(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】細胞集団のエネルギー代謝をプロファイリングする方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240710BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C12Q1/06
G01N33/50 K
(21)【出願番号】P 2021559444
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060486
(87)【国際公開番号】W WO2020212362
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-04
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513246469
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】513210666
【氏名又は名称】ユニベルシテ デクス マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D‘AIX-MARSEILLE
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】アルグエリョ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ピエール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】コンベ,アレクシ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008914(JP,A)
【文献】米国特許第05962244(US,A)
【文献】国際公開第2017/153992(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0281049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団のエネルギー代謝プロファイルをプロファイリングする方法であって、
i)
予め生体外に取り出されていた細胞集団又は生体外で培養されていた細胞集団から、前記細胞集団の4つのサンプル[S1]、[S2]、[S3]、及び[S4]を準備すること、
ii)任意の阻害剤の不在下において、前記サンプル[S1]のタンパク質合成レベル[LCo]を測定すること、
iii)前記サンプル[S2]を、解糖及びグルコース由来ピルベートの酸化的リン酸化によるエネルギー産生の阻害剤[A]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LA]を測定すること、
iv)前記サンプル[S3]を、TCA回路、及びピルベート酸化を含む酸化的リン酸化、脂肪酸の酸化、及びアミノ酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[B]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LB]を測定すること、
v)前記サンプル[S4]細胞を、両方の阻害剤[A]及び[B]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[L(A+B)]を測定すること、
vi)前記細胞集団のグルコース依存度を
、下記式(I)を計算することによって評価すること、
グルコース依存度=([LCo]-[LA])/([LCo]-[L(A+B)])×100(I)
vii)前記細胞集団のミトコンドリア依存度を
、下記式(II)を計算することによって評価すること、
ミトコンドリア依存度=([LCo]-[LB])/([LCo]-[L(A+B)])×100(II)
viii)前記細胞集団の解糖能力を
、下記式(III)を計算することによって評価すること、
解糖能力=(1-([LCo]-[LB])/([LCo]-[L(A+B)]))×
100(III)
ix)前記細胞集団の脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化に対する能力を
、下記式(IV)を計算することによって評価すること
脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化の能力=(1-([LCo]-[LA])/([LCo]-[L(A+B)]))×100(IV)
並びに
x)最後に、前記細胞集団の前記エネルギー代謝プロファイルを決定すること、を含む方法。
【請求項2】
前記細胞集団は均一な細胞集団又は不均一な細胞集団からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞集団は、対象から得られる任意の生体サンプルに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞集団は、リンパ球(B細胞及びT細胞など)、ナチュラルキラー細胞、骨髄細胞(単球、マクロファージ、及び樹状細胞)、好中球、好酸球、マスト細胞、好塩基球、又は顆粒球などの免疫細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記阻害剤[A]は、2-デオキシ-グルコース、2-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアキソール-4-イル)アミノ]-2-デオキシグルコース/2-NBDG、フロレチン、3-ブロモピルビン酸(Bromophyruvic acid)、ヨードアセテート、フルオライド及び6-アミノニコチンアミドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップiii)は、所定量のピルベート又はアセテートの存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害剤[B]は、オリゴマイシン(A/B/C/D/E//F及び誘導体)、ロテノン、カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン/FCCP、トリメタジジン/TMZ、2[6(4-クロロフェノキシ)ヘキシル]オキシラン-2-カルボキシレート/エ
トモキシル(Et
omoxir)、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチルスルフィド/BPTES、及びエナシデニブからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤[B]は、ミトコンドリア代謝経路における野生型又は突然変異体酵素の阻害剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
予め生体外に取り出されていた細胞集団又は生体外で培養されていた細胞集団から、前記細胞集団のさらなるサンプル[S5]を準備すること、
前記サンプルを、脂肪酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[C]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LC]を測定すること、及び
前記細胞集団における脂肪酸の酸化の依存度を評価すること、のステップをさらに含
み、
前記脂肪酸の酸化の依存度は式(V)
脂肪酸の酸化の依存度=([LCo]-[LC])/([LCo]-[L(A+B)])×100(V)
を計算することによって評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害剤[C]は、トリメタジジン/TMZ、及び2[6(4-クロロフェノキシ)ヘキシル]オキシラン-2-カルボキシレート/エ
トモキシル(Et
omoxir)からなる群より選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
予め生体外に取り出されていた細胞集団又は生体外で培養されていた細胞集団から、前記細胞集団のさらなるサンプル[S6]を準備すること、
前記サンプルを、アミノ酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[D]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LD]を測定すること、及び
前記細胞集団におけるアミノ酸の酸化の依存度を評価すること、のステップをさらに含
み、
前記アミノ酸の酸化の依存度は式(VI)
アミノ酸の酸化の依存度=([LCo]-[LD])/([LCo]-[L(A+B)])×100(VI)
を計算することによって評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記阻害剤[D]は、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチルスルフィド/BPTES、アミノオキシ酢酸/AOA、及びエピガロカテキン-3-ガレート/EGCGからなる群より選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質合成レベルは、前記サンプルを所定量のピューロマイシンに接触させてから、典型的に検出可能な標識にコンジュゲートした、ピューロマイシンに特異的な所定量のモノクローナル抗体に接触させることによって、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標識は、重金属、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、コロイド金、又はDNAバーコードオリゴヌクレオチドである、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質合成レベルは、サイトメトリー、
Cy
TOF、又はCiteシーケンシングによって評価される、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
特に目的のいくつかの細胞表面マーカー(例えば、B細胞のBCR、CD19又はCD20、及びT細胞のTCR、CD4、CD8、CD25)に特異的な結合パートナー群を使用することによって、前記細胞集団において特定の細胞型を同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップx)において前記細胞の前記エネルギー代謝プロファイルを決定することは、前記細胞が呼吸性プロファイル又は解糖性プロファイルを示すことを結論づけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
診断目的のための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項19】
がんに罹患する患者の生存期間を予測するための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項20】
がんに罹患する対象が治療、特に化学療法又は免疫療法の対象となるかどうかを予測するための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項21】
解糖及びグルコース由来ピルベートの酸化的リン酸化によるエネルギー産生の所定量の阻害剤[A]、
TCA回路、及びピルベート酸化を含む酸化的リン酸化、脂肪酸の酸化、及びアミノ酸の酸化によるエネルギー産生の所定量の阻害剤[B]、
所定量のピューロマイシン、
ピューロマイシンに特異的な、所定量のモノクローナル抗
体を含む、請求項1に記載の方法を行うためのキット。
【請求項22】
脂肪酸の酸化によるエネルギー産生の所定量の阻害剤[C]、
アミノ酸の酸化によるエネルギー産生の所定量の阻害剤[D]、
所定量のピルベート、
所定量のアセテート、
細胞選別のための抗体群、及び
前記代謝プロファイル(すなわち様々な依存度)の評価に適する様々な式(I~VI)を計算するためのソフトウェアパッケージをさらに含む、請求項21に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞集団のエネルギー代謝をプロファイリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー代謝(EM)プロファイルは、細胞がATPを生成するよりどころとなるエネルギーの主供給源及び生化学経路(依存関係)、並びにまた他の代替物を利用するその可能性(能力)を記述する。また、EMプロファイルは、様々な解剖学的位置において並びに内因性及び外因性のシグナリングキューに曝された際に生存するという細胞のコンピテンスを決定する。この情報は、様々な細胞型の生理学的機能及び細胞状態を理解するための中心となる。とりわけ、がん幹細胞、腫瘍性細胞、免疫細胞、ニューロンは、増殖する、分化する、及びその生理学的機能を果たす能力に影響を与えるEMプロファイルを有する。さらに、EMプロファイルはまた、特定の代謝経路の阻害剤に対するがん化細胞の感受性を決定することができるので、腫瘍における手がかりとなる(Wallace et al.,2010)(Connolly et al.,2014;Ganeshan and Chawla,2014;MacIver et al.,2013)。近年、免疫代謝の研究では、免疫細胞が、厳密に調節された細胞型特異的な代謝プロファイルを有することが示されている。この代謝プロファイルは、EMを調節し、その分化プログラムの一部である、特定の遺伝子細胞の発現によって得られる。免疫細胞又はがん細胞特異的EMプロファイルは、活性化又は分化の状態を反映するとともに、遊走する、生存する、又は様々な免疫学的負荷に応答するというこれらの細胞のコンピテンスを決定する。
【0003】
現在、免疫療法後の臨床試験における近年の結果により、がん処置における革命が起こっている。この療法は、がん発症を抑制するという適応免疫応答の細胞傷害性能力を利用している(Assmann and Finlay,2016;Dougan and Dranoff,2009)。この療法は、一般に、直接的又は間接的に細胞傷害性CD8+T細胞を標的とする、免疫細胞の活性化状態を回復又は作り出すことを狙いとし、チェックポイント阻害剤、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、及び養子細胞移入を含む(Newick et al.,2017;Page et al.,2014)。この処置における強い関心は、第3次療法として使用したときでも、一部の患者のがんを治癒するという能力が示されていることに基づいている。しかしながら、この完全な寛解応答は、少数の患者のみに観察される。そうした不均一な応答により、この療法から利益を得られる患者を特定するために腫瘍及び腫瘍浸潤性細胞をより良好に特徴づけるマーカーが求められることとなった。免疫代謝の分野は、免疫状態及び腫瘍プロファイル決定し、患者をより良好に特徴づけるという、EMの使用可能性のため、臨床腫瘍科医の注目を引いている。全体として、免疫療法における標的細胞の代謝状態の変化は、処置有効性の有望な早期の予後判定マーカーに相当する。
【0004】
細胞のエネルギー代謝プロファイルを決定する現在の方法は3つの群に分類可能であり、これらはすべてバルク細胞培養を使用する。第1の群は、代謝阻害剤(すなわち、2-デオキシグルコース/2-DG及びオリゴマイシン A/オリゴ)を使用し、細胞外酸性化率及び様々なEM経路の活性における非直接的であるが正確な他の結果の変化をモニタリングする(Zhang et al.,2012)。第2の群は、質量分析によって、様々な細胞内代謝物のレベルを測定する。第3の群は、固定細胞又はライセートにおいて、特定の代謝経路に関連づけられる酵素の活性をモニタリングする方法を含む(Miller et al.,2017)。Millerらの方法を除いて、これらの技術はすべて多量の精製細胞を必要とし、大がかりな操作、機器や、また十分な大きさの組織サンプルの入手が要求されるので、一般に、ヒト患者又は生検から得た生細胞を特徴づけるために使用できない。
