IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

特許7518874気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置
<>
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図1
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図2
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図3
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図4
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図5
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図6
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図7
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図8
  • 特許-気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】気体供給装置、基板処理装置および基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022093601
(22)【出願日】2022-06-09
(65)【公開番号】P2023180365
(43)【公開日】2023-12-21
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中根 慎悟
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-330972(JP,A)
【文献】特開2021-167722(JP,A)
【文献】特開昭64-030213(JP,A)
【文献】特開平06-177225(JP,A)
【文献】特開2019-161116(JP,A)
【文献】特開2016-100498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0013077(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146539(US,A1)
【文献】米国特許第05413527(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持機構に支持された基板に清浄な気体を供給する気体供給装置であって、
中空の本体部と、
前記本体部に設けられた平板状のフィルタと、
前記本体部の内壁面と前記フィルタとで囲まれた空間に送風源から送り出された気体を導入する導入口と、
を備え、
前記導入口から前記空間には前記フィルタと平行に気体を導入し、
前記本体部に、前記導入口から気体が導入されたときに前記空間を前記本体部の外部より陽圧とする整流板を備え、
前記整流板は、前記空間と前記フィルタとの間に配置されることを特徴とする気体供給装置。
【請求項2】
請求項記載の気体供給装置において、
前記整流板は、複数の孔が穿設されたパンチング板であることを特徴とする気体供給装置。
【請求項3】
基板に所定の処理を行う処理部と、
前記処理部を囲む筐体に設けられた請求項1または請求項2に記載の気体供給装置と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項記載の基板処理装置において、
前記処理部は、載置した基板を冷却するクーリングプレートを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項記載の基板処理装置において、
前記気体供給装置は、前記筐体の内側であって前記筐体の天井部に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項記載の基板処理装置において、
前記気体供給装置は、前記筐体の側方に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構を囲む筐体に設けられた請求項1または請求項2に記載の気体供給装置と、
を備えることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項8】
請求項記載の基板搬送装置において、
前記気体供給装置は、前記筐体の内側であって前記筐体の天井部に設けられることを特徴とする基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の支持機構に支持された基板に清浄な気体を供給する気体供給装置、並びに、その気体供給装置を組み込んだ基板処理装置および基板搬送装置に関する。処理対象となる基板には、例えば、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL表示用ガラス基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、半導体ウェハー、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用ガラス基板や半導体ウェハーなどの基板を扱う装置においては、パーティクルを極力低減した清浄な環境が求められる。このため、一般的には、基板処理装置に清浄な気体を供給するファンフィルタユニット(FFU)が設けられる(例えば、特許文献1~3等)。ファンフィルタユニットは、気流を生じさせるファンおよびその気流に混在しているパーティクルを捕集して除去するフィルタを備えてパーティクルが除かれた清浄な気体を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-66060号公報
