(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】時計機構用の、可変幾何形状を持つ回転すい
(51)【国際特許分類】
G04B 5/16 20060101AFI20240710BHJP
G04B 5/19 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G04B5/16
G04B5/19
(21)【出願番号】P 2021523751
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2019059428
(87)【国際公開番号】W WO2020089877
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519003354
【氏名又は名称】ゲナ・ソシエテ・アノニム・モントレ・ヴァルジン
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クレットゥウー・フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ド・オリヴェイラ・ペドロ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517294(JP,A)
【文献】米国特許第2593685(US,A)
【文献】特表2014-519613(JP,A)
【文献】特表2009-527743(JP,A)
【文献】特開2011-174927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品(10)と、
第2部品(20)と、
前記第1部品(10)と前記第2部品(20)とに共通する第1回転軸(40)であって、前記第1部品(10)及び前記第2部品(20)の少なくとも一方が前記第1回転軸(40)を中心に回転可能に配置されている、前記第1回転軸(40)と、
回転すい(1)の所望の幾何形状を選択する選択手段(50)と、
を備える、ユーザに着用される腕時計用の時計機構用の、幾何形状を変えられる前記回転すい(1)において、前記回転すい(1)が
前記選択手段(50)と、前記第1部品(10)と、前記第2部品(20)とに連結されている差動機構(30)であって、前記回転すい(1)の適し得る幾何形状の選択に基づいて、前記
第1回転軸(40)を中心とする少なくとも1つの部品(10、20)の回転移動によって、前記
第1回転軸(40)を中心とする一方の部品(10、20)の他方の部品(20、10)に対する相対位置を変えられるように構成されていて、前記相対位置の変化が前記回転すい(1)の幾何形状及び前記回転すい(1)の重心位置を変える、前記差動機構(30)を備える、時計。
【請求項2】
前記差動機構(30)は、
前記第1部品(10)及び前記第2部品(20)と同軸であり、前記第1部品(10)に連結されている第1太陽歯車(31)と、
第2回転軸(42)を備え、前記第2回転軸(42)の周り及び第1太陽歯車(31)の周りの両方に回転するように配置されている第1遊星歯車(33a)と
を備える、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記差動機構(30)は、
前記第2部品(20)に連結されていて、前記第1部品(10)と、前記第2部品(20)と、前記第1太陽歯車(31)と同軸である、第2太陽歯車(34)と、
第3回転軸を備え、前記第3回転軸の周り及び前記第2太陽歯車(34)の周りの両方に回転するように配置されている第2遊星歯車(33b)と
を備える、請求項2に記載の時計。
【請求項4】
前記第2回転軸(42)は前記第3回転軸である、請求項3に記載の時計。
【請求項5】
前記差動機構(30)は、2つの遊星歯車(33a、33b)と2つの太陽歯車(31、34)とを持つ差動機構である、
請求項1に記載の時計。
【請求項6】
前記差動機構(30)は、前記第1遊星歯車(33a)と前記第1太陽歯車(31)との間
に第1中間車(32)を備える、請求項2に記載の時計。
【請求項7】
前記差動機構(30)は、前記第2遊星歯車(33b)と前記第2太陽歯車(34)との間に第2中間車(35)を備える、請求項3に記載の時計。
【請求項8】
前記差動機構(30)が、
前記第2部品(20)に連結されていて、前記第1部品(10)と、前記第2部品(20)と、前記第1太陽歯車(31)と同軸である、第2太陽歯車(34)と、
第3回転軸を備え、前記第3回転軸の周り及び前記第2太陽歯車(34)の周りの両方に回転するように配置されている第2遊星歯車(33b)と、
前記第2遊星歯車(33b)と前記第2太陽歯車(34)との間に第2中間車(3
5)
と
を備え、
前記第1中間車(32)は前記第2中間車(35)と同軸である、請求項6に記載の時計。
【請求項9】
前記差動機構(30)が、
前記第2部品(20)に連結されていて、前記第1部品(10)と、前記第2部品(20)と、前記第1太陽歯車(31)と同軸である、第2太陽歯車(34)と、
第3回転軸を備え、前記第3回転軸の周り及び前記第2太陽歯車(34)の周りの両方に回転するように配置されている第2遊星歯車(33b)と、
前記第2遊星歯車(33b)と前記第2太陽歯車(34)との間に第2中間車(3
5)
と
を備え、
前記時計が、
前記第2回転軸(42)と、
前記第1中間車(32)と前記第2中間車(35)との少なくとも一方を備える回転軸(43)と
