(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】位置制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20240710BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20240710BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20240710BHJP
【FI】
G05D3/12 305Z
G05B19/404 G
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2021039688
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 郁弥
(72)【発明者】
【氏名】宮路 匡
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002474(JP,A)
【文献】特開2016-224495(JP,A)
【文献】特開平05-040521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/12
G05B 19/404
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置からの位置指令値に従ってモータを駆動し、前記モータによって駆動される駆動部と前記駆動部により駆動される被駆動部とから構成される可動部の位置を制御する位置制御装置であって、
少なくとも前記位置指令値と位置補償量とに基づいて速度指令値を出力する速度指令出力部と、
前記速度指令値と前記可動部の速度検出値との偏差を比例積分増幅した値と、トルク補償量と、に基づいてフィードバックトルクを出力するフィードバックトルク出力部と、
前記フィードバックトルクに基づいてトルク指令値を出力するトルク指令値出力部と、
前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記位置指令値が方向反転するタイミングを位置補償入りタイミングとして、前記駆動部と前記被駆動部の間のバックラッシが詰まるタイミングを位置補償切りタイミングとして、それぞれ検出する位置補償タイミング検出部と、
前記位置補償入りタイミングから前記位置補償切りタイミングまでの期間、前記位置指令値に基づいて前記位置補償量を出力する位置補償量出力部と、
前記駆動部から前記被駆動部へのトルクの伝達が開始されたタイミングをトルク伝達タイミングとして検出するトルク伝達タイミング検出部と、
前記トルク伝達タイミングから現在までの前記位置指令値上での移動距離である伝達開始後移動距離に基づいて、前記トルク補償量を出力するトルク補償量出力部と、
を備える、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
前記トルク伝達タイミングと、前記位置補償切りタイミングと、は互いに同じタイミングである、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
前記位置補償タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償入りタイミングにおける前記位置指令値との差分値である位置偏差と
、バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記位置補償切りタイミングを検出する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
トルク伝達タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償入りタイミングにおける前記位置指令値との差分値である位置偏差と、バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記トルク伝達タイミングを検出する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
前記位置補償タイミング検出部は、前記位置指令値と前記位置補償量とに基づいて、前記位置補償入りタイミングから現在までの前記駆動部の移動量の推定値である反転後駆動部移動量推定値を算出し、前記反転後駆動部移動量推定値と
、バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記位置補償切りタイミングを検出する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
トルク伝達タイミング検出部は、前記位置指令値と前記位置補償量とに基づいて、前記位置指令値が方向反転してから現在までの前記駆動部の移動量の推定値である反転後駆動部移動量推定値を算出し、前記反転後駆動部移動量推定値
とバックラッシ量との比較結果に基づいて、前記トルク伝達タイミングを検出する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の位置制御装置であって、
