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特許7518862車両をコントロールする方法およびコントロール装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】車両をコントロールする方法およびコントロール装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20240710BHJP
【FI】
B60W30/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021573784
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 AT2020060238
(87)【国際公開番号】W WO2020247997
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】A50531/2019
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521542948
【氏名又は名称】エーブイエル リスト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンメラー、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ギゲル、ハンス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ジャニー-ルイジ、ヨハンネス
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125004(JP,A)
【文献】特開2018-034600(JP,A)
【文献】特開2018-122694(JP,A)
【文献】特開2018-144740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325749(US,A1)
【文献】特開2009-190433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法において、
車両の現在の状態が、それぞれの車両ステータス(301,303,305,307,309)について設定されている少なくとも1つの選択条件と照合されることによって、運転者モデルにより複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)から車両の1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)が選択されて作動化され、
複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)は、少なくとも1つの第1の車両ステータス(301,303,305,307,309)と第2の車両ステータス(301,303,305,307,309)とを含み、
それぞれの車両ステータス(301,303,305,307,309)が作動化されるときに前記運転者モデルが車両ステータス(301,303,305,307,309)に割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースし、現在作動化されている車両ステータス(301,303,305,307,309)と少なくとも1つの別の車両ステータス(301,303,305,307,309)との間で前記運転者モデルにより多数の転換が行われ、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、前記運転者モデルにより別の車両ステータス(301,303,305,307,309)がそれぞれ作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータス(303)が作動化され
惰走ステータス(303)が作動化されたとき前記運転者モデルにより次の各ステップが実行され:
a)車両について所定の目標出力推移曲線(211)が判定され、
b)前記目標出力推移曲線(211)について許容幅が決定され、前記許容幅は上側の限界曲線(213)と下側の限界曲線(215)によって区切られ、前記上側の限界曲線(213)は前記目標出力推移曲線(211)の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して決定され、前記下側の限界曲線(215)は前記目標出力推移曲線(211)の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して決定され、
c)将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線(219)が、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウについて決定され、
別の車両ステータス(301,303,305,307,309)を作動化させるための条件は、前記予想特性曲線(219)が、時間的な前記予測ウィンドウの内部で、前記許容幅の前記上側の限界曲線(213)と前記下側の限界曲線(215)のうちの少なくとも1つと交わることを含む、方法。
【請求項2】
前記予想特性曲線(219)が前記上側の限界曲線(213)と交わるケースについては、車両のブレーキが作動化される車両ステータス(301,303,305,307,309)がリリースされ、前記予想特性曲線(219)が前記下側の限界曲線(213)と交わるケースについては、車両の駆動が加速のために作動化される車両ステータス(301,303,305,307,309)がリリースされることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
停止の車両ステータス(309)を作動化させるために次の条件:所定の速度が「0」に相当し、現在の速度が所定の停止閾値よりも低い、が満たされていなければならず、および/または
制動の車両ステータス(305)を作動化させるために次の条件:現在の加速値が「0」に相当し、車両のブレーキの作動化がリリースされており、ブレーキが開いている、が満たされていなければならず、および/または
加速の車両ステータス(301)を作動化させるために次の条件:加速のための車両の駆動部の作動化がリリースされており、所定の速度が所定のクリープ速度よりも高い、が満たされていなければならず、
および/または
発車の車両ステータス(307)を作動化させるために次の条件:所定の速度が「0」よりも大きいか、またはブレーキが開いている、が満たされていなければならないことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法において、
