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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】基板の保護
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240710BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H05K3/28 B
C23C16/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022165104
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020197697の分割
【原出願日】2016-04-12
(65)【公開番号】P2022191403
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-10-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】プダス マルコ
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/051341(WO,A1)
【文献】Jianchao ZHENG, 他,Solid-state Reaction Studies in Al2O3TiO2 System by Diffusion Couple Method,ISIJ International,日本,日本鉄鋼協会,2017年,Vol. 57, No. 10,1762-1766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
C23C 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALDにより堆積されたスタックに被覆された基板であって、前記スタックが、
・ 第1の層と;
・ 少なくとも1つの有機層又はシリコーンポリマー含有層からなる複数の副層を含む第2の層と;
・ 第3の層と;
を備え、
前記第3の層は最上層であり、
前記最上層はNb を含むバリア層である、
基板。
【請求項2】
ALDにより堆積されたスタックに被覆された基板であって、前記スタックが、
・ 第1の層と;
・ 少なくとも1つの有機層又はシリコーンポリマー含有層からなる複数の副層を含む第2の層と;
・ 第3の層と;
を備え、前記第3の層はNbを含む、基板。
【請求項3】
前記第1の層はAl層である、請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
前記第2の層は副層Iと副層IIと副層IIIとを有し、これら3つの副層はそれぞれ個別に電気的絶縁材を有する、請求項1から3のいずれかに記載の基板。
【請求項5】
前記副層IIは前記有機層又は前記シリコーンポリマー含有層である、請求項4に記載の基板。
【請求項6】
前記副層IIは架橋層である、請求項4又は5に記載の基板。
【請求項7】
前記第2の層は、Al、TiO、Ta、ZrO、SiO、Nb、WO、HfOから選択される複数の副層の繰り返しスタックの積層体である、請求項4に記載の基板。
【請求項8】
前記繰り返しスタックはAl層とTiO層のスタックである、請求項7に記載の基板。
【請求項9】
前記副層IIIは、前記有機層又は前記シリコーンポリマー含有層の複数の分子層を有する、請求項4から8のいずれかに記載の基板。
【請求項10】
Sn又はAgを含む、請求項1から9のいずれかに記載の基板。
【請求項11】
前記第1の層と前記第3の層は同じ材料からなる、請求項1,請求項2,及び請求項4から10のうち請求項3を直接にも間接にも引用しない請求項のいずれかに記載の基板。
【請求項12】
プリント回路基板である、請求項1から11のいずれかに記載の基板。
【請求項13】
被覆された基板を製造する方法であって、基板を被覆するステップを含み、前記被覆するステップは、
原子層堆積反応炉システムを準備することと;
前記原子層堆積反応炉システムの反応室内に前記基板をセットすることと;
クリーニングによって前記基板を前処理することと;
前記基板上に、スタックを有する被膜を堆積することと;
を含み、前記スタックは、
・ 第1の層と;
・ 少なくとも1つの有機層又はシリコーンポリマー含有層からなる複数の副層を含む第2の層と;
・ 第3の層と;
を備え、前記第3の層はNb を含むバリア層である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、基板表面に材料を堆積する原子層堆積技術に関する。
【背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を示すが、ここで説明するいずれの技術も最新技術の代表例であると認めるものではない。
【0003】
原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)は、反応空間内にある少なくとも1つの基板に少なくとも2つの反応性前駆体種を順次導入することによる、特殊な化学的堆積法である。プラズマ促進ALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition:PEALD)は、一つのALD法であり、基板表面に付加された反応性をプラズマ生成された種の形態で提供する。さらに、関連方法として、原子層エッチング(Atomic Layer Etching:ALE)、すなわち、逆ALDが挙げられ、この方法においては、前述した特殊な化学作用を利用して、できる限り特定の、一層の原子層または分子層を共形的に除去する。さらに、ALDの下位分類には、分子層堆積(Molecular Layer Deposition:MLD)があり、これは、一度に1層当たり2つ以上の原子を堆積する方法であり、有機材料を用いる場合が多い。この有機材料については、「Organic and inorganic-organic thin film structures by molecular layer deposition」(分子層堆積による有機および無機-有機薄膜構造)(Beilstein J.Nanotechnol、2014年、5、1104頁~1136頁、査読:Pia SundbergおよびMaarit Karppinen)に記載されている。