前記トルク伝達タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償量との加算値から前記位置指令値が方向反転したタイミングにおける前記位置指令値を減算した値を位置偏差推定値として算出し、前記位置偏差推定値を前記速度指令出力部に適用して得られる速度指令を速度指令推定値として算出し、前記速度指令推定値の積分値を前記反転後駆動部移動量推定値として算出する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の位置制御装置であって、
前記トルク補償量出力部は、
前記被駆動部が動き出すタイミングにおける前記フィードバックトルクの絶対値を、前記トルク伝達タイミングから前記被駆動部が動き出すタイミングまでの前記位置指令値上での移動距離で、除した値を相関係数として算出する相関係数構成器と、
前記伝達開始後移動距離と前記相関係数とに基づいて前記トルク補償量を算出する、トルク補償量演算部と、
を備える、ことを特徴とする位置制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等における位置制御装置、特に送り軸の運動方向反転時の追従遅れを補償する位置制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機構を有する工作機械の送り軸で運動方向が反転する際、バックラッシや被駆動部に作用する摺動抵抗に起因した追従遅れが生じる。これまで、これらの追従遅れを補償するために以下の試みがなされてきた。
【0003】
図9は、バックラッシ補償機能を有する従来の位置制御装置の一例を示すブロック図である。
図9において、上位装置(図示しない)から指令された位置指令値Prは、位置補償量Padと、加算器16で加算され、位置指令値Pcとなる。ここで、位置補償タイミング検出器14は位置指令値Prと対象プラント12内の駆動部あるいは被駆動部に取り付けられた位置検出器の位置検出値Pdとからバックラッシ補償の入り切りを判断し、判断結果を位置補償量出力器13に出力する。位置補償量出力器13は、位置補償タイミング検出器14の判断結果に従い位置補償量Padを出力する。また、減算器1は位置指令値Pcと、位置検出値Pdとの差分から位置偏差Pdifを算出する。算出された位置偏差Pdifは、速度指令演算器(比例ゲインKp)2で比例増幅された後、位置指令値Prを微分器3で微分して得られる速度フィードフォワードVffが、加算器4によって加算され、速度指令値Vcとなる。次に、速度指令値Vcは、位置検出値Pdを微分して得られる、あるいは対象プラント12内に取り付けられた速度検出器から直接得られる速度検出値Vdとの差分を減算器5で演算した後、トルク指令演算器(比例ゲインPv)6とトルク指令演算器(積分ゲインIv)7でそれぞれ比例増幅、積分増幅され、加算器8で加算され、フィードバックトルクTfbとなる。さらに、フィードバックトルクTfbは、速度フィードフォワードVffを微分器9で微分した後、対象プラント12における可動部のモータ軸換算イナーシャ10を乗じて算出されるトルクフィードフォワードTffと、加算器11で加算され、トルク指令値Tcとなる。対象プラント12は、トルク指令値Tcに相当するトルクを発生する駆動部、例えばモータによって、駆動部が発生するトルクを被駆動部に伝達する変速機構部、例えばボールネジや、ウォームギアとウォームホイールを介して、対象プラント12内に配置された被駆動部を駆動する。
【0004】
次に、バックラッシにより生じる追従遅れに対する従来の補償技術を説明する。上位装置から運動方向が反転するような指令がなされた場合、位置補償タイミング検出器14が位置指令値Prの方向反転を検出し、位置補償量出力器13にバックラッシ補償の開始を指令する。位置補償量出力器13は補償の開始を指令されたタイミングで、変速機構部のバックラッシ量を位置補償量Padとして出力する。また、例えば特許文献1によれば、位置補償タイミング検出器14は、対象プラント12内の被駆動部の位置検出値Pdから駆動部が変速機構部のバックラッシ量以上移動したことを検出し、バックラッシ補償の終了を指令する。以上の補償によって、駆動部がバックラッシ間を移動する間は位置指令値Pcに位置補償量Padが加算され続けるため、バックラッシ補償がない場合と比較して、より高速にバックラッシを詰めることができ、バックラッシにより生じる追従遅れを小さくできる。
【0005】
一方、
図10は、特許文献2に記載の運動方向反転時に摩擦の作用方向が反転することで生じる追従遅れを補償する位置制御装置のブロック図である。
図9で示した従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。
図10において、上位装置(図示しない)から指令された位置指令値Prは、位置制御装置に対する位置指令値となる。
