(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240710BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20240710BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240710BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240710BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240710BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240710BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08L7/00
C08C19/25
C08K3/04
C08K3/36
C08L9/00
C08L9/06
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021565663
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047293
(87)【国際公開番号】W WO2021125300
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019229683
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】土田 和孝
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117266(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221184(WO,A1)
【文献】特表2017-513786(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140217(WO,A1)
【文献】特開2017-186533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-9/06
C08K 3/04
C08K 3/36
C08C 19/25
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、カーボンブラックと、シリカとを含むゴム組成物であって、
前記シリカは、CTAB吸着比表面積が250m
2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(D
CPS)と一次粒径(D
I)とが、以下の関係式(1)を満たし、
700≧D
CPS
3/D
I
3≧300 ・・・(1)
前記ゴム成分が、天然ゴム及びポリイソプレンゴムから選択される少なくとも一種、並びに、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種を含有し、
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有質量に対する、前記カーボンブラックの含有質量の割合が、70%以上であり、
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40~100質量部であり、
前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(VI)で表されるカップリング剤、(VII)で表されるカップリング剤、式(VIII)で表されるリチオアミン、及び、ビニルピリジンからなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする、ゴム組成物。
【化1】
[式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式中、A
1は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基であり、R
1は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0から2の整数であり、R
2が複数ある場合、複数のR
2は同一でも異なっていてもよく、OR
3が複数ある場合、複数のOR
3は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。]
【化4】
[式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。]
(R
3)
aZX
b ・・・(VII)
[式中、Zは錫又はケイ素であり、(R
3)は1~20個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から20個の炭素原子を有するアリール、及び7から20個の炭素原子を有するアラルキルから成る群から選択され、Xは塩素又は臭素であり、aは0から3であり、bは1から4であるが、ここで、a+b=4である。]
(AM)Li(Q)
y ・・・(VIII)
[式中、yは、0又は0.5~3であり、(Q)は、炭化水素、エーテル類、アミン類又はそれらの混合物から成る群から選択される可溶化成分であり、(AM)は、一般式[I]
【化5】
(式中、R
1は、独立して、1~12の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基を示す。)又は一般式[II]
【化6】
(式中、(R
2)は、3~16のメチレン基を有するアルキレン、1から12個の炭素原子を有する線状若しくは分枝アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、アリール、アラルキルを置換基とする置換アルキレン、オキシジエチレン又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す。)である。]
【請求項2】
前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、四塩化錫、ヘキサメチレンイミンとn-ブチルリチウムとの反応物、4-ビニルピリジン、及び、2-ビニルピリジン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤは、複数の性能を同時に満たし得る高い性能を有することが要求される。なかでも、トレッドのようなタイヤ用部材には、タイヤの転がり抵抗を抑えつつ、耐摩耗性に優れることが強く望まれる。ただし、これらの性質は二律背反の関係にあることから、現在まで多くの試行錯誤が行われている。
【0003】
