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▶ アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】修飾RNAi剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20240710BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240710BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A61K31/713 ZNA
A61K48/00
A61P43/00 105
C12N15/11 Z
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195052
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2021087577の分割
【原出願日】2012-11-16
(65)【公開番号】P2023036630
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】61/561,710
(32)【優先日】2011-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505369158
【氏名又は名称】アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】カラントッタティル・ジー・ラジーブ
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・ジマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ムティア・マノハラン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】サティアナラヤーナ・クチマンチ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・カリセ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/107958(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/107957(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/035759(WO,A2)
【文献】特許第4948163(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/091496(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/713
A61K 48/00
A61P 43/00
C12N 15/11
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子の発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤であって、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、前記各鎖が、14~30のヌクレオチドを有し、そして17~23のヌクレオチド対長さの二重鎖領域を形成し、センス鎖は、式(I):
5’n-N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N-n3’ (I)
によって表され、
式中、
iおよびjはそれぞれ独立して、0または1であり;
各Nは独立して、2~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各Nは独立して、1~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;かつ
XXX、YYY、およびZZZはそれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾の1つのモチーフを表しており、
各nおよびnは独立して、所望により0~6の修飾ヌクレオチドを含む、オーバーハングヌクレオチド配列を表し
Yは、2’-フルオロで修飾されており;
YYYモチーフは、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;または10位、11位、12位;または11位、12位、13位;または12位、13位、14位;または13位、14位、15位の反対に生じ、この位置は、アンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから数え始められる、またはアンチセンス鎖の5’末端の二重鎖領域内の最初の対を形成したヌクレオチドから数え始められ;
YYYの次の各Nのヌクレオチドの修飾は、Yの修飾とは異なり;そして
各ヌクレオチド修飾は、独立して、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、そして
センス鎖は、少なくとも1つのリガンドを含む、
二本鎖RNAi剤。
【請求項2】
iが1である;jが1である;またはiとjの両方が1である、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項3】
各Nが独立して、1~5の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項4】
各Nが独立して、1~5の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各Nが独立して、2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項5】
二重鎖領域が、19~21のヌクレオチド対の長さである、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項6】
二重鎖領域が、21~23のヌクレオチド対の長さである、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項7】
前記各鎖が、17~30のヌクレオチドを有する、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項8】
前記修飾ヌクレオチドが独立して、2’-OCHまたは2’-Fの何れかで修飾されている、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項9】
前記リガンドが、二価または三価分岐リンカーによって付着された1つ以上のGalNAc誘導体である、請求項に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項10】
前記リガンドが、前記センス鎖の3’末端に付着している、請求項1または9に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項11】
前記リガンドが、前記センス鎖の5’末端に付着している、請求項1または9に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項12】
前記リガンドが、前記センス鎖の内部位置で付着している、請求項1または9に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項13】
少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合をさらに含む、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項14】
前記二重鎖領域の5’末端の1位の塩基対が、AU塩基対である、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項15】
各Naおよび/またはNbが、交互パターンの修飾を含む、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項16】
交互パターンが、AB交互パターンである、請求項15に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項17】
アンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから数え始められる、またはアンチセンス鎖の5’末端の二重鎖領域内の最初の対を形成したヌクレオチドから数え始められる、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;または10位、11位、12位;または11位、12位、13位;または12位、13位、14位;または13位、14位、15位が、2’-OCH修飾をそれぞれ含む3つの連続した修飾ヌクレオチドである、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項18】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-OCHまたは2’-フルオロの何れかで修飾されている、請求項17に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項19】
YYYモチーフが、アンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから数え始められる、またはアンチセンス鎖の5’末端の二重鎖領域内の最初の対を形成したヌクレオチドから数え始められる、アンチセンス鎖の11位、12位、および13位の反対に生じる、請求項17に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項20】
アンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから数え始められる、またはアンチセンス鎖の5’末端の二重鎖領域内の最初の対を形成したヌクレオチドから数え始められる、アンチセンス鎖の11位、12位、および13位が、2’-OCH修飾をそれぞれ含む3つの連続した修飾ヌクレオチドである、請求項19に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項21】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-OCHまたは2’-フルオロの何れかで修飾されている、請求項20に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項22】
アンチセンス鎖が、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、もしくは18のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含む、請求項1に記載の二本鎖RNAi剤。
【請求項23】
請求項1~22の何れか1項に記載の二本鎖RNAi剤を単独で、または薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~22の何れか1項に記載の二本鎖RNAi剤を、標的遺伝子の発現を阻害するのに有効な量において含む、前記標的遺伝子の発現を阻害するための組成物。
【請求項25】
前記二本鎖RNAi剤が、皮下投与または静脈投与によって投与される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
対象の特定の標的にポリヌクレオチドを送達するための組成物であって、前記組成物が請求項1~22の何れか1項に記載の二本鎖RNAi剤を含み、そしてポリヌクレオチドが前記対象の前記特定の標的に送達されるように、皮下投与によって前記対象に投与される、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により全開示内容が本明細書に組み入れられる、2011年11月18日出願の米国仮特許出願第61/561,710号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、標的遺伝子の発現の阻害に有利な特定のモチーフを含むRNAi二重鎖剤、および治療用途に適したRNAi組成物に関する。加えて、本発明は、例えば、様々な疾患の処置のために、これらのRNAi二重鎖剤を投与することによって標的遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
RNA干渉または「RNAi」は、二本鎖RNAi(dsRNA)が遺伝子発現を阻止できるという観察を説明するためにFireおよび同僚によって最初に作成された語である(非特許文献1)。短鎖dsRNAは、脊椎動物を含む様々な生物における遺伝子特異的な翻訳後サイレンシングを誘導し、遺伝子機能の研究の新たなツールを提供する。RNAiは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)、サイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを破壊する配列特異的な多成分ヌクレアーゼによって媒介される。RISCは、二本鎖RNAトリガーに由来する短鎖RNA(約22ヌクレオチド)を含むことが知られているが、この活性のタンパク質成分はいまだ未知である。
