(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】シール検査装置およびシール検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20240710BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20240710BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240710BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240710BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20240710BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20240710BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240710BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240710BHJP
【FI】
G01M3/26 M
F16J15/00 E
F16J15/10 Y
H01M8/02
H01M8/0271
H01M8/0247
H01M8/04746
H01M8/0438
(21)【出願番号】P 2021057756
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】重国 光明
(72)【発明者】
【氏名】代蔵 隼
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141712(JP,A)
【文献】特開2016-164827(JP,A)
【文献】特開2016-106215(JP,A)
【文献】特開2019-133874(JP,A)
【文献】特開2016-038981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00- 15/14
G01M 3/00- 3/40
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられ、厚さ方向に貫通する孔部を有するセパレータと、該セパレータの厚さ方向一面に配置されるガスケットと、を有するガスケット付きセパレータのシール性を検査するシール検査装置であって、
該ガスケット付きセパレータを挟んで配置される第一治具と第二治具とを備え、
該第一治具は、該ガスケット付きセパレータの該ガスケット側に配置され、
該第二治具は、該ガスケット付きセパレータの該セパレータ側に配置され、
該第一治具および該第二治具の少なくとも一方は、該ガスケットとの間に検査領域を区画する検査用シール部材を有し、該第一治具および該第二治具の積層方向から見た場合に、該検査用シール部材は、該孔部の周囲を囲み該ガスケットと重ならない位置に配置される孔部シール部材を有し、
該検査領域のうちの少なくとも一つに検査用ガスを供給して、該ガスケットのシール性を検査することを特徴とするシール検査装置。
【請求項2】
前記ガスケット付きセパレータが前記第一治具と前記第二治具との間に組み付けられ、前記積層方向に圧縮された状態において、前記孔部シール部材の反力は前記ガスケットの反力よりも大きい請求項1に記載のシール検査装置。
【請求項3】
前記第一治具は、前記孔部シール部材を有し、
前記セパレータの厚さ方向他面のうち、該孔部シール部材の接触領域、前記ガスケットの配置領域、および前記検査領域に対応する部分には、前記第二治具が接している請求項1または請求項2に記載のシール検査装置。
【請求項4】
前記第一治具は、前記ガスケット付きセパレータの前記ガスケットが接触する位置に凹部を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項5】
前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域と、該ガス供給領域に前記ガスケットを介して隣接し圧力が測定される圧力測定領域と、を有し、
該検査用ガスが該ガス供給領域から該圧力測定領域にリークすることによる該圧力測定領域の圧力上昇に基づいて該ガスケットのシール性を検査する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項6】
検査中、前記検査用ガスは前記ガス供給領域の圧力が所定の値に維持されるように連続的または断続的に供給される請求項5に記載のシール検査装置。
【請求項7】
前記ガスケットは枠状を呈し、
前記検査用シール部材は、該ガスケットの枠外側に配置される外側シール部材を有し、
該ガスケットと該外側シール部材との間に前記ガス供給領域または前記圧力測定領域が区画される請求項5または請求項6に記載のシール検査装置。
【請求項8】
前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域を有し、
前記検査用ガスは該ガス供給領域に封入され、該検査用ガスが該ガス供給領域から外部にリークすることによる該ガス供給領域の圧力降下に基づいて前記ガスケットのシール性を検査する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシール検査装置。
【請求項9】
請求項1に記載のシール検査装置を用いたシール検査方法であって、次の(a)、(b)の工程のうち少なくとも一方を行うことを特徴とするシール検査方法。
(a)前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域を有し、該ガス供給領域に該検査用ガスを封入した後、該ガス供給領域の圧力を測定する工程。
