(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】電子蒸気吸入器の作動方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20240710BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20240710BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/465
(21)【出願番号】P 2021195671
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2018519463の分割
【原出願日】2016-10-13
【審査請求日】2021-12-01
(32)【優先日】2015-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ギル、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンコ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルヴィニク、ルボス
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545474(JP,A)
【文献】特表2009-509523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0278250(US,A1)
【文献】国際公開第2014/120479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/57
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱装置を備える電子蒸気吸入器を作動する方法であって、前記誘導加熱装置は、誘導加熱可能要素を加熱し、それによって非液体香味放出媒体を加熱するために、交番電磁場を発生させるための誘導コイルを備え、前記方法は、前記誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、前記誘導コイルを断続的に励磁することを含み、
前記誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却は、前記電子蒸気吸入器を使用してユーザが一連の吸引を行うのを可能にするために、前記非液体香味放出媒体の少なくとも局部領域の温度が、前記誘導加熱装置が始動された後に前記ユーザが最初の吸引を行うのに適切な動作温度に上昇する始動段階である第1動作段階を含む、作動方法。
【請求項2】
前記方法が、前記誘導コイルに供給される電力のパルス周波数および/またはパルス振幅および/またはデューティサイクルを変化させることを含む、請求項1記載の作動方法。
【請求項3】
前記動作温度は、下限が150℃~200℃であり上限が200℃~250℃である動作温度範囲内の温度である、請求項1または2記載の作動方法。
【請求項4】
前記動作温度範囲が、180℃~240℃である、請求項3記載の作動方法。
【請求項5】
前記第1動作段階は、所定の継続時間を有する、請求項3または4記載の作動方法。
【請求項6】
前記第1動作段階の継続時間が10秒を超えない、請求項5記載の作動方法。
【請求項7】
前記継続時間が5秒を超えない、請求項6記載の作動方法。
【請求項8】
前記方法は、前記非液体香味放出媒体の平均温度を前記動作温度の範囲内で維持するための、前記誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、前記誘導コイルが断続的に励磁される第2動作段階を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の作動方法。
【請求項9】
前記交番電磁場の強度は、前記第1動作段階の間よりも前記第2動作段階の間の方が低い、請求項8記載の作動方法。
【請求項10】
前記第2動作段階の間、前記誘導コイルがユーザの要求に基づいて断続的に励磁される、請求項8または9記載の作動方法。
【請求項11】
前記方法は、ユーザによる吸引が差し迫っている、または実際に行われていることを検出手段で検出し、前記検出手段から信号を受信すると前記
誘導コイルへと供給されるエネルギーを増加させることを含む、請求項10記載の作動方法。
【請求項12】