図10に示す従来技術では、相関係数構成器21と補償量出力器22で反転指令後の可動部の追従遅れを抑制する。具体的には、相関係数構成器21で、可動部に作用する摺動抵抗と、可動部に対して運動方向反転指令がなされてから実際に移動を開始するまでの位置指令値上での移動距離との関係を表す相関係数Kを相関情報として出力する。さらに、補償量出力器22は、相関係数構成器21の出力する相関係数Kと運動方向反転指令時のフィードバックトルクTfbと、運動方向反転指令がなされた時点からの位置指令値Pr上の移動距離に基づいてトルク補償量Tadを出力する。以上のトルク補償量Tadによって、摩擦の作用方向が反転することにより生じる追従遅れを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5596093号公報
【文献】特許第6209176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図9に記載のバックラッシ補償技術では、運動方向反転指令時に生じるバックラッシに起因した追従遅れを抑制できるが、被駆動部に摩擦が作用する場合、被駆動部の摩擦方向反転により生じる追従遅れを補償することが出来ないといった課題がある。
【0008】
一方、
図10に記載の位置制御装置では、位置指令値Prの方向が反転したタイミングで補償を開始するため、位置指令値Prの方向反転後、直ちに被駆動部の運動方向が反転し、摩擦の作用方向が変わる駆動系において、効果的に摺動抵抗に起因した追従遅れを抑制できるが、変速部にバックラッシや弾性変形が介在し、位置指令値Prの方向反転後、直ちに被駆動部の運動方向の反転が開始されない場合には、補償量や補償タイミングがミスマッチとなり、適切な補償を印加できないという課題がある。また、
図9に記載のバックラッシ補償技術を併用して、バックラッシを補償した場合、モータの位置がバックラッシ量だけ進められ、補償量の総和は合致するものの、被駆動部に作用する摩擦の作用方向が変わる前に補償が開始されるため、補償量の形状や補償タイミングがミスマッチとなり、位置指令の方向反転直後の特性が過補償になるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、バックラッシに起因する追従遅れ、と、被駆動部の摩擦作用方向の反転に起因する追従遅れ、の2つの追従遅れを補償することができる位置制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示する位置制御装置は、上位装置からの位置指令値に従ってモータを駆動し、前記モータによって駆動される駆動部と前記駆動部により駆動される被駆動部とから構成される可動部の位置を制御する位置制御装置であって、少なくとも前記位置指令値と位置補償量とに基づいて速度指令値を出力する速度指令出力部と、前記速度指令値と前記可動部の速度検出値との偏差を比例積分増幅した値と、トルク補償量と、に基づいてフィードバックトルクを出力するフィードバックトルク出力部と、前記フィードバックトルクに基づいてトルク指令値を出力するトルク指令値出力部と、前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動するモータ駆動部と、前記位置指令値が方向反転するタイミングを位置補償入りタイミングとして、前記駆動部と前記被駆動部の間のバックラッシが詰まるタイミングを位置補償切りタイミングとして、それぞれ検出する位置補償タイミング検出部と、前記位置補償入りタイミングから前記位置補償切りタイミングまでの期間、前記位置指令値に基づいて前記位置補償量を出力する位置補償量出力部と、前記駆動部から前記被駆動部へのトルクの伝達が開始されたタイミングをトルク伝達タイミングとして検出するトルク伝達タイミング検出部と、前記トルク伝達タイミングから現在までの前記位置指令値上での移動距離である伝達開始後移動距離に基づいて、前記トルク補償量を出力するトルク補償量出力部と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
この場合、前記トルク伝達タイミングと、前記位置補償切りタイミングと、は互いに同じタイミングであってもよい。
【0012】
また、前記位置補償タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償入りタイミングにおける前記位置指令値との差分値である位置偏差と、前記基準バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記位置補償切りタイミングを検出してもよい。
【0013】
また、トルク伝達タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償入りタイミングにおける前記位置指令値との差分値である位置偏差と、前記基準バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記トルク伝達タイミングを検出してもよい。
【0014】
また、前記位置補償タイミング検出部は、前記位置指令値と前記位置補償量とに基づいて、前記位置補償切りタイミングから現在までの前記駆動部の移動量の推定値である反転後駆動部移動量推定値を算出し、前記反転後駆動部移動量推定値と、前記基準バックラッシ量と、の比較結果に基づいて、前記位置補償切りタイミングを検出してもよい。