【0004】
良好な遺伝子サイレンシング特性を有する二本鎖RNA(dsRNA)分子は、RNA干渉(RNAi)に基づいた薬物の開発に必要である。RNAiの最初のステップは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の活性化であり、この活性化には、dsRNAの二重鎖のセンス鎖の分解が必要である。センス鎖は、二重鎖領域の中央にあるArgonaute 2によって切断される最初のRISC基質として機能することが知られていた。センス鎖の切断された5’末端および3’末端の断片がエンドヌクレアーゼAgo2から除去された直後に、RISCが、アンチセンス鎖によって活性化される(非特許文献2)。
【0005】
センス鎖の切断が阻害されると、標的mRNAのエンドヌクレアーゼ的切断が妨げられると考えられていた(非特許文献3)。Leuschnerらが、センス鎖のAgo2切断部位への2’-O-Meリボースの取り込みが、HeLa細胞におけるRNAiを阻害することを示した(非特許文献4)。同様の効果が、ホスホロチオエート修飾で観察され、センス鎖の切断が、哺乳動物における効率的なRNAiに必要であることを示した。
【0006】
Morrisseyらが、他の部位および修飾の中で、Ago2切断部位における2’-F修飾残基を含むsiRNA二重鎖を使用して、無修飾siRNAと比較して適合したサイレンシングを得た(非特許文献5)。しかしながら、Morrisseyの修飾は、モチーフ特異的ではない、例えば、1つの修飾が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方にピリミジン残基が存在すれば、一切の選択性なしに全てのピリミジンに2’-F修飾を含む;従って、これらの教示に基づくと、センス鎖の切断部位における特定のモチーフ修飾が遺伝子サイレンシング活性に対して実際の効果を有し得るかは不明である。
【0007】
Muhonenらが、センス鎖またはアンチセンス鎖のAgo2切断部位に2つの2’-F修飾残基を含むsiRNA二重鎖を使用して、このsiRNA二重鎖が許容されることを見出した(非特許文献6)。しかしながら、Muhonenの修飾も配列特異的であり、例えば、それぞれの特定の鎖に対して、Muhonenの修飾は、一切の選択性なしに全てのピリミジンまたは全てのプリンを修飾するだけである。
【0008】
Choungらが、2’-OMeによる選択的修飾または2’-F、2’-OMe、およびホスホロチオエート修飾の様々な組み合わせを含むsiRNA二重鎖を使用して、血清中のsiRNAをSur10058に対して安定させた(非特許文献7)。Choungは、アンチセンス鎖の切断部位における残基は、siRNAの安定性を高めるために、2’-OMeで修飾するべきではないことを示唆した。
【0009】
従って、siRNA遺伝子治療の遺伝子サイレンシングの有効性を改善するためにiRNA二重鎖剤が現在要望されている。本発明は、この要望に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Fire et al.(1998)Nature 391,806-811;Elbashir et al.(2001)Genes Dev.15,188-200
【文献】Rand et al.(2005)Cell 123,621
【文献】Leuschner et al.(2006)EMBO Rep.,7,314;Rand et al.(2005)Cell 123,621;Schwarz et al.(2004)Curr.Biol.14,787
【文献】Leuschner et al.(2006)EMBO Rep.,7,314
【文献】Morrissey et al.(2005)Hepatology 41,1349
【文献】Muhonen et al.(2007)Chemistry&Biodiversity 4,858-873
【文献】Choung et al.(2006)Biochemical and Biophysical Research Communications 342,919-927
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、標的遺伝子の発現の阻害に有利な、任意選択で少なくとも1つのリガンドがコンジュゲートする、dsRNA剤の有効なヌクレオチドまたは化学モチーフ、および治療用途に適したRNAi組成物を提供する。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフを、修飾されたセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成されるdsRNA剤の切断部位またはその近傍に導入することにより、dsRNA剤の遺伝子サイレンシング活性が高まることを見出した。
【0013】
一態様では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができる二本鎖RNAi(dsRNA)剤に関する。dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。dsRNA二重鎖は、以下の式(III)によって表される:
センス鎖:5’n-N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N-n3’
アンチセンス鎖:3’n’-N -(X’X’X’)-N’-Y’Y’Y’-N’-(Z’Z’Z’)-N’-n’5’
(III)、
式(III)において、i、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0または1であり;pおよびqはそれぞれ独立して、0~6であり;nはヌクレオチドを表し;各NおよびN’は独立して、修飾されている、修飾されていない、またはこれらの組み合わせである0~25のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、これらの各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各NおよびN’は独立して、修飾されている、修飾されていない、またはこれらの組み合わせである0~10のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;各nおよびnは独立して、0~6のヌクレオチドを含むオーバーハングヌクレオチド配列を表し;かつXXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表し;Nの修飾が、Yの修飾とは異なり、N’の修飾が、Y’の修飾とは異なる。Yヌクレオチドの少なくとも1つが、その相補的なY’ヌクレオチドと塩基対を形成し、Yヌクレオチドの修飾が、Y’ヌクレオチドの修飾とは異なる。
【0014】
各nおよびnは独立して、0~6のヌクレオチドを含むオーバーハングヌクレオチド配列を表し;各nおよびn’は、オーバーハングヌクレオチドを表し;pおよびqはそれぞれ独立して0~6である。
【0015】
別の態様では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも2つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、センス鎖内の切断部位またはその近傍に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、アンチセンス鎖内の切断部位またはその近傍に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたアンチセンス鎖の別の部分に存在する。センス鎖の切断部位またはその近傍に存在するモチーフの修飾は、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在するモチーフの修飾とは異なる。
【0016】
別の態様では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。アンチセンス鎖は、切断部位またはその近傍に、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、5’末端から9位、10位、11位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、皮下投与または静脈内投与によって対象の特定の標的にdsRNAを送達する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフを、dsRNA剤のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖、特に切断部位またはその近傍に導入することにより優れた結果を得ることができる。dsRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、そうではなく、完全に修飾しても良い。これらのモチーフの導入により、センス鎖および/またはアンチセンス鎖に修飾パターンが存在する場合は、修飾パターンが中断される。dsRNA剤は、任意選択で、例えば、センス鎖において、GalNAc誘導体リガンドにコンジュゲートする。得られるdsRNA剤は、優れた遺伝子サイレンシング活性を示す。
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、dsRNA剤の少なくとも一方の鎖の切断部位またはその近傍に、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフを含むことにより、dsRNA剤の遺伝子サイレンシング活性が非常に高まることを見出した。
【0021】
従って、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができる二本鎖RNAi(dsRNA)剤を提供する。dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。dsRNA剤の各鎖は、12~30のヌクレオチド長さの範囲とすることができる。例えば、各鎖は、14~30のヌクレオチド長さ、17~30のヌクレオチド長さ、25~30のヌクレオチド長さ、27~30のヌクレオチド長さ、17~23のヌクレオチド長さ、17~21のヌクレオチド長さ、17~19のヌクレオチド長さ、19~25のヌクレオチド長さ、19~23のヌクレオチド長さ、19~21のヌクレオチド長さ、21~25のヌクレオチド長さ、または21~23のヌクレオチド長さの範囲とすることができる。
【0022】
センス鎖およびアンチセンス鎖は、二重鎖dsRNAを形成する。dsRNA剤の二重鎖領域は、12~30のヌクレオチド対の長さとすることができる。例えば、二重鎖領域は、14~30のヌクレオチド対の長さ、17~30のヌクレオチド対の長さ、25~30のヌクレオチド対の長さ、27~30のヌクレオチド対の長さ、17~23のヌクレオチド対の長さ、17~21のヌクレオチド対の長さ、17~19のヌクレオチド対の長さ、19~25のヌクレオチド対の長さ、19~23のヌクレオチド対の長さ、19~21のヌクレオチド対の長さ、21~25のヌクレオチド対の長さ、または21~23のヌクレオチド対の長さとすることができる。別の例では、二重鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27のヌクレオチド対の長さから選択される。
【0023】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、鎖の3’末端、5’末端、または両末端にdsRNA剤の1つ以上のオーバーハング領域および/またはキャッピング基を含み得る。オーバーハングは、1~6のヌクレオチド長さ、例えば、2~6のヌクレオチド長さ、1~5のヌクレオチド長さ、2~5のヌクレオチド長さ、1~4のヌクレオチド長さ、2~4のヌクレオチド長さ、1~3のヌクレオチド長さ、2~3のヌクレオチド長さ、または1~2のヌクレオチド長さとすることができる。オーバーハングは、一方の鎖が他方の鎖よりも長い結果、または同じ長さの2本の鎖がシフトした結果として起こり得る。オーバーハングは、標的mRNAとのミスマッチを形成し得る、またはオーバーハングは、標的とされる遺伝子配列に相補的であっても良いし、もしくは他の配列であっても良い。第1の鎖と第2の鎖は、例えば、ヘアピンを形成する追加の塩基によって、または他の非塩基リンカーによって接続することができる。
【0024】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤のオーバーハング領域におけるヌクレオチドはそれぞれ独立して、限定されるものではないが、2’-糖修飾、例えば、2-F、2’-Oメチル、チミジン(T)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2’-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)、およびこれらの任意の組み合わせを含め、修飾されたヌクレオチドであっても良いし、または非修飾ヌクレオチドであっても良い。例えば、TTは、いずれかの鎖のいずれかの末端のオーバーハング配列とすることができる。オーバーハングは、標的mRNAとのミスマッチを形成し得る、またはオーバーハングは、標的とされる遺伝子配列に相補的であっても良いし、もしくは他の配列であっても良い。
【0025】
