(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】多層基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240710BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240710BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20240710BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H05K3/46 U
H02K11/33
H02K5/22
H05K1/02 Q
H05K1/02 F
H05K3/46 Q
H05K1/02 N
(21)【出願番号】P 2021008273
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩史
(72)【発明者】
【氏名】青木 康明
(72)【発明者】
【氏名】木村 光徳
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129895(JP,A)
【文献】特開2009-188271(JP,A)
【文献】特開2013-198367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/00- 1/02
H02M 7/42- 7/98
H02K 11/33
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極側配線(41)が形成されている複数の正極層(31)と、前記正極側配線よりも低電位になる負極側配線(49)が形成されている複数の負極層(32)とを有し、複数の前記正極層と複数の前記負極層とが積層方向(d)に積層されている多層基板(30)において、
前記多層基板の前記積層方向の一方(d1)の端面には、半導体の正極側素子(42)と半導体の負極側素子(48)とが搭載されており、
前記積層方向に見た平面視の領域であって前記正極側素子及び前記負極側素子を含む所定の領域であるレグ領域(E)内において、各前記正極層には、前記正極側配線が形成されている一方、前記負極側配線は、形成されていないか前記平面視で前記正極側配線よりも小さい面積で形成されており、且つ各前記負極層には、前記負極側配線が形成されている一方、前記正極側配線は、形成されていないか前記平面視で前記負極側配線よりも小さい面積で形成されており、
前記レグ領域内において、各前記正極層の前記正極側配線どうしが電気的に接続されると共に、前記正極側配線に前記正極側素子が電気的に接続されており、且つ各前記負極層の前記負極側配線どうしが電気的に接続されると共に、前記負極側配線に前記負極側素子が電気的に接続されており、
前記正極層どうしの間に前記負極層が配置され、前記負極層どうしの間に前記正極層が配置される形で、前記正極層と前記負極層とが積層されている、多層基板。
【請求項2】
2層の前記正極層どうしの間に1層の前記負極層が配置され、2層の前記負極層どうしの間に1層の前記正極層が配置される形で、前記正極層と前記負極層とが1層ごとに交互に積層されている、請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
給電対象(53)に交流電力を供給するインバータ(40)が形成されており、
前記正極側素子は、前記インバータの上アームスイッチ(42)であり、前記負極側素子は、前記インバータの下アームスイッチ(48)であり、前記正極側配線は前記上アームスイッチを介して前記給電対象に電気的に接続され、前記負極側配線は前記下アームスイッチを介して前記給電対象に電気的に接続されている、請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記レグ領域内において、前記平面視で、前記正極層の前記正極側配線と前記負極層の前記負極側配線とが、重なり合っている、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項5】
前記レグ領域内において、各前記正極層の前記正極側配線どうしは、前記負極層における前記平面視で前記負極側配線の外縁よりも内側の部分を前記積層方向に通過する形で延びる正極側ビア(417)によって、電気的に接続されており、前記正極側ビアと前記負極側配線とは、前記正極側ビアと前記負極側配線との間に設けられている前記平面視で環状の絶縁部(41x)により絶縁されており、
前記レグ領域内において、各前記負極層の前記負極側配線どうしは、前記正極層における前記平面視で前記正極側配線の外縁よりも内側の部分を前記積層方向に通過する形で延びる負極側ビア(497)によって、電気的に接続されており、前記負極側ビアと前記正極側配線とは、前記負極側ビアと前記正極側配線との間に設けられている前記平面視で環状の絶縁部(49x)により絶縁されている、
請求項4に記載の多層基板。
【請求項6】
前記レグ領域内において、前記積層方向の各端の層には、それぞれ、前記正極側素子及び前記負極側素子のいずれからも絶縁される導電体の放熱用パターン(31H,32H)が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項7】
前記レグ領域内において、前記正極層及び前記負極層には、それぞれ接続配線(45)が形成されており、
前記レグ領域内において、前記正極側配線と前記接続配線とは、並列に設けられている複数の前記正極側素子を介して互いに電気的に接続されており、前記接続配線と前記負極側配線とは、並列に設けられている複数の前記負極側素子を介して互いに電気的に接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項8】
前記レグ領域内において、前記多層基板における前記積層方向の前記一方とは反対側の端面には、前記正極側配線及び前記負極側配線のいずれよりも低温になる放熱器(20)が取り付けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項9】