【0004】
ALD法において、他のクリーニング工程から、または清浄な基板ボックスから、クリーンルーム内のALDツールへ基板を移送する際には、基板は通常クリーニングされていない。一般に用いられるシリコンウエハ基板を、不活性ガス流中で、温度300℃まで加熱することによって、空気または雰囲気から吸収された分子層を、通常、緩和する。一方、通常リフローまたは手動はんだ付けステップにより、ALD堆積に弊害をもたらす微量のフラックスが残る。さらに、例えば、プリント回路基板(Printed Circuit Board:PCB)では、そのような高温をシリコンウエハに施すことができず、別のクリーニングが必要となる。
【0005】
金属ウィスカの形成は、特に金属および合金、例えば、スズおよびスズ合金、カドミウムおよびカドミウム合金、ならびに亜鉛および亜鉛合金等に生じる問題である。金属ウィスカは、その表面に金属スパイクまたは他の凹凸を含み、これによって、表面積が増加し、RF回線および成分のRF性能が変化した結果、短絡、腐食、腐食の誘引、好ましくない粒子の堆積の増加が引き起こされうる。一方、腐食が、ウィスカの性質がもたらす重大なファクターと一般に考えられている。金属ウィスカの形成は、例えば、はんだペーストのリフローとしても知られるプリント回路板(PCB)のはんだ付け工程において、電子部品または基板の電気めっき時に始まり、その後、PCBの保管または使用の状況とは関係なく、長年にもわたって問題を引き起こす。
【0006】
金属ウィスカの形成の問題は、電子回路類の場合に重大なものとなるが、また、例えば、電子機器類に用いられる部品、および、電気めっきした金属で作製されることが多い電子機器類のケーシングにも関わる。
【0007】
以前は、特にスズウィスカについては、その合金中に鉛を添加することによって、その形成が著しく軽減した。しかし、鉛には毒性があるため、スズウィスカの形成を低減または根本的に防止し、できる限り腐食保護を高めるための新しい方法が必要である。特に、PCBおよび電子部品に長繊維状のスズウィスカが形成されると、問題が生じるため、その形成を防止する必要がある。
【0008】
文献には、スズウィスカの形成に影響を及ぼすものとして、様々な要因が記載されている。これらの要因には、表面張力、温度、湿度、電位、静電荷、ならびに構造の欠陥、酸化被膜、粒子境界、イオン汚染、局部応力、および応力勾配に起因する、欠陥のある金属表面が含まれる。これらの詳細については、最近の出版物である、Diana ShvydkaおよびV. G. Karpov.著「Surface parameters determining a metal propensity for whiskers」(ウィスカの金属傾向を決定する表面パラメータ)(Journal of Applied Physics 119、085301、2016)に記載されているものもある。
【摘要】
【0009】
本発明の第1の態様によると、次の方法が提供される。この方法は、
基板を用意することと、
クリーニングによって前記基板を前処理することと、
予熱と排気のうち少なくとも一方を行うことによって前記基板を前処理することと、
原子層堆積(ALD)による少なくとも第1層(100)の堆積を含むスタックを堆積することと、
を含む。
【0010】
本発明の第2の態様によると、金属ウィスカの形成と、エレクトロマイグレーションと、腐食のうち少なくとも1つから基板を保護するための、第1の態様による方法の使用が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によると、ALD反応炉システム(700)が提供され、前記ALD反応炉システムは、前記ALD反応炉システムに第1の態様の方法を実行させる制御手段(702)を備える。
【0012】
一態様によると、第1の態様の方法を使用して堆積された基板を備える装置が提供される。
【0013】
以上、本発明を拘束しない様々な例示的態様および実施形態を示してきた。上述した各実施形態は、本発明の実装に利用されうる選択された態様またはステップを単に説明するために使用される。いくつかの実施形態は、本発明の特定の例示的態様への言及によってのみ提示されている場合もある。対応する実施形態は他の例示的態様にも適用できることが理解されるべきである。これら実施形態は、任意かつ適切に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、添付図面を参照して単なる例として本発明を説明する。
図1図1は、一例示的実施形態による方法のフローチャートである。
図2図2は、本発明を用いて堆積された基板に堆積されたスタックの実施形態の概略図である。
図3図3は、一例示的実施形態によるALD反応炉システムを示す。
図4図4Aおよび図4Bはそれぞれ、SEM画像であり、第1の態様の方法を用いて被覆したスズ銀サンプル(図4A)基板上では、被覆されていない対照サンプル(図4B)と比較して、長繊維状ウィスカの形成が軽減していることを示している。図4Bに示す被覆されていない基板には、数十μm長の長繊維状ウィスカが形成されている。図4Aの目盛りは10μmであり、図4Bの目盛りは20μmである。
【詳細説明】
【0015】
一実施形態において、前記堆積ステップは、少なくとも1つの還元化学物質を用いて開始する第1パルスを含む。
【0016】
一実施形態において、前記堆積ステップは、少なくとも1つの酸化化学物質を用いて開始する第1パルスを含む。
【0017】
一実施形態において、前記堆積ステップは、1種または複数種の前記還元化学物質の複数のパルスからなる第1パルスであって、前記複数のパルス間に不活性ガスのパルスを伴う第1パルスと含む。