【0015】
また、トルク伝達タイミング検出部は、前記位置指令値と前記位置補償量とに基づいて、前記位置指令値が方向反転してから現在までの前記駆動部の移動量の推定値である反転後駆動部移動量推定値を算出し、前記反転後駆動部移動量推定値と前記基準バックラッシ量との比較結果に基づいて、前記トルク伝達タイミングを検出してもよい。
【0016】
この場合、前記トルク伝達タイミング検出部は、現在の前記位置指令値と前記位置補償量との加算値から前記位置指令値が方向反転したタイミングにおける前記位置指令値を減算した値を位置偏差推定値として算出し、前記位置偏差推定値を前記速度指令出力部に適用して得られる速度指令を速度指令推定値として算出し、前記速度指令推定値の積分値を前記反転後駆動部移動量推定値として算出してもよい。
【0017】
この場合、前記トルク補償量出力部は、前記被駆動部が動き出すタイミングにおける前記フィードバックトルクの絶対値を、前記トルク伝達タイミングから前記被駆動部が動き出すタイミングまでの前記位置指令値上での移動距離で、除した値を相関係数として算出する相関係数構成器と、前記伝達開始後移動距離と前記相関係数とに基づいて前記トルク補償量を算出する、トルク補償量演算部と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明による位置制御装置によれば、バックラッシに起因する追従遅れと、被駆動部の摩擦作用方向の反転に起因する追従遅れの両者が発生する駆動系において、効果的に追従遅れを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の適用有無による時間応答の違いを示した図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における位置補償タイミング検出器の詳細を示すブロック図である。
【
図4】本発明の位置補償量出力器の詳細を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるトルク伝達タイミング検出器の詳細を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態における位置補償タイミング検出器の詳細を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態におけるトルク伝達タイミング検出器の詳細を示すブロック図である。
【
図9】送り軸のバックラッシ補償機能を有する従来技術を示すブロック図である。
【
図10】送り軸の摩擦補償機能を有する従来技術を示すブロック図である。
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。なお、本実施例では、位置検出値Pdは対象プラント12内の被駆動部の位置検出値、位置検出値Pmは対象プラント12内の駆動部の位置検出値、速度検出値Vdは位置検出値Pmを微分して得られる、あるいは対象プラント12内の駆動部速度を検出する速度検出器から直接得られる速度検出値として説明する。
【0022】
位置補償タイミング検出器31は、バックラッシに起因する追従遅れを補償するための位置補償の開始タイミングおよび終了タイミングを、位置補償入りタイミングおよび位置補償切りタイミングとして検出する。
図3は、位置補償タイミング検出器31の詳細を示した図である。反転検出器311は、位置指令値Prの指令方向の反転を検出する。位置検出値保持器312は、反転検出器311が位置指令値Prの方向反転を検出した時刻0での駆動部の位置検出値Pm(0)を、反転検出器311が新たに位置指令値Prの方向反転を検出するまで継続して出力する。減算器313は現時刻における駆動部の位置検出値Pmから、位置検出値保持器312が出力する駆動部の位置検出値Pm(0)を減算した結果を出力する。位置補償タイミング出力器314は、反転検出器311が位置指令値Prの指令方向の反転を検出した時点を位置補償入りタイミングとして検出する。また、位置補償タイミング出力器314は、減算器313の出力が予め設定された可動部のバックラッシ量B以上となった時点、すなわち、バックラッシが詰まったタイミングを位置補償切りタイミングとして検出する。位置補償タイミング出力器314は、これらの検出結果Rposを位置補償量出力器32に出力する。
【0023】
また、位置補償量出力器32は、位置補償入りタイミングから位置補償切りタイミングまでの期間、位置補償量を出力する。
図4は、位置補償量出力器32の詳細を示した図である。指令増減方向検出器321は直前の位置指令値Prに対して現在の位置指令値Prが、増加方向の時は+1を、減少方向の時は-1を、変化しない時は0を指令増減方向検出値Sgnとして出力する。位置補償量演算器322は、位置補償タイミング検出器31が出力する検出結果Rposに基づき、位置補償入りタイミングを検出してから位置補償切りタイミングを検出するまでの間、予め設定された可動部のバックラッシ量Bと指令増減方向検出値Sgnとから式1に従い位置補償量Padを出力する。また、位置検出値Pdは、対象プラント12内の被駆動部の位置検出値なので、駆動部がバックラッシ間を移動する間以外では、位置指令値Prと位置検出値Pdの間に位置補償量Pad分だけ偏差が発生する。そのため、位置補償切りタイミングを検出した時点から、新たに位置補償入りタイミングを検出するまでの間、位置補償量Pad=0を出力することで、位置指令値Prと位置検出値Pdの間で偏差が発生しないよう制御される。
