(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ヒューズエレメント、ヒューズ素子及び保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/10 20060101AFI20240710BHJP
H01H 85/11 20060101ALI20240710BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H01H85/10
H01H85/11
H01H37/76 F
(21)【出願番号】P 2021037365
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069728(JP,A)
【文献】特開2015-097183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/10
H01H 85/11
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面と第2主面、及び前記第1主面と前記第2主面とを接続し、互いに対向する第1側面と第2側面を有する低融点金属板と、
前記第1主面及び前記第2主面に積層された第1高融点金属層と、前記第1側面及び前記第2側面に積層された第2高融点金属層と、を有し、
前記第2高融点金属層は、少なくとも一部が欠損した欠損部を有
し、
前記第2高融点金属層は、前記第1高融点金属層よりも厚さが厚い、ヒューズエレメント。
【請求項2】
互いに対向する第1主面と第2主面、及び前記第1主面と前記第2主面とを接続し、互いに対向する第1側面と第2側面を有する低融点金属板と、
前記第1主面及び前記第2主面に積層された第1高融点金属層と、前記第1側面及び前記第2側面に積層された第2高融点金属層と、を有し、
前記第2高融点金属層は、少なくとも一部が欠損した欠損部を有し、
前記低融点金属板を構成する材料の融点は、138℃以上250℃以下の範囲内にあり、
前記第1高融点金属層及び第2高融点金属層を構成する材料の融点は、前記低融点金属板を構成する材料の融点に対して100℃以上高い
、ヒューズエレメント。
【請求項3】
前記欠損部の深さは、前記低融点金属板が露出する深さであり、
前記欠損部の個数は、各前記第2高融点金属層の面積に対して前記欠損部の面積が50%以下となる個数である、請求項1または2に記載のヒューズエレメント。
【請求項4】
前記第2高融点金属層は、厚さが4μm以上40μm以下の範囲内にあり、前記第1高融点金属層は、厚さが3μm以上30μm以下の範囲内にある、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のヒューズエレメント。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のヒューズエレメントを備え、
前記ヒューズエレメントは、前記第1側面と前記第2側面が、通電方向に沿う方向に延びるように配置されているヒューズ素子。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体と、を有し、
前記ヒューズエレメントは、前記第1側面と前記第2側面が、通電方向に沿う方向に延びるように配置されている保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に定格を超える過電流が通電したときに電流経路を遮断させるための電流遮断素子として、ヒューズエレメント自体が発熱して溶断することによって電流経路を遮断させるヒューズ素子が知られている。また、回路基板に過電流の発生以外の異常が発生したときに電流経路を遮断させるための電流遮断素子として、発熱体(ヒーター)を用いた保護素子が知られている。この保護素子は、過電流の発生以外の異常時に、発熱体に電流を通電させることによって、発熱体を発熱させ、その熱を利用してヒューズエレメントを溶断させるように構成されている。
【0003】
ヒューズ素子及び保護素子に用いられるヒューズエレメントとして、低融点金属板と、その低融点金属板の表面に積層された高融点金属層とを有する積層型のヒューズエレメントが知られている。この積層型のヒューズエレメントとして、主面部よりも肉厚に形成され、相対向する一対の第1の側縁部と、上記第1の側縁部よりも薄い厚さに形成され、相対向する一対の第2の側縁部とを有するものが知られている(特許文献1)。特許文献1に記載されている保護素子では、第2の側縁部が通電方向に沿って配設されている。この、第1の側縁部を通電方向に沿って配設した場合に比して、少ない熱エネルギーで速やかに溶断させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒューズエレメントでは、電気抵抗を低減させるために、通電方向に対する幅を広くすることが検討されている。しかしながら、従来の積層型のヒューズエレメントは幅を広くすると、ヒューズ素子や保護素子の電極あるいは端子にリフローによりはんだ付けする際に、低融点金属板が溶融して、ヒューズエレメントが部分的に潰れた形状に変形することが起こることがあった。部分的に潰れた形状のヒューズエレメントは、その潰れた部分で抵抗値が上昇し、また温度ストレスがかかりやすくなるため、破断リスクが高くなるおそれがある。また、ヒューズエレメントの幅を広くすると、過電流の発生などの異常時に溶断させにくくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通電方向に対する幅を広くしてもリフロー時に低融点金属板が溶融して変形することが起こりにくく、かつ過電流の発生などの異常時には速やかに溶断させることができるヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0008】