前記検出手段は、ユーザによる唇への移動を検出するための加速度計、マウスピースがユーザの唇に接触するときにそれを検出するための、マウスピースに備え付けられる静電容量センサ、または、ユーザがマウスピースを通して実際に吸引しているときにそれを検出するための流量計/流量スイッチを備える、請求項11記載の作動方法。
【請求項13】
前記誘導コイルが、所定の加熱プロファイルに従って断続的に励磁される、請求項1~12のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項14】
前記所定の加熱プロファイルがユーザによって選択可能である、請求項13記載の作動方法。
【請求項15】
前記所定の加熱プロファイルが、前記非液体香味放出媒体に関連する、検出される特性に基づいて自動的に選択される、請求項13または14記載の作動方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の作動方法に従って、前記誘導加熱装置の動作を制御するように構成される電子蒸気吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して電子蒸気吸入器に関し、特に、ユーザに吸引されるための蒸気を生じさせるために、非液体香味放出媒体が加熱される電子蒸気吸入器の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端部に火をつけるタバコ、葉巻、およびパイプなどの従来の喫煙品の代替品として使用され得る(電子タバコ、電子シガレット、パーソナルベーパライザーとしても知られる)電子蒸気吸入器の使用は、ますます一般的になり、普及してきている。最も広く使われている電子蒸気吸入器は、通常、電池式であり、ユーザにより吸引され得るニコチン含有蒸気を生じさせるため、ニコチンを含む液体を加熱し、噴霧化するために、抵抗加熱要素を使用する。蒸気は、ニコチンを肺に送達するためにマウスピースを通して吸引され、ユーザにより吐き出される蒸気は概して、従来の喫煙品からの煙の見かけを模している。蒸気を吸引することにより、従来の喫煙品に似た身体的な感覚が生まれるが、燃焼させないため、二酸化炭素やタールのような有害薬品は生じない、または吸引されない。
【0003】
前述の、従来の電子シガレットでは、液体が抵抗加熱要素へと吸い上げられている。これにより、液体の急速な噴霧化が提供されるため、ユーザにより起動させられると電子シガレットが急速に始動されるが、香味は最適とならない可能性がある。従来のタバコ材料または他の非液体香味放出媒体が、香味特性の向上を提供するために、液体の代わりに使用され得る。しかし、タバコ材料または他の非液体香味放出媒体を充分な量の蒸気が生じる温度にまで加熱する時間がより長く必要となるため、ユーザが電子シガレットを最初に起動させた後の始動時間(つまり「最初の一服までの時間」)が長くなる。これは、抵抗加熱要素の熱質量がより高く、反応が遅いためである。
【0004】
特許文献1は、3つの加熱段階を有する抵抗加熱式エアロゾル生成装置を提供することにより、この問題に対する解決策を提案している。具体的には、加熱要素の温度が環境温度から第1温度にまで上昇させられる第1段階、加熱要素の温度が第1温度未満に下がる第2段階、および加熱要素の温度が再び上昇する第3段階が存在する。第1段階は高温段階であり、加熱要素の温度が、装置内で使用されるエアロゾル形成基板の燃焼温度に可能な限り近づくように上昇させられる。第2段階は低温段階であり、ユーザへのエアロゾルの持続的な送達を提供するために加熱要素の温度が低下させられる。第3段階も高温段階であり、エアロゾル形成基板が使い果たされるにつれて、ユーザへのエアロゾルの持続的な送達を提供することを目的とする。
【0005】
特許文献1は、第1段階に好ましい温度範囲を340℃~400℃としており、具体例として360℃で45秒間、340℃で60秒間、380℃で30秒間を提供している。特許文献1の説明によると、第1、第2、第3段階のいずれにおいても、最高動作温度は、好ましくは約380℃以下であり、それは、従来の、端部に火をつけるタバコ中に存在する、望ましくない化合物の燃焼温度であると述べられている。したがって、第1段階中の加熱要素の温度は非常に高温であり、比較的に長い時間、最高許容温度に近いことは明白である。これは、エアロゾル形成基板が焦げる原因となる可能性があり、不快な味または異味のエアロゾルを生じるため、極めて不快なものになり得る。これにより、燃焼の結果、従来の、端部に火をつけるタバコ中に発生する望ましくない化合物の発生が開始される可能性もある。さらに、特許文献1に記載される非常に高い温度であっても、特に、端部に火をつけるタバコ、または液体を加熱し噴霧化する電子シガレットの瞬間的な可用性と比較すると、始動時間は依然として容認できないほど長い。