タイヤのトレッドに適用するゴム組成物においては、補強用充填剤の一つとしてシリカが用いられることが多いが、一般にシリカの含有量を増加させると、タイヤの補強性が高まるため、耐摩耗性をある程度向上できるものの、低ロス性は悪化する傾向にある。また、シリカの含有量が多すぎる場合には、未加硫ゴムの粘度が必要以上に上昇して加工性が悪化するおそれもあった。
【0004】
そのため、ゴム組成物の補強性及び低ロス性の両立を図ることを目的として、例えば特許文献1には、特定値以上のCTAB比表面積及びBET比表面積を有するシリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤とを併用することで、シリカの分散性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、シランカップリング剤の効果によって、一定の低ロス性は得られるものの、シリカの粒径が大きく、補強性についてはさらなる改善が求められていた。
【0007】
そのため、本発明は、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物、さらに、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を行った結果、シリカの粒径(一次粒径)を従来のものよりも小さくすることで、ゴム組成物の補強性は向上させるとともに、シリカの凝集体(アグリゲート)を大きくすることによって、補強性を低下させることなく、優れた低ロス性が得られることを見出した。さらに、ゴム成分中に、特定の変性ゴムを含有させることで、シリカの分散性を高めることができるため、補強性及び低ロス性をより向上できるとともに、充填材中のカーボンブラックの含有量の割合について適正化を図ることで、補強性をさらに向上できることも見出した。
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、シリカとを含むゴム組成物であって、前記シリカは、CTAB吸着比表面積が250m
2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(D
CPS)と一次粒径(D
I)とが、以下の関係式(1)を満たし、
700≧D
CPS
3/D
I
3≧300 ・・・(1)
前記ゴム成分が、天然ゴム及びポリイソプレンゴムから選択される少なくとも一種、並びに、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種を含有し、
前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有質量に対する、前記カーボンブラックの含有質量の割合が、70%以上であり、
前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(VI)で表されるカップリング剤、(VII)で表されるカップリング剤、式(VIII)で表されるリチオアミン、及び、ビニルピリジンからなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする。
【化1】
[式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式中、A
1は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基であり、R
1は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0から2の整数であり、R
2が複数ある場合、複数のR
2は同一でも異なっていてもよく、OR
3が複数ある場合、複数のOR
3は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。]
【化4】
[式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。]
(R
3)
aZX
b ・・・(VII)
[式中、Zは錫又はケイ素であり、(R
3)は1~20個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から20個の炭素原子を有するアリール、及び7から20個の炭素原子を有するアラルキルから成る群から選択され、Xは塩素又は臭素であり、aは0から3であり、bは1から4であるが、ここで、a+b=4である。]
(AM)Li(Q)
y ・・・(VIII)
[式中、yは、0又は0.5~3であり、(Q)は、炭化水素、エーテル類、アミン類又はそれらの混合物から成る群から選択される可溶化成分であり、(AM)は、一般式[I]
【化5】
(式中、R
1は、独立して、1~12の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基を示す。)又は一般式[II]
【化6】
(式中、(R
2)は、3~16のメチレン基を有するアルキレン、1から12個の炭素原子を有する線状若しくは分枝アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、アリール、アラルキルを置換基とする置換アルキレン、オキシジエチレン又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す。)である。]
上記構成によって、補強性及び低ロス性を高いレベルで両立できる。
【0010】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、四塩化錫、ヘキサメチレンイミンとn-ブチルリチウムとの反応物、4-ビニルピリジン、及び、2-ビニルピリジン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることがより好ましい。補強性及び低ロス性のさらなる改善が可能となるためである。
【0011】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40~100質量部であることが好ましい。補強性と低ロス性との両立をより高いレベルで実現できるためである。
【0012】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成によって、補強性及び低ロス性を高いレベルで両立することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、シリカとを含むゴム組成物である。
以下に、本発明のゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含む。
そして、前記ゴム成分は、天然ゴム(NR)及びポリイソプレンゴム(IR)から選択される少なくとも一種、並びに、変性ブタジエンゴム(変性BR)及び変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)から選択される少なくとも一種を含有する。