を備える枠(80)を備える、請求項6に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計機構用の可変形状の回転すいと、そのようなすいを備えた時計機構と、そのようなすい及び/又はそのような機構を備えた時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動巻時計用の回転すいは周知であり、広く使用されている。一般的には、時計を装着した人の動きによって発生する振動を利用して、ムーブメントの巻き上げを行うのが回転すいである。すいは、例えば軸受を使って揺動可能に取り付けられている。原則として、反転機はすいの交互の動きを一方的な回転の動きに変える。巻き上げシステムの歯車列は、様々な部品を接続する。巻き上げ歯車列の回転駆動が、例えば、香箱のばねといった、時計の動力源の腕に使用される。
【0003】
時計は、回転すいがケースの底部に配置され、例えば、時計のブリッジ側に取り付けられているものが知られている。また、時計の文字板に対応して回転すいが配置されている時計もある。
【0004】
時計の着用者からは見えない回転すいが知られている。しかし、自動巻きの時計であっても、時計の裏側や表側に回転すいが見えているものは知られている。
【0005】
理想的な回転すいは、大きな重さと大きな慣性モーメントの両方を持っているので、時計を効率よく巻き上げられる。その外周部に質量の大半を集中できる。このような回転すいは、通常、巨大な周辺部分からなり、通常は円弧形をしている。以下、この部分を「慣性領域」と呼ぶ。この文脈では、「板部」が慣性領域と、質量の回転軸を画定する軸受を接続している。
【0006】
一般的に、このような回転すいは、慣性領域を軸受に連結する、腕部などの連結要素も備える。これらの腕部には、回転すいを軽くする一方、回転すいの後ろや前の要素を見通せるようにする開口部が少なくとも部分的に画定されている。
【0007】
開口部を持たない他の回転すいもある。
【0008】
一般原則では、公知の回転すいは、固定的な幾何形状、すなわち、経時的に変化しない幾何形状を持つ単一部品で作られている。また、これらの質量の巻き上げトルクも時間的に変わらない。
【0009】
他の公知例では、回転すいは、部品間の相対位置は経時的に実質的に変わらない2つ又はそれより多い部品を備える。つまり、回転すいが動いている間、これらの部品は同期していることになる。
【0010】
例えば、特許文献1(CH707942)は、剛性の高い機械的な同期リンク、例えば接続ロッドによって連結された2つの部品を備える回転すいに関するもので、回転すいの各端部は、ねじによって部品の一つに固定されている。この2つの部分は常に同期している。
【0011】
特許文献2(EP1136891)は、衝突を避けるために、2つの回転すいがこれらもまた同期した動きをする、歯車列によって連結された同一平面上の2つの回転すいに関するものである。
【0012】
特許文献3(EP1918789)には、2つの部品を備える回転すいが記載されていて、そのうちの1部品は、他方部分の外周にあるガイド手段上を変位されるものである。変位される部品は、回転すいに初期衝動の付与を可能にしている。その後、2つの部品は互いに固定された位置関係になる。
【0013】
既出の単一部品又は複数部品からなる(回転)すいの場合、時計の通常の使用状態では、時計を装着した人の腕の動きによってすいが不均衡になり、これと地球の加速度gによってトルクが画定されることになる。
【0014】
着用者が非常に活動的な人であれば、掛かる加速度は実質的に高めとなり得る。例えば、既存の回転すいを持つ時計を装着した腕や手に、高い加速度がかかることがある。これは、例えば、ユーザがテニスやゴルフなどのスポーツをするときに起こる。
【0015】
現在のところ、巻上げ機構は、通常の活動量の人用に、ぜんまいに係る動力の伝達に係る条件を確保するように選択されている。その結果、非常に活動的な装着者の場合、香箱車のぜんまいに大きな負荷がかかり、摩耗のおそれが排除不可能である。一方、あまり活動的でない着用者の場合は、香箱車のぜんまいが関係する動力の伝達が不十分となるおそれがある。
【0016】
そのような場合、ある条件下では、回転すいの移動によって時計の巻き上げが起こらないことが望まれる。しかし、これでは、時計を「通常」使用する場合、つまりユーザがスポーツをしていない場合などには、もはや時計は巻き上げが起こらないことになる。
【0017】
特許文献4(EP1445668)は、互いに着脱可能な2つの部品を備える回転すいに関するもので、2つの部品は、それらの相対的な変位が回転すいの重心の半径方向の変位を生じさせるように配置されている。そのため、機構の動作条件を変更可能であり、着用者の生活様式に合わせられる。
【0018】
しかし、特許文献4に記載されている回転すいには、ある種の欠点がある。実際、回転すいの重心を移動させるためには、時計をこの目的で訓練を受けた時計職人に依頼する必要がある。その理由は、この重心移動が、第1部品と第2部品の位置関係を固定しているネジやナットを外すことで実現するからである。その後、第2部品を新しい位置に移動させて、ネジとナットを元通りに締めなければならない。
【0019】
幾何学的な変化、つまり時計の質量の中心(又は重心)の位置の変化は、したがって、単純でもなければ、すぐにできるようにもなっていない。時計の着用者には、不可能である。
【0020】
既知の時計のユーザが回転すいの幾何学的形状、つまり重心の位置を直接変えられないので、時計を自分のライフスタイル(例えば、スポーツモード、通常モード、...)に合わせることができない。
【0021】
換言すると、ユーザは、ある条件下では質量の動きが時計の巻き上げを引き起こさないように、また、他の条件下では質量の動きが逆に時計の巻き上げを引き起こすように(例えば、スポーツの練習を終えたときに非限定的に)、時計を自分自身で動かす既知の解決策を持っていないのである。
【0022】