Pad=B×Sgn ・・・式1
【0024】
また、トルク伝達タイミング検出器41は、バックラッシが詰まって、駆動部が被駆動部に接触し、駆動部から被駆動部へのトルクの伝達が開始されるタイミングをトルク伝達タイミングとして検出する。
図5は、トルク伝達タイミング検出器41の詳細を示した図である。反転検出器411は、位置指令値Prの指令方向の反転を検出する。位置検出値保持器412は、反転検出器411が位置指令値Prの方向反転を検出した時刻0での駆動部の位置検出値Pm(0)を、反転検出器411が新たに位置指令値Prの方向反転を検出するまで継続して出力する。減算器413は現時刻における駆動部の位置検出値Pmから、位置検出値保持器412が出力する駆動部の位置検出値Pm(0)を減算した結果を出力する。トルク伝達タイミング出力器414は、減算器413の出力が予め設定された可動部のバックラッシ量B以上となった時点を、駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始したタイミング、すなわち、トルク伝達タイミングとして検出し、相関係数構成器42、トルク補償量演算器43に検出結果Rtrqを出力する。
【0025】
トルク補償量出力部44は、トルク補償量Tadを出力するもので、相関係数構成器42とトルク補償量演算器43とを有する。相関係数構成器42は、まず、トルク伝達タイミング検出器41が出力する検出結果Rtrqを基に、駆動部から被駆動部へのトルク伝達の開始を検出した時刻T1での位置指令値Pr(T1)を取得する。次に、フィードバックトルクTfbが摺動抵抗に逆らって動くためのトルクを出力し、被駆動部が実際に移動を開始した時刻T2を検出する。なお、
図1中には図示していないが、時刻T2の検出は、フィードバックトルクTfbの変曲点を検出する、あるいは、位置偏差Pdifの最大値更新タイミングを検出することで実現できる。時刻T2を検出したタイミングで、位置指令値Pr(T2)およびフィードバックトルクTfb(T2)を検出する。相関係数構成器42は、これら検出した3つの値を用いて、式2に従い、駆動部から被駆動部へのトルク伝達が開始してから、実際に被駆動部が移動を開始するまでの上位位置指令値上での移動距離と、被駆動部に作用する摺動抵抗に打ち勝ち実際に被駆動部が移動を開始する際に必要なフィードバックトルクとの相関係数Kを算出する。なお、式2に基づく相関係数Kの算出は、上位位置指令値の指令方向が反転する都度、相関係数構成器42によって実施される。
K=|Tfb(T2)|/(Pr(T2)-Pr(T1)) ・・・式2
【0026】
次に、トルク補償量演算器43は、トルク伝達タイミング検出器41が出力する検出結果Rtrqを基に、駆動部から被駆動部へのトルク伝達の開始を検出した時刻T1でのフィードバックトルクTfb(T1)を取得する。その後、フィードバックトルクTfb(T1)と相関係数構成器42の出力する相関係数Kとから、式3に従い補償量遷移距離Dtrを算出する。併せて、式4に従い、時刻T1から、現時刻tまでの位置指令値Pr上での移動距離である伝達開始後移動距離D(t)を算出する。D(t)が補償量遷移距離Dtrに達する時刻をtaとした場合、時刻T1から時刻taまでの期間は、トルク補償量演算器43は、式5に従いトルク補償量Tad(t)を出力する。時刻ta以降、トルク補償量演算器43は、時刻taでのトルク補償量Tad(t)=K×D(ta)を継続して出力する。そして、トルク補償量Tadは、加算器17で加算器8の出力に加算され、フィードバックトルクTfbを構成する。なお、位置指令値Prの初回指令方向反転においては、相関係数構成器42は、相関係数Kを未算出であるため、初回指令方向反転時のトルク補償量Tadは0となるが、適宜、相関係数Kの初期値、トルク補償量Tadの初期値を具備することも可能である。
Dtr=|Tfb(T1)|/K ・・・式3
D(t)=Pr(t)-Pr(T1) ・・・式4
Tad(t)=K×D(t) ・・・式5
【0027】
次に、本手法により追従遅れが低減する様子を、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の適用有無による、位置指令値Pc、駆動部の位置検出値Pm、減算器1の出力する位置偏差Pdif、フィードバックトルクTfb、位置指令値Prと被駆動部の位置検出値Pdの差分Pr-Pdの時間応答特性を示した図である。なお、補償を適用しない場合の駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始した時刻をT1bef、被駆動部が実際に移動を開始した時刻をT2bef、補償を適用した場合の駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始した時刻をT1、被駆動部が実際に移動を開始した時刻をT2とする。また、ここでは、位置指令値Prが指令方向反転後、二次関数上に増加する場合を例に説明する。
