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特許7518831硬化性樹脂組成物、並びに、エラストマー及びシート
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  • 特許-硬化性樹脂組成物、並びに、エラストマー及びシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、並びに、エラストマー及びシート
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
C08F299/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021535417
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029207
(87)【国際公開番号】W WO2021020499
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019140535
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 悠
(72)【発明者】
【氏名】松山 剛知
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273129(JP,A)
【文献】国際公開第2014/003173(WO,A1)
【文献】特開2014-046617(JP,A)
【文献】特開2015-185692(JP,A)
【文献】特開2018-172638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)に由来する構成単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)に由来する構成単位を含む主鎖、並びに、前記構成単位(B)に結合し且つ(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート系モノマー(C)に由来する構成単位を含む側鎖、を含む共重合体(X)と、
末端にのみ(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基を有するマクロモノマーと、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)が、下記式(1)で示される、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す;R2は、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)が、下記式(2)で示される、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;X1は、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す。aは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記イソシアネート系モノマー(C)が、下記式(3-1)で示される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す;X2は水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基を示す。)
【請求項5】
前記マクロモノマーが、前記官能基として(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記マクロモノマーの含有量が、前記共重合体(X)と前記マクロモノマーとの全量に対して、1~50質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、界面活性剤を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、重合開始剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、溶媒を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を反応させてなるエラストマー。
【請求項11】
下記式(5)で示されるエラストマー。
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す;R2は、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;X1は、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す;X2は、水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基を示す;M1はマクロモノマーに由来する構成単位を示す;l1,m1及びO1は各構成単位のモル比を示す。)
【請求項12】
請求項10又は11に記載のエラストマーを含む、シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、並びに、エラストマー及びフレキシブルシートやストレッチャブルシートなどのシートに関する。詳細には、フレキシブルプリント回路基板などのFlexible Printed Circuitsや、回路基板及び配線板の保護フィルム等として好適に用いることのできるシート、並びに、当該シート等の作製に用いられる硬化性樹脂組成物、及び(メタ)アクリル系エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部材に用いられるシートの需要が高まっている。例えば、電子製品の軽量化、小型化、高密度化に伴って、フレキシブルプリント回路基板又はフレキシブルプリント配線板などと呼ばれる、所謂Flexible Printed Circuits(以下、「FPC」と称することがある。)の注目も高まっている。FPCは、絶縁性フィルムをベースフィルム(基板ともいう)とし、接着層などを介して金属箔を貼り合わせたり、導電性インクやフィルムで形成されたパターンを形成するなどして形成される。このようなFPCには各種材料を用いた柔軟性を有する樹脂製のシートがベースフィルムとして使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、樹脂製のシートは、電子部材用基板の保護用途など種々の用途に適用可能であり、例えば、粘着テープや誘電体材料などにも用いられるなど、種々の用途に応じた開発がなされている(例えば、特許文献2及び3参照)。さらに、FPC用の樹脂フィルムも開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-145325号公報
【文献】特開2014-105325号公報
【文献】特開2017-132905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルシートがその伸縮性を十分に発揮するためには、素材に柔軟性が求められており、低いヤング率を示す材料の開発が進められている。しかし、柔軟性に優れる(低ヤング率の)樹脂フィルムは、一般にタック性が高く、他の部材に張り付きやすいという性状を示すことが多い。このように、タック性が高い材料は、取り扱い性が悪く、例えば、スクリーン印刷装置などの装置内での搬送性などの観点から改良が求められている。
【0006】
また、近年フレキシブルシートに対しては薄膜化の要求が増えてきている。しかし、従来のタックレスエラストマーは塗布によって膜を作ることができないものがあり、例えば、膜厚0.3mmよりも薄いエラストマーを製造することは困難であった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決すべく、塗布による塗工が可能であり、タック性が低いエラストマーを作製可能な硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いたエラストマー及びシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)に由来する構成単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)に由来する構成単位を含む主鎖、並びに、前記構成単位(B)に結合し且つ(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート系モノマー(C)に由来する構成単位を含む側鎖、を含む共重合体(X)と、
少なくとも一つの末端に(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基を有するマクロモノマーと、
を含む、硬化性樹脂組成物。
<2>前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)が、下記式(1)で示される、前記<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Rは、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す。)
<3>前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)が、下記式(2)で示される、前記<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;Xは、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す。aは1以上の整数を表す。)