複数相のコイル(53u,53v,54w)に交流電力を供給するインバータ(40)が形成されており、前記正極側素子は、前記インバータの上アームスイッチ(42)であり、前記負極側素子は、前記インバータの下アームスイッチ(48)であり、前記コイル毎に、前記平面視で重なり合わない前記レグ領域が存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層基板。
【請求項10】
複数相の前記コイルは、各前記コイルの各端(u1,v1,w1,u2,v2,w2)がそれぞれ別々の接続配線(45)に電気的に接続されているオープン巻線であって、各前記コイルの端毎に、前記平面視で重なり合わない前記レグ領域が存在する、請求項9に記載の多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層を有する多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータの中には、例えば車両等の走行用の回転電機に対して、いわゆるフルブリッジ回路により交流電力を供給するものがある。具体的には、フルブリッジ回路は、リチウムイオン電池等の直流電源の正極に電気的に接続される正極側配線と、直流電源の負極に電気的に接続される負極側配線と、複数の上アームスイッチと、複数の下アームスイッチとを有する。正極側配線は、各上アームスイッチを介して、回転電機に電気的に接続されており、負極側配線は、各下アームスイッチを介して、回転電機に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、このようなインバータの中でも、出力が比較的小さいものについては、プリント基板等によりフルブリッジ回路を形成できることに着目した。ただし、その場合であっても、一層のみのプリント基板でフルブリッジ回路を形成した場合には、当該一層の配線に流れる電流が大きくなり過ぎてしまう。そのため、複数層積層した多層基板を形成して、それら複数層の配線に並列に電流が流れるようにフルブリッジ回路を形成する必要がある。
【0005】
その際、具体的には、例えば、正極側配線が形成されている正極層と、負極側配線が形成されている負極層とを、複数層ずつ積層することが考えられる。そして、各正極層の正極側配線どうし、及び各負極層の負極側配線どうしを、それぞれ互いにビア等で電気的に接続することが考えられる。そして、多層基板における積層方向の一方の端面に上下の各アームスイッチを搭載すると共に、各上アームスイッチを正極側配線に電気的に接続し、各下アームスイッチを負極側配線に電気的に接続することが考えられる。
【0006】
この場合、正極層は、正極側配線どうしの接続のし易さから、積層方向の例えば一方側寄りにまとめて配置し、負極層は、負極側配線どうしの接続のし易さから、積層方向の他方側寄りにまとめて配置することが考えられる。
【0007】
しかしながら、そうした場合、上アームスイッチは、自身が搭載されている側である積層方向の一方側寄りに、各正極層がまとめて配置されることにより、正極側配線の熱の影響を受け易くなる。それに対して、下アームスイッチは、自身が搭載されている側とは反対側である積層方向の他方側寄りに、各負極層がまとめて配置されることにより、負極側配線の熱の影響を受け難くなる。そのため、上アームスイッチの方が下アームスイッチよりも高温になり易くなってしまう。その結果、上アームスイッチの温度が耐熱限界温度に達し易くなってしまう。
【0008】
また上記とは逆に、正極層を積層方向の他方側寄りにまとめて配置し、負極層を積層方向の一方側寄りにまとめて配置した場合には、下アームスイッチの温度が耐熱限界温度に達し易くなってしまう。
【0009】
なお、以上では、インバータが有するフルブリッジ回路における上下のアームスイッチを例に説明したが、同様の課題は、例えばオルタネータが有するダイオードブリッジ回路における上下のダイオード等、その他の回路におけるその他の半導体素子においても発生し得る。
【0010】
そして、その他の回路での発熱を課題とする文献としては、例えば上記の特許文献1がある。しかしながら、特許文献1には、2つの発熱体どうしの間での温度のアンバランスについて、言及されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、正極側素子の温度と負極側素子の温度とのアンバランスを抑えて、正極側素子及び負極側素子のうちの高温になる方の素子の温度を耐熱限界温度に達し難くすることを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の多層基板は、正極側配線が形成されている複数の正極層と、前記正極側配線よりも低電位になる負極側配線が形成されている複数の負極層とを有し、複数の前記正極層と複数の前記負極層とが積層方向に積層されている。前記多層基板における前記積層方向の一方の端面には、半導体の正極側素子と半導体の負極側素子とが搭載されている。
【0013】
以下、前記積層方向に見た平面視の領域であって前記正極側素子及び前記負極側素子を含む所定の領域を、「レグ領域」という。前記レグ領域内において、各前記正極層には、前記正極側配線が形成されている一方、前記負極側配線は、形成されていないか前記平面視で前記正極側配線よりも小さい面積で形成されており、且つ各前記負極層には、前記負極側配線が形成されている一方、前記正極側配線は、形成されていないか前記平面視で前記負極側配線よりも小さい面積で形成されている。
【0014】
前記レグ領域内において、各前記正極層の前記正極側配線どうしが電気的に接続されると共に、前記正極側配線に前記正極側素子が電気的に接続されており、且つ各前記負極層の前記負極側配線どうしが電気的に接続されると共に、前記負極側配線に前記負極側素子が電気的に接続されている。
【0015】