(b)前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域と、該ガス供給領域に前記ガスケットを介して隣接し圧力が測定される圧力測定領域と、を有し、該ガス供給領域に該検査用ガスを連続的または断続的に供給しながら、該圧力測定領域の圧力を測定する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に用いられるガスケットのシール性を検査するためのシール検査装置およびシール検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、反応ガスや冷媒に対するシール性と絶縁性とを確保するため、電極部材の周囲や隣り合うセパレータ間にゴム製のガスケットが配置されている。燃料電池を組み付けた状態においては、ガスケットは燃料電池の締結力により圧縮され、その反力によりシール性を確保している。ここで、ガスケットに欠けや剥がれなどがあると、反応ガスや冷媒が外部に漏れるおそれがある(いわゆる外部リーク)。また、電極部材の周囲におけるガスケットの充填不足などがあると、反応ガスの流路同士が繋がり、燃料ガスと酸化剤ガスとが混合するおそれがある(いわゆるクロスリーク)。これらのリークは、燃料電池の性能低下の原因となる。したがって、燃料電池の製造時においては、ガスケットのシール検査が重要になる。
【0003】
燃料電池用ガスケットのシール性を検査する装置として、例えば特許文献1には、ガスケットの欠陥に加えて、セパレータの傷やへこみなどの欠陥も検出可能なシール検査装置が記載されている。特許文献1に記載されているシール検査装置においては、燃料電池の構成単位であるセルを一対の治具で挟持してセルの積層状態を模擬的に形成し、反応ガスなどの流路に検査用ガスを封入して、当該流路のガス圧の降下量を測定している。また、特許文献2には、ガスケットのシール性を短時間で検査可能なシール検査装置が記載されている。特許文献2に記載されているシール検査装置においては、一対の治具でガスケット付きセパレータを挟持すると共に、検査用シール部材とガスケットとによりガス供給領域と圧力測定領域とを形成し、ガス供給領域に供給された検査用ガスが圧力測定領域にリークすることによる圧力上昇量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-164827号公報
【文献】特開2018-141712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されているように、燃料電池用ガスケットのシール性検査は、ガスケットを備えるセパレータなどの部材を一対の治具間に配置して、積層方向に荷重を加えてガスケットを圧縮させた状態で行われる。この際、ガスケットの圧縮率が大きくセパレータに弾接した状態の反力が大きければ、ガスケットとセパレータとの間に異物が付着していたり、ガスケットに欠けや高さ不足などの欠陥があったとしても、検査用ガスのリークが少なくなるため、これらの不具合を見逃してしまうおそれがある。したがって、少しの不具合も見逃さないよう、シール不良の検出精度を高めるためには、ガスケットの圧縮率をできるだけ小さくして検査することが望ましい。また、寒冷地で使用する場合など、低温下ではガスケットの反力は小さくなる。この点においても、ガスケットの反力が比較的小さい状態、すなわち圧縮率が小さい状態でシール性を検査することは有用である。
【0006】
燃料電池においては、セルの積層方向に、空気(酸化剤ガス)、水素(燃料ガス)、冷却水の流路を形成するため、セパレータには厚さ方向に貫通する複数の孔部が形成されている。このため、特許文献1、2に記載されているように、従来のシール検査装置においては、セパレータの下面(ガスケットが配置されている面とは反対側の面)にダミーシール部材を配置して、セパレータの上面に配置されるガスケットとの間に、検査用ガスを封入する空間を形成していた。
図10に、従来のシール検査装置の積層方向断面模式図を示す。
図10における上下方向は、部材の積層方向に対応する。
【0007】
図10に示すように、従来のシール検査装置9は、第一治具90と、第二治具91と、を備えている。第一治具90と第二治具91との間には、ガスケット付きセパレータ92が配置されている。ガスケット付きセパレータ92は、セパレータ93と、ガスケット94と、を有している。セパレータ93は、複数の孔部930を有している。ガスケット94は、孔部930を囲むように、セパレータ93の上面に接着されている。第一治具90および第二治具91の組み付け状態において、ガスケット94の上部は、第一治具90の下面に弾接している。セパレータ93の下面側には、ダミーシール部材95が配置されている。ダミーシール部材95は、第二治具91の上面に接着されており、ガスケット94に対応する位置に配置されている。すなわち、ガスケット94とダミーシール部材95とは上下方向から見て重なるように配置されている。ダミーシール部材95はガスケット94と同じ材質、形状、大きさを有している。第一治具90および第二治具91の組み付け状態において、ダミーシール部材95の上部は、セパレータ93の下面に弾接している。第一治具90と第二治具91との間には、枠状のスペーサ96が介装されている。スペーサ96の厚さにより、ガスケット94の圧縮率が調整される。第一治具90、第二治具91、ガスケット94、およびダミーシール部材95により、検査用ガスを封入可能な閉スペースS1、S2が区画されている。
【0008】
前述したように、ガスケットの不具合を精度良く検査するためには、ガスケットの圧縮率は小さい方が望ましい。他方、ダミーシール部材においては、供給した検査用ガスが漏れないように圧縮率を大きくして大きな反力で弾接させた方がよい。しかしながら、従来のシール検査装置によると、ダミーシール部材はガスケットと同じ材質、形状、大きさを有している。そして、ダミーシール部材とガスケットとは、上下方向から見て重なるように、換言すると、セパレータを挟んで同じ位置に配置されている。このため、ガスケットの圧縮率を小さくすると、同じようにダミーシール部材の圧縮率も小さくなってしまう。
【0009】