【0005】
このように、現在の不十分な技術ではなく生物学及び医薬におけるいくつかの可能な用途を考慮すると、シングルセル分解能でエネルギー代謝プロファイルを決定するための、簡単で迅速な方法の開発が未だ求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許請求の範囲によって規定されるように、本発明は、細胞集団のエネルギー代謝をプロファイリングする方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ZENITHの根拠及び原理を示す。(A)ATP及びGTPを生成するため、様々な細胞が様々なエネルギー供給源を使用する。これらの供給源は大部分がグルコース、アミノ酸、又は脂肪酸である。これらの様々な分子を使用する細胞は図示される様々なエネルギー代謝プロファイルを示す。タンパク質合成は、利用可能な細胞エネルギー(ATP/GTP)の約30%を消費するので、栄養飢餓にすぐに影響を受ける。(B)ZENITHを使用してEMプロファイルを決定するため、細胞サンプルを細分し、エネルギー経路阻害剤あり又はなしでインキュベートする(例えば、阻害剤なし、阻害剤A、阻害剤B、及び阻害剤A+B)。細胞は、解糖を用いて解糖生成物の酸化的リン酸化によって(GlycOxPhos)又は脂肪酸及びアミノ酸の分解によって(FAO及びGlnlysis)ATPを生成する。阻害剤Aは解糖及びGlycOxPhosを遮断する一方、阻害剤BはGlycOxPhos、FAO及びアミノ酸からのエネルギー産生を遮断し、阻害剤A及びB(及び、又はC)の組合せは、すべての供給源からのATP生成を遮断する。バルクの処理細胞(コントロール、A、B、A+B)は、フローサイトメトリーのため、短時間のピューロマイシン瞬間適用後にシングルセル及びタンパク質合成レベルを特定するように、同じ組み合わせのモノクローナル抗体で処理される。タンパク質合成レベルにおける各処理(エネルギー経路阻害剤)の影響を、マルチパラメーターフローサイトメトリーによって定量化し、適切な分析ソフトウェアで処理する。(C)EMプロファイルを、式に記述されるように、様々な阻害剤で処理した細胞において認められるレベルから引いた、コントロール細胞(PuroCo)におけるピューロマイシン取り込みレベルから直接的に推測した(MFI puro)。
【
図2】
図2は、ATPレベル及びタンパク質合成を示す。4×10
4のMEFを、96ウェルプレートに播種して、2-DG+Oligoで様々な時間処理した。(A)ATPプールにおけるタンパク質合成及びRNA合成阻害の作用を示す。翻訳阻害剤(CHX)、転写阻害剤(ActD)、又は両方のCHX+ActDがない(Co)又はある場合の総ATPレベルを示す(5分の処理)。(B)2-DG+Oligo処理後の時間の関数としてのATPレベルを示す。(C)FACSによってシングルセルにおいて測定した、2-DG+Oligo処理後の時間の関数としての翻訳レベル(ピューロマイシンMFI)を示す。(D)ATPレベルと翻訳レベルと(Puro MFI)の相関性を示す。少なくとも3つの独立実験における両側t検定(A)(*p<0.05;**p<0.001)。N=3つの独立実験(*p<0.05;**p<0.001)。
【
図3】
図3は、MEFにおけるATPレベル又はタンパク質合成活性を使用するEMプロファイル、及び活性化の際のヒト及びマウスT細胞におけるEMプロファイルの変化を示す。(A)代謝阻害剤によって20~30分間処理したMEFにおけるATPレベルを示す。(B)(A)に示すATPレベルから得たEMプロファイルを示す。(C)代謝阻害剤の添加後の様々な時点におけるATPレベルから得たEMプロファイルを示す。(D)代謝阻害剤によって20分間処理したMEFにおけるタンパク質合成レベルを示す。(E)(D)に示すピューロ取り込みレベルで計算したEMプロファイルを示す。(G)ZENITHを使用してマウスの脾臓CD8T細胞を分析した。総PuroMFIは、コントロール細胞(非活性化)又はPMA/イオノマイシン処理において示す。(H)(G)に示す値から得たEMプロファイルを示す。(I)2人の異なる対象(P1及びP3)からのヒト血液セントラルメモリーCD4+T細胞のEMプロファイルを、コントロール(非刺激)又は活性化(aCD3/aCD28ビーズ)においてZENITH方法を使用して生成した。T細胞刺激なし又はありで代謝プロファイルを推定するため、セントラルメモリーCD4T(CD3+CD4+CD45RO+CCR7+)細胞の同定が可能な抗体の組合せを使用した。N=3、少なくとも2つの独立実験における分散分析(*p<0.05;**p<0.005;***p<0.0005)。
【
図4】
図4は、Flt3Lでインビトロにおいて分化させたWT及びPERK KObmDCにおけるZENITHに基づくEMプロファイルを示す。(A)PERK及びERストレスが2-DG処理によって誘導される翻訳喪失に関連するかどうかを判定するため、ZENITHを使用して、WT及びCD11c-Cre PERKflox/floxマウスからのFlt3L-bmDC培養物を分析した。主要なマーカーを示す(方法参照)別個のDCサブセットを、DC1(XCR1+)、DC2(CD11B+)/DC3及びDC6(pDC)と示す。(B)同じインビトロの培養物のDCサブセットにおけるフローサイトメトリーによって測定したピューロマイシン取り込みレベルを示す。ピューロマイシン取り込みの前にコントロール、2-DG、Oligo、及び2-DG+Oligoと共にDCをインキュベートした。(C)(B)における生値から得たグルコース及びミトコンドリア依存度又は解糖及びFAO及びGlnlysis(FAO)能力は、PERKがなくても、細胞が翻訳の阻害を受けることを示す。データは3つの独立マウスの平均±SDとして示し、2つの独立実験を表す。*p<0.05、**p<0.001。
【
図5】
図5は、骨髄由来樹状細胞サブセット(BMDC)のZENITHに基づくEMプロファイルを示す。(A)2DG、コントロール処理、オリゴマイシン、及び2-DG+オリゴマイシンに対応する、3匹のマウス(バイオロジカルレプリケート)のBMDCのタンパク質合成プロファイルの例を示す。タンパク質合成レベルの曲線下面積は、各阻害剤ありで代謝機能(すなわち翻訳)を持続させるという細胞の能力に相当し、代謝プロファイルを得ることができる(0、1、2、3、4、5)。(B)非刺激の(左)又はLPSで4時間刺激した(右)3匹(I、II、III)のWTマウスからのFLT3L由来BMDCのZENITHによる代謝プロファイルを示す。樹状細胞分集団を分析し、その代謝プロファイルを示す。(C)様々なDC分集団において得た、各マウス(n=3)における各レプリケート(n=3)の代謝プロファイルは、同様の代謝プロファイルを有する細胞サブセットをクラスタリングするために使用可能である。(D)様々なDCサブセットにおいて得た代謝プロファイルの統計分析から、DC2が、LPSによってより強力な代謝スイッチが入るサブセットである一方、pDCは、その代謝を変えないということが明らかになった。
【
図6】
図6は、休止及び活性化T細胞のSeahorse(登録商標)及びZENITHの並行分析を示す。(A)Seahorse及びZENITHによって測定した、3人の異なる対象からの定常状態及び活性化(aCD3/CD28)T細胞の解糖能力における変化の間の相関性を示す(P1、P2、P3、ピアソン r=0.92;R
2=0.85;p<0.01)。(B)非活性(non-Act)及び活性化(aCD3/CD28)T細胞における基本酸素消費速度(OCR)を示す。各バーはP1、P2、及びP3の平均を表す(トリプリケート)。(C)非活性(non-Act)及び活性化(aCD3/CD28)T細胞における基本翻訳レベル(抗ピューロ、幾何平均蛍光法、強度)を示す。各バーはP1、P2、及びP3の平均を表す(トリプリケート)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、様々なエネルギー産生経路の阻害の際に細胞集団におけるタンパク質合成レベルを迅速且つ効率的に測定する、本明細書においてZENITHと呼ばれる方法を設計した。実際に、本発明者らは、ピューロマイシン取り込みを新たな抗ピューロマイシンモノクローナル抗体と組み合わせて、表示としてのタンパク質合成強度に基づいてシングルセルレベル分解能でEMプロファイリングを行う確実な方法を開発した。本発明者らによって開発したこの方法は、エクスビボの豊富ではない細胞においてシングルセル分解能でエネルギー代謝プロファイルを得ることを可能し、最小の操作時間、インキュベーション、及びサンプル調製費用に下げることができる。ZENITHは、個々の細胞におけるエネルギー代謝(EM)活性をモニタリングする新たな方法であり、様々で不均一な細胞集団を含むエクスビボのサンプルに使用することができる。ZENITHは、いずれの大がかりな精製作業、専用機器、特定の専門的技術の必要もなく数時間で行うことができる。ZENITHの多用途性は、特に、ヒトの臨床サンプルにおける細胞代謝研究の範囲を広げ、本発明者らは、本明細書において、新たに同定された希少なAXL+CD22+DC集団を含む、血液からの、又は腫瘍母地から単離した、ヒトT細胞及びDCサブセットにおけるEMの多様性をプロファイリングするというZENITHの特性の例を示す。さらに、この免疫細胞の機能的代謝プロファイリングを使用することによって、本発明者らは、発現パターンが様々な機能的EMプロファイルに大きく相関している遺伝子を同定するため、シングルセルRNAシーケンシングデータを利用することができる。このEM遺伝子リストに基づいて、本発明者らは、450個のヒト腫瘍(すなわち、肺、頭部及び頸部、結腸直腸、膀胱、及び肝臓のがん)から単離し、選別した抗原提示細胞(APC)のRNAシーケンシングデータを分析した。発明者らは、患者のAPCが明らかな2つのクラスターとなり、一方は呼吸性APC遺伝子発現プロファイルを示し、他方は解糖性APC遺伝子発現プロファイルを有するということを観察した。
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、細胞集団のエネルギー代謝プロファイルをプロファイリングする方法に関し、該方法は、
i)上述の細胞集団の4つのサンプル[S1]、[S2]、[S3]、及び[S4]を準備すること、
ii)任意の阻害剤の不在下において、サンプル[S1]のタンパク質合成レベル[LCo]を測定すること、
iii)サンプル[S2]を、解糖及びグルコース由来ピルベートの酸化的リン酸化によるエネルギー産生の阻害剤[A]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LA]を測定すること、
iv)サンプル[S3]を、TCA回路、及びピルベート酸化を含む酸化的リン酸化、脂肪酸の酸化、及びアミノ酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[B]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LB]を測定すること、
v)サンプル[S4]細胞を、両方の阻害剤[A]及び[B]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[L(A+B)]を測定すること、
vi)細胞集団のグルコース依存度を評価すること、
vii)細胞集団のミトコンドリア依存度を評価すること、
viii)細胞集団の解糖能力を評価すること、
ix)細胞集団の脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化に対する能力を評価すること、並びに
x)最後に、細胞集団のエネルギー代謝プロファイルを決定すること、を含む。
【0010】
本明細書において使用するように、「細胞」という用語は任意の真核生物細胞を指す。真核生物細胞は、卵巣細胞、上皮細胞、免疫細胞、造血細胞、骨髄細胞、循環血管前駆細胞、心臓細胞、軟骨細胞、骨細胞、β細胞、肝細胞、及びニューロンを限定することなく含む。さらに、上述の用語は多能性幹細胞を含む。本明細書において意図するように、「多能性幹細胞」という表現は、1つ以上の細胞型に分化しやすい分裂可能(division-competent)細胞に関する。好ましくは、多能性幹細胞は分化していない。多能性幹細胞は、幹細胞、特に成体幹細胞(例えば間葉系幹細胞(MSC))及び胚性幹細胞を含む。また、上述の用語は誘導多能性幹細胞(IPS)を含む。したがって、上述の用語は、精製した初代細胞及び不死化細胞株を含む。また、上述の用語は、懸濁液中の細胞(例えば、循環白血球(PBMC))又は接着細胞(例えば内皮細胞)を指す。
【0011】
一部の実施形態において、細胞集団は均一な細胞集団からなる。本明細書において使用するように、「均一な細胞集団」という用語は、1つの細胞型及び/又は1つの細胞状態を含む細胞集団を指す。典型的に、上述の細胞集団は、任意のルーチンの方法によってそれまでに選別又は単離されたものである。
【0012】
一部の実施形態において、細胞集団は不均一な細胞集団からなる。本明細書において使用するように、「不均一な細胞集団」という用語は、2つ以上の様々な細胞型又は細胞状態を含む細胞集団を指す。
【0013】
例えば、上述の細胞集団は、対象(例えば患者)から得られる任意の生体サンプルに由来することができる。本明細書において使用するように、「生体サンプル」という用語は、細胞集団を含む可能性がある生物学的由来の任意のサンプルを指す。生体サンプルの例は、組織、器官、又は全血、血漿、血清などの体液、組織、洗浄液、又は任意の他の試料を含む。一部の実施形態において、生体サンプルは、典型的に生検に由来する組織サンプルである。一部の実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。「腫瘍組織サンプル」という用語は、患者由来の任意の組織の腫瘍サンプルを意味する。一部の実施形態において、腫瘍サンプルは患者から切除した腫瘍に由来することができる。一部の実施形態において、腫瘍サンプルは、患者の原発腫瘍に行った、又は患者の原発腫瘍から離れた転移サンプルに行った生検に由来することができる。一部の実施形態において、腫瘍組織サンプルは、(i)全体的な原発腫瘍(全体として)、(ii)腫瘍中心からの組織サンプル、(iii)腫瘍に近接したリンパ球島、(iv)腫瘍に最近接した位置にあるリンパ節、(v)手術前に採取した腫瘍組織サンプル(例えば、処置後の患者の追跡調査のため)、及び(vi)遠隔転移を含む。一部の実施形態において、腫瘍組織サンプルは、腫瘍の外科的切除後、又は生検のための組織サンプルの採取後を含む、腫瘍から除去された組織片又は組織薄片を含む。腫瘍組織サンプルには、当然ながら、多様な周知の採取後の前処理及び保存手法を施すことができる。典型的に、細胞は、細胞懸濁液を調製するため、組織から解離させる。一次組織から懸濁液を得るための一般的方法は、酵素による脱凝集である。
【0014】
一部の実施形態において、細胞集団は免疫細胞を含む。本明細書において使用するように、「免疫細胞」という用語は、造血器由来であり、免疫応答において役割を担う細胞を含む。免疫細胞は、B細胞及びT細胞などのリンパ球、ナチュラルキラー細胞、単球、好中球、マクロファージ、樹状細胞などの骨髄細胞、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球を含む。一部の実施形態において、細胞集団はT細胞を含む。本明細書において使用するように、「T細胞」という用語は、細胞媒介免疫において重要な役割を担うとともに、細胞表面におけるT細胞受容体の存在によって、B細胞などの他のリンパ球とは区別されるリンパ球の種類を指す。いくつかのT細胞サブセットが記載されており、文脈において示されない限り、典型的には、ヘルパーT細胞(例えば、Th1、Th2、Th9、及びTh17細胞)、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性/抑制性T細胞(Treg細胞)、ナチュラルキラーT細胞、[γ/δ]T細胞、及び/又は自己攻撃性T細胞(例えば、TH40細胞)を含む。一部の実施形態において、「T細胞」という用語は特にヘルパーT細胞を指す。一部の実施形態において、「T細胞」という用語は、より具体的にはTH17細胞(すなわち、IL-17を分泌するT細胞)を指す。一部の実施形態において、「T細胞」という用語は制御性T細胞又は「Treg」細胞を指す。