<4>前記イソシアネート系モノマー(C)が、下記式(3-1)で示される化合物である、前記<1>~<3>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Xは水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基を示す。)
<5>前記マクロモノマーが、前記官能基として(メタ)アクリロイル基を有する、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
<6>前記マクロモノマーの含有量が、前記共重合体(X)と前記マクロモノマーとの全量に対して、1~50質量%である、前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
<7>さらに、界面活性剤を有する、前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
<8>さらに、重合開始剤を含む、前記<1>~<7>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
<9>さらに、溶媒を含む、前記<1>~<8>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
<10>前記<1>~<9>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物を反応させてなるエラストマー。
<11>下記式(5)で示されるエラストマー。
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Rは、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;Xは、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す;Xは、水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基を示す;Mはマクロモノマーに由来する構成単位を示す;l,m及びOは各構成単位のモル比を示す。)
<12>前記<10>又は<11>に記載のエラストマーを含む、シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布による塗工が可能であり、タック性が低いエラストマーを作製可能な硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いたエラストマー及びシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ヒステリシスロス及び残留歪を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《硬化性樹脂組成物》
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)〔以下、単に「モノマー(A)」と称することがある〕に由来する構成単位(以下、単に「構成単位(A)」)」と称することがある〕、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)〔以下、単に「モノマー(B)」と称することがある〕に由来する構成単位(以下、単に「構成単位(B)」)」と称することがある〕を含む主鎖、並びに、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート系モノマー(C)〔以下、単に「モノマー(C)」と称することがある〕に由来する構成単位(以下、単に「構成単位(C)」)」と称することがある〕を含む側鎖を含む共重合体(X)と、少なくとも一つの末端に(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基を有するマクロモノマー(以下、単に「マクロモノマー」と称することがある)と、を含む。
【0012】
なお、本明細書を通じて、「アルキル(メタ)アクリレート」は、「アルキルアクリレート」又は「アルキルメタクリレート」を意味し、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」は「ヒドロキシアルキルアクリレート」又は「ヒドロキシアルキルメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。また、特に限定がない限り、“アルキル基”と称した場合には、直鎖、分岐及び脂環構造のアルキル基が含まれる。
【0013】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、少なくとも、共重合体(X)とマクロモノマーとを含む硬化性樹脂組成物であり、必要に応じて、界面活性剤、重合開始剤、溶媒などを含む。また、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、共重合体(X)とマクロモノマーとを反応(好ましくは光硬化反応)させ、架橋構造などを付与することで、タック性が低い(メタ)アクリル系エラストマーを合成することができる。ここで、「硬化性樹脂組成物を反応させてなるエラストマー」とは、共重合体(X)とマクロモノマーとの重合反応によって得られるエラストマーを意味する。なお、以下、共重合体(X)と本実施形態のエラストマーとを区別して説明しているが、これら説明は、共重合体(X)が、弾性体(エラストマー)としての性質を有することを否定するものではない。
【0014】
また、共重合体(X)は、溶媒に対する溶解性に優れる。このため、本実施形態の硬化性樹脂組成物は塗布による塗工が可能であり、塗布により形成した塗膜を硬化させることで、低タック性を達成しながら、例えば、膜厚が0.3mmよりも薄いシート(エラストマー)を作製することができる。
【0015】
<共重合体(X)>
共重合体(X)は、構成単位(A)及び構成単位(B)を含む主鎖に、構成単位(C)を含む側鎖が結合した共重合体である。構成単位(C)を含む側鎖は、構成単位(B)に結合している。共重合体(X)は、例えば、以下の方法で合成することができる。
まず、モノマー(A)とモノマー(B)とを必要に応じて重合開始剤を用いて重合(例えば、紫外線照射による塊状重合)し、構成単位(A)及び(B)で構成された第1の重合体を合成する。ついで、第1の重合体を溶媒中に溶解して溶液とし、当該溶液中にモノマー(C)を添加(必要に応じて触媒を使用)することで、第1の重合体の構成単位(B)に構成単位(C)が結合した共重合体(X)を合成することができる。
なお、共重合体(X)は、構成単位(C)が光架橋部位として機能する共重合体である。
【0016】
<アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)>
本実施形態において、「アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)」は、(メタ)アクリロイル基を一つ有するモノマーであり、後述の本実施形態におけるモノマー(B)及びモノマー(C)と区別される。
本実施形態におけるモノマー(A)は、例えば、下記式(1)で表わされる化合物を用いることができる。
【0017】
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Rは、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す。)
【0018】
式(1)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、Rは、水素原子又はメチル基である。Rのなかでは、重合のさせやすさやヤング率の低い(メタ)アクリル系エラストマーを得る観点から水素原子が好ましい。
【0019】
式(1)で表わされる化合物において、Rは、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基又は水酸基を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基である。
【0020】
直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基などが挙げられるが、本実施形態はこれら例示のみに限定されるものではない。
【0021】
アルキル基に含まれるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。アルキル基に含まれるハロゲン原子の数は、当該アルキル基の炭素数などによって異なるので一概には決定することができないことから、本実施形態の目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0022】
ハロゲン原子を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロn-プロピル基、トリフルオロイソプロピル基、トリフルオロn-ブチル基、トリフルオロイソブチル基、トリフルオロtert-ブチル基などが挙げられるが、本実施形態はこれら例示のみに限定されるものではない。
【0023】
エーテル結合を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メトキシエチルアクリレートなどの直鎖状のアルキル基や、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテルを有するアルキル基などが挙げられる。環状エーテルを有するアルキル基としては以下のものが挙げられるが、本実施形態はこれら例示のみに限定されるものではない。