特許文献5(EP2544055)には、回転すいのような回転部品が記載されていて、振動部品の前面が追加の表示面として使用されている。一例を挙げると、回転すいには文字板と3つの出力表示(3つの針を備える)が搭載されている。3本の針は、歯車列を介して、機構の主軸を中心に回転する3つの出力移動体に連動している。文字板は文字板歯車によって運ばれ、その文字板歯車は中間車列を介して、回転すいの角度位置を与える歯に連結されている。この機構では、文字板はムーブメントの板と、ムーブメントを収納するケースに対して、常に同じ角度で保たれる。特許文献5には、回転すいの重心位置や巻き取りトルクを変化させる機構については記載されていない。
【0023】
特許文献6(US2593685)は、自動車のステアリングホイールに取り付けられ、ステアリングホイールの動きや自動車の振動を利用して時計を巻き上げることを意図した機構に関するものである。この目的のために、この機構は、ステアリングホイールに接続されたハウジングと、大きい方が小さい方を備えるように配置された2つの球状又は半球状のすいとを備える。2つのすいは、2つの平行な傘歯車を備える「差動」機構に接続されていて、両方ともシャフトに取り付けられた第3傘歯車に接続されている。この機構は、2つのすいの振動方向とは無関係に、すいの動きが軸を中心とした一方向性の回転運動に変換されるように配置されている。この解決手段では、複数のすいが、それらの動きによって差動機構を回転するのに用いられている。
【0024】
よって、既知の回転すいの制限から解放された、幾何形状を変えられる回転すいが必要とされている。
【0025】
よって、その目的に訓練を受けた時計職人に時計を持ち込まなくても、時計のユーザがすいの形状や重心の位置を変更可能な、幾何形状を変えられる回転すいが必要とされている。
【0026】
よって、ユーザが望むような特定の条件下で、重りの動きが時計の巻き上げを起こさない自動時計などの時計機構及び/又は時計が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】スイス国特許発明第707942号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1136891号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1918789号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1445668号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2544055号明細書
【文献】米国特許第2593685号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の課題は、既知の回転すいの制限から解放された、幾何形状を変えられる回転すいを提供することである。
【0029】
また、本発明の課題は、訓練を受けた時計メーカーに時計を持ち込まなくても、時計の使用者が重心の位置を変更できる、幾何形状を変えられる回転すいを提供することである。
【0030】
また、本発明の課題は、ユーザが回転すいの形状、ひいては重心の位置を直接変更可能であり、ユーザのライフスタイル(例えば、スポーツモード、通常モードなど)に適合可能な時計機構及び/又は自動巻時計などの時計を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明によれば、これらの課題は、特に、請求項14に係る時計によって達成される。
【0032】
本発明に係る時計機構用の可変の幾何形状を持つ回転すいは、
第1部分と、
第2部分と、
第1部品と第2部品に共通の第1回転軸であって、第1部品と第2部品の少なくとも一方は、第1回転軸を中心に振動できるように配置されている、第1回転軸と、
前記回転軸を中心とした少なくとも1つの部品の回転運動により、一方の部品の他方の部品に対する相対的な位置を変化させるように、前記第1部品と前記第2部品に連結されている差動機構であって、この変位又はこれら変位により、前記回転すいの幾何形状及び前記回転すいの重心の位置が変化する、差動機構と
を備える。
【0033】
この内容では、「差動機構」とは、少なくとも1つの太陽歯車と、回転軸を持つ少なくとも1つの遊星歯車とを備え、遊星歯車がその回転軸を中心に回転するようにも、太陽歯車を中心に回転するようにも配置されている、時計の機構のことである。
【0034】
好ましい変形態様では、差動機構は、デュアル遊星歯車及びデュアル太陽歯車を持つ差動機構であり、すなわち、2つの太陽歯車と2つの遊星歯車を備えるものである。
【0035】
差動機構の存在により、この解決策は、特に、この目的のために訓練された時計職人に時計を持ち込むことなく、時計のユーザが直接、回転すいの幾何形状、ひいてはその重心の位置を変えられるという点で、従来技術に優る。
【0036】
ユーザは、このようにして、特定の条件下(例えば、スポーツをしているときに、非限定的な方法で)では、回転すいの動きが時計の巻き上げが確実に起こらないようにし、他の条件下(例えば、スポーツをし終えたときに、非限定的な方法で)では、回転すいの動きが時計の巻き上げが確実に起こるようにできる。
【0037】
本発明の実施例は、以下のような添付の図に描かれる、説明の中に示される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1Aは、回転すいの第1部品が第2部品に対して第1位置を占めている、本発明の一実施形態による回転すいの一面の斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、回転すいの第1部品が第2部品に対して第2位置を占めている、
図1Aの回転すいの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による回転すいの動作を示す論理図である。
【
図4】
