、結合マトリクスCM(i)によって結合されるのが良い。
【0225】
学習サイクルを実施するステップ614は、勾配下降形逆伝搬(BGD)510Tによる深層学習サイクルを実施するステップを含むのが良い。深層学習サイクルステップをBGD510Tで実施することは、結合マトリクスCM(i)klの要素を微調整して設計ファクタベクトル420の変化への視覚フィードバック430の最も信頼性の高い翻訳を提供することができる。
【0226】
学習サイクルを実施するステップ614は、レンズメリット関数LM460を使用するステップ615をさらに含むのが良い。レンズメリット関数LM460を用いることにより、AI-GPSエンジン500および特にAI-PLD510は、レンズメリット利用方法465~495を訓練してこれを向上させることができる。
【0227】
深層学習サイクルを実施するステップ614は、入力された視覚フィードバックベクトルVF430に対応する標的設計ファクタベクトルDF420に関して出力済み設計ファクタベクトルDF420を出力評価器526によって評価するステップ616およびこの評価に従って結合トレーナ528によって結合マトリクスCM(i)を訓練するステップをさらに含むのが良い。
【0228】
幾つかの実施形態では、深層学習サイクルを実施するステップ614は、累進レンズ設計プロセッサ320のソフトウェアを変更するステップ617を含むのが良い。
【0229】
図35は、人工知能エンジン500によって累進レンズシミュレータ100を作動させる方法620を示しており、この方法620は、
(a)累進レンズ設計プロセッサ320によって生成された累進レンズ設計123に基づいて累進レンズシミュレータ100によって患者のための包括的累進レンズシミュレーション(包括的PLS)30を生成するステップ621、
(b)視覚フィードバックベクトルVF430を包括的PLS30に応答して探索誘導エンジンのための人工知能エンジンAI-SGE530の視覚フィードバック-探索管理ニューラルネットワーク520-SGE内に受け入れさせるステップ622、および
(c)受け入れ622に応答して視覚フィードバック-探索管理ニューラルネットワーク520-SGEにより探索管理ステップ450/455または490/495を累進レンズ設計プロセッサ320に出力するステップ623を含み、この場合、
(d)深層学習サイクルを実施する(624)ことによって視覚フィードバック-探索管理ニューラルネットワーク520-SGEの結合マトリクスCM(i)を訓練する。
【0230】
この場合、以下のように、視覚フィードバック-探索管理ニューラルネットワーク520-SGEを視覚フィードバック-設計ファクタニューラルネットワーク520と同一の数値ラベルで示し、サブラベル“SGE”がこの符号に追加されているにすぎない。これは、実施形態が主として類似しているので、不必要な繰り返しを避けることにある。
【0231】
幾つかの実施形態では、方法620は、次のステップをさらに含むのが良い。
(e)探索管理ステップ450/490によって促された累進レンズ設計プロセッサ320によって累進レンズ設計123を変更するステップ、および
(f)変更済みの累進レンズ設計123を用いて累進レンズシミュレータ100によって変更後の包括的PLS30を生成するステップ。
【0232】
ステップ(b)~(f)を繰り返し実施することは、方法400と関連して説明したように累進レンズ設計の探求のバックボーンとしての役目を果たすことができる。
【0233】
AI-SGE530の視覚フィードバック-探索管理ニューラルネットワーク520-SGEは、ニューロンNijの層を含むのが良く、かかる層としては、入力層515-SGE、1つまたは2つ以上の隠された層521/522/523-SGE、および出力層525-SGEが挙げられ、ニューロンNijは、スイッチング関数f(x)を有するのが良く、ニューロンNijは、結合マトリクスCM(i)によって結合されるのが良い。
【0234】
幾つかの実施形態では、深層学習サイクルを実施するステップ624は、勾配下降による逆伝搬BGD510T-SGEによって深層学習サイクルを実施するステップを含むのが良い。
【0235】
幾つかの実施形態では、深層学習サイクルを実施するステップ624は、レンズメリット関数LM460を用いるステップ625を含むのが良い。
【0236】
幾つかの実施形態では、深層学習サイクルを実施するステップ624は、入力された視覚フィードバックベクトルVF430に対応する標的探索管理ステップに関して出力済み探索管理ステップ450/455または490/495を出力評価器526によって評価するステップ626およびこの評価に従って結合トレーナ528によって結合マトリクスCM(i)を訓練するステップを含むのが良い。
【0237】