【0024】
【化6】
【0025】
直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシブチル基などの炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシアルキル基などが挙げられるが、本実施形態はこれら例示のみに限定されるものではない。
【0026】
としては、低ヤング率や溶媒への高溶解性の観点から、メチル基、エチル基、シクロヘキシル、テトラヒドロフラン又はジオキソランが好ましく、メチル基及びエチル基がさらに好ましい。
【0027】
式(1)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、メチルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノナノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの式(1)において、Rが水素原子又はメチル基であり、Rが炭素数1~10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー;2,2,2-トリフルオロエチルアクリレートなどの式(1)において、Rが水素原子又はメチル基であり、Rがハロゲン原子を有する炭素数1~10のアルキル基であるアルキルア(メタ)クリレートモノマー;(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクレートなどの式(1)において、Rが水素原子又はメチル基であり、Rがエーテル結合を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、などの式(1)において、Rが水素原子又はメチル基であり、Rが炭素数2~12のアルコキシアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
これらの中でも、本実施形態におけるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクレートが好ましく、メチルアクリレート及びエチルアクリレートがさらに好ましい。
これらアルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B))
本実施形態において、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)」は、(メタ)アクリロイル基を一つと、水酸基と、を各々少なくとも一つ有するモノマーである。
本実施形態におけるモノマー(B)は、例えば、下記式(2)で表わされる化合物を用いることができる。
【0029】
【化7】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;Xは、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す。aは1以上の整数を表す。)
【0030】
式(2)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、Rは、水素原子又はメチル基である。Rのなかでは、低ヤング率や溶媒への高溶解性の観点から2-ヒドロキシエチルアクリレートや4-ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0031】
式(2)で表わされる化合物において、Zは、-O-、-NH-、又は-S-を示す。Zのなかでは、溶媒への高溶解性の観点から-O-が好ましい。
【0032】
式(2)で表わされる化合物において、Xは、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基である。式(2)においては、これらXが少なくとも1以上の水酸基を有する。
式(2)で表されるaは1以上の整数であり、特に限定はないが、低ヤング率や溶媒への高溶解性の観点から、1~3が好ましく、1又は2が好ましい。
【0033】
における、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基;、ハロゲン原子を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基;及び、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルコキシアルキル基については、式(1)におけるRで例示されたものと同様の基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラ基等が挙げられる。また、水酸基を一つ有するXとしては、例えば、下記のような直鎖状アルキル基、環状アルキル基又はアリール基が挙げられる。
【0034】
【化8】
【0035】
式(2)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、特に限定されるものはではないが、破断応力向上の観点から、以下の化合物を挙げることができる。また、下記化合物の他水酸基を2つ以上有するグリセリンモノメタクリレートなども用いることができる。これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
【化9】
【0037】
((メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート系モノマー(C))
本実施形態において、「(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート系モノマー(C)」は、(メタ)アクリロイル基を一つ有するイソシアネート系モノマーである。
本実施形態におけるモノマー(C)は、例えば、下記式(3-1)で表わされる化合物を用いることができる。
【0038】
【化10】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Xは水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキレン基を示す。)
【0039】
式(3-1)で表わされるモノマー(C)において、Rは、水素原子又はメチル基である。Rのなかでは、反応性向上の観点から水素原子が望ましい。
【0040】
式(3-1)で表わされるモノマー(C)において、Xは、水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキレン基を示す。
【0041】
炭素数1~10の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、sec-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソアミレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、シクロヘキシレン基、n-オクチレン基などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
水酸基を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシn-プロピレン基、ヒドロキシイソプロピレン基、ヒドロキシn-ブチレン基、ヒドロキシイソブチレン基、ヒドロキシtert-ブチレン基などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0043】
アルキレン基に含まれるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。アルキル基に含まれるハロゲン原子の数は、当該アルキル基の炭素数などによって異なるので一概には決定することができないことから、本実施形態の目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0044】
ハロゲン原子を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、トリフルオロメチレン基、トリフルオロエチレン基、トリフルオロn-プロピレン基、トリフルオロイソプロピレン基、トリフルオロn-ブチレン基、トリフルオロイソブチレン基、トリフルオロtert-ブチレン基などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0045】
炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基としては、例えば、メトキシエチレン基、エトキシエチレン基、メトキシブチレン基などの炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数1~6のアルキレン基を有するアルコキシアルキレン基などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0046】
水酸基を有する直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメトキシエチレン基、ヒドロキシエトキシエチレン基、ヒドロキシメトキシブチレン基などの炭素数1~6のヒドロキシアルコキレン基及び炭素数1~6のアルキレン基を有するアルコキシアルキレン基などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0047】