車両の現在の状態が、それぞれの車両ステータス(301,303,305,307,309)について設定されている少なくとも1つの選択条件と照合されることによって、運転者モデルにより複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)から車両の1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)が選択されて作動化され、
複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)は、少なくとも1つの第1の車両ステータス(301,303,305,307,309)と第2の車両ステータス(301,303,305,307,309)とを含み、
それぞれの車両ステータス(301,303,305,307,309)が作動化されるときに前記運転者モデルが車両ステータス(301,303,305,307,309)に割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースし、現在作動化されている車両ステータス(301,303,305,307,309)と少なくとも1つの別の車両ステータス(301,303,305,307,309)との間で前記運転者モデルにより多数の転換が行われ、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、前記運転者モデルにより別の車両ステータス(301,303,305,307,309)がそれぞれ作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータス(303)が作動化され
1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)から別の車両ステータス(301,303,305,307,309)への転換を実行するための時間的な最小間隔を設定するコントロールサイクルを利用したうえで前記方法が実施され、少なくとも1つの前記コントロールサイクルは、1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)から惰走ステータス(303)への転換と、惰走ステータス(303)から別の車両ステータス(301,303,305,307,309)への転換との間に位置する、方法。
【請求項5】
多数の転換のうちの各々の転換ごとに、または多数の転換のうちの実質的に各々の転換ごとに、特に車両のそれぞれの走行の最初の転換と最後の転換を例外として、前記運転者モデルにより別の車両ステータス(301,303,305,307,309)がそのつど作動化される前に惰走ステータス(303)が作動化されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)は次の車両ステータス(301,303,305,307,309):「停止」(309)、「発車」(307)、「加速」(301)、「制動」(305)のうち少なくとも2つを含み、車両ステータス「発車」(307)が作動化されると車両の少なくとも1つのブレーキが緩められ、加速ペダルの所定の最小位置をもって、および/または所定の最大位置をもって車両が動かされることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの車両ステータスに割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドが、車両の少なくとも1つのペダルのペダル制御器をリリースすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの車両ステータスに割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドが、車両の1つのペダルのペダル制御器だけをリリースすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
車両ステータス(301,303,305,307,309)を適用することによる車両の作動を、車両の動作の進行中に作動化または不作動化できることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
惰走ステータス(303)から別の車両ステータスへの転換時にアクセルペダルおよび/またはブレーキペダルの定義された位置がスタート値として評価されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
車両が車両ステータス「停止」(309)になっているケースについて、車両のブレーキペダルが所定の最小値をもって動かされて、スタート/ストップ機能を作動化させることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
車両をコントロールするためのコントロール装置(400)において、
前記コントロール装置(400)は少なくとも1つの計算ユニット(401)を含み、
少なくとも1つの前記計算ユニットは、
車両の現在の状態を、そのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)について設定されている少なくとも1つの選択条件と照合し、照合に依存してそのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)を選択して作動化させるためにコンフィグレーションされた、複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)から車両の1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)を作動化させるための少なくとも1つの運転者モジュール(403)を含み、複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)は、少なくとも1つの第1の車両ステータス(301,303,305,307,309)と第2の車両ステータス(301,303,305,307,309)とを含み、さらに前記運転者モジュール(403)は、現在作動化されている車両ステータス(301,303,305,307,309)と別の車両ステータス(301,303,305,307,309)との間の多数の転換を行い、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、前記運転者モジュール(403)により別の車両ステータス(301,303,305,307,309)がそのつど作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータス(303)を作動化させるためにコンフィグレーションされ、