そして、前記正極層どうしの間に前記負極層が配置され、前記負極層どうしの間に前記正極層が配置される形で、前記正極層と前記負極層とが積層されている。
【0016】
本発明では、各正極層の正極側配線どうしの接続が非効率になるにも関わらず、敢えて、正極層どうしの間に負極層を配置している。そして、各負極層の負極側配線どうしの接続が非効率になるにも関わらず、敢えて、負極層どうしの間に正極層を配置している。
【0017】
それにより、正極側配線を積層方向に分散して配置すると共に、負極側配線を積層方向に分散して配置している。それにより、正極側素子に対する正極側配線の熱の影響と、負極側素子に対する負極側配線の熱の影響との差を抑えて、正極側素子の温度と負極側素子の温度とのアンバランスを、抑えることができる。その結果、正極側素子及び負極側素子のうちの高温になる方の素子の温度を抑えることができる。そのため、当該高温になる方の素子の温度を、耐熱限界温度に達し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の多層基板及びその周辺を示す正面断面図
【
図3】インバータを示す平面図及びIIIb-IIIb線の断面図
【
図10】第2実施形態の多層基板の各層を示す平面図
【
図12】第3実施形態の多層基板の各層を示す平面図
【
図13】第4実施形態の多層基板の各層を示す平面図
【
図14】第5実施形態のインバータ及びステータの回路図
【
図15】多層基板における一のレグ領域を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の多層基板30及びその周辺を示す正面断面図である。多層基板30にはインバータ40の回路が形成されている。インバータ40は、例えば小型の乗用車やそれよりも小さい乗り物としての小型モビリティのホイール60を回転させるインホイールモータ50に対して適用されている。インホイールモータ50は、ロータ57とステータ52とを有する。ロータ57は、ホイール60に接続されており、ホイール60及びタイヤ65と共に回転する。ステータ52には、インバータ40から交流電力が供給される。インバータ40に対しては、空冷フィン25を有する空冷式の放熱器20が取り付けられている。
【0021】
図2は、インバータ40及びステータ52の回路図である。ステータ52は、U相コイル53uとV相コイル53vとW相コイル53wとからなる3相コイル53を有する。3相コイル53は、ロータ57が有する永久磁石(図示略)に作用してロータ57を回転させる。
【0022】
以下では、U相,V相,W相の各コイル53u,53v,53wの一端を、「第1端u1,v1,w1」といい、U相,V相,W相の各コイル53u,53v,53wの他端を、「第2端u2,v2,w2」という。そして、U相,V相,W相の各コイル53u,53v,53wの第1端u1,v1,w1及び第2端u2,v2,w2の各端を、「コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2」という。
【0023】
また以下では、U相コイル53uの第1端u1に対応していることを「U相第1(U1)」といい、V相コイル53vの第1端v1に対応していることを「V相第1(V1)」といい、W相コイル53wの第1端w1に対応していることを「W相第1(W1)」という。また、U相コイル53uの第2端u2に対応していることを「U相第2(U2)」といい、V相コイル53vの第2端v2に対応していることを「V相第2(V2)」といい、W相コイル53wの第2端w2に対応していることを「W相第2(W2)」という。また以下では、「電気的に接続」されていることを、単に「接続」されているという。
【0024】
3相コイル53は、オープン巻線であって、各コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2には、それぞれ別々の接続配線45が接続されている。つまり、インバータ40は、U相第1(U1)の接続配線45と、V相第1(V1)の接続配線45と、W相第1(W1)の接続配線45と、U相第2(U2)の接続配線45と、V相第2(V2)の接続配線45と、W相第2(W2)の接続配線45と、を有する。
【0025】
インバータ40は、いわゆるフルブリッジ回路により構成されており、リチウムイオン電池等の直流電源10から給電される。具体的には、インバータ40は、直流電源10の正極に接続されている正極側配線41と、直流電源10の負極に接続されている負極側配線49とを有する。正極側配線41と負極側配線49とは、平滑コンデンサ46を介して互いに接続されている。
【0026】
さらにインバータ40は、コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2毎に、上下のアームスイッチ42,48を有する。つまり、インバータ40は、U相第1(U1)の上下のアームスイッチ42,48と、V相第1(V1)の上下のアームスイッチ42,48と、W相第1(W1)の上下のアームスイッチ42,48と、U相第2(U2)の上下のアームスイッチ42,48と、V相第2(V2)の上下のアームスイッチ42,48と、W相第2(W2)の上下のアームスイッチ42,48と、を有する。なお、上下のアームスイッチ42,48は、上アームスイッチ42と下アームスイッチ48とからなる。
【0027】
これら計12個の上下の各アームスイッチ42,48は、いずれも、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の半導体スイッチ(図ではNチャネル型のMOSFET)であり、ダイオード(符号略)が逆並列に接続又は内蔵されている。
【0028】