式(3-1)で表わされるモノマー(C)としては、例えば、特に限定されるものはではないが、製造の容易さや入手性の観点から、以下の(1)~(3)の化合物を挙げることができ、式(3-1)で表わされないモノマー(C)としては、以下の(4)の化合物を挙げることができる。モノマー(C)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
【化11】
【0049】
(他のモノマー)
硬化性樹脂組成物は、所望の特性に応じて、本実施形態におけるモノマー成分以外のモノマー成分を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、式(1)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)以外のカルボン酸アルキルエステル系モノマー、アミド基含有モノマー、アリール基含有モノマー、スチレン系モノマー、窒素原子含有モノマー、脂肪酸ビニルエステル系モノマー、ベタインモノマーなどが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
(共重合体(X)の合成方法)
共重合体(X)は、例えば、以下のPC工程(1)~(2)を含む製造方法にて合成することができる。なお、共重合体(X)の合成方法は、下記に示す式で示される化合物を用いた態様に限定されるものではない。
【0051】
PC工程(1):モノマー(A)とモノマー(B)とを重合させて第1の重合体を合成し、さらに当該重合体を溶媒に溶解し、樹脂溶液を得る工程
PC工程(2):得られた前記樹脂溶液に、モノマー(C)と触媒とを添加し、加熱して第2の重合体(共重合体(X))を得る工程
【0052】
PC工程(1)はモノマー(A)とモノマー(B)とを重合させて主鎖を合成することを目的とする工程である。PC工程(1)では、モノマー(A)とモノマー(B)とを重合させることで、共重合体(X)の主鎖となる第1の重合体を得ることができる。
【0053】
【化12】
【0054】
第1の重合体の合成方法は特に限定はないが、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられる。ただし、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、高分子量化の観点から、塊状重合法及び乳化重合法が好ましく、塊状重合法がより好ましい。塊状重合法によって本実施形態の(メタ)アクリル系エラストマーを重合させた場合には、合成の際に分散剤や溶媒などを用いる必要がないため、本実施形態の重合体を合成した系から分散剤や溶媒などを除去する必要がなく、生産性に優れる。
【0055】
第1の重合体を溶液重合法によって重合させる際には、溶媒が用いられる。当該溶媒としては、非水系有機溶媒が好ましい。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、トルエン、流動パラフィンなどの炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、100~1000質量部程度であることが好ましい。
【0056】
第1の重合体を重合させる際の雰囲気は、特に限定はなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0057】
第1の重合体を重合させる際の温度は、特に限定がなく、通常、5~100℃程度の温度であることが好ましい。モノマー成分を重合させるのに要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意であるが、通常、10分間~20時間程度である。
【0058】
重合反応は、残存しているモノマー成分の量が20質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマー成分の量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。この際、モノマー(A)とモノマー(B)とに加えて、上述の重合開始剤などを用いてもよい。第1の重合体の塊状重合の条件は、特に限定はないが、上述の好ましい分子量の範囲のものを得る観点、低ヒステリシス化の観点から、紫外線照射量10mW/cm以下が好ましく、1mW/cm以下がより好ましく、0.6mW/cm以下がさらに好ましい。また、重合性の観点から0.01mW/cm以上が好ましい。
【0059】
PC工程(1)においては第1の重合体を溶媒に溶解し樹脂溶液とすることができる。第1の重合体を樹脂溶液とする目的は、主として、第1の重合体にモノマー(C)を付加させるため、及び、得られる(メタ)アクリル系エラストマーのフィルム化である。第1の重合体を溶解する溶媒としては特に限定はないが、例えば、ベンゼン系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等を用いることができ、具体的には、トルエン、シクロペンタノン、酢酸ブチル、カルビトールアセテート等を挙げることができる。PC工程(1)において第1の重合体を溶解するために用いられる溶媒は、後述する硬化性樹脂組成物中で、共重合体(X)を溶解するために用いられる溶媒として用いることができる。
【0060】
つぎに、PC工程(2)は、第1の重合体(構成単位(A)と構成単位(B)とを含む重合体)にモノマー(C)を導入して第2の重合体を合成する工程である。第2の重合体は、共重合体(X)に該当する。PC工程(2)においてはモノマー(C)とともに触媒を用いることができる。当該触媒は、主として、PC工程(1)で合成された第1の重合体に、モノマー(C)を付加させることを目的として添加される。PC工程(2)においては、第1の重合体の(モノマー(B)由来の)ヒドロキシアルキルアクリロイル基とモノマー(C)のイソシアネート基との縮合反応によって、第1のポリマーにモノマー(C)が導入される。触媒としては、第1の重合体とモノマー(C)との縮合反応に用いることのできるものであれば特に限定はないが、例えば、錫触媒などを用いることができる。
【0061】
【化13】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す;Rは、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数2~12のアルコキシアルキル基を示す;Zは、O、NH、又はSを示す;Xは、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基、アリール基、又は、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキル基を示す;Xは、水酸基若しくはハロゲン原子を有していてもよい直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基、又は、水酸基を有していてもよい炭素数2~12の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルコキシアルキレン基を示すl,mは各構成単位のモル比を示す。)
【0062】
共重合体(X)としては、例えば、以下の重合体が例示される。
【0063】
【化14】
【0064】
PC工程(2)において第1の重合体及びモノマー(C)の反応における反応条件は特に限定はないが、モノマー(C)同士の反応を防ぐ観点、及びモノマー(C)と第1の重合体とを反応させる点から、加熱温度は40~100℃が好ましく、60~80℃がさらに好ましく;加熱時間は0.5~12時間が好ましく、1~6時間がさらに好ましい。加熱温度を40℃以上、加熱時間を1時間以上とすることで、モノマーCと第1の重合体を十分に反応させることができる。また、加熱温度を100℃以下、加熱時間を12時間以下とすることで、モノマー(C)同士が反応することを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態におけるモノマー成分を重合させて共重合体(X)を合成するためには、重合開始剤(光重合開始剤、熱重合開始剤、連鎖移動剤などと用いてもよい。これらについては後述するものと同様のものを適宜選定して用いることができる。
【0066】
共重合体(X)中の構成単位(A)の含有率は、特に限定はないが、低ヤング率や溶媒への高溶解性の観点から、共重合体(X)の総量に対して、30~99質量%が好ましく、60~99質量%がさらに好ましく、80~99質量%が特に好ましい。
共重合体(X)中の構成単位(B)の含有率は、特に限定はないが、得られるエラストマーの耐溶剤性や溶媒への高溶解性の観点から、構成単位(A)の総量に対して、好ましくは0.05~10mol%、0.1~5mol%がさらに好ましく、0.25~2.5mol%が特に好ましい。
共重合体(X)中の構成単位(C)の含有率は、特に限定はないが、得られるエラストマーの耐溶剤性の観点から、構成単位(A)の総量に対して、好ましくは0.05~10mol%、0.1~5mol%がさらに好ましく、0.25~2.5mol%が特に好ましい。
【0067】
共重合体(X)の重量平均分子量(Mw)は、70万以上300万以下であることが好ましい。具体的に、成膜性、並びに、機械物性(低ヤング率、低ヒステリシス)の観点から、70万以上であることが好ましく、100万以上であることがさらに好ましい。また、溶媒に対する溶解性の観点から、300万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル系エラストマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel GMHH-R、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min〕を用いてポリスチレン換算で測定することができる。