【0015】
本明細書において使用するように、本発明の文脈における「プロファイリング」という用語は、細胞集団のエネルギー代謝プロファイルを規定することを意味する。
【0016】
本明細書において使用するように、「エネルギー代謝」という用語は、細胞にエネルギー産生物又は代謝物を作り出すこと又は貯蔵することに寄与する、すべての生物学的経路及び反応を指す。
【0017】
本明細書において使用するように、「タンパク質」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、アミノ酸鎖を指す。「タンパク質合成」(又は翻訳)という用語は、細胞質又は小胞体のリボソームが細胞においてタンパク質を合成するプロセスを指す。
【0018】
本明細書において使用するように、「エネルギー産生」という用語は、アデノシン三リン酸(ATP)及びグアノシン三リン酸(GTP)などのエネルギー分子の合成をもたらす細胞における任意のプロセスを指す。
【0019】
本明細書において使用するように、「解糖」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、細胞によるグルコースの代謝酸化を指す。解糖の際、グルコースはピルベートに酸化される。一般的に、好気条件下において、ピルベートは主にアセチル-CoAに変換される。酸素が欠乏すると、ピルベートは乳酸に変換され、主な解糖生成物として排出される。
【0020】
本明細書において使用するように、「ピルベートの酸化的リン酸化」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、クレブス回路から生成されたNADHを酸化することによって内膜の境界においてプロトン勾配(化学浸透圧力性電位)を得る電子伝達系を含むミトコンドリアにおけるプロセスを指す。化学浸透厚圧性勾配がADPのリン酸化を促進するために使用されるとき、ATPは、ATPシンターゼ酵素によって合成される。電子は、最後に、外因性酸素に移送され、2つのプロトンを付加して、水が形成される。
【0021】
本明細書において使用するように、「解糖及びピルベートの酸化的リン酸化によるエネルギー産生の阻害剤」という用語は、解糖及びピルベートの酸化的リン酸化によるエネルギー産生を部分的又は全体的に遮断、抑制、又は阻害する、自然又は合成の、任意の化合物を指す。本発明において、上述の阻害剤を阻害剤[A]と呼ぶ。
【0022】
一部の実施形態において、阻害剤[A]は、2-デオキシ-グルコース、2-[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアキソール-4-イル)アミノ]-2-デオキシグルコース/2-NBDG、フロレチン、3-ブロモピルビン酸(Bromophyruvic acid)、ヨードアセテート、フルオライド及び6-アミノニコチンアミドからなる群より選択される。
【0023】
一部の実施形態において、ステップiii)を、所定量のピルベートの存在下で行う。本明細書において使用するように、「ピルベート」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、ピルビン酸の共役塩基CH3COCOO-を指す。上述の実施形態において、ピルベートの存在により、解糖依存度(PDH依存)を測定することができる。「解糖依存度(PDH依存)」という用語は、解糖がピルベートの存在下において阻害されるとき(すなわち2-デオキシ-グルコース)にエネルギー産生を維持するという細胞の能力を意味する。この条件において、ピルベートはPDHによってアセチル-CoAに変換される。
【0024】
一部の実施形態において、ステップiii)を、所定量のアセテートの存在下で行う。本明細書において使用するように、「アセテート」又は「エタノエート」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、式CH3COO-のイオンを指す。上述の実施形態において、アセテートの存在により、解糖依存度(PDH非依存)を測定することができる。「解糖依存度(PDH非依存)」という用語は、解糖がアセテートの存在下において阻害されるとき(すなわち2-デオキシ-グルコース)にエネルギー産生を維持するという細胞の能力を意味する。この条件において、アセテートはPDH活性非依存的にアセチル-CoAに変換可能である。
【0025】
本明細書において使用するように、「PDH」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、ピルベートをアセチル-CoAに変換して、解糖生成物をクレブス回路につなげる主要な制御酵素である、ピルベート脱水素酵素を意味する。
【0026】
本明細書において使用するように、「脂肪酸の酸化」又は「β酸化」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、脂肪酸分子が真核生物のミトコンドリアにおいて分解され、クエン酸回路に入るアセチル-CoA、並びに電子伝達系に使用される補酵素であるNADH及びFADH2を生成する、異化プロセスを指す。
【0027】
本明細書において使用するように、「アミノ酸の酸化」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、TCA回路に入ることができるとともに、ATP及び/又はGTP合成をもたらすアセチル-CoA、アセテート、ピルベート、α-ケト-グルタレート、又は他の代謝物を生成するというアミノ酸の酸化を指す。
【0028】
本明細書において使用するように、「脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化を含む酸化的リン酸化によるエネルギー産生の阻害剤」という用語は、脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化を含む酸化的リン酸化によるエネルギー産生を部分的又は全体的に遮断、抑制、又は阻害する、自然又は合成の、任意の化合物を指す。本発明において、上述の阻害剤を阻害剤[B]と呼ぶ。
【0029】
一部の実施形態において、阻害剤[B]は、オリゴマイシン(A/B/C/D/E/F及び誘導体)、ロテノン、カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン/FCCP、トリメタジジン/TMZ、2[6(4-クロロフェノキシ)ヘキシル]オキシラン-2-カルボキシレート/エトモキシル(Etomoxir)、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチルスルフィド/BPTES、及びエナシデニブからなる群より選択される。また、ミトコンドリア代謝経路における野生型又は突然変異体酵素の他の阻害剤も使用することができる。本明細書において使用するように、「突然変異」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、野生型ミトコンドリア酵素から逸脱したDNA又はタンパク質配列の任意の変化を指す。これは、DNAの単一の塩基変化、単一のアミノ酸変化、DNAにおける複数の塩基変化、及び複数のアミノ酸変化を含む。また、これは、遺伝子及びその対応タンパク質の挿入、欠失、及びトランケーションを含む。例えば、シトレート合成酵素、NAD+マレート脱水素酵素、NAD+グルタメート脱水素酵素、サクシネートシトクロムc還元酵素、ロテノン-感受性NADHシトクロムc還元酵素、アデニレートキナーゼ、ロテノン-非感受性NADHシトクロムc還元酵素、モノアミン酸化酵素、及びキヌレニン水酸化酵素である酵素の阻害剤を使用することができる。特に、イソシトレート脱水素酵素(IDH)の阻害剤を使用することができる。本明細書において使用するように、「IDH」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、イソシトレート脱水素酵素を指す。IDHはクエン酸回路に関与する酵素である。これは、NAD(P)+をNAD(P)Hに変換しながら、α-ケトグルタレート(a-ケトグルタレート又はa-KG)及びCO2を生成する、イソシトレートの酸化的脱炭酸という、上述の回路の第3ステップを触媒する。これは2ステップのプロセスであり、イソシトレート(2級アルコール)をオキサロサクシネート(ケトン)に酸化、その後カルボキシル基βをケトンに脱炭酸して、α-ケトグルタレートを形成することに関与する。上述の酵素の他のアイソフォームが同じ反応を触媒する。しかしながら、この反応はクエン酸回路に関連せず、ミトコンドリア及びペルオキシソームと同様に細胞質基質において行われ、補因子としてNAD+ではなくNADP+を使用する。IDH1及びIDH2における突然変異は、当該技術分野で周知であり、典型的には酵素の活性部位にあり、イソシトレート結合に関与する。多くの場合、これらは、IDH2タンパク質のアルギニン-140(R140)残基に影響するミスセンス変化である。IDH1突然変異体は、イソシトレートをa-ケトグルタレートに変換する野生型酵素の能力を欠いているが、a-KGをがん代謝物の2-ヒドロキシグルタレート(2HG)に変換させる新形態の活性を得ている。
【0030】
本明細書において使用するように、「グルコース依存度」という用語は、細胞がグルコースなしでエネルギーを産生できないことを指す。一部の実施形態において、細胞のグルコース依存度は式(I)を計算することによって評価される。
グルコース依存度=([LCo]-[LA])/([LCo]-[L(A+B)])×100(I)
【0031】
本明細書において使用するように、「ミトコンドリア依存度」という用語は、細胞がエネルギー性ミトコンドリア経路なしでエネルギーを産生できないことを指す。一部の実施形態において、細胞のミトコンドリア依存度は式(II)を計算することによって評価される。
ミトコンドリア依存度=([LCo]-[LB])/([LCo]-[L(A+B)])×100(II)
【0032】
本明細書において使用するように、「解糖能力」という用語は、解糖以外の他のすべての経路が阻害されるとき、細胞がエネルギーを産生できることを指す。一部の実施形態において、細胞の解糖能力は式(III)を計算することによって評価される。
解糖能力=(1-([LCo]-[LB])/([LCo]-[L(A+B)]))×100(III)
【0033】
本明細書において使用するように、「脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化の能力」という用語は、脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化以外の他のすべての経路が阻害されるとき、細胞がエネルギーを産生できることを指す。一部の実施形態において、脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化の能力は式(IV)を計算することによって評価される。
脂肪酸の酸化及びアミノ酸の酸化の能力=(1-([LCo]-[LA])/([LCo]-[L(A+B)]))×100(IV)
【0034】
一部の実施形態において、細胞は、細胞型に応じて、20~40分の短時間、阻害剤に接触させる。例えば、線維芽細胞には20分の阻害で十分である一方、ヒト血液T細胞では40分が最適である。阻害剤と共により長時間のインキュベート(すなわち2時間以上)をすることにより、代償性機構に関与する遺伝子の誘導、細胞死の誘導、又は細胞の代謝活性を遮断する細胞ストレス経路の活性化などの、望ましくない作用がもたらされ得る。
【0035】
一部の実施形態において、本発明の方法は、
細胞集団のさらなるサンプル[S5]を準備すること、
上述のサンプルを、脂肪酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[C]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LC]を測定すること、及び
細胞集団における脂肪酸の酸化の依存度を評価すること、のステップをさらに含む。
【0036】
本明細書において使用するように、「脂肪酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤」という用語は、脂肪酸の酸化によるエネルギー産生を部分的又は全体的に遮断、抑制、又は阻害する、自然又は合成の、任意の化合物を指す。本発明において、上述の阻害剤を阻害剤[C]と呼ぶ。
【0037】
一部の実施形態において、阻害剤[C]は、トリメタジジン/TMZ、及び2[6(4-クロロフェノキシ)ヘキシル]オキシラン-2-カルボキシレート/エタモキシル(Etamoxir)からなる群より選択される。
【0038】
本明細書において使用するように、「脂肪酸の酸化の依存度」という用語は、脂肪酸の酸化が阻害されるとき、細胞がエネルギーを産生できず、代謝活性を維持できないことを指す。一部の実施形態において、脂肪酸の酸化の依存度は式(V)を計算することによって評価される。
脂肪酸の酸化の依存度=([LCo]-[LC])/([LCo]-[L(A+B)])×100(V)
【0039】
一部の実施形態において、本発明の方法は、
細胞集団のさらなるサンプル[S6]を準備すること、
上述のサンプルを、アミノ酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤[D]に接触させ、該サンプルのタンパク質合成レベル[LD]を測定すること、及び
細胞集団におけるアミノ酸の酸化の依存度を評価すること、のステップをさらに含む。
【0040】
本明細書において使用するように、「アミノ酸の酸化によるエネルギー産生の阻害剤」という用語は、アミノ酸の酸化によるエネルギー産生を部分的又は全体的に遮断、抑制、又は阻害する、自然又は合成の、任意の化合物を指す。本発明において、上述の阻害剤を阻害剤[D]と呼ぶ。
【0041】
一部の実施形態において、阻害剤[D]は、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチルスルフィド/BPTES、アミノオキシ酢酸/AOA、及びエピガロカテキン-3-ガレート/EGCGからなる群より選択される。
【0042】
本明細書において使用するように、「アミノ酸の酸化の依存度」という用語は、アミノ酸の酸化が阻害されるとき、細胞がエネルギーを産生できず、代謝活性を維持できないことを指す。一部の実施形態において、アミノ酸の酸化の依存度は式(VI)を計算することによって評価される。
アミノ酸の酸化の依存度=([LCo]-[LD])/([LCo]-[L(A+B)])×100(VI)
【0043】
一部の実施形態において、タンパク質合成レベルの測定は当該技術分野において周知であるいずれかのものによって決定される。例えば、タンパク質合成レベルは、Schmidt,E.K.、Clavarino,G.、Ceppi,M.、及びPierre,P.(2009)の「SUnSET,a nonradioactive method to monitor protein synthesis」、Nat Methods 6、275-277に記載されるように測定される。簡潔に述べると、この方法は、非放射性の蛍光活性化セルソーティングに基づくアッセイであり、個々の哺乳動物細胞おける及び不均一な細胞集団における全体的なタンパク質合成のモニタリング及び定量化を可能にする。より具体的には、この方法は、標準的な免疫化学的方法を使用して翻訳を直接モニタリングするための、ピューロマイシンに対するモノクローナル抗体の使用に関与する。ピューロマイシン(puro)は、そのtRNA-AA擬態分子構造により、リボソームによるmRNA翻訳のプロセス時に新生ポリペプチド鎖に非常に効率的に取り込まれる抗生剤である。
