(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】LED駆動装置、照明装置、および車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/50 20220101AFI20240710BHJP
H05B 45/345 20200101ALI20240710BHJP
H05B 45/38 20200101ALI20240710BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240710BHJP
B60Q 3/16 20170101ALI20240710BHJP
【FI】
H05B45/50
H05B45/345
H05B45/38
H05B45/10
B60Q3/16
(21)【出願番号】P 2021561192
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020037019
(87)【国際公開番号】W WO2021106360
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019214181
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金光 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】桂 幸司
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232604(JP,A)
【文献】特開2012-114316(JP,A)
【文献】特開2012-071712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/50
H05B 45/345
H05B 45/38
H05B 45/10
B60Q 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧から出力電圧を生成してLEDのアノードに供給するための出力段を制御するDC/DCコントローラと、
前記LEDに流れるLED電流を生成する定電流回路と、
前記LEDのカソードを接続するためのLED端子と、
基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
LED電流設定部と、
外部抵抗に接続可能な電流設定端子と、
を有し、
前記DC/DCコントローラは、前記LED端子の電圧を前記基準電圧に一致させる制御を行い、
前記LED電流設定部は、前記外部抵抗の抵抗値に応じた第1電流を生成する電流生成部を有し、前記第1電流に応じて電流設定用基準電圧を生成し、
前記基準電圧生成部は、
前記第1電流に応じた第2電流が流れる第2抵抗を有し、前記第2抵抗の一端に前記LED電流設定部により設定される前記LED電流の設定値が小さくなるほど低くなる前記基準電圧を生成する、
LED駆動装置。
【請求項2】
接地端に接続するためのグランド端子をさらに有し、
前記定電流回路は、
前記電流設定用基準電圧を一方の入力端に印加される第1アンプと、
前記第1アンプの出力端が接続される制御端と、前記LED端子が接続される第1端と、前記第1アンプの他方の入力端に第1ノードにて接続される第2端と、を有する第1トランジスタと、
前記第1ノードと接続される一端と、前記グランド端子に接続される他端と、を有する第1抵抗と、
を有する、請求項1に記載のLED駆動装置。
【請求項3】
前記基準電圧は、前記LED電流の設定値の変化に応じて直線的に変化する、請求項1または請求項2に記載のLED駆動装置。
【請求項4】
前記基準電圧生成部は、前記LED電流の設定値が所定の閾値以下の場合、前記基準電圧を一定とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のLED駆動装置。
【請求項5】
前記基準電圧生成部は、
所定の下限電圧が印加される一方の入力端と、前記第2抵抗の一端に接続される他方の入力端と、前記第2抵抗の一端に接続される出力端と、を有する第2アンプをさらに有する、請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載のLED駆動装置。
【請求項6】
前記LED電流設定部は、
前記第1電流に基づき第3電流を生成する第1カレントミラーと、
前記第3電流が流れる第3抵抗と、
前記第1電流に基づき前記第2電流を生成する第2カレントミラーと、
を有し、
前記第3抵抗の一端に前記電流設定用基準電圧が生成される、請求項
1から請求項5のいずれか1項に記載のLED駆動装置。
【請求項7】
前記電流生成部は、
可変である調光指令信号を一方の入力端に印加される第3アンプと、
前記第3アンプの出力端が接続される制御端と、前記第3アンプの他方の入力端と前記電流設定端子に接続される第1端と、を有する第2トランジスタと、
を有する、請求項
1から請求項
6のいずれか1項に記載のLED駆動装置。
【請求項8】
設定LED電流比率がLED電流比率閾値以上である場合は前記定電流回路を常時オンとするDC調光を行い、前記設定LED電流比率が前記LED電流比率閾値を下回る場合は前記定電流回路をオンオフするPWM調光を行う調光制御部を有する、請求項
7に記載のLED駆動装置。
【請求項9】
前記LED電流比率閾値は、可変設定される、請求項
8に記載のLED駆動装置。
【請求項10】
前記入力電圧に基づき内部電圧を生成する内部電圧生成部と、
前記内部電圧を分圧抵抗によって分圧した電圧を印加可能である調光端子と、をさらに有し、
前記LED電流比率閾値は、前記調光端子に印加される電圧に応じて可変設定される、請求項
9に記載のLED駆動装置。
【請求項11】
前記出力電圧は、複数系統の前記LEDの各アノードに供給され、
複数系統の前記LEDの各カソードに接続するための複数の前記LED端子と、
複数の前記LED端子の電圧のうち最低電圧を選択するセレクタと、をさらに有し、
前記DC/DCコントローラは、前記最低電圧を前記基準電圧に一致させる制御を行う、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載のLED駆動装置。
【請求項12】
請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載のLED駆動装置と、
前記出力段と、
前記LEDと、