【0018】
一実施形態において、前記金属は、亜鉛、亜鉛合金、スズ、スズ合金、カドミウム、カドミウム合金、銀、または銀合金を含む。
【0019】
一実施形態において、前記基板は、プリント回路板(PCB)を備える、またはPCBである。前記基板は、アセンブルPCBまたは部品を備えたPCBアセンブリとして一般に知られているが、本明細書ではPCBと称する。なお、前記方法は、半製品、例えば、PCB、はんだペーストを含むPCB、または、リフローはんだ、電子機器アセンブリ、もしくは部分アセンブリを含むPCB等に適用可能である。さらなる実施形態において、前記基板は、部品、部品ハウジング、金属パッケージ、または金属ハウジングである。さらに、修理または再加工の後で、本明細書に記載するALD被覆を実施することもできる。一実施形態において、上記および下記の堆積方法は、電子製品の製造フェーズを構成する。
【0020】
さらに、PCBの電子機器または電子機器アセンブリの一部として用いることができる部品は、金属ウィスカを形成しうる、金属化被膜または金属パッケージを含みうる。そのような被覆方法として、一般に知られている「浸漬スズ」等が挙げられる。本方法は、そのような基板にも同様に適用される。
【0021】
一実施形態において、前記方法を、PCBを備える、電子部品および電子回路等の基板を保護するために用いる。前記方法、およびその使用は、質および耐環境性が特に重要である分野での適用、例えば、宇宙、医薬、産業、自動車、および軍事分野での使用を意図した電子機器類において、特に有用である。
【0022】
一実施形態において、第1層(100)は、少なくとも1つのALD層を含む。第1層は基板10に接着するようにしてもよい。一実施形態において、接着が最適である。
【0023】
一実施形態において、前記スタックは、原子層堆積(ALD)による第2層(200)の堆積をさらに含む。
【0024】
一実施形態において、第2層(200)は、多くの副層を含む。一実施形態において、少なくとも1つの副層は、弾性層である。
【0025】
一実施形態において、第2層(200)は、少なくとも1つの弾性層からなる。
【0026】
一実施形態において、第2層(200)は、少なくとも1つの有機層、またはシリコーンポリマーを含む層からなる。
【0027】
一例として、層200は、n(I+II)で表され、式中、n≧1であり、Iは、TMA+HO等、少なくとも2種の化学物質で構成され、IIは、化学物質の他の組み合わせであって、その化学物質のうち少なくとも1種は層Iに含まれる化学物質とは異なる。さらに、例えば、n(I+II+III)、n(I+II)+m(III+IV)、またはx{n(I+II)+m(III+IV)}で表され、式中、m≧1である、他の組み合わせであってもよい。I、II、III、およびIVの各々は、2種の化学物質で構成され、該化学物質のうち少なくとも1種は、互いに異なっており、また、IおよびIIに用いられる化学物質と異なっていてもよい。
【0028】
一実施形態において、前記スタックは、原子層堆積(ALD)による第3層(300)の堆積をさらに含む。
【0029】
一実施形態において、第3層(300)は最上層である。
【0030】
一実施形態において、クリーニングによる前記基板の前処理は、水洗によるクリーニングを含む。
【0031】
一実施形態において、クリーニングによる前記基板の前処理は、溶剤を用いるクリーニングを含む。
【0032】
一実施形態において、クリーニングによる前記基板の前処理は、送風によるクリーニング、または1種もしくは複数種のガス等、液体ではない流動体を用いるクリーニングを含む。
【0033】
一実施形態において、予熱による前記基板の前処理は、反応温度より高い温度に熱したガスのパルスで予熱することを含む。
【0034】
一実施形態において、副層I、II、およびIIIのいずれかは、独立して、電気絶縁材料を含む。
【0035】
一実施形態において、層IIは有機層である。
【0036】
一実施形態において、層IIは、有機層、またはシリコーンポリマーを含む層である。
【0037】
一実施形態において、層IIIは、有機層、またはシリコーンポリマーを含む層である。
【0038】
一実施形態において、層I、II、III、およびIVのうち少なくとも1つは、雰囲気に反応する化学物質を含む。
【0039】
一実施形態において、層I、II、およびIIIのうち少なくとも1つは、硬質層である。
【0040】
特定の実施形態において、層I、II、III、IV、およびIVのいずれかは、独立して、ALD層、電気絶縁層、酸化物、カーバイド、金属カーバイド、金属、フッ化物、および窒化物から選択され、分子層堆積(MLD)によって堆積された分子層を含む。
【0041】
一実施形態において、層IIは、効果的に一度に複数の原子を堆積するMLDによって堆積された層であり、例えば、アルコンまたはチタニコン等の有機層、または、様々に異なる原子、例えば炭素原子や窒素原子やケイ素原子や酸素原子を含む層である。さらなる実施形態において、この層は、ポリマー鎖または架橋を形成し、これによって一般に知られている機械強度または形成が可能となる。そのような架橋ポリマー構造として、例えば、脂肪族ポリ尿素、DEZとTiClとを備えたヘキサ-2,4-ジイン-1,6-ジオール、および-(SiR-O)nで表されるシリコーンポリマーが知られている。一実施形態において、重合の効果として、ALD反応炉、真空クラスター、またはアセンブリの外部においてUV重合を介して組み合わせた効果が挙げられる。
【0042】
一実施形態において、層IIは、有機層、またはシリコーンポリマー鎖を含む層である。層IIは、耐亀裂性を有し、その堆積層を変形することできることが好ましい。一実施形態において、層IIは架橋層である。別の実施形態において、層IIは、単独層であるか、または複数の分子層からなる。したがって、層IIの複数の層を堆積させて、全体スタックとして弾性挙動を示す厚みのある積層体としてもよい。そのような層は、特に遊離には、例えば、第1層もしくはスタックに形成された食丘またはそれに類似した小さな形成物が原因となって引き起こされる亀裂に対する耐性を有し、これにより耐腐食性を維持する点が特に有利である。