U相コイル53uの第1端u1は、U相第1(U1)の上アームスイッチ42を介して正極側配線41に接続されると共に、U相第1(U1)の下アームスイッチ48を介して負極側配線49に接続されている。具体的には、U相コイル53uの第1端u1は、U相第1(U1)の接続配線45により、U相第1(U1)の上アームスイッチ42の負極側端子42n(図ではソース端子)と、U相第1(U1)の下アームスイッチ48の正極側端子48p(図ではドレイン端子)とに、それぞれ接続されている。そして、U相第1(U1)の上アームスイッチ42の正極側端子42p(図ではドレイン端子)は、正極側配線41に接続されており、U相第1(U1)の下アームスイッチ48の負極側端子48n(図ではソース端子)は、負極側配線49に接続されている。U相第1(U1)の上アームスイッチ42とU相第1(U1)の下アームスイッチ48とは、周期的に対象動作する発熱量が等しい素子である。
【0029】
以上の説明は、U相コイル53uの第1端u1以外の各コイル端v1,w1,u2,v2,w2においても、「U」を「U」「V」「W」のうちの該当するものに読み替え、「第1」を「第1」「第2」のうちの該当するものに読み替えると共に、符号を該当するものに読み替えて同様である。つまり、各コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2は、当該コイル端に対応する上アームスイッチ42を介して正極側配線41に接続されると共に、当該コイル端に対応する下アームスイッチ48を介して負極側配線49に接続されている。そして、各同一のコイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2に対応する上下のアームスイッチ42,48は、周期的に対象動作する発熱量が等しい素子である。
【0030】
各アームスイッチ42,48の制御端子42c,48c(図ではゲート端子)は、当該アームスイッチ42,48に対応するスイッチ駆動回路(図示略)に接続されている。各スイッチ駆動回路は、ECU(図示略)に接続されている。ECUは、各スイッチ駆動回路の制御により、3相の各コイル53u,53v,53wに、例えば正弦波等の電流が、位相を3分の1波長ずつ互いにずらして流れるように制御する。このようなスイッチング制御については、既に公知のものでよいため、その詳細については省略する。
【0031】
図3は、インバータ40をタイヤ65の軸線方向に見た平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線の断面を示す図である。
図3(b)に示すように、インバータ40は、円盤状の多層基板30を基体として構成されている。多層基板30は、3層の正極層31と3層の負極層32との計6層からなる。各正極層31には、正極側配線41と接続配線45とが形成されている。各負極層32には、負極側配線49と接続配線45とが形成されている。なお、この
図3(b)においては、視認性のため、各層31,32や上下の各アームスイッチ42,48の厚さを、実際のものよりも極端に大きく示している。このことは、以降に参照する各図面における各層31,32の厚さや、上下の各アームスイッチ42,48の厚さにおいて同様である。
【0032】
2層の正極層31どうしの間に1層の負極層32が配置され、2層の負極層32どうしの間に1層の正極層31が配置される形で、正極層31と負極層32とが1層ごとに交互に積層されている。以下では、それら正極層31及び負極層32が積層されている方向を「積層方向d」といい、その積層方向dの一方を「積層第1方向d1」といい、その積層第1方向d1の反対方向を「積層第2方向d2」という。
【0033】
多層基板30における最も積層第1方向d1側の層は、正極層31である。以下では、その正極層31を「第1層L1」といい、その第1層L1よりも1つ積層第2方向d2側の負極層32を、「第2層L2」という。以下同様に、第2層L2よりも積層第2方向d2側の各層31,32を、積層第1方向d1側のものから順に、それぞれ「第3層L3」「第4層L4」「第5層L5」「第6層L6」という。よって、第1層L1、第3層L3、第5層L5は、正極層31であり、第2層L2、第4層L4、第6層L6は、負極層32である。
【0034】
第1層L1を構成する正極層31の積層第1方向d1側の端面には、上下の各アームスイッチ42,48やスイッチ駆動回路(図示略)等が搭載されている。そして、第6層L6を構成する負極層32の積層第2方向d2側の端面には、放熱器20が取り付けられている。それら第6層L6と放熱器20との間には、絶縁部材28が設置されている。
【0035】
図3(a)に示す多層基板30における内周寄り部分30aには、ECUを構成するECU回路(図示略)や、ロータ57の回転角度を検出するための角度検出回路(図示略)等が形成されている。他方、多層基板30における外周寄り部分30bには、インバータ40やそのスイッチ駆動回路(図示略)が形成されている。ECU回路や角度検出回路やスイッチ駆動回路は、供給される電圧が相対的に低い低圧回路の一部を構成している。他方、インバータ40は、供給される電圧が相対的に高い高圧回路の一部を構成している。
【0036】
以下では、積層方向dに見た平面視を、単に「平面視」という。そして、平面視の領域であって各コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2に対応する上下のアームスイッチ42,48を含む所定の領域を、それぞれ当該コイル端u1,v1,w1,u2,v2,w2に対応する「レグ領域E」という。そのため、レグ領域Eとしては、U相第1(U1)のレグ領域Eと、V相第1(V1)のレグ領域Eと、W相第1(W1)のレグ領域Eと、U相第2(U2)のレグ領域Eと、V相第2(V2)のレグ領域Eと、W相第1(W2)のレグ領域Eとが存在する。それら計6つのレグ領域Eは、平面視で周方向に間隔をおいて並設されている。各レグ領域Eは、例えば、当該レグ領域Eの上下のアームスイッチ42,48に多層基板30の温度が所定基準以上影響を及ぼし得る範囲の領域であり、レグ領域Eどうしは、平面視で重なり合っていない。
【0037】
図4は、6つの各レグ領域Eのうちの1つのレグ領域Eを示す斜視図である。6つの各レグ領域Eは、互いに同様の立体構造をしている。
【0038】