を有する、照明装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の照明装置を有する車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消費電力が小さく寿命の長いLED(発光ダイオード)が様々な用途に用いられる。LEDを駆動するLED駆動装置の従来例は、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のLED駆動装置は、入力電圧から出力電圧を生成してLEDに供給するための出力段を制御するDC/DCコントローラと、LEDに流れる出力電流を生成する定電流ドライバと、を有し、複数系統のLEDを駆動する。
【0004】
DC/DCコントローラは、複数系統のLEDのカソード電圧のうち最低電圧と基準電圧とを比較するエラーアンプと、当該エラーアンプの出力とスロープ信号とを比較して内部PWM信号を生成するPWMコンパレータと、を有する。
【0005】
定電流ドライバは、PWM端子に入力される外部PWM信号に基づいてオンオフされる。これにより、PWM調光制御が行われる。定電流ドライバがオンの期間において、エラーアンプおよびPWMコンパレータにより上記カソード電圧の最低電圧が基準電圧と一致するように出力段におけるスイッチング素子がスイッチングパルスによりPWM駆動される。これにより、複数系統のLEDの各順方向電圧のうちの最大電圧に上記基準電圧を加えた電圧値に出力電圧(LEDのアノード電圧)が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなLED駆動装置により、順方向電圧が最大となる系統のLEDのカソード電圧が上記基準電圧に制御され、それ以外の系統のLEDのカソード電圧は、上記基準電圧以上の電圧に制御される。そして、複数系統の各LEDの各カソードの電圧と各LEDを流れる電流によりLED駆動装置における消費電力すなわち発熱量が決まる。
【0008】
昨今、例えば車載用の表示装置などでは、表示面積が大きくなることで、LED灯数が増加しており、発熱量の問題が大きくなっている。
【0009】
上記状況に鑑み、本発明は、発熱量を効果的に抑制することが可能となるLED駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るLED駆動装置は、
入力電圧から出力電圧を生成してLEDのアノードに供給するための出力段を制御するDC/DCコントローラと、
前記LEDに流れるLED電流を生成する定電流回路と、
前記LEDのカソードを接続するためのLED端子と、
基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
LED電流設定部と、
を有し、
前記DC/DCコントローラは、前記LED端子の電圧を前記基準電圧に一致させる制御を行い、
前記基準電圧生成部は、前記LED電流設定部により設定される前記LED電流の設定値が小さくなるほど低くなる前記基準電圧を生成する、構成としている(第1の構成)。
【0011】
上記第1の構成において、接地端に接続するためのグランド端子をさらに有し、
前記定電流回路は、前記LED電流設定部により生成される電流設定用基準電圧を一方の入力端に印加される第1アンプと、
前記第1アンプの出力端が接続される制御端と、前記LED端子が接続される第1端と、前記第1アンプの他方の入力端に第1ノードにて接続される第2端と、を有する第1トランジスタと、
前記第1ノードと接続される一端と、前記グランド端子に接続される他端と、を有する第1抵抗と、
を有することとしてもよい(第2の構成)。
【0012】
また、上記第1または第2の構成において、前記基準電圧は、前記LED電流の設定値の変化に応じて直線的に変化することとしてもよい(第3の構成)。
【0013】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記基準電圧生成部は、前記LED電流の設定値が所定の閾値以下の場合、前記基準電圧を一定とすることとしてもよい(第4の構成)。
【0014】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、外部抵抗に接続可能な電流設定端子をさらに有し、
前記LED電流設定部は、前記外部抵抗の抵抗値に応じた第1電流を生成する電流生成部を有し、前記第1電流に応じて前記電流設定用基準電圧を生成し、
前記基準電圧生成部は、前記第1電流に応じた第2電流が流れる第2抵抗を有し、
前記第2抵抗の一端に前記基準電圧が生成されることとしてもよい(第5の構成)。
【0015】
また、上記第5の構成において、前記基準電圧生成部は、所定の下限電圧が印加される一方の入力端と、前記第2抵抗の一端に接続される他方の入力端と、前記第2抵抗の一端に接続される出力端と、を有する第2アンプをさらに有することとしてもよい(第6の構成)。
【0016】
また、上記第5または第6の構成において、前記LED電流設定部は、
前記第1電流に基づき第3電流を生成する第1カレントミラーと、
前記第3電流が流れる第3抵抗と、
前記第1電流に基づき前記第2電流を生成する第2カレントミラーと、
を有し、
前記第3抵抗の一端に前記電流設定用基準電圧が生成されることとしてもよい(第7の構成)。
【0017】
また、上記第5から第7のいずれかの構成において、前記電流生成部は、可変である調光指令信号を一方の入力端に印加される第3アンプと、
前記第3アンプの出力端が接続される制御端と、前記第3アンプの他方の入力端と前記電流設定端子に接続される第1端と、を有する第2トランジスタと、
を有することとしてもよい(第8の構成)。
【0018】
また、上記第8の構成において、設定LED電流比率がLED電流比率閾値以上である場合は前記定電流回路を常時オンとするDC調光を行い、前記設定LED電流比率が前記LED電流比率閾値を下回る場合は前記定電流回路をオンオフするPWM調光を行う調光制御部を有することとしてもよい(第9の構成)。
【0019】
また、上記第9の構成において、前記LED電流比率閾値は、可変設定されることとしてもよい(第10の構成)。
【0020】
また、上記第10の構成において、前記入力電圧に基づき内部電圧を生成する内部電圧生成部と、前記内部電圧を分圧抵抗によって分圧した電圧を印加可能である調光端子と、をさらに有し、
前記LED電流比率閾値は、前記調光端子に印加される電圧に応じて可変設定されることとしてもよい(第11の構成)。