【0043】
一実施形態において、前記スタックの厚さは、1nm~2,000nm、好ましくは50nm~500nm、最も好ましくは100nm~200nmである。
【0044】
一実施形態において、前記方法は、前管路排出流量を変更、停止、または制限することをさらに含む。一実施形態において、前述の変更、停止、または制限を、化学パルスと同期させる。
【0045】
一実施形態において、前記方法は、さらなる被覆方法により前記スタックの最上面にさらなる被膜を設けることをさらに含む。
【0046】
一実施形態において、さらなる前記被膜は、ポリマーまたはシリコーンポリマー、例えばラッカーを含む。
【0047】
一実施形態において、さらなる前記被覆は、例えば、前記基板に対して、ラッカー等を設けること、または浸漬被覆することを含む。
【0048】
一実施形態において、さらなる前記被覆は、噴霧、ブラッシング、または浸漬被覆等の従来の手段によって、従来の有機またはシリコーンポリマー被膜を設けることを含む。
【0049】
さらなる実施形態において、層IIに加えて、またはその代わりに、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブネット、またはグラフェンネットワークを含む層をスタックに設ける。一実施形態において、そのような層の、全ての面を、Al等の電気絶縁材料の層で被覆する。さらに別の実施形態において、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブネットは、電気絶縁性を有するように構成される。
【0050】
一実施形態において、前記方法は、第2層(200)の代わりに、またはこれに加えて、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブネット、またはグラフェンネットワークを含む少なくとも1つの副層を含む層を堆積することをさらに含む。
【0051】
一実施形態において、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブネット、またはグラフェンネットワークを含む前記副層は、電気絶縁材料で被覆されている。
【0052】
一実施形態において、層300は、加水分解、例えば、ウエハまたは水分による加水分解を防ぐ最上層である。一実施形態において、層300はバリア層である。さらなる実施形態において、層300は、Nbを含む。さらに別の実施形態において、層300は、TiO等の耐加水分解性を有するさらなる材料、または、例えばフッ素ポリマーを含むMLD層等の有機層を含む。一実施形態において、前記最上層の厚さは、一原子層の厚さ~20nm、または1nm~20nmの範囲である。
【0053】
一実施形態において、層300は、前記ALD工程後に施された被膜に化学的に接着するようにした最上層である。
【0054】
一実施形態において、層Iや層IIや層IIIの代わりに、またはこれらの層に加えて、前記スタックは、硬質層を含む。一実施形態において、前記硬質層は、金属酸化物の層を含む。さらなる実施形態において、前記硬質層は、単一または繰り返しスタックにおいて、Al、TiO、Ta、ZrO、SiO、Nb、WO、HfO、またはこれらの組み合わせから選択される。前記硬質層は、Al/TiO繰り返しスタック等の繰り返しスタック、すなわち積層体であることが好ましい。
【0055】
一実施形態において、100または200の堆積層である層I、II、およびIIIのうち少なくとも1つは、その構造内に過剰分配物として意図的に残される反応性化学物質を含む。または、酸化物材料を低減して酸素比を低減してもよい。前記反応性化学物質を、少なくとも部分的に自己回復する層に付与する。一実施形態において、前記反応性化学物質は、周囲空気または水分に反応する化学物質から選択される。一実施形態において、前記反応性化学物質は、例えば、TMA、還元マグネシウム、または還元チタンを含む。
【0056】
一実施形態において、少なくとも1つの層は、雰囲気に反応する少なくとも1つの反応性化学物質を含む。
【0057】
一実施形態において、層I、II、およびIIIの少なくとも1つは、硬質層である。
【0058】
一実施形態において、前記基板はスズを含む。スズを含む基板への堆積は、スズウィスカの形成を少なくとも部分的に防止することができるので、特に有利である。さらに、一実施形態において、前記基板は銀を含み、ハイブリッド電子機器に一般に適用され、また、発生し易いエレクトロマイグレーションの防止とあいまって、スズウィスカ形成から保護されるという恩恵を受ける。
【0059】
一実施形態において、前記方法は、例えば、異なる材料からなる層の間、またはPCB上の部品下にある欠陥もしくは空孔を埋めるために、高アスペクト比(high aspect ratio:HAR)の孔被覆としてのALD被覆を行うことを含む。これは、ポリマー外装、または、PCBの異なる材料間の境界面、例えば、該PCBの構造に用いられる金属と他の材料の間の境界面の堆積にとって好ましい。一実施形態において、高アスペクト比の堆積を、最大堆積温度より低い温度で実施する。これは、熱膨張によって、より高温でふさがる被膜孔にとって好ましい。
【0060】
一実施形態において、前管路流量を既知の方法によって変更するか、または、停止フロー、もしくはピコフローとして知られる制限フローを用いて、空孔において著しく高いアスペクト比被覆の被膜および高い均一性を有する被膜を可能にする。
【0061】
一実施形態において、特定のポリマーを含む基板であって、反応性化学物質または該基板の金属もしくは配位子を吸収しうる基板上に堆積する際には、全体工程として、または工程の開始時に、低温工程を適用できる。すなわち、50℃以下の温度を適用して、高温用拡散バリアを堆積し、これにより、より迅速に堆積を実施する。
【0062】