前記運転者モジュールによりそのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)が作動化されるときに車両ステータス(301,303,305,307,309)に割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースするためにコンフィグレーションされたリリースモジュール(405)を含み、
惰走ステータス(303)が作動化されたとき前記運転者モジュール(403)により次の各ステップが実行され:
a)車両について所定の目標出力推移曲線(211)が判定され、
b)前記目標出力推移曲線(211)について許容幅が決定され、前記許容幅は上側の限界曲線(213)と下側の限界曲線(215)によって区切られ、前記上側の限界曲線(213)は前記目標出力推移曲線(211)の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して決定され、前記下側の限界曲線(215)は前記目標出力推移曲線(211)の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して決定され、
c)将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線(219)が、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウについて決定され、
別の車両ステータス(301,303,305,307,309)を作動化させるための条件は、前記予想特性曲線(219)が、時間的な前記予測ウィンドウの内部で、前記許容幅の前記上側の限界曲線(213)と前記下側の限界曲線(215)のうちの少なくとも1つと交わることを含む、コントロール装置。
【請求項13】
車両をコントロールするためのコントロール装置(400)において、
前記コントロール装置(400)は少なくとも1つの計算ユニット(401)を含み、
少なくとも1つの前記計算ユニットは、
車両の現在の状態を、そのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)について設定されている少なくとも1つの選択条件と照合し、照合に依存してそのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)を選択して作動化させるためにコンフィグレーションされた、複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)から車両の1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)を作動化させるための少なくとも1つの運転者モジュール(403)を含み、複数の車両ステータス(301,303,305,307,309)は、少なくとも1つの第1の車両ステータス(301,303,305,307,309)と第2の車両ステータス(301,303,305,307,309)とを含み、さらに前記運転者モジュール(403)は、現在作動化されている車両ステータス(301,303,305,307,309)と別の車両ステータス(301,303,305,307,309)との間の多数の転換を行い、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、前記運転者モジュール(403)により別の車両ステータス(301,303,305,307,309)がそのつど作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータス(303)を作動化させるためにコンフィグレーションされ、
前記運転者モジュールによりそのつどの車両ステータス(301,303,305,307,309)が作動化されるときに車両ステータス(301,303,305,307,309)に割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースするためにコンフィグレーションされたリリースモジュール(405)を含み、
1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)から別の車両ステータス(301,303,305,307,309)への転換を実行するための時間的な最小間隔を設定するコントロールサイクルを利用したうえで前記運転者モジュール(403)が作動され、少なくとも1つの前記コントロールサイクルは、1つの車両ステータス(301,303,305,307,309)から惰走ステータス(303)への転換と、惰走ステータス(303)から別の車両ステータス(301,303,305,307,309)への転換との間に位置する、コントロール装置。
【請求項14】
車両のテスト走行を実施するための、請求項12または13に記載のコントロール装置の利用法。
【請求項15】
コンピュータで実行されたときに請求項1~11の少なくとも1つの方法に基づくすべてのステップを実行するようにコンピュータをコンフィグレーションするプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法、車両をコントロールするためのコントロール装置、車両のテスト走行を実施するためのコントロール装置の利用法、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、たとえばテスト走行を実施するために車両をコントロールするために、車両のそれぞれのペダルをコントロールコマンドによって調整して、現在の車両速度と要求される車両速度との間の差異が最小化されるようにする運転者モデルが利用される。このとき現在の車両速度は、交互に操作される車両の各ペダルを利用したうえでのみ変更される。このような方式の車両速度の調整では、特に燃料消費と有害物質排出の観点から、準最適な車両挙動がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上に説明した問題を少なくとも部分的に斟酌することにある。特に本発明の課題は、車両をコントロールするための自動式の運転者モデルを利用したうえで、燃料消費と有害物質排出の観点から最適化された車両の動作の可能性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題は特許請求の範囲によって解決される。特に、上述した課題はそれぞれの独立請求項の対象物によって解決される。本発明のその他の利点は、従属請求項、発明の詳細な説明、および図面から明らかとなる。このとき、本発明による方法との関連で記述されている構成要件や詳細は、当然ながら本発明によるコントロール装置との関連でも該当し、およびその逆も成り立つので、個々の発明態様についての開示に関しては常に相互の参照がなされ、ないしは参照をすることができる。
【0005】