ガスケットとダミーシール部材とが同軸上、すなわちセパレータを挟んで同じ位置に配置されると、反力はセパレータの両側で釣り合おうとするため、仮にダミーシール部材の材質などを変更したとしてもセパレータが湾曲したりするだけで、両者の圧縮率は変わりにくい。したがって、ガスケットとダミーシール部材とが同軸上に配置される限り、一方の反力のみを大きくするということは難しい。また、ダミーシール部材はガスケットと同じゴム材料からなるため、シール検査を繰り返すうちに摩耗していき、異物が付着することもある。このため、圧縮率が小さい場合には、最初に設定された反力を得ることができなくなり、ダミーシール部材から検査用ガスがリークするおそれがある。こうなると、ガスケットのシール性は問題ないにも関わらず、ダミーシール部材からのリークにより、シール性不良という判定がなされることになり、いわゆる過検出が発生してしまう。過検出への対応や予防のため、頻繁にダミーシール部材の清掃、交換などのメンテナンスが必要になると、生産性が低下する。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ガスケットのシール性を正確に精度良く検査することができるシール検査装置およびシール検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明のシール検査装置は、燃料電池に用いられ、厚さ方向に貫通する孔部を有するセパレータと、該セパレータの厚さ方向一面に配置されるガスケットと、を有するガスケット付きセパレータのシール性を検査するシール検査装置であって、該ガスケット付きセパレータを挟んで配置される第一治具と第二治具とを備え、該第一治具は、該ガスケット付きセパレータの該ガスケット側に配置され、該第二治具は、該ガスケット付きセパレータの該セパレータ側に配置され、該第一治具および該第二治具の少なくとも一方は、該ガスケットとの間に検査領域を区画する検査用シール部材を有し、該第一治具および該第二治具の積層方向から見た場合に、該検査用シール部材は、該孔部の周囲を囲み該ガスケットと重ならない位置に配置される孔部シール部材を有し、該検査領域のうちの少なくとも一つに検査用ガスを供給して、該ガスケットのシール性を検査することを特徴とする。
【0012】
(2)本発明のシール検査方法は、上記本発明のシール検査装置を用いたシール検査方法であって、次の(a)、(b)の工程のうち少なくとも一方を行うことを特徴とする。
(a)前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域を有し、該ガス供給領域に該検査用ガスを封入した後、該ガス供給領域の圧力を測定する工程。
(b)前記検査領域は、前記検査用ガスが供給されるガス供給領域と、該ガス供給領域に前記ガスケットを介して隣接し圧力が測定される圧力測定領域と、を有し、該ガス供給領域に該検査用ガスを連続的または断続的に供給しながら、該圧力測定領域の圧力を測定する工程。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明のシール検査装置においては、ガスケットと検査用シール部材との間に検査領域が区画される。検査用シール部材は、第一治具および第二治具の積層方向から見た場合に、孔部の周囲を囲みガスケットと重ならない位置に配置される孔部シール部材を有する。すなわち、本発明のシール検査装置においては、孔部の周囲をシールするガスケットとの間に検査領域を区画する孔部シール部材は、ガスケットと同軸上にはない。ガスケットと孔部シール部材とを、積層方向から見てずらして配置することにより、両者の反力を独立して調整することができる。具体的には、ガスケットについては圧縮率を小さくして反力を小さくしながら、孔部シール部材については圧縮率を大きくして反力を大きくすることができる。これにより、ガスケットのシール性は問題ないにも関わらず、孔部シール部材からのリークにより、シール性不良という判定になる過検出が発生しにくくなるため、検査の正確性を高めることができる。過検出の発生が少なくなると、長期間の連続稼働が可能になり、生産性が向上する。また、孔部シール部材の反力を大きくすることができるため、供給する検査用ガスの圧力を高めて、ガスケットに対してより過酷な条件で検査することも可能になる。また、孔部シール部材の材料、形状などは、ガスケットと同じでなくてもよいため、材料選択の自由度が増し、コスト削減につながる。例えば、孔部シール部材を治具に配置する際に、ガスケットと同じように加硫接着する必要がなくなれば、作業性が向上する。また、孔部シール部材を着脱可能なものにすれば、治具への配置が容易になる。他方、ガスケットについては比較的小さな圧縮率にて検査することができる。これにより、異物の付着、欠けや高さ不足などによる僅かな欠陥をも検出することが可能になり、検出精度を高めることができる。
【0014】
(2)本発明のシール検査方法によると、検査用ガスの供給場所により、(a)圧力降下に基づく検査と、(b)圧力上昇に基づく検査と、のいずれかまたは両方を実施することができる。本発明のシール検査方法は、本発明のシール検査装置を用いることによる作用効果に加えて、各工程を実施することによる以下の作用効果を有する。
【0015】
(a)の工程においては、検査領域としてガス供給領域を設定し、そこに検査用ガスを封入し、同領域の圧力降下量を測定すればよい。このように、(a)の工程によると、単純な方法でシール性を検査することができる。(b)の工程においては、検査領域としてガス供給領域と圧力測定領域とを別々に設定する。圧力測定領域には検査用ガスは供給されず、ガス供給領域からリークしたガスが流入する。圧力測定領域においては、圧力の降下量ではなく上昇量を測定する。ガス供給領域の圧力が所定の値になるまで待つ必要はないため、検査用ガスの供給と同時に圧力を測定することができる。このように、(b)の工程によると、ガスの供給と圧力の測定とを並行して行うことができるため、検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態のシール検査装置の上面図である。
【
図3】圧力降下に基づいて、ガスケットの四つの小環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示す図である。