一実施形態において、堆積された前記スタックの総厚は、基板に、機械特性、化学特性、および電気絶縁特性を付与するのに十分な厚さである。一実施形態において、スタック高は、1nm~2000nm、好ましくは50nm~500nm、最も好ましくは100nm~200nmである。一実施形態において、前記工程は、基板の予熱およびクリーニングと、その後の、ALDによって共形的に少なくとも1つの原子層または分子層を堆積することを含む。
【0063】
一実施形態において、前記堆積の工程温度は、基板が耐えうる最高温度に対応するように選択される。一実施形態において、前記工程温度は、前記最高温度ではなく、そのような最高温度より低い温度である。宇宙用途のPCBの場合、前記工程温度は125℃であってもよい。別の実施形態において、前記工程温度は、選択された圧力における水の沸点より高く、これにより表面での吸収および濃縮を防止する。
【0064】
一実施形態において、前記基板はPCBであり、前記方法は、リフローとしても知られる、はんだ溶融温度より高い温度でのはんだ付けステップを含む。これは、はんだ内に気泡がない構造を提供する、または真空でPCBを製造する上で有利である。
【0065】
一実施形態において、前記工程温度は、はんだ付け温度未満であるが、ALD法を利用することで、はんだ粒子または球体が互いに付着するという、はんだ付け効果が生じる。これは、さらに、基板および部品への接着に適用してもよい。また、ALD法は、はんだを介して最終的に接着させるのには不十分でありうるが、ALD法実施後に、はんだ付けステップをALDツール内またはALDツール外において実施する。
【0066】
一実施形態において、堆積前に前記基板を部分的にマスキングし、堆積されたスタックに開口部を設ける。
【0067】
一実施形態において、所望の厚さを有するスタックを、前記基板上に直接堆積してもよい。スタック層を、同じALD反応炉またはさらに別のALD反応炉で堆積する。
【0068】
前記スタックの堆積工程が、製品の製造ステップを構成してもよく、または生産ラインの一部に組み込まれてもよい。
【0069】
図1は、本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。ステップ1において、堆積のための基板を用意する。基板としては、上記および下記の基板が挙げられる。ステップ2において、基板をALD反応炉に挿入もしくは装填する前、または基板をALD反応炉に挿入した後に、水洗、クリーニング、または予熱等の前処理を基板に施す。
【0070】
PEALD法およびALD法はともに、PEALD化学物質のプラズマ、またはALD法において適用可能な1種もしくは複数種の気体化学物質を用いて、被覆前に基板表面をクリーニングするのに適用することができる。
【0071】
一実施形態において、サンプルの前処理は、ALD反応炉へサンプルを挿入する前に、サンプルをクリーニングするための様々なステップ、例えば、溶剤による洗い流しまたは送風が含まれる。一実施形態において、クリーニングに使用する流動体は、例えば、イオン汚染や塵等の浮遊粒子を除去するため等、クリーニングの目的に応じて選択される。
【0072】
ALD反応炉でのクリーニングに加えて、さらに表面をクリーニングする方法として、硬質なルイス酸または硬質なルイス塩基によるクリーニングが挙げられる。一実施形態において、クリーニングとして、例えば、NH、HMDS、H、O、O、TMAを用いるクリーニングが挙げられる。さらなる実施形態において、PEALDを利用して前記クリーニングを実施する。このPEALDのプラズマにより、さらにより効果的なクリーニングが可能となる。
【0073】
一実施形態において、前記クリーニングは、加熱したH、O、またはOを使用することを含む。
【0074】
さらに、一実施形態において、特にALD法において、Hまたは気相で同様の効果を発揮する化学物質、例えば、報告によると、2-メチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-2,5-シクロヘキサジエンまたは1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン等を用いて、還元クリーニングを実施する。
【0075】
このように、一実施形態において、表面を安定させ、安定化後に還元ガスパルスを提供する工程によってクリーニングを遂行し、前記パルスは、例えば、H、H含有プラズマ、SO、またはAl(CHを含む。本明細書において、これを開始パルスと称する。開始パルスは、実質的には、安定化後に反応室内に放出した反応性材料の第1パルスである。さらに、効果を高めるために、還元化学パルスが、少なくとも0.01秒差の遅れで少なくとも1回という間隔で、互いに追従することが好ましい。ALD期間に材料を増加するための生成表面での化学反応を追加する前に、還元化学パルスを、パルス間5秒の遅れで、少なくとも5回繰り返すことがより好ましい。
【0076】
一実施形態において、前記クリーニングは、原子層エッチング(Atomic Layer Etching:ALE)パルスを含む。一実施形態において、ALEを、クリーニングの代替法として、またはクリーニングに加えて使用し、表面から、好ましくは特定の分子組成を有する結晶境界から、不純物をエッチングにより除去する。ALE法では、表面から、逆ALDとして少なくとも2つのステップのサイクル中に、できる限り選択的に、できうる限り所望の化学物質のみを除去する。
【0077】
一実施形態において、サンプルをALD反応炉に挿入した後、さらなる前処理ステップ、例えば「現場」クリーニングステップを実施する。一実施形態において、前処理は、低温燃焼、例えば125℃等の低温でのO、O、またはHの燃焼による表面クリーニング、または反応炉空間の温度よりも高温のガスを用いて行う表面クリーニングを含む。一実施形態において、前処理は、不活性ガスまたは化学ガスを用いて、圧力および温度を変化させながら実施する洗浄を含む。一実施形態において、加熱したガスパルスに表面を曝露する、すなわち「燃焼」させるか、酸化もしくは還元させるか、または化学反応を最上面で引き起こす。
【0078】