変性BR及び変性SBRから選択される少なくとも一種を含有することで、前記シリカとの相互作用を高めて該シリカの分散性を向上させることができる結果、ゴム組成物の補強性及び低ロス性をさらに改善できる。また、NR及びIRから選択される少なくとも一種を含有することで、ゴム組成物の弾性率を高め、補強性を向上させることができる。
【0016】
また、前記ゴム成分は、上述したゴム以外も、要求される性能に応じて適宜含有することができる。例えば、優れた補強性及び低ロス性を得ることができる観点からは、ジエン系ゴムを含有することが好ましい。
ここで、前記ジエン系ゴムの種類については、上述した、天然ゴム(NR)や、ポリイソプレンゴム(IR)に加えて、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
なお、非ジエン系ゴムの種類については、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
これらのゴムについては、1種単独で用いてもよいし、2種以上のブレンドとして用いてもよい。また、これらのゴムについては、未変性のゴムでも、変性されているゴムでもよい。
【0017】
さらに、前記ゴム成分は、天然ゴム及びポリイソプレンゴムから選択される少なくとも一種を40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましい。ゴム組成物の補強性をより向上できるためである。
なお、低ロス性を高いレベルで維持する観点からは、前記天然ゴム及びポリイソプレンゴムから選択される少なくとも一種の含有量が、90質量%以下であることが好ましく、85 質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
なお、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムにおける変性官能基の位置については、特に限定はされず、例えば、主鎖の末端でも良いし、主鎖中や、主鎖の末端から全鎖長の1/4の範囲のみであってもよい。また、前記変性官能基の数についても特に限定はされず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
そして、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも一種は、式(IV)、式(V)及び式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(VI)及び(VII)で表されるカップリング剤、式(VIII)で表されるリチオアミン、並びに、ビニルピリジン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性される。
【0020】
【化7】
式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0021】
【化8】
式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0022】
【化9】
式中、A
1は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R
1は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0から2の整数であり、R
2が複数ある場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよく、OR
3が複数ある場合、複数のOR
3は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。
【0023】
式(III)において、A1における官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含する。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。R1のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基を好ましく挙げることができる。このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、等が挙げられる。R2及びR3としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアラルキル基等を挙げることができる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状いずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、へキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、等が挙げられる。また、該アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、その例としてフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。さらに該アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、その例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等があげられる。nは0~2の整数であるが0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニ
ウム塩を有しないことが必要である。
【0024】
この式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを好ましく挙げることができるが、これらの中でも、特に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランが好適である。
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシアン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物,メチルジエトキシシリル化合物,エチルジエトキシシリル化合物,メチルジメトキシシリル化合物,エチルジメトキシシリル化合物等を好ましく挙げることができるが、これらの中で特に、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが好適である。
【0025】
【化10】
式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