【
図4】圧力降下に基づいて、ガスケットの大環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示す図である。
【
図5】圧力降下に基づく検査におけるガス供給領域のガス圧の経時変化例を示すグラフである。
【
図6】圧力上昇に基づいて、ガスケットの四つの小環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示す図である。
【
図7】圧力上昇に基づいて、ガスケットの大環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示す図である。
【
図8】圧力上昇に基づく検査における圧力測定領域のガス圧の経時変化例を示すグラフである。
【
図9】第二実施形態のシール検査装置の積層方向断面図である。
【
図10】従来のシール検査装置の積層方向断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のシール検査装置およびシール検査方法の実施の形態を説明する。
【0018】
<第一実施形態>
[シール検査装置の構成]
まず、本実施形態のシール検査装置の構成について説明する。
図1に、本実施形態のシール検査装置の上面図を示す。
図2に、
図1のII-II断面図を示す。
図1においては、第一治具の本体部を透過して示し、説明の便宜上、ガスケットおよび検査用シール部材にハッチングを付して示す。以下に示す実施の形態においては、上下方向が本発明における「第一治具および第二治具の積層方向」に対応している。
【0019】
図1、
図2に示すように、シール検査装置10は、第一治具20と、第二治具30と、を備えている。第一治具20および第二治具30は、図示しない固定部材により固定されている。第一治具20と第二治具30との間には、ガスケット付きセパレータ40が配置されている。ガスケット付きセパレータ40は、燃料電池の構成部材であり、セパレータ41と、ガスケット42と、を有している。
【0020】
セパレータ41は、ステンレス鋼製であって、四角形薄板状を呈している。セパレータ41の左右両側には、空気供給孔43a、空気排出孔43b、水素供給孔44a、水素排出孔44b、冷却水供給孔45a、冷却水排出孔45bからなる六つの孔部が開設されている。六つの孔部43a、43b、44a、44b、45a、45bは、各々、セパレータ41の厚さ方向(上下方向)に貫通している。
【0021】
ガスケット42は、セパレータ41の上面に配置されている。以下に示す実施の形態においては、セパレータ41の上面が本発明における「厚さ方向一面」に、下面が「厚さ方向他面」に対応している。ガスケット42は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)をゴム成分とするソリッドゴムの架橋物製である。ガスケット42は、セパレータ41に一体化されている。第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、ガスケット42の上部は、第一治具20の下面211に弾接している。
【0022】
ガスケット42は、無端環状かつ四角形枠状(詳しくは、四隅に小さな四角形枠部を有する四角形枠状)を呈している。ガスケット42は、大環状部46と四つの小環状部47と、を有している。大環状部46は、四つの角部が環内側に凹んだ四角形枠状を呈しており、セパレータ41の四隅を除く周縁部に配置されている。大環状部46は、主に冷却水の流路を封止する役割を果たす。四つの小環状部47は、セパレータ41の四角に開口する空気供給孔43a、空気排出孔43b、水素供給孔44a、水素排出孔44bの各々を囲むように配置されている。四つの小環状部47は、主に反応ガスの流路を封止する役割を果たす。
【0023】
第一治具20は、ガスケット付きセパレータ40の上側、すなわちガスケット42側に配置されている。第一治具20は、本体部21と、六つの孔部シール部材22と、外側シール部材23と、を有している。
【0024】
本体部21は、ステンレス鋼製であり、四角形板状を呈している。本体部21の下面211における、ガスケット付きセパレータ40のガスケット42が接触する位置には、溝状の凹部212が形成されている。第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、ガスケット42の上部は凹部212に収容される。
【0025】
本体部21の内部には、後述する検査領域へのガスの供給や、検査領域の圧力を測定するために用いられるいくつかのガス流路が形成されている。当該ガス流路のうち、
図2には、四つのガス流路210a~210dを示す。ガス流路210a~210dの各々の一端部には、バルブで開閉可能な配管が接続されており、当該配管を介して、必要に応じて、ガス供給部50、圧力計51などが接続されている。ガス流路210a~210dの他端部は、本体部21の下面211に開口している。
【0026】
六つの孔部シール部材22は、検査用シール部材の一つであり、いずれも同じゴム製であり、四角形枠状を呈している。孔部シール部材22は、ガスケット42とは異なる種類のゴム材料からなる。六つの孔部シール部材22は、本体部21の下面211に接着されている。六つの孔部シール部材22は、セパレータ41の六つの孔部43a、43b、44a、44b、45a、45bの各々の周囲を囲むように一つずつ配置されている。
図1の上面図に示すように、シール検査装置10を上下方向から見た場合に、六つの孔部シール部材22は、ガスケット42と重ならない位置に配置されている。ガスケット42と六つの孔部43a、43b、44a、44b、45a、45bの各々との間には、六つの孔部シール部材22が介在している。第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、六つの孔部シール部材22は、第一治具20とセパレータ41との間で圧縮され、セパレータ41の上面に弾接している。この時の孔部シール部材22の反力は、ガスケット42の反力よりも大きい。