【0068】
本実施形態の重合体のガラス転移温度(は、特に限定はないが、低ヤング率の観点から、50℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがさらに好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。
【0069】
<マクロモノマー>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、マクロモノマーを含有する。マクロモノマーは、共重合体(X)の架橋剤として機能し、硬化性樹脂組成物を反応させることで本実施形態のエラストマーを得ることができる。
【0070】
ここで、「マクロモノマー」とは、モノマー分子として機能する、即ち、高分子の基本構造の構成単位となり得る分子であり、重合性基を有するポリマーである。本実施形態におけるマクロモノマーは少なくとも一つの末端に(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基を有する。
本実施形態におけるマクロモノマーが有する“(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基”としては、特に限定はないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、炭素-炭素二重結合を有する窒素含有基、炭素-炭素二重結合有する芳香族基などが挙げられる。
“(メタ)アクリロイル基と重合可能な官能基”の具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等アルキレン基の炭素数が1~4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリロイル基;エチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(“EGDMA”)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(“DEGDMA”)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基;ジアリルアミン、トリアリルアミンなどの炭素-炭素二重結合を有する窒素含有基;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼンなどの炭素-炭素二重結合有する芳香族基などが挙げられる。
【0071】
マクロモノマーの数平均分子量は、特に限定はないが、低タック性の観点から、1000以上であることが好ましく、2500以上であることがさらに好ましく、5000以上であることが特に好ましい。マクロモノマーの数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:東ソー(株)製、品番:Super H2500、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min〕を用いてポリスチレン換算で測定することができる。
【0072】
本実施形態におけるマクロモノマーとしては、特に限定はないが、低タック性の観点から、官能基として、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリロイル基を少なくとも末端、好ましくは片末端に有するポリスチレン系マクロモノマー;架橋性基として(メタ)アクリロイル基を少なくとも末端、好ましくは両末端に有するポリアクリレート系マクロモノマーなどが挙げられる。これらマクロモノマーとしては、市販品として入手可能なものを適宜選定することができ、例えば、東亞合成化学株式会社製のマクロモノマー(例えば、製品名:AS-6(ポリスチレン系マクロモノマー)、製品名:AA-6(ポリメタクリレート系マクロモノマー))などを挙げることができる。
【0073】
硬化性樹脂組成物中のマクロモノマーの含有率は、特に限定はないが、低タック性とひずみ抑制とのバランスを図る観点から、前記共重合体(X)と前記マクロモノマーの全量に対して、好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%、特に好ましくは10~37質量%である。
【0074】
<溶媒>
硬化性樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。上述のように共重合体(X)は、溶媒に対する溶解性に優れる。本実施形態の重合体を溶解可能な溶媒は特に限定はないが、例えば、ベンゼン系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、ケトン系溶媒(例えば、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸へキシル、酢酸ブチル、カルビトールアセテート等)等が挙げられる。硬化性樹脂組成物に用いられる溶媒としては、得られるエラストマー(シート)の着色抑制の観点から、ベンゼン系溶媒が好ましく、例えば、トルエンがさらに好ましい。共重合体(X)は、これら溶媒に対する溶解性に優れるため、一定値以下の厚みを有するシートを作製すること(薄膜化(例えば、0.3mm未満))が可能などフィルム厚に対する自由度が高く、フィルム形成性に優れる。
硬化性樹脂組成物中の溶媒の含有量は、特に限定はないが、膜厚調整の観点から、硬化性樹脂組成物の総量に対して、50~99質量%が好ましく、80~95質量%がさらに好ましく、85~90質量%が特に好ましい。
【0075】
<界面活性剤>
硬化性樹脂組成物中には、界面活性剤を含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物に界面活性剤が含まれていると、表面の凹凸が少ないフィルムや膜を形成することができる。
硬化性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、特に限定はないが、塗布時における塗膜表面の凹凸発生抑制の観点から、硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.01~1質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がさらに好ましく、0.1~0.3質量%が特に好ましい。
【0076】
前記界面活性剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられ、ジメチルシロキサン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤としては、アクリロイル基含有ポリエーテル変性ジメチルシロキサンなど、架橋性官能基を有する界面活性剤が好ましい。当該架橋性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基が挙げられる。
【0077】
界面活性剤としては、市販品として、例えば、BYK Additives & Instruments社製の、BYK-UV3500、BYK-UV3505、BYK-UV3510、BYK-UV3535、BYK-UV3570、BYK-UV3575、BYK-UV3576などを用いることができ、その中でも、BYK-UV3500が好ましい。
【0078】
<重合開始剤>
硬化性樹脂組成物は、共重合体(X)とマクロモノマーとの反応のため、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤のなかでは、(メタ)アクリル系エラストマーに熱履歴を残さないようにする観点から、光重合開始剤が好ましい。
【0079】
-光重合開始剤-
光重合開始剤は、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され、重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、例えば、ラジカル光重合開始剤、カチオン光重合開始剤、アニオン光重合開始剤が挙げられる。これら光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ラジカル光重合開始剤を2種以上併用することができる。
【0080】
ラジカル光重合開始剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(製品名:イルガキュアTPO、BASF製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(製品名:イルガキュア819、BASF製;製品名:イルガキュア819DW、BASF製)
【0081】
α-ヒドロキシケトン系化合物:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:イルガキュア184、BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(製品名:イルガキュア1173、BASF製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959、BASF製)、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名:イルガキュア127、BASF製)
【0082】