【0026】
ここで、前記式(VI)で表されるカップリング剤は、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。この場合、補強性をより向上させることができる。
【0027】
(R3)aZXb ・・・(VII)
式中、Zは錫又はケイ素であり、(R3)は1~20個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、6から20個の炭素原子を有するアリール、及び7から20個の炭素原子を有するアラルキルから成る群から選択され、Xは塩素又は臭素であり、aは0から3であり、bは1から4であるが、ここで、a+b=4である。
【0028】
ここで、前記式(VII)で表されるカップリング剤は、四塩化錫、(R3)SnCl3、(R3)2SnCl2、(R3)3SnClなどが好ましく、それらの中でも四塩化錫が特に好ましい。
【0029】
(AM)Li(Q)
y ・・・(VIII)
式中、yは、0又は0.5~3であり、(Q)は、炭化水素、エーテル類、アミン類又はそれらの混合物から成る群から選択される可溶化成分であり、(AM)は、式[I]
【化11】
(式中、(R
1)は、独立して、1~12の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基を示す。)又は式[II]
【化12】
(式中、(R
2)は、3~16のメチレン基を有するアルキレン、1から12個の炭素原子を有する線状若しくは分枝アルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、アリール、アラルキルを置換基とする置換アルキレン、オキシジエチレン又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す。)である。
【0030】
上記式(VIII)のQが存在することによって、リチオアミンが炭化水素溶媒に可溶となる。また、Qには、3~約300の重合単位からなる重合度を有するジエニル若しくはビニル芳香族ポリマー類又はコポリマー類が含まれる。これらのポリマー類及びコポリマー類には、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン及びそれらのコポリマー類が含まれる。Qの他の例としては、極性リガンド(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等)が挙げられる。
【0031】
さらに、前記式(VIII)で表されるリチオアミンは、有機アルカリ金属との混合物とすることもできる。該有機アルカリ金属は、好適には、一般式(R4)M、(R5)OM、(R6)C(O)OM、(R7)(R8)NM及び(R9)SO3Mで表される化合物から成る群から選択され、ここで、(R4)、(R5)、(R6)、(R7)、(R8)及び(R9)の各々は、約1から約12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール及びフェニルから成る群から選択される。金属成分Mは、Na、K、Rb及びCsから成る群から選択される。好適にはMは、Na又はKである。さらに、前記混合物は、好適には、該リチオアミン中のリチウム1当量当たり約0.5から約0.02当量から成る混合比で該有機アルカリ金属を含有することもできる。該(E)は、特にスチレン含量の高い目的ポリマーを得る場合に好適に用いられる。
【0032】
また、前記リチオアミンと有機アルカリ金属との混合物では、重合が不均一にならないようにする補助としてキレート剤を用いることができる。有用なキレート剤には、例えばテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、オキソラニル環状アセタール類及び環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類などが挙げられる。特に好ましくは、環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類が挙げられ、具体例としては、2,2-ビス(テトラヒドロフリル)プロパンが挙げられる。
【0033】
前記ビニルピリジンについては、例えば、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
【0034】
さらに、上述した種々の変性剤の中でも、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種は、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、四塩化錫、ヘキサメチレンイミンとn-ブチルリチウムとの反応物、4-ビニルピリジン、並びに、2-ビニルピリジン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されることが好ましい。より優れた補強性及び低ロス性を実現できるからである。
【0035】
前記ゴム成分における、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種の合計含有量については、より高いレベルで補強性及び低ロス性を両立できる観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、ゴム組成物の加工性の観点からは、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種の合計含有量が、60質量部以下、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
(シリカ)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、シリカを含む。
そして、前記シリカは、シリカは、CTAB吸着比表面積(CTAB)が250m2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS)と一次粒径(DI)とが、以下の関係式(1):
700≧DCPS
3/DI
3≧300 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする。
なお、前記凝集体の径(DCPS)の測定に用いるディスク遠心式粒度分析装置については、特に限定はされず、DCPSは市販の装置を用いて測定することができる。例えば、CPS Instruments社のディスク遠心式粒子径分布測定装置CPS Disc Centrifugeを用いることができる。測定条件としては、水に3wt%の割合でシリカを添加し、超音波処理をすることでシリカ懸濁液を得る。その試料に対して、ディスク遠心式 粒子径分布測定装置を用い、20000rpmの回転速度で粒子径分布を測定できる。また測定はばらつきが生じる可能性が有るため、シリカを比較する際には適宜補正を行ってもよい。