【0027】
第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、六つの孔部シール部材22の各々とガスケット42との間には、ガスケット42のシール性を検査するための検査領域A1~A4、Bが区画されている。具体的には、空気供給孔43aの周囲、水素供給孔44aの周囲、水素排出孔44bの周囲、および空気排出孔43bの周囲において、孔部シール部材22とガスケット42の小環状部47との間に、四つの検査領域A1~A4(四つまとめて検査領域Aと称する場合がある)が区画されている。また、ガスケット42の大環状部46の内側において孔部シール部材22との間に、検査領域Bが区画されている。
【0028】
外側シール部材23は、検査用シール部材の一つであり、ガスケット42および孔部シール部材22とは異なるゴム製であり、四角形枠状を呈している。外側シール部材23は、本体部21の下面211に接着されている。外側シール部材23は、ガスケット42の外周を囲むように、ガスケット42の外側に離間して配置されている。外側シール部材23は、後述するスペーサ32の枠内側に配置されている。第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、外側シール部材23は、第一治具20とセパレータ41との間で圧縮され、セパレータ41の上面に弾接している。この状態において、外側シール部材23とガスケット42との間には、ガスケット42のシール性を検査するための検査領域Cが区画されている。
【0029】
第二治具30は、ガスケット付きセパレータ40の下側、すなわちセパレータ41側に配置されている。第二治具30は、本体部31と、スペーサ32と、を有している。本体部31は、ステンレス鋼製であり、四角形板状を呈している。本体部31は、セパレータ41の下面全体に接している。
【0030】
スペーサ32は、ステンレス鋼製であり、四角形枠状を呈している。スペーサ32は、本体部31の上面周縁部に配置されている。スペーサ32は、第一治具20と第二治具30との間に介装されている。スペーサ32の厚さ(上下方向長さ)により、ガスケット42の圧縮率を調整することができる。
【0031】
[シール検査方法]
次に、本実施形態のシール検査装置によるシール検査方法を説明する。シール検査装置10においては、検査領域A~Cのうちの少なくとも一つに検査用ガスを供給し、所定の検査領域の圧力の経時変化を測定することにより、ガスケット42のシール性を検査する。本実施形態においては、検査用ガスとして窒素ガスを用い、圧力降下に基づく検査および圧力上昇に基づく検査の両方を行う。
【0032】
(1)圧力降下に基づく検査(本発明における(a)工程に対応)
圧力降下に基づいてシール性を検査する方法を説明する。本方法において、検査領域は、検査用ガスが供給されるガス供給領域を有する。
図3、
図4に、本方法におけるガス供給領域を示す。
図3、
図4は、各々、前出
図1に対応している。
図3は、ガスケットの四つの小環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示し、
図4は、ガスケットの大環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域を示す。
図3、
図4中、ガス供給領域については、粗いハッチングを付して示す。
図5に、ガス供給領域のガス圧の経時変化例をグラフで示す。
【0033】
(a)四つの小環状部のシール性検査
まず、ガス供給工程において、ガス供給部50のバルブを開け、ガス流路210a、210cなどを介して(前出
図2参照)、
図3に示すように、窒素ガスを四つの検査領域A1~A4に供給する。この検査におけるガス供給領域は、検査領域A1~A4である。そして、検査領域A1~A4の圧力が所定値に到達したら、バルブを閉め、窒素ガスの供給を停止して、検査領域A1~A4に窒素ガスを封入する。次に、測定工程において、検査領域A1~A4の圧力を圧力計51により測定する。ガスケット42の四つの小環状部47のどこかに欠陥があれば、欠陥部分から窒素ガスがリークして圧力が降下する。よって、
図5に示すように、検査領域A1~A4の各々の圧力降下量を測定することにより、ガスケット42の四つの小環状部47のシール性を検査することができる。
【0034】
(b)大環状部のシール性検査
小環状部のシール性検査と同様に、まず、ガス供給工程において、ガス供給部50のバルブを開け、ガス流路210bを介して(前出
図2参照)、
図4に示すように、窒素ガスを検査領域Bに供給する。この検査におけるガス供給領域は、検査領域Bである。そして、検査領域Bの圧力が所定値に到達したら、バルブを閉め、窒素ガスの供給を停止して、検査領域Bに窒素ガスを封入する。次に、測定工程において、検査領域Bの圧力を圧力計51により測定する。ガスケット42の大環状部46のどこかに欠陥があれば、欠陥部分から窒素ガスがリークして圧力が降下する。よって、検査領域Bの圧力降下量を測定することにより、ガスケット42の大環状部46のシール性を検査することができる。
【0035】
(2)圧力上昇に基づく検査(本発明における(b)工程に対応)
圧力上昇に基づいてシール性を検査する方法を説明する。本方法において、検査領域は、検査用ガスが供給されるガス供給領域と、該ガス供給領域にガスケットを介して隣接し圧力が測定される圧力測定領域と、を有する。
図6、
図7に、本方法におけるガス供給領域および圧力測定領域を示す。
図6、
図7は、各々、前出
図1に対応している。
図6は、ガスケットの四つの小環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域および圧力測定領域を示し、
図7は、ガスケットの大環状部のシール性を検査する場合のガス供給領域および圧力測定領域を示す。
図6、
図7中、ガス供給領域については粗いハッチングを付して示し、圧力測定領域については点線ハッチングを付して示す。
図8に、圧力測定領域のガス圧の経時変化例をグラフで示す。
【0036】
(a)四つの小環状部のシール性検査