分子内水素引抜系化合物:フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル(製品名:イルガキュアMBF、BASF製)
チタノセン化合物系化合物:1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕(製品名:イルガキュア784、BASF製)
ベンジルケタール系化合物:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(製品名:イルガキュア651、BASF製)
【0083】
α-アミノケトン系化合物:2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン(製品名:イルガキュア907、BASF製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(製品名:イルガキュア369、BASF製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(製品名:イルガキュア379EG、BASF製)
【0084】
オキシムエステル系化合物:1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](製品名:イルガキュアOXE-01、BASF製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(例えば、製品名:イルガキュアOXE-02、BASF製;製品名:イルガキュアOXE-03、BASF製;製品名:イルガキュアOXE-04、BASF製;製品名:N-1919、ADEKA製;製品名:N-1414、ADEKA製)などを用いることができる。
【0085】
他のラジカル光重合開始剤としては、例えば、キノン類化合物(例えば、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン);芳香族ケトン類(例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン);ベンゾインエーテル類化合物(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル);アクリジン化合物化合物(例えば、9-フェニルアクリジン(製品名:N-1717、ADEKA製));トリアジン類化合物(例えば、2,4-トリクロロメチル-(4”-メトキシフェニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシナフチル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)などが挙げられる。
【0086】
カチオン光重合開始剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
ヨードニウム塩系化合物:ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(製品名:イルガキュア250:BASF製)
【0087】
ジアゾニウム塩系化合物:4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート
スルホニウム塩系化合物:ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート(製品名:イルガキュア290:BASF製)、トリアリールスルフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート(例えば、製品名:イルガキュア270、BASF製;製品名:CPI300、三洋化成工業製;製品名:CPI400、三洋化成工業製)、
フェロセニウム塩系化合物
【0088】
アニオン光重合開始剤としては、例えば、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
【0089】
また、光重合開始剤と併せて光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、例えば、アミン類としてエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEDB:BASF製)、2-エチルへキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEHA:BASF製)、ケト化合物としてベンゾフェノン類、チオキサントン類、ケト-クマリン類、アントラキノン類(アントラキュアー UVS-581:川崎化成工業製)を用いてもよい。
【0090】
-熱重合開始剤-
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、共重合体(X)100質量部あたり、0.01~20質量部程度であることが好ましい。
【0092】
(連鎖移動剤)
硬化性樹脂組成物は本実施形態におけるモノマー成分を重合させる際に、得られる(メタ)アクリル系エラストマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのチオール基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩、トルエンやシクロペンタノンなどの有機溶媒などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、当該連鎖移動剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、共重合体(X)100質量部あたり、0.01~100質量部程度であることが好ましい。
【0093】
《エラストマー》
上述のように本実施形態の硬化性樹脂組成物は、共重合体(X)とマクロモノマーとを反応(好ましくは光硬化反応)させることでエラストマーを合成することができる。具体的には、共重合体(X)とマクロモノマーとを反応させることで、共重合体(X)の光架橋部位(即ち構成単位(C))にマクロモノマーを結合させることで、本実施形態のエラストマーを合成することができる。
なお、本実施形態のエラストマーの幅や厚み、長さなどの形状は特に限定されるものではない。
【0094】
本実施形態のエラストマーの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記PC工程(3)によって合成することができる。
PC工程(3)は、共重合体(X)(上述の第2の重合体)をさらに光照射によって反応させることで(メタ)アクリル系エラストマーとする工程である。下記に示すように共重合体(X)は、モノマー(C)由来のアクリロイル基を有している。PC工程(3)において、例えば、共重合体(X)及びマクロモノマーに加え、必要に応じて、溶媒、光重合開始剤、界面活性剤などを含む硬化性樹脂組成物に光を照射することによって、共重合体(X)とマクロモノマーとのアクリロイル基等同士を結合させることができ、本実施形態のエラストマーを得ることができる。PC工程(3)における光照射条件は、特に限定はないが、紫外線などを用いることができ、各重合体のアクリロイル基同士を確実に結合させる観点と必要十分な照射量の観点から、紫外線の積算照射量が600~7000mJ/cmであることが好ましく、2800~5600mJ/cmがさらに好ましい。特に、紫外線照射量は4200mJ/cm以上であることが好ましい。また、共重合体(X)とマクロモノマーとを反応させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスのいずれでもよいが、酸素による反応阻害を抑制する観点(特に後述するラミネート処理を施さない場合)から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0095】
【化15】

(式(5)中、R,R,Z,X及びXは、それぞれ独立して前記式(1),(2)及び(3-1)と同様である;Mはマクロモノマーに由来する構成単位を示す;l,m及びOは各構成単位のモル比を示す。)
【0096】
上述のように共重合体(X)は溶媒に対する溶解性に優れるため、溶媒に共重合体(X)及びマクロモノマー等を溶解した硬化性樹脂組成物を用い、当該組成物を塗布などによって塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、上述の光硬化を施すことで、シート状(又はフィルム状)のエラストマーを得ることができる。
塗工による膜形成をおこなうと、所望の機械特性(特に低いタック性)を維持しながら薄膜(例えば、0.3mm(300μm)未満)化が可能となる。
【0097】
《シート》
本実施形態のエラストマーを用いたシートは、柔軟性や伸張・伸縮性に優れるため、フレキシブルシート、又はストレッチャブルシートとして好適に用いることができる。
【0098】
本実施形態のシートの厚さは、特に限定されないが、低タック性と薄膜化とを両立させたシートを得る観点から、300μm未満がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。また、本実施形態のシートは、所定値以下の薄さを達成しながら機械特性に優れ、例えば、100μm程度の薄さを達成しながら低タック性を発揮することができる。
【0099】
本実施形態のシートは、その粘度を調製するために、他のポリマーを適量含有していてもよい。
【0100】
他のポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0101】