(1)本発明の一態様に係るヒューズエレメントは、互いに対向する第1主面と第2主面、及び前記第1主面と前記第2主面とを接続し、互いに対向する第1側面と第2側面を有する低融点金属板と、前記第1主面及び前記第2主面に積層された第1高融点金属層と、前記第1側面及び前記第2側面に積層された第2高融点金属層と、を有し、前記第2高融点金属層の少なくとも一部が欠損した欠損部を有する。
【0009】
(2)上記(1)に記載の態様において、前記第2高融点金属層は、前記第1高融点金属層よりも厚さが厚い構成とされていてもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の態様において、前記低融点金属板を構成する材料の融点は、138℃以上250℃以下の範囲内にあり、前記第1高融点金属層及び第2高融点金属層を構成する材料の融点は、前記低融点金属板を構成する材料の融点に対して100℃以上高い構成とされていてもよい。
(4)上記(1)~(3)に記載の態様において、前記第2高融点金属層は、厚さが4μm以上40μm以下の範囲内にあり、前記第1高融点金属層は、厚さが3μm以上30μm以下の範囲内にある構成とされていてもよい。
【0010】
(5)本発明の一態様に係るヒューズ素子は、上記(1)~(4)に記載のヒューズエレメントを備え、前記ヒューズエレメントは、前記第1側面と前記第2側面が、通電方向に沿う方向に延びるように配置されている。
【0011】
(6)本発明の一態様に係る保護素子は、上記(1)~(4)に記載のヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体と、を有し、前記ヒューズエレメントは、前記第1側面と前記第2側面が、通電方向に沿う方向に延びるように配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通電方向に対する幅を広くしてもリフロー時に低融点金属板が溶融して変形することが起こりにくく、かつ過電流の発生などの異常時には速やかに溶断させることができるヒューズエレメントと、このヒューズエレメントを用いたヒューズ素子及び保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメントの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すヒューズエレメントの平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒューズ素子の斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係るヒューズ素子の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態に係る保護素子の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒューズエレメントの斜視図であり、
図2は、
図1に示すヒューズエレメントの平面図であり、
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
【0016】
本実施形態のヒューズエレメント10は、
図1~
図3に示すように、低融点金属板11と、低融点金属板11に積層された第1高融点金属層12a、12b及び第2高融点金属層12c、12dとを有する。第2高融点金属層12c、12dは、少なくとも一部が欠損した欠損部13を有する。
【0017】
低融点金属板11は、四角形であり、互いに対向する第1主面11aと第2主面11b、及び第1主面11aと第2主面11bとを接続する4つの側面を有する。4つの側面は、互いに対向する第1側面11cと第2側面11d、第3側面11eと第4側面11fである。低融点金属板11の厚さは、30μm以上であることが好ましい。低融点金属板11の膜厚は、60μm以上や、100μm以上や、500μm以上であってもよい。低融点金属板11の膜厚の上限値は、任意に選択できるが、例えば、3000μm以下であってもよい。必要に応じて、2000μm以下や、1500μm以下などであってもよい。
【0018】