まず、ガス供給工程において、ガス供給部50のバルブを開け、ガス流路210b、210dを介して(前出
図2参照)、
図6に示すように、窒素ガスを検査領域B、Cに供給する。本検査におけるガス供給領域は検査領域B、Cであり、圧力測定領域はA1~A4である。ガス供給工程においては、検査領域B、Cの圧力が、圧力計51で測定されたゲージ圧でほぼ500kPaになるように窒素ガスを供給し続ける。そして、ガス供給工程と並行して、測定工程が実施される。測定工程においては、圧力測定領域A1~A4の圧力を、圧力計51により測定する。ガスケット42の四つの小環状部47のどこかに欠陥があれば、欠陥部分から窒素ガスがリークする。結果、欠陥を有するガスケット42で隔てられた圧力測定領域の圧力が上昇する。これに対して、ガスケット42に欠陥がなければ、圧力測定領域A1~A4の圧力はほとんど上昇しない。よって、
図8に示すように、検査領域A1~A4の各々における圧力上昇量を測定することにより、ガスケット42の四つの小環状部47のシール性を検査することができる。
【0037】
(b)大環状部のシール性検査
小環状部のシール性検査と同様に、ガス供給工程において、ガス供給部50のバルブを開け、ガス流路210a、210c、210dを介して(前出
図2参照)、
図7に示すように、窒素ガスを検査領域A1~A4、Cに供給する。本検査におけるガス供給領域は検査領域A1~A4、Cであり、圧力測定領域はBである。ガス供給工程においては、検査領域A1~A4、Cの圧力が、圧力計51で測定されたゲージ圧でほぼ500kPaになるように窒素ガスを供給し続ける。そして、ガス供給工程と並行して、測定工程が実施される。測定工程においては、圧力測定領域Bの圧力を、圧力計51により測定する。ガスケット42の大環状部46のどこかに欠陥があれば、欠陥部分から窒素ガスがリークする。結果、圧力測定領域Bの圧力が上昇する。これに対して、ガスケット42に欠陥がなければ、圧力測定領域Bの圧力はほとんど上昇しない。よって、検査領域Bの圧力上昇量を測定することにより、ガスケット42の大環状部46のシール性を検査することができる。
【0038】
[作用効果]
次に、本実施形態のシール検査装置およびシール検査方法の作用効果について説明する。本実施形態のシール検査装置10によると、第一治具20および第二治具30の組み付け状態において、六つの孔部シール部材22の各々とガスケット42との間に検査領域A1~A4、Bが区画され、外側シール部材23とガスケット42との間に検査領域Cが区画されている。ここで、六つの孔部シール部材22は、シール検査装置10を上下方向から見た場合に、ガスケット42と重ならない位置に配置されている。六つの孔部シール部材22とガスケット42とを、上下方向から見てずらして配置することにより、両者の反力を独立して調整することができる。六つの孔部シール部材22は、第一治具20とセパレータ41との間で圧縮され、セパレータ41の上面に弾接している。この時の孔部シール部材22の反力は、第一治具20とセパレータ41との間で圧縮され第一治具20の下面に弾接しているガスケット42の反力よりも大きい。これにより、シール検査において、ガスケット42のシール性は問題ないにも関わらず、孔部シール部材22からのリークにより、シール性不良という判定になる過検出が発生しにくくなる。よって、シール検査の正確性が高くなる。また、過検出の発生が少なくなると、長期間の連続稼働が可能になるため、ガスケット付きセパレータ40の生産性が向上する。また、孔部シール部材22の反力が大きいため、供給する検査用ガスの圧力を高めて、ガスケット42に対してより過酷な条件で検査することも可能になる。また、孔部シール部材22の材料、厚さ方向の断面形状などは、ガスケット42と同じでなくてもよいため、材料選択の自由度が増し、コスト削減につながる。他方、ガスケット42については比較的小さな圧縮率にて検査することができる。これにより、異物の付着、欠けや高さ不足などによる僅かな欠陥をも検出することが可能になり、検出精度が高くなる。
【0039】
六つの孔部シール部材22は第一治具20に配置され、ガスケット付きセパレータ40のガスケット42と同じ側(上側)に配置されている。これにより、セパレータ41の下面全体を、平板状の第二治具30で支持することができるため、第一治具20と第二治具30との間にガスケット付きセパレータ40を組み付けた時や、検査領域A~Cに検査用ガスを供給した時などに、セパレータ41が変形するのを抑制することができる。また、セパレータ41の下面全体を、剛性が大きいステンレス鋼製の第二治具30で支持することができるため、ガスケット42の圧縮率を厳密に設定することができる。また、万が一セパレータ41に穴あきの欠陥がある場合には、セパレータ41の下面と第二治具30とがシール部材を介さず直接接触しているため、セパレータ41の下面側に検査用ガスがリークする。これにより、セパレータ41の穴あきも検出することができる。また、孔部シール部材22をセパレータ41の上側に配置することにより、セパレータ41の下側の空間を無くすことができる。これにより、検査用ガスを供給する空間(検査領域)を小さくすることができ、検出感度を向上させることができる。また、セパレータ41の下面に孔部シール部材22が接触しないため、孔部シール部材22に由来する油分がセパレータ41の下面に付着することを回避することができる。この場合、ガスケット付きセパレータ40と電極部材などを積層して燃料電池を組み立てる際に、油分の付着による不具合が生じにくい。第一治具20の下面211には、溝状の凹部212が形成され、ガスケット42の上部は凹部212に収容される。このように、第一治具20の下面211の形状を工夫することにより、限られた空間の中でもガスケット42の圧縮率を調整しやすい。
【0040】
第一治具20は、検査用シール部材として、孔部シール部材22に加えて外側シール部材23を有している。外側シール部材23を配置することで、ガスケット42の外周を囲む領域を封止して、ガスケット42を介して枠の内外方向にガス供給領域と圧力測定領域とを区画することができる。これにより、圧力上昇に基づくシール検査を容易に行うことができる。本実施形態においては、検査用ガスとして窒素ガスを使用する。このため、ヘリウムガス、水素ガスなどを使用する場合と比較して、ガス供給部50の設備費、管理費などが安価である。