【0021】
また、上記第1から第11のいずれかの構成において、前記出力電圧は、複数系統の前記LEDの各アノードに供給され、
複数系統の前記LEDの各カソードに接続するための複数の前記LED端子と、
複数の前記LED端子の電圧のうち最低電圧を選択するセレクタと、をさらに有し、
前記DC/DCコントローラは、前記最低電圧を前記基準電圧に一致させる制御を行うこととしてもよい(第12の構成)。
【0022】
また、本発明の一態様に係る照明装置は、上記いずれかの構成としたLED駆動装置と、前記出力段と、前記LEDと、を有する。
【0023】
また、本発明の一態様に係る車載用表示装置は、上記構成とした照明装置を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のLED駆動装置によれば、発熱量を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るLED駆動装置の構成を示した構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るLED駆動装置における調光機能に関する一部構成を要部的に示す図である。
【
図3】LED電流比率閾値を50%とした場合の調光切替えを示すグラフである。
【
図4】LED電流比率閾値を25%とした場合の調光切替えを示すグラフである。
【
図5】LED電流比率閾値を100%とした場合の調光切替えを示すグラフである。
【
図6】LED電流とLED光度との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】LED電流と色度との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態に係るLED電流設定部、定電流回路、および基準電圧生成部の各回路構成を示す図である。
【
図9】LED電流(抵抗Riset)の設定値と基準電圧との関係の一例を示すグラフである。
【
図10】LED順方向電圧ばらつきとLED駆動装置における消費電力との関係の一例を示すグラフである。
【
図11】バックライト装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に記載する具体的な信号値や温度値等は、一例である。
【0027】
<1.LED駆動装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るLED駆動装置30の構成を示した回路構成図である。
図1に示すLED駆動装置30は、複数系統(本実施例では一例として6系統)のLEDアレイ41~46を駆動する。LED駆動装置30は、内部電圧生成部1と、電流検出部2と、発振部4と、スロープ生成部5と、PWMコンパレータ6と、制御ロジック部7と、ドライバ8と、ソフトスタート部9と、出力ディスチャージ部10と、エラーアンプ11と、セレクタ12と、基準電圧生成部13と、保護回路部14と、調光制御部15と、LED電流設定部16と、シュミットトリガ17と、定電流ドライバ18と、を集積化して有する半導体装置である。
【0028】
また、LED駆動装置30は、外部との電気的接続を確立するための外部端子として、VCC端子、VREG端子、CSH端子、SD端子、VDISC端子、OUTL端子、CSL端子、LED1端子~LED6端子、OVP端子、GND端子、ISET端子、ADIM端子、PWM端子、SHT端子、FAIL2端子、FAIL1端子、COMP端子、および、EN端子を有する。
【0029】
LED駆動装置30の外部には、入力電圧Vinから出力電圧VoutをDC/DC変換により生成してLEDアレイ41~46のアノードに供給するための出力段35が配置される。出力段35は、スイッチング素子N1と、ダイオードD1と、インダクタL1と、出力コンデンサCoと、を有する。スイッチング素子N1がLED駆動装置30により駆動制御されることにより、出力段35はLED駆動装置30により制御される。出力段35とLED駆動装置30とにより、DC/DCコンバータが形成される。なお、本実施形態では、特にDC/DCコンバータとして、昇圧DC/DCコンバータが構成される。
【0030】
入力電圧Vinの印加端は、コンデンサCvccの一端、VCC端子、および抵抗Rshの一端に接続される。コンデンサCvccの他端は、接地端に接続される。抵抗Rshの他端は、CSH端子およびpチャネルMOSFETで構成されるトランジスタM1のソースに接続される。トランジスタM1のドレインは、インダクタL1の一端に接続される。トランジスタM1のゲートは、SD端子に接続される。インダクタL1の他端は、ダイオードD1のアノードおよびnチャネルMOSFETで構成されるスイッチング素子N1のドレインに接続される。スイッチング素子N1のソースは、抵抗Rslを介して接地端に接続される。スイッチング素子N1のゲートは、OUTL端子に接続される。ダイオードD1のカソードは、出力コンデンサCoの一端に接続される。出力コンデンサCoの他端は、接地端に接続される。出力コンデンサCoの一端に出力電圧Voutが生成される。
【0031】
なお、スイッチング素子N1は、LED駆動装置に含めるようにしてもよい。
【0032】
出力電圧Voutが発生する出力コンデンサCoの一端には、LEDアレイ41~46の各アノードが接続される。LEDアレイ41~46は、それぞれ直列に接続された複数のLEDから構成される。LEDアレイ41~46の各カソードは、それぞれLED1端子~LED6端子に接続される。
【0033】
なお、LEDアレイ41~46は、それぞれ直列接続に限らず、例えば直並列に接続されたLEDから構成されてもよいし、1つのみのLEDから構成されてもよい。また、駆動可能なLEDアレイの個数も6つに限らず、例えば4つ等でもよい。また、1系統のLEDアレイのみを駆動可能としてもよい。
【0034】
次に、LED駆動装置30の内部構成に関して説明する。
【0035】
内部電圧生成部1は、EN端子がHighのときに、VCC端子に印加される入力電圧Vinから内部電圧Vreg(例えば5V)を生成してVREG端子から出力する。内部電圧Vregは、LED駆動装置30に含まれる内部回路の電源電圧として使用される。VREG端子には、コンデンサCvgが接続される。
【0036】
電流検出部2には、CSH端子およびSD端子が接続される。
【0037】
発振部4は、所定のクロック信号を生成し、これをスロープ生成部5に出力する。