また、前記一次粒径については、以下の式(2):
DI=6000/(CTAB×ρ) ・・・(2)
ρ:2.2g/cm3
によって算出することができる。
【0037】
従来、低発熱性、耐摩耗性、及び耐疲労亀裂性を向上させるために、カーボンブラックのアグリゲート構造の発達度合を小さくする低ストラクチャー化を図ったり、カーボンブラックを微粒径化することにより耐摩耗性と疲労亀裂性を向上させ、凝集体分布をブロードにすることで発熱の悪化を抑えてきたが、カーボンブラックの形態をこのように制御した場合でも、耐摩耗性と耐疲労亀裂性等が悪化し易かった。これは、カーボンブラックの凝集体分布をブロードにすることで、大粒径成分が増えるためと考えられる。
これに対し、本発明では、耐摩耗性と耐疲労亀裂性等を損なわない、補強性に優れる加硫ゴムが得られる。この理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
加硫ゴムの発熱は、一般に、加硫ゴムに含まれるカーボンブラック、シリカ等の充填剤が、ゴム中で擦れ合うことにより生じ、従って、既述のように、カーボンブラックの大粒径成分が増える環境では、低発熱性が悪化する傾向にある。そのため、一次粒径が上記関係式(2)を満たすような微粒径のシリカを用いることで、微粒径なシリカが、カーボンブラック同士の隙間に入り、粒子同士の凝集には影響を与えず、低発熱性の状態を維持しながら、加硫ゴムの摩耗、亀裂のような破壊の領域においては、ゴムと、カーボンブラック及びシリカとが、強く相互作用するため、補強性を向上できると考えられる。
【0038】
ただし、前記シリカの粒径が小さすぎる場合には、低発熱性の低下を招くことが考えられる。そのため、本発明では、前記シリカが、上記関係式(1)の条件を満たすことによって、シリカの粒径(一次粒径)を従来のものよりも小さくして補強性を高めつつ、シリカの凝集体(アグリゲート)を大きくすることで、低ロス性の悪化を効果的に抑制できるため、ゴム組成物の補強性と低ロス性とを高いレベルで両立できる。
なお、前記DCPS
3/DI
3が300未満の場合には、シリカの粒径の小ささとシリカの凝集体の大きさが十分でないため、高いレベルで補強性及び低ロス性を両立できず、一方、前記DCPS
3/DI
3が700を超える場合には、シリカの粒径が小さくなりすぎるため、低ロス性が低下する。
タイヤの補強性を高めるためには、ゴム組成物中に含有されるシリカ粒子(一次粒径)を小さくすることが有効である一方で、シリカの粒径が小さくなると、シリカのアグリゲート(凝集体)間距離が小さくなるため、ネットワーク効果が大きくなり、低ロス性を悪化させることとなる。そこで、本発明では、シリカの一次粒径(DI)を従来のものよりも小さくすることで、ゴム組成物の補強性は向上させるとともに、シリカの一次粒子から形成される凝集体の径(DCPS)を大きくすることによって、アグリゲート間距離が小さくなることに起因した低ロス性の悪化を抑制できる結果、補強性を低下させることなく、優れた低ロス性を実現できる。
【0039】
ここで、前記シリカの種類については、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
上述した中でも、前記シリカは、湿式シリカであることが好ましく、該湿式シリカのなかでも沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、分散性が高く、ゴム組成物の低ロス性及び補強性をより向上できるためである。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0040】
前記シリカのCTAB吸着比表面積(セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積)については、高い補強性を実現する観点から、250m2/g以上とする必要があり、同様の観点から、251m2/g以上であることが好ましく、252m2/g以上であることがより好ましく、253 m2/g以上であることがさらに好ましい。なお、低ロス性の悪化をより確実に抑える点からは、前記シリカのCTAB吸着比表面積は、290以下であることが好ましく、285以下であることがより好ましく、282以下であることがさらに好ましく、270以下であることが特に好ましい。
なお、前記CTAB吸着比表面積については、ASTM D3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、シリカ表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミド1分子当たりの吸着断面積を0.35nm2として、CTABの吸着量から算出される比表面積(m2/g)をCTAB吸着比表面積とする。
【0041】
前記シリカの含有量については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。ただし、より高いレベルで補強性及び低ロス性を実現できる観点からは、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましい。
【0042】
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及びシリカに加えて、カーボンブラックを含む。
ここで、前記カーボンブラックについては、特に限定はされない。例えば、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボン及びソフトカーボンを用いることができる。これらの中でも、より優れた低ロス性及び補強性を実現する観点からは、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0043】
また、前記カーボンブラックの含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して、20~60質量部であることが好ましく、25~55質量部であることがより好ましく、30~50質量部であることが特に好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上とすることで、高い補強性を得ることができ、60質量部以下とすることで、低ロス性の改善を図ることができる。
【0044】
さらに、本発明のゴム組成物では、補強性と低ロス性とをより高いレベルで両立できる観点から、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40~100質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましい。前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上とすることで、より優れた補強性を得ることができ、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して100質量部以下とすることで、低ロス性の悪化を確実に抑えることができる。