【0041】
本実施形態のシール検査方法においては、圧力降下に基づく検査と圧力上昇に基づく検査との両方を行う。圧力降下に基づく検査と圧力上昇に基づく検査とにおいては、検査用ガスを供給する場所、すなわちガス供給領域が異なり、検査用ガスがリークする方向が異なる。よって、これら二通りの検査を行うと、ガスケット42の倒れやすさに違いがあったり、ガスケット42の内部にボイドが形成されている場合などにおいても、シール不良を検出することが可能になるため、検出精度を高めることができる。また、圧力上昇に基づく検査によると、ガス供給領域の圧力が所定の値になるまで待つ必要はないため、検査用ガスの供給と同時に圧力を測定することができる。これにより、検査時間を短縮することができる。
【0042】
<第二実施形態>
本実施形態のシール検査装置およびシール検査方法と、第二実施形態のシール検査装置およびシール検査方法と、の相違点は、第二治具が孔部シール部材を有し、孔部シール部材はセパレータの下面に弾接されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0043】
[シール検査装置の構成]
まず、本実施形態のシール検査装置の構成について説明する。
図9に、本実施形態のシール検査装置の積層方向断面図を示す。
図9は、前出
図2に対応している。
図9中、
図2と対応する部材については、同じ符号で示す。
【0044】
図9に示すように、シール検査装置11は、第一治具24と、第二治具33と、を備えている。第一治具24と第二治具33との間には、ガスケット付きセパレータ40が配置されている。第一治具24は、ガスケット付きセパレータ40の上側、すなわちガスケット42側に配置されている。第一治具24は、本体部21と、外側シール部材23と、を有している。第一治具24の構成は、孔部シール部材を有しない点を除いて第一実施形態の第一治具20の構成と同じである。
【0045】
第二治具33は、ガスケット付きセパレータ40の下側、すなわちセパレータ41側に配置されている。第二治具33は、本体部31と、スペーサ32と、六つの孔部シール部材34と、を有している。本体部31は、ステンレス鋼製であり、四角形板状を呈している。スペーサ32は、第一実施形態と同じ構成を有し、本体部31の上面周縁部に配置されている。
【0046】
六つの孔部シール部材34は、検査用シール部材の一つであり、いずれも同じゴム製であり、四角形枠状を呈している。孔部シール部材34は、ガスケット42とは異なる種類のゴム材料からなる。六つの孔部シール部材34は、本体部31の上面310に接着されている。六つの孔部シール部材34は、セパレータ41の六つの孔部43a、43b、44a、44b、45a、45bの各々の周囲を囲むように一つずつ配置されている。六つの孔部シール部材34は、第一実施形態の六つの孔部シール部材22に対応する位置、すなわち、セパレータ41を挟んで六つの孔部シール部材22と反対側に配置されている。シール検査装置11を上下方向から見た場合に、六つの孔部シール部材34は、ガスケット42と重ならない位置に配置されている(前出
図1参照)。上下方向から見た場合、ガスケット42と六つの孔部43a、43b、44a、44b、45a、45bの各々との間には、六つの孔部シール部材34が介在している。第一治具24および第二治具33の組み付け状態において、六つの孔部シール部材34は、第二治具33とセパレータ41との間で圧縮され、セパレータ41の下面に弾接している。この時の孔部シール部材34の反力は、ガスケット42の反力よりも大きい。
【0047】
第一治具24および第二治具33の組み付け状態において、六つの孔部シール部材34の各々とガスケット42との間には、孔部シール部材34に囲まれた孔部を含んで、ガスケット42のシール性を検査するための検査領域A1~A4、Bが区画されている。具体的には、空気供給孔43aの周囲、空気排出孔43bの周囲、水素供給孔44aの周囲、および水素排出孔44bの周囲において、孔部シール部材34とガスケット42の小環状部47との間に、四つの検査領域A1~A4が区画されている。また、ガスケット42の大環状部46の内側において孔部シール部材34との間に、検査領域Bが区画されている。
【0048】
[シール検査方法]
本実施形態のシール検査装置によるシール検査方法は、第一実施形態のシール検査方法と同じである。すなわち、シール検査装置11の検査領域A~Cのうちの少なくとも一つに検査用ガスを供給して、圧力降下に基づく検査および圧力上昇に基づく検査の両方を行う。
【0049】
[作用効果]
次に、本実施形態のシール検査装置およびシール検査方法の作用効果について説明する。本実施形態のシール検査装置およびシール検査方法は、構成が共通する部分については、第一実施形態のシール検査装置およびシール検査方法と、同様の作用効果を有する。本実施形態のシール検査装置11によると、六つの孔部シール部材34は第二治具33に配置され、ガスケット付きセパレータ40のガスケット42と反対側(下側)に配置されている。本実施形態においても、六つの孔部シール部材34は、シール検査装置11を上下方向から見た場合に、ガスケット42と重ならない位置に配置されている。六つの孔部シール部材34とガスケット42とを、上下方向から見てずらして配置することにより、両者の反力を独立して調整することができる。六つの孔部シール部材34は、第二治具33とセパレータ41との間で圧縮され、セパレータ41の下面に弾接している。この時の孔部シール部材34の反力は、第一治具24とセパレータ41との間で圧縮され第一治具24の下面に弾接しているガスケット42の反力よりも大きい。これにより、第一実施形態と同様に、シール検査における過検出が発生しにくくなり、シール検査の正確性が高くなる。六つの孔部シール部材34を、上下方向から見てガスケット42と重ならない位置に配置することによるその他の作用効果は、第一実施形態と同じである。