【0038】
スロープ生成部5は、発振部4から入力されるクロック信号に基づいて、スロープ信号(三角波信号)Vslpを生成し、これをPWMコンパレータ6に出力する。また、スロープ生成部5は、スイッチング素子N1に流れる電流を抵抗Rslにより変換したCSL端子電圧に応じて、スロープ信号Vslpにオフセットを与える機能を有する。
【0039】
PWMコンパレータ6は、非反転入力端(+)に入力される誤差信号Verrと、反転入力端(-)に入力されるスロープ信号Vslpとを比較して内部PWM信号pwmを生成し、これを制御ロジック部7に出力する。
【0040】
制御ロジック部7は、内部PWM信号pwmに基づいてドライバ8の駆動信号を生成する。
【0041】
ドライバ8は、制御ロジック部7から入力される駆動信号に基づいてスイッチング素子N1のゲート電圧を内部電圧Vregと接地電圧との間でパルス状に生成する。
【0042】
スイッチング素子N1は、ドライバ8から入力されるゲート電圧に基づいてオン/オフされる。
【0043】
LED1端子~LED6端子には、それぞれLEDアレイ41~46の各カソード電圧としてLED端子電圧Vled1~Vled6が印加される。セレクタ12は、LED端子電圧Vled1~Vled6のうち最低電圧を選択してエラーアンプ11の一方の反転入力端(-)に出力する。エラーアンプ11の他方の反転入力端(-)には、出力電圧Voutを分圧抵抗Rovp1,Ropv2によって分圧した後のOVP端子電圧が印加される。エラーアンプ11の非反転入力端(+)には、基準電圧Vrefが印加される。エラーアンプ11は、2つの反転入力端(-)に印加される電圧のうち低い方の電圧と、基準電圧Vrefとの差分を増幅して誤差信号Verrを生成し、これをPWMコンパレータ6に出力する。起動時のみ起動を早めるためにOVP端子に基づく帰還制御が行われ、起動後はセレクタ12の出力に基づく帰還制御が行われる。
【0044】
エラーアンプ11の出力端は、COMP端子に接続される。COMP端子は、外部において直列接続される抵抗RpcとコンデンサCpcを介して接地端に接続される。
【0045】
ソフトスタート部9は、誤差信号Verrの電圧レベルを緩やかに高めていくように制御する。これにより、出力電圧Voutのオーバーシュートや突入電流を抑制できる。
【0046】
保護回路部14は、TSD部と、TSDW(サーマルワーニング)部、OCP部と、OVP部と、LEDオープン検出回路(OPEN)と、LEDショート検出回路(SHORT)と、出力短絡保護回路(SCP)と、UVLO部と、を含む。
【0047】
TSD部は、LED駆動装置30のジャンクション温度が例えば175℃以上となったときに、内部電圧生成部1以外の回路をシャットダウンする。なお、TSD部は、LED駆動装置30のジャンクション温度が例えば150℃となったときに、回路動作を復帰させる。
【0048】
OCP部は、スイッチング素子N1に流れる電流を抵抗Rslにより電圧信号として検出したCSL端子電圧(入力電流検出電圧)を監視し、CSL端子電圧が例えば0.3V以上となったときに過電流保護をかける。OCP部は、過電流保護をかける際、DC/DCスイッチングをオフさせる。
【0049】
また、SD端子には、トランジスタM1のゲートが接続される。電流検出部2は、抵抗Rshに流れる過電流(インダクタL1に流れる過電流)を検出したときに、トランジスタM1をオフとし、入力電圧Vinの印加端からインダクタL1への経路を遮断する。
【0050】
OVP部は、OVP端子電圧を監視し、OVP端子電圧が例えば1.0V以上となったときに過電圧保護をかける。過電圧保護をかけたとき、DC/DCスイッチングがオフされる。
【0051】
LEDオープン検出回路(OPEN)では、LED端子電圧Vled1~Vled6のいずれかが例えば0.3V以下で、かつ、OVP端子電圧が例えば1.0V以上のときに、LEDオープン検出がかかり、オープン検出されたLEDアレイのみラッチオフされる。
【0052】
LEDショート検出回路(SHORT)では、LED端子電圧Vled1~Vled6のいずれかが例えば4.5V以上のときに、内蔵されているカウンタ動作が開始され、約13ms経過後にラッチがかかり、ショート検出されたLEDアレイのみラッチオフされる。SHT端子には、LEDショート保護設定用の抵抗Rshtが接続される。
【0053】
出力短絡保護回路(SCP)では、OVP端子電圧が例えば0.25V以下となったとき、または、LED端子電圧Vled1~Vled6のいずれかが例えば0.3V以下になったときに、内蔵されているカウンタ動作が開始され、約13ms経過後にラッチがかかり内部電圧生成部1以外の回路をシャットダウンする。出力短絡保護回路は、LEDアレイ41~46のアノード側(DC/DC出力端側)が地絡したとき、LEDアレイ41~46のカソード側が地絡したときのいずれの場合の地絡保護にも対応している。
【0054】
UVLO部は、入力電圧Vinが例えば2.8V以下になったとき、または、内部電圧Vregが例えば2.7V以下になったときに、内部電圧生成部1以外の回路をシャットダウンする。
【0055】
保護回路部14は、TSDW部の異常検出状態に基づき、FAIL1端子から外部へ異常検出信号を出力する。FAIL1端子には、抵抗Rf1を介してVREG端子が接続される。TSDW部が異常を検出したときに、保護回路部14は、FAIL1端子に接続される不図示のトランジスタをオンとすることにより、FAIL1端子をLow出力とする。
【0056】
また、保護回路部14は、LEDオープン検出回路、LEDショート検出回路、および出力短絡保護回路(SCP)の異常検出状態に基づき、FAIL2端子から外部へ異常検出信号を出力する。FAIL2端子には、抵抗Rf2を介してVREG端子が接続される。TSD部、OCP部、LEDオープン検出回路、LEDショート検出回路、および出力短絡保護回路(SCP)のいずれかが異常を検出したときに、保護回路部14は、FAIL2端子に接続される不図示のトランジスタをオンとすることにより、FAIL2端子をLow出力とする。
【0057】
シュミットトリガ17は、PWM端子へ外部から入力されるPWM調光信号を調光制御部15に伝達する。PWM調光信号は、パルス信号として入力される。調光制御部15には、ADIM端子(調光端子)を介して外部よりアナログ調光信号が入力される。後述するように、調光制御部15は、入力されるPWM調光信号およびアナログ調光信号に基づいてDC調光とPWM調光とを切り替える。調光制御部15は、定電流ドライバ18にPWM調光の指令を送る。また、調光制御部15は、LED電流設定部16にDC調光の指令を送る。