図4は、本発明による回転すいの差動機構の一実施形態を示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、回転すいの第1部品が第2部品に対して3つの異なる位置の1つを占めている、本発明による回転すいの別の実施形態の斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、回転すいの第1部品が第2部品に対して3つの異なる位置の1つを占めている、本発明による回転すいの別の実施形態の斜視図である。
【
図6C】
図6Cは、回転すいの第1部品が第2部品に対して3つの異なる位置の1つを占めている、本発明による回転すいの別の実施形態の斜視図でありる。
【
図7A】
図7Aは、回転すいの第1部品が第2部品に対して第1位置を占めている、本発明による回転すいの一実施形態の上面図である。
【
図7B】
図7Bは、回転すいの第1部品は第2部品に対して第2位置を占めている、
図7Aの回転すいの実施形態の上面図である。
【
図8】
図8は、本発明による回転すいの一実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1静止位置にある、本発明による回転すいの一実施形態の駆動機構の上面図を示す。
【
図10】
図10は、第1選択位置にある、制御歯車を備えた
図9の制御機構の上面図である。
【
図13】
図13は、ロックを解除する支持位置にある、
図9の駆動機構の上面図である。
【
図14】
図14は、制御歯車を持ち第2停止位置にある、
図9の制御機構の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1Aは、本発明の実施形態による回転すい1の一面の斜視図を示していて、回転すいの第1部品10が第2部品20に対して第1位置を占めている状態である。
【0040】
図1Aの例では、第1部品10は、その周縁部に、錘(すい)の大部分を画定する慣性領域12と、板部16とを備える。板部16は、慣性領域12を任意の軸受(非図示)に連結するものである。軸受は、例えばボールベアリングであり、回転すい1に支承されていて、第1回転軸40を画定する。図示の例では、板部16は、開口部14を画定する腕部17を備える。他の変形例では、これら開口部14は存在しない。
【0041】
図1Aに示す例では、慣性領域12は、実質的に円弧状の周縁部を有する。さらに、第1部品10は、約60°の角度にわたって延びる実質的に円形領域の形状を持つ。一般的には、この領域は15°から90°の範囲の角度で広がっている。
【0042】
図1Aの例では、板部16は実質的に平面であり、すなわち、実質的に単一平面上に延在する。
【0043】
図1Aの例では、第1部品10とは別の部品である第2部品20は、その周縁部に、その錘(すい)の実質的な部分を画定する慣性領域22と、領域22を軸受(非図示)に連結している板部26をも備える。この場合も、板部26は、開口部24を画定する腕部27で構成されている。他の実施形態では、それら開口部24は存在しない。2つの部品10、20のうち一方の部分に開口部14、24があることは、他方の部品20それぞれ10に開口部があることを必ずしも意味しない。
【0044】
図1Aの例では、慣性領域22は、実質的に円弧状の周縁部を有している。さらに、第1部品10は、部品20の形状と同様に、実質的に円形領域の形を有している。
【0045】
図1Aの例では、2つの部品10、20は実質的に同じ形状を有し、実質的に同じ角度で広がっているが、これは本発明の本質的な特徴ではない。部品10、20が異なる形状を持ち、異なる角度で広がっていることは、実際、着想し得る。
【0046】
図1Aの例では、第2部品20の板部26は、実質的に平らではなく、2つの平面上で広がっている。特に、
図1Aの例では、第2部品20の板部26は、2つの異なる平面に属する、回転軸40に近位の第1部分261と、回転軸40から遠位の第2部分262とを備える。
【0047】
特に、これらの2つの平面261、262の間の距離は、第1部品10の厚さに実質的に対応していて、第1部品10の慣性領域12が接触領域Cに対応して第2部品20の慣性領域22と接触したときに、第1部品10の板部16と第2部品20の板部26の第2部分262とが同一平面上になるようになっている。
【0048】
換言すると、
図1Aの例では、第1部品10は、第2部品20の板部26の第1部分261に一致して重なるのは、部分的にだけである。
【0049】
再度換言すると、
図1Aの例では、第1部品10の慣性領域12は、第2部品20の慣性領域22と並んで配置されている。さらに、第1部品10の板部16の第1部分161が、第2部品20の板部26の第1部分261に(回転軸40に一致して)重ねられ、第1部品10の板部16の第2部分162が、第2部品20の板部26の第2部分262に並べて配置されている。
【0050】
もちろん、他の変形例を着想可能であり、例えば、非限定的な方法として、第1部品10の慣性領域12を第2部品20の慣性領域22と並べて配置し、第1部品10の板部16全体を第2部品20の板部26全体に重ね合わせることがあり得る。
【0051】
さらに別の変形態様では、2つの部品10、20のそれぞれは平面であり、第1部品10の板部16の第1部分161が、第2部品20の板部26の第1部分261に(回転軸40に対応して)重ね合わされている。そのため、2つの部品は隣り合っていても、2つの異なる平面上に存在する。この変形態様では、一方の部品の慣性領域の一端を、他方の部品の慣性領域に部分的に重ねたものが考えられる。
【0052】
一実施形態では、2つの部品10、20が互いに隣り合って配置される場合、回転すい1は、一方の部品の他方の部品に対する位置を維持するための手段を備えてもよい。例えば、一方の部品には、他方の部品の対応する開口部と係合するフィンガーやピンが搭載されるようにしてもよい。その他の変形態様も容易に着想できよう。
【0053】