図5は、多層基板30を構成する3層の正極層31(L1,L3,L5)及び3層の負極層32(L2,L4,L6)における同一のレグ領域Eを示す平面図である。各層31,32(L1~L6)は、それぞれベースとなる基板31b,32bを有する。正極側配線41は、各正極層31(L1,L3,L5)のベースとなる基板31bに、正極側配線41を構成するパターンがプリントされること等により形成されている。接続配線45は、各層31,32(L1~L6)のベースとなる基板31b,32bに、接続配線45を構成するパターンがプリントされること等により形成されている。負極側配線49は、各負極層32(L2,L4,L6)のベースとなる基板32bに、負極側配線49を構成するパターンがプリントされること等により形成されている。
【0039】
レグ領域E内において、各正極層31(L1,L3,L5)には、正極側配線41が形成されている一方、負極側配線49は形成されていないか、正極側配線41よりも小さい面積で形成されている。具体的には、レグ領域E内において、第3層L3及び第5層L5には、負極側配線49が形成されていないが、第1層L1には、負極側配線49が正極側配線41よりも小さい面積で形成されている。この第1層L1にある負極側配線49は、負極側配線49における下アームスイッチ48との接続部を構成している。
【0040】
さらに、レグ領域E内において、各層31,32(L1~L6)には、当該レグ領域Eに対応する接続配線45が形成されている。さらに、レグ領域E内において、各負極層32(L2,L4,L6)には、負極側配線49が形成されている一方、正極側配線41は形成されていない。
【0041】
レグ領域E内において、各正極層31(L1,L3,L5)の正極側配線41どうしは、積層方向dに各層31,32(L1~L6)を跨いで延びる正極側ビア417により、電気的に接続されている。正極側ビア417は、例えば、各層31,32(L1~L6)の基板31b,32bを積層方向dに貫通するスルーホールの内周面を銅メッキしたものであり、このことは、後述する他のビアにおいても同様である。正極側ビア417は、レグ領域E内において、例えば、図に示すように1つであってもよいし、複数であってもよい。さらに、上アームスイッチ42の積層第2方向d2側においては、各層31,32(L1~L6)を跨いで積層方向dに延びる上アームインレイ418により、各正極層31の正極側配線41どうしが電気的に接続されている。上アームインレイ418は、例えば、円柱状(コイン状)の銅材であり、このことは、後述する他のインレイにおいても同様である。
【0042】
レグ領域E内において、各層31,32(L1~L6)の接続配線45どうしは、積層方向dに各層31,32(L1~L6)を跨いで延びる複数の接続ビア457及び接続インレイ458により電気的に接続されている。接続ビア457は、例えば、図に示すように、接続配線45における上アームスイッチ42との接続部付近に複数設けられると共に、それ以外の箇所にも設けられている。接続インレイ458は、レグ領域E内において、例えば、図に示すように1つであってもよいし、複数であってもよい。さらに、下アームスイッチ48の積層第2方向d2側においては、各層31,32(L1~L6)を跨いで積層方向dに延びる下アームインレイ459により、各層31,32(L1~L6)の接続配線45どうしが接続されている。
【0043】
レグ領域E内において、各負極層32(L2,L4,L6)の負極側配線49どうしは、積層方向dに各層31,32(L1~L6)を跨いで延びる負極側ビア497により、電気的に接続されている。負極側ビア497は、例えば、図に示すように、負極側配線49における下アームスイッチ48との接続部付近に複数設けられると共に、それ以外の箇所にも設けられている。なお、当該接続部付近の負極側ビア497については、各負極層32(L2,L4,L6)のみならず、それらに第1層L1を構成する正極層31も加えた各層L1,L2,L4,L6の負極側配線49どうしを電気的に接続している。
【0044】
以上により、
図3に示すインバータ40全体においても、各正極層31(L1,L3,L5)には、正極側配線41が形成されている一方、負極側配線49は、形成されていないか平面視で正極側配線41よりも小さい面積で形成されている。そして、当該インバータ40全体において、各負極層32(L2,L4,L6)には、負極側配線49が形成されている一方、正極側配線41は、形成されていないか平面視で負極側配線49よりも小さい面積で形成されている。
【0045】
図6は、
図5に示すVI-VI線の断面を示す断面図である。上アームスイッチ42は、正極側端子42pと素子本体425と導電部材426と負極側端子42nとを有する。正極側端子42pは、正極側配線41に接続されている。負極側端子42nは、接続配線45に接続されている。素子本体425は、積層第2方向d2側の端面が正極側端子42pに接続されると共に、積層第1方向d1側の端面が導電部材426を介して負極側端子42nに接続されている。
【0046】
図7は、
図5に示すVII-VII線の断面を示す断面図である。下アームスイッチ48は、正極側端子48pと素子本体485と導電部材486と負極側端子48nとを有する。正極側端子48pは、接続配線45に接続されている。負極側端子48nは、負極側配線49に接続されている。素子本体485は、積層第2方向d2側の端面が正極側端子48pに接続されると共に、積層第1方向d1側の端面が導電部材486を介して負極側端子48nに接続されている。
【0047】
図8は、
図5に示すVIII-VIII線の断面を示す断面図である。前述の通り、レグ領域E内において、各正極層31(L1,L3,L5)の正極側配線41どうしが正極側ビア417により接続されると共に、各負極層32(L2,L4,L6)の負極側配線49どうしが負極側ビア497により接続されている。そして、多層基板30における積層第2方向d2側の端面には、正極側配線41及び負極側配線49のいずれよりも低温になる放熱器20が取り付けられている。
【0048】