【0058】
LED電流設定部16は、ISET端子(電流設定端子)に接続される抵抗Riset(外部抵抗)の抵抗値、および調光制御部15からのDC調光の指令に応じた定電流値を定電流ドライバ18に設定する。また、基準電圧生成部13は、LED電流設定部16による定電流値の設定に応じて基準電圧Vrefを生成する。なお、LED電流設定部16および基準電圧生成部13の詳細な構成については後述する。
【0059】
定電流ドライバ18は、LED1端子~LED6端子の各端子と、接地端に接続されるGND端子との間に配置される6系統分の定電流回路181を有する。定電流ドライバ18は、PWM制御ロジック部182をさらに有する。PWM制御ロジック部182は、調光制御部15から指令されるPWM調光のオンデューティに応じて、定電流回路181をオンオフ制御する。具体的には、PWM調光のオンデューティに応じたLED電流オン期間で定電流回路181をオンとし、PWM調光のオンデューティに応じたLED電流オフ期間で定電流回路181をオフとする。定電流回路181がオンのとき、LED電流設定部16により設定された定電流値のLED電流ILEDが流れる。
【0060】
また、VDISC端子は、出力ディスチャージ部10に接続される。VDISC端子は、出力電圧Voutの生成される出力コンデンサCoの一端に接続される。出力コンデンサCoに電荷が残っている状態で起動した場合、LEDのちらつきが発生する可能性がある。そのため、起動時には出力コンデンサCoの放電が必要となるが、OVP設定用の抵抗Rovp1,Rovp2などの放電経路だけでは電荷の放電に時間がかかる場合があるため、出力ディスチャージ部10により出力コンデンサCoの残留電荷の放電を行う。当該放電は、DC/DCコンバータのオフ時(EN端子に印加する信号の立ち下げ時や保護時)に行われる。
【0061】
<2.DC/DCコントローラ>
次に、LED駆動装置30の有するDC/DCコントローラ301(発振部4、スロープ生成部5、PWMコンパレータ6、制御ロジック部7、ドライバ8、およびエラーアンプ11を含む回路ブロック)について詳述する。
【0062】
エラーアンプ11は、セレクタ12により選択されたLED端子電圧Vled1~Vled6の最低値と、OVP端子電圧とのうち低い方の電圧と、基準電圧Vrefとの差分を増幅して誤差電圧Verrを生成する。誤差電圧Verrの電圧値は、上記低い方の電圧が基準電圧Vrefよりも低いほど高レベルとなる。
【0063】
PWMコンパレータ6は、誤差電圧Verrとスロープ信号Vslpとを比較して内部PWM信号pwmを生成する。内部PWM信号pwmは、誤差電圧Verrがスロープ信号Vslpよりも高ければハイレベルとなり、誤差電圧Verrがスロープ信号Vslpよりも低ければローレベルとなる。
【0064】
制御ロジック部7は、内部PWM信号pwmに基づいてスイッチング素子N1のオン/オフ制御を行う。具体的に述べると、制御ロジック部7は、内部PWM信号pwmがハイレベルであるときに、スイッチング素子N1をオンとする。逆に、制御ロジック部7は、内部PWM信号pwmがローレベルであるときに、スイッチング素子N1をオフとする。
【0065】
これにより、エラーアンプ11、PWMコンパレータ6、制御ロジック部7、およびドライバ8からなる帰還制御部は、LED端子電圧Vled1~Vled6の最低値を基準電圧Vrefと一致させるべくスイッチングパルスをOUTL端子からスイッチング素子N1へ出力する帰還制御を行う。すなわち、DC/DCコントローラ301は、上記帰還制御部を有する。
【0066】
スイッチング素子N1がオンされると、入力電圧Vinの印加端から抵抗Rsh、トランジスタM1、インダクタL1、および、スイッチング素子N1を介して接地端に至る経路で電流が流れ、インダクタL1にエネルギが蓄えられる。このとき、ダイオードD1は逆バイアス状態となっているので、出力コンデンサCoからスイッチング素子N1に向けて電流が流れ込むことはない。出力コンデンサCoに電荷が蓄積されていた場合には、LEDアレイ41~46のアノードに対して、出力コンデンサCoからLED電流ILEDが流れることになる。
【0067】
スイッチング素子N1がオフされると、インダクタL1に蓄えられたエネルギが開放され、電流がLED電流ILEDとしてLEDアレイ41~46に流れ込むとともに、出力コンデンサCoにも流れ込み、出力コンデンサCoを充電することになる。
【0068】
上記の動作が繰り返されることにより、LEDアレイ41~46のアノードには、入力電圧Vinを昇圧して得られた出力電圧Voutが供給される。
【0069】
<2.PWM調光/DC調光>
本実施形態に係るLED駆動装置30は、PWM調光とDC調光とを設定入力によって切替える機能を有し、以下これについて説明する。なお、DC調光とは、定電流ドライバ18によりLED電流ILEDを常時オンとしてLED電流ILEDの定電流値を変化させることで調光を行う方法である。
【0070】
図2は、PWM調光とDC調光とを切替える機能に関する構成を示す図であり、先述した
図1に示すLED駆動装置30の一部を要部的に示す。
【0071】
PWM端子に入力されるPWM調光信号は、シュミットトリガ17を介して調光制御部15に入力される。VREG端子と接地端との間に抵抗R21、R22を直列に接続し、抵抗R21とR22との接続ノードにADIM端子を接続する。抵抗R21,R22の抵抗値の組み合わせによってVREG端子に生成される内部電圧Vregを分圧する分圧比が変化し、ADIM端子に印加されるアナログ調光信号(電圧信号)が変化する。
【0072】
ADIM端子に印加されるアナログ調光信号に応じて、PWM調光とDC調光を切替えるLED電流比率閾値が設定される。すなわち、抵抗R21,R22の抵抗値の組み合わせによって上記LED電流比率閾値を設定できる。LED電流比率は、ISET端子に接続される抵抗Risetおよび調光制御部15からの指令に基づきLED電流設定部16により設定される所定のLED電流値を100%とする比率である。例えば、抵抗R21,R22の抵抗値の組み合わせに応じて、100%、50%、25%、12.5%のいずれかのLED電流比率閾値を設定する。
【0073】