【0045】
そして、本発明では、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有質量に対する、前記カーボンブラックの含有質量の割合(カーボンブラックの含有質量/(カーボンブラックの含有質量+シリカの含有質量))が、70%以上であることを要し、80%以上であることが好ましい。これによって、本発明のゴム組成物の補強性を確実に高めることができる。
なお、低ロス性の悪化を抑制する観点からは、前記カーボンブラックと前記シリカとの合計含有質量に対する、前記カーボンブラックの含有質量が、95%以下であることが好ましい。
【0046】
さらに、本発明のゴム組成物では、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が115 m2/g以下であることが好ましく、110であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、93m2/g以下であることがさらに好ましく、83m2/g以下であることがさらに好ましく、73以m2/g以下であることがさらに好ましく、69m2/g以下であることが特に好ましい。上記関係式(1)の条件を満たす前記シリカと組み合わせて用いることで、補強性及び低ロス性をより高いレベルで両立できるためである。
【0047】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分、カーボンブラック及びシリカの他にも、その他の成分を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、前記カーボンブラック及びシリカ以外の充填材、熱可塑性樹脂、老化防止剤、架橋促進剤、架橋剤、架橋促進助剤、オゾン劣化防止剤、界面活性剤等の、ゴム工業で通常使用されている添加剤を適宜含むことができる。
【0048】
前記カーボンブラック及びシリカ以外の充填材としては、例えば下記式(I)で表される無機化合物が挙げられる
nM・xSiOY・zH2O・・・ (I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、並びに、これらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。]
【0049】
上記式(I)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0050】
また、本発明のゴム組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂を含むことによって、低ロス性をより向上でき、ゴム組成物をタイヤに用いた場合の制動性能についても向上させることができる。
さらに、前記熱可塑性樹脂の含有量については、特に限定はされないが、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。
【0051】
なお、前記熱可塑性樹脂の種類については、特に限定はされない。例えば、C5系樹脂、C9系樹脂、C5~C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、又は、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
【0052】
ここで、前記C5系樹脂とは、C5系合成石油樹脂を指し、C5留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン及び1-ペンテンなどを主成分とする共重合体、2-ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3-ペンタジエンを主体とする重合体などが例示される。
また、前記C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が例示される。
さらに、前記C5~C9系樹脂とは、C5~C9系合成石油樹脂を指し、C5~C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンなどを主成分とする共重合体などが挙げられる。本発明においては、このC5~C9系樹脂として、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることをいうものとする。
【0053】
前記ジシクロペンタジエン系樹脂とは、前記C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として用いた石油樹脂のことである。例えば、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M-890A、M-845A、M-990A等)が挙げられる。
また、前記ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどがあり、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジンなどがある。
【0054】
前記アルキルフェノール系樹脂とは、アルキル基を有するフェノール系樹脂のことである。例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
さらに、前記テルペンフェノール系樹脂とは、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、あるいはさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる樹脂である。原料のテルペン類としては特に制限はないが、α-ピネンやリモネンなどのモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。本発明においては、フェノール成分の比率の多いテルペンフェノール系樹脂が好適である。これらの樹脂は、1種又は2種以上を併用することができる。
さらにまた、前記ゴム組成物は、フェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を含むことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を含有させることにより、硬化剤を用いることなく、しかもウェット性能を低下させずに、ゴム組成物における弾性率を増大させ、操縦安定性を向上させることができる。