本実施形態のシートは、必要により、中和剤が含まれていてもよい。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基性化合物;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、オクチルアミン、トリブチルアミン、アニリンなどの有機塩基性化合物などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0102】
また、低タック性の観点から、本実施形態のシートは、表面処理が施された加工面を有することが好ましい。表面処理は特に限定はないが、例えば、ブラスト加工(凹凸加工)が挙げられる。ここで、本実施形態における“ブラスト加工”とは、ブラスト加工が施された金型を用いてフィルムを成形することや、当該金型を用いて作製したフィルムを離形フィルムとして用い、離形フィルムに形成されたパターンをシート表面に転写する態様(所謂ラミネート加工)を含む概念である。例えば、微細な粒子の砂を、空気などを利用して金型キャビティーに吹きつけ、極小さなキズをつけ、当該金型を用いてシート表面に転写することができる。なお、シート表面に転写されるパターンは、表面張力や硬化収縮の影響を受け、離形フィルムの表面粗さがそのまま転写されるとは限らない。
【0103】
また、本実施形態のシートの少なくとも一方の面の算術平均粗さ(Ra)は、低タック性の観点から、50~1000であることが好ましく、50~500がさらに好ましく、50~300が特に好ましい。算術平均粗さの測定方法は、例えば後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0104】
例えば、ラミネート加工の例としては、乾燥した塗膜(硬化性樹脂組成物)の上面に、離形フィルム(例えば、三井化学東セロ(株)製「SP-PET 100-O1-BU」)やブラストフィルム(前記離形フィルムに、サンドマット加工を施したフィルム)を貼り付け、加熱したラミネーター装置に通す方法が挙げられる。この操作によって、硬化性樹脂組成物の塗膜上面は空気中の酸素から遮断され、窒素処理なしで光硬化が可能となる。例えば、ブラストフィルムを使用した場合、ブラストフィルム表面の凹凸が塗布膜に転写され、塗布膜のタックレス性を向上させることができる。なお、ラミネート加工においては、所望の用途に応じて、離形フィルム又はブラストフィルムを塗膜の両面に貼り付けてもよいし、片面のみに貼り付けてもよい。
また、硬化性樹脂組成物の塗膜にラミネート加工を施すことで、雰囲気中の酸素により反応阻害の影響を少なくできるため、例えば大気下で硬化させた場合であっても、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化効率を高めることができる。
【0105】
本実施形態のシートには、本実施形態の目的が阻害されない範囲内で、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、熱伝導性フィラー、導電性フィラーなどが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0106】
本実施形態のシートのヤング率、破断応力、ストレインは、例えば、引張測定器を用い後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本実施形態のシートのヤング率は、5.00MPa以下程度であることが好ましく、1.0MPa以下がさらに好ましく、0.7MPa以下が特に好ましい。
本実施形態のシートのストレインは、伸縮・伸張性の観点から200%以上が好ましい。
【0107】
本実施形態のシートのヒステリシス、100モジュラスは後述の実施例に記載の方法で測定することができる。具体的には、ヒステリシスは、シートの“残留歪”や“ヒステリシスロス”を測定し、これを一つの指標として評価できる。
本実施形態のシートの残留歪は、スムーズな伸張・伸縮によって保護対象等の曲げ伸ばしに良好に追従する観点から、1.3%以下であることが好ましく、1.15%以下がより好ましく、1.05%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0108】
本実施形態のシートは、低タック性と薄膜化とをバランスよく発揮できることから、FPCのベースフィルムや、電子部材用基板の保護フィルム、可動部の動きを補助する補助材料、伸縮部材の動きに追随して伸縮する伸縮材料、医療材料、繊維製品、ヘルスケア材料、ライフサイエンス材料、又はロボット材料等に好適に用いることができる。
【実施例
【0109】
つぎに、本実施形態を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
<EA-HEA-AOI-AS6の合成>
(共重合体(X)の合成)
エチルアクリレート(モノマー(A))340g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(モノマー(B))3.94g、及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製、商品名:IrgacureTPO〕0.42gを混合することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。
得られたモノマー成分を、SUS製の成型容器(縦:43cm、横:43cm、深さ:2mm)に満たし、上から透明ガラス(縦:43cm、横:43cm、厚さ:2mm)でふたをした後、当該モノマー成分に照射線量が0.58mw/cmとなるように紫外線を上から照射し、モノマー成分を2時間塊状重合させることによって、第1の重合体(モノマー(A)~(B)の重合体)を得た。
【0111】
ついで、得られた第1の重合体8.05gをトルエン72.45gに溶解させることによって、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液に下記モノマー(C-1)0.1016g及び錫触媒〔日東化成(株)製、製品名:ネオスタンU-100〕0.0149gを添加し、これを70℃の温度で2時間よく撹拌し共重合体(X)を含む樹脂溶液を得た。
【0112】
【化16】
【0113】
(硬化性樹脂組成物の調製)
得られた樹脂溶液(10質量%溶液)11.40g(共重合体(X)の含有量1.14g)に、重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン〔東京化成工業(株)製〕0.01g、ポリスチレン系マクロモノマー(東亞合成化学(株)製、商品名:AS-6)0.12g、界面活性剤(BYK Additives & Instruments社製、商品名:BYK-UV3500)0.01g、を加えて撹拌し硬化性樹脂組成物を調製した。
【0114】
(シート状エラストマーの形成)
ブラストフィルム(パナック(株)製(商品名:SP-PET 100-O1-BU)のフィルムに対し、開成工業(株)にてサンドマット加工Dタイプを施したフィルムを2枚用意した。各ブラストフィルム表面の算術平均粗さ(JIS B 0601)は430nmであった。
一方のブラストフィルム(以下、当該フィルムを「裏面側フィルム」と称する。)上に、上述から得られた硬化性樹脂組成物を塗布し塗膜を形成した。
その後、塗膜を60℃の温度で1時間加熱し、溶媒を除去してフィルム状の塗膜を得た。得られた塗膜上にもう一方のブラストフィルム(以下、当該フィルムを「表面側フィルム」と称する)を貼り付け、加熱したラミネーター(FUJIPLA社製、135℃で使用)にて押圧処理を施した。得られたフィルム状の塗膜を空気雰囲気下で、紫外線照射量67mW/cm×を7秒×10パス(積算照射量:4690mJ/cm)で硬化させ、表面側フィルムと裏面側フィルムとで挟持されたエラストマー(シート)1を得た。以下、エラストマー(シート)1において、表面側フィルム側の面を表面、裏面側フィルム側の面を裏面とする。
【0115】
[実施例2]
<EA-HEA-AOI-AS6の合成>
実施例1において、界面活性剤(BYK-UV3500)を用いず、ポリスチレン系マクロモノマー(東亞合成化学(株)製、商品名:AS-6)の添加量を0.67gに変更した以外は実施例1と同様にして、エラストマー(シート)2を得た。
【0116】
[実施例3]
<EA-HEA-AOI-AS6の合成>
実施例1において、ポリスチレン系マクロモノマー(東亞合成化学(株)製、商品名:AS-6)の添加量を0.28gに変更した以外は実施例1と同様にして、エラストマー(シート)3を得た。
【0117】
[実施例4]
<EA-4HBA-MOIEG-AS6の合成>
(共重合体(X)の合成)
エチルアクリレート(モノマー(A))1200g、下記式B-2で示される4-ヒドロキシブチルアクリレート(モノマー(B))8.64g、及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔BASF社製、商品名:IrgacureTPO〕1.49gを混合することにより、重合開始剤を含有するモノマー成分を得た。
【0118】
【化17】
【0119】
得られたモノマー成分に対し、照射線量が0.62mw/cmとなるように紫外線を上から照射した以外は、実施例1と同様にしてモノマー成分2時間塊重合させることによって、第1の重合体(モノマー(A)~(B)の重合体)を得た。
【0120】
ついで、得られた第1の重合体493gをトルエン2791gに溶解させることによって、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液に下記モノマー(C-2)9.71g及び錫触媒〔日東化成(株)製、製品名:ネオスタンU-100〕0.99gを添加し、これを70℃の温度で2時間よく撹拌し共重合体(X)を含む樹脂溶液を得た。