【文献】特開2013-39565号公報
【文献】特開2009-272401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的には特許文献1等に開示されるように、ファンフィルタユニットは、装置の天井部に設置されて装置内に上方から下方へと向かう清浄な気体のダウンフローを形成する。このため、ファンフィルタユニットは、フィルタの上方にファンを設置する構成を有しており、相応の高さになる。
【0005】
しかしながら、このようなファンフィルタユニットを備えた装置の全高は比較的大きなものとなる。特に、ファンフィルタユニットを備えた装置を多段に積層配置した場合には、その全体の高さは相当に大きなものとなる。その結果、装置全体の高さ方向の設置スペースが過度に大きくなるとともに、高さ制限をともなう装置の輸送が困難になるという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、厚さを薄くした気体供給装置、並びに、その気体供給装置を組み込んだ基板処理装置および基板搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、支持機構に支持された基板に清浄な気体を供給する気体供給装置において、中空の本体部と、前記本体部に設けられた平板状のフィルタと、前記本体部の内壁面と前記フィルタとで囲まれた空間に送風源から送り出された気体を導入する導入口と、を備え、前記導入口から前記空間には前記フィルタと平行に気体を導入し、前記本体部に、前記導入口から気体が導入されたときに前記空間を前記本体部の外部より陽圧とする整流板を備え、前記整流板は、前記空間と前記フィルタとの間に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る気体供給装置において、前記整流板は、複数の孔が穿設されたパンチング板であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項の発明は、基板処理装置において、基板に所定の処理を行う処理部と、前記処理部を囲む筐体に設けられた請求項1または請求項2の発明に係る気体供給装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る基板処理装置において、前記処理部は、載置した基板を冷却するクーリングプレートを含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項または請求項の発明に係る基板処理装置において、前記気体供給装置は、前記筐体の内側であって前記筐体の天井部に設けられることを特徴とする。
【0014】
また、請求項の発明は、請求項または請求項の発明に係る基板処理装置において、前記気体供給装置は、前記筐体の側方に設けられることを特徴とする。
【0015】
また、請求項の発明は、基板搬送装置において、基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構を囲む筐体に設けられた請求項1または請求項2の発明に係る気体供給装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る基板搬送装置において、前記気体供給装置は、前記筐体の内側であって前記筐体の天井部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2の発明によれば、気体供給装置にファンは設けられておらず、導入口から本体部内の空間にはフィルタと平行に気体を導入するため、気体供給装置の厚さを薄くすることができる。また、本体部内の空間を本体部の外部よりも陽圧とする整流板を備えるため、導入口から本体部内の空間に導入された気体は一旦整流板にせき止められて当該空間に貯留され、導入時の気体の速度成分を消滅させることができる。さらに、整流板は空間とフィルタとの間に配置されるため、フィルタから均一に気体を供給できるとともに、整流板から生じたパーティクルをフィルタによって捕集することができる。
【0020】
請求項から請求項の発明によれば、請求項1または請求項2の発明に係る気体供給装置を備えるため、基板処理装置の高さを抑制することができる。
【0021】
請求項および請求項の発明によれば、請求項1または請求項2の発明に係る気体供給装置を備えるため、基板搬送装置の高さを抑制することができる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る基板処理装置および基板搬送装置を積層配置した積層構造体の構成を示す図である。
図2】基板搬送装置に設けられた5個の気体供給ユニットの側面図である。
図3】気体供給ユニットの構成を示す断面図である。
図4】気体供給ユニットの内部構造を示す斜視図である。
