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特許7518870ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20240710BHJP
   C12C 11/11 20190101ALI20240710BHJP
   C12C 12/02 20060101ALI20240710BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20240710BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C11/11
C12C12/02
C12G3/021
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022080427
(22)【出願日】2022-05-16
(65)【公開番号】P2023168992
(43)【公開日】2023-11-29
【審査請求日】2023-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】加野 智慎
(72)【発明者】
【氏名】森下 あい子
(72)【発明者】
【氏名】三吉 惟道
(72)【発明者】
【氏名】米田 俊浩
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162602(JP,A)
【文献】特開2021-073926(JP,A)
【文献】BRAUINDUSTRIE(Verlag W. Sachon発行),67. Jg.,1982年01月,pp.76-79
【文献】BRAUINDUSTRIE(Verlag W. Sachon発行),1982年01月,67. Jg.,pp.138-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00-13/10
C12G 3/00-3/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽使用比率が50~100質量%であり、糖質の濃度が1.5g/100mL以下であり、アルコール濃度が3体積%超かつ7体積%以下であるビール風味発酵アルコール飲料において、酸味感を低減する方法であって、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10に調整される、方法。
【請求項2】
麦芽使用比率が50~100質量%であり、糖質の濃度が1.5g/100mL以下であり、アルコール濃度が3体積%超かつ7体積%以下であるビール風味発酵アルコール飲料において、ハスク感を低減する方法であって、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10に調整される、方法。
【請求項3】
飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2.5~5に調整される、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
飲料中の糖質の濃度が1.0g/100mL以下である、請求項またはに記載の方法。
【請求項5】
飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
飲料中の糖質の濃度が0.4g/100mL以下である、請求項1または2に記載の方法
【請求項7】
前記ビール風味発酵アルコール飲料が、原料に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類、果実およびコリアンダーからなる群から選択される副原料を含み、麦芽使用比率が50質量%以上のものである、請求項1または2に記載の方法
【請求項8】
前記糖類が液糖である、請求項7に記載の方法
【請求項9】
飲料中の1-プロパノール濃度が10~70mg/Lに調整される、請求項1または2に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにより、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料が求められている。糖質を低減したビールやビール系飲料は、味や香りの強度が低くなることが多いため、麦芽由来のハスク感や刺すような酸味感を強く感じやすいという問題がある。
【0003】
味の強度を高めるための従来の方法としては苦味価(BU)上昇や、ホップによる香気成分を付与する方法があるが、BU上昇により全体の味のバランスが崩れ、ホップによる香気成分付与は単調な印象になってしまう。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、ビール風味発酵アルコール飲料においてアルコール(エチルアルコール)濃度と1-プロパノール濃度との比を所定の範囲に調整することにより、刺すような酸味感を低減し得ることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、刺すような酸味感が低減されたビール風味発酵アルコール飲料およびその製法を提供する。
【0006】
そして、本発明には、以下の発明が包含される。
(1)飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10である、ビール風味発酵アルコール飲料。
(2)飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2.5~5である、前記(1)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(3)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、前記(1)または(2)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(4)麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(5)アルコール濃度が3体積%超である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(6)ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10に調整される、方法。
(7)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、前記(6)に記載の方法。
(8)麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(6)または(7)に記載の方法。
(9)飲料中のアルコール濃度が3体積%超に調整される、前記(6)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)ビール風味発酵アルコール飲料において、酸味感を低減する方法であって、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10に調整される、方法。
(11)ビール風味発酵アルコール飲料において、ハスク感を低減する方法であって、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10に調整される、方法。
【0007】
本発明によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、刺すような酸味感を低減することが可能となる。また、本発明によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、麦芽由来のハスク感を低減することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が所定の範囲にあるものである。このようなビール風味発酵アルコール飲料は、その製造の際に、1-プロパノールとエタノールの濃度を調整することにより得ることができる。これらの物質の濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、これら物質の添加、これら物質を含有する原料の使用量の増減、これら物質を最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってこれら物質に変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