【0121】
【化18】
【0122】
(硬化性樹脂組成物の調製)
得られた樹脂溶液(15質量%溶液)63.28g(共重合体(X)の含有量9.492g)に、重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン〔東京化成工業製〕0.09g、ポリスチレン系マクロモノマー(東亞合成化学(株)製、商品名:AS-6)1.05gを加えて撹拌し硬化性樹脂組成物を調製した。
【0123】
(シート状エラストマーの形成)
実施例1と同様にして、表面側フィルムと裏面側フィルムとで挟持されたエラストマー(シート)4を得た。
【0124】
[実施例5]
<EA-4HBA-MOIEG-AS6の合成>
実施例4において得られた硬化性樹脂組成物46.62gに対し、界面活性剤(BYK Additives & Instruments社製、商品名:BYK-UV3500)0.04gを加えた以外は実施例4と同様にして、エラストマー(シート)5を得た。
【0125】
[比較例1]
<EA-HEA-AOIの合成>
実施例1において、マクロモノマーを加えず、また、ブラストフィルムを貼り付けず、ラミネーターにて押圧処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、エラストマー(シート)6を得た。
【0126】
[比較例2]
エチルアクリレート50.02g、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)1.22g(エチルアクリレートに対して、1mol%)、ポリスチレン系マクロモノマー(東亞合成化学株式会社製、商品名:AS-6)5.69g(組成物中の全固形分に対して10質量%))及び重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:IrgacureTPO)0.0314gを混合することにより、重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を得た。
【0127】
得られた硬化性樹脂組成物を、透明ガラス製の成形型(0.3mm厚シリコンスペーサー、縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.3mmのフィルムを形成可能)内に注入した。次いで、水浴中に設置した成形型に硬化性樹脂組成物に照射線量が0.20mW/cmとなるように紫外線を2時間照射し、モノマー成分を塊状重合させた。その後、水浴から成形型を取り出し、成形型から(メタ)アクリル系エラストマーからなるフィルム(エラストマー7)を取り出した。
得られたエラストマー7は、タック性に優れるものの、溶媒に溶解することができず塗工によりシート状にすることができないため、厚さ0.3mm未満のシートとすることができなかった。
【0128】
《評価》
以下に示す方法に従って、実施例及び比較例のシートの各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
[膜厚]
得られたエラストマーにつき、ブラストフィルムを有する場合には表面側フィルムと裏面側フィルムとを剥離し、厚さ計(製品名:PG-20,株式会社 テクロック製)を用いて、シート厚を測定した。なお、測定は任意の部位について5回おこない、平均値をそのシートの厚みとした。
【0130】
[溶媒に対する溶解性]
各実施例及び比較例中で得られた重合体(実施例及び比較例1における共重合体(X)及び、比較例2におけるエラストマー7)について、樹脂濃度が10%になるように溶媒を添加し、55℃恒温槽で一晩放置し、自公転ミキサーで撹拌した。その後、均一に溶解したか否かを目視にて確認し下記基準にしたがって重合体(比較例のエラストマーを含む)の溶解性を評価した。なお、本評価は、シクロペンタノン及びトルエンの両方に対しておこなった。
〔基準〕
A:シクロペンタノン及びトルエンともに沈殿物などは確認されず重合体が均一に溶解されていた。
B:多少沈殿物が確認されたが、問題のない範囲だった。
C:シクロペンタノン及びトルエンのいずれか、又は、両溶媒に対し沈殿物などが確認された。
【0131】
[タック]
タック試験は、ガラス板、シート(エラストマー)、及び、スクリーン印刷版をこの順に重ね、スクリーン印刷版の表面をスキージでシートに押し付けることによっておこなった。また、同試験は、シートの表面と裏面の両面に対して各々実施した。ただし、比較例2は塊状重合によってシートを形成したため、上述のようにオモテ面・ウラ面は区別せず、両面各々に対して実施した。
具体的には、得られたシート(エラストマー)を縦:100mm、横:100mmに切り出し、必要に応じてタックを測定する側の面(測定面)からブラストフィルムを剥がし、当該測定面を上側にしてガラス板(縦:300mm、横:300mm)上にシートを配置した。この際、シートは測定面とは逆側の面においてガラス板と接しており、且つ、シート面の中心がガラス板の中心と重なるように配置した。その後、徐電器でシートの静電気を除去した。
つぎに、徐電器で静電気を除去したスクリーン印刷版(SERIA社製、製品名:120424_手刷り用、メッシュ仕様:SUS500(カレンダー処理紗厚23μm))を、シートの測定面側に配置した。スクリーン印刷版は、シートの測定面との距離が約10mm離れるように、ガラス板の両端部に配置された部材上に載置した。
印刷版設置後、印刷版の上面からスキージでスクリーン印刷版を押圧しながら左から右へ1回動かし、印刷版をシートの測定面に押しつけた。その後、シートの測定面の状態を目視で観察し、下記基準に従ってシートのタック性を評価した。
【0132】
<基準>
A:シートがスクリーン印刷版に貼りついていなかった。
B:シートがスクリーン印刷版に貼りついていたが、シートをスクリーン印刷版から指で引き剥がす際にシートの変形が認められなかった。
C:シートがスクリーン印刷版に貼りつき剥離できなかった、または、剥離できても剥離後のシートに変形や破断が認められた。
【0133】
[ヤング率、ストレイン、ヒステリシスの測定]
JIS K6251の6.1に規定するダンベル状7号形に打ち抜くことにより、試験片を得た。得られた試験片を引張り試験機〔(株)エー・アンド・デイ製、品番:Tensilon RTG-1310〕のチャック間距離が17mmとなるように取り付け、50mm/minの引張り速度で試験片が破断するまで引張り荷重を加える操作を行ない、ヤング率及び試料片破断時のストレイン(伸び)を測定した。
なお、上述で得られたフィルムの伸びは、下記式に基づいて求めた。
式:〔フィルムの伸び(%)〕=〔破断時の試験片の長さ(mm)-試験片の元の長さ(mm)〕÷〔試験片の元の長さ(mm)〕×100
【0134】
[ヒステリシスの測定]
ヒステリシスについて、その評価指標となるヒステリシスロス及び残留歪を導きだした。詳細には、上述の試験片及び引張試験機を用い、下記測定を行い、得られたグラフを用いて、ヒステリシスロス及び残留歪を算出した。
測定は、試験片に対し、100%伸びまで引張り荷重を加える操作(チャック間距離を34mmにする操作)と100%に達した試験片を0%まで戻す操作(34mmのチャック間距離を17mmまで戻す操作)(いずれも50mm/min)を1サイクルとして2サイクル行い、2サイクル目の測定結果のグラフからヒステリシスロス及び残留歪を算出した。
【0135】
図1を用いてヒステリシスロス及び残留歪の算出方法を詳細に説明する。図1は、ヒステリシスロス及び残留歪を説明するためのグラフである。
ヒステリシスロスは図1において点線(往路)と実線(復路)とに囲まれる領域についてその面積を算出した。ヒステリシスロスが小さいほど追従性が良いことを示す。
残留歪は、図1に記載のように、立ち上がり点(往路において加重0MPa時のstrain値の点)から最大荷重までの線分Aと及び戻り点(復路において加重0MPa時と同様のstress値を示す時のstrain値の点)から最大荷重までの線分Bとの差を用い、ひずみ(残留歪)=(A-B)から算出した。
【0136】
【表1】

表中、「硬化性樹脂組成物中のマクロモノマー比率」は、実施例及び比較例1においては、硬化性樹脂組成物中の共重合体(X)とマクロモノマーとの総量に対するマクロモノマー量(質量%)を意味し、硬化性樹脂組成物中の比較例2においては全モノマーの総量に対するマクロモノマー量(質量%)を意味する。
【0137】
表1からわかるように、実施例及び比較例1中で得られた共重合体(X)は全て溶媒に対する溶解性に優れていた。
また、実施例のシート(エラストマー)は、低いタック性を維持しつつ、0.3mm未満の薄膜とすることができ、タックレスシートとして好適に使用することができた。
一方、マクロモノマーを用いていない比較例1のシート(エラストマー)は、薄膜とした際にタックが高くなり、タックレスシートの用途には不向きであった。
また、モノマー(C)を側鎖として有していない比較例2のシート(エラストマー)は、溶媒に溶解して塗工することができず、0.3mm未満の薄膜とすることができなかった。
【0138】
2019年7月31日に出願された日本国特許出願2019-140535号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
また、明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の(メタ)アクリル系エラストマーは、FPCのベースフィルムや、電子部材用基板の保護フィルム、医療材料、ヘルスケア材料、ライフサイエンス材料、又はロボット材料等に好適に用いることができる。
図1