図5】整流板の平面図である。
図6】気体供給ユニットにおける気体の流れを説明するための図である。
図7】整流板およびフィルタの近傍における気体の流れを説明するための図である。
図8】整流板の他の例を示す平面図である。
図9】基板冷却装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0024】
図1は、本発明に係る基板処理装置および基板搬送装置を積層配置した積層構造体の構成を示す図である。図1の積層構造体1は、基板Gに対して露光処理の前工程の処理を行うとともに、露光処理の後工程の処理を行う基板処理システムの一部である。露光処理の前工程の処理には、例えば、洗浄、処理液の塗布、処理液の乾燥、および、加熱による塗布膜の形成などが含まれる。一方、露光処理の後工程の処理には、現像、現像後の加熱による乾燥、および、冷却などが含まれる。処理対象となる基板Gは、例えば、平板状のガラス基板である。基板Gは、第1主面としての第1面(上面ともいう)と、この第1面とは逆の第2主面としての第2面(下面ともいう)と、を有する。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜に付している。
【0025】
積層構造体1は、基板搬送装置60の上に基板冷却装置70を3段積み重ねて構成される。基板搬送装置60および3段の基板冷却装置70の平面サイズは互いに等しく、処理対象となる基板Gのサイズに応じた適宜の大きさである。基板搬送装置60および3段の基板冷却装置70は下部フレーム80によって支持される。
【0026】
基板搬送装置60は、筐体61の内側に複数の搬送ローラ62を備える。複数の搬送ローラ62の少なくとも一部は図示省略の駆動モータによって回転駆動され、残りは回転自在に設けられている。複数の搬送ローラ62は、平板状の基板Gを水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)で支持しつつ、その基板GをX方向に沿って矢印AR1の向きに搬送する。基板搬送装置60においては、複数の搬送ローラ62が基板Gを支持する支持機構となる。
【0027】
基板搬送装置60は、前段の処理工程が終了した基板Gを後段の処理工程に搬送する。本実施形態においては、洗浄液を供給しての洗浄処理が行われてからエアナイフによって洗浄液が除去された基板Gが基板搬送装置60に送られてくる。基板搬送装置60は、洗浄処理後の基板Gを塗布処理工程に搬送する。
【0028】
搬送機構としての複数の搬送ローラ62を囲む筐体61の内側であって筐体61の天井部には複数(本実施形態では5個)の気体供給ユニット10が設けられる。各気体供給ユニット10は、筐体61内にダウンフローを形成し、搬送ローラ62によって支持・搬送される洗浄処理後の基板Gに清浄な気体を供給する。気体供給ユニット10の詳細な構成についてはさらに後述する。
【0029】
基板搬送装置60の上には、基板冷却装置70が3段に積み重ねられている。3段の基板冷却装置70は図示省略のマルチハンドユニット室と接している。例えば、基板冷却装置70が洗浄処理後の脱水(デハイド)ベークユニットの一部として設けられている場合には、基板搬送装置60から搬出された基板Gは、そのマルチハンドユニット室に設けられた搬送ロボットによって図示省略の基板加熱装置に搬入され、基板G上の水分が除去される。その後、当該搬送ロボットが基板加熱装置から基板Gを受け取り、3段の基板冷却装置70のいずれかに搬入する。基板冷却装置70は搬入された基板Gの温度が所定温度(例えば、常温)になるように基板Gを冷却する。
【0030】
3つの基板冷却装置70は互いに同様の構成を有する。それぞれの基板冷却装置70は、筐体71の内側にクーリングプレート72を備える。クーリングプレート72の内部には液体の流路が巡らされており、その流路に図示省略の冷却水供給源から冷却水が供給される。クーリングプレート72の上面には1枚の基板Gが載置可能である。クーリングプレート72は、載置された基板Gを所定温度に冷却する。基板冷却装置70においては、クーリングプレート72が基板Gを支持する支持機構となる。
【0031】
クーリングプレート72を含む冷却処理部を囲む筐体71の内側であって筐体71の天井部には複数(本実施形態では5個)の気体供給ユニット10が設けられる。基板冷却装置70の筐体71に設けられた気体供給ユニット10は、基板搬送装置60の筐体61に設けられたものと同じである。各気体供給ユニット10は、筐体71内にダウンフローを形成し、クーリングプレート72によって支持されている冷却処理中の基板Gに清浄な気体を供給する。
【0032】
下部フレーム80は、積層構造体1の基台であり、基板搬送装置60および3段の基板冷却装置70を支持する。本実施形態においては、下部フレーム80にブロワ85が設けられる。ブロワ85は、基板搬送装置60および基板冷却装置70に設けられた複数の気体供給ユニット10に空気を送給する送風源である。下部フレーム80には、ブロワ85以外にも電源ユニットやクーリングプレート72への冷却水循環ポンプ等が設けられていても良い。
【0033】
図2は、基板搬送装置60に設けられた5個の気体供給ユニット10の側面図である。複数の搬送ローラ62によって構成される搬送機構の上方に5個の気体供給ユニット10がX方向に沿って並んで配列されている。5個の気体供給ユニット10のそれぞれは、下部フレーム80に設けられたブロワ85と送風管87を介して接続されている。ブロワ85から送り出された空気は送風管87を通って各気体供給ユニット10に供給される。すなわち、気体供給ユニット10とは分離して下部フレーム80に設けられた共通のブロワ85から各気体供給ユニット10に空気を供給するのである。