【0055】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0056】
前記架橋促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0057】
前記架橋剤についても、特に制限はされない。例えば、硫黄、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
前記ビスマレイミド化合物の種類については、例えば、N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明では、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等を好適に用いることができる。
【0058】
前記架橋促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1~30、好ましくは15~30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華又はステアリン酸を好適に用いることができる。
【0059】
なお、本発明のゴム組成物を製造する方法については、特に限定はされず、ゴム組成物を構成する各成分(ゴム成分、シリカ及びその他の成分)を、配合し、混練することによって得ることができる。
【0060】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として用いることによって、得られタイヤは、優れた補強性及び低ロス性を有することができる。
本発明のタイヤでは、具体的には、上述したゴム組成物を、いずれかの部材に適用するが、かかるタイヤ用部材の中でも、トレッドに適用することが特に好ましい。前記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、補強性及び低ロス性をいずれも高いレベルで実現できる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の若しくは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
<実施例1、比較例1~3>
表1に示す配合に従って、常法で配合・混練することで、実施例及び比較例のゴム組成物のサンプルを作製した。
【0063】
<評価>
実施例及び比較例のゴム組成物の各サンプルについて、以下の評価を行った。
【0064】
(1)補強性(動的貯蔵弾性率)
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムから、厚さ2mm、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、スぺクトロメーター(株式会社上島製作所製)を用い、温度24℃、歪5%、周波数52Hzの条件で、動的貯蔵弾性率(E’)を測定した。
得られた動的貯蔵弾性率(E’)については、実施例1の値を100としたときの指数で示し、指数値が大きい程、動的貯蔵弾性率が大きく、補強性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
(2)低ロス性
各サンプルのゴム組成物を、160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、スぺクトロメーター(株式会社上島製作所製)を用い、温度24℃、動歪1%、周波数52Hzの条件で、損失正接(tanδ)を測定した。歪3%と歪0.1%のtanδの差の逆数をとり、指数化した。
評価については、実施例1のサンプルのtanδの差の逆数を100としたときの指数で示し、指数値が小さい程、低ロス性に優れる。評価結果を表1に示す。
【0065】
(3)評価の合計
上述した補強性及び低ロス性の評価値(指数値)を合計し、評価の合計を算出した。
なお、評価の合計については、数値が180以上の場合、補強性と低ロス性が高いレベルで両立できていることを意味する。
【0066】
【0067】
*0 以下の条件で製造した変性BR
乾燥し、窒素置換された内容積約900mlの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエンモノマー50g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、およびヘキサメチレンイミン0.513mmolをそれぞれシクロヘキサン溶液として注入し、これに0.57mmolのn-ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。この重合系に四塩化錫0.100mmolをシクロヘキサン溶液として加え50℃において30分攪拌した。その後さらに、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール(BHT)のイソプロパノール5%溶液0.5mlを加えて反応停止をおこない、さらに,常法に従い乾燥することにより、変性BRを得た。なお、得られた変性BRのブタジエン部のビニル結合量14%、カップリング効率は65%であった。
*1 旭化成製株式会社 「ジエンNF35R」
*2 東海カーボン株式会社製 「シースト7HM」
*3 Solvay社製 「Premium SW MP」、CTAB吸着比表面積:250m2/g、一次粒径(DI):10.91nm、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS):82nm、6000/CTAB/ρ=10.91、DCPS
3/DI
3:424.7
*4 東ソー・シリカ株式会社製 「ニプシルAQ」、CTAB吸着比表面積: 155m2/g、一次粒径(DI):17.6nm、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS):76nm、6000/CTAB/ρ=17.60、DCPS
3/DI
3:80.4
** なお、シリカの凝集体の径(DCPS)と一次粒径(DI)については、水に3wt%の割合でシリカを添加し、超音波処理をすることでシリカ懸濁液を得た後、その試料に対して、CPS Instruments社のディスク遠心式粒子径分布測定装置CPS Disc Centrifugeを用い、20000rpmの回転速度で粒子径分布を測定する。
*5 信越化学工業株式会社製 「ABC-856」
*9 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー(登録商標)CZ-G」
【0068】
表1の結果から、実施例1のサンプルは、比較例の各サンプルに比べて、低ロス性及び動的貯蔵弾性率のいずれについても優れた値を示し、合計値も高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することができる。