【0009】
本発明において「ビール風味発酵アルコール飲料」とは、ビール(麦芽およびホップを原料として用い、ビール酵母による発酵によって得られるアルコール飲料)、またはビールと同様の風味を有する発酵アルコール飲料を意味する。本発明において「発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させたアルコール(エタノール)含有飲料を意味する。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、発酵後にアルコール(エタノール)濃度を調整したアルコール飲料であってもよい。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくはホップを原料として用いることによりホップの香気が付与された発酵飲料である。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは発酵麦芽飲料、すなわち、原料として少なくとも麦芽を使用した飲料を意味する。このような発酵麦芽飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)などが挙げられ、好ましくはビールである。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは麦芽使用比率50質量%以上100質量%以下、より好ましくは麦芽使用比率50質量%以上95質量%以下の発酵麦芽飲料である。
【0010】
本発明において「酸味感」とは、ビール系飲料を飲用したときに感じる刺すような酸味を意味する。このような酸味感は、ビール系飲料の糖質含量の減少に伴って徐々に際立ってくる傾向がある。また、本発明において「ハスク感」とは、渋味や雑味、後味のざらつきや粉っぽい印象を伴う、穀物様の香りや味を意味する。
【0011】
本発明において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0012】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]は、例えば、2~10とされ、好ましくは2~9.5、より好ましくは2~9、さらに好ましくは2~8.5、さらに好ましくは2~8、さらに好ましくは2~7.5、さらに好ましくは2~7、さらに好ましくは2~6.5、さらに好ましくは2~6、さらに好ましくは2~5.5、さらに好ましくは2~5とされる。本発明の他の実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]は、例えば、2.5~10とされ、好ましくは2.5~9.5、より好ましくは2.5~9、さらに好ましくは2.5~8.5、さらに好ましくは2.5~8、さらに好ましくは2.5~7.5、さらに好ましくは2.5~7、さらに好ましくは2.5~6.5、さらに好ましくは2.5~6、さらに好ましくは2.5~5.5、さらに好ましくは2.5~5とされる。
【0013】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中の1-プロパノール濃度の下限は、特に制限されるものではないが、好ましくは5mg/L、より好ましくは7.5mg/L、さらに好ましくは10mg/L、さらに好ましくは12.5mg/L、さらに好ましくは14mg/L、さらに好ましくは16mg/L、さらに好ましくは17.5mg/Lとされる。また、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中の1-プロパノール濃度の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは100mg/Lとされ、より好ましくは90mg/L、さらに好ましくは70mg/L、さらに好ましくは60mg/L、さらに好ましくは50mg/L、さらに好ましくは35mg/L、さらに好ましくは30mg/L、さらに好ましくは25mg/Lとされる。1-プロパノールは、原料由来のものであってもよく、また植物原料とは別に添加されたものであってもよく、さらに発酵により生成されたものであってもよい。1-プロパノールの濃度は、例えば、原料の組成および発酵条件などをコントロールすることにより、制御することができる。
【0014】
ビール風味発酵アルコール飲料中の1-プロパノールの定量は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行うことができる。このGC分析は、例えば次のようにして行うことができる。まず、ヘッドスペースサンプル瓶に氷冷した飲料10mlを移しとり、これに内部標準液1mlを加え、密栓する。内部標準液としては、エタノールで200mg/Lに希釈したn-ブタノールを用いることができる。密栓したヘッドスペースサンプル瓶はヘッドスペースオートサンプラーにより40℃で10分間保温後、気相部分をガスクロマトグラフに注入する。1-プロパノール濃度は、クロマトグラムのピーク面積をもとに、あらかじめ作成しておいた検量線により算出することができる。検量線の作成は、4%エタノールで段階的に希釈した1-プロパノールの標準液を、飲料の測定と同様のGC分析に供することにより作成することができる。GCの分析条件は、以下の表1に従うことができる。
【0015】
【表1】
【0016】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは1体積%(v/v%)以上とされ、より好ましくは1体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは2体積%(v/v%)以上とされ、さらに好ましくは2体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは3体積%(v/v%)以上とされ、さらに好ましくは3体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは3.5体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上とされる。ビール風味発酵アルコール飲料のアルコール濃度の上限は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば20体積%、好ましくは10体積%、より好ましくは7体積%である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、好ましくは3体積%超10体積%以下とされ、より好ましくは3体積%超7体積%以下、さらに好ましくは4~7体積%とされる。ビール風味発酵アルコール飲料中のアルコールの濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、具体的には、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に基づいて行うことができる。
【0017】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は糖質の含有量が通常よりも低減された飲料とされる。この「通常よりも低減された」とは、そのビール風味発酵アルコール飲料を製造する際に糖質の含有量を低下させるための工夫がなされていることを意味する。このような低糖質のビール風味発酵アルコール飲料における具体的な糖質濃度の数値は特に限定されるものではないが、例えば、1.5g/100mL以下、好ましくは1.5g/100mL未満、より好ましくは1.1g/100mL以下、さらに好ましくは1.0g/100mL以下、さらに好ましくは1.0g/100mL未満、さらに好ましくは0.5g/100mL以下、さらに好ましくは0.5g/100mL未満とすることができる。一つの実施態様において、低糖質ビール風味発酵アルコール飲料中の糖質の濃度は0.4g/mL以下である。
【0018】