【0044】
したがって、一部の実施形態において、サンプルは、所定量のピューロマイシンに接触させてから、典型的に検出可能な標識にコンジュゲートした、ピューロマイシンに特異的な所定量のモノクローナル抗体に接触させる。
【0045】
適切である検出可能な標識は、例えば、重金属、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、又はコロイド金を含む。そうした検出可能に標識した免疫コンジュゲートを作製及び検出する方法は当業者に周知であり、より詳細に以下に記載する。
【0046】
一部の実施形態において、抗体は蛍光化合物によって標識される。蛍光標識した抗体の存在は、その免疫コンジュゲートを適当な波長の光に暴露して、それにより生じた蛍光を検出することにより決定される。検出可能な標識の特定の例は、蛍光分子(又は蛍光色素)を含む。数多くの蛍光色素が当業者に知られており、例えば、The Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologiesを参照し、例えばLife Technologies社(元Invitrogen)から選択可能である。核酸分子(特有で特異的な結合領域など)に結合(例えば化学的にコンジュゲート)させることのできる特定のフルオロフォアの例は、Nazarenkoらの米国特許第5,866,366号に提供され、例えば、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、アクリジン及び誘導体、例えばアクリジン及びアクリジンイソチオシアネート、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3ビニルスルホニル]フェニル]ナフタルイミド-3,5-ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニラミド、ブリリアントイエロー、クマリン及び誘導体、例えばクマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアノシン;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5’’ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアネートフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’-ジイソチオシアネートジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシン及び誘導体、例えばエオシン及びエオシンイソチオシアネート;エリスロシン及び誘導体、例えばエリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセイン及び誘導体、例えば5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、及びQFITC Q(RITC);2’,7’-ジフルオロフルオレセイン(オレゴングリーン);フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローズアニリン;フェノールレッド;B-フィコエリスリン;o-フタルジアルデヒド;ピレン及び誘導体、例えばピレン、ピレンブチレート及びスクシンイミジル1-ピレンブチレート;リアクティブレッド4(Cibacronブリリアントレッド3B-A);ローダミン及び誘導体、例えば6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸及びテルビウムキレート誘導体である。他の適切なフルオロフォアは、約617nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(Heyduk and Heyduk,Analyt.Biochem.248:216-27,1997;J.Biol.Chem.274:3315-22,1999)、並びに、GFP、リサミン、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7-ジクロロローダミン及びキサンテン(Leeらの米国特許第5,800,996号に記載)及びその誘導体を含む。例えば、Life Technologies(Invitrogen;Molecular Probes(Eugene,Oreg.))から入手できるものなどの当業者に知られている他のフルオロフォアも使用することができ、これには、ALEXA FLUOR(登録商標)シリーズの色素(例えば、米国特許第5,696,157号、第6,130,101号及び第6,716,979号に記載)、BODIPYシリーズの色素(例えば、米国特許第4,774,339号、第5,187,288号、第5,248,782号、第5,274,113号、第5,338,854号、第5,451,663号及び第5,433,896号に記載のようなジピロメテンホウ素ジフルオリド色素)、カスケードブルー(米国特許第5,132,432号に記載のスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)並びにマリーナブルー(米国特許第5,830,912号)を含む。標識のモノクローナル抗体へのコンジュゲーションは、当該技術分野で知られている標準的な技術を使用してなされ得る。これに関して、典型的な方法は、Kennedyら、Clin.Chim.Acta 70:1、1976;Schursら、Clin.Chim.Acta 81:1、1977;Shihら、Int’l J.Cancer 46:1101、1990;Steinら、Cancer Res.50:1330,1990;及びColigan、上述参照、によって記載されている。
【0047】
したがって、一部の実施形態において、フローサイトメトリー方法が、標識抗ピューロマイシン抗体のレベルを検出及び測定するために適切な方法である。フローサイトメトリーは、研究において広く受け入れられているツールであり、ユーザーはサンプル液体中の成分を迅速に分析及び選別することができる。フローサイトメーターは担体液(例えばシース液)を使用して、サンプル成分を照射領域において実質的に一度に1つずつ通過させる。各サンプル成分はレーザーなどの光源によって照射され、各サンプル成分によって散乱した光を検出して分析する。サンプル成分は、照射領域を出るとき、その光学的及び他の特性に基づいて分離することができる。この方法は当該技術分野で周知である。したがって、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用することができ、これは典型的に、複数のフルオロフォアを共に励起及び検出することができるフローサイトメーターの使用に関与する。サイトメトリーシステムは、以下に記載するようなサイトメトリーサンプル流体サブシステムを含むことができる。さらに、サイトメトリーシステムは、サイトメトリーサンプル流体サブシステムに連通したサイトメーターを含む。本開示のシステムは、例えばモニター、プリンター、及び/又はスピーカーなどのデータ出力装置、例えばインタフェースポート、マウス、キーボード等のデータ入力装置、流体搬送部品、電源等の多くのさらなる部品を含むことができる。好ましい方法は、典型的に、フローサイトメトリー前の細胞透過処理に関与する。この方法を行う際に、細胞を透過処理する任意の簡便な手段を使用することができる。
【0048】
一部の実施形態において、抗体はランタニドなどの金属化学元素で標識される。ランタニドは、安定な同位体であること、最大100以上の別個の標識という利用可能な多数のランタニドが存在すること、比較的安定であること、及び、質量分析を使用して検出したときに非常に検出しやすく且つ検出チャネル間で容易に分離されることから、他の標識よりもいくつかの利点がある。また、ランタニド標識は広いダイナミックレンジの検出を提供する。ランタニドは、高い感度を示し、光及び時間に対して非感受性であり、したがって、非常に柔軟性かつロバストであり、そして、多数の異なる状況において利用可能である。周期表におけるランタニド系列は15個の元素を含み、そのうちの14個は安定な同位体である(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)。これらは、希土類元素とも呼ばれる。ランタニドは、CyTOF技術を使用して検出することができる。CyTOFは、誘導結合プラズマ飛行時間型質量分析法(ICP-MS)である(Cheung et al.,“Screening:CyTOF-the next generation of cell detection” Nature Reviews Rheumatology,7:502-503,2011、及びBendall et al.,“Single-Cell Mass Cytometry of Differential Immune and Drug Responses Across a Human Hematopoietic Continuum” Science,332(6030):687-696,2011が参照され、これらは言及によって本明細書に援用される)。市販されているCyTOF機器(例えばFluidigm,California,USA)は、利用可能である安定な同位体タグの存在と同じくらい多くのパラメーターについて1秒間あたり最大1000個の細胞を分析することができる。
【0049】
一部の実施形態において、抗体は、目的の抗体を標識するためにフィンガープリントとして使用されるDNAバーコードにコンジュゲートされる。そうしたDNAバーコード付き抗体は、タンパク質の検出を、定量的でシーケンシング可能な表示に変換することに適する。DNAバーコードは、予め規定した配列のオリゴヌクレオチドである。本発明において、DNAバーコードは少なくとも4つのヌクレオチドを含む。DNAバーコードは、非常に特異的な抗原の検出を行い得るとともに、最終的に多重アッセイにおいて複数のDNAバーコード付き抗体の使用を可能にする、不特定多数の組合せを作ることができるという利点がある。例えば、DNAバーコード付き抗体は、多くの大規模なオリゴdTに基づくscRNAシーケンシングライブラリ調製プロトコル時(例えば、10xGenomics、Drop-seq、ddSeq)に取得される、合成転写物として機能する。CITEシーケンシングと呼ばれるこの方法の原理は、Stoeckius,Marlonらの「Simultaneous epitope and transcriptome measurement in single cells.」Nature methods 14.9(2017):865に記載されている。
【0050】
一部の実施形態において、本発明の方法は、特に、目的のいくつかの細胞表面マーカー(例えば、B細胞のBCR、CD19又はCD20、及びT細胞のTCR、CD4、CD8、CD25)に特異的な結合パートナー群を使用することによって、上述の細胞集団において特定の細胞型を同定することをさらに含む。したがって、結合パートナーは上述のような標識にコンジュゲートされる。
【0051】
一部の実施形態において、本発明の方法のステップx)において細胞のエネルギー代謝プロファイルを決定することは、該細胞が呼吸性プロファイル又は解糖性プロファイルを示すことを結論づけることを含む。本明細書において使用するように、「呼吸性プロファイル」という用語は、細胞がエネルギーを産生するために主にミトコンドリア呼吸を使用するということを意味する。本明細書において使用するように、「解糖性プロファイル」という用語は、細胞がエネルギーを産生するために主に解糖を使用するということを意味する。
【0052】
したがって、本発明の方法は、細胞集団の代謝特性評価に適する。TCA回路(クレブス回路としても知られる)は、静止状態の細胞によって使用されると考えられている主な代謝経路である。TCA回路及び酸化的リン酸化により、その主な要求がエネルギー及び長寿命である細胞において、効率的にATPを生成する。TCA回路は複数の栄養素取り入れの中心である。とりわけ、グルコース由来ピルベート、脂肪酸、又はアミノ酸は、TCA回路に加わってシトレートを形成するアセチル補酵素A(アセチル-CoA)に変換される。TCA回路における3つの主な最終生成物は、GTP、還元型ニコチン-アデノシンジヌクレオチド(NADH/H)、及び還元型フラビン-アデノシンジヌクレオチド(FADH2)である。ニコチンアミド及びフラビンジヌクレオチドは、電子をミトコンドリア電子伝達系に移送し、酸化的リン酸化を支援し、最終的にATP生成をもたらす。解糖代謝経路(解糖とも称される)は、環境からグルコースを取り込むことから開始し、その後の細胞質基質における細胞内処理を行って、ATP、ピルベート、及び他の代謝物を生成する。解糖は、細胞ATPの生成おいて比較的非効率な経路であり、分解グルコース分子あたりATP2分子のみを生成する。しかしながら、解糖はNAD+のNADHへの還元を可能にし、これが補因子として数多くの酵素に使用され、同化成長を支援する。解糖フラックスは、ピルベート還元をとおしてラクテートへと維持され、NADHを再利用するとともに、NAD+レベルを維持して、細胞外媒体の酸性化をもたらす。したがって、解糖は、様々な環境的キューに応答して急速に増殖する細胞の代謝において必須の役割を担う。
【0053】
一部の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのさらなる分析技術を組み合わせる。一部の実施形態において、シーケンシングを行う。本明細書において使用するように、「シーケンシング」という用語は、一般的に、核酸におけるヌクレオチドの順番を決定するプロセスを意味する。核酸をシーケンシングするための多様な方法が当該技術分野で周知であり、これらを使用することができる。一部の実施形態において、次世代シーケンシングが行われる。本明細書において使用するように、「次世代シーケンシング」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、例えば、一度に数十万又は数百万の比較的短いシーケンス表示を生成することができることにより、サンガー及びキャピラリー電気泳動に基づく従来の手法と比較してスループットが増加したシーケンシング技術を指す。次世代シーケンシング技術のいくつかの例は、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、及びハイブリダイゼーションによるシーケンシングを含むがこれらに限定されない。次世代シーケンシング方法の例は、GS junior及びGS FLXシステム(454 Life Sciences)によって使用されるようなパイロシーケンシング、IIluminaのMiseq及びSolexaシステム、SOLiD(登録商標)(オリゴヌクレオチドライゲーション及び検出によるシーケンシング)システム(Life Technologies inc.)、及びパーソナルゲノムマシーン又はProtonシーケンサーなどのion Torrentシーケンシングシステム(Life Technologies inc.)によって使用されるような合成によるシーケンシング、並びにナノポアシーケンシングシステム(Oxford nanopore)を含む。IIluminaのシーケンシング技術を使用する合成によるシーケンシングの場合、供給源分子はフローセルに送る前にPCR増幅することができる。
【0054】
本発明の方法には種々の用途があり得る。
【0055】