低融点金属板11の第1主面11a及び第2主面11bにはそれぞれ、第1高融点金属層12a、12bが積層されている。低融点金属板11の第1側面11c及び第2側面11dにはそれぞれ、第2高融点金属層12c、12dが積層されている。第1側面11cに積層された第2高融点金属層12cの厚さTc及び第2側面11dに積層された第2高融点金属層12dの厚さTdは、第1主面11aに積層された第1高融点金属層12aの厚さTa及び第2主面11bに積層された第1高融点金属層12bの厚さTbよりも厚くなっている(
図3参照)。第2高融点金属層12cの厚さTc及び第2高融点金属層12dの厚さTdは、4μm以上40μm以下の範囲内にあることが好ましく、4μm以上30μm以下の範囲内にあることがより好ましい。第1高融点金属層12aの厚さTa及び第1高融点金属層12bの厚さTbは、3μm以上30μm以下の範囲内にあることが好ましく、3μm以上20μm以下の範囲内にあることがより好ましい。また、第1高融点金属層12a、12bの厚さTa、Tbを100としたときの第2高融点金属層12c、12dの厚さTc、Tdは、110以上150以下の範囲内にあることが好ましく、120以上140以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0019】
欠損部13は、第2高融点金属層12c、12dに設けられている。本実施形態では、欠損部13の形状は平面視で三角形とされている(
図2参照)が、欠損部13の形状は特に制限はない。欠損部13の形状は、例えば、平面視で半円形であってもよいし、四角形(正方形、長方形、台形)であってもよい。また、本実施形態では、欠損部13の深さは、低融点金属板11が露出する深さとされているが、欠損部13の深さは特に制限はない。欠損部13の深さは、例えば、低融点金属板11が露出しない深さであってもよいし、低融点金属板11の一部を欠損させる深さであってもよい。さらに、本実施形態では、欠損部13の個数は、第2高融点金属層12c、12dでそれぞれ2個とされているが、欠損部13の個数は特に制限はない。欠損部13の個数は、例えば、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。欠損部13の個数は、第2高融点金属層12c、12dの面積に対して欠損部13の面積が50%以下となる個数であってもよく、60%以上99%以下となる個数であってもよい。
【0020】
低融点金属板11は、その融点が、ヒューズ素子や保護素子を製造する際に行うリフロー時の加熱温度以下であることが好ましい。リフロー温度が240℃~260℃の場合には、低融点金属板11を構成する材料の融点TLは、138℃以上250℃以下の範囲内にあることが好ましい。融点TLは、必要に応じて、138℃以上218℃以下の範囲内や218℃以上250℃以下の範囲内にあってもよい。なお、低融点金属板11を構成する材料の融点は、その材料の液相線温度であってもよい。
【0021】
低融点金属板11の材料は、錫もしくは錫を主成分として含む錫合金であることが好ましい。前記錫合金において、主成分とするとは、前記錫合金の錫の含有量が40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記錫の含有量は、70質量%以上や、80質量%以上であってもよい。前記錫の含有量の上限値は、任意に選択できるが、例えば、99質量%以下や、97質量%以下であってもよい。錫合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金を挙げることができる。
【0022】
高融点金属層12は、低融点金属板11の溶融物に溶解される金属材料からなる層である。低融点金属板11の材料が錫もしくは錫合金である場合、高融点金属層12の材料は、亜鉛、アンチモン、アルミニウム、銀、金、銅、ニッケル、コバルト及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属もしくは前記金属を主成分とする合金であることが好ましい。前記合金において、主成分とするとは、前記合金中の前記金属の含有量が40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記金属の含有量は、70質量%以上や、80質量%以上であってもよい。前記金属の含有量の上限値は、任意に選択できるが、例えば、99質量%以下や、97質量%以下であってもよい。前記合金の例としては、リン青銅、銀パラジウム合金、ニッケル鉄合金及びニッケル-コバルト合金を挙げることができる。高融点金属層12の材料は、平常時のヒューズエレメント10の電気伝導性を高くする観点から、銅、銅合金、銀及び銀合金のいずれかであることが好ましい。
【0023】
高融点金属層12は、この層を構成する材料の融点THが、低融点金属板11を構成する材料の融点TLに対して100℃以上高いことが好ましい。すなわち高融点金属層12の融点は、低融点金属板11に対して100℃以上高いことが好ましい。融点THと融点TLとの差(融点TH-融点TL)は、500℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることが特に好ましい。融点THと融点TLとの差は、1500℃以下であってもよい。また、融点THは、400℃以上1700℃以下の範囲内にあることが好ましい。融点THは、必要に応じて、400℃以上600℃以下の範囲内や、600℃以上1000℃以下の範囲内や、1000℃以上1600℃以下の範囲内にあってもよい。