【0006】
したがって、これらの障害を克服する電子蒸気吸入器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示の第1の態様によると、誘導加熱装置を備える電子蒸気吸入器の作動方法であって、誘導加熱装置は、誘導加熱可能要素を加熱し、それによって非液体香味放出媒体を加熱するために、交番電磁場を発生させるための誘導コイルを備え、作動方法は、誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、誘導コイルを断続的に励磁することを含む、作動方法が提供される。
【0009】
本開示の第2の態様によると、
誘導加熱可能要素を加熱し、それによって非液体香味放出媒体を加熱するために交番電磁場を発生させるための誘導コイルを備える誘導加熱装置と、
誘導コイルを断続的に励磁して、誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、誘導加熱装置の動作を制御するための制御装置と
を備える電子蒸気吸入器が提供される。
【0010】
非液体香味放出媒体は、加熱されて、ユーザによる吸引のための蒸気を放出することが可能な任意の材料または材料の組み合わせを含んでもよい。非液体香味放出媒体は乾燥材料であり、容易に取り扱われ得る。非液体香味放出媒体は、タバコもしくはタバコ材料、または乾燥薬草材料であってもよい。非液体香味放出媒体は、微細な破片もしくはペレット、または繊維状の形状を含む任意の適切な形状であり得る。非液体香味放出媒体は、プロピレングリコール、グリセロール、またはその両方の組み合わせなどの蒸気形成媒体が含浸されてもよい。
【0011】
誘導加熱可能要素は、低い熱質量を有しており、それによって、誘導加熱装置の誘導コイルが発生させる交番電磁場が存在する場合において急速に加熱され得る。誘導加熱可能要素は、たとえば、環境温度から約250℃にまで0.2秒で加熱される。熱質量が低いことにより、誘導加熱可能要素はまた、交番電磁場が存在しない場合、熱エネルギーがその周りの非液体香味放出媒体へと伝達されて、急速に冷却される。誘導コイルを断続的に励磁して、断続的な交番電磁場を提供し、そして誘導加熱可能要素の断続的な、またはパルス状の加熱および冷却を提供することによって、非液体香味放出媒体を燃焼または過熱させることなく大量のエネルギーが誘導加熱可能要素へと送達され得る。たとえば伝導、放射、対流による誘導加熱可能要素から非液体香味放出媒体への熱伝達の結果、非液体香味放出媒体またはその1つもしくは複数の局部領域が、ユーザによる吸引に適切な(香味および芳香を含む)特性を有する蒸気が発生する動作温度範囲内の温度にまで急速に加熱され得る。誘導加熱可能要素の断続的またはパルス状の加熱および冷却は、誘導加熱可能要素の低い熱質量と組み合わされて、非液体香味放出媒体が、過熱、燃焼、または焦げが起こる、動作温度範囲より高い温度に達しないことを確実とし、非液体香味放出媒体が動作温度範囲内の温度にまで急速に加熱されることを可能にする。
【0012】
方法は、誘導コイルを断続的に励磁するために、誘導コイルに供給される電力のパルス周波数を変化させることを含んでもよい。方法は、誘導コイルを断続的に励磁するために、誘導コイルに供給される電力のパルス振幅を変化させることを含んでもよい。方法は、誘導コイルを断続的に励磁するために、誘導コイルに供給される電力のデューティサイクルを変化させることを含んでもよい。パルス周波数および/またはパルス振幅および/またはデューティサイクルを制御することによって、誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却の制御が提供され、それにより非液体香味放出媒体の動作温度が制御されることが可能になる。
【0013】
誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却により、非液体香味放出媒体が、下限が150℃~200℃であり上限が200℃~250℃である動作温度範囲内の動作温度にまで加熱されてもよい。典型的には、動作温度範囲は、180℃~240℃である。非液体香味放出媒体が、典型的には燃焼温度が380℃の範囲内であり得るタバコ材料である場合、動作温度範囲の上限が燃焼温度よりも実質的に低いことは明白である。その結果、タバコ材料の焦げや燃焼が回避され、タバコ材料を加熱することにより発生する蒸気が最適な特性を有することを確実にする。
【0014】