加熱したガスを用いて、表面材料、すなわち、その高温に長時間曝露されるのに耐えうるだけのμmまたはnmの範囲の厚さを有する最上層に対して熱処理を施す。また、加熱したガスパルスを用いて、表面のみに熱処理を施すことは可能であり、これは、感熱性基板を使用する場合に好ましい。加えて、一実施形態において、このように部品を破損または分離せずに、はんだの外層を再溶融する。その結果、焼きなましの効果が得られ、これにより、鋼の製造ステップと類似の方法で、同種の結晶に影響を及ぼすことができる。一実施形態において、基板全体の温度上昇は、金属が実際に溶融する温度より低い。
【0079】
一実施形態において、前記熱パルスは、0.01秒~100秒等の特定時間、熱パルスを提供することによって実施され、前記特定時間は、使用するガス、反応室の温度、使用するガス流量、および他のガス流量に依存する。さらに別の実施形態において、例えば最高1000℃の高温までガスを加熱する加熱ガス導入口を用いて、熱パルスガスの温度を上昇させる。一実施形態において、パルス質量流量は、その時に反応炉に流入する1つまたは複数の他のガス流よりも少ない、例えば0.1sccm~50sccm、前記ガス流と同じ、例えば20sccm~500sccm、または、前記ガス流よりも著しく多い、例えば200sccm~20000sccmである。一実施形態において、そのような異なる温度のガス流量を、別々に、または組み合わせて用いて、被覆した材料を均等に冷却し、それによって、被覆した材料を、別々に、または組み合わせて、その表面の冶金改造を行うことができる。このことは、鋼の加工において一般的に知られているが、嵩については、使用する金属に依存する。その結果、同様の焼きなましの効果が得られ、これにより、鋼の製造ステップのような方法で、同種の結晶に影響を及ぼすことができる。
【0080】
さらに、一実施形態において、被覆した基板の温度を決定するために配した1つ以上の光学または接触センサにより、反応炉を具現化する。
【0081】
さらに別の実施形態において、ALD反応炉で排気することによって前処理を行う。さらなる実施形態において、排気ステップは、表面の焼きなましを引き起こすために、窒素等の不活性ガスの雰囲気中での加熱を伴う。
【0082】
一実施形態において、堆積ステップでは、上記および下記の通り、ALDによってスタックを基板上に堆積する。
【0083】
さらに、一実施形態において、用途によっては、設けたALD層を、例えば機械的耐久性を高めるために、ラッカーを用いた被覆等、さらなる被覆方法で被覆する。さらに、ALD層によって、浸漬被覆工程によるさらなる被覆が可能となる。その被覆がなければ、例えば使用する溶剤が原因でPCB構造に害が及びうる。このように、ALD層は、新しい工程の適用も可能にする。さらなる被覆を施さない場合、他の被覆に対するALDのみの利益は、ALD層は共形的に通常厚さ100nm以下であり、被覆物の質量または寸法に著しい増加がないことである。
【0084】
図2は、本発明の方法を用いて堆積した基板に堆積されたスタックの実施形態の概略図である。基板10に、層100、200、および300を積み重ねて堆積している。層100は、基板との境界面にあり、ここでは、Al等、1種の材料が堆積されていることを示す。層200は、単独層、または例えば、層I、II、II、III、およびIV、またはこれらの組み合わせからなる、副層からなり、これらの層の少なくとも1つは、弾性を有するか、または炭素架橋鎖、有機材料、またはシリコーンポリマーを含む。一実施形態において、層200は、少なくとも1つの副層I、II、III、およびIVの、任意の数の組み合わせまたは繰り返しからなる。
【0085】
層300は、表面層であり、加水分解等の表面化学反応から保護する機能を有する。前記層の代わりに、あるいはこれに加えて、ALD工程後に添加される、ラッカー等の、できれば有機物の層に化学接着するようにした化学物質を含んでいてもよい。
【0086】
図2は、本発明の方法を用いて堆積した基板上に堆積されたスタックの実施形態の概略図である。基板10に、層100、200、および300を積み重ねて堆積している。図の左側に、第1層の様々な実施形態を示す。層200-Iは、層200の一実施形態であり、層Iの一層のみが表面に堆積されている実施形態が示されている。層200-I-IIは、層200の一実施形態であり、上述したように層200が副層210および220に各々対応する層IおよびIIによって形成されている実施形態が示されている。層200-I-II-IIIは、層200の一実施形態であり、上述したように、層200が副層210、220、および230に各々対応する層I、II、およびIIIによって形成されている実施形態が示されている。一実施形態において、構造200-I-IIおよび200-I-II-IIIでは、積層構造が、少なくとも2回(図2に図示せず)繰り返されている。
【0087】
基板がPCBであり、かつ、PCBまたはPCBを含む装置の製造工程中に前記方法を使用する場合、積層スタックを基板上に形成する。前記スタックによって基板は保護され、PCBにおけるスズウィスカの形成が防止されるため、品質、ならびに使用中の腐食および損傷に対する耐性が向上する。
【0088】
層100~300をALD反応炉で従来の方法により堆積させる。層100、200、および300は基板の最上面にALDによって堆積する。
【0089】
最小スタックの一例は、クリーニングを除き、
x(TMA+HO)と表され、式中、xは、使用温度で必要とされる層厚を生じるのに必要なサイクルの数を表し、例えば、125℃でx=1000である。上記式は、層Iを表す。
【0090】
スタックの別の一例は、
z{x(TMA+HO)+y(TMA+エチルグリコール)}と表され、式中、x、y、およびzの比率を調節して、必要な力学特性を修正することができ、x、y、およびzは、同じもしくは異なり、かつ/または1より大きい。上記式は、層IおよびIIを表す。層IIは、層Iとは異なっていてもよい。
【0091】
スタックの別の一例は、