また、PWM調光信号のデューティに応じて設定LED電流比率が設定される。調光制御部15は、設定されたLED電流比率閾値と、設定された設定LED電流比率とを比較する。調光制御部15は、設定LED電流比率がLED電流比率閾値以上である場合は、設定LED電流比率でのLED電流値をLED電流設定部16に指令するとともに、定電流ドライバ18にはLED電流を常時オンとするDC調光を指令する。
【0074】
一方、調光制御部15は、設定LED電流比率がLED電流比率閾値を下回る場合は、LED電流比率閾値でのLED電流値をLED電流設定部16に指令するとともに、設定LED電流比率に応じたオンデューティでのPWM調光を定電流ドライバ18に指令する。
【0075】
PWM調光とDC調光の切替えの具体例を
図3~
図5を用いて説明する。
図3は、LED電流比率閾値が50%に設定された場合を示す。この場合、設定LED電流比率が50%以上の場合にDC調光が行われ、設定LED電流比率が50%を下回る場合にPWM調光が行われる。この場合、設定LED電流比率が例えば80%の場合、80%でのLED電流値でのDC調光が行われ、設定LED電流比率が例えば40%の場合、LED電流値を50%としてオンデューティ80%でPWM調光が行われる。
【0076】
また、
図3の場合、PWM調光の調光率が一例として10000倍の高調光率を実現できる場合、DC調光の調光率である2倍と併せて、20000倍の高調光率を実現可能となる。
【0077】
同様に、
図4は、LED電流比率閾値が25%に設定された場合を示す。この場合は、設定LED電流比率が例えば40%の場合、
図3の場合と異なり、DC調光が行われる。また、
図5は、LED電流比率閾値が100%に設定された場合を示す。この場合、全ての設定LED電流比率でPWM調光が行われる。
【0078】
なお、PWM調光を行う場合に、LED電流値を100%としてオンデューティを調整してもよい。例えば、LED電流比率閾値が50%で、設定LED電流比率が40%である場合、LED電流値を100%としてオンデューティ40%でPWM調光を行ってもよい。
【0079】
ここで、
図6は、LED電流とLED光度との関係の一例を示すグラフである。
図6において、実線はDC調光、破線はPWM調光に相当する。このように、DC調光では、LED電流が低い領域においてLED光度の低下量が大きくなる傾向にある。これに対し、PWM調光では、LED電流が低い領域においてもLED光度のリニアリティが保持され、LED光度の低下は抑えられる傾向である。そこで、先述したように、LED電流値が高い領域ではDC調光を行い、LED電流値が低い領域ではPWM調光を行うことにより、LED光度の変化量を抑えることができる。
【0080】
また、LED光度の低下が大きくなるLED電流の領域は使用するLEDの特性によって異なるので、先述したように、LED電流比率閾値を可変に設定できるようにしている。
【0081】
また、
図7は、LED電流と色度との関係の一例を示すグラフである。
図7において、実線はDC調光、破線はPWM調光に相当する。
図7に示すように、DC調光では、調光率(100%から1%)がPWM調光の調光率(99.98%から0.02%)に比べて小さいにもかかわらず、色度の変化が大きい。そこで、先述したように、DC調光とPWM調光とを切替えることにより、高い調光率でありつつ色度の変化を抑制することができる。
【0082】
<3.LED端子制御電圧の可変制御>
先述した
図1で説明したように、本実施形態に係るLED駆動装置30では、複数系統のLEDアレイ41~46の各カソードが接続されるLED1端子~LED6端子に印加される電圧のうちセレクタ12により選択された最低電圧を基準電圧Vrefと一致させる制御が行われる。LED駆動装置30は、上記基準電圧Vref、すなわちLED端子制御電圧を可変制御する機能を有しており、以下これについて説明する。
【0083】
図8は、基準電圧生成部13、LED電流設定部16、および定電流回路181の一構成例を示す図である。
【0084】
LED電流設定部16は、アンプ16Aと、トランジスタ16Bと、pチャネルMOSFETで構成されるトランジスタ16C,16D1,16D2、16Fと、抵抗16E1,16E2と、を有している。アンプ16Aと、トランジスタ16Bと、から抵抗Risetの抵抗値に応じた電流I1(第1電流)を生成する電流生成部161が形成される。
【0085】
アンプ16Aの非反転入力端(+)には、調光制御部15(
図2)からの調光指令信号DMが入力される。調光指令信号DMは、可変のアナログ信号である。アンプ16Aの出力端は、nチャネルMOSFETであるトランジスタ16Bのゲートに接続される。トランジスタ16Bのソースは、ISET端子とノードND1にて接続される。ノードND1は、アンプ16Aの反転入力端(-)に接続される。
【0086】
トランジスタ16Cのドレインは、トランジスタ16Bのドレインに接続される。トランジスタ16Cのゲートとドレインは短絡される。トランジスタ16Cのゲートは、トランジスタ16D1のゲートに接続される。トランジスタ16C,16D1の各ソースには、内部電圧Vregが電源電圧として印加される。トランジスタ16D1のドレインは、抵抗16E1の一端とノードND21にて接続される。抵抗16E1の他端は接地端に接続される。トランジスタ16Cとトランジスタ16D1によりカレントミラーCM1が形成される。
【0087】
アンプ16Aは、ノードND1の電圧が調光指令信号DMの電圧と一致するようにトランジスタ16Bのゲートを制御する。これにより、調光指令信号DMとISET端子に接続される抵抗Risetにより、トランジスタ16Bに流れる電流I1が生成される。カレントミラーCM1は、抵抗16E1に流れる電流I21(第3電流)を電流I1に基づき生成する。抵抗16E1および電流I21によりノードND21には、電流設定用基準電圧REF21が生成される。
【0088】
図8に示すように、定電流回路181は、アンプ181Aと、トランジスタ181Bと、抵抗181Cと、を有する。なお、
図8に示す定電流回路181は、LEDアレイ41(LED1端子)に対応する回路を代表的に示しており、LEDアレイ42~46に対応する定電流回路181も
図8と同様の回路構成である。
【0089】
アンプ181Aの非反転入力端(+)には、LED電流設定部16から出力される電流設定用基準電圧REF21が印加される。アンプ181Aの出力端は、nチャネルMOSFETであるトランジスタ181Bのゲートに接続される。トランジスタ181Bのソースは、抵抗181Cの一端とノードND18にて接続される。ノードND18は、アンプ181Aの反転入力端(-)に接続される。抵抗181Cの他端は、GND端子を介して接地端に接続される。トランジスタ181Bのドレインは、LED1端子に接続される。