図9は、仮に3層の正極層31を積層第1方向d1寄りにまとめ、3層の負極層32を積層第2方向d2寄りにまとめて配置した場合、つまり、仮に第1~第3層L1~L3を正極層31とし、第4~第6層L4~L6を負極層32とした場合の比較例を示す断面図である。この比較例を参照しつつ、本実施形態の効果について説明する。
【0049】
比較例の場合、正極層31(L1~L3)の正極側配線41どうしが互いに隣接して配置され、且つ負極層32(L4~L6)の負極側配線49どうしが互いに隣接して配置される。そのため、正極側配線41どうしの接続と負極側配線49どうしの接続とを、簡単に効率的に行うことができる。正極側ビア417は、3層の正極層31(L1~L3)を跨ぐだけでよく、負極側ビア497は、3層の負極層32(L4~L6)を跨ぐだけでよいからである。
【0050】
しかしながら、比較例の場合、3層の正極層31(L1~L3)は、上アームスイッチ42側であり且つ放熱器20側の反対側である積層第1方向d1寄りに、まとめて配置される。そのため、正極側配線41の熱が、上アームスイッチ42付近に伝熱され易くなると共に、放熱器20に放熱され難くなる。そのことから、上アームスイッチ42については、放熱され難くなる。
【0051】
他方、3層の負極層32(L4~L6)は、下アームスイッチ48側の反対側であり且つ放熱器20側である積層第2方向d2寄りに、まとめて配置される。そのため、負極側配線49の熱が、下アームスイッチ48付近に伝熱され難くなると共に、放熱器20に放熱され易くなる。そのことから、下アームスイッチ48については、放熱され易くなる。
【0052】
以上のことから、上アームスイッチ42の方が下アームスイッチ48よりも放熱され難くなり、上アームスイッチ42の温度と下アームスイッチ48の温度とのアンバランスが大きくなってしまう。その結果、上アームスイッチ42の温度が耐熱限界温度に達し易くなってしまう。
【0053】
その点、本実施形態では、
図8に示すように、正極側配線41どうしの接続と負極側配線49どうしの接続とが非効率になるにも関わらず、敢えて、正極層31どうしの間に負極層32を配置し、負極層32どうしの間に正極層31を配置している。それにより、正極側配線41を積層方向dに分散して配置すると共に、負極側配線49を積層方向dに分散して配置している。
【0054】
そのため、正極側配線41の熱は、比較例に比べて、上アームスイッチ42付近に伝熱され難くなると共に、放熱器20に放熱され易くなる。他方、負極側配線49の熱は、比較例に比べて、下アームスイッチ48付近に伝熱され易くなると共に、放熱器20に放熱され難くなる。そのため、上アームスイッチ42の温度と下アームスイッチ48の温度とのアンバランスが抑えられる。その結果、比較例に比べて、上アームスイッチ42及び下アームスイッチ48のうちの高温になる方の温度が、耐熱限界温度に達し難くなる。
【0055】
しかも、より具体的には、正極層31と負極層32とを1層ごとに交互に積層している。そのため、正極層31と負極層32とが、例えば2層ごとに交互に積層される場合に比べて、上アームスイッチ42の温度と下アームスイッチ48の温度とのアンバランスをより効率的に抑えることができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、第1実施形態のものと同一の又は対応する部材について同一の符号を付する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同一又は類似の部分については、適宜説明を省略する。
【0057】
図10は、多層基板30を構成する3層の正極層31(L1,L3,L5)及び3層の負極層32(L2,L4,L6)における同一のレグ領域Eを示す平面図である。本実施形態では、各レグ領域E内において、第3層L3,第5層L5を構成する正極層31における正極側配線41の面積が、第1実施形態の場合よりも大きい。さらに、各レグ領域E内において、第2層L2,第4層L4を構成する負極層32における負極側配線49の面積が、第1実施形態の場合よりも大きい。そのことから平面視で、正極層31の正極側配線41と負極層32の負極側配線49とが、互いに重なり合っている。
【0058】
レグ領域E内において、各正極層31(L1,L3,L5)の正極側配線41どうしは、第1実施形態の場合と同様、正極側ビア417によって接続されている。ただし、その正極側ビア417は、負極層32(L2,L4)における平面視で負極側配線49の外縁よりも内側の部分を積層方向dに通過する形で延びている点で、第1実施形態の場合と相違している。そして、正極側ビア417と、負極層32(L2,L4)の負極側配線49とは、正極側ビア417と負極側配線49との間に設けられている平面視で環状の絶縁部41xにより絶縁されている。このような構成は、例えば、負極層32(L2,L4)における正極側ビア417を設ける部分を含む部分一帯に、負極側配線49を構成するパターンをプリントせずに絶縁部41xを設け、その絶縁部41xを貫通する形で正極側ビア417を設けることにより実現できる。絶縁部41xは、例えば、プリプレグやコア材等の絶縁性を有する部材であり、このことは、後述する他の絶縁部においても同様である。
【0059】
また、レグ領域E内において、各負極層32(L2,L4,L6)の負極側配線49どうしは、第1実施形態の場合と同様、負極側ビア497によって電気的に接続されている。ただし、その負極側ビア497は、正極層31(L3,L5)における平面視で正極側配線41の外縁よりも内側の部分を積層方向dに通過する形で延びている点で、第1実施形態の場合と相違している。そして、負極側ビア497と、正極層31(L3,L5)の正極側配線41とは、負極側ビア497と正極側配線41との間に設けられている平面視で環状の絶縁部49xにより絶縁されている。
【0060】
図11は、
図10のXI-XI線の断面を示す断面図である。前述の通り、正極側ビア417は、各正極層31(L1,L3,L5)の正極側配線41どうしを接続すると共に、負極層32(L2,L4)の負極側配線49とは絶縁部41xにより絶縁されている。そして、負極側ビア497は、各負極層32(L2,L4,L6)の負極側配線49どうしを接続すると共に、正極層31(L3,L5)の正極側配線41とは絶縁部49xにより絶縁されている。