したがって、本発明の方法は、細胞の活性化状態の決定に特に適する。実際に、実施例において示すように、細胞の活性化状態はその代謝プロファイルに直接的に相関し得る。典型的に、急性の免疫活性化状態は解糖プロファイルに相関する。本明細書において使用するように、「免疫活性化状態」という用語は、例えば、特定の分子(すなわち、抗原、PAMP、DAMP)の認識によって刺激される、様々な自然免疫細胞及び適応免疫細胞(すなわち、T細胞、CAR T、B細胞、NK、DC及びその他のもの)の実証された能力に基づく。活性化された細胞はその代謝プロファイルを変化させるので、代謝プロファイルはその活性化状態の機能的尺度となり得る。
【0056】
一部の実施形態において、本発明の方法は、診断目的に特に適する。
【0057】
一部の実施形態において、本発明の方法は、炎症性疾患の診断に特に適する。「炎症性疾患」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、炎症に関連する任意の疾患及び状態を指す。上述の用語は、(1)炎症性又はアレルギー性疾患、例えば全身性アナフィラキシー又は過敏応答、薬剤アレルギー、昆虫刺咬アレルギー;炎症性腸疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎及び腸炎;腟炎;乾癬及び炎症性皮膚疾患、例えば、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じん麻疹;血管炎;脊椎関節症;強皮症;呼吸器アレルギー性疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、など、(2)自己免疫性疾患、例えば関節炎(リウマチ性及び乾癬性)、変形性関節症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、糖尿病、糸球体腎炎、など、(3)移植片拒絶(同種移植片拒絶及び移植片対宿主疾患を含む)、並びに(4)望ましくない炎症応答が阻害される他の疾患(例えば、アテローム性動脈硬化、筋炎、炎症性CNS障害、例えば卒中及び閉鎖性頭部損傷、神経変性疾患、アルツハイマー病、脳炎、髄膜炎、骨粗しょう症、痛風、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、結膜炎、耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎、及びベーチェット症候群)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0058】
一部の実施形態において、本発明の方法は、がんに罹患する患者の生存期間を予測することに特に適する。本発明の方法は、がん患者の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、及び/又は無病生存期間(DFS)を予測することに特に適する。当業者は、OS生存期間が一般に、ある種類のがんを特定の期間乗り切った人のパーセンテージに基づき、該パーセンテージとして表されるということを理解する。がんの統計は多くの場合、全5年生存率を使用する。一般に、OS率は、がんサバイバーが5年で依然として処置を受けているかどうか、又はがんサバイバーが無がん状態となった(寛解に至った)かどうかを特定しない。DSFは、より具体的な情報を提供するものであり、寛解に至った、特定のがんを有する人の数である。また、無増悪生存(PFS)率(依然としてがんを有するが、その疾患が進行していない人の数)には、処置にある程度成功している可能性があるが、がんが完全に消失していない人が含まれる。本明細書において使用するように、「短い生存期間」という表現は、患者が、上述のがんに罹患している患者の母集団において観察される中央値(又は平均)よりも短い生存期間を有することを示す。患者が短い生存期間を有する場合、患者が「不良な予後」を有することを意味する。反対に、「長い生存期間」という表現は、上述のがんに罹患している患者の母集団において観察される中央値(又は平均)よりも長い生存期間を有することを示す。患者が長い生存期間を有する場合、患者が「良好な予後」を有することを意味する。
【0059】
本明細書において使用するように、「がん」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、身体の他の部分に浸潤する又は広がる可能性を有する、異常な細胞増殖に関与する疾患群を指す。「がん」という用語は、原発性及び転移性がんの両方をさらに含む。本発明の方法及び組成物によって処置され得るがんの例は、循環腫瘍細胞や、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮からのがん細胞を含むが、これらに限定されない。加えて、がんは、具体的には以下の組織型であってもよいが、これらに限定されない:悪性新生物;がん腫;未分化がん;巨細胞及び紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;石灰化上皮がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;悪性ガストリノーマ;胆管がん;肝細胞がん;肝細胞がんと胆管がんの混合型;索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープ中の腺がん;家族性大腸ポリポーシス腺がん;固形がん;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞腺がん(branchiolo-alveolar adenocarcinoma);乳頭腺がん;色素嫌性がん;好酸球がん;好酸性腺がん;好塩基球がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭及び濾胞腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん(endometroid carcinoma);皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘液性類表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;乳房パジェット病;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜腫瘍;悪性顆粒膜細胞腫;悪性神経芽細胞腫(roblastoma);セルトリ細胞がん;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;巨大色素性母斑中の悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性がん;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺種;絨毛がん;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽腫;原始神経外胚葉腫瘍(primitive neuroectodermal);小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性小リンパ球性リンパ腫;悪性びまん性大細胞型リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉腫;その他の特定されている非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及び有毛細胞白血病。
【0060】
近年、循環腫瘍細胞の代謝状態が、転移を生じる又は潜伏状態に留まるという能力を決定するということが示されている。
【0061】
したがって、一部の実施形態において、本発明の方法は、がんに罹患する対象が転移を発症し得るかどうかを予測することに特に適する。
【0062】
本明細書において使用するように、「転移」又は「転移性がん」という用語は当該技術分野において周知であり、別の器官におけるがんの広がりを指す。転移性腫瘍は、原発腫瘍の転移によって原発病変から離れた位置に形成される。これは、がん治療において最も重大な懸念の1つである。具体的に、原発病変を処置したとしても、患者は別の器官に転移した腫瘍の増殖のため亡くなることがある。
【0063】
一部の実施形態において、本発明の方法は、がんに罹患する対象が治療の対象となり得るかどうかを予測することに特に適する。
【0064】
言い換えると、本発明の方法は、がんに罹患する対象の治療応答性を予測することに特に適する。
【0065】
例えば、治療は化学療法である。本明細書において使用するように、「化学療法」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、化学療法剤を患者に投与することに基づく処置を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa);エチレンイミン及びメチルメラミン、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン:スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンγll及びカリケアマイシンωll;ダイネミシンAを含むダイネミシン、;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;並びに、ネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシ、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシ、及びデオキシドキソルビシを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎皮質剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えばマイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサンントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベルカリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;デカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金配位化合物、例えばシスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えばCPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0066】
一部の実施形態において、本発明の方法は、治療効果の予測及び予後予測に特に適する。
【0067】
一部の実施形態において、治療は免疫療法である。本明細書において使用するように、「免疫療法」という用語は、免疫応答に基づく疾患の治療を指す。一部の実施形態において、免疫療法は、チェックポイント阻害剤、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)及び適応細胞療法からなる群より選択される。「CAR T細胞療法」という用語は、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を使用することに基づく療法を指す。一部の実施形態において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤の使用に関与する。「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、本明細書において使用するように、免疫応答の減弱化に関与する分子の活性を遮断する物質を指す。免疫チェックポイント阻害剤の例は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、PD-L2拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、VISTA拮抗剤,TIM-3拮抗剤、LAG-3拮抗剤、IDO拮抗剤、KIR2D拮抗剤、A2AR拮抗剤、B7-H3拮抗剤、B7-H4拮抗剤、及びBTLA拮抗剤を含む。「二重特異性T細胞エンゲージャー」(BiTE)という用語は、抗がん剤としての使用が検討される人工二重特異性モノクローナル抗体からなる治療を指す。BiTEは、がん細胞に対する、宿主の免疫系、より具体的にはT細胞の細胞傷害性活性を標的とする。BiTEは、T細胞と腫瘍細胞との結合を形成するものであり、臨床試験において試験されている。
【0068】
本明細書において使用するように、「予測する」という用語は、患者が免疫療法又は化学療法剤による処置に応答する蓋然性又は可能性を指す。本明細書において使用するように、「応答性」という用語は、処置が臨床において有効である又は有効でないという可能性を評価する能力を指す。
【0069】
本発明のさらなる目的は、本発明の方法を行うためのキット又は試薬に関する。対象の試薬及びそのキットは非常に多様であり得る。しかしながら、本発明のキットは、阻害剤[A]及び[B]、並びにピューロマイシン及びピューロマイシンに特異的なモノクローナル抗体を含む。本発明のキットは、阻害剤[C]及び[D]をさらに含むことができる。一部の実施形態において、本発明のキットは、所定量のピルベート及び/又はアセテートを含むことができる。一部の実施形態において、本発明のキットは、細胞選別のための抗体群など種々の方法に使用される試薬を含む。また、キットは種々のバッファー培地を含むことができる。キットは、代謝プロファイル(すなわち様々な依存度)の評価に適する様々な式(I~VI)を計算するためのソフトウェアパッケージをさらに含むことができる。上述の構成要素に加えて、対象のキットは、対象の方法を行うための指示書をさらに含み得る。この指示書は、多様な形態で対象のキット内に含むことができ、その1つ以上がキット内に含まれ得る。この指示書が含まれ得る一形態は、適切な媒体又基材における印刷情報としてであり、例えば、キットのパッケージ内、添付文書等における、情報が印刷された紙とする。さらに別の手段は、情報が記録されたコンピューター可読媒体であり得る。含まれ得るさらに別の手段は、削除したサイトにおける情報にアクセスするためインターネットを介して使用することができるウェブサイトアドレスである。任意の簡便な手段をキットに含ませることができる。上述の分析方法は、本発明の様々な態様を実施するため、コンピューターによって実行可能な指示のプログラムとして実現することができる。上述の技術のいずれも、コンピューター又は他の情報機器又はデジタル装置にロードしたソフトウェアコンポーネントによって実施することができる。そのように可能になると、コンピューター、機器、又は装置は、上述のように複数の遺伝子に関連する一式の値の分析を支援するため、又はそうした関連する値を比較するため、上述の技術を実施することができる。ソフトウェアコンポーネントは、固定媒体からロードされる、又はインターネット若しくは他の種類のコンピューターネットワークなどの通信媒体を通してアクセスすることができる。上述の機能は、1つ以上のコンピュータープログラムで実現され、そうしたプログラムを走らせる1つ以上のコンピューターによって実施することができる。ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、機械読み取り可能な媒体において具体的に実現され、1つ以上のデータプロセッシング装置に上述のような様々な計算を行わせるように操作可能な指示を含むことができる。また、コンピューターは、任意の適切な表示(例えば図表、ヒストグラム)によって結果を示すことができる。また、本明細書において、機械読み取り可能な媒体において具体的に実現され、1つ以上のデータプロセッシング装置に、多数の配列表示の配列データを保存することを含む操作を実施させるように操作可能な指示を含むソフトウェア製品(又はコンポーネント)を提供する。一部の例において、ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、配列データをV、D、J、C、VJ、VDJ、VJC、VDJC、若しくはVJ/VDJ系統使用分類に割り当てる指示、又は多次元プロットで分析出力を表示する指示を含む。一部の場合において、多次元プロットは、V、D、J、又はCのうちの1つのためのすべての可能な値を示す(例えば、すべての可能なV値を示す1軸、すべての可能なD値を示す第2軸、及びすべての可能なJ値を示す第3軸を含む3次元プロット)。一部の場合において、ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、ある状態に相関した単一のサンプルからの1つ以上の特有のパターンを特定する指示を含む。また、ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、増幅バイアスをノーマライズする指示を含むことができる。一部の例において、ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、シーケンシングの誤りをノーマライズするためコントロールデータを使用する、又はシーケンシングの誤りを少なくするためクラスター処理を使用する指示を含むことができる。また、ソフトウェア製品(又はコンポーネント)は、シーケンシングの誤りを少なくするため、2つの別のプライマーセット又はPCRフィルターを使用する指示を含むことができる。