【0090】
アンプ181Aは、ノードND18の電圧が電流設定用基準電圧REF21と一致するようにトランジスタ181Bのゲートを制御する。これにより、電流設定用基準電圧REF21と抵抗181Cにより、トランジスタ181Bに流れるLED電流ILED(定電流)が生成される。
【0091】
これにより、同じ調光指令信号DMであれば、抵抗Risetの抵抗値が高いほど、電流I1および電流I21の電流値が小さくなり、電流設定用基準電圧REF21は低くなり、LED電流ILEDの定電流値は低くなる。
【0092】
なお、
図8に示すように、トランジスタ16Cとトランジスタ16D2とからカレントミラーCM2が形成され、トランジスタ16D2および抵抗16E2に流れる電流I22により、LEDアレイ42用の定電流回路181へ出力される電流設定用基準電圧REF22がノードND22に生成される。LEDアレイ43~46用の各定電流回路181についても、同様に電流設定用基準電圧を生成する回路が形成される。
【0093】
LED1端子~LED6端子に印加される電圧のうち最低電圧を基準電圧Vrefと一致させる制御のため、LEDアレイ41~46の順方向電圧Vfにばらつきがあった場合、最低電圧が印加されるLED端子以外のLED端子の印加電圧は、基準電圧Vrefよりも高くなる。これにより、最低電圧が印加されるLED端子以外のLED端子に接続されるトランジスタ181Bのドレイン・ソース間電圧Vdsは、最低電圧が印加されるLED端子に接続されるトランジスタ181Bのドレイン・ソース間電圧Vdsよりも高くなる。従って、最低電圧が印加されるLED端子以外のLED端子については、同じLED電流ILEDを流すためのトランジスタ181Bのオン抵抗値が高くなり、トランジスタ181Bのゲート電圧を低くすることになるので、LED電流ILEDを問題なく流すことが可能となる。
【0094】
また、
図8に示すように、基準電圧生成部13は、抵抗13Aと、アンプ13Bと、抵抗13C,13Dと、を有する。ここで、LED電流設定部16は、トランジスタ16Cとトランジスタ16Fとで形成されるカレントミラーCM3も有する。具体的には、トランジスタ16Fのゲートは、トランジスタ16Cのゲートに接続される。トランジスタ16Fのソースには、内部電圧Vregが印加される。トランジスタ16Fのドレインは、抵抗13Aの一端に接続される。
【0095】
抵抗13Aの他端は、接地端に接続される。抵抗13Aの一端は、エラーアンプ11(
図1)の非反転入力端(+)に接続される。また、クランプ用のアンプ13Bの非反転入力端(+)には、所定の電源電圧VREF1を抵抗13C,13Dにより分圧した下限電圧Vlimitが印加される。アンプ13Bの出力端および反転入力端(-)は、抵抗13Aの一端に接続される。
【0096】
これにより、カレントミラーCM3は、トランジスタ16Cに流れる電流I1に基づいてトランジスタ16Fに流れる電流I3(第2電流)を生成する。電流I3は抵抗13Aに流れるので、抵抗13Aの一端に電流I3に応じた基準電圧Vrefが生成される。同じ調光指令DMに対して抵抗Risetの抵抗値を高くするほど、電流I1および電流I3は小さくなり、基準電圧Vrefは低くなる。
【0097】
基準電圧Vrefが低くなり下限電圧Vlimitより低くなろうとしても、基準電圧Vrefは、アンプ13Bにより下限電圧Vlimitにクランプされる。
【0098】
図9は、LED電流I
LEDおよび抵抗Risetと基準電圧Vrefとの関係の一例を示すグラフである。
図9に示す例では、調光指令信号DMがLED電流比率100%に対応する最大電圧に設定された場合に抵抗Risetを高くなるように変化させたときのLED電流I
LEDの値を示す。
【0099】
図9に示すように、抵抗Risetを16.7kΩから26.7kΩまで高くなるように変化させると、LED電流I
LEDは、150mAから93.8mAまで低下する。このとき、
図9の実線に示すように、基準電圧生成部13により基準電圧Vrefは、0.8Vから0.5Vまで低下する。そして、抵抗Risetを26.7kΩから50kΩまで高くなるように変化させると、LED電流I
LEDは、93.8mAから50mAまで低下する。このとき、下限電圧Vlimit=0.5Vであるので、基準電圧Vrefは0.5Vにクランプされ一定となる。すなわち、LED電流I
LEDが所定の閾値である93.8mA以下の場合、基準電圧Vrefを一定とする。
【0100】
ここで、
図9に示す例では、設計として、例えば抵抗181Cの抵抗値が1Ωであるとして最大値である150mAのLED電流I
LEDを流すためには、ノードND18に生成される電圧は0.15Vであり、LED端子の制御電圧(すなわち基準電圧Vref)=0.8Vとして、トランジスタ181Bのドレイン・ソース間電圧Vds=0.8-0.15=0.65Vとなり、当該ドレイン・ソース間電圧VdsによりLED電流I
LED=150mAを流すために必要なトランジスタ181Bのオン抵抗を実現するトランジスタ181Bのサイズが決定される。
【0101】
そして、LED電流ILEDを150mAから低下させた場合に、LED端子の制御電圧を0.8Vから低下させても、トランジスタ181Bの上記決定されたサイズで必要なオン抵抗を実現することは可能となる。ただし、LED端子の制御電圧を低下しすぎると、トランジスタ181Bのドレイン・ソース間電圧Vdsが低くなりすぎ、トランジスタ181Bはオン抵抗を低くするためにフルオン状態に近い状態となり、望ましくないので、本実施形態では、LED端子の制御電圧に下限電圧Vlimitを設けている。
【0102】
LED駆動装置30における消費電力はLED電流I
LEDとLED端子電圧によって決定される。本実施形態では、LED電流I
LEDの設定値が低くなるほど、LED端子の制御電圧すなわち基準電圧Vrefを低くする可変制御を行うので、例えば
図9に示す例で仮にLED電流I
LEDの設定値によらずに基準電圧Vref=0.8Vで一定とした場合に比べて、消費電力を抑制することが可能となる。なお、消費電力を低減させるためであれば、
図9に示す例であれば、例えば単に、LED電流I
LEDによらずに基準電圧Vref=0.5Vで一定とすることも考えられるが、その場合、最大値のLED電流I