【0034】
図3は、気体供給ユニット10の構成を示す断面図である。また、図4は、気体供給ユニット10の内部構造を示す斜視図である。気体供給ユニット10は、バッファボックス12、フィルタ20および整流板30を備える。バッファボックス12は、四角柱形状の筐体であり、気体供給ユニット10の中空の本体部である。バッファボックス12の底部は開放された開口とされている。
【0035】
フィルタ20は、バッファボックス12の開放された底部に装着される。平板状のフィルタ20は、その上下面が水平面(XY平面)と平行となるようにバッファボックス12に装着される。フィルタ20が装着されることによって、バッファボックス12の内壁面とフィルタ20とで囲まれた半密閉のバッファ空間15が形成される。バッファボックス12の側方((-Y)側の側面)には導入口17が設けられている。ブロワ85から送風管87を経て送り出された空気は、送風管87の接続端である供給口19を通って導入口17からバッファ空間15に導入される。
【0036】
フィルタ20は、通過する気体からパーティクル等の混在物を捕集して除去し、気体を清浄化する。フィルタ20としては、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)またはULPAフィルタ(Ultra Law Penetration Air Filter)を用いることができる。なお、HEPAフィルタよりもULPAフィルタの方がパーティクル捕集能力が高い。
【0037】
整流板30は、フィルタ20の上方に配置される。より正確には、バッファ空間15とフィルタ20との間に整流板30が配置されることとなる。従って、バッファ空間15に導入された空気は整流板30を通過してからフィルタ20を通ることとなる。
【0038】
図5は、整流板30の平面図である。整流板30は、例えばステンレススチールで形成された四角形の板状部材である。整流板30には、多数の通気孔32が穿設されている。すなわち、整流板30は、複数の通気孔32が穿設されたパンチング板である。複数の通気孔32は均一な密度で整流板30の面内に穿設される。複数の通気孔32を設ける間隔は適宜の値とすることができる。また、各通気孔32の孔径も適宜の値とすることができ、例えばφ2.0mmである。
【0039】
次に、積層構造体1の動作、特に気体供給ユニット10における動作について説明する。前段の洗浄処理が終了して清浄となった基板Gが基板搬送装置60に送られてくる。清浄とされた基板Gに搬送過程でパーティクル等が付着するのは好ましくない。このため、基板搬送装置60によって搬送される基板Gには、筐体61の天井部に設けられた気体供給ユニット10から清浄な気流が供給される。
【0040】
図6は、気体供給ユニット10における気体の流れを説明するための図である。気体供給ユニット10から分離して設けられたブロワ85から送り出された空気は送風管87内を流れて送風管87の接続端である供給口19に到達する。ブロワ85は気体供給ユニット10よりも下方の下部フレーム80に設けられているため、ブロワ85から送り出された空気は供給口19に到達するまでは概ね上方に向かって流れる。供給口19を通過した空気は流れの向きを変えてバッファ空間15への導入口17に到達する。そして、導入口17からバッファ空間15には水平姿勢で配置されたフィルタ20の上面と平行に空気が導入される。
【0041】
バッファ空間15とフィルタ20との間には複数の通気孔32が穿設された整流板30が設けられている。φ2.0mmの孔径の通気孔32が設けられた整流板30は一定の通気抵抗を有する。このため、バッファ空間15に流れ込んだ空気は、直ぐにフィルタ20を通過するのではなく、一旦整流板30にせき止められてバッファ空間15に貯留されることとなる。その結果、バッファ空間15内の気圧が上昇し、バッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となる。なお、バッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となるか否かは、ブロワ85から気体供給ユニット10に送り込まれる空気の流量と整流板30の通気抵抗との相対的な関係によって決まる。例えば、通気孔32の孔径が小さいまたは通気孔32の配設密度が小さくて整流板30の通気抵抗が大きかったとしても、気体供給ユニット10に送り込まれる空気の流量が比較的小さい場合にはバッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧とはならない。逆に、通気孔32の孔径が大きいまたは通気孔32の配設密度が大きくて整流板30の通気抵抗が小さかったとしても、気体供給ユニット10に送り込まれる空気の流量が比較的大きい場合にはバッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となる。ブロワ85から気体供給ユニット10に送り込まれる空気の流量は、ブロワ85の規格によって定まる。従って、気体供給ユニット10に送り込まれる空気の流量に基づいて、バッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となるような孔径および配設密度にて複数の通気孔32を設ける必要がある。