一変形態様では、第1部品10及び/又は第2部品20は、重い材料、高級時計ではしばしば金又はプラチナの重金属で作られている。
【0054】
本発明によると、
図1Aで部分的に見える差動機構30が、第1部品10と第2部品20に連結されていて、回転軸40を中心とした部品の少なくとも1つの回転運動によって、他の部品に対する一方の部品の相対的な位置を変化させ、この回転運動によって、回転すい1の幾何学的形状が変化し、その結果、回転すい1の回転中心の位置が変化し、その結果、時計の巻上げトルクが変化するようになっている。一方の部品の他方の部品に対する相対的変位は、2つの部品10、20のうちの少なくとも一方が、回転すい1の軸40を中心に回転することによって作られる。
【0055】
実際、
図1Bに見られるように、この差動機構30の効果で、第1部品10は
図1Aと比較すると、この例では固定されたままの第2部品20に向かい合う新しい位置に移動している。
【0056】
図1Bの位置では、すい1の変位は、時計の動力源の巻き上げを生じさせない。これは、回転すい1の巻き上げ動作を完全にキャンセルする位置である。この位置は、この場合、揺動すい1の2つの部品10、20が互いに対向する構成に相当する。この場合、質量の重心はその中心に位置している。
【0057】
対照的に、
図1Aの構成では、腕時計の動力源の巻き上げが最大となっている。この最大巻き上げ位置は、この場合、回転すい1の2つの部品10、20が隣り合っている構成に対応する。
【0058】
ユーザは、本発明による回転すい1の形状、すなわち時計の巻上げトルクを、例えば2つの極端な位置(例えば
図1A及び
図1Bの位置)の間で、いつでも有利に変更可能である。ある変形形態では、時計の着用者は、極端な位置のみを選択可能である。別の変形形態では、これらの2つの極端な位置の間の1つ又はそれよい多い中間位置も選択可能である。
【0059】
一変形態様では、選択されたトルクを表示するために、非図示の指示器が使用される。
【0060】
この結果は、腕時計の着用者が自分の活動を考慮して、あるいは、例えば、腕時計の動力源の最適の緊張力の領域(例えば、中間領域の動力保持)に留まるように、2つの回転部品10、20の形状を適合させるという相互作用となる。
【0061】
図1A及び
図1Bの変形態様では、第2部品20に対して相対的に移動するのは第1部品10であるが、第2部品20が第1部品10に対して相対的に移動することも追加又は代替としてあり得る。
【0062】
例えば、第1部品10の変位の際、第2部品20の変位も考えられる。
【0063】
静止したままの第1部品10に対して、第2部品20のみの相対的移動もあり得る。
【0064】
図1A及び
図1Bの変形態様では、第2部品20に対する第1部品10の角度変位は時計回りであるが、反時計回り、あるいは双方向の変位で実施されてもよい。
【0065】
図2は、本発明による回転すい1の動作を示す論理図である。リューズやボタンなど、時計の巻上げ方法を選択する手段を用いて、ユーザは希望するバリエーションを選択する。代替的に、この手段が、例えば、少なくとも2つの可能な動作モードの中から時計の動作モードをユーザが選択するのに使用してもよく、各動作モードは、質量の2つの部品10、20の所定の構成に対応し、したがって、所定の幾何形状に対応する。例えば、ユーザは、(回転)すいの2つの部品10、20の位置が時計の巻き上げを許容しない「SPORT」モード(例えば、
図1Bに図示)と、すいの2つの部品10、20の位置が時計の最大巻き上げを許容する「NORMAL」モード(例えば、
図1Aに図示)とを選択可能でとなっている。
【0066】
任意選択の指示器60が、部品10、20の選択された構成及び/又は選択された時計の動作モードを示せるようになっている場合がある。
【0067】
本発明による差動機構30は、
図2において、2つの入力(特に、後述する差動機構30の歯車34)、2つの部品のうちの一方、例えば第1部品10と、出力、例えば2つの部品10、20のうちの他方(この場合は第2部品20)とを備えて表現されている。
【0068】
図3は、
図1Aの回転すい1のもう一方の側からの斜視図である。この例では、差動機構30と部品10、20との相互作用の一実施形態を見られる。
【0069】
図3に示す例では、差動機構30は、第1遊星歯車33aを備える。
【0070】
この内容では、「遊星歯車」という用語は、その回転軸を中心に回転すると同時に、別の車の周りを回転可能に配置された車、特に歯車を指すものとする。
【0071】
図3の場合、第1遊星歯車33aは、この歯車が回転可能な回転軸42を備える。第1遊星歯車33aは、第2部品20に連結されていて、特に第2部品20に載っている。第2回転軸42を中心に回転するとともに、第2部品20に連結されている中間車32を中心に回転するように配置されている。そのため、中間車32は連結車となっている。好ましい変形形態では、中間車32の寸法は、中央の車31、34及び2つの遊星歯車33a、33bの寸法よりも小さい。
【0072】
図3の例の中間車32も、第2部品20に載っていて、遊星歯車の保持部として機能する。この歯車は、1つ又はそれより多い遊星歯車が回転可能に、太陽歯車として機能する第1中央車31とかみ合っている。
【0073】
図示の変形態様では、第1太陽歯車31は、第1部品10に連結されていて、特に、第1部品10に載っている。第1太陽歯車31は、回転すい1の回転軸40を中心に回転するように配置されている。
【0074】
図3の例では、差動機構30は、第2遊星歯車33bも備えて、図示のケースでは、第1遊星歯車33aと同軸になっている。この第2遊星歯車33bも、第2部品20に連結されていて、特に第2部品20に載っている。第2遊星歯車33bは、回転軸42を中心に回転するとともに、これも太陽歯車として機能する第2中央歯車34を中心に回転するように配置されていて、この中央歯車を中心に1つ又はそれより多い遊星歯車が回転可能であるようになっている。