【0070】
本発明を以下の図面及び実施例によってさらに記載する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するとしていかようにも解釈されるべきでない。
【実施例】
【0071】
[材料及び方法]
細胞及び細胞培養
WTのC57BL/6J(Jackson)又はPERK KO のC57BL/6Jバックグラウンドマウス(Zhang et al.,2002)のマウス脾細胞を、5%のウシ胎仔血清(FCS)及び50μMの2-メルカプトエタノール(マウス細胞培地、MCCM)を含むDMEM中で、5%CO2において37℃で培養した。GM-CSF BM由来樹状細胞(GM-bmDC)を、J558L細胞によって作製した、GM-CSFを使用して、6~8週齢のオスのマウスの骨髄からインビトロで分化させた。骨髄前駆体を、0.8×106cells/ml、6ウェルプレートにおいて5ml/wellでプレーティングし、RPMI(GIBCO)、5%FCS(Sigma-Aldrich)、20μg/mlのゲンタマイシン(Sigma-Aldrich)、50μMのβ-メルカプトエタノール(VWR)、及びGM-CSFとともに培養した。培地を2日毎に交換し、BM由来DCを6日目に実験に使用した。同様に、FLT3LのBM由来樹状細胞(FLT3L-bmDC)を、RPMI、10%のウシ胎仔血清(FCS)及び50μMの2-メルカプトエタノール(マウス細胞培地、MCCM)にFLT3Lを加えることで、6日間、5%CO2において37℃で分化させた。脾細胞を得るため、8週齢の野生型C57BL/6Jマウスを頸椎脱臼によって絶命させ、脾臓摘出した。脾臓からのシングルセル懸濁液を作製して、上述のようにMCCMで培養した。健康なドナーの血液から濃縮した単核細胞を、Ficoll-paque plus(PBL Biomedical Laboratories)で処理した。PBMC及び全血を、所定の時間、なし(無刺激)又はありで培養した。0.1μg/mlの一級リポポリサッカライド(Invivogen LPS,Cat.tlrl-3pelps)、10μg/mlのポリI:C(Invivogen,Cat.No.tlrl-pic)、CpG-A ODN 2216(Invivogen,Cat.No.tlrl-2216)又はPMA(5ng/ml;Sigma,Cat.no.P-8139)及びイオノマイシン(500ng/ml;Sigma,cat.no.I-0634)なし(コントロール)又はありで、T細胞刺激には一晩、及び樹状細胞には4時間、免疫細胞刺激を行った。
【0072】
ATP測定
20×104のMEFを、不透明な96ウェルプレート内の100μlの5%FCS DMEM培地ONに播種した。細胞を、図に示す時間で阻害剤と共にインキュベートした。その後、100μlのCell titer-Glo luminiscence ATP再構成バッファー及び基質(Promega,Cat.No.G7570)を各ウェルに加え、製造者の指示に従って10分後に発光を測定した。同じキットを使用し、製造者の指示に従って、ATPの検量線を作成した。
【0073】
代謝インフラックス分析(Seahorse(登録商標))
XF24細胞外フラックスアナライザー(Seahorse Bioscience)によって、OCR及びECARを測定した。αCD3/αCD28ビーズあり又はなしの4.105細胞を、XF培地(2.5mMのグルコース、2mMのL-グルタミン、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを含む無バッファーダルベッコ改変イーグル培地)にトリプリケートで配置し、基本条件下、及び10mMのグルコース、1μMのオリゴマイシン、100mMの2-デオキシ-グルコースに対して、25分モニタリングした。オリゴマイシン添加後及びグルコース添加前のECARレベルの差によって、解糖能力を測定した。OCR、ECAR、及びSRCパラメーターを分析し、Agilent Seahorse Waveデスクトップソフトウエアから抽出した。オリゴマイシン添加後及びグルコース添加前のECARレベルの差によって、解糖能力を得た。
【0074】
ZENITH
細胞を、1~10×106cells/mlで、48ウェルプレートにおいて0.5ml/wellでプレーティングした。すべての条件において、実験をデュプリケートで行った。ヒト細胞の分化、活性化、又は採取の後、コントロール、2-デオキシグルコース(2-DG、最終濃度100mM;Sigma-Aldrich Cat.No.D6134-5G)、オリゴマイシン(Oligo、最終濃度1μM;Sigma-Aldrich Cat.No.75351)、BPTES(最終濃度1μM; Cat.No.SML0601)、トリメタジジン(TMZ、最終濃度1μM;Sigma-Aldrich Cat.No.653322)、又は前述の最終濃度のこれら薬剤の組合せで、ウェルを45分間処理した。ネガティブコントロールとして、翻訳開始阻害剤のハリングトニンを、ピューロマイシンの添加の15分前に加えた(ハリングトニン、2μg/ml、Abcam、cat.ab141941)。ピューロマイシン(Puro、最終濃度10μg/ml;Sigma-Aldrich、Cat.No.P7255)を、代謝阻害剤処理の最後の15分間で添加した。ピューロ処理の後、細胞を冷PBS中で洗浄し、蛍光色素細胞生存度マーカー及び様々な表面マーカーに対するコンジュゲート抗体の組合せで、PBS、5%FCS、2mMのEDTA(FACS洗浄バッファー)中で4℃において30分間染色した。FACS洗浄バッファーで洗浄した後、製造者の指示に従ってBD Cytofix/Cytoperm(Catalog No.554714)を使用して、細胞を固定及び透過処理した。細胞を4℃で1時間インキュベートすることによって、Permwashで希釈した、蛍光標識抗ピューロモノクローナル抗体を使用するピューロの細胞内染色を行った(1:1000,Clone 12D10,Merk,Catalog No.MABE343)。
【0075】
フローサイトメトリー
BD LSRII及びBD LSR Fortessa X-20機器(BD Biosciences)を使用してフローサイトメトリーを行い、FlowJo(Tree Star)及び/又はCytobankによってデータを分析した。マウス脾細胞を染色するために使用した抗体は、抗ピューロAF488(Merk,Catalog No.MABE343)又は抗ピューロクローンR4743L-E8、社内作製の、Alexa Fluor 647又はAlexa-Fluor 488にコンジュゲートしたラットIgG2A、抗ホスホS6-PE(Cell Signaling Technology,Catalog No.#5316)、抗Ki67 PE-eFluor 610(eBioscience,Catalog No.61-5698-82)、CD4-APC-eF780(eBioscience、Catalog No.47-0042-82)、CD8-APC(eBioscience,Catalog No.17-0081-83)、CD80-PercPCy5.5(Biolegend,Catalog No.104722)、抗B220-BV421(Biolegend,Catalog No.103251)、抗-MHC-II-AF700(eBioscienc、Catalog No.56-5321-82)、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain(Invitrogen(登録商標),Catalog No.L34957)であった。以下の抗ヒト抗原抗体を、ZENITHプロトコル適用の際、全血及びPBMCを染色するために使用した。Alexa Fluor-488 マウス抗ヒトAxl(Clone 108724,R&D Biosystems,Cat.No.FAB154G)、Alexa Fluor-647 マウス抗ピューロマイシン(clone 12D10,Millipore,Cat.No.MABE343-AF647)、BUV395 マウス抗ヒトCD11c(Clone B-ly6,BD Bioscience,Cat.No.563787)、BUV737 マウス抗ヒトCD86(Clone FUN-1,BD Bioscience,Cat.No.564428)、BV510 マウス抗ヒトCD19(Clone HIB19,BD Bioscience,Cat.No.740164)、BV510 マウス抗ヒトCD3(Clone HIT3a,BD Bioscience,Cat.No.564713)、BV510 マウス抗ヒトCD56(Clone B159,BD Bioscience,Cat.No.740171)、BV605 抗ヒトHLA-DR(Clone L243,BioLegend,Cat.No.BLE307640)、BV650 マウス抗ヒトCD16(Clone 3G8,BD Bioscience,Cat.No.563692)、BV711 マウス抗ヒトCD14(Clone M5E2,BD bioscience,Cat.No.740773)、BV785 マウス抗ヒトCD45RA(Clone HI100,BioLegend,Cat.No.BLE304140)、Live Dead Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Life Technologies,Cat.No.L34957)、PE ウサギ抗ホスホ-S6 リボソームタンパク質(Ser235/236)モノクローナル(Clone D57.2.2E,Cell signaling,Cat.No.5316S)、PE ラット抗ヒトClec9A/CD370(Clone 3A4,BD Bioscience,Cat.No.563488)、PE-Cy7 マウス抗ヒトCD22(Clone HIB22,BD Bioscience,Cat.No.563941)、AF488 マウス抗ヒトCD38(Clone HIT-2,BioLegend,Cat.No.BLE303512)。
【0076】
動物研究
野生型C57BL/6マウスをCharles River社から購入し、特定の無病原体条件においてCIMLの動物用施設で管理した。妊娠胎生期12.5日(E12.5)におけるC57Bl/6の胚は、すべての器官及び脳を取り除いて、PBS内のLiberase(登録商標)Tm(0.5mg/ml,Roche)、DNaseI(0.2mg/ml,Roche)中で、37℃で15分間、絶えずかく拌しながら、分離した。免疫染色及びフローサイトメトリー分析の前に、細胞懸濁液を、2%の熱不活性化FCS、100U/mlのペニシリン、及び100mg/mlのストレプトマイシンを加えたRPMI(Thermo scientific)で洗浄した。
【0077】
この研究は、仏国農業省と欧州連合との実験動物の管理及び使用に関する指針における推奨事項に厳密に従って行った。生きているマウスに実験を行うため、動物を仏国農業省によって認可されたCIML動物用施設にて飼育した。すべての動物実験は、ブーシュ・デュ・ローヌの獣医学サービス部会によって承認された(承認番号A13-543)。動物の苦痛を極力少なくするようにすべての取り組みを行った。
【0078】
統計分析
GraphPad Prismソフトウェアによって統計分析を行った。いくつかの条件を比較するとき、一元配置分散分析を行い、その後テューキーの範囲検定を行って、条件ペアにおける有意性を評価した。2つの条件のみを試験するとき、等分散性の仮説の妥当性に従って、スチューデントのt検定又はウェルチのt検定を行った(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005)。
【0079】
[結果]
他の代謝分析技術に困難が見受けられることから、本発明の目的は3つの主な必須事項に対応する方法を開発することであった。(A)エクスビボの豊富ではない細胞においてEMをプロファリングすること、(B)最小の操作時間、インキュベーション、及びサンプル調製費用に下げること、(C)シングルセル分解能によってEMプロファイルを得ること。EMプロファイルの変化は、細胞がその異化作用を変化させることができる、様々なシグナリング経路の活性化、また遺伝子リプログラミングを必要とする。ZENITHはこの概念に基づき、細胞が分解グルコース、アミノ酸、又は脂肪から得るエネルギーの大部分がタンパク質合成機構に絶えず消費されるということを組み込んでいる(Buttgereit and Brand,1995;Lindqvist et al.,2017;Schimmel,1993)。タンパク質合成強度がATP消費を直接反映するということを概念化することで、様々なエネルギー産生経路の阻害の際に、シングルセルにおけるタンパク質合成活性をフローサイトメトリーによって迅速且つ効率的に測定する方法を設計した(
図1)。図に示され、実験に使用される2つの阻害剤は、2-デオキシ-D-グルコース(2-DG、阻害剤A)及びオリゴマイシンA(Oligo、阻害剤B)である。グルコースは、ATPを生成するため、解糖のみ(
図1B)又は解糖とその後の酸化的リン酸化(GlycOxPhos)の2とおりで使用することができる。
図1Bに示すように、阻害剤Aの存在により、グルコース分解からのATP/GTP生成を遮断し、細胞が脂肪酸の酸化(FAO)又はアミノ酸の酸化(すなわちGlnlysis)由来のアセチル-CoAからのみATP/GTPを生成することを可能にする。一方で、阻害剤Bは、ミトコンドリア呼吸(OxPhos)からのATP生成を妨げ、またTCA回路の阻害をもたらし、最終的にアセチル-CoA、FAO,及びGlnlysisからのエネルギー産生を阻害するので、細胞は、解糖を行うことによってのみタンパク質合成を持続させるためATPを生成することができる。解糖性EMプロファイルを有する細胞は、ATPをGTPに迅速に交換するとともに、ミトコンドリア呼吸が阻害されるとき翻訳を持続させることができる、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ活性(NDPK/NME)を有する一式の酵素を発現する。一方で、呼吸性EMプロファイルを有し、解糖に強制的に切り替えられる(すなわちミトコンドリア呼吸を遮断することによって)細胞は、生存するためATPを生成する可能性があり得るが、GTPの生成に対応せず、効率的にタンパク質合成を持続しない。
【0080】