本発明のdsRNA剤のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖における5’または3’オーバーハングは、リン酸化されても良い。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含み、この2つのヌクレオチドは、同じヌクレオチドでも良いし、異なるヌクレオチドでも良い。一実施形態では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖の3’末端に存在する。一実施形態では、この3’オーバーハングは、アンチセンス鎖に存在する。一実施形態では、この3’オーバーハングは、センス鎖に存在する。
【0026】
本発明のdsRNA剤は、全体の安定性に影響を与えずに、dsRNAの干渉活性を高めることができる1つのオーバーハングのみを含む。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3’末端、あるいはアンチセンス鎖の3’末端に位置する。dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端(またはセンス鎖の3’末端)に位置する平滑末端を有しても良いし、またはこの逆であっても良い。一般に、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端のヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。理論に拘束されるものではないが、非対称な、アンチセンス鎖の5’末端の平滑末端とアンチセンス鎖の3’末端オーバーハングは、RISCプロセスに添加されるガイド鎖を好む。
【0027】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、dsRNA二重鎖の両末端に2つの平滑末端を有しても良い。
【0028】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、19のヌクレオチド長さの平滑末端二本鎖(double ended bluntmer)であり、センス鎖は、5’末端の7位、8位、9位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端の11位、12位、13位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0029】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、20のヌクレオチド長さの平滑末端二本鎖であり、センス鎖は、5’末端の8位、9位、10位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端の11位、12位、13位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0030】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、21のヌクレオチド長さの平滑末端二本鎖であり、センス鎖は、5’末端の9位、10位、11位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端の11位、12位、13位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0031】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、21のヌクレオチド(nt)長さのセンス鎖および23のヌクレオチド(nt)長さのアンチセンスを含み、センス鎖は、5’末端の9位、10位、11位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み:アンチセンス鎖は、5’末端の11位、12位、13位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、dsRNAの一方の末端は、平滑であり、他方の末端は、2つのヌクレオチドのオーバーハングを有する。好ましくは、2つのヌクレオチドのオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端にある。任意選択で、dsRNAは、リガンド(好ましくはGalNAc)をさらに含む。
【0032】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖は、25~30のヌクレオチド残基の長さであり、5’末端のヌクレオチド(1位)から始まり、前記第1の鎖の1位~23位は、少なくとも8つのリボヌクレオチドを含み;アンチセンス鎖は、36~66のヌクレオチド残基の長さであり、3’末端のヌクレオチドから始まり、二重鎖を形成するセンス鎖の1位~23位と対を形成する位置に少なくとも8つのリボヌクレオチドを含み;アンチセンス鎖の少なくとも3’末端のヌクレオチドは、センス鎖と対を形成せず、最大6つの連続した3’末端ヌクレオチドが、センス鎖と対を形成せず、これにより、1~6のヌクレオチドの3’一本鎖オーバーハングが形成され;アンチセンス鎖の5’末端は、センス鎖と対を形成しない10~30の連続したヌクレオチドを含み、これにより、10~30のヌクレオチドの一本鎖5’オーバーハングが形成され;少なくともセンス鎖の5’末端および3’末端のヌクレオチドは、センス鎖とアンチセンス鎖が最大の相補性となるように整列したときに、アンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対を形成し、これにより、センス鎖とアンチセンス鎖との間に実質的に二重鎖領域が形成され;アンチセンス鎖は、前記二本鎖核酸が哺乳動物の細胞に導入されたときに標的遺伝子の発現を低減するように、アンチセンス鎖の長さの少なくとも19のリボヌクレオチドに沿って標的RNAに十分に相補的であり;センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、この少なくとも1つのモチーフが、切断部位またはその近傍に存在する。アンチセンス鎖は、切断部位またはその近傍の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0033】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、前記dsRNA剤は、少なくとも25、最大で29のヌクレオチド長さを有する第1の鎖、および5’末端から11位、12位、13位にある3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを有する、最大で30のヌクレオチド長さを有する第2の鎖を含み;前記第1の鎖の前記3’末端および前記第2の鎖の前記5’末端は、平滑末端を形成し、第2の鎖は、3’末端で第1の鎖よりも1~4ヌクレオチド長く、二重鎖領域は、少なくとも25のヌクレオチド長さであり、第2の鎖は、dsRNA剤が哺乳動物の細胞に導入されたときに標的遺伝子の発現を低減するように、前記第2の鎖の長さの少なくとも19のヌクレオチドに沿って標的mRNAに十分に相補的であり、dsRNA剤のダイサー切断(dicer cleavage)が、優先的に前記第2の鎖の前記3’末端を含むsiRNAをもたらし、これにより、哺乳動物における標的遺伝子の発現が低減する。任意選択で、前記dsRNA剤は、リガンドをさらに含む。
【0034】
一実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの1つは、センス鎖の切断部位に存在する。
【0035】
一実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖も、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含んでも良く、モチーフの1つは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。
【0036】
17~23のヌクレオチド長さの二重鎖領域を有するdsRNA剤では、アンチセンス鎖の切断部位は、典型的には、5’末端から10位、11位、および12位の付近である。従って、3つの同一の修飾からなるモチーフは、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;10位、11位、12位;11位、12位、13位;12位、13位、14位;13位、14位、15位に存在しても良く、この位置は、アンチセンス鎖の5’末端から、最初のヌクレオチドから数え始められる、またはアンチセンス鎖の5’末端の二重鎖領域内の最初の対を形成したヌクレオチドから数え始められる。アンチセンス鎖の切断部位はまた、5’末端のdsRNA剤の二重鎖領域の長さに従って変更され得る。
【0037】
dsRNA剤のセンス鎖は、その鎖の切断部位の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み;アンチセンス鎖は、その鎖の切断部位またはその近傍の3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを有し得る。センス鎖とアンチセンス鎖がdsRNA二重鎖を形成する場合は、センス鎖とアンチセンス鎖は、センス鎖の3つのヌクレオチドからなる1つのモチーフおよびアンチセンス鎖の3つのヌクレオチドからなる1つのモチーフが、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーラップ、即ち、センス鎖のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、アンチセンス鎖のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つと塩基対を形成するように整列させることができる。あるいは、両方の鎖からのモチーフの少なくとも2つのヌクレオチドがオーバーラップする、または3つ全てのヌクレオチドがオーバーラップしても良い。
【0038】
一実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドの3つの同一の修飾からなる2つ以上のモチーフを含む。第1のモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在するべきであり、他方のモチーフは、ウィング修飾(wing modification)であっても良い。本明細書の「ウィング修飾」という語は、鎖の切断部位またはその近傍のモチーフから離れた同じ鎖の別の部分に存在するモチーフを指す。ウィング修飾は、第1のモチーフの近傍であるか、または少なくとも1つ以上のヌクレオチドによって離隔している。モチーフが、その性質化学的よりも互いに接近している場合は、モチーフは互いに異なり、モチーフが、モチーフの化学的性質よりも1つ以上のヌクレオチドによって離隔している場合は、モチーフは、同じであるか、または異なることもある。2つ以上のウィング修飾が存在しても良い。例えば、2つのウィング修飾が存在する場合、両方のウィング修飾が、切断部位またはその近傍にある第1のモチーフに対する二重鎖領域の一方の末端に存在しても良いし、またはウィング修飾のそれぞれが、第1のモチーフの両側に存在しても良い。
【0039】
センス鎖と同様に、dsRNA剤のアンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも2つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。このアンチセンス鎖も、センス鎖に存在するウィング修飾と同様の配列で1つ以上のウィング修飾を有しても良い。
【0040】
一実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖のウィング修飾は、典型的には、鎖の3’末端、5’末端、または両末端における最初の1つまたは2つの末端ヌクレオチドを含まない。
【0041】
別の実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖のウィング修飾は、典型的には、鎖の3’末端、5’末端、または両末端における二重鎖領域内の最初の1つまたは2つの対合ヌクレオチドを含まない。
【0042】
dsRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖がそれぞれ、少なくとも1つのウィング修飾を含む場合、ウィング修飾は、二重鎖領域の同じ末端に位置しても良く、1つ、2つ、または3つのヌクレオチドのオーバーラップを有する。
【0043】
dsRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖がそれぞれ、少なくとも2つのウィング修飾を含む場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、一方の鎖の2つのウィング修飾がそれぞれ、二重鎖領域の一方の末端に位置して、1つ、2つ、または3つのヌクレオチドのオーバーラップを有するように;一方の鎖の2つの修飾が二重鎖領域の他方の末端に位置して、1つ、2つ、または3つのヌクレオチドのオーバーラップを有するように、センス鎖とアンチセンス鎖を整列させることができる。
【0044】