【0075】
図示の実施形態では、第2太陽歯車34は、回転すい1の形状変更中を除いて、ほとんどの時間、動かない。第2太陽歯車34は、回転すい1の回転軸40の周りを回転するように配置されている。
【0076】
このように、
図3の差動機構は、2つの遊星歯車と2つの太陽歯車を持つ差動機構である。
【0077】
図3の例では、第1遊星歯車33aは第2遊星歯車33bと同軸であるが、別の変形態様(非図示)では、2つの遊星歯車は同軸ではなく、異なる軸を中心に回転する。
【0078】
図3の例では、回転すい1の2つの中央歯車31、34と2つの部品10、20は、全て同軸である。回転軸40を中心に回転するように配置されている。
【0079】
時計の着用者による変更が行われない標準的な状況では、太陽歯車34はジャンパーのような固定機構(非図示)によって固定されている。
【0080】
時計の着用者による変更の場合、第2太陽歯車34は、回転軸40を中心に回転し、それにより、第2遊星の輪33bをその回転軸42を中心に、太陽歯車34を中心に駆動する。第2遊星歯車33bは、第1遊星歯車33aの回転軸42を中心とした回転と、第1太陽歯車31を中心とした回転を順に駆動する。したがって、第1太陽歯車31も回転軸40を中心に回転して、第1部品10の第2部品20に対する相対変位を生じさせる。
【0081】
一方の部品10、20の他方の部品20、10に対する相対変位の間に、遊星歯車33a、33bは、その回転軸42を中心に回転するとともに、中央車(又は場合によっては中間車)を中心に回転することに留意すべきである。2つの部品が所望の相対位置を占めると、もはや相対変位はしない。この場合、回転すい1の運動中、2つの部品は同期していて、その運動中、遊星歯車33a、33bはその回転軸42を中心にのみ回転している。
【0082】
図3に示す変形例では、時計の着用者によって行われる回転すい1の形状を変更するコマンドは、そのタイミングを変更するために、太陽歯車(例えば第2太陽歯車34)に重ねて固定されている第3中央車(非図示)のレベルで、歯車列(非図示)を介して作用する。好ましい変形態様では、調整の細かさは、第3中央車の歯の数の関数である。
【0083】
図3の変形態様では、その詳細を
図4に、断面図を
図5に示していて、第1遊星歯車33aは第2遊星歯車33bよりも小さく、第1太陽歯車31は第2太陽歯車34よりも大きい。
【0084】
図6Aから
図6Cは、本発明による回転すい1の別の実施形態の斜視図であり、回転すい1の第1部品10が第2部品20に対して3つの異なる位置を占めている。これらの位置は限定的なものではなく、回転すいの第1部品10が第2部品20に対して3つとは異なる数の位置を占めるようにしてもよい。
【0085】
図示の3つのケース全てにおいて、(
図6Cに図示されているように)第1部品10は、第2部品20に完全に重なるように配置されている。2つの部品10、20が完全に重なり合っている場合、その表面占有率は最小限に抑えられる。この場合、この特徴に合わせて、サイズや重量を調整可能である(同じ重さの条件では、この回転すいは、厚みが増えても、より少ない表面積となる)。
【0086】
別の実施形態(図示せず)では、回転すい1は、複数の部品(例えば3つ以上)と、部品を全て重ね合わせるように移動させ、扇を開く要領で移動させるように配置された差動機構とから構成されている。
【0087】
一実施形態では、指示器(非図示)が、時計の着用者が選択した2つの部品10、20の間の角度距離、及び/又は、選択した動作モード、及び/又は、回転すいの形状、及び/又は、回転すいの巻上げトルクを、着用者に知らせる。
【0088】
例えば、この値は、2つの部品10、20が(例えば
図1Bのように)向かい合っているときはゼロであり、それら部品を(例えば
図1Aのように)隣り合わせにしたとき又は(例えば
図6Cのように)重ね合わせたときはN(Nは整数、例えばN=10)であるとして、従来の方法で設定してよい。
【0089】
この指示器が時計の背面、すなわちユーザの手首と接触する部分でしか見えない場合には、次のようにしてもよい。2つの部品10、20のうちの一方、特に動く方の部品は、針などの指示器の端部を表すように構成されている回転すいの端部を備えてもよい。もう一方の部品には、目盛りなどの同等の手段を配置してもよい。
【0090】
別の変形態様では、針回しのような指示器が、例えば歯車34のような太陽歯車に固定されている。この指示器は、例えば、2つの部品10、20の相対的な位置を考慮して、時計の文字板に表示される目盛又は他の同等の手段で指標が付けられていてもよい。この変形例では、車輪34に連結されている歯車列によって、後者の位置が、例えば、針回し又は指標ディスクによって、文字板上の様々な位置に表示されてもよく、また、例えば、開口部から見えるディスクによって、ケースの側面に表示されてもよい。
【0091】
別の変形態様では、差動機構の車輪は、部品10、20が同じ角速度で動くようなサイズにしてもよい。他の変形態様では、差動機構の歯車は、部品10、20が異なる角速度で動くようにサイズが決められている。
【0092】
別の実施形態では、部品の角速度は、対応する太陽歯車の角速度の2倍又はN倍など、より大きい。一実施形態では、この比率を考慮に入れて、可能な補正機構のサイズを決定する。
【0093】
図7Aは、本発明による回転すい1の別の実施形態の上面図を示していて、回転すいの第1部品10が第2部品20に対して第1位置を占めている。特に、第1部品10は、
図1Aと同様に、第2部品20の隣に配置されている。
【0094】
図7Bは、
図7Aの回転すいの実施形態の上面図を示していて、回転すい1の第1部品10は、第2部品20に対して第2位置を占めている。特に、第1部品10は、