方法は、非液体香味放出媒体を動作温度範囲内の温度にまで加熱するための、誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、誘導コイルが断続的に励磁される第1動作段階を含んでもよい。第1動作段階は、典型的には10秒を超えない継続時間を有してもよい。より典型的には、継続時間は5秒を超えない。したがって、始動時間(すなわち「最初の一服までの時間」)が、特許文献1に記載されるエアロゾル生成装置の始動時間よりも著しく短いことは明白となる。
【0015】
方法は、非液体香味放出媒体の平均温度を動作温度範囲内で維持するための、誘導加熱可能要素のパルス状の加熱および冷却を提供する断続的な交番電磁場を発生させるために、誘導コイルが断続的に励磁される第2動作段階を含んでもよい。交番電磁場の強度は、典型的には第1動作段階の間よりも第2動作段階の間の方が低い。これは、電子蒸気吸入器の構成部品が、第1動作段階の間に既に加熱されているため、および非液体香味放出媒体中の水分および蒸気形成媒体の量が減少しているため可能となる。したがって、非液体香味放出媒体の平均温度を動作温度範囲内に維持するために必要なエネルギーが小さくなる。
【0016】
第2動作段階の間、誘導コイルがユーザの要求に基づいて断続的に励磁されてもよい。そのような実施はまた、電磁場が存在する場合に誘導加熱可能要素を急速に加熱し、電磁場が存在しない場合に誘導加熱可能要素を急速に冷却することを可能にする低熱質量および誘導加熱可能要素の急速の加熱および冷却特性により、可能である。ユーザの要求は、電子蒸気吸入器のユーザによる吸引が行われている、または差し迫っていることを示す任意の適切な手段により検出されてもよい。たとえば、電子蒸気吸入器は、ユーザによる唇へと向かう電子蒸気吸入器の移動を検出する加速度計、唇との接触を検出する静電容量センサ、またはユーザによる実際の吸引を検出するための流量計もしくは流量スイッチを含み得る。
【0017】
誘導コイルは、所定の加熱プロファイルに従って断続的に励磁されてもよい。所定の加熱プロファイルは、ユーザによって、たとえば、リアルタイムでワイヤレス(たとえばブルートゥース(登録商標))通信インターフェースを介して選択されてもよい。所定の加熱プロファイルは、たとえば、非液体香味放出媒体に関連する、検出される特性に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0018】
電子蒸気吸入器は、複数の誘導加熱可能要素を備えてもよい。誘導加熱可能要素の数は、非液体香味放出媒体の最適な加熱を提供するために選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の方法により作動され得る電子蒸気吸入器の一例の断面線図である。
【
図2】(a)は、誘導加熱可能要素におけるパルス状の加熱プロファイルの概略図であり、誘導加熱可能要素の断続的な加熱および冷却を示しており、(b)は、(a)のパルス状の加熱プロファイルを発生させる誘導コイルの断続的な動作の概略図であり、(c)は、(a)のパルス状の加熱プロファイルにより提供される非液体香味放出媒体の平均動作温度の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態が、例としてのみ、および添付の図面を参照して説明される。
【0021】
先ず
図1を参照すると、電子蒸気吸入器10は、近位端部14および遠位端部16を有する、略細長のハウジング12を備える。電子蒸気吸入器10は、近位端部14にあるマウスピース18を含み、マウスピース18を通して、ユーザは、非液体香味放出媒体30を加熱することにより発生する蒸気を吸引することができる。電子蒸気吸入器10は、たとえばマイクロプロセッサの形態の制御装置20、および、たとえば誘導的に再充電可能である1つまたは複数のバッテリの形態の電源22を含む。
【0022】
ハウジング12は、非液体香味放出媒体30を含むチャンバ24を含む。チャンバ24は、ハウジング12の近位端部14に、マウスピース18に隣接して設置されるが、これは厳密には必要ではなく、近位端部14と遠位端部16の間の任意の適切な位置に設置され得る。図示されている実施形態では、チャンバ24は、ハウジング12内に形成され、マウスピース18が一体的に形成されているカバー25をハウジング12の近位端部14から取り外すことにより、アクセスされる。代替の実施形態では、チャンバ24は、それ自体が取外し可能な構成要素として形成されてもよく、ハウジング12からその構成要素を取り外すことによってアクセスされ得る。
【0023】