【0024】
本実施形態のヒューズエレメント10は、例えば、低融点金属板11の表面を、高融点金属層12を構成する高融点金属で被覆することにより製造することができる。低融点金属板11を高融点金属で被覆する方法としては、電解めっき法を用いることができる。電解めっき法を用いることによって、長尺状の低融点金属板を長手方向に連続的にめっき槽に搬送することによって、高融点金属で被覆された被覆低融点金属板を連続的に得ることができる。また、電解めっき法によって得られる被覆低融点金属板では、低融点金属板のエッジ部分、すなわち、長尺状の低融点金属板の幅方向の側面部分において電界強度が相対的に強まり、高融点金属層12が厚くめっきされる。これにより、側面部分の高融点金属層が主面部分の高融点金属層よりも厚さが厚い長尺状の被覆低融点金属板が得られる。得られた長尺状の被覆低融点金属板を所定の長さで切断し、得られた被覆低融点金属板片の側面部分に欠損部13を形成することによって、本実施形態のヒューズエレメント10が生成する。なお、被覆低融点金属板の切断と欠損部13の形成は同時に行ってもよいし、欠損部13の形成を行った後、被覆低融点金属板の切断を行ってもよい。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態のヒューズエレメント10は、低融点金属板11の第1主面11a及び第2主面11bにはそれぞれ、第1高融点金属層12a、12bが積層され、第1側面11c及び第2側面11dにはそれぞれ、第2高融点金属層12c、12dが積層されている。このため、ヒューズエレメント10は、第1側面11cと第2側面11dが通電方向に沿う方向に延びるように配置することによって、通電方向に対する幅を広くしてもリフロー時に低融点金属板11が溶融して変形することが起こりにくくなり、リフロー後の形状が安定する。また、第2高融点金属層12c、12dは、欠損部13を有する。これにより、過電流の発生などの異常時には、第2高融点金属層12c、12dが欠損部13により予め分断されていることからそれらの溶け残りによる溶断時間の遅延を防止することができる。
【0026】
本実施形態のヒューズエレメント10において、第2高融点金属層12c、12dの厚さTc、Tdが第1高融点金属層12a、12bの厚さTa、Tbよりも厚い場合は、ヒューズエレメント10の強度がより向上するので、リフロー後の形状がより安定する。
【0027】
本実施形態のヒューズエレメント10において、低融点金属板11を構成する材料の融点が138℃以上250℃以下の範囲内にある場合は、過電流の発生などの異常時には、低融点金属板11の溶融物が生成しやすくなるので、異常時の溶断速度がより速くなる。また、第1高融点金属層12a、12b及び第2高融点金属層12c、12dを構成する材料の融点が低融点金属板11を構成する材料の融点に対して100℃以上高い場合は、リフロー時に第1高融点金属層12a、12b及び第2高融点金属層12c、12dが溶融しにくくなるので、リフロー後の形状がさらに安定する。
【0028】
本実施形態のヒューズエレメント10において、第2高融点金属層12c、12dの厚さTc、Tdが4μm以上40μm以下の範囲内にあり、第1高融点金属層12a、12bの厚さTa、Tbが3μm以上30μm以下の範囲内にある場合は、リフロー後の形状の安定性と、異常時の溶断速度とがバランスよく向上する。
【0029】
本実施形態のヒューズエレメント10において、低融点金属板11の第3側面11e及び第4側面11fは高融点金属層が積層されていないが、低融点金属板11の第3側面11e及び第4側面11fに高融点金属層を積層してもよい。この場合、第3側面11e及び第4側面11fに積層する高融点金属層の厚さは特に制限はなく、第2高融点金属層12c、12dの厚さTc、Tdよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。
【0030】
本実施形態のヒューズエレメント10は、表面にフラックスを塗布してもよい。フラックスを塗布することによって、ヒューズエレメント10の酸化が防止される。このため、ヒューズエレメント10とヒューズ素子や保護素子の電極あるいは端子とを、はんだ等の接合材料を用いて接続する際に、接合材料に対するヒューズエレメント10の濡れ性が向上する。また、フラックスを塗布することにより、アーク放電によって発生する溶融金属の付着を抑制し、ヒューズエレメント10の溶断後における絶縁性を向上させることができる。
【0031】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒューズ素子の斜視図であり、
図5は、
図4のV-V線断面図である。
【0032】
本実施形態のヒューズ素子20は、
図4、