【0028】
まず、補償を適用していない場合の時刻応答波形を
図2に破線で示す。位置指令値Prが方向反転した時刻0から、駆動部がバックラッシ間を移動する時刻T1befまでの間は、位置指令値Pr、位置指令値Pcに追従するよう駆動部の位置検出値Pmが変化する。一方、駆動部から被駆動部へは、トルクが伝達されない状態となるため、被駆動部位置Pdは、停止状態となる。結果、位置偏差Pdif、及び差分Pr-Pdは位置指令値Prと同様に二次関数状に増加する。また、この時、フィードバックトルクTfbは、速度フィードフォワードVffの作用と、発生した位置偏差Pdifが速度指令演算器(比例ゲインKp)2で比例増幅される作用によって、緩やかに増加する。
【0029】
次に、駆動部がバックラッシ間を移動し、駆動部から被駆動部へのトルク伝達が開始される時刻T1befから、フィードバックトルクTfbが摺動抵抗に逆らって動くためのトルクを出力し、被駆動部が実際に移動を開始する時刻T2befまでの応答について説明する。駆動部と被駆動部の間のバックラッシが詰められたことにより、駆動部と被駆動部は一体となって動作しようとする。仮に被駆動部に作用する摺動抵抗が存在しない場合は、位置偏差Pdifおよび差分Pr-Pdは時刻T1bef以降、一点鎖線のように減少する。しかし、被駆動部に作用する摺動抵抗が存在する場合には、それに逆らって動くためのフィードバックトルクTfbは出力されていないため、駆動部の位置検出値Pm、被駆動部の位置検出値Pdともに停止状態となる。結果、位置偏差Pdif、及び差分Pr-Pdは位置指令値Prと同様に二次関数状に増加する状態を継続する。また、位置偏差Pdifの増加に伴い、フィードバックトルクTfbも増加を継続する。なお、駆動部・被駆動部間のトルクの伝達が開始されるため、弾性変形などが作用する状況下では、僅かに駆動部・被駆動部の位置が進められる状態となり、位置偏差Pdif、及び差分Pr-Pdの増加が緩和される場合も存在する。また、位置指令値Prの変化が小さく、弾性変形量を下回る場合には、位置偏差Pdif、及び差分Pr-Pdが僅かに減少する場合も存在する。いずれの場合も、その後、フィードバックトルクTfbが被駆動部に作用する摺動抵抗に逆らうだけの出力に達した時刻T2befで、駆動部と被駆動部はともに移動を開始する。結果、時刻T2bef以降、位置偏差Pdif、及び差分Pr-Pdは減少に転じる。
【0030】
一方、補償を適用した場合の時刻応答波形を
図2に実線で示す。なお、ここでは位置指令値Prの指令方向反転が1回以上実施され、相関係数Kは算出済みとする。まず、位置指令値Prが方向反転した時刻0から、駆動部がバックラッシ間を移動する時刻T1までの応答について説明する。位置補償タイミング検出器31は、時刻0で上位位置指令値の方向反転を検出し、位置補償入りを位置補償量出力器32に出力する。それに応じて、位置補償量出力器32は位置補償量Padを出力するので、位置指令値Pcは位置補償量Pad分だけ増加する。駆動部がバックラッシ間を移動する間は、位置指令値Pcに追従するよう駆動部の位置検出値Pmが変化する。一方、駆動部から被駆動部へはトルクが伝達されない状態となるため、被駆動部位置Pdは停止状態となる。結果、時刻T1までは位置偏差Pdifは位置指令値Pcと同様に増加し、差分Pr-Pdは位置指令値Prと同様に二次関数状に増加する。また、位置偏差Pdifが位置補償量Pad分だけ増加したことに伴い、速度指令値Vc(図示しない)、フィードバックトルクTfbが増加した状態となる。更に、駆動部の位置検出値Pmが駆動部と被駆動部の間のバックラッシ相当量Bに達する時間が短縮され、駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始した時刻(=バックラッシ間を移動した時刻)がT1befからT1に短縮される。
【0031】
次に、駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始した時刻T1から、フィードバックトルクTfbが摺動抵抗に逆らって動くためのトルクを出力し、可動部が実際に移動を開始する時刻T2までの応答について説明する。位置補償タイミング検出器31は、位置指令値Prの方向反転後の位置検出値Pmの移動量が、予め設定したバックラッシ量B以上となったことを検出し、位置補償切りタイミングを位置補償量出力器32に出力する。その結果、時刻T1から次回の指令方向反転までの間は、位置補償量出力器32は位置補償量Pad=0を出力するので、位置指令値Pcは位置指令値Prと同じ二次関数となる。また、トルク伝達タイミング検出器41は、位置指令値Prの方向反転後の位置検出値Pmの移動量が、予め設定したバックラッシ量B以上となったことを検出し、駆動部から被駆動部へのトルク伝達を開始したことをトルク補償量演算器43に出力する。その結果、トルク補償量演算器43はトルク補償量Tadの出力を開始する。よって、トルク補償量Tadの分だけフィードバックトルクは増加するので、被駆動部に作用する摺動抵抗に逆らうだけのフィードバックトルクTfbが出力されるまでに要する時間が短縮され、可動部は時刻T2で移動を開始する。結果、被駆動部位置Pdの停止状態は速やかに解消されるようになり、差分Pr-Pdの最大値は大きく低減される。