一例を挙げると、探索管理ステップは、490(a)、すなわち、探索経路を逆行するステップであるのが良い。経路を逆行させるのがどの視覚フィードバックVF430であるかの決定は、極めて複雑な決定であると言える。例えば、図29Aに戻ってこれを参照すると、これは、探索管理ステップ490(a)をアクティブ状態にするためにレンズメリット関数LM460の稜線の高さがAI-SGE530に関するその先の最大値からどれほど多く下降しなければならないかを判定することが必要である。AI-SGE530を多くの深層学習サイクルによって駆動して探索経路を逆行するための最適値を見出してこれを学習することができる。
【0238】
図28Aおよび図28Bを参照すると、別の実施例が示されており、探索がますます小さい累進を示すよう開始したとき、AI-SGE530は、非局所的ジャンプを実行する時期およびジャンプが幾つかの検討事項によって、例えば、レンズメリット関数LM460の値を思い出す探索の初期の部分の記憶されたメモリによって全体がランダムであるべきかあるいは駆動されるべきかを決定する必要がある。上述のように、AI-SGE530は、多くの深層学習サイクルによって駆動されてジャンプを開始するのにジャンプがどれほど大きいか、および初期の探索経路から記憶されたデータのジャンプをどのように関連付けるかについてを見出してこれを学習することができる。
【0239】
幾つかの実施形態では、深層学習サイクルを実施するステップ624は、探索誘導エンジン330のソフトウェアを変更するステップ627を含むのが良い。
【0240】
幾つかの実施形態では、AI-GPS500システムは、眼モデル、例えばホラデイまたはホッファー眼モデルを用いる深層学習ユニットを含むのが良く、この場合、AI-GPS500は、眼モデルに基づいてGPS10のパラメータを訓練することができる。
【0241】
最後に、極めて類似した方法を実施すると、累進レンズシミュレータ用のAIエンジン(AI-PLS)550を訓練し、次にこれを作動させることができる。このAI-PLS550は、図31図33に示された極めて類似しているコンポーネントおよび要素を含み、そして図34および図35に類似して作動される視覚フィードバック-レンズシミュレーションニューラルネットワーク520-PLSを含むのが良い。
【0242】
上述したように、人工知能エンジン500は、公知のAI方法のうちの任意のものを使用することができるので、ニューラルネットワークのみに絞り込まれることはない。他のAI方法としては、監視式学習法、非監視式学習法、回帰分析利用方法、クラスタリング、次元縮小法、構造化予測法、異常検出および補強訓練が挙げられる。これらAI方法のうちの任意の1つをAI-GPS500に具体化することができる。
【0243】
8.累進レンズシミュレータ用の中央監視ステーションシステム
【0244】
GPSシステム10の種々の実施形態、例えばPLS100、LDES300と組み合わされたPLS100、またはGPS用の人工知能エンジンAI-GPS500と組み合わされたPLS100およびLEDS300(これらをまとめて、GPS10の100/300/500実施形態と称する)の実質的な利点のうちの1つは、検眼士によって従来実行された機能のうちの多くが、いまや、GPS10の自動システムによって実施されるということにある。したがって、検眼士は、累進レンズ設計123の探求に常にかかわる必要がない。患者自身がGPS10の100/300/500実施形態にかかわって探求方法400の任意のバージョンを実行し、そして自分が必要とする全時間を費やすことができる。患者は、先に特定されたレンズ設計123に戻ってこれらを新たなレンズ設計と比較することができ、像発生器121によって異なる像21を選択することができ、探索管理ステップ450/455または490/495の実施を続けて探索経路を引き返し、他の選択肢を探求し、設計ファクタ420を固定して探索を絞り、探索を設計ファクタ空間のある領域に落ち着かせるなどをすることができる。これらの全ては、検眼士によるアクティブなかかわりなしで実施できる。
【0245】
時間管理の観点から、GPS10システムのこの観点は、検眼士が2つ以上の個々のGPSシステム10を同時に監視し、それにより各検眼ステーションに個々に検眼士を配置する必要性をなくす程度まで検眼士を自由にする。この観点は、所与の人数の患者を世話することが必要とされる職員の数を実質的に減少させることができ、かくして全体的検眼士診療所のビジネスモデルにとって大幅に役立つと言える。
【0246】
図36は、この概念を幾分詳細に示している。図36は、累進レンズシミュレータ100の監視式マルチステーションシステム700を示しており、このマルチステーションシステム700は、2方向通信監視チャネル730-1,730-2,……730-n(まとめて730-iと称する)によって1組の累進レンズシミュレータ720-1,720-2,……720-n(ひとまとめに720-iと称する)に結合された中央監視ステーション710を含む。図36は、3つのステーション(n=3)実施形態を示している。
【0247】