z{x(TMA+HO)+y(TMA+エチルグリコール)}+n(Nb(OEt)+HO)と表され、式中、Nb含有層は、加水分解するのが非常に困難な層を形成する。上記式は、層II(a)、II(b)、およびIIIを表し、最初に堆積されるII(a)は層Iであると効果的である。
【0092】
説明すると、層200は、任意の数の副層II、例えば、
y(TMA+エチルグリコール)または積層したx(TMA+HO)+y(TMA+エチルグリコール)からなってもよい。
【0093】
スタックの別の一例は、TMA+HOから生じたAl層が、TiO等の酸化物に取って替わられ、例えば様々なAl+TiOの組み合わせとなっているスタックである。下記の構造体が形成されうる。式中、TiClはTiOの前駆体と見なされる。
(TMA+HO)→(TMA+HO)+(TiCl+HO)
または、
z{x(TMA+HO)+n(TiCl+HO)+y(TMA+Eエチルグリコール)+}+m(TMA+HO)のように表される任意の組み合わせであり、
式中、mおよびnは、同じもしくは異なっており、かつ/または1より大きい。
【0094】
他の例は、TMA+エチルグリコールであり、これは、加水が未反応のTMAと反応することを目的とした、TMA+エチルグリコール+HO(ABC型)に置換されるAB型として一般に知られる。層IIは、AB型またはABC型のいずれかを含みうる。
【0095】
図4Aおよび図4Bに示すように、本発明の第1の態様の実施形態による、積層したAlおよびアルコンから形成されたALD被膜は、雰囲気中に保管して6か月後に長繊維状のスズウィスカが成長するのを防止することができる。銅に2μm以下のSnCuを電気めっきすることによってサンプルを調製し、該サンプルが加速した速度でスズウィスカを自発的に形成するようにした。ALD被膜は、厚さ500nm以下であり、Al+19(Al+アルコン)+Alと表される。ALD被膜は、初期金属被覆の4日後に形成され、このとき、図の左側に示される形成物を既に目視できた。この構造は、100、200、および300からなるスタックであり、ここでは100と300は同じ材料である。
【0096】
さらなる実施形態において、誘電材料上ではなく、例えばはんだ等、意図した合金表面にのみ堆積を施すために、特殊な化学作用および方法を用いて、数カ所で、MLDおよびALEを含むALDのPCB上での成長を防止する。そのようにターゲットとなる堆積は、特定シランの自己集合単層等の材料を含む、ALD成長抑制剤として一般に知られている化学物質を利用して、例えば誘電体等、所望していない場所での成長を防止することによって可能となる。反応炉の内部または外部での、この抑制被覆の化学作用は、例えば、はんだを被覆しないように調整することができる。そのような特殊な被覆によって、例えば、できれば導電層の薄膜を備えたはんだ表面被膜の形成が可能となる。これは、はんだの表面張力を変更する場合において好まれることがある。したがって、表面の電気絶縁を妥協することなく、表面張力を変更することができる場合は、本明細書に記載されるパターニングを、マスキングまたはマーキングにより施す必要がない。
【0097】
図3は、一例示的実施形態によるALD反応炉システム700、すなわち、反応炉とその制御システムを示す。一実施形態において、ALD反応炉は反応室を備え、該反応室に、基板、例えば、PCB、半製品アセンブリ、または部品基板アセンブリ等に適切な方法で装填することでき、例えば、生産ラインがALD反応炉を介して流れることができるように、反応炉を生産ラインに組み込むことができる。一実施形態において、1つまたは複数の前駆体ソースを、反応炉の反応室を備えた供給部を介して流動体の流れの中に供給してもよい。反応室からの反応残留物を、真空ポンプを介して、排気管、すなわち前管路に送り込んでもよい。ALD反応炉を、本明細書に記載する方法ステップ間にモニタリングクリーニングする手段と、流動体を介して接続していてもよい。
【0098】
一実施形態において、前記システムは、十分な脱気や乾燥や基板への反応性化学物質の投与を示す測定手段708を備える。一実施形態において、そのような測定手段は、質量分析計や光学的手段を備え、該質量分析計や該光学的手段は、例えば、反応炉、反応炉内部、前管路から、またはポンプ後に流出するガスの化学物質含有量、特徴、または圧力を測定する。このシステムは、残留ガス分析計(Residual Gas Analyzer:RGA)として一般に知られている。一実施形態において、RGA708は、反応炉から流出するガスまたは前管路710のガスの、化学物質もしくは元素含有量、または指紋、および濃度を示すために、制御手段702、HMI706、または個々のユーザーインタフェースと通信する。高品質なALD反応にとって、例えば、反応性ガスの全てを、例えば、1000分の1部未満、より好ましくは1PPM未満の量になるまで流出することが重要である。一実施形態において、RGA708を用いて、反応室から流出するガスの全てをサンプリングする。さらなる実施形態において、RGAを用いて、例えば宇宙用途に必要な基板を雰囲気、加熱、または化学物質に曝露した状態における流出ガスの量および質を定量化する。
【0099】
一実施形態において、前管路710は、好ましくない粒子生成を抑制、または少なくとも著しく低減するために、加熱手段を備える。一実施形態において、前記加熱手段は、前管路710の真空減圧弁の上流に位置する。
【0100】
一実施形態において、ALD反応炉システム(700)は、他のガス導入口とは別々に、500℃以上の温度に加熱される、少なくとも1つのさらなるガス導入口を備える。
【0101】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる前記ガス導入口は、セラミック材、金属、またはセラミック材で被覆した金属で形成される。
【0102】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる前記ガス導入口は、反応炉の中間にある空間で加熱される。
【0103】
一実施形態において、ALD反応炉システム(700)は、HやOやOのパルシングを可能にするガス導入口を備える。
【0104】