本発明の第1の態様では、車両をコントロールするための運転者モデルを作動させる方法が提案される。このとき車両の現在の状態が、それぞれの車両ステータスについて設定されている少なくとも1つの選択条件と照合されることによって、運転者モデルにより複数の車両ステータスから車両の1つの車両ステータスが選択されて作動化されることが意図され、複数の車両ステータスは、少なくとも1つの第1の車両ステータスと第2の車両ステータスとを含む。さらに、それぞれの車両ステータスが作動化されるときに運転者モデルが車両ステータスに割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースすることが意図され、現在作動化されている車両ステータスと少なくとも1つの別の車両ステータスとの間で運転者モデルにより多数の転換が行われ、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、運転者モデルにより別の車両ステータスがそれぞれ作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータスが作動化される。
【0006】
本発明の意味における運転者モデルが試験台および/または車両で適用されるときには、特に車両の速度が着目される。そのために、走行されるべきテストサイクルに応じて、時間的に変化する、およびそれに伴って目標速度推移と表現することもできる、目標速度の設定が行われる。テストサイクルを完了するために、車両の速度のコントロールがそのアクセルペダルとブレーキペダルを用いて行われる。このときテスト動作のときのように、アクセルペダルの操作は実際速度を定量的に上昇させる役目を果たし、ブレーキペダルの操作は実際速度を相応に定量的に低下させる役目を果たす。このような速度コントロールが実行されるときには、実際速度の推移が目標速度の推移にできる限り正確に追随するのがよい。特に、たとえば下側の限界曲線と、目標速度からの超えてはならない最大の誤差を表す上側の限界曲線という形態で、限界誤差が設定される。したがって目標速度の推移と実際速度の推移は合同なのではなく、互いに相違する。コントロール機能および/または運転者モデルの品質に応じて、これら両方の推移の間の相違がさまざまに異なる大きさになる。
【0007】
車両の「滑走」という概念は、本件開示の文脈においては、運転者またはアシストシステムによって駆動出力も制動出力も要求されていない車両状態であると理解される。すなわち運転者は、アクセルペダルもブレーキペダルも操作していない。特に、動作状態「滑走」によっては、ないし車両を滑走させている運転者によっては、エンジンブレーキトルクを低減するためにドライブトレーンで分離部材が開放されるか否かは規定されない。
【0008】
「車両ステータス」とは、本件開示の文脈においては、車両の所定の調整であると理解される。
【0009】
コントロールコマンドの「リリース」とは、本件開示の文脈においては、コントロールコマンドが生成され、ないしはコントロールインスタンスが提供され、それによりコントロールインスタンスが、コントロールコマンドにより設定されるコントロールプロセスを実行するプロセスであると理解される。
【0010】
異なる車両ステータスの間での転換とは、本件開示の文脈においては、現在の車両ステータスが不作動化されて別の車両ステータスが作動化されるプロセスであると理解される。
【0011】
提案される方法は、特に、たとえば試験台での車両のテスト走行を、最善の燃料効率および/または最小の有害物質排出で自動式に実施するための役目を果たす。そのために本発明によると、多数の車両ステータスの適用のもとで車両を作動させることが意図される。
【0012】
そのつどの車両が滑走し、それに応じて燃料効率的に、および/または有害物質最適化されて作動する、本発明に基づいて意図される惰走ステータスにより、従来使用されている調整部材であるアクセルペダルとブレーキに加えて、さらに別の調整部材を利用することができ、これを用いて車両の車両速度を適合化することができる。それに応じて、特に、本発明による方法の適用のもとでの車両の作動時には、たとえば所定の目標速度などの所定の目標出力プロセスを考慮したうえで可能な程度の頻度で、および/またはそのような程度の長さで、車両を惰走ステータスで作動させることが意図される。
【0013】
本発明に基づいて意図される惰走ステータスは、アクセルペダルやブレーキペダルを使用することなく、およびそれに応じて駆動エネルギーやブレーキエネルギーを利用することもなく、所定の目標出力要求に即して車両を作動させることを可能にする。そのために、たとえば車両の速度が所定の許容値を超えて所定の目標速度から乖離するまで、もしくは所定のタイムスロットの中で乖離するまで、惰走ステータスで車両を作動させることができる。
【0014】
本発明によると、運転者モデルにより、そのつど作動化されている車両ステータスと少なくとも1つの別の車両ステータスとの間で多数の転換が行われ、多数の転換のうち少なくとも1つの転換時に、運転者モデルにより別の車両ステータスがそのつど作動化される前に、惰走ステータスが作動化されることが意図される。
【0015】
そのつどの車両ステータスの間で転換をするために、そのつどの車両の現在の状態を判定し、これをそれぞれの所定の目標出力設定と照合し、車両の状態と目標出力設定との差異を参照したうえでそのつどの車両ステータスを選択して作動化し、もしくは調整するステートマシンを利用することができる。
【0016】
異なる車両ステータスの間での転換のために利用することができるステートマシンは、たとえばコントロールデバイスとして、特に中央コントロールデバイスとして構成されていてよく、または、車両の中央コントロールデバイスと通信接続されていてよく、それにより、そのつど作動化されるべき車両ステータスに割り当てられたコントロールコマンドを中央コントロールデバイスに伝送する。特に、本発明による方法を実施するために有限ステートマシンを利用することができる。
【0017】
多数の転換のうちの各々の転換ごとに、または多数の転換のうちの実質的に各々の転換ごとに、特に車両のそのつどの走行の最初の転換と最後の転換を例外として、運転者モデルにより別の車両ステータスがそのつど作動化される前に、惰走ステータスが作動化されることが意図されていてよい。
【0018】
燃料効率的な、および/または有害物質最適化された車両の動作のために、本発明に基づいて意図される滑走ステータスをできる限り頻繁に、および/またはできる限り長い時間のあいだ作動化させるのが好ましいことが判明している。それに応じて、第1の走行状態から別の走行状態への転換の間で常に滑走ステータスへの「中間切換」が意図されていてよく、それにより、まず第1の車両ステータスが不作動化され、次いで滑走ステータスが作動化され、たとえば所定の時間の後に、または車両によって所定の走行状態に達したときに、滑走ステータスが不作動化され、次いで別の車両ステータスが作動化される。
【0019】