図5に示すように、絶縁基板21と、絶縁基板21の対向する一対の端部に配置された第1の電極22及び第2の電極23と、第1の電極22と第2の電極23とを電気的に接続するヒューズエレメント10を備える。ヒューズ素子20は、ヒューズエレメント10を介して第1の電極22と第2の電極23との間を電流が流れる。ヒューズエレメント10は、低融点金属板11の第1側面11c及び第2側面11dが、ヒューズ素子20の電流が流れる方向(通電方向)に沿う方向に延びるように配置されている。すなわち、ヒューズエレメント10の第2高融点金属層12c、12dは、一方の端部が第1の電極22と接続し、他方の端部が第2の電極23と接続するように配置されている。
【0033】
絶縁基板21は、電気絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、樹脂基板、セラミックス基板、樹脂とセラミックスとの複合体基板など、回路基板として用いられている公知の絶縁基板を用いることができる。樹脂基板の例としては、エポキシ樹脂基板、フェノール樹脂基板、ポリイミド基板を挙げることができる。セラミックス基板の例としては、アルミナ基板、ガラスセラミックス基板、ムライト基板、ジルコニア基板を挙げることができる。複合体基板の例としては、ガラスエポキシ基板を挙げることができる。
【0034】
第1の電極22は、絶縁基板21の上面21aに形成された上面電極22a、絶縁基板21の下面21b形成された下面電極22b、上面電極22aと下面電極22bとを接続するキャスタレーション22cを有する。上面電極22aと下面電極22bとの接続は、キャスタレーションに限定されず、スルーホールで行ってもよい。第2の電極23も同様に、上面電極23a、下面電極23b、キャスタレーション23cを有する。第1の電極22及び第2の電極23は、それぞれ銀配線や銅配線などの導電パターンによって形成されている。第1の電極22及び第2の電極23の表面は、酸化などによる電極特性の変質を抑制するための電極保護層で被覆されていてもよい。電極保護層の材料としては、例えば、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜等を用いることができる。
【0035】
ヒューズエレメント10は、第1の電極22及び第2の電極23と、はんだ等の接合材料24を介して電気的に接続されている。第1の電極22の上面電極22a及び第2の電極23の上面電極23aには、絶縁ダム25が接合材料24に沿って設けられている。この絶縁ダム25により、接合材料24が溶融して外部に流出することが防止されている。さらに、絶縁ダム25により、ヒューズ素子20の回路基板搭載時に用いるはんだ等の接合材料のヒューズエレメントへの流れ込みも防止することができる。
【0036】
ヒューズ素子20は、カバー部材が取り付けられていてもよい。カバー部材を取り付けることによって、ヒューズ素子20の内部を保護するとともに、ヒューズエレメント10が溶断する際に発生する溶融物の飛散を防止することができる。カバー部材の材料としては、各種エンジニアリングプラスチック、及びセラミックスを用いることができる。
【0037】
ヒューズ素子20は、第1の電極22及び第2の電極23を介して、回路基板の電流経路上に実装される。回路基板の電流経路上に定格以下の電流が流れている間は、ヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント10の低融点金属板11は溶融しない。一方、回路基板の電流経路上に定格を超える過電流が通電されると、ヒューズエレメント10の低融点金属板11が発熱して溶融する。こうして生成した溶融物によって、第1高融点金属層12a、12bが溶解し、第2高融点金属層12c、12dの欠損部13を起点として、第2高融点金属層12c、12dが分断することによって、ヒューズエレメント10が溶断される。そして、ヒューズエレメント10が溶断されることにより、第1の電極22と第2の電極23との間が断線して、回路基板の電流経路が遮断される。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態のヒューズ素子20は、ヒューズエレメントとして上述のヒューズエレメント10を用い、ヒューズエレメント10の低融点金属板11の第1側面11c及び第2側面11dに積層された第2高融点金属層12c、12dが、ヒューズ素子20の電流が流れる方向(通電方向)に沿う方向に延びるように配置されている。これにより、ヒューズ素子20を製造する際のリフロー時には、第2高融点金属層12c、12dが低融点金属板11を支持するため、低融点金属板11が溶融して変形することが起こりにくくなり、リフロー後のヒューズエレメント10の形状が安定する。また、過電流の発生時には、第2高融点金属層12c、12dが欠損部13により予め分断されていることからそれらの溶け残りによる溶断時間の遅延を防止することができる。
【0039】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態に係るヒューズ素子の分解斜視図であり、
図7は、
図6のVII-VII線断面図である。
【0040】
本実施形態のヒューズ素子30は、
図6、