個々のステーションは、本願において上述した任意の実施形態であって良い累進レンズシミュレータ720-iを含むのが良く、かかる累進レンズシミュレータは、マルチステージPLS100、一体型IPLS200、PLS100のテーブルトップ型実施形態、および頭部装着式PLS260を含み、後者の実施形態は、図36に示されている。図示の実施形態では、PLS720-iは、個々に、眼軸方向を追跡して注視距離を求めるアイトラッカ110、累進レンズ設計123の軸外累進レンズシミュレーション(軸外PLS20)を生成する軸外累進レンズシミュレータ120、および累進レンズパワーを眼軸方向にシミュレートし、それにより軸外PLS20から累進レンズ設計123の包括的累進レンズシミュレーション(PLS)30を生じさせるための軸方向パワー-距離シミュレータADS130を含むのが良い。
【0248】
PLS720-iの幾つかの要素を中央監視ステーション710に具体化するのが良い。中央監視ステーション710は、個々の累進レンズシミュレータ720-iの作動のための監視を提供するために累進レンズシミュレータ720-iと通信状態にあるのが良い。
【0249】
この通信は、個々の累進レンズシミュレータ720-iと中央監視ステーション710との間の2方向通信チャネル730-iにより行われるのが良く、累進レンズシミュレータ720-iは、中央監視ステーション710に累進レンズ設計123のシミュレーションについて知らせることができ、そして中央監視ステーション710は、累進レンズシミュレータ720-iによってシミュレーションを監視する。通信チャネル730-iは、ワイヤード通信チャネルであっても良く、ワイヤレス通信チャネルであっても良い。
【0250】
幾つかの実施形態では、累進レンズシミュレータ720-iは、個々に、累進レンズ設計123の探求を案内するためのレンズ設計探求システムLDES300を有するのが良い。
【0251】
他の実施形態では、中央監視ステーション710は、累進レンズ設計の探求を案内するとともに対応の誘導信号を個々の累進レンズシミュレータ720-iに伝える集中レンズ設計探求システムLDES300を有するのが良い。
【0252】
幾つかの実施形態では、個々の累進レンズシミュレータ720-iは、累進レンズシミュレータ720-iの累進レンズ設計プロセッサ320-iのための深層学習法を実行するための専用の個々の人工知能(AI)エンジンを有するのが良い。これらAIエンジンは、累進レンズ設計プロセッサ用のAIエンジン(AI-PLD)510の実施形態であるのが良い。
【0253】
他の実施形態では、中央監視ステーション710は、累進レンズシミュレータ720-iの累進レンズ設計プロセッサ320のための深層学習法を実行し、そして対応の訓練信号を個々の累進レンズシミュレータ720-iに伝える集中人工知能エンジン500を有するのが良い。
【0254】
幾つかの実施形態では、累進レンズシミュレータ720-iは、個々に、累進レンズシミュレータ720-iの探索誘導エンジン330のための深層学習法を実行する人工知能エンジンを有するのが良い。これらAIエンジンは、探索誘導エンジン用のAIエンジン(AI-SGE)520の実施形態であるのが良い。
【0255】
他の実施形態では、中央監視ステーション710は、集中探索誘導エンジンのための深層学習法を実行し、そして対応の誘導信号を個々の累進レンズシミュレータ720-iに伝える集中人工知能エンジン500を有するのが良い。探索誘導エンジンもまた集中化されていても良く、または個々のSGE330-iとして個々のPLS720-i内に位置していても良い。
【0256】
同様に、AIエンジンが軸外PLS120のための深層学習法を実行するために設けられるのが良い。上述したようにこのAIエンジンは、集中化されていても良く、または個々のPLS720-i内に位置していても良い。
【0257】
本明細書は、多くの特徴を含むが、これらは、本発明の範囲またはクレーム請求されている内容の範囲に対する限定と解釈されてはならず、これとは異なり、本発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明とみなされるべきである。別々の実施形態との関連で本明細書に記載されているある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせ状態でも具体化できる。例えば、説明をより明確に構造化するため、実施形態の説明を8つの項目に組織化した。しかしながら、これら項目のうちの任意の1つに記載された実施形態の特徴を他の7つの項目に記載された任意の実施形態の特徴および制限と組み合わせることができる。逆に、単一の実施形態との関連で説明されている種々の特徴もまた、多数の実施形態において別々にまたは任意適当なサブコンビネーションの状態で具体化できる。さらに、特徴をある特定の組み合わせで作用するものとして説明し、そしてそれどころかそれ自体当初クレーム請求されているが、クレーム請求されたコンビネーションからの1つまたは2つ以上の特徴を幾つかの場合においてコンビネーションから排除することができ、クレーム請求された組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形例に関する場合がある。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36