特に、それぞれの車両のそれぞれの走行の最初の転換と最後の転換のときには、滑走ステータスへの中間切換が行われないことが意図される。通常、初期の車両ステータス「停止」ないし「スタート」の後には車両ステータス「発車」が続くので、その際には駆動エネルギーの直接的すなわちダイレクトな提供が必要となるため、このような車両状況では、滑走ステータスの先行する作動化なしでの車両ステータス「発車」の直接的な作動化が通常はもっとも燃料効率的であり、および/またはもっとも有害物質が少ない。
【0020】
さらには通常、走行を終わらせるための停止への移行時には、車両を減速させて定義された区間点まで到達するのが好ましいので、先行する滑走ステータスの作動化なしでの車両ステータス「停止までの制動」の直接的な作動化が好ましい場合がある。
【0021】
さらに、本発明に基づいて意図される複数の車両ステータスは、次の車両ステータスのうち少なくとも2つを含むことが意図されていてよい:「停止」、「発車」、「加速」、「制動」、「停止まで制動」、「惰走」。ここで車両ステータス「発車」が作動化されると車両の少なくとも1つのブレーキが緩められ、加速ペダルの所定の最小位置をもって、および/または所定の最大位置をもって、車両が動かされる。
【0022】
車両ステータス「制動」が作動化されると、車両のブレーキが作動化されて、車両のアクセルペダルを所定の最大位置までしか動かすことができないことが意図されていてよい。
【0023】
車両ステータス「停止までの制動」が作動化されると、たとえば燃料最適化された、および/または有害物質最小化された減速を惹起する所定の手順に従って、車両が停止されることが意図されていてよい。
【0024】
車両ステータス「加速」が作動化されると、たとえば燃料最適化された、および/または有害物質最小化された加速を惹起する所定の手順に従って、車両が所定の目標速度へと移されることが意図されていてよい。
【0025】
車両ステータス「発車」についてアクセルペダルの最小位置が設定されることで、車両を迅速に動かし始めることができ、このことは、場合によりゆっくりとした加速よりも燃料効率的であり得る。
【0026】
車両ステータス「発車」についてアクセルペダルの最大位置が設定されることで、場合によりブレーキ操作によって修正しなくてはならない不必要な加速衝撃を回避することができる。
【0027】
さらに、運転者モデルによって惰走ステータスが作動化されるとき、次の各ステップが実行されることが意図されていてよい:
a)車両について所定の目標出力推移曲線が判定され、
b)目標出力推移曲線について許容幅が決定され、許容幅は上側の限界曲線と下側の限界曲線によって区切られ、上側の限界曲線は目標出力推移曲線の推移に所定の上側の許容値を加えたものを参照して決定され、下側の限界曲線は目標出力推移曲線の推移から所定の下側の許容値を差し引いたものを参照して決定され、
c)将来に予想される車両の出力についての予想特性曲線が、車両の現在の調整のもとでの車両の出力動向の外挿によって、所定の時間的な長さを有する予測ウィンドウについて決定され、別の車両ステータスを作動化させるための条件は、予想特性曲線が、時間的な予測ウィンドウの内部で、許容幅の上側の限界曲線と下側の限界曲線のうちの少なくとも1つと交わることを含む。
【0028】
許容幅と予想特性曲線が利用されることで、そのつどの車両の将来の挙動を予測することができ、もしくは見積もることができ、所定の目標出力要求と関連づけることができ、それにより、たとえばそれぞれの予想特性曲線がそれぞれの許容幅と交わらない場合、たとえば惰走ステータスなどのそのつどの車両ステータスで車両を作動させることができる。それに応じて許容幅と予想特性曲線の利用は、そのつどの車両ステータスを作動化したままに保つことができる時間のダイナミックな決定を可能にする。
【0029】
さらに、予想特性曲線が上側の限界曲線と交わるケースについては、車両のブレーキが作動化される車両ステータスがリリースされ、予想特性曲線が下側の限界曲線と交わるケースについては、車両の駆動が加速のために作動化される車両ステータスがリリースされることが意図されていてよい。
【0030】
さらに、停止の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならないことが意図されていてよい:所定の速度が「0」に相当し、現在の速度が所定の停止閾値よりも低く、および/または制動の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならない:現在の加速値が「0」に相当し、車両のブレーキの作動化がリリースされており、ブレーキが開いており、および/または加速の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならない:加速のための車両の駆動部の作動化がリリースされており、所定の速度が所定のクリープ速度よりも高く、および/または発車の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならない:所定の速度が「0」よりも大きいか、またはブレーキが開いている。
【0031】
さらに、加速の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならないことが意図されていてよい:現在の目標速度が所定のクリープ速度よりも高い。
【0032】
さらに、制動の車両ステータスを作動化させるために次の条件が満たされていなければならないことが意図されていてよい:現在の目標速度が所定のクリープ速度よりも低い。
【0033】
さらに、初期化モジュールがそのつどの車両の現在の状態を判定し、次の各条件を基礎として、判定された状態をそれぞれの車両ステータスに割り当てることが意図されていてよい:
【0034】
条件1:所定の速度が「0」に等しく、現在の速度が所定の停止閾値よりも高く、すなわち、停止として評価される速度の閾値よりも高い。
【0035】
条件2:現在の加速度値が「0」よりも大きく、所定の速度が所定の停止閾値よりも大きい。
【0036】
条件3:ブレーキアクティビティが「0」よりも大きく、所定の速度が所定の停止閾値よりも高い。
【0037】
このとき条件1から3は、たとえば運転者モデルが作動化された状態で車両を制御する役目を果たす初期化モジュールに割り当てられる。運転者モデルが作動化されると車両がどのような状態にもなり得るので、運転者モデルが作動化されると、いずれの状態が最初に作動化されるかが初期化モジュールによって判定されることが意図される。このとき条件1から3は次の車両状態を反映する:
【0038】
条件1:車両が停止すべきであり、近似的に停止している。
条件2:車両が走行すべきであり、低速すぎる。
条件3:車両が走行すべきであり、または停止したまま保たれるべきであり、高速すぎる。
【0039】
さらに、それぞれの車両ステータスに割り当てられるコントロールコマンドが、それぞれの車両の少なくとも1つのペダルのペダル制御器をリリースすることが意図されていてよい。
【0040】