従来、タンパク質合成速度の測定は、放射性アミノ酸の使用を必要とするものであった。ピューロマイシン(puro)は、そのtRNAーAA擬態分子構造により、リボソームによるmRNA翻訳のプロセス時に新生ポリペプチド鎖に非常に効率的に取り込まれる抗生剤である。これまでに、蛍光性モノクローナル抗体抗ピューロマイシンを開発して特許権利化し、抗ピューロマイシン染色レベルが、タンパク質合成レベルの非常に精度の良い尺度となることを示した(Schmidt et al.,2009)、仏国特許第0856499号)。ZENITHの際のピューロマイシン細胞内検出におけるシグナル対ノイズ比をさらに最適化するため、特に細胞内フローサイトメトリーに適応した新たなモノクローナル抗ピューロマイシン抗体をスクリーニングし、開発した(データは示さず)。各細胞の代謝プロファイルは、様々な種類のシングルセルの特定を可能にするとともに、マルチパラメーターフローサイトメトリーの使用によってタンパク質合成レベルをモニタリングするため蛍光色素抗ピューロモノクローナル抗体に直接結合する、モノクローナル抗体群の組合せによって得られる。各阻害剤の作用機序、EM経路と全体的なタンパク質合成強度との直接の相互作用を考慮して、様々な測定から得た結果を各細胞サブセットの代謝プロファイルを示す簡単なグラフに取り込むために数式を適用する(
図1C)。阻害剤による処理の際に所定の細胞がその代謝を補填し変化させる能力は、この方法の欠点として誤解され得る。ZENITHは、ミトコンドリア呼吸が阻害されたときの細胞の解糖能力、及び2-DGの存在下におけるグルコース依存度を測定する。また、TMZ(FAO阻害剤)及びBPTES(グルタミノリシス阻害剤)の存在下において、FAO及びGlnlysis依存度を計算可能である。さらに、任意の供給源への低依存性は、EM適応度が大きい細胞を特定するために使用することができる。言い換えると、個別の阻害剤の作用の合計と比較して、いくつかの経路の阻害剤の存在下における相乗度を定量化する。この測定は、より適応性があり、迅速に適応可能なEM代謝を有する細胞を特定することを可能にし、これは情報価値があるとともに所定の細胞にのみ観察された。
【0081】
ATPレベルの変化はタンパク質合成活性と密に相関する。
この方法論は、総ATPレベルとフローサイトメトリーによって測定されるタンパク質合成とを相関させることによって検証した。非形質転換のマウス胚性線維芽細胞(MEF)を使用して、様々なエネルギー経路を阻害するとき(Oligo+2-DG)、翻訳又は転写阻害(それぞれシクロヘキシミド/CHX、又はアクチノマイシンD/ActDによって)がATPレベルに影響するかどうかを試験した。
図2Aに示すように、CHXを添加したときにのみ、ATPプールがOligo+2-DG処理(Co)と比べて有意に大きいと分かった(
図2A)。この結果は、翻訳が転写と比べてより高いエネルギーコストを有するので、細胞の代謝状態におけるより感受性の高いマーカーとなるということを示す以前の結果に沿うものである。その後、同様のパターンを示すかどうかを判定するために、ATP合成の遮断の際、ATPレベルとタンパク質合成レベルとが時間の関数としてどのように変化するかを試験した。MEFをOligo+2-DGと共に様々な時間インキュベートし、ATPレベルをCell titer-Gloを使用して発光によって定量化し(
図2B)、ピューロマイシン取り込み後のタンパク質合成をフローサイトメトリーによって定量化した(
図2C)。ATPレベルと総タンパク質合成レベルとの間に統計的に有意な相関性を観察した(
図2D、ピアソン r=0.985,R
2=0.9703,p<0.0001)。これらの結果は、細胞内のATPレベル及びタンパク質合成活性レベルの変動が直接相関し得、翻訳強度が、ATP利用可能度及び合成の変動をモニタリングしてEMプロファイリングを行うために表示として使用可能であるということを示す。
【0082】
代謝阻害剤に対応するタンパク質合成レベルはバルクATPレベルよりもEM活性をより良好に表す。
ヒト及びマウスの胚性線維芽細胞は、高酸素消費速度(OCR)及び低細胞外酸性化速度(ECAR)を表すことが示されている(Suganya et al.,2015;Zhang et al.,2012)。この重要なOCR/ECAR比率は、低解糖活性に対して高ミトコンドリア活性を有する非形質転換細胞に特有である(Suganya et al.,2015;Zhang et al.,2012)。結果として、MEFは、高密度で培養したときでもその培地を酸性化することはない。また、この表現型は、休止T細胞においても観察されるが、T細胞がAPCによって活性化されて、解糖に急速に切り替わると急速に失われる(MacIver et al.,2013)。
【0083】
これらの観察と、線維芽細胞及びT細胞における高ミトコンドリア依存度とに基づき、ATPレベル(バルクATPレベル)の定量化によって得たEMプロファイルを、フローによるタンパク質合成の定量化によって得たプロファイルと比較した。ATPによるEMプロファイルの計算に使用する式をこのように展開する。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0084】
MEFにおいて、ATPレベルを使用することによって計算される最大解糖能力(
図3A)はほぼ100%であり、最大FAO及びGlnlysis能力より有意に高い(
図3B、p<0.001、凡例)。動態研究を行うことによって、オリゴマイシンの存在下において変化しなかったATPレベルによって例示されるように(
図3A及び
図3B)、阻害剤による処理後の様々な時間で計算しても、総EMプロファイルが変化しないことを観察できた(
図3C)。この結果は、MEFなどの極めて呼吸性である細胞において、代謝阻害剤での処理後の全体的なATPレベルが、エネルギーミトコンドリア依存度を反映できないことを示す。呼吸におけるオリゴマイシン阻害は、2-DG+Oligoも細胞に添加したときにのみ観察できた。この結果は、推定される補填機序の誘導のため、様々なエネルギー産生経路の阻害の際のATPレベルの測定より、正確な細胞のEMプロファイルを得られないということを証明した。一方で、同じMEFをプロファイリングするためZENITHを使用すると、完全に異なるが整合性のある様相が生じた(
図3D、
図3E、及び
図3F)。ZENITHは、MEFがグルコース依存度よりも高いミトコンドリア依存度を有し、また解糖能力よりも高いFAO及びGlnlysis能力を有すること(
図3E、p<0,05、凡例)を明らかにし、以前に公表した、この細胞のEMにおける観察結果を裏付けた(Suganya et al.,2015;Zhang et al.,2012)。ZENITHの有効性をさらに示すため、PMA/イオノマイシンで6時間活性化した又は活性化していないマウスの脾臓細胞(n=5l)及びCD8+T細胞を分析した。CD8+T細胞の活性化は、EMプロファイルを大幅に切り替え、代謝活性を増加させ、呼吸から好気的解糖に切り替えた(MacIver et al.,2013)。休止脾臓CD8T細胞は、その活性化対応物よりも有意に低い代謝活性を示した(
図3G、p<0.0001)。非活性化から活性化CD8T細胞への移行EMプロファイルの決定により、ミトコンドリアエネルギー依存度における大きな低下(55%から15%未満に、
図3H、p<0.0001)、及びほぼ90%に達する、解糖能力の増加(
図3H、p<0.0001)を示した。これらの結果は、血液から単離し、作動剤の抗CD3及び抗CD28抗体でコーティングしたビーズで活性化した後のヒトセントラルメモリーCD4+T細胞において裏付けられた(
図3I)。全体で、これらの結果は、ZENITHが、代謝阻害剤に暴露したシングルセルにおけるタンパク質合成の分析によって、不均一な集団に存在する個々の細胞におけるEM経路活性のそれぞれの寄与を正確に測定するということを示す。
【0085】
2-DGに短時間暴露した際のタンパク質合成阻害はERストレス誘発に起因しない。
細胞を2-DGで数時間処理することにより、グリコシル化における異常及び少し前に翻訳したタンパク質のフォールディングに起因する小胞体(ER)ストレスを誘発可能であることがこれまでに示されている(Liu et al.,2016;Marquez et al.,2017;Zhang et al.,2015)。ERストレスは、翻訳開始のドミナントネガティブ阻害剤として作用する真核生物翻訳開始因子2(eIF2α)のαサブユニットをリン酸化するキナーゼであるPERKの活性化を誘導する。2-DG処理の際、ERストレスがタンパク質合成に干渉するかどうかを特定するため、すべてのDCサブセットにおいてPERKを欠失させたCD11c-CRE PERKflox/floxマウスを利用した(CD11c+細胞、データを示さず)。Flt3Lによる骨髄前駆体由来の、WTのPERKflox/flox(コントロール)DC及びCD11c-CRE PERKflox/flox(PERK KO)DCの両方において、2-DG作用を比較した。その遺伝的背景に関わらず、様々なDCサブセットは、2-DGに対応してタンパク質合成を減少させるという同じ能力を有し、同じEM特性を示して、PERKがZENITHを行うために必要とされる短時間の2-DG処理の際に観察される翻訳の喪失に関連しないということを示唆する。
【0086】
インビトロ生成及びエクスビボのマウス樹状細胞の代謝プロファイル
マウスのDCの代謝についての大部分の研究は、大量のこの細胞が得られる骨髄のインビトロでの分化培養を使用して行われてきた。FLT3L及びGM-CSFに対応するDC分化は、実施し得るフローに基づく選別又は磁気精製の前に、完全補充培地及びFCS中で少なくとも1週間の、造血前駆体のインビトロにおけるインキュベーションを必要とする。これらのプロセスの両方により、エクスビボの対応物との代謝変化及び主な差がもたらされ得る。実に適切なDCモデルとしてのGM-CSF bmDCの有効性は、議論の対象となっているが(Guilliams and Malissen,2015;Helft et al.,2015;Helft et al.,2016;Lutz et al.,2016)、大部分の代謝研究はこの系を使用して行われている(Everts et al.,2012; Kelly and O’Neill,2015;Wolf et al.,2016)。GM-CSF由来骨髄培養により、マクロファージ(GM-Mac)、樹状細胞(GM bmDC)、及び未熟DCの不均一な集団が生成される(Helft et al.,2015;Lutz et al.,2017)。ZENITHのシングルセル分解能により、さらなる操作及び単離の必要なく、サンプルにおいて低比率で存在する細胞集団における代謝プロファイルの特性評価が可能になる。バルクの未熟GM-CSF bmDCが、以前の記載のように(Everts et al.,2012)、LPSで活性化した際、グルコースに高い依存度を示し、解糖能力の増加及び呼吸の減少へと切り替える(データは示さず)ということを確認した。LPS処理の際、すべての細胞が厳密に同じ活性動態に従うわけではなく、これは、その不均一な成熟マーカーのレベルによって明らかにされる。一部が成熟表現型を既に示し始める一方、これらはまた、ミトコンドリア呼吸へのより高い依存度を示し始める(データは示さず、LPS未熟 DC5% vs成熟DC-A 45%,P<0.001)。興味深いことに、このデータは、未熟GM-bmDCが極めて解糖性であるヒト血液単球と等しいEMプロファイルを有するということを示唆する以前の研究に沿うものである(データは示さず)(Cheng et al.,2014;Oren et al.,1963)。
【0087】
さらに、培養において、高レベルの表面MHC-II及びCD86によって特徴づけられる、定常状態の「成熟」DCの分集団を特定でき(成熟DC-B、データは示さず)、これは、LPS刺激後に特定の代謝プロファイルを示し、異なる代謝変化を行った(データは示さず)。この集団の由来及び機能は未だ明らかにされていないが、既存の技術を使用して特定できなかったであろうとされ、様々な細胞サブセットに対して公平に且つ同時にEMプロファイルを得るというZENITHの力をさらに明らかにするものであるしたがって、ZENITHは、研究サンプルにおいて豊富であることと無関係に、個々の細胞の代謝プロファイルにおけるクラスタリングに基づいて、機能性細胞集団の分類を可能にする。
【0088】
また、FLT3L由来及びエクスビボの脾臓DCのEMプロファイルも得た。GM-CSF由来と対照的に、FLT3L-bmDCは、DC1(XCR1+cDC)、DC2(SIRPA+CD11b+cDC)、及びDC6(CD123+SiglecH+pDC)を含むいくつかのDCサブセットを含む(Merad et al.,2013)。FLT3L由来bmDCを新たに単離した脾臓DCと比較し、様々なDCサブセットでのEMプロファイルとその活性状態との相関を行った。FLT3L bmDC及び脾臓DCは、極めてミトコンドリア呼吸に依存的であり、定常状態条件においてはより低い解糖能力で、DC6/pDCが最も依存的である(データは示さず)。脾臓DCにおいて、解糖へのLPS依存的スイッチは、DC1において部分的に観察されるのみであり、DC2にもDC6にも観察されなかった。この状況は、FLT3L-bmDCでは逆であり、DC2はほぼ独占的に解糖を行う一方、DC6は影響されない。また、これらの結果は、LPSによって直接活性化されるという様々なDCサブセットの能力に依存し得、TLR4は大部分がDC2に発現される。全体で、これらの結果は、GM-CSF及びFLT3L-bmDCの代謝プロファイルが外植した脾臓DCのEMプロファイルを完全に再現するわけではないということを示す。LPS活性化の際、解糖へのスイッチが、試験におけるDCの由来に応じて様々な個々のサブセットにおいてあるが観察できた。それでも、マウスDCのEMプロファイルは、成熟ではなく免疫活性化レベルと強く相関し、炎症状態の代替マーカーに相当し得る。
【0089】
ZENITHは定常状態及び活性化T細胞のSeahorseEMプロファイルを再現する。
活性化の際のT細胞の好気的解糖への代謝スイッチは1970年代に最初に記載され、近年ではSeahorse法を使用して確認された。本方法を評価するため、Seahorse及びZENITHによって並行して、定常状態における又は活性化した際の、単離したバルクのヒト血液T細胞で観察されたEMの変動をモニタリングした。SeahorseとZENITHの両方によって、活性化の際、T細胞の解糖能力の増加を観察した(データは示さず)。2つの方法で得た測定値は、良好に一致した(スピアマンの相関r
2 0.85,P<0.01)(
図6A)。Seahorseにおいて、活性化の際のバルクT細胞における余剰呼吸能力の有意な低下を観察した(データは示さず)。興味深いことに、SeahorseによるOCRの増加は、より多いが、ZENITHによって測定した全体的なPSレベルの大きな増加と対応した(それぞれ
図6B及び
図6C)。全体として、Seahorse及びZENITHによって得た活性化の際のT細胞のEMプロファイルはゆえに、極めて整合しており、細胞の全体的な代謝活性及び阻害剤に対応する変化に相関する翻訳レベル(
図6C)は、T細胞活性化の際に生じる好気的解糖への代謝スイッチを裏付けた。しかしながら、ZENITHはSeahorse測定に対して2つの主な利点を示した。第1に、ZENITHでの信号の大きさ及び測定値のずれが優れていた(
図6B及び
図6C)。第2に、ZENITH分析は、10倍少ないT細胞で行った(それぞれトリプリケートで1,2.10
5vs1,2.10
6細胞)。さらに、ZENITHは、分析おいてT細胞マーカーのフルFCSスペクトルを取り込むことができ、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターCD4+又はCD8+T細胞サブセットを含む、バルクサンプルに存在する様々なCD3+T細胞分集団を並行して研究できる(
図6)。
【0090】
ZENITHによる血液T細胞サブセットの代謝逆畳み込みにより、高解糖能力を恒常的に示すメモリーCD8+T細胞サブセットを同定する。