図7に示すように、下ケース31、上ケース32、第1の端子33、第2の端子34、第1の端子33と第2の端子34とを電気的に接続するヒューズエレメント10aを備える。ヒューズ素子30は、ヒューズエレメント10aを介して第1の端子33と第2の端子34との間を電流が流れる。ヒューズエレメント10aは、低融点金属板11の第1側面11c及び第2側面11dが、ヒューズ素子20の電流が流れる方向(通電方向)に沿う方向に延びるように配置されている。すなわち、ヒューズエレメント10の第2高融点金属層12c、12dは、一方の端部が第1の端子33と接続し、他方の端部が第2の端子34と接続するように配置されている。
【0041】
下ケース31及び上ケース32は、電気絶縁性を有するものであれば、その材料は特に制限はなく、樹脂、セラミックス、樹脂とセラミックスとの複合体などを用いることができる。樹脂は、ガラス転移温度の高いものであることが好ましい。ガラス転移温度が高い樹脂としては、耐トラッキング性が高いため、ナイロン系樹脂を用いることが好ましい。ナイロン系樹脂の中でも、特に、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tを用いることが好ましい。
【0042】
第1の端子33は、外部端子孔33aを備えている。また、第2の端子34は、外部端子孔34aを備えている。第1の端子33及び第2の端子34の材料としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどを用いることができる。第1の端子33及び第2の端子34の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1の端子33及び第2の端子34の材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
ヒューズエレメント10aは、欠損部13aが、第2高融点金属層12c、12dにそれぞれ1個設けられている。また、欠損部13aの形状が台形とされている。
【0044】
ヒューズ素子30は、第1の端子33及び第2の端子34を介して、回路基板の電流経路上に実装される。回路基板の電流経路上に定格以下の電流が流れている間は、ヒューズ素子30に備えられているヒューズエレメント10aの低融点金属板は溶融しない。一方、回路基板の電流経路上に定格を超える過電流が通電されると、ヒューズエレメント10aの低融点金属板11が発熱して溶融する。こうして生成した溶融物によって、第1高融点金属層12a、12bが溶解し、第2高融点金属層12c、12dの欠損部13aを起点として、第2高融点金属層12c、12dが分断することにより、ヒューズエレメント10aが溶断される。そして、ヒューズエレメント10aが溶断されることによって、第1の端子33と第2の端子34との間が断線して、回路基板の電流経路が遮断される。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態のヒューズ素子30は、ヒューズエレメントとして上述のヒューズエレメント10aを用い、そのヒューズエレメント10aの第2高融点金属層12c、12dが、ヒューズ素子30の電流が流れる方向(通電方向)に沿う方向に延びるように配置されている。これにより、ヒューズ素子30を製造する際のリフロー時には、第2高融点金属層12c、12dが低融点金属板11を支持するため、低融点金属板11が溶融して変形することが起こりにくくなり、リフロー後のヒューズエレメント10aの形状が安定する。また、過電流の発生時には、第2高融点金属層12c、12dが欠損部13により予め分断されていることからそれらの溶け残りによる溶断時間の遅延を防止することができる。
【0046】
[第4実施形態]
図8は、本発明の第4実施形態に係る保護素子の分解斜視図であり、
図9は、
図8のIX-IX線断面図であり、
図10は、
図8のX-X線断面図である。本実施形態の保護素子40は、
図8~
図10に示すように、絶縁基板21と、絶縁基板21の対向する一対の端部に配置された第1の電極22及び第2の電極23と、第1の電極22と第2の電極23とを電気的に接続するヒューズエレメント10を備える。絶縁基板21、第1の電極22、第2の電極23及びヒューズエレメント10は、前述のヒューズ素子20と同じであるので、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
保護素子40は、さらに第3の電極41と、第3の電極41と接続する発熱体42と、発熱体42を被覆する絶縁部材43と、第4の電極44とを備える。第4の電極44は、一端が発熱体42と接続し、かつ接合材料45を介してヒューズエレメント10の第2主面11bに積層された第1高融点金属層12bと接続している。
【0048】
第3の電極41は、回路基板に過電流の発生以外の異常が発生したときに電流が供給されるようにされている。第3の電極41は、絶縁基板21の上面21aに形成された上面電極41a、絶縁基板21の下面21bに形成された下面電極41b、上面電極41aと下面電極41bとを接続するキャスタレーション41cを有する。上面電極41aと下面電極41bとの接続は、キャスタレーションに限定されず、スルーホールで行ってもよい。第3の電極41は、銀配線や銅配線などの導電パターンによって形成されている。第3の電極41の表面は、酸化などによる電極特性の変質を抑制するための電極保護層で被覆されていてもよい。電極保護層の材料としては、例えば、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜等を用いることができる。