作動化されるべきそれぞれの車両ステータスに相当する、それぞれの車両の調整の変更を実現するために、車両の少なくとも1つのペダルを制御するペダル制御器を利用することができる。それに応じて、作動化されるべき車両ステータスと反対の作用をするペダル制御器の制御は、作動化されるべき車両ステータスにより設定されるコントロールコマンドによってペダル制御器がリリースされ、それ以外の場合にはペダルの制御から除外されることによって、回避することができる。
【0041】
さらに、それぞれの車両ステータスに割り当てられる少なくとも1つのコントロールコマンドは、それぞれの車両の1つのペダルのペダル制御器だけをリリースすることが意図されていてよい。
【0042】
制御のリリースが1つのペダル制御器だけに制限されることで、たとえばアクセルペダルとブレーキペダルが高い頻度で交互に作動化される過剰制御を回避し、それに起因する燃料非効率な、および/または有害物質の多い、相応の車両の動作を回避することができる。
【0043】
さらに、車両ステータスの利用によって車両の動作の進行中に車両の動作を作動化または不作動化できることが意図されていてよい。
【0044】
提案される方法は車両の動作の進行中に、すなわち走行中に、ダイナミックに作動化または不作動化することができる。それに応じて、たとえば車両を運転者により手動で走行状態へと移し、次いで、本発明による運転者モデルによって、本発明に基づいて意図される車両ステータスを利用したうえで、自動で作動させることが意図されていてよい。
【0045】
さらに、惰走ステータスから別の車両ステータスへの転換時に、アクセルペダルおよび/またはブレーキペダルの定義された位置がスタート値として評価されることが意図されていてよい。
【0046】
ダイナミックなスタート値によって、すなわち、惰走ステータスから別の車両ステータスへの転換時にペダルのゼロ位置が適合化されることによって、加速段階または制動段階への特別にソフトな移行を実現することができる。それぞれのペダルの絶対的なゼロ位置を起点とする、現在の走行状態への「整定」が回避されるからである。
【0047】
さらに、1つの車両ステータスから別の車両ステータスへの転換を実行するための時間的な最小間隔を設定するコントロールサイクルを利用したうえで本方法が実施されることが意図されていてよく、少なくとも1つのコントロールサイクルは、1つの車両ステータスから惰走ステータスへの転換と、惰走ステータスから別の車両ステータスへの転換との間に位置する。
【0048】
コントロールサイクルは、たとえば2つのコントロールプロセスの間の時間的間隔であってよく、数秒から数ミリ秒の間、好ましくは2秒から10ミリ秒の間、特別に好ましくは1秒から50ミリ秒の間、特に100ミリ秒の長さである。それに応じて、惰走ステータスから別の走行ステータスへの転換の間のコントロールサイクルが意図されることで、惰走ステータスが作動化されたまま保たれる最小時間が設定され、それにより、惰走ステータスの各々の作動化が最低限の燃料節減および/または有害物質削減を惹起する。
【0049】
さらに、車両が車両ステータス「停止」になっているケースについて、車両のブレーキペダルが所定の最小値をもって動かされて、スタート/ストップ機能を作動化させることが意図されていてよい。
【0050】
スタート/ストップ機能は車両の燃料効率および/または有害物質排出に対して著しい影響を及ぼすので、このような機能の作動化は、提案される方法を適用したうえでの車両のコントロールにあたって特別に好ましい。
【0051】
第2の態様では、提案される本発明は車両をコントロールするためのコントロール装置に関し、コントロール装置は少なくとも1つの計算ユニットを含む。少なくとも1つの計算ユニットは、車両の現在の状態を、そのつどの車両ステータスについて設定された少なくとも1つの選択条件と照合し、照合に依存してそのつどの車両ステータスを選択して作動化させるためにコンフィグレーションされた、複数の車両ステータスから車両の1つの車両ステータスを作動化させるための少なくとも1つの運転者モジュールを含み、複数の車両ステータスは少なくとも1つの第1の車両ステータスと第2の車両ステータスとを含み、さらに運転者モジュールは、現在作動化されている車両ステータスと別の車両ステータスとの間で多数の転換を行い、多数の転換のうちの少なくとも1つの転換時に、運転者モジュールにより別の車両ステータスがそのつど作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータスを作動化させるためにコンフィグレーションされ、運転者モジュールによりそのつどの車両ステータスが作動化されるときに、車両ステータスに割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースするためにコンフィグレーションされたリリースモジュールを含む。
【0052】
それに伴って本発明のコントロール装置は、本発明による方法に関連して詳細に説明したのと同じ利点をもたらす。
【0053】
第3の態様では、本発明は、車両のテスト走行を実施するための、提案されるコントロール装置の利用法に関する。
【0054】
第4の態様では、提案される本発明は、プログラムコード手段がコンピュータで実行されたとき、提案される方法に基づくすべてのステップを実行ようにコンピュータをコンフィグレーションするプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0055】
コンピュータプログラム製品はコンピュータ可読の命令コードとして、たとえばJAVA(登録商標)やC++などのあらゆる適当なプログラミング言語でインプリメントされていてよい。コンピュータプログラム製品は、データディスク、リムーバブルハードディスク、揮発性メモリもしくは不揮発性メモリ、またはビルトインメモリ/プロセッサなどのコンピュータ可読の記憶媒体に格納されていてよい。命令コードは、所望の機能が実行されるように、コンピュータまたはコントロールデバイスなどその他のプログラミング可能なデバイスをプログラミングすることができる。さらにコンピュータプログラム製品は、たとえばインターネットなどのネットワークで提供することができ、もしくは提供されていてよく、そこから必要に応じて利用者によってダウンロードすることができる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムすなわちソフトウェアによってだけでなく、1つまたは複数の専用の電子回路によっても、すなわちハードウェアでも、あるいは任意のハイブリッド形態でも、すなわちソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネントによっても、具体化することができ、もしくは具体化されていてよい。
【0056】
本発明を改良するさらなる方策は、図面に模式的に示されている本発明のさまざまな実施例に関する以下の説明から明らかとなる。特許請求の範囲、発明の詳細な説明、または図面から明らかとなる一切の構成要件および/または利点は、設計上の具体的事項や空間的な配置も含めて、それ自体として単独でもさまざまに異なる組合せでも、発明の要部となり得る。