【0042】
図7は、整流板30およびフィルタ20の近傍における気体の流れを説明するための図である。バッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となることにより、バッファ空間15内の空気は複数の通気孔32から下方に向けて勢い良く流れ出てフィルタ20に流れ込む。通気孔32から流れ出た空気がフィルタ20を通過する際に、空気の流れが少し拡散される。また、フィルタ20を通過することによって空気からパーティクルが捕集されて除去される。その結果、フィルタ20から下方に向けて清浄な空気が均一に流れ出ることとなる。
【0043】
バッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧であるため、通気孔32から流出する空気は下方へと向かう((-Z)向きの)大きな速度成分を有している。通気孔32から流出した空気がフィルタ20を通過することによって、その空気が有する下方へと向かう速度成分は少し小さくなるものの、ある程度の大きさの下方へと向かう速度成分は維持される。このため、フィルタ20からは下方に向けて清浄な空気が放出されることとなる。むしろ、フィルタ20によって空気の流れが拡散されることによって、フィルタ20の下面全面から均一に空気が流れ出ることとなる。
【0044】
フィルタ20から下方に向けて清浄な空気が均一に流れ出ることにより、基板搬送装置60の筐体61内に清浄空気のダウンフローが形成される。これにより、洗浄処理後の基板Gが清浄な雰囲気中にて搬送される。
【0045】
基板搬送装置60から搬出された基板Gは、基板加熱装置に搬入されてデハイドベークが施された後、基板搬送装置60の上方に設置された基板冷却装置70に搬入される。基板冷却装置70の筐体71にも気体供給ユニット10が設けられている。気体供給ユニット10は、上述と同様にして清浄な空気を放出することにより、筐体71内に清浄空気のダウンフローを形成する。これにより、基板Gが清浄な雰囲気中にて冷却処理されることとなる。
【0046】
本実施形態においては、ブロワ85から送り出された空気が導入口17を経てバッファ空間15に供給される。導入口17からバッファ空間15にはフィルタ20と平行に空気が導入される。すなわち、気体供給ユニット10には、従来のファンフィルタユニットのようにファンが組み込まれておらず、分離設置されたブロワ85から空気が供給される。そして、その空気は導入口17からフィルタ20と平行にバッファ空間15に導入される。これにより、気体供給ユニット10の厚さを従来のファンフィルタユニットに比較して顕著に薄くすることができる。
【0047】
気体供給ユニット10の厚さが薄いため、従来のファンフィルタユニットは装置天井部から上方に突出して設けられていたところ、気体供給ユニット10は基板搬送装置60の筐体61および基板冷却装置70の筐体71の内側に収容することができる。このため、基板搬送装置60および基板冷却装置70の高さが増大するのを抑制することができる。例えば、従来のファンフィルタユニットを組み込んだ基板処理装置では高さが約800mmとなっていたのであるが、本実施形態では、気体供給ユニット10を備えた基板搬送装置60および基板冷却装置70の高さを500mmとすることができる。下部フレーム80の高さが800mmであるため、積層構造体1の全高は2800mmとなる。全高が2800mmであれば、積層構造体1を分解することなく一体のものとして輸送することが可能となる。その結果、輸送コストを低減できるとともに、輸送に伴う二酸化炭素の排出量も抑制することができる。
【0048】
また、単にブロワ85を気体供給ユニット10から分離設置してバッファボックス12の側方から空気を送給しただけでは、気体供給ユニット10の厚さは薄く出来るものの、フィルタ20から流れ出る空気流が偏向するおそれがある。例えば、図6のように、バッファボックス12内に(+Y)向きに空気を供給したときには、フィルタ20を通過した空気にも(+Y)向きの速度成分が残り、フィルタ20から流れ出る空気流も(+Y)向きに偏向するおそれがある。
【0049】
このため、本実施形態においては、複数の通気孔32が穿設された整流板30を設けている。一定の通気抵抗を有する整流板30を設けることにより、バッファ空間15に流れ込んだ空気は、直ぐにフィルタ20を通過するのではなく、一旦整流板30にせき止められてバッファ空間15に貯留され、バッファ空間15内の気圧が上昇する。これにより、空気流の(+Y)向きの速度成分を消滅させている。そして、バッファ空間15内の気圧が上昇してバッファ空間15がバッファボックス12の外部よりも陽圧となることにより、整流板30の通気孔32から鉛直方向下方に向けて空気中が噴出され、フィルタ20からも鉛直方向下方に向けて空気が流れ出ることとなる。すなわち、導入口17からバッファ空間15にフィルタ20と平行に導入された空気を一旦バッファ空間15に貯留することにより、空気流の(+Y)向きの速度成分を消滅させてフィルタ20から流れ出る空気流の偏向を防止しているのである。
【0050】