【0049】
発熱体42は、比較的抵抗が高く、通電により発熱する高抵抗導電性材料から形成されている。高抵抗導電性材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む合金、組成物又は化合物の粉状体を用いることができる。発熱体42は、例えば、高抵抗導電性材料と樹脂バインダ等とを混合してペースト状にしたものを用意し、これを絶縁基板21の上面21aにスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する方法等によって形成することができる。
【0050】
絶縁部材43の材料としては、例えば、ガラスを用いることができる。第4の電極44は、絶縁部材43を介して、発熱体42と対向するように配置されている。接合材料45としては、例えば、はんだが用いられる。この配置により、発熱体42は、絶縁部材43、第4の電極44、接合材料45を介して、ヒューズエレメント10と、重畳される。このような重畳構造とすることによって、発熱体42にて発生した熱を、狭い範囲で、効率よく、ヒューズエレメント10に伝えることができる。
【0051】
保護素子40は、カバー部材が取り付けられていてもよい。カバー部材を取り付けることによって、保護素子40の内部を保護するとともに、ヒューズエレメント10が溶断する際に発生する溶融物の飛散を防止することができる。カバー部材の材料としては、各種エンジニアリングプラスチック、及びセラミックスを用いることができる。
【0052】
保護素子40は、第1の電極22及び第2の電極23を介して、回路基板の電流経路上に実装される。回路基板の電流経路上に定格以下の電流が流れている間は、保護素子40に備えられているヒューズエレメント10の低融点金属板11は溶融しない。一方、回路基板の電流経路上に定格を超える過電流が通電されると、ヒューズエレメント10の低融点金属板11が発熱して溶融する。こうして生成した溶融物によって第1高融点金属層12a、12bが溶解し、第2高融点金属層12c、12dの欠損部13を起点として、第2高融点金属層12c、12dが分断することにより、ヒューズエレメント10が溶断される。そして、ヒューズエレメント10が溶断されることによって、第1の電極22と第2の電極23との間が断線され、回路基板の電流経路が遮断される。
【0053】
また、保護素子40は、回路基板に異常が発生すると、回路基板に備えられた電流制御素子によって、第3の電極41を介して発熱体42が通電される。この通電により、発熱体42が発熱する。そして、その熱が、絶縁部材43、第4の電極44及び接合材料45を介して、ヒューズエレメント10に伝えられる。この熱によって、ヒューズエレメント10の低融点金属板11が溶融して溶融物が生成する。こうして生成した溶融物によって第1高融点金属層12a、12bが溶解し、第2高融点金属層12c、12dの欠損部13を起点として、第2高融点金属層12c、12dが分断することにより、ヒューズエレメント10が溶断される。そして、ヒューズエレメント10が溶断されることによって、第1の電極22と第2の電極23との間が断線され、回路基板の電流経路が遮断される。
【0054】
以上のような構成とされた本発明の第4実施形態に係る保護素子40は、ヒューズエレメントとして上述のヒューズエレメント10を用い、そのヒューズエレメント10の第2高融点金属層12c、12dが、ヒューズ素子20の電流が流れる方向(通電方向)に沿う方向に延びるように配置されている。これにより、保護素子40を製造する際のリフロー時には、第2高融点金属層12c、12dが低融点金属板11を支持するため、低融点金属板11が溶融して変形することが起こりにくくなり、リフロー後のヒューズエレメント10の形状が安定する。また、過電流の発生時などの異常時には、第2高融点金属層12c、12dが欠損部13により予め分断されていることからそれらの溶け残りによる溶断時間の遅延を防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
10、10a ヒューズエレメント
11 低融点金属板
11a 第1主面
11b 第2主面
11c 第1側面
11d 第2側面
11e 第3側面
11f 第4側面
12a、12b 第1高融点金属層
12c、12d 第2高融点金属層
13、13a 欠損部
21 絶縁基板
22 第1の電極
22a 上面電極
22b 下面電極
22c キャスタレーション
23 第2の電極
23a 上面電極
23b 下面電極
23c キャスタレーション
24 接合材料
25 絶縁ダム
30 ヒューズ素子
31 下ケース
32 上ケース
33 第1の端子
33a 外部端子孔
34 第2の端子
34a 外部端子孔
40 保護素子
41 第3の電極
41a 上面電極
41b 下面電極
41c キャスタレーション
42 発熱体
43 絶縁部材
44 第4の電極
45 接合材料