【0057】
図面はそれぞれ模式的に次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明による方法の考えられる実施形態である。
図2】本発明による方法の考えられる実施形態に基づく車両のコントロールの進行を視覚化した図である。
図3】本発明によるコントロール装置の考えられる実施形態である。
図4】本発明による方法を実施するためのステートマシンの考えられる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1には、提案される方法の考えられる実施形態の進行100が模式的に示されている。
【0060】
照合ステップ101で運転者モデルによって、すなわち、たとえば車両をコントロールするためのコンピュータプログラムによって、車両の現在の状態が判定され、それは、たとえばそれぞれのセンサにより判定される車両の走行データが、車両のコントロールデバイスからロードされて評価されることによる。次いで、車両の現在の状態が運転者モデルによって、それぞれの車両ステータスについて設定されている少なくとも1つの選択条件と照合される。このとき選択条件は、たとえば車両のセンサの測定について設定された値、および/または設定された目標出力要求、たとえば調整されるべき車両速度であってよい。
【0061】
車両の現在の状態が、それぞれの1つ車両ステータスに割り当てられたすべての選択条件と合致するケースについては、多数の車両ステータスから当該車両ステータスが選択されて、作動化ステップ103で作動化される。
【0062】
第1の車両ステータス、たとえば車両ステータス「加速」が終了し、別の車両ステータス、たとえば車両ステータス「制動」が作動化されるべきケースについては、車両ステータス「加速」が不作動化された後、かつ車両ステータス「制動」が作動化される前に、惰走ステータスが作動化されることが意図される。それに応じて惰走ステータスが「中間切換」される。惰走ステータスが作動化されている間、車両は滑走するように、すなわち駆動されず、かつ制動や減速もなされずに車両が進むように調整される。
【0063】
リリースステップ105で、そのつど作動化された車両ステータスに割り当てられているコントロールコマンドがリリースされて、場合により相応の調整器が、たとえばアクチュエータが、車両のそれぞれのペダルを動かすためにコントロールコマンドによりコントロールされる。
【0064】
図2には、時間[秒]を表す横軸201と、要求される車両速度[km/h]および測定された車両速度[km/h]を表す第1の縦軸203と、アクセルペダル位置[%]を表す第2の縦軸205と、ブレーキペダル位置[%]を表す第3の縦軸207とで作成されたグラフ200が示されている。ここでのグラフは、特に2つの異なる速度推移を有している。これは一方では、実線で図示された目標出力設定推移211であり、これを車両についての速度設定および/または目標速度と呼ぶこともできる。他方でこのグラフには、目標出力設定推移211とは相違する、たとえば車両の現在の速度または実際速度と呼ぶことができる車両速度推移217が破線で図示されている。車両をコントロールすることで、車両速度推移217をできる限り目標出力設定推移211の近傍に保つことが試みられる。コントロール限界として、ここでは上側の限界曲線213と下側の限界曲線215が点線で図示されている。実線として図示されている目標出力要求の目標出力設定推移211は、たとえば有害物質エミッションを判定するためのテストによって設定されていてよい。
【0065】
ブレーキペダル推移221は、短く切れた破線として、車両のブレーキペダルの位置の推移を示している。
【0066】
アクセルペダル推移223は、長く切れた破線として、車両のアクセルペダルの位置の推移を示している。
【0067】
さらに図2には、車両状態IからXがそれぞれ点線で分離されて図示されており、ここでは次が成り立つ:
I=停止
II=発車
III=加速
IV=制動
V=惰走
VI=加速
VII=制動
VIII=停止
【0068】
状態Iでは、状態Iのブレーキペダル推移221によって示唆されているとおり、車両が動かないように車両のブレーキペダルが操作されている。この状態は、ブレーキペダルの操作によって動き出さないように固定された車両の停止に相当する。アクセルペダルはこの状態Iでは操作されていない。
【0069】
状態IIでは、状態IIの間のブレーキペダル推移221によって示すとおり、車両のブレーキペダルが緩められる。車両がクリープし始める。このときアクセルペダルは依然として操作されない。この状態IIはクリープ状態と呼ぶことができ、たとえばオートマチック車で知られている。車両速度推移217が上昇によって、車両の動きのこのような開始を示唆している。目標出力設定推移211の上昇に追随するために、最初の発進プロセスについてはブレーキペダルを純粋に緩めるだけで足りる。
【0070】
状態IIIではブレーキペダルが完全に緩められ、状態IIIのアクセルペダル推移223によって示されているように、車両を加速させるために車両のアクセルペダルが操作される。ブレーキペダルは操作されず、図IIIのブレーキペダル推移221によって示されているように、休止位置にある。すなわち、目標出力設定推移に準ずる速度のいっそうの上昇に追随するために、アクセルペダルがアクセルペダル推移223に示すようにさらに操作される。車両がいっそう加速され、それにより、車両速度推移217が限界曲線213および215の内部で目標出力設定推移211に追随する。
【0071】
状態IVでは、目標出力設定推移211による設定に応じて車両速度が低減されることが意図される。そのために、状態IVのブレーキペダル推移221によって示されているように車両のブレーキペダルが操作され、それに対して、状態IVの前のアクセルペダル推移223によって示されているように、アクセルペダルは事前に緩められている。その結果、低下していく目標出力設定推移211に車両速度推移217が状態IVで追随する。
【0072】
状態Vでは、状態Vの横軸201の上に延びるアクセルペダル推移223および横軸201の上に延びるブレーキペダル推移221によって示されているように、車両のブレーキペダルもアクセルペダルも操作されない。それに応じて車両は状態Vのとき滑走する。滑走状態にある間に、車両の実際速度が車両速度推移217に示すように低下していき、これも同じく低下していく目標出力設定推移211に追随する。すなわち、状態Vではいかなるペダル操作もなしに速度の変化が実現され、そのようにして、実際の運転者による実際の手動でのコントロール状況が模倣される。速度の穏やかな低下のために、効率の良い運転者にとって能動的な制動は必要ない。たとえばホイールの摩擦や車両の空気抵抗などの車両の走行抵抗によって穏やかなブレーキ作用が実現される滑走状態だけで、目標出力設定推移211への追随のために十分である。