LED=150mAを流すためにトランジスタ181Bのオン抵抗を低くすることが必要となり、トランジスタ181Bのサイズが大きくなってしまう問題がある。すなわち、本実施形態では、基準電圧Vrefの可変制御を行うことで、トランジスタ181Bのサイズを抑制しつつ、LED駆動装置30における発熱量を抑えることが可能となる。
【0103】
なお、
図9に示す例では、基準電圧Vrefの可変制御は直線的に行っているが、曲線的に行うことも可能である。ただし、直線的に行うほうが制御構成を簡易化できる。
【0104】
また、
図10は、
図9に示す例の制御特性において、LED電流
LEDの設定値=80mAとした場合の、LEDアレイ41~46の順方向電圧Vfのばらつきと、LED駆動装置30の消費電力との関係を示すグラフである。なお、
図10において、実線は、
図9に示す実線(本実施形態)の制御特性の場合、破線は、
図9に示す破線(比較例)の制御特性の場合を示す。
図9に示す比較例は、LED電流
LEDによらずに基準電圧Vrefを1.0Vで一定としたものである。
【0105】
LED駆動装置30(IC)の消費電力は、回路電力と、スイッチング素子N1のゲート駆動電力と、定電流回路181におけるカレントドライバ電力と、の総和となる。回路電力については、回路電力=回路電流×VCC電圧となる。ゲート駆動電力については、ゲート駆動電力=ゲート容量×Vreg×Vreg×発振周波数となる。また、カレントドライバ電力については、カレントドライバ電力=LED端子電圧×LED電流+(LED端子電圧+Vfばらつき)×LED電流×(LEDの系統数-1)となる。
【0106】
例えば、
図9に示す本実施形態の制御特性において、LED電流
LEDの設定値=80mAの場合、基準電圧Vref=0.5Vとなり、Vfのばらつきが例えば1.0Vであれば、LED1端子~LED6端子のうち一つのLED端子の電圧が0.5Vであり、残りの5系統のLED端子の電圧=0.5+1.0=1.5Vとして上記カレントドライバ電力を算出している。
【0107】
図10に示すように、同じVfのばらつきであれば、本実施形態は比較例よりも消費電力を低減することが可能となる。これにより、本実施形態であれば、例えばLED灯数やLED電流値を増やすことが可能となる。
【0108】
なお、本実施形態では、PWM調光を行う場合は、調光制御部15により調光指令信号DMはLED電流比率100%に対応する最大電圧に対するLED電流比率閾値の電圧値に設定され、PWM調光のオンデューティに応じて定電流回路181がオンオフ制御される。また、DC調光が行われる場合は、定電流回路181は常時オンとされ、調光制御部15により調光指令信号DMは設定LED電流比率に応じた電圧に設定される。なお、PWM調光を行う場合は、調光指令信号DMはLED電流比率100%に対応する最大電圧に設定してもよい。ただし、PWM調光とDC調光とが切り替えられる機能は必須ではなく、例えばPWM調光のみの調光機能を有してもよい。
【0109】
<4.バックライト装置への適用>
以上説明した本発明の実施形態に係るLED駆動装置を適用する対象の一例として、バックライト装置について説明する。本発明の実施形態に係るLED駆動装置を適用可能なバックライト装置の構成例を
図11に示す。なお、
図11に示す構成は所謂エッジライト方式のものであり、これに限らず直下方式の構成でもよい。
【0110】
図11に示すバックライト装置70は、液晶パネル81を背面から照明する照明装置である。バックライト装置70は、LED光源部71、導光板72、反射板73、および光学シート類74を備えている。LED光源部71はLEDやLEDを実装する基板を含んでいる。LED光源部71から出射された光は、導光板72の側面から内部に入光される。例えばアクリル板で構成される導光板72は、内部に入光された光を全反射させながら内部全体に導き、光学シート類74が配される側の面から面状の光として出射させる。反射板73は、導光板72から漏れ出た光を反射させて導光板72の内部へ戻す。光学シート類74は、拡散シートやレンズシート等からなり、液晶パネル81に照明する光の輝度均一化や輝度向上等を目的とする。LED光源部71は、本発明の実施形態に係るLED駆動装置と、出力段と、LEDと、を有する。本発明の実施形態に係るLED駆動装置により、液晶パネル81の大型化が可能である。
【0111】
<5.車載ディスプレイについて>
上述した本発明の実施形態に係るLED駆動装置を適用したバックライト装置は、特に車載ディスプレイに搭載することが好適である。上記LED駆動装置であればLEDの調光範囲を拡大することが可能となるので、昼間の走行と夜間の走行とで、または昼間における通常走行とトンネル内での走行となどで、表示輝度を調整する必要のある車載ディスプレイに適したものとなる。
【0112】
車載ディスプレイは、例えば
図12に示す車載ディスプレイ85のように、車両の運転席前方のダッシュボードに設けられる。車載ディスプレイ85は、例えば、カーナビゲーション情報、車両後方の撮像画像、スピードメータ、燃料計、燃費計、シフトポジション等の各種画像を表示し、ユーザに様々な情報を伝えることが可能である。このような車載ディスプレイは、クラスターパネルやセンターインフォメーションディスプレイ(CID)とも呼ばれる。その他にも、車載ディスプレイは、例えば運転席や助手席の背面に配置されるリアエンターテイメントとしてもよい。
【0113】
<6.その他>
なお、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、例えば、車載用LEDの駆動手段に利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 内部電圧生成部
2 電流検出部
4 発振部
5 スロープ生成部
6 PWMコンパレータ
7 制御ロジック部
8 ドライバ
9 ソフトスタート部
10 出力ディスチャージ部
11 エラーアンプ
12 セレクタ
13 基準電圧生成部
14 保護回路部
15 調光制御部
16 LED電流設定部
17 シュミットトリガ
18 定電流ドライバ
181 定電流回路
182 PWM制御ロジック部
30 LED駆動装置
301 DC/DCコントローラ
35 出力段
Co 出力コンデンサ
N1 スイッチング素子
D1 ダイオード
L1 インダクタ
41~46 LEDアレイ
70 バックライト装置
71 LED光源部
72 導光板
73 反射板
74 光学シート類
81 液晶パネル
85 車載ディスプレイ