また、本実施形態においては、バッファ空間15とフィルタ20との間に整流板30を配置している。仮に、フィルタ20の下側に整流板30を配置(バッファ空間15と整流板30との間にフィルタ20を挟み込む)したとしても、通気孔32から下向きに空気を吐出して空気流の偏向を防止することはできる。しかしながら、このようにすると、通気孔32が穿設されている位置における空気流の流れが強くなり、整流板30からシャワー状に空気流が流れ出て均一性が損なわれる。さらに、ステンレススチールの整流板30に穿設された通気孔32からは加工にともなうパーティクルが放出されることがあり、そのパーティクルがそのまま空気流とともに基板Gに吹き付けられるおそれもある。
【0051】
本実施形態においては、バッファ空間15とフィルタ20との間に整流板30を配置しているため、バッファ空間15に貯留された空気は、整流板30の通気孔32からフィルタ20の順に通過する。従って、通気孔32から吐出された空気の流れはフィルタ20によって少し拡散され、その結果としてフィルタ20から下方に向けて清浄な空気が均一に流れ出ることとなる。また、通気孔32から加工にともなうパーティクルが放出されたとしても、そのパーティクルはフィルタ20によって捕集されて除去されることとなるため、基板Gにパーティクルを含む空気流が吹き付けられることは防止される。
【0052】
また、本実施形態においては、気体供給ユニット10を基板搬送装置60および基板冷却装置70に設けて筐体61,71内にダウンフローを形成することにより、筐体61,71内を外部に対して陽圧に維持している。従来の基板処理装置では筐体から排気を行うことによって雰囲気を調整していたのであるが、この場合筐体内が負圧となって外部からパーティクルが流入するおそれがある。本実施形態では、気体供給ユニット10によって基板搬送装置60の筐体61および基板冷却装置70の筐体71の内部を陽圧に維持しているため、それら筐体61および筐体71の内部に外部からパーティクルが流入するのを防止することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、整流板30を複数の通気孔32が穿設されたパンチング板としていたが、これに限定されるものではなく、整流板30は一定の通気抵抗を有するものであれば良い。例えば、図8に示すように、整流板30をステンレス板に複数のスリット36を設けたスリット格子としても良い。一定の通気抵抗を有する整流板30であれば、導入口17からバッファ空間15に流れ込んだ空気を一旦せき止めることができ、空気流の(+Y)向きの速度成分を消滅させて上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、基板冷却装置70の筐体71の天井部に気体供給ユニット10を設けていたが、これに代えて、筐体71の側方に気体供給ユニット10を設けるようにしても良い。図9は、基板冷却装置70の他の構成例を示す図である。図9の例では、筐体71内にクーリングプレート72が設けられ、筐体71の内側であってクーリングプレート72の側方に気体供給ユニット10が設けられる。気体供給ユニット10の構成は上記実施形態と同じである。気体供給ユニット10は、クーリングプレート72の側方から筐体71内に水平方向に流れる空気流(サイドフロー)を形成する。これにより、上記実施形態と同様に、基板Gを清浄な雰囲気中にて冷却することができるとともに、筐体71内を陽圧にして筐体71の内部に外部からパーティクルが流入するのを防止することができる。
【0055】
また、気体供給ユニット10において、フィルタ20自体が十分な通気抵抗を有するのであれば、整流板30は必須の要素ではない。フィルタ20自体が十分な通気抵抗を有していれば、整流板30が存在していなかったとしても、導入口17からバッファ空間15に流れ込んだ空気を一旦せき止めてバッファ空間15をバッファボックス12の外部よりも陽圧とすることができる。これにより、上記実施形態と同様に、フィルタ20から流れ出る空気流の偏向を防止することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態においては、下部フレーム80に設けられたブロワ85から気体供給ユニット10に空気を送給するようにしていたが、これに代えて、例えば積層構造体1が設置される工場のユーティリティから気体供給ユニット10に空気を送るようにしても良い。要するに、気体供給ユニット10とは分離して設けられた送風源から空気を送るようにすれば良い。
【0057】
また、上記実施形態の気体供給ユニット10は、洗浄処理装置、塗布処理装置または現像処理装置などの他の基板処理装置に設けるようにしても良い。すなわち、基板に所定の処理を行う処理部を囲む筐体に気体供給ユニット10を設けるようにすれば良い。これにより、基板Gを清浄な雰囲気中にて処理することができるとともに、筐体内にパーティクルが流入するのを防止することができる。
【0058】
さらに、処理対象となる基板Gは半導体ウェハーであっても良い。すなわち、半導体製造装置に上記実施形態の気体供給ユニット10を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 積層構造体
10 気体供給ユニット
12 バッファボックス
15 バッファ空間
17 導入口
20 フィルタ
30 整流板
32 通気孔
60 基板搬送装置
61,71 筐体
62 搬送ローラ
70 基板冷却装置
72 クーリングプレート
80 下部フレーム
85 ブロワ
G 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9