糖質濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、当該試料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等 参照)に従って行うことができる。
【0019】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0020】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.3~4.8、より好ましくは2.9~4.8に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、HORIBA Scientific 卓上pH計、株式会社堀場アドバンスドテクノ製)を使用して容易に測定することができる。
【0021】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のビール風味発酵アルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0022】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中の1-プロパノールの濃度調整およびアルコール度数(エタノール濃度)の調整以外は、通常のビール風味発酵アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。通常の製法としては、例えば、少なくとも水および麦芽を含んでなる発酵前液を発酵させる方法、すなわち、麦芽等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去する方法が挙げられる。
【0023】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料の製造過程では、いずれかの工程でホップ(ホップの加工品を含む)を添加することができる。ホップの添加量は、典型的には、発酵工程における発酵前液の容量に対して0.1~5g/Lとなるように調整することができ、好ましくは0.1~2g/L、より好ましくは0.2~1.5g/Lとすることができる。
【0024】
本発明では、麦芽、ホップおよび水以外に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)、果実、コリアンダー等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物、酵母エキス等の窒素源、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。
【0025】
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、酸味感を低減する方法が提供され、該方法は、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]を上述の数値範囲に調整することを含む。
【0026】
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、ハスク感を低減する方法が提供され、該方法は、飲料中のエタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]を上述の数値範囲に調整することを含む。
【実施例
【0027】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1:ビール風味発酵アルコール飲料における1-プロパノール濃度およびアルコール度数と香味との関係
本実施例では、試験醸造したビールをベースとして1-プロパノール濃度およびアルコール度数(エタノール濃度)を調整した試飲サンプルを調製し、官能評価を行って、ビール風味発酵アルコール飲料における1-プロパノール濃度およびアルコール度数と香味との関係を調べた。
【0029】
(1)試飲サンプルの調製
以下の手順に従って、ビール風味発酵アルコール飲料の試飲サンプルを調製した。
【0030】
本実施例のビール風味発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として大麦麦芽を使用した(麦芽使用比率60%)。糖化に際してはグルコアミラーゼを主体とした酵素製剤を用い、糖化の温度および時間を調整し、濾過することで麦汁を得た。得られた麦汁にホップと資化性糖を主体として含む液糖とを添加し、100℃で煮沸した。次いで、麦汁を静置して凝固したタンパク質(トリューブ)を分離した後、冷却して発酵前液を得た。得られた発酵前液に下面発酵酵母を添加し、主発酵および後発酵を行い、発酵液を得た。得られた発酵液を低温で貯蔵して発酵を停止させ、濾過することにより、清澄なビール風味発酵アルコール飲料を得た。
【0031】
得られたビール風味発酵アルコール飲料を希釈し、そこに不足した糖質(ショ糖)と酒類原料用アルコール(第一アルコール社、アルコール濃度95%)を添加することにより、糖質0.4g/100mL、アルコール(エタノール)濃度4、5および7%(v/v)のベース飲料を調製した。このベース飲料に、1-プロパノールの濃度が下記表の値となるように1-プロパノールを添加して、試飲サンプルを調整した。なお、実施例における各飲料中のアルコール(エタノール)濃度、糖質および1-プロパノールの濃度は、それぞれ以下の方法に従って測定した。
【0032】
実施例における各飲料中のアルコールの濃度は、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に従って測定した。
【0033】
実施例における各飲料中の糖質の濃度は、日本国消費者庁が定める「食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に基づいて、測定対象となる飲料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分、および食物繊維のそれぞれの質量を除くことにより測定した。
【0034】
実施例における各飲料中の1-プロパノールの濃度の測定は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行った。具体的には、ヘッドスペースサンプル瓶に氷冷した飲料10mlを移しとり、これに内部標準液(エタノールで200mg/Lに希釈したn-ブタノール)1mlを加え、密栓した。密栓したヘッドスペースサンプル瓶はヘッドスペースオートサンプラーにより40℃で10分間保温後、気相部分をガスクロマトグラフに注入した。1-プロパノール濃度は、クロマトグラムのピーク面積をもとに、4%エタノールで段階的に希釈した1-プロパノールの標準液を用いて予め作成しておいた検量線により算出した。GCの分析条件は、以下の表2に示す通りとした。
【0035】
【表2】
【0036】
(2)試飲サンプルの官能評価
上記(1)で得られた試飲サンプルについて、訓練された6名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「ハスク感」および「酸味感」の2項目とした。以下にそれぞれの具体的な評価基準を示す。
a.ハスク感:1(弱く感じられる)~3(中程度に感じられる)~5(強く感じられる)の5段階のスコアで評価。
b.酸味感:1(弱く感じられる)~3(中程度に感じられる)~5(強く感じられる)の5段階のスコアで評価。
【0037】
下記表3に、試飲サンプル中の1-プロパノール濃度、アルコール(エタノール)濃度および官能評価結果をまとめて示す。官能評価結果のスコアは、平均値および標準偏差として示す。
【0038】
【表3】
【0039】
官能評価においては、試験区4(エタノール濃度5v/v%、1-プロパノール濃度9mg/L)のスコアを4.0に固定した。
【0040】
表3に示される結果から、エタノール濃度(v/v%)に対する1-プロパノール濃度(mg/L)の比[1-プロパノール濃度(mg/L)/エタノール濃度(v/v%)]が2~10の範囲である場合に、酸味感が顕著に低減されることが明らかであり、同比が2.5~5の範囲である場合に、酸味感の低減効果がさらに顕著に奏されることが明らかとなった。さらに、ハスク感の低減効果についても同様の傾向が見られた。