一実施形態では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、dsRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖における各ヌクレオチドを修飾しても良い。各ヌクレオチドは、同じまたは異なる修飾で修飾しても良く、この修飾は、非結合リン酸酸素および/または1つ以上の結合リン酸酸素の一方または両方の1つ以上の変更;リボース糖の成分、例えば、リボース糖の2’ヒドロキシルの変更;リン酸部分の「脱リン酸」リンカー(“dephospho”linker)での大量の置換;天然の塩基の修飾または置換;およびリボース-リン酸骨格の置換または修飾を含み得る。
【0045】
核酸がサブユニットの重合体であるため、多くの修飾、例えば、塩基、リン酸部分、またはリン酸部分の非結合Oの修飾は、核酸内の繰り返される位置に存在する。場合によっては、修飾は、核酸内の全ての目的の位置に存在するが、多くの場合はそうではない。一例として、修飾は、3’または5’末端位置のみに存在しても良く、末端領域、例えば、末端ヌクレオチドの位置または鎖の最後の2つ、3つ、4つ、5つ、または10のヌクレオチドのみに存在しても良い。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、または両方に存在し得る。修飾は、RNAの二本鎖領域のみに存在しても良いし、またはRNAの一本鎖領域のみに存在しても良い。例えば、非結合酸素位置でのホスホロチオエート修飾は、一方もしくは両方の末端のみに存在しても良いし、末端領域、例えば、末端ヌクレオチドのある位置、または鎖の最後の2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは10のヌクレオチドのみに存在しても良いし、あるいは二本鎖領域および一本鎖領域、特に末端に存在しても良い。5’末端または両末端は、リン酸化されても良い。
【0046】
例えば、安定性を高めること、オーバーハングに特定の塩基を含めること、あるいは一本鎖オーバーハング、例えば、5’もしくは3’オーバーハング、または両方のオーバーハングに修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含めることが可能であろう。例えば、オーバーハングにプリンヌクレオチドを含めることが望ましい場合もある。一部の実施形態では、3’または5’オーバーハングの全てまたは一部の塩基を、例えば、本明細書に記載される修飾で修飾しても良い。修飾は、例えば、当分野で公知の修飾を用いたリボース糖の2’位での修飾の使用、例えば、核酸塩基のリボ糖ではなくデオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’-F)、または2’-O-メチル修飾の使用、およびリン酸基の修飾、例えば、ホスホチオエート修飾を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
【0047】
一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は独立して、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシ、または2’-フルオロで修飾される。センス鎖およびアンチセンス鎖は、2つ以上の修飾を含み得る。一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は独立して、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。
【0048】
少なくとも2つの異なる修飾が、典型的には、センス鎖およびアンチセンス鎖に存在する。これらの2つの修飾は、2’-O-メチルもしくは2’-フルオロ、または他のものであっても良い。
【0049】
一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、2’-O-メチルまたは2’-フルオロから選択される2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含む。
【0050】
一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は独立して、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-デオキシフルオロヌクレオチド、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)ヌクレオチド、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)ヌクレオチド、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)ヌクレオチド、または2’-ara-Fヌクレオチドで修飾される。
【0051】
一実施形態では、Nおよび/またはNは、交互パターンの修飾を有する。本明細書で使用される「交互モチーフ」または「交互パターン」という語は、各修飾が1つの鎖の交互ヌクレオチドに存在する1つ以上の修飾を有するモチーフを指す。交互ヌクレオチドは、1つおきのヌクレオチドに1つ、3つおきのヌクレオチドに1つ、または同様のパターンを指し得る。例えば、A、B、およびCがそれぞれ、ヌクレオチドに対する1種類の修飾を表す場合、交互モチーフは、「ABABABABABAB...」、「AABBAABBAABB...」、「AABAABAABAAB...」、「AAABAAABAAAB...」、「AAABBBAAABBB...」、または「ABCABCABCABC...」などであり得る。
【0052】
一実施形態では、Nおよび/またはNは、交互パターンの修飾を含む。本明細書で使用される「交互モチーフ」または「交互パターン」という語は、各修飾が1つの鎖の交互ヌクレオチドに存在する1つ以上の修飾を有するモチーフを指す。交互ヌクレオチドは、1つおきのヌクレオチドに1つ、3つおきのヌクレオチドに1つ、または同様のパターンを指し得る。例えば、A、B、およびCがそれぞれ、ヌクレオチドに対する1種類の修飾を表す場合、交互モチーフは、「ABABABABABAB...」、「AABBAABBAABB...」、「AABAABAABAAB...」、「AAABAAABAAAB...」、「AAABBBAAABBB...」、または「ABCABCABCABC...」などであり得る。
【0053】
交互モチーフに含まれる修飾の種類は、同じであっても良いし、または異なっていても良い。例えば、A、B、C、Dがそれぞれ、ヌクレオチドの1種類の修飾を表す場合、交互パターン、即ち、1つおきのヌクレオチドの修飾は、同じでも良いが、センス鎖またはアンチセンス鎖はそれぞれ、交互モチーフ、例えば、「ABABAB...」、「ACACAC...」、「BDBDBD...」、または「CDCDCD...」などの内部の修飾のいくつかの可能性から選択することができる。
【0054】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、アンチセンス鎖における交互モチーフの修飾パターンに対してシフトしている、センス鎖における交互モチーフの修飾パターンを含む。このシフトは、センス鎖のヌクレオチドの修飾基が、アンチセンス鎖のヌクレオチドの異なる修飾基に対応するようなシフトであっても良いし、この逆のシフトでも良い。例えば、センス鎖は、dsRNA二重鎖におけるアンチセンス鎖と塩基対を形成した場合、センス鎖における交互モチーフが、センス鎖の5’から3’へ「ABABAB」で始まり、アンチセンス鎖における交互モチーフが、二重鎖領域内のアンチセンス鎖の3’から5’へ「BABABA」で始まり得る。別の例として、センス鎖における交互モチーフは、センス鎖の5’から3’へ「AABBAABB」で始まり、アンチセンス鎖における交互モチーフは、二重鎖領域内のアンチセンス鎖の3’から5’へ「BBAABBAA」で始まり得るため、センス鎖とアンチセンス鎖との間の修飾パターンの完全な、または部分的なシフトが存在する。
【0055】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、最初に、センス鎖における2’-O-メチル修飾と2’-F修飾との交互モチーフのパターンを有し、このパターンは、最初に、アンチセンス鎖における2’-O-メチル修飾と2’-F修飾との交互モチーフのパターンに対してシフトを有する、即ち、センス鎖における2’-O-メチル修飾ヌクレオチドは、アンチセンス鎖における2’-F修飾ヌクレオチドと塩基対を形成し、逆の場合も同様である。センス鎖の1位は、2’-F修飾で始まることができ、アンチセンス鎖の1位は、2’-O-メチル修飾で始まることができる。
【0056】
3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフのセンス鎖および/またはアンチセンス鎖への導入は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖に存在する最初の修飾パターンを中断する。3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフのセンス鎖および/またはアンチセンス鎖への導入による、センス鎖および/またはアンチセンス鎖に存在する最初の修飾パターンのこの中断は、標的遺伝子に対する遺伝子サイレンシング活性を驚くほど高める。
【0057】
一実施形態では、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなるモチーフが、いずれの鎖に導入される場合も、モチーフの次のヌクレオチドの修飾は、モチーフの修飾とは異なる修飾である。例えば、モチーフを含む配列の一部は、「...NYYYN...」であり、「Y」は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなるモチーフの修飾を表し、「N」および「N」は、Yの修飾とは異なる、モチーフ「YYY」の次のヌクレオチドの修飾を表し、NおよびNは、同じ修飾でも異なる修飾でも良い。あるいは、Nおよび/またはNは、ウィング修飾が存在する場合は、存在しても存在しなくても良い。
【0058】
本発明のdsRNA剤は、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合をさらに含み得る。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖および/もしくはアンチセンス鎖、または両鎖のいずれかの位置のどのヌクレオチドにも存在し得る。例えば、ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖およびアンチセンス鎖のどのヌクレオチドにも存在し得る;各ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖における交互パターンに存在し得る;あるいはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、交互パターンにおける両方のヌクレオチド間結合の修飾を含む。センス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じでも異なっても良く、センス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互パターンに対してシフトを有しても良い。
【0059】
一実施形態では、dsRNA剤は、オーバーハング領域にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含む。ヌクレオチド間結合の修飾は、オーバーハングヌクレオチドを二重鎖領域内の末端の塩基対形成ヌクレオチドに結合させるために形成することもできる。例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、または全てのオーバーハングヌクレオチドを、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合によって結合することができ、任意選択で、オーバーハングヌクレオチドをその次の塩基対形成ヌクレオチドに結合する追加的なホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合が存在しても良い。例えば、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホチオエートのヌクレオチド間結合が存在しても良く、この末端の3つのヌクレオチドのうちの2つは、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドの次の塩基対形成ヌクレオチドである。好ましくは、これらの末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に存在し得る。
【0060】