【0032】
以上のように、本発明による位置制御装置によれば、バックラッシに起因する追従遅れと、被駆動部の摩擦作用方向の反転に起因する追従遅れの両者が発生する駆動系において、効果的に追従遅れを小さくすることができる。
【0033】
なお、本発明で利用する位置補償量の算出は式1に限定されるものではない。例えば、予め設定された可動部のバックラッシ量Bと指令増減方向検出値Sgnと位置指令値Prの方向反転からの経過時間tとから、式6によって算出するなど、適宜変更可能である。
Pad=Sgn×B×t ・・・式6
【0034】
また、反転検出器411、位置検出値保持器412、減算器413の動作は、反転検出器311、位置検出値保持器312、減算器313と同様であるから、位置補償タイミング検出器31とトルク伝達タイミング検出器41との間で、これらの演算器を共有することも可能である。
【実施例2】
【0035】
図6は、本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。従来例、及び実施例1と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。
【0036】
本実施例では、実施例1に対し、位置補償タイミング検出器31が位置補償タイミング検出器51に、トルク伝達タイミング検出器41がトルク伝達タイミング検出器61に改められている点で構成が異なる。
【0037】
実施例1では、位置補償切りタイミングおよびトルク伝達タイミングの検出に、駆動部の位置検出器から得られる位置検出値を用いていた。そのため、経年変化などでバックラッシ量が変化した場合でも適切なタイミングで補償を切り替えることができる。一方、駆動部の位置検出遅れが大きな制御装置では、補償タイミングのズレが大きくなるといった課題を孕んでいる。そこで、本実施例では、位置指令値Prと位置補償量Padとから位置補償切りタイミングおよびトルク伝達タイミングを検出することで、位置検出遅れに伴う補償タイミングのズレを低減するための構成について説明する。具体的には、位置指令値Prと位置補償量Padとから、位置指令値Prの指令方向が反転した時刻0からの駆動部の移動量(以後、反転後駆動部移動量推定値Pmvとする)を推定する。次に、反転後駆動部移動量推定値Pmvと予め設定された可動部のバックラッシ量Bとを比較することで、位置補償切りタイミングおよびトルク伝達タイミングを検出する。
【0038】
まず、反転後駆動部移動量推定値Pmvの推定原理を説明する。位置偏差Pdifは、式7に従い、位置指令値Prと位置補償量Padの和から、位置検出値Pdを減算した値として算出される。駆動部がバックラッシ間以外を移動する際の位置補償量Padは0なので、時刻0での位置検出値Pd(0)は位置指令値Pr(0)と一致する。駆動部がバックラッシ間を移動する間は、駆動部から被駆動部へのトルク伝達は行われない。そのため、被駆動部は停止状態となり駆動部の位置検出値Pdは常にPd(0)を維持する。よって、駆動部がバックラッシ間を移動する間の時刻tにおける位置偏差推定値Pdif′(t)は、式7のPd(t)をPr(0)に置換した式8に従い推定できる。また、速度指令値Vcは、位置偏差Pdifが速度指令演算器2の比例ゲインKpで増幅された値と、位置指令値Prを微分した結果との和になる。よって、式9に従い、速度指令値Vcの推定値Vc′(t)を位置偏差推定値Pdif′(t)から推定できる。一方、反転後駆動部移動量推定値Pmvは、位置指令値Prの指令方向が反転した時刻0から、時刻tまでの駆動部の速度検出値Vdを積分することで推定できる。速度制御の応答帯域が十分に確保された状況下では、速度指令値Vcと速度検出値Vdは一致すると見なすことができるので、速度検出値Vdの代わりに速度指令値Vcを時刻0からtまで積分することでも、反転後駆動部移動量推定値Pmvを算出できる。以上から、反転後駆動部移動量推定値Pmvは、速度指令値Vcの推定値Vc′(t)を時刻0からtまで積分することで、式10に従い推定できる。
Pdif(t)=Pr(t)+Pad(t)-Pd(t) ・・・式7
Pdif′(t)=Pr(t)+Pad(t)-Pr(0) ・・・式8
Vc′(t)=Kp×Pdif′(t)+(d/dt)Pr(t) ・・・式9
【0039】
【0040】
位置補償タイミング検出器51は、位置指令値Prと位置補償量Padとから式10に従い算出した反転後駆動部移動量推定値Pmvと予め設定された可動部のバックラッシ量Bを比較することで、位置補償タイミングを検出する。