【0050】
六つの孔部シール部材34を、ガスケット付きセパレータ40の下側に配置する場合には、ガスケット42などによる制約が少なく、配置場所の自由度が大きい。また、ガスケット、孔部シール部材、および外側シール部材の全てが第一治具側に配置される第一実施形態と比較して、検査後にガスケット付きセパレータ40が第一治具24に張り付きにくくなるため、検査後の後工程への移動がスムーズになる。加えて、孔部シール部材34の清掃、交換などが容易になるなど、孔部シール部材34の管理がしやすい。
【0051】
<その他>
以上、本発明のシール検査装置およびシール検査方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0052】
上記実施形態においては、第一治具および第二治具の積層方向(上下方向)から見た場合に、孔部シール部材がガスケットと重ならないように、孔部シール部材をセパレータの孔部とガスケットとの間に配置した。しかしながら、第二実施形態のように、孔部シール部材を第二治具に配置してセパレータの下側に配置する場合には、孔部シール部材を、必ずしもセパレータの孔部とガスケットとの間に配置する必要はない。この場合、孔部シール部材を、孔部からガスケットを越えて離間させた位置(ガスケットの外側)に配置してもよい。
【0053】
上記実施形態においては、外側シール部材を第一治具に配置してセパレータの上側に配置した。しかしながら、ガスケットとの間に検査領域を区画できれば、外側シール部材は必ずしもセパレータに弾接させる必要はない。例えば、外側シール部材を、第一治具と第二治具との間に介装させてもよい。なお、外側シール部材は必ずしも必要ではない。
【0054】
孔部シール部材、外側シール部材などの検査用シール部材の材料、形状、大きさ、治具への取り付け方法などは特に限定されない。例えば、市販の丸紐ゴムなどを用いてもよい。また、孔部シール部材の全てが、ガスケットの反力よりも大きい反力を有する必要はない。孔部シール部材および外側シール部材の反力は、配置場所、検査方法(圧力降下または圧力上昇)などに応じて適宜決定すればよい。反力の調整は、検査用シール部材の材料、形状、大きさの他、第一治具、第二治具の形状などを工夫して行えばよい。
【0055】
上記実施形態においては、第一治具の下面に凹部を形成したが、凹部を形成せずにガスケットを弾接させてもよい。第一治具とガスケット付きセパレータとの間隔の調整などのため、第一治具の下面形状やセパレータ形状などを工夫してもよい。また、第二治具の上面の形状も特に限定されない。第一実施形態のように、孔部シール部材がセパレータの上側に配置される場合、第二治具は、セパレータの変形を抑制するなどの観点から、セパレータにおける孔部シール部材の接触領域、ガスケットの配置領域、および検査領域に対応する部分と接触していることが望ましい。スペーサの材質、形状、配置形態などは、特に限定されない。上記実施形態においては、スペーサを治具の全周に亘って配置したが、例えば治具の四隅のみに配置してもよく、所定の間隔で点在させてもよい。
【0056】
検査領域の数や区画の仕方は、特に限定されない。検査領域が複数区画される場合、圧力の測定は、個々の領域ごとに行ってもよく、二つ以上の領域をまとめて行ってもよい。検査用ガスの種類は、特に限定されない。窒素ガスの他、ヘリウムガス、水素ガス、ハロゲンガスなどから適宜採用すればよい。上記実施形態においては、圧力降下に基づく検査および圧力上昇に基づく検査の両方を行ったが、いずれか一方を行うだけでもよい。圧力上昇に基づく検査における検査用ガスの供給の仕方は、特に限定されない。ガス供給領域の圧力が所定の値に維持されるように連続供給、あるいは断続供給してもよく、目標圧力に到達した後に供給を停止してもよい。検査用ガスの供給と圧力の測定とは、同時に開始してもよいが、圧力の測定を若干遅らせてもよい。
【0057】
上記実施形態においては、第一治具と第二治具との間にガスケット付きセパレータ単体を配置したが、ガスケット付きセパレータを含むものであれば、例えば燃料電池セルを配置してもよい。セパレータの材質、形状は限定されない。ガスケットの材質は、特に限定されない。例えばソリッドゴムを用いる場合、ソリッドゴムは、ゴム成分の他、架橋剤、架橋助剤、接着成分などを含んでいてもよい。好適なゴム成分としては、EPDMの他、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。好適な接着成分としては、レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。ガスケットの形状も、特に限定されない。例えば、上記実施形態のように、厚さ方向断面が台形状を有するものの他、板状の台座部にリップ部が突設されているものでもよい。例えば、リップ部の厚さ方向の断面形状は、円形状、台形状、幅が階段状に変化する形状などが挙げられる。
【0058】
ガスケットの圧縮率は、特に限定されない。例えば、圧縮率を2%以上70%以下にすることが望ましい。圧縮率が2%未満の場合には、ガスケットの反力によるシール性を確保することが難しい。一方、圧縮率が70%を超えると、ガスケットが破損するおそれがある。ガスケットの圧縮率は、次式(I)に準じて算出した値である。
圧縮率(%)=(1-H’/H)×100・・・(I)
[H:無荷重状態のガスケットの厚さ、H’:治具に組み付けられた状態のガスケットの厚さ]
【符号の説明】
【0059】
10、11:シール検査装置、20:第一治具、21:本体部、22:孔部シール部材、23:外側シール部材、24:第一治具、210a~210d:ガス流路、211:下面、212:凹部、30:第二治具、31:本体部、32:スペーサ、33:第二治具、34:孔部シール部材、310:上面、40:ガスケット付きセパレータ、41:セパレータ、42:ガスケット、43a:空気供給孔(孔部)、43b:空気排出孔(孔部)、44a:水素供給孔(孔部)、44b:水素排出孔(孔部)、45a:冷却水供給孔(孔部)、45b:冷却水排出孔(孔部)、46:大環状部、47:小環状部、50:ガス供給部、51:圧力計、A~C:検査領域。