一実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、もしくは16のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された2~10のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1~10のブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記センス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むアンチセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0061】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、もしくは18のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された2つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0062】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、もしくは16のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された3つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0063】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、もしくは14のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された4つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0064】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、もしくは12のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された5つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0065】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10のリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された6つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0066】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つのリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された7つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0067】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された8つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0068】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、1つ、2つ、3つ、もしくは4つのリン酸塩のヌクレオチド間結合によって分離された9つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の1つが、オリゴヌクレオチド配列の任意の位置に存在し、前記アンチセンス鎖が、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、およびリン酸塩のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖、またはホスホロチオエート、メチルホスホネート、もしくはリン酸塩の結合の何れかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0069】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の1~10の末端位置(複数可)の範囲内の1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のヌクレオチドを、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の一方の末端または両末端におけるホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合によって連結することができる。
【0070】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のそれぞれの二重鎖の1~10の内部領域の範囲内の1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のヌクレオチドを、センス鎖の5’末端から数えて、8位~16位の二重鎖領域にあるホスホロチオエート、メチルホスホネートのヌクレオチド間結合によって連結することができ;dsRNAは、任意選択で、1~10の末端位置(複数可)の範囲内の1つ以上のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含み得る。
【0071】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の1~5のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾(複数可)および18位~23位の範囲内の1~5のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾(複数可)、ならびにアンチセンス鎖の1位および2位(5’末端から数えて)における1~5のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1~5のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0072】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0073】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0074】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0075】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0076】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0077】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0078】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0079】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0080】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0081】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0082】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位~5位(5’末端から数えて)の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および18位~23位の範囲内の2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0083】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および20位と21位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0084】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および20位と21位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0085】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位と22位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0086】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位と22位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0087】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および22位と23位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0088】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、センス鎖の1位(5’末端から数えて)における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および21位における1つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾、ならびにアンチセンス鎖の1位と2位(5’末端から数えて)における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾および23位と23位における2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合の修飾をさらに含む。
【0089】
一実施形態では、dsRNA剤は、標的とのミスマッチ(複数可)、二重鎖内のミスマッチ(複数可)、またはこれらの組み合わせを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域、または二重鎖領域で生じ得る。塩基対は、解離または融解(例えば、特定の対合の結合または解離の自由エネルギーに対してであり、最も単純なアプローチは、個々の塩基対ベースで塩基対を評価することであるが、類縁または同様の分析を用いることもできる)を促進する傾向に基づいてランク付けすることができる。解離の促進に関しては、A:Uは、G:Cよりも好ましく;G:UはG:Cよりも好ましく;I:CはG:Cよりも好ましい(I=イノシンである)。ミスマッチ、例えば、非正準な対合または正準以外の対合(本明細書の他の部分に記載)は、正準な対合(A:T、A:U、G:C)よりも好ましく;ユニバーサル塩基を含む塩基対は、正準な対合よりも好ましい。
【0090】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、A:U、G:U、I:Cの群から独立して選択することができるアンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内の最初の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの塩基対の少なくとも1つ、および二重鎖の5’末端におけるアンチセンス鎖の解離を促進するためのミスマッチ対合、例えば、非正準な対合もしくは正準以外の対合、またはユニバーサル塩基を含む対合を含む。
【0091】
一実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内の1位にあるヌクレオチドは、A、dA、dU、U、およびdTからなる群から選択される。あるいは、ンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内の最初の1つ、2つ、または3つの塩基対の少なくとも1つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内の最初の塩基対は、AU塩基対である。
【0092】
一実施形態では、センス鎖配列は、式(I)で表すことができる:
5’n-N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N-n3’ (I)
式中、
iおよびjはそれぞれ独立して、0または1であり;
pおよびqはそれぞれ独立して、0~6であり;
各Nは独立して、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各Nは独立して、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各nおよびnは独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
NbおよびYは、同じ修飾を有しておらず;かつ
XXX、YYY、およびZZZはそれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表している。好ましくは、YYYは、2’-F修飾ヌクレオチドである。
【0093】
一実施形態では、Nおよび/またはNは、交互パターンの修飾を含む。
【0094】
一実施形態では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNA剤が、17~23のヌクレオチド対長さの二重鎖領域を有する場合、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在し得(例えば、6位、7位、8位;7位、8位、9位;8位、9位、10位;9位、10位、11位;10位、11位,12位;または11位、12位、13位に存在し得)、この位置は、5’末端から、最初のヌクレオチドから数え始められる;または任意選択で、5’末端から、二重鎖領域内の最初の塩基対形成ヌクレオチドから数え始められる。