【0061】
本実施形態によれば、各レグ領域E内において、平面視で、正極層31の正極側配線41と負極層32の負極側配線49とが重なり合っている。そのことから、正極側配線41及び負極側配線49の面積が極力大きくなり、正極側配線41及び負極側配線49での電気抵抗が、第1実施形態の場合に比べて抑えられる。それにより、正極側配線41及び負極側配線49の発熱が抑えられて、上下のアームスイッチ42,48の温度上昇が抑えられる。そのため、この点でも、上下のアームスイッチ42,48の温度が、耐熱限界温度に達し難くなる。
【0062】
また、正極側ビア417と負極側配線49とは、環状の絶縁部41xにより絶縁されている。そのため、このように平面視で正極側配線41と負極側配線49とが重なり合っている場合においても、正極側配線41を負極側配線49に短絡させることなく、正極側ビア417により、各正極層31の正極側配線41どうしを互いに接続することができる。
【0063】
また、負極側ビア497と正極側配線41とは、環状の絶縁部49xにより絶縁されている。そのため、このように平面視で正極側配線41と負極側配線49とが重なり合っている場合においても、正極側配線41を負極側配線49に短絡させることなく、負極側ビア497により、各負極層32の負極側配線49どうしを互いに接続することができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。本実施形態については、第2実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明し、第2実施形態と同一又は類似の部分については、適宜説明を省略する。
【0065】
図12は、多層基板30を構成する3層の正極層31(L1,L3,L5)及び3層の負極層32(L2,L4,L6)における同一のレグ領域Eを示す平面図である。本実施形態では、各レグ領域E内において、第1層L1を構成する正極層31には、下アームスイッチ48の放熱性を向上させるための導電体の第1放熱用パターン31Hが、上アームスイッチ42及び下アームスイッチ48のいずれからも絶縁されている形で形成されている。具体的には、この第1放熱用パターン31Hは、第1層L1を構成する正極層31のベースとなる基板31bにプリントされている。
【0066】
そして、各レグ領域E内において、第6層L6を構成する負極層32には、上アームスイッチ42の放熱性を向上させるための導電体の第2放熱用パターン32Hが、上アームスイッチ42及び下アームスイッチ48のいずれからも絶縁されている形で形成されている。具体的には、この第2放熱用パターン32Hは、第6層L6を構成する負極層32のベースとなる基板32bにプリントされている。
【0067】
第1層L1の第1放熱用パターン31Hは、平面視で各負極層32(L2,L4,L6)の負極側配線49と重なる位置に設けられている。そして、負極側ビア497は、第1層L1における平面視で第1放熱用パターン31Hの外縁よりも内側の部分を、積層方向dに通過する形で延びている。そして、負極側ビア497と第1放熱用パターン31Hとは、負極側ビア497と第1放熱用パターン31Hとの間に設けられている平面視で環状の絶縁部49xにより絶縁されている。
【0068】
第6層L6の第2放熱用パターン32Hは、平面視で各正極層31(L1,L3,L5)の正極側配線41と重なる位置に設けられている。そして、正極側ビア417は、第6層L6における平面視で第2放熱用パターン32Hの外縁よりも内側の部分を、積層方向dに通過する形で延びている。そして、正極側ビア417と第2放熱用パターン32Hとは、正極側ビア417と第2放熱用パターン32Hとの間に設けられている平面視で環状の絶縁部41xにより絶縁されている。
【0069】
本実施形態によれば、第1層L1に第1放熱用パターン31Hを設けることにより、下アームスイッチ48の温度を抑えることができる。さらに、第6層L6に第2放熱用パターン32Hを設けることにより、上アームスイッチ42の温度を抑えることができる。それにより、上下のアームスイッチ42,48の温度を、より耐熱限界温度に達し難くすることができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。本実施形態については、第3実施形態と略同様であるが、そのベースとなる実施形態が、第2実施形態ではなく第1実施形態である点で、第3実施形態と相違している。
【0071】
図13は、多層基板30を構成する3層の正極層31(L1,L3,L5)及び3層の負極層32(L2,L4,L6)における同一のレグ領域Eを示す平面図である。本実施形態では、各レグ領域E内において、第1層L1には、導電体の第1放熱用パターン31Hが形成されており、第6層L6には、導電体の第2放熱用パターン32Hが形成されている。
【0072】
本実施形態によれば、第2実施形態ではなく第1実施形態をベースにした構成において、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
[第5実施形態]
次に第5実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同一又は類似の部分については、適宜説明を省略する。
【0074】
図14は、インバータ40及びステータ52の回路図である。本実施形態では、3相の各コイル53u,53v,53wの第2端u2,v2,w2どうしが、接続されている。つまり、3相コイル53は、オープン巻き線ではなく、スター結線されている。そのため、接続配線45、上下のアームスイッチ42,48及びレグ領域Eは、各コイル53u,53v,53wの第2端u2,v2,w2に対しては存在せず、各コイル53u,53v,53wの第1端u1,v1,w1に対してのみ存在する。
【0075】