図示されている実施形態では、非液体香味放出媒体30は、チャンバ24に取り外し可能に挿入され得るカートリッジ26として具現化される。カートリッジ26は、細長の誘導加熱可能要素28と、誘導加熱可能要素28の表面に接着または固定され得る非液体香味放出媒体30とを備える。
図1に示される電子蒸気吸入器10の実施形態は、本開示に係る作動方法の説明を容易にするために、単に一例として提供されていることが理解される。他の構成、たとえば、複数の誘導加熱可能要素を使用し、その、またはそれぞれの誘導加熱可能要素が異なる幾何学的形状を有し、カートリッジ26が、非液体香味放出媒体30および1つまたは複数の誘導加熱可能要素28などを含む通気性カプセルに置き換えられている構成は、完全に本開示の範囲内である。
【0024】
非液体香味放出媒体30は、典型的にはタバコ材料を含むが、他の非液体香味放出製品を使用することもできる。非液体香味放出媒体30は、典型的にはプロピレングリコール、グリセロール、またはその両方の組み合わせなどの蒸気形成媒体が含浸され、動作温度の範囲内である温度にまで加熱されると、電子蒸気吸入器10のマウスピース18を通してユーザにより吸引される蒸気を生じさせる。
【0025】
電子蒸気吸入器10は、電源22により励磁され得る誘導コイル36を備える誘導加熱装置34を含む。当業者に理解されるように、誘導コイル36が励磁されると、誘導加熱可能要素28中に渦電流を発生させ、誘導加熱可能要素28を加熱させる交番電磁場が生じる。そして熱は、たとえば伝導、放射、および対流により誘導加熱可能要素28から非液体香味放出媒体30に伝達され、それにより非液体香味放出媒体30が加熱される。誘導加熱装置34の動作は、制御装置20により制御され、次により詳細に説明される。
【0026】
図2(a)~(c)を参照すると、ユーザにより電子蒸気吸入器10が起動されると、制御装置20は、誘導加熱装置34、より具体的には、誘導コイル36を電源22により断続的に励磁させる。この断続的な、またはパルス状の動作は、
図2(b)に明確に示される「オン」および「オフ」のパルスによって表される。この断続的な、またはパルス状の動作により、誘導コイル36が、断続的な、またはパルス状の交番電磁場を発生させ、そして、この交番電磁場が、誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却を提供する。誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却は、誘導加熱可能要素28の経時的な温度変化を示す
図2(a)に明確に示されている。パルス状の加熱および冷却の特性は、たとえば、
図2(b)に示されるように、誘導コイル36に供給される電力のパルス周波数(すなわち、ある所定の時間内におけるパルスの数および/または長さ)を制御することによって影響され得る。あるいは、またはさらに、パルス状の加熱および冷却の特性は、誘導コイル36に供給される電力のパルス振幅を制御することによって、および/または、誘導コイル36に供給される電力のデューティサイクルを変化させることによって、影響され得る。
【0027】
図2(a)に示されるように、誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却は、非液体香味放出媒体30および特にその局部領域を、環境温度T
Aから、典型的には180℃~220℃である動作温度T
1へと急速に加熱する(
図2(c)参照)。この動作温度T
1は、典型的なタバコ材料の燃焼温度(約380℃)よりも著しく低く、確実にタバコ材料の過熱、焦げ、燃焼が起こらないようにする。
【0028】
制御装置20は、誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却を、ユーザによって停止されるまで、電子蒸気吸入器10の使用の期間に亘って、(誘導コイル36を断続的に励磁することによって)維持するように構成され得る。たとえば、非液体香味放出媒体30の構成要素が使い果たされ、その結果、蒸気が、香味および芳香などの満足な特性を有さなくなると、この停止が起こる。
【0029】
図2(c)を参照すると、動作温度T
1を達成するための誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却は、電子蒸気吸入器10の起動後の第1動作段階40中に起こる。この第1動作段階40は、電子蒸気吸入器10を使用可能の状態にするために、非液体香味放出媒体30の最初の加熱が起こり、それによって非液体香味放出媒体30の少なくとも局部領域の温度が環境温度T
Aから、ユーザが吸引するのに適切な蒸気が発生する温度に上昇する始動段階を表すと考えられ得る。第1動作段階40の終了後、第2動作段階42の開始時に非液体香味放出媒体30の平均温度は、より高温の温度T