【0073】
状態VIでは、状態VIのアクセルペダル推移223によって示されているように、車両を加速させるために車両のアクセルペダルが再び操作され、それに対して、状態VIのブレーキペダル推移221によって示されているように、ブレーキペダルは操作されず、すなわち休止位置にある。状態VIでは、車両速度推移217に示すとおり、アクセルペダルのさまざまに異なる強さの操作が加速につながり、あるいは、走行抵抗に基づいて車両の実際速度の低下につながる。すなわちこの状態VIは、加速状態として実質的に状態IIIに相当する。
【0074】
状態VIIでは、状態VIIのブレーキペダル推移221によって示されているように車両のブレーキペダルが操作され、それに対してアクセルペダルは、状態VIIのアクセルペダル推移223によって示されているように、緩められたまま保たれる。それに伴い、ここでは状態IVと同じく制動状態が生起される。
【0075】
状態VIIIでは、状態VIIIのブレーキペダル推移221によって示されているように、車両のブレーキペダルがさらに強く操作され、それに対して車両のアクセルペダルは、状態VIIIの横軸201の上に延びるアクセルペダル推移223によって示されているように操作されておらず、すなわち休止位置にある。車両は停止に至るまで減速され、押圧されるブレーキペダルによって、このような停止のまま固定される。車両速度推移217の変化はここではもはや起こらない。状態Vの開始時の最新の時点t1で、破線で示す予想特性曲線219が、時点t1における最新の車両速度を起点として形成される。予想特性曲線219は、たとえば時点t1での速度値を参照して、および場合により時点t1を起点とする速度履歴、たとえば時点t1の0.2秒前から時点t1までの範囲の速度履歴もしくはその勾配関数を参照して、かつ、車両の挙動が一定に保たれているという想定のもとで、たとえば4秒のタイムスロットについて外挿される。本例のように予想特性曲線219が上側の限界曲線213にも下側の限界曲線215にも交わらないときには、車両で現在作動化されている車両ステータスを、特に惰走ステータスを、作動化させたまま保つことができる。
【0076】
それに応じて状態Vの間、生じる車両速度推移217は事前に形成された予想特性曲線219に呼応する。
【0077】
予想特性曲線219が上側の限界曲線213と交わると、目標出力要求に対する車両の速度超過が将来的に予想されるので、車両が減速される車両ステータスを作動化させることができる。
【0078】
予想特性曲線219が下側の限界曲線215と交わると、目標出力要求に対する車両の速度不足が将来的に予想されるので、車両が加速される車両ステータスを作動化させることができる。
【0079】
図3にはステートマシン300が示されている。
【0080】
ステートマシン300は、本方法の考えられる実施形態のすべての車両ステータス「加速」301、「惰走」303、「制動」305、「発車」307、および「停止」309を含んでいる。
【0081】
さらにステートマシン300は、提案される方法が作動化されたときそれぞれの車両の現在の状態を評価し、第1の線313、第2の線315、および第3の線317によって示唆されているように、車両ステータス「加速」301、「惰走」303、「制動」305、「発車」307、および「停止」309のうちの1つの車両ステータスに割り当てる初期化モジュール311を含んでいる。
【0082】
初期化モジュール311によって作動化される車両ステータスを起点として、車両の状態およびそのつどの目標出力要求に依存して、第1の矢印319、第2の矢印321、第3の矢印323、第4の矢印325、第5の矢印327、第6の矢印329、第7の矢印331、および第8の矢印333によって示唆されているように、車両ステータス「加速」301、「惰走」303、「制動」305、「発車」307、および「停止」309が作動化される。このとき、車両ステータス「加速」301から車両ステータス「制動」305への転換、およびこの逆の転換は、常に車両ステータス「惰走」303を経由して行われるのが好ましい。
【0083】
図4にはコントロール装置400が示されている。コントロール装置400は計算ユニット401を含んでいる。
【0084】
計算ユニットは、車両の現在の状態を、それぞれの車両ステータスについて設定されている少なくとも1つの選択条件と照合し、照合に依存してそのつど1つの車両ステータスを選択して作動化させるためにコンフィグレーションされた、複数の車両ステータスから車両の1つの車両ステータスを作動化させるための運転者モジュール403を含んでおり、複数の車両ステータスは少なくとも1つの第1の車両ステータスと第2の車両ステータスとを含む。
【0085】
さらに運転者モジュール403は、現在作動化されている車両ステータスと別の車両ステータスとの間の多数の転換を行い、多数の転換のうち少なくとも1つの転換時に、運転者モジュール403により別の車両ステータスがそのつど作動化される前に、車両が滑走する惰走ステータスを作動化させるためにコンフィグレーションされている。
【0086】
さらに計算ユニット401は、運転者モジュールによりそのつどの車両ステータスが作動化されるとき、その車両ステータスに割り当てられた少なくとも1つのコントロールコマンドを車両の調整の変更のためにリリースするためにコンフィグレーションされたリリースモジュール405を含んでいる。
【0087】
さらにコントロール装置400は、車両にコントロールコマンドを伝送するために、有線インターフェースまたは無線インターフェースとして構成されていてよく、コントロールされるべきそれぞれの車両と通信接続されたインターフェース407を含んでいる。
【0088】
本発明は、図示している実施形態に加えてさらなる構成原理を可能にする。すなわち本発明は、図面を参照して説明した実施例だけに限定されるとみなされるべきではない。
【符号の説明】
【0089】
100 進行
101 照合ステップ
103 作動化ステップ
105 リリースステップ
200 グラフ
201 横軸
203 第1の縦軸
205 第2の縦軸
207 第3の縦軸
211 目標出力設定推移
213 上側の限界曲線
215 下側の限界曲線
217 車両速度推移
219 予想特性曲線
221 ブレーキペダル推移
223 アクセルペダル推移
300 ステートマシン
301 車両ステータス「加速」
303 車両ステータス「惰走」
305 車両ステータス「制動」
307 車両ステータス「発車」
309 車両ステータス「停止」
311 初期化モジュール
313 第1の線
315 第2の線
317 第3の線
319 第1の矢印
321 第2の矢印
323 第3の矢印
325 第4の矢印
327 第5の矢印
329 第6の矢印
331 第7の矢印
333 第8の矢印
400 コントロール装置
401 計算ユニット
403 運転者モジュール
405 リリースモジュール
407 インターフェース
図1
図2
図3
図4