一実施形態において、ALD反応炉システム(700)は、反応室の温度よりも高い温度の熱に耐えるガス導入口を備える。
【0105】
一実施形態において、ALD反応炉システム(700)は、反応炉空間と比較して少なくとも100℃の温度差でのガスパルスを可能にするガス導入口を備える。
【0106】
中間にある前記空間は、ALD反応炉内の部分であり、この空間は、周囲圧力未満の圧力まで測定されることと不活性ガスで満たされることのうち少なくとも一方を満たし、さらに、反応性化学物質に接触しないよう配置される。
【0107】
一実施形態において、堆積工程および反応炉システムは、制御システムによって制御される。一実施形態において、ALD反応炉は、コンピュータ制御されるシステムである。前記システムのメモリに保存されているコンピュータプログラムには、命令が含まれ、その命令を前記システムの少なくとも1つのプロセッサにより実行することで、ALD反応炉が命令通りに動作する。その命令は、コンピュータ可読のプログラムコードの形態をとっていてもよい。一実施形態による基本システムのセットアップにおいて、ソフトウェアを利用して、工程パラメータをプログラミングし、そして、マンマシンインタフェース(HMI)端子706を用いて、命令を実行し、イーサネット(登録商標)母線704を介して、制御手段702に命令をダウンロードする。一実施形態において、制御手段702は、汎用プログラマブルロジックコントローラ(programmable logic control:PLC)部を備える。制御手段702は、メモリ、動的および静的メモリ、I/Oモジュール、A/DおよびD/Aコンバータ、ならびに電力継電器に保存されているプログラムコードを含む制御ソフトウェアを実行するために少なくとも1つのマイクロプロセッサを備える。制御手段702は、ALD反応炉の供給管路弁の空気圧コントローラに送電し、供給管路質量流量コントローラおよび、1つまたは複数の前駆体ソースと双方向通信を行い、また、そうしない場合はALD反応炉の動作を制御する。一実施形態において、制御手段702は、探針、センサ、または測定手段の測定値を求め、ALD反応炉またはそのガスラインからHMI端子706に中継する。点線716は、ALD反応炉の部分と制御手段702の間のインタフェースラインを示す。HMI端子706および制御手段702を、1つのモジュールとして組み合わせることができる。
【0108】
発明者らは、前処理とALDによる少なくとも1つの層の堆積とを組み合わせた上述の方法を確立し、金属ウィスカ、特に長繊維状の金属ウィスカの形成を抑制、または少なくとも著しく低減した。
【0109】
本願明細書において開示された1つ以上の例示的実施形態の技術的効果のいくつかを以下に列挙するが、これは各特許請求項の範囲および解釈を制限するものではない。技術的効果の1つは、スズウィスカの形成を防止することである。別の技術的効果は、水または硫黄等の腐食性化学物質に対する耐性を提供することである。さらに別の技術的効果は、水分によって任意に引き起こされるエレクトロマイグレーションを防止することである。さらに別の技術的効果は、硬質ALD層等のALD層の機械強度を高めることである。さらに別の技術的効果は、スズウィスカの形成が発生しうる導電材料を保護することである。さらに別の技術的効果は、ガス腐食から保護することである。さらに別の技術的効果は、低コストの製造工程を提供することである。さらに別の技術的効果は、堆積されたスタックを、接続または接触等の再加工のために、レーザー等によって開くことができることである。
【0110】
本明細書において提供した方法とツールによって、スズウィスカの軽減と同時に、腐食性ガス、水分、水等の液体(使用する被膜に依存する)に対する腐食バリアの形成が可能となる。また、前記工程によって、樹枝状結晶形成の形態で知られているエレクトロマイグレーションからの保護が可能となる。
【0111】
さらに、金属表面上の液体、凝縮液、または湿潤空気に大抵関連するPCB表面の腐食を、提供した前記方法によって防止する。
【0112】
さらに、スズウィスカ問題を軽減するためにPCBにALDを用いる主な利点は、例えば機械的に、またはレーザーを用いて被膜を除去することで、ALD層を修復工程において再加工することができることである。さらに、ALD被覆によってはんだ付けされた部分の最上面に、部品を取り付けることができる。これは、ALDの下方にあるはんだと、はんだペースト等の追加する部品との間にALD層を設けることによって、硬質絶縁材料が効果的に分離されるからである。
【0113】
本発明のさらなる利点は、例えば部品の脚部が被覆されていない等の周囲環境等が原因の、スズウィスカ、腐食、もしくは絶縁破壊から、またはエレクトロマイグレーションから、本明細書でPCBと称した、部品を備えうるターゲット部品またはターゲット基板を保護することができることである。
【0114】
またさらに、非常に高いアスペクト比が原因で他の保護方法では不可能であるボールグリッドアレー(Ball Grid Array:BGA)部品の下塗りが、ALDを用いることで可能となる。
【0115】
以上の説明により、本発明の特定の実装および実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考案されている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。ただし、本発明は、上記の実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく、同等の手段を用いて他の実施形態で実現可能であることは当業者には明らかである。
【0116】
さらに、本発明の上記実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴を同様に用いることなく効果的に用いてもよい。したがって、上記の説明は、本発明の原理の単なる説明であり、本発明を制限するものではないと考えられるべきである。よって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4