【0095】
一実施形態では、iが1でjが0である、iが0でjが1である、またはiとjの両方が1である。従って、センス鎖は、以下の式で表すことができる:
5’n-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’ (Ia)
5’n-N-XXX-N-YYY-N-n3’ (Ib);または
5’n-N-XXX-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’ (Ic)。
【0096】
センス鎖が、式(Ia)で表される場合、Nは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。各Nは独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0097】
センス鎖が、式(Ib)で表される場合、Nは、0~10、0~7、0~10、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。各Nは独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0098】
センス鎖が、式(Ic)で表される場合、各Nは独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。好ましくは、Nは、0、1、2、3、4、5、または6である。各Nは独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すことができる。
【0099】
X、Y、およびZはそれぞれ、互いに同じであっても良いし、または異なっていても良い。
【0100】
一実施形態では、dsRNA剤のアンチセンス鎖配列は、式(II)によって表すことができる:
5’nq’-N’-(Z’Z’Z’)-N’-Y’Y’Y’-N’-(X’X’X’)-N’-n’3’ (II)
式中、
kおよびlはそれぞれ独立して、0または1であり;
p’およびq’はそれぞれ独立して、0~6であり;
各N’は独立して、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各N’は独立して、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各n’およびn’は独立して、0~6の修飾ヌクレオチドを含むオーバーハングヌクレオチドを表し;
’およびY’は、同じ修飾を有しておらず;かつ
X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表している。
【0101】
一実施形態では、N’および/またはN’は、交互パターンの修飾を含む。
【0102】
Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNA剤は、17~23のヌクレオチド長さの二重鎖領域を有し、Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;10位、11位、12位;11位、12位、13位;12位、13位、14位;または13位、14位、15位に存在し得、この位置は、5’末端から、最初のヌクレオチドから数え始められる;または任意選択で、5’末端から、二重鎖領域内の最初の塩基対形成ヌクレオチドから数え始められる。好ましくは、Y’Y’Y’モチーフは、11位、12位、13位に存在する。
【0103】
一実施形態では、Y’Y’Y’モチーフは、2’-OMe修飾ヌクレオチドである。
【0104】
一実施形態では、kが1でlが0である、kが0でlがlである、またはkとlの両方が1である。
【0105】
従って、アンチセンス鎖は、以下の式で表すことができる:
5’nq’-N’-Z’Z’Z’-N’-Y’Y’Y’-N’-n’3’ (IIa);
5’nq’-N’-Y’Y’Y’-N’-X’X’X’-n’3’ (IIb);または
5’nq’-N’-Z’Z’Z’-N’-Y’Y’Y’-N’-X’X’X’-N’-n’3’ (IIc)。
【0106】
アンチセンス鎖が、式(IIa)で表される場合、N’は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。各N’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。
【0107】
アンチセンス鎖が、式(IIb)で表される場合、N’は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。各N’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。
【0108】
アンチセンス鎖が、式(IIc)で表される場合、各N’は独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。各N’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表している。好ましくは、Nは、0、1、2、3、4、5、または6である。
【0109】
X’、Y’、およびZ’はそれぞれ、互いに同じであっても良いし、または異なっていても良い。
【0110】
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは独立して、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、または2’-フルオロで修飾され得る。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは独立して、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。特に、X、Y、Z、X’、Y’、およびZ’はそれぞれ、2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾を表すことができる。
【0111】
一実施形態では、dsRNA剤のセンス鎖は、二重鎖領域が21のヌクレオチドである場合にセンス鎖の9位、10位、および11位に存在するYYYモチーフを含み、この位置は、5’末端から、最初のヌクレオチドから数え始められ、または任意選択で、5’末端から、二重鎖領域内の最初の塩基対形成ヌクレオチドから数え始められ;かつYは、2’-F修飾を表している。センス鎖は、二重鎖領域の反対の末端におけるウィング修飾としてXXXモチーフまたはZZZモチーフを追加的に含むことができ;かつXXXおよびZZZはそれぞれ独立して、2’-OMe修飾または2’-F修飾を表している。
【0112】
一実施形態では、アンチセンス鎖は、このセンス鎖の11位、12位、および13位に存在するY’Y’Y’モチーフを含むことができ、この位置は、5’末端から、最初のヌクレオチドから数え始められる、または任意選択で、5’末端から、二重鎖領域内の最初の塩基対形成ヌクレオチドから数え始められ;かつY’は、2’-O-メチル修飾を表している。アンチセンス鎖は、二重鎖領域の反対の末端におけるウィング修飾としてX’X’X’モチーフまたはZ’Z’Z’モチーフを追加的に含むことができ;かつX’X’X’およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して、2’-OMe修飾または2’-F修飾を表している。
【0113】
上記の式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の何れかによって示されるセンス鎖はそれぞれ、式(IIa)、(IIb)、および(IIc)の何れかによって示されるアンチセンス鎖と二重鎖を形成する。
【0114】
従って、dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み得、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有し、dsRNA二重鎖が次の式(III)によって表される:
センス鎖:5’n-N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N-n3’
アンチセンス鎖:3’n’-N’-(X’X-N’-Y’Y’Y’-N’-(Z’Z’Z’)-N’-n’5’
(III)
式中:
i、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0または1であり;
pおよびqはそれぞれ独立して、0~6であり;
各NおよびN’は独立して、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各NおよびN’は独立して、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
式中、
各n’、n、n’、およびnは独立して、オーバーハングヌクレオチド配列を表し;かつ
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はそれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表す。
【0115】
一実施形態では、iは1で、jは0である;iは0で、jは1である;またはiとjの両方が1である。別の実施形態では、kは1で、lは0である;kは0で、lは1である;またはkとlの両方が1である。
【0116】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有し、dsRNA二重鎖は、次の式(V)によって表される:
センス鎖:5’N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N-n3’
アンチセンス鎖:3’n’-N’-(X’X’X’)-N’-Y’Y’Y’-N’-(Z’Z’Z’)-N 5’
(V)
式中:
i、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0または1であり;
pおよびqはそれぞれ独立して2であり;
各NおよびN’は独立して、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各NおよびN’は独立して、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
式中、
各n’およびnは独立して、オーバーハングヌクレオチド配列を表し;かつ
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はぞれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表す。
【0117】
一実施形態では、iは1で、jは0である;iは0で、jは1である;またはiとjの両方が1である。別の実施形態では、kは1で、lは0である;kは0で、lは1である;またはkとlの両方が1である。
【0118】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有し、dsRNA二重鎖は、次の式(Va)によって表される:
センス鎖:5’N-(XXX)-N-YYY-N-(ZZZ)-N3’
アンチセンス鎖:3’n’-N’-(X’X’X’)-N’-Y’Y’Y’-N’-(Z’Z’Z’)-N’5’
(Va)
式中:
i、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0または1であり;
pおよびqはそれぞれ独立して2であり;
各NおよびN’は独立して、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;
各NおよびN’は独立して、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
式中、
各n’は、オーバーハングヌクレオチド配列を表し;かつ
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’はぞれぞれ独立して、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つのモチーフを表す。
【0119】
dsRNA二重鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の例示的な組み合わせは、以下の式を含む:
5’n-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’
3’n’-N’-Y’Y’Y’-N’-Z’Z’Z’-N 5’
(IIIa)
5’n-N-XXX-N-YYY-N-n3’
3’n’-N’-X’X’X’-N’-Y’Y’Y’-N’-n’5’
(IIIb)
5’n-N-XXX-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’
3’n’-N’-X’X’X’-N’-Y’Y’Y’-N’-Z’Z ’Z’-N-n’5’
(IIIc)。
【0120】
dsRNA剤が式(IIIa)によって表される場合、各NおよびN’は独立して、1~10、1~7、1~5、または1~4の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各NおよびN’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0121】