そして、3相コイル53がスター結線されていることから、各2相の接続配線45どうしは、2相のコイルの直列接続体を介して接続されることになる。それら2相の各コイルには、2相の接続配線45どうしの間の線間電圧が分圧されて印加されることになる。そのことから、第1実施形態の場合と同じ出力(電圧×電流)を得るには、第1実施形態の場合よりも多くの電流を接続配線45に流す必要がある。そのため、各レグ領域E内には上アームスイッチ42が並列に2つ設けられると共に、下アームスイッチ48が並列に2つ設けられている。
【0076】
図15は、3つの各レグ領域Eのうちの1つを示す斜視図である。3つの各レグ領域Eは、互いに同様の立体構造をしている。レグ領域E内において、正極側配線41と接続配線45とが、並列に設けられている2つの上アームスイッチ42を介して互いに接続されると共に、接続配線45と負極側配線49とが、並列に設けられている2つの下アームスイッチ48を介して互いに接続されている。この構成において、正極層31と負極層32とを交互に積層する構成を採用している。
【0077】
なお、本実施形態では、前述の通り、第1実施形態をベースにしているが、これに代えて、第2~第4のいずれかの実施形態をベースに、このように各レグ領域E内において上下の各アームスイッチ42,48を2つずつ設けるようにしてもよい。
【0078】
本実施形態によれば、正極側配線41と接続配線45とが、並列に設けられている2つの上アームスイッチ42を介して互いに接続されると共に、接続配線45と負極側配線49とが、並列に設けられている2つの下アームスイッチ48を介して互いに接続されている。そのため、接続配線45により多くの電流を流す必要がある状況下においても、上下の各1つのアームスイッチ42,48に流れる電流を抑えて、上下の各アームスイッチ42,48の温度を、耐熱限界温度に達し難くすることができる。
【0079】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
【0080】
第1~第5実施形態では、正極層31は3層であるが、2層であってもよいし、4層以上であってもよい。また、第1~第5実施形態では、負極層32は、3層であるが、2層であってもよいし、4層以上であってもよい。また、第1~第5実施形態では、正極層31と負極層32とは同じ層数であるが、異なる層数であってもよい。また、第1~第5実施形態では、正極層31と負極層32とを1層ごとに交互に積層しているが、これに代えて、例えば、2層ごとに交互に積層したり、3層ごとに交互に積層したりしてもよい。この場合であっても、正極層31どうしの間に負極層32が配置され、負極層32どうしの間に正極層31が配置される形で、正極層31と負極層32とが積層されることになる。
【0081】
第1~第5実施形態では、インバータ40を構成するいわゆるフルブリッジ回路が形成されている多層基板30において、正極層31と負極層32とを交互に積層する構成を採用している。これに代えて、例えばオルタネータ等を構成するいわゆるダイオードブリッジ回路が形成されている多層基板において、正極層と負極層とを交互に積層する構成を採用してもよい。なお、この場合、例えば、第1~第5実施形態の上アームスイッチ42を上ダイオードに代え、下アームスイッチ48を下ダイオードに代えるとよい。この態様によれば、上ダイオードの温度と下ダイオードの温度とのアンバランスを、抑えることができる。
【0082】
第1~第5実施形態では、第1層L1、第3層L3、第5層L5が正極層31であり、第2層L2、第4層L4、第6層L6が負極層32ではある。これとは逆に、第1層L1、第3層L3、第5層L5が負極層32であり、第2層L2、第4層L4、第6層L6が正極層31であってよい。この場合、例えば、第1層L1を構成する負極層32に、小面積の正極側配線41を設けて、その小面積の正極側配線41を上アームスイッチ42との接続部とすればよい。
【0083】
第1~第5実施形態では、多層基板30の積層第2方向d2側の端面に放熱器20が取り付けられているが、これに代えて又は加えて、多層基板30の積層第1方向d1側の端面に放熱器が搭載されていてもよい。
【0084】
第1~第5実施形態では、レグ領域E内において、第1層L1以外の正極層31(L3,L5)には、負極側配線49が形成されていないが、正極側配線41よりも小さい面積で形成されていてもよい。また、第1~第5実施形態では、レグ領域E内において、各負極層32(L2,L4,L6)には、正極側配線41が形成されていないが、負極側配線49よりも小さい面積で形成されていてもよい。
【0085】
第1~第4実施形態では、3相コイル53は、オープン巻き線であるが、スター結線やデルタ結線されていてもよい。また、第5実施形態では、3相コイル53は、スター結線されているが、オープン巻き線であってもよいし、デルタ結線されていてもよい。
【0086】
第5実施形態では、正極側配線41と接続配線45とが、並列に設けられている2つの上アームスイッチ42を介して互いに接続されている。これに代えて、並列に設けられている3つ以上の上アームスイッチ42を介して互いに接続されるようにしてもよい。同様に、第5実施形態では、接続配線45と負極側配線49とが、並列に設けられている2つの下アームスイッチ48を介して互いに電気的に接続されている。これに代えて、並列に設けられている3つ以上の下アームスイッチ48を介して互いに接続されるようにしてもよい。
【0087】
図12に示す第2実施形態において、例えば、正極層31(L3,L5)の接続配線45をレグ領域Eの中央部分に拡大し、負極層32(L3,L5)の負極側配線49をレグ領域Eの中央部分に拡大してもよい。そして、平面視で、レグ領域Eの中央部分において、接続配線45と負極側配線49とが重なり合うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
30…多層基板、31…正極層、32…負極層、41…正極側配線、42…上アームスイッチ、48…下アームスイッチ、49…負極側配線、E…レグ領域、d…積層方向、d1…積層第1方向。