T細胞分集団を逆畳み込みする能力を詳しく述べるため、次に、ZENITHを、これまでにシングルセル分析に使用できなかった混合集団に適用した。このため、すべてヒト全血調製物からのナイーブ及びメモリーCD4+又はCD8+細胞のサブセット分析を可能にするものである、CD45RA、IL7RA(CD127)、CCR7、CD45RO、CD57、PD1、パーフォリンの染色を利用した。これら9個のマーカーに対する抗体を適用することで、様々な存在量である、表現型が別個の6つのクラスター/分集団を生成した(データは示さず)。非活性化ナイーブT細胞(CD8又はCD4)、並びにメモリー(EM及びCM)CD4及び高分化CD8(HDE)の代謝プロファイルは、その代謝活性に対して以前に報告されたことと一致して、中高程度のミトコンドリア依存度を示した(データは示さず)。一方で、CD8早期エフェクターメモリー(EFM)及びナチュラルキラー(NK)細胞など(T細胞とともに精製され、細胞のわずか5%に相当する)のあまり豊富ではない細胞サブセットは、より高い解糖能力を示した。同様の代謝傾向が他の種及び調製物において観察されるかどうかを判定するため、休止及び活性化したマウスの脾臓T細胞及びヒト血液セントラルメモリーCD4T細胞サブセットに、ZENITHを行った(データは示さず)。結果として、また、活性化の際のマウス及びヒトT細胞において、高解糖能力及び高グルコース依存度への極めて整合したスイッチを測定できた(データは示さず)。
【0091】
バルクT細胞分析時に、ナイーブ細胞は42%に相当する(78%のうちの大多数)ので、Seahorseによる未分離の集団において行ったEMモニタリングを主導すると考えられるということが留意される(
図6B)。したがって、Seahorse測定は、多少低い「平均」解糖速度/能力及び高い「平均」酸素消費速度を示している(データは示さず)。休止T細胞のSeahorse分析は、ZENITHによって測定したナイーブT細胞の代謝に沿うものである(データは示さず)。しかしながら、Seahorseの結果は、細胞の5%以下に相当し(処理のそれぞれにおいて500細胞に相当し、2000細胞となる)、定常状態では高解糖能力を示した、CD8+EEMの存在を完全に消してしまった。
【0092】
マルチパラメーターZENITHの分解力における他の重要な特徴は、その表現型とは無関係に、その代謝阻害剤に対する感受性に応じてシングルセル挙動に着目するという可能性である。これにより、まず機能的代謝の不均一性を特定し、その後表現型など、様々な細胞を決定することができる。この概念の証拠として、翻訳モニタリングの前にミトコンドリア呼吸を阻害するため、休止した精製T細胞をオリゴマイシンで処理した。結果として、翻訳レベルをプロットするヒストグラムは、1つが高レベルの翻訳、1つが低レベルの翻訳を有する2つのT細胞分集団を示した(データは示さず)。ミトコンドリア阻害の際に高レベルの翻訳を示した集団は「解糖性」とラベル付けし、翻訳を遮断した細胞は「ミトコンドリア依存性」とラベル付けした(データは示さず)。T-SNEに示すように、解糖性及び呼吸性のT細胞の表現型は、以前の結果を再現するものであり(データは示さず)、大部分がナイーブT細胞及びNK細胞に存在するCD45RAの発現が「ミトコンドリア依存性」と良好に相関する(データは示さず)ということを示した。つまり、ZENITHは、目的となる、既知の豊富ではない細胞サブセットのEMプロファイルの決定だけでなく、不均一なサンプル内に存在する興味深い代謝プロファイルを有する「未知の」細胞を選別及び同定することができるということを見いだした。
【0093】
ヒト腫瘍関連骨髄細胞の代謝状態のプロファイリング
免疫療法は腫瘍学において革新的であるが、一部の患者のみが腫瘍に対する完全な免疫媒介の拒絶を示す。処置に対する患者の応答に観察されるに差異により、腫瘍関連免疫細胞の機能状態(免疫プロファイリング)を理解することが強く求められるようになっている。したがって、ZENITHがヒト腫瘍サンプルにおける並行した表現型及び代謝プロファイリングに使用できるかどうか、及びこれが、多様な起源の腫瘍と比較して、とりわけ腫瘍のない近くの組織と腫瘍とを比較して、免疫細胞サブセットの不均一性ついて何を明らかにするかを試験した。したがって、健康なドナーのPMBCを使用し、同じ組織の2つのがんを使用し(外植髄膜腫、脳転移(乳がん由来))、腎癌腫瘍及び腎臓腫瘍近傍組織を比較して、ZENITHを行った。腎癌及び腫瘍近傍組織の場合、ZENITH及びシングルセルRNAシーケンシング分析の両方を同じサンプルに並行して行った。組織状況に注目する一方、結果のヒートマップにおいて、同じ免疫細胞が健康なドナーの血液にて同定されたときのEMプロファイルを含めた。
【0094】
髄膜腫における8つの異なる骨髄集団、及び腎癌における6つの異なるサブセットを観察して(データは示さず)、これらをすべてZENITHによってプロファイリングした(データは示さず)。EMプロファイルに基づく様々な細胞サブセットのクラスタリングの際、「解糖性クラスター」と「呼吸性クラスター」との2つの群が生じた(データは示さず)。Mono1及び好中球は、試験したすべての血液サンプル及び腫瘍において解糖性代謝プロファイルを示した(データは示さず)。一方で、Mono2、DC1及びDC2は、腎臓腫瘍及び腫瘍近傍組織から単離されるとき、比較的高い解糖能力を示す一方、これらのサブセットは2つの脳腫瘍において高呼吸性代謝プロファイルを示した。反対に、腫瘍関連マクロファージ(TAM)は高ミトコンドリア依存度を示す一方、腫瘍近傍マクロファージは高解糖能力を示し(データは示さず)、腫瘍微小環境がTAMのEMを変化させることを示唆する。腫瘍近傍マクロファージと比較したときのTAMにおける解糖能力の低下は、これまで腫瘍環境における免疫抑制の増大、栄養学的キュー及び免疫学的キューの両方を介した腫瘍進行、並び患者の低生存性と関連付けられていた。これらの結果は、また、ZENITHの分析能力及び識別力を表し、腫瘍型に加えて、その解剖学的由来が免疫サブセットの代謝に影響を与え、腫瘍環境におけるさらなる不均一性の層を取り入れ得ることを示唆する。この感受性は、現在利用可能なバルク測定を使用しては認識されないだろう。
【0095】
腫瘍関連骨髄細胞におけるscRNAシーケンシング及び機能性エネルギー代謝プロファイルの結合
これらの結果は以前に観察されておらず、ZENITH方法は新しいことから、シングルセルRNAシーケンシングを使用して同じサンプルを並行して処理することによってこの発見を発展及び検証することも試みた。したがって、各集団において、ZENITHによって得た機能的EMプロファイルとmRNAシーケンシングによって得た代謝遺伝子発現プロファイルとを比較することを狙いとした。これを行うため、まず、血液の様々な骨髄細胞における機能的代謝と相関する特定の解糖性及び呼吸性遺伝子シグネチャーを同定した(データは示さず)。そして、腫瘍の様々な骨髄集団においてこれらの解糖性及び呼吸性代謝遺伝子シグネチャーの発現(mRNAレベル)を試験することを狙いとした。そのため、腎癌及びその腫瘍近傍組織から骨髄細胞(CD45+Lin-HLA-DR+)を選別し、ディープシーケンシングと組み合わせた10×GenomicsのChromiumプラットフォームを使用してシングルセルRNAシーケンシングを行った(データは示さず)。腫瘍の12,801細胞及び腫瘍近傍組織の2,080細胞の分析により、それぞれ6個及び5個の高品質集団クラスターを生じた。骨髄集団を厳密に同定するため、これらの集団における特有のシグネチャーの発現を確認して、tSNE表示における細胞同定を行った。この処理により、Mono1、Mono2、及びDCのクラスターを同定できた(データは示さず)。フローサイトメトリーによってモニタリングし、腫瘍及び腫瘍近傍組織の両方に存在した5つの単球及びマクロファージ(MAFB及び/又はCSF1Rを発現するクラスター)に注目した(データは示さず)。従来のマーカーの発現(すなわち、FCGR3A/CD16及びCD14(データは示さず))を確認することによって、クラスター0及び1がCD14+CD16-の古典的単球に相当することを確認した。クラスター2は、CD14-CD16+の非古典的単球に相当する(Mono2)一方、クラスター3及び4におけるCD14とCD16との共発現は、マクロファージ様表現型を示唆する。全体で、これらの結果は、腫瘍の微小環境が機能的に且つ転写レベルでマクロファージ代謝プロファイルを明確に変化させることを示す。したがって、シングルセルRNAシーケンシング分析は、同定したすべての様々な骨髄細胞サブセットにおいてZENITHを行うことによって得られた結果を裏付けた(データは示さず)。さらに、FACSによるZENITHデータと強く一致して、単球クラスター(0、1、2)は腫瘍及び腫瘍近傍組織の両方において解糖性シグネチャーの濃縮を示した。しかしながら、なおZENITH機能データと一致するが、マクロファージ(クラスター3)は、腫瘍において呼吸性シグネチャーの高発現を示す一方で、これは腫瘍近傍組織では検出されなかった(データは示さず。)単球で観察されるように、樹状細胞は腫瘍及び腫瘍近傍組織の両方において解糖シグネチャーの濃縮を示した(データは示さず)。さらに、ZENITHを行うことによって、PMBCから選別した骨髄細胞において同定された機能的遺伝子シグネチャーを同定でき(データは示さず)、これは組織及び腫瘍から選別した骨髄細胞に拡張可能である。したがって、ZENITHプロファイリングとシングルセルRNAシーケンシングとの組み合わせを、多様な細胞型及び組織のエネルギー代謝のプロファイリングに使用可能である。
【0096】
検討
ZENITHは、シングルセル分解能でフローサイトメトリーによって細胞のエネルギー代謝プロファイルを評価する新しい迅速な技術とされる。この簡単なプロファイリング方法により、エネルギー代謝測定とトランスクリプトームデータとを直接的に統合することができ、そして免疫細胞集団クラスタリング、免疫刺激活性の分析及びがん患者の免疫モニタリングを可能にするということを示した。ヒト血液単球及び好中球が定常状態において非常に強力なグルコース依存度及び解糖能力を示す一方、樹状細胞は低解糖能力及びより高いミトコンドリア呼吸活性を有するということを示すことができた。LPS活性化の際、DCサブセットには解糖への強力なスイッチが入り、樹状細胞が成熟するとミトコンドリア依存度の増加及び解糖能力の低下が観察される。
【0097】
全体で、血液細胞において観察した様々な解糖性EMプロファイルは、血流と比較して十分に酸素を含んでいない末梢組織にアクセスする必要がある遊走性好中球、単球(Mono1)、及びmoDCなどの、機能的要求を反映し得る。EM活性は、機能的細胞分化も指示するとともに、細胞がエフェクター機能を示す組織に達する前に細胞において実行される遺伝子発現プログラムに、明らかに依存する。したがって、EMプロファイリングは、患者又は器官の免疫状態を予測するために使用可能である。定常状態のヒト血液及び扁桃腺DC又は脾臓由来DCは、極めて灌流性の二次リンパ組織に移動し、これはその高ミトコンドリア依存度に相関する状況である。二次リンパ器官に入ると、成熟DCはナイーブ及びセントラルメモリーT細胞を活性化することができ、これらは血流とリンパ流との間で循環してその寿命の大部分を過ごす。本明細書において、ナイーブ及びセントラルメモリーT細胞が定常状態において高ミトコンドリア依存度(50%を超える)及び低解糖能力(45%未満)を示す一方、そのEMプロファイルは活性化の際著しく変化し、ミトコンドリア依存度の低下(20%未満まで)及び解糖能力の増加(80%を超えて)を示すということを確認した。T細胞がリンパ節で活性化されると、高解糖性エフェクターT細胞に増殖、分化して、炎症性後毛細管小静脈及び血管外遊出物を見つける能力を有しながら血液循環に再び入る。しかしながら、第1の代謝スイッチは、活性化の6時間後にすら起こり、ゆえに、脾臓などの二次リンパ器官においても、高解糖の可能性が求められる又は効果的な免疫応答と関連する領域又は状況が存在するということが示唆される。
【0098】
ZENITHにより、研究者らは、適用すべき追加の特別な機器や熟練したスタッフを必要とすることなく、多数のヒト用医薬分野(腫瘍学、免疫学、感染症学など)における診断に使用されるマルチパラメーターフローサイトメトリーの高スループットパワーを利用できる。ZENITHのシングルセル分解能により、エネルギー代謝に影響する同定遺伝子又は細胞の遺伝子不活性化又はサイレンシングに基づくスクリーニング方法を設計することができる。例えば、樹状細胞における代謝プロファイルの調節に関与する新たな遺伝子を同定するため、CAS9のノックアウトスクリーニングを使用することができる。特定の代謝プロファイルを示すシングルセルを選別し、次世代シーケンシングを行う能力は、細胞型特異的にエクスビボで代謝及びその調節に関与する新たな遺伝子の同定を初めて可能にする。
【0099】
また、この方法は、サンプルをフローサイトメトリーによって分析するためだけでなく、蛍光顕微鏡観察によってエクスビボの生組織薄片又は全器官イメージングを行うために使用可能である。これにより、現在の解剖病理学の知識と、不全組織の様々な領域及び細胞活性における代謝についての情報とを組み合わせることができる。最後に、この方法は、がんや他の疾患に対する最良の処置を選択する必要がある臨床医に重要な情報をもたらし得る、ルーチンの病理学研究となる可能性がある。
【0100】
蛍光顕微鏡観察によって生組織薄片、又は全胚、器官、及び腫瘍をイメージングするため、エクスビボのZENITHを行うことを計画している。その組織及び膜成分への付着により、インタクトなシングルセル懸濁液として単離することが困難であるため、現在利用可能な技術では研究できない免疫細胞分集団においてレポーター蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを研究するため、この技術を適用し得る。
【0101】
腫瘍学における免疫代謝の分野は、極めて有望な用途である。この技術により、腫瘍細胞及び腫瘍に浸潤する免疫細胞の代謝プロファイルが腫瘍進行の予測に対して情報価値があるかどうかを判定することができる。いくつかの腫瘍群から得られるトランスクリプトームデータは、腫瘍代謝に関与する遺伝子の発現パターンが、腫瘍を浸潤する免疫細胞のレベル又は種類よりも腫瘍進行のより良好な予測因子となることを示唆している。したがって、ZENITHは、新たな治療及びマーカーが最も緊急に求められているヒト用医薬の領域である、ヒト腫瘍学における診断及び免疫モニタリングに使用される方法となる可能性がある。
【0102】
ZENITHは、多くの基礎及びトランスレーショナル研究に、特に腫瘍学、免疫学、及び免疫代謝の中間に適用される可能性がある。これは、血液細胞、二次リンパ器官、及び腫瘍及び腫瘍浸潤細胞、並びに神経生物学における分析に使用可能である。この方法は、サンプルをフローサイトメトリーによって分析するためだけでなく、蛍光顕微鏡観察によってエクスビボの生組織薄片又は全器官イメージングを行うために使用可能である。最後に、これは、がんや他の疾患に対する最良の処置を選択する必要がある臨床医に重要な情報をもたらし得る、ルーチンの病理学研究となる可能性がある。実際に、フローサイトメーターは大部分の研究機関及び病院で利用可能であるが、ZENITHは、機能的代謝プロファイリングの最も利用しやすい方法に相当し、他の方法と比較して感受性、利便性、シングルセル分解能、表示の安定性、必要な時間、固定及び選別の互換性について、いくつかの利点がある。重要な点は、ZENITHは、血液から単離した総T細胞の約5%に相当する早期エフェクターT細胞の分析で例示するように(500細胞)、極めてまれな細胞の代謝プロファイルを定めることができ、ゆえに、Seahorse測定と比較して、約800倍の感受性増加に相当する(トリプリケートで400.000)。
【0103】
EMとリンパ性エフェクター細胞及び骨髄細胞の機能性との直接の関係から、ZENITH分析は、「免疫EM構成」を規定し、腫瘍の免疫適応度を規定する免疫スコアの設定を補い、目的に合わせた治療のため患者を予測し分類するために使用され得る。
【0104】
参考文献
本願において、種々の参考文献によって、本発明が属する技術の現状が記載されている。これらの参考文献の開示は、本明細書において言及によって本開示に援用される。
【0105】
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