図1Bと同様に、第2部品20に向かい合っていることである。矢印F1、F2は、差動機構30の第2部品20に対する第1部品10の相対的な角変位の方向(図示の例では90°)をそれぞれ示している。
【0095】
図8は、本発明による回転すい1の他の実施形態の一部を示す斜視図である。この例では、差動機構30と部品10、20との相互作用の一実施形態を見られる。
【0096】
図8に示す例では、差動機構30は、第1遊星歯車33aを備える。図示の第1遊星歯車33aは、それが回転可能な回転軸42を備える。第1部品10に連結され、回転軸42を中心に回転するとともに、第1部品10に連結されている中間車32を中心に回転するように配置されている。そのため、中間車32は連結歯車となっている。
【0097】
図8に示す例の中間車32は、遊星歯車保持部として機能している。この歯車は、1つ又はそれより多い遊星が回転する太陽歯車として機能する第1中央車31とかみ合っている。
【0098】
図示の実施形態では、第1太陽歯車31は、第1部品10に連結されていて、回転すい1の回転軸40を中心に回転するように配置されている。
【0099】
図8に示す例では、差動機構30は、図示の例では、第1遊星歯車33aと同軸の第2遊星歯車33bも備える。この第2遊星歯車33bは、第2部品20に連結され、回転軸42を中心に回転するとともに、第2部品20に連結されている第2中間車35を中心に回転するように配置されている。このように、中間車35は連結歯車でもある。
【0100】
図8の例の中間車35は、遊星歯車保持部として機能する。この歯車は、1つ又は複数の遊星が回転する太陽歯車の機能を持つ第2中央歯車34と噛み合っている。
【0101】
図示の変形形態では、第1中間車32は、第2中間車35と同軸である。特に、これらの歯車は、回転軸43を共有している。
【0102】
図8に示す実施形態では、回転すい1は、実質的に直線状の中央部81と、実質的に円形の2つの端部82、83とを備える枠80も備えている。これらの端部のそれぞれは、軸を支承し、特に端部82は、第1及び第2遊星歯車33a、33bの回転軸42を支承し、端部83は、第1及び第2中間車32、35の回転軸43を支承する。好ましい変形態様では、枠80は、第1及び第2中間車32、35の回転軸43を中心に回転するように配置されている。
【0103】
図示の変形態様では、枠80、特にその中央部分81は、その重量を軽くするために、開口部84を備える。
【0104】
第1及び第2中間車32、35の回転軸43を担持する枠80の端部83は、制御歯車90と噛み合い可能となるように、歯89を備える。
【0105】
図8に示す実施形態では、制御歯車90は、その重量を軽くするために開口部94を備える。
【0106】
図7A、
図7B、
図8の回転すい1は、差動原理に基づいている。実際、枠80が所与の角度で回転すると、枠に供給された情報が歯車列(遊星歯車33a、33b、中間車32、35)によって中継されるため、2つの部品10、20の角度的な位相のずれが生じる。
【0107】
実際、
図8の変形例では、制御歯車90の角度作用の下で、枠80は、一緒に連結された2つの遊星歯車33a、33bを駆動し、その結果、少なくとも1つの中間車の回転、ひいては対応する太陽歯車の回転を発生させ、これにより、対応する部品(例では部品10)が所望の角度だけ角度的にシフトする。
【0108】
図8に示す変形態様では、第1遊星歯車33aは第2遊星歯車33bよりも小さく、第1中間車32は第2中間車35よりも大きい。最後に、第1太陽歯車31は、第2太陽歯車34よりも小さい。
【0109】
図8に示す変形態様では、第1遊星歯車33a、第1中間車32及び第1太陽歯車31は1つの同じ第1平面上にあり、第2遊星歯車33b、第2中間車35、第2太陽歯車34は1つの同じ第2平面上にあり、第2平面は、
図8では第1平面よりも低い位置にある。
【0110】
図8の変形態様では、制御歯車90の動きが、枠80の端部83の動き、特に軸43を中心とした回転を駆動する。この回転は、一実施形態では、第2遊星歯車33bをその軸42を中心に回転させる。第2遊星歯車33bが第2中間車35と噛み合うことで、第2中間車35は回転軸43を中心に回転する。第2中間車35が第2太陽歯車34と噛み合っているので、第2太陽歯車34が回転軸42を中心に回転することで、第2部品20も同じ回転軸42を中心に回転する。
【0111】
別の変形形態では、これまでの形態と代替的又は補完的に、制御歯車90の動きが、枠80の端部83の動き、特に軸43を中心とした回転を駆動する。この回転は、一実施形態では、第1遊星歯車33aをその軸42を中心に回転させる。第1遊星歯車33aが第1中間車32に噛み合うと、第1中間車32は回転軸43を中心に回転し、第2中間車35は固定されたままとなる。第1中間歯車32が第1太陽歯車31と噛み合っているので、後者が回転軸42を中心に回転し、それによって第1部品10も同じ回転軸42を中心に回転する。
【0112】
図9は、本発明による回転すいの実施形態の駆動機構100が第1静止位置にある状態を示す上面図である。図の例では、シャトルの原理を使用しているため、一方の部品10、20の他方の部品20、10に対する2つの位置決め状態を、双方向の角変位で選択可能である。
【0113】
図9に示す変形態様では、制御機構100は、制御歯車90と同軸のカム101(不可視)と、カム101と協働し、制御装置104に連結されているくちばし部103と、同じくカム101と協働するロック102とを備える。
【0114】
図10に示す変形態様では、カム101は、斜面1013を備える。くちばし部103がカム101に近づくと、くちばし部103は、カム101を押し、それによって部品10、20の相対的位置を変えるには、カム101の傾斜部1013に沿うことになる。
【0115】
図10に示すように、制御装置104が完全に押されると、ロック102は、カム101の切り欠きに落ちて、第1静止位置に固定される。