2に達するまで上昇し続ける。第1動作段階40の典型的な継続期間は10秒未満であり、より典型的には5秒以下の範囲内である。この加熱は、特許文献1において記載される装置の動作の第1段階中(30~60秒)にもたらされる加熱よりもより一層急速であり、その結果、始動時間がより急速になり、したがって「最初の一服までの時間」が可能な限り短くなることが理解される。
【0030】
第2動作段階42の間、制御装置20は、電源22により誘導コイル36に供給されるエネルギーを減少させて、電磁場の強度を低下させ、それによって誘導加熱可能要素28の温度を低下させることができる。これは、第1動作段階40の間に電子蒸気吸入器10の構成部品が加熱されており、非液体香味放出媒体30中の水分および蒸気形成媒体の量が減少しているため、可能である。したがって、誘導コイル36へのエネルギーの入力がより低くなっても、非液体香味放出媒体30は、平均動作温度T
2で維持され得る。
図2(c)に示される第2動作段階42において、非液体香味放出媒体30の動作温度T
2は、比較的一定に維持されて示されている。しかし、非液体香味放出媒体30の動作温度は、確実に満足な香味および芳香がユーザへと送達され続けるように、第2動作段階42の間、上昇または下降し得る。
【0031】
一実施形態では、第2動作段階42の間、制御装置20は、ユーザの要求に基づいて、誘導コイル36に対する電源22のパルス比を変化させることによって、非液体香味放出媒体30に伝達されるエネルギーの量を制御する。とりわけ、電子蒸気吸入器10は、ユーザによる吸引が差し迫っている、または実際に行われているときにそれを検出する手段を備え得る。たとえば、電子蒸気吸入器10は、ユーザによる唇への移動を検出するための加速度計、マウスピースがユーザの唇に接触するときにそれを検出するための、マウスピース18に備え付けられる静電容量センサ(いわゆる唇検出器)、または、ユーザがマウスピース18を通して実際に吸引しているときにそれを検出するための流量計/流量スイッチを備え得る。これらの検出手段は、単に例として提供されること、および他の検出手段も完全に本開示の範囲内であることが理解される。
【0032】
この実施形態では、制御装置20が、ユーザによる吸引が差し迫っている、または実際に行われていることを示す信号を検出手段から受信すると、制御装置20は、電源22により誘導コイル36へと供給されるエネルギーを増加させる。これにより誘導加熱可能要素28の温度が上昇し、そして非液体香味放出媒体30の温度が上昇する。また、制御装置20は、検出手段からの信号を受信すると、電源22により誘導コイル36を断続的に励磁させるように構成される。これにより、誘導コイル36が、断続的な交番電磁場を発生させ、そしてそれによって、誘導加熱可能要素28のパルス状の加熱および冷却が提供される。
【0033】
所望により、誘導コイル36は、所定の加熱プロファイルに従い(第1動作段階40および/または第2動作段階42の間に)断続的に励磁され得る。所定の加熱プロファイルは、たとえば、ユーザの好みおよび/または非液体香味放出媒体30の特性に応じて、より高温または低温の動作温度を提供するために、ユーザにより選択され得る。あるいは、またはさらに、所定の加熱プロファイルは、非液体香味放出媒体30に関連する、検出される特性に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0034】
例示的実施形態が先行する段落において説明されたが、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、これら実施形態に様々な変更を加えてもよいことが理解されるべきである。したがって、請求項の広さおよび範囲は、上記の例示的実施形態に限定されるべきではない。請求項および図面を含み、本明細書において開示される各特徴は、別段の明示的な記載のない限り、同じ、同等の、または類似の目的に適う代替の特徴により置換されてもよい。
【0035】
文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、明細書および請求項において、「備える」、「備えている」、などの用語は、排他的とは対照的な包括的、または網羅的な意味で、いわゆる、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるものである。
【0036】
上記の特徴のその可能なすべての変形例の任意の組み合わせが、本明細書において指摘されない限り、または明確に文脈と矛盾しない限り、本発明に包含される。