図7は、位置補償タイミング検出器51の詳細を示した図である。反転検出器511は位置指令値Prの指令方向の反転を検出する。位置検出値保持器512は、反転検出器511が位置指令値Prの方向反転を検出した時刻0での位置指令値Pr(0)を、反転検出器511が新たに位置指令値Prの方向反転を検出するまで継続して出力する。減算器513は位置指令値Prから、時刻0での位置指令値Pr(0)を減算した結果を出力する。加算器514は減算器513の出力に位置補償量Padを加算した結果を出力する。加算器517は、加算器514の出力に速度指令演算器2の比例ゲインKpと同量を乗じた結果に、位置指令値Prを微分器516で微分した結果を加算し出力する。積分器518は、加算器517の出力を積分した結果を出力する。ただし、積分器518は反転検出器511が上位位置指令方向の反転を検出する毎にそれまでの積分結果を0にリセットすることで、時刻0から時刻tまでの定積分を計算する。位置補償タイミング出力器519は、反転検出器511が位置指令値Prの指令方向の反転を検出した時点を位置補償入りタイミングとして検出し、積分器518の出力が予め設定された可動部のバックラッシ量以上となった時点を位置補償切りタイミングとして検出する。位置補償タイミング出力器519は、これらの検出結果Rposを位置補償量出力器32に出力する。
【0041】
次に、トルク伝達タイミング検出器61は、位置指令値Prと位置補償量Padとから式10に従い算出した反転後駆動部移動量推定値Pmvと予め設定された可動部のバックラッシ量Bを比較することで、トルク伝達タイミングを検出する。
図8は、トルク伝達タイミング検出器61の詳細を示した図である。反転検出器611は位置指令値Prの指令方向の反転を検出する。位置検出値保持器612は、反転検出器611が位置指令値Prの方向反転を検出した時刻0での位置指令値Pr(0)を、反転検出器611が新たに位置指令値Prの方向反転を検出するまで継続して出力する。減算器613は位置指令値Prから、時刻0での位置指令値Pr(0)を減算した結果を出力する。加算器614は減算器613の出力に位置補償量Padを加算した結果を出力する。加算器617は、加算器614の出力に速度指令演算器2の比例ゲインKpと同量を乗じた結果に、位置指令値Prを微分器616で微分した結果を加算し出力する。積分器618は、加算器617の出力を積分した結果を出力する。ただし、積分器618は反転検出器611が上位位置指令方向の反転を検出する毎にそれまでの積分結果を0にリセットすることで、時刻0から時刻tまでの定積分を計算する。トルク伝達タイミング出力器619は、減算器613の出力が予め設定された可動部のバックラッシ量B以上となった時点を、駆動部が被駆動部にトルク伝達を開始したタイミングとして検出し、相関係数構成器42、トルク補償量演算器43に検出結果Rtrqを出力する。
【0042】
以上のように、本発明による位置制御装置によれば、駆動部の位置検出遅れが大きな制御装置であっても、位置検出遅れに伴う補償タイミングのズレを効果的に低減でき、よって、バックラッシに起因する追従遅れと被駆動部の摩擦作用方向の反転に起因する追従遅れを小さくすることができる。
【0043】
本実施例において、反転検出器511、位置検出値保持器512、減算器513、加算器514,517、比例ゲインKp515、微分器516、積分器518の動作は、反転検出器611、位置検出値保持器612、減算器613、加算器614,617、比例ゲインKp615、微分器616、積分器618と同様であるから、位置補償タイミング検出器51とトルク伝達タイミング検出器61との間で、これらの演算器を共有することも可能である。また、
図7、
図8に示した構成は、演算順序を規定するものではない。よって、反転後駆動部移動量推定値Pmvを得るために、例えば減算器613と加算器614等の演算順序を入れ替えたり、一つの演算器に纏めたりするなど、適宜組み替えることも可能である。更に、比例ゲインKp515、615は、速度指令演算器2の比例ゲインKp相当値であることが好ましいが、必ずしも同値とする必要は無い。
【0044】
また、本発明が適用される位置制御装置は
図1や
図6のフィードバック制御系に限定されるものではない。例えば、減算器1に帰還される位置検出値は、必ずしも位置検出値Pdである必要は無く、例えば、位置検出値Pdと位置検出値Pmを合成した値に適宜変更可能である。あるいは、速度フィードフォワードVffは、必ずしも位置指令値Prのみから算出する必要はなく、例えば、位置指令値Prに位置補償量Padを加算した値から算出するなど、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,5,313,413,513,613 減算器、2 速度指令演算器、3,9,516,616 微分器、4,8,11,16,17,514,517,614,617 加算器、10 モータ軸換算イナーシャ、12 対象プラント、13,32 位置補償量出力器、14,31,51 位置補償タイミング検出器、21,42 相関係数構成器、22 補償量出力器、41,61 トルク伝達タイミング検出器、43 トルク補償量演算器、44 トルク補償量出力部、311,411,511,611 反転検出器、312,512,412,612 位置検出値保持器、314,519 位置補償タイミング出力器、414,619 トルク伝達タイミング出力器、321 指令増減方向検出器、322 位置補償量演算器、518,618 積分器、515,615 比例ゲインKp。