【0116】
図11及び
図12に見られるように、ロックが既に切り欠き1012(
図10に最もよく見られる)に落ちていて、その弾性手段105(図示の例ではばね)によって、また、制御歯車90の戻りによって、弾性手段106(図示の例では弦巻ばね)によって引っ張られて、所定の位置に保持されている。
【0117】
図13は、くちばし部103がロック解除のためにカム101にかかっている位置にある、
図9の駆動機構の上面図を示している。特に、くちばし部103は、ロック102がカム101から解放されるまで、カム101上、特にその実質的に直線的な範囲上を摺動する。それから、弦巻ばね106の効果により、制御歯車90だけでなく、カム101も初期位置に再配置される。
【0118】
図14は、第2停止位置にあり、制御歯車90を備えた、
図9の駆動機構の上面図を示す。
【0119】
一変形形態では、本発明による回転すい1は、
図1Aのような構成で、いずれにしてもゼロ巻線トルク構成とは異なる構成での回転すい1の加速度が閾値を超えているか否かを確認する装置、及び/又は、そのような回転すい1の加速度を測定する装置を備えている。この装置は、完全に機械的なもの、電気機械的なもの、及び/又は電子的なもので、例えば加速度計などがある。
【0120】
この装置が完全に機械的なものである場合には、回転すい1の加速度が、ある閾値以下になったときに、その位置を変更しないように、2つの部品10、20のうちの1つは連結されている要素を備えてもよい。回転すい1がある閾値以上に加速されると、その装置の位置が変化し、この位置の変化は、回転すいの動きが時計の動力源を巻き上げないように、一方の部品10、20を他方の部品に対して変位させることを(直接又は別の要素を介して)可能にする。本実施形態では、ユーザの介入なしに自動的に回転すいの形状を変更可能であるため、時計が重大な加速度を受ける前にユーザが時計の動作モードを変更していない場合、時計の破損を回避可能である。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
第1部品(10)と、
第2部品(20)と、
第1部品(10)と第2部品(20)とに共通する第1回転軸(40)であって、第1部品(10)及び第2部品(20)の少なくとも一方が第1回転軸(40)を中心に回転可能に配置されている、第1回転軸(40)と、
回転すい(1)の所望の幾何形状を選択する選択手段(50)と、
を備える、ユーザに着用される腕時計用の時計機構用の、幾何形状を変えられる回転すい(1)において、回転すい(1)が
選択手段(50)と、第1部品(10)と、第2部品(20)とに連結されている差動機構(30)であって、回転すい(1)の適し得る幾何形状の選択に基づいて、回転軸(40)を中心とする少なくとも1つの部品(10、20)の回転移動によって、回転軸(40)を中心とする一方の部品(10、20)の他方の部品(10、20)に対する相対位置を変えられるように構成されていて、この変位又はこれら変位が回転すい(1)の幾何形状及び回転すい(19)の重心位置を変える、差動機構(30)を備える、時計。
[観点2]
差動機構(30)は、
第1部品(10)及び第2部品(20)と同軸であり、第1部品(10)に連結されている第1太陽歯車(31)と、
第2回転軸(42)を備え、第2回転軸(42)の周り及び第1太陽歯車(31)の周りの両方に回転するように配置されている第1遊星歯車(33a)と
を備える、観点1に記載の時計。
[観点3]
差動機構(30)は、
第2部品(20)に連結されていて、第1部品(10)と、第2部品(20)と、第1太陽歯車(31)と同軸である、第2太陽歯車(34)と、
第3回転軸を備え、前記第3回転軸の周り及び第2太陽歯車(34)の周りの両方に回転するように配置されている第2遊星歯車(33b)と
を備える、観点2に記載の時計。
[観点4]
第2回転軸(42)は前記第3回転軸である、観点3に記載の時計。
[観点5]
差動機構(30)は、2つの遊星歯車(33a、33b)と2つの太陽歯車(31、34)とを持つ差動機構である、
観点1に記載の時計。
[観点6]
差動機構(30)は、第1遊星歯車(33a)と第1太陽歯車(31)との間に第1中間車(32)を備える、観点2に記載の時計。
[観点7]
差動機構(30)は、第2遊星歯車(33b)と第2太陽歯車(34)との間に第2中間車(35)を備える、観点3に記載の時計。
[観点8]
第1中間車(32)は第2中間車(35)と同軸である、観点6に記載の時計。
[観点9]
第2回転軸(42)と、第1中間車(32)と第2中間車(35)との少なくとも一方を備える回転軸(43)とを備える枠(80)を備える、観点6に記載の時計。
【符号の説明】
【0121】
1 回転すい
10 第1部品
12 第1慣性領域
14 第1部品の開口部
16 第1部品の板部
17 第1部品の腕部
20 第2部品
22 第2部品の慣性領域
24 第2部品の開口部
26 第2部品の板部
27 第2部品の腕部
30 差動機構
31 第1太陽歯車
32 第1中間車
33a 第1遊星歯車
33b 第2遊星歯車
34 第2太陽歯車
35 第2中間車
40 第1回転軸
42 第2回転軸
43 第1、第2中間車の回転軸
50 選択手段
60 指示手段
70 香箱
80 枠
81 枠の中央部分
82 枠の端部
83 枠の端部
84 枠の開口部
89 枠の歯
90 制御歯車
92 制御機構の歯車
94 制御歯車の開口部
100 制御機構
101 カム
102 ロック
103 くちばし部
104 制御装置
105 弾性手段(ばね)
106 弾性手段
161 第1部品の板部の第1部分
162 第1部品の板部の第2部分
261 第2部品の板部の第1部分
262 第2部品の板部の第2部分
1011 カムの直線的範囲
1012 カム切り欠き
1013 カムの傾斜部
C 第1部品と第2部品の接触領域
F1 矢印
F2 矢印