dsRNA剤が式(IIIb)として表される場合、各NおよびN’は独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各NおよびN’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0122】
dsRNA剤が式(IIIc)として表される場合、各NおよびN’は独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各NおよびN’は独立して、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N、N’、N、およびN’はそれぞれ独立して、交互パターンの修飾を含む。
【0123】
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)におけるX、Y、およびZはそれぞれ、互いに同じであっても良いし、または異なっていても良い。
【0124】
dsRNA剤が、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)で表される場合、Yヌクレオチドの少なくとも1つが、Y’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Yヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはYヌクレオチドの3つ全てが、対応するY’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0125】
ヌクレオチドはN’と塩基対を形成し、NヌクレオチドはN’と塩基対を形成し、XヌクレオチドはX’と塩基対を形成し、YヌクレオチドはY’と塩基対を形成し、かつZヌクレオチドはZ’と塩基対を形成することを理解されたい。
【0126】
dsRNA剤が、式(IIIa)または(IIIc)で表される場合、Zヌクレオチドの少なくとも1つが、Z’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Zヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはZヌクレオチドの3つ全てが、対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0127】
dsRNA剤が、式(IIIb)または(IIIc)で表される場合、Xヌクレオチドの少なくとも1つが、X’ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Xヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成する;またはXヌクレオチドの3つ全てが、対応するX’ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0128】
一実施形態では、Yヌクレオチドの修飾は、Y’ヌクレオチドの修飾とは異なり、Zヌクレオチドの修飾は、Z’ヌクレオチドの修飾とは異なり、かつ/またはXヌクレオチドの修飾は、X’ヌクレオチドの修飾とは異なる。
【0129】
一実施形態では、dsRNA剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)で表される少なくとも2つの二重鎖を含む多量体であり、前記二重鎖はリンカーによって結合されている。このリンカーは、切断可能であっても良いし、または切断不可能であっても良い。任意選択で、前記多量体は、リガンドをさらに含む。dsRNAはそれぞれ、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的としても良いし;あるいはdsRNAはそれぞれ、2つの異なる標的部位における同じ遺伝子を標的としても良い。
【0130】
一部の実施形態では、dsRNA剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)で表される3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の二重鎖を含む多量体であり、前記二重鎖は、リンカーによって結合されている。このリンカーは、切断可能であっても良いし、または切断不可能であっても良い。任意選択で、この多量体は、リガンドをさらに含む。dsRNAはそれぞれ、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的としても良いし;あるいはdsRNAはそれぞれ、2つの異なる標的部位における同じ遺伝子を標的としても良い。
【0131】
一実施形態では、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)で表される2つのdsRNA剤は、5’末端で互いに結合され、その3’末端の一方または両方が、任意選択で、リガンドによってコンジュゲートされる。dsRNAはそれぞれ、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的としても良いし;あるいはdsRNAはそれぞれ、2つの異なる標的部位における同じ遺伝子を標的としても良い。
【0132】
様々な刊行物に、多量体siRNAが記載されており、このようなsiRNAは全て、本発明のdsRNAと共に使用することができる。このような刊行物としては、参照によりそれらの全開示内容が本明細書に組み入れられる、国際公開第2007/091269号、米国特許第7858769号、国際公開第2010/141511号、同第2007/117686号、同第2009/014887号、および同第2011/031520号が挙げられる。
【0133】
1つ以上の糖質部分のdsRNA剤に対するコンジュゲーションを含むdsRNA剤は、このdsRNA剤の1つ以上の特性を最適化し得る。多くの場合、糖質部分は、dsRNA剤の修飾サブユニットに付着する。例えば、dsRNA剤の1つ以上のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖を、別の部分、例えば、糖質リガンドが付着する非糖質担体(好ましくは環状)で置換することができる。サブユニットのリボース糖がこのように置換されたリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書では、リボース置換修飾サブユニット(RRMS)と呼ばれる。環状担体は、炭素環系、即ち全ての環原子が炭素原子である環系であっても良いし、または複素環系、即ち1つ以上の環原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であり得る環系であっても良い。環状担体は、単環系であっても良いし、または2つ以上の環、例えば、融合環を含んでも良い。環状担体は、完全に飽和した環系であっても良いし、または1つ以上の二重結合を含んでも良い。
【0134】
リガンドは、担体によってポリヌクレオチドに付着することができる。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格付着点(backbone attachment point)」、好ましくは2つの「骨格付着点」、および(ii)少なくとも1つの「テザー付着点(tethering attachment point)」を含む。本明細書で使用される「骨格付着点」は、官能基、例えば、ヒドロキシル基、または一般に、リボ核酸の骨格、例えば、リン酸塩の骨格、もしくは、例えば、硫黄を含有する修飾リン酸塩の骨格への担体の組み込みに利用可能であり、かつ適した結合を指す。「テザー付着点」(TAP)は、一部の実施形態では、選択された部分を接続する環状担体の構成環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子(骨格付着点を提供する原子とは異なる)を指す。この選択された部分は、例えば、糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖であり得る。任意選択で、選択された部分は、介在テザー(intervening tether)によって環状担体に接続される。従って、環状担体は、しばしば、官能基、例えば、アミノ基を含む、または、一般に、別の化学物質、例えば、リガンドの構成環への組み込みまたは連結(tethering)に適した結合を可能にする。
【0135】
実施形態では、本発明のdsRNAは、担体を介してリガンドにコンジュゲートし、この担体は、環状基または非環状基であり得;好ましくは、環状基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル、およびデカリンから選択され;好ましくは、非環状基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択される。
【0136】
本発明の二本鎖RNA(dsRNA)は、任意選択で、1つ以上のリガンドとコンジュゲートしても良い。リガンドは、3’末端、5’末端、または両末端でセンス鎖、アンチセンス鎖、または両鎖に付着することができる。例えば、リガンドは、センス鎖、特にセンス鎖の3’末端にコンジュゲートすることができる。
【0137】
リガンド
多種多様な物質が、本発明のオリゴヌクレオチドに結合することができる。好ましい部分は、直接的にまたは介在テザーを介して間接的に、好ましくは共有結合で結合されるリガンドである。
【0138】
好ましい実施形態では、リガンドは、このリガンドが取り込まれる分子の分布、標的化、または寿命を変更する。好ましい実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドが存在しない種と比較して、選択される標的、例えば、分子、細胞もしくは細胞型、区画、受容体、例えば、細胞もしくは器官の区画、組織、器官、または体の領域に対する親和性を高める。選択される標的に対する親和性を高めるリガンドは、標的化リガンドとも呼ばれる。
【0139】
一部のリガンドは、エンドソーム溶解特性を有し得る。エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームの溶解、および/または本発明の組成物もしくはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する。エンドソーム溶解リガンドは、pH依存性の膜活性および融合性を示すポリアニオン性ペプチドまたはペプチド模倣体であっても良い。一実施形態では、エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームのpHでその活性型立体構造をとると推定される。「活性型」立体構造とは、エンドソーム溶解リガンドが、エンドソームの溶解、および/または本発明の組成物もしくはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する立体構造のことである。例示的なエンドソーム溶解リガンドとしては、GALAペプチド(Subbarao et al.,Biochemistry,1987,26:2964-2972)、EALAペプチド(Vogel et al.,J.Am.Chem.Soc.,1996,118:1581-1586)、およびこれらの誘導体(Turk et al.,Biochem.Biophys.Acta,2002,1559:56-68)が挙げられる。一実施形態では、エンドソーム溶解成分は、pHの変化に応じて電荷またはプロトン化の変化を起こす化学基(例えば、アミノ酸)を含み得る。エンドソーム溶解成分は、直鎖であっても、分岐鎖であっても良い。
【0140】
リガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性の特性を向上させることができ、結果として得られる天然オリゴリボヌクレオチドもしくは修飾オリゴリボヌクレオチド、または本明細書に記載されるモノマーおよび/もしくは天然リボヌクレオチドもしくは修飾リボヌクレオチドの任意の組み合わせを含むポリマー分子のヌクレアーゼ耐性も向上させることができる。
【0141】
リガンドは、一般に、例えば、取り込みを増強するための治療用修飾因子;例えば、分布を監視するための診断化合物またはレポーター基;架橋剤;およびヌクレアーゼ耐性を付与する部分を含み得る。一般的な例として、脂質、ステロイド、ビタミン、糖、タンパク質、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣体が挙げられる。
【0142】
リガンドとしては、天然に存在する物質、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、もしくはグロブリン);糖質(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、もしくはヒアルロン酸);または脂質を挙げることができる。リガンドは、組換え分子または合成分子、例えば、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)であっても良い。ポリアミノ酸を含むポリアミノ酸としては、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリエド(glycolied))コポリマー、ジビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例として、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはアルファへリックスペプチドが挙げられる。
【0143】
リガンドとして、標的化基、例えば、細胞標的化剤または組織標的化剤、例えば、腎臓細胞などの特定の細胞型に結合するレクチン、糖タンパク質、脂質、もしくはタンパク質、例えば、抗体も挙げることができる。標的化基は、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン糖質、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン(gulucosamine)、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸塩、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣体、またはアプタマーであっても良い。表2に、標的リガンドおよびそれらの関連する受容体のいくつかの例を示す。
【0144】
リガンドの他の例として、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼまたはキレート剤(例えば、EDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、もしくはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸塩、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
【0145】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、共リガンドに対して特異的な親和性を有する分子、または抗体、例えば、癌細胞、内皮細胞、もしくは骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体であっても良い。リガンドとして、ホルモンおよびホルモン受容体も挙げることができる。リガンドとして、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、糖質、ビタミン、コファクター、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、またはアプタマーも挙げることができる。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼの活性化因子、またはNF-κBの活性化因子であっても良い。
【0146】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することによって、iRNA剤の細胞内への取り込みを増大させることができる物質、例えば、薬物であっても良い。薬物は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビン(myoservin)であっても良い。
【0147】
リガンドは、例えば、炎症反応を活性化することによって、オリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを増加させることができる。このような効果を有し得る例示的なリガンドとしては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-1β、またはγインターフェロンが挙げられる。
【0148】
一態様では、リガンドは、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドは、コンジュゲートが、標的組織、例えば、体の非腎臓標的組織に分布するのを可能にする。例えば、標的組織は、肝臓の実質細胞を含む肝臓であっても良い。HSAに結合し得る他の分子もリガンドとして使用することができる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)コンジュゲートの分解に対する耐性を増大させ、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増大させることができ、かつ/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAに対する結合を調節するために使用することができる。
【0149】
脂質ベースのリガンドは、標的組織に対するコンジュゲートの結合を調節、例えば、制御するために使用することができる。例えば、HSAにより強く結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓を標的とする可能性が低く、従って、体内から除去される可能性が低い。HSAにそれほど強く結合しない脂質または脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートが腎臓を標的にするように使用することができる。
【0150】
好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。好ましくは、脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートが、好ましくは非腎臓組織に分布するように、十分な親和性でHSAに結合する。しかしながら、好ましくは、この親和性は、HSA-リガンド結合が逆行できないほど強力ではない。
【0151】
別の好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドは、HSAに対して弱く結合するかまたは全く結合しないため、コンジュゲートが、好ましくは腎臓に分布する。腎細胞を標的とする他の部分も、脂質ベースのリガンドの代わりに、またはこれに加えて使用することができる。
【0152】
別の態様では、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖細胞によって取り込まれる部分、例えば、ビタミンである。これらは、例えば、悪性型または非悪性型、例えば、癌細胞の望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を治療するのに特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。他の例示的なビタミンとしては、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または癌細胞によって取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が挙げられる。また、HAS、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)もが挙げられる。
【0153】
別の態様では、リガンドは、細胞透過剤、好ましくはヘリックス型の細胞透過剤である。好ましくは、作用剤は両親媒性である。例示的な作用剤は、ペプチド、例えば、tatまたはアンテナペディア(antennopedia)である。作用剤がペプチドである場合、ペプチジル模倣体、反転異性体、非ペプチド結合または偽ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含む修飾を施すことができる。好ましくは、このヘリックス型の細胞透過剤は、好ましくは親油性相および疎油性相を有するアルファヘリックス型の作用剤である。
【0154】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であっても良い。ペプチド模倣体(本明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)は、天然ペプチドと同様の定められた3次元構造に折り畳むことができる分子である。ペプチド部分またはペプチド模倣体部分は、約5~50のアミノ酸長さ、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50のアミノ酸長さであっても良い。ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、Trp、もしくはPheから構成される)であっても良い。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束ペプチド、または架橋ペプチドであっても良い。別の代替では、ペプチド部分は、疎水性の膜輸送配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAPを有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP)も標的化部分であっても良い。ペプチド部分は、「送達」ペプチドであっても良く、この送達ペプチドは、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質を含む大きな極性分子を、細胞膜を通過して運搬することができる。例えば、HIV Tatタンパク質由来の配列(GRKKRRQRRRPPQ)およびショウジョウバエアンテナペディアタンパク質由来の配列(RQIKIWFQNRRMKWKK)は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣体、例えば、ファージディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから特定されたペプチドは、DNAのランダム配列によってコードされても良い(Lam et al.,Nature,354:82-84,1991)。好ましくは、組み込まれたモノマー単位を介してiRNA剤に連結されたペプチドまたはペプチド模倣体は、細胞標的化ペプチド、例えば、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドまたはRGD模倣体である。ペプチド部分は、約5つのアミノ酸長さ~約40のアミノ酸長さの範囲とすることができる。ペプチド部分は、例えば、安定性または直接的な立体構造特性を高めるための、構造変化を有し得る。下記の構造変化のいずれも利用することができる。RGDペプチド部分は、内皮腫瘍細胞または乳癌腫瘍細胞などの腫瘍細胞を標的とするために使用することができる(Zitzmann et al.,Cancer Res.,62:5139-43,2002)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓を含む種々の他の組織の腫瘍に対するiRNA剤の標的化を促進することができる(Aoki et al.,Cancer Gene Therapy 8:783-787,2001)。好ましくは、RGDペプチドは、腎臓に対するiRNA剤の標的化を促進する。RGDペプチドは、直鎖または環状であっても良く、特定の組織に対する標的化を促進するために修飾する、例えば、グリコシル化またはメチル化することができる。例えば、グリコシル化RGDペプチドは、αβを発現する腫瘍細胞にiRNA剤を送達することができる(Haubner et al.,Jour.Nucl.Med.,42:326-336,2001)。増殖細胞に豊富なマーカーを標的とするペプチドを使用することができる。例えば、RGD含有ペプチドおよびRGD含有ペプチド模倣体は、癌細胞、特に、インテグリンを提示する細胞を標的とすることができる。従って、RGDペプチド、RGDを含有する環状ペプチド、D-アミノ酸を含むRGDペプチド、および合成RGD模倣体を使用することができる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的とする他の部分を使用することもできる。一般に、このようなリガンドは、増殖細胞および血管新生(angiogeneis)を制御するために使用することができる。この種のリガンドの好ましいコンジュゲートは、PECAM-1、VEGF、または他の癌遺伝子、例えば、本明細書に記載される癌遺伝子を標的とする。
【0155】
「細胞透過ペプチド」は、細胞、例えば、微生物細胞、例えば、細菌細胞もしくは真菌細胞、または哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞を透過することができる。微生物細胞を透過するペプチドは、例えば、α-ヘリックス直鎖ペプチド(例えば、LL-37もしくはセロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-ディフェンシン、β-ディフェンシン、もしくはバクテネシン)、または1種もしくは2種の優勢なアミノ酸のみを含有するペプチド(例えば、PR-39もしくはインドリシジン)であっても良い。細胞透過ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)も含み得る。例えば、細胞透過ペプチドは、HIV-1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40ラージT抗原のNLSに由来する二部両親媒性ペプチド、例えば、MPGであっても良い(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717-2724,2003)。
【0156】
一実施形態では、標的化ペプチドは、両親媒性α-ヘリックスペプチドであっても良い。例示的な両親媒性α-ヘリックスペプチドとしては、限定されるものではないが、セクロピン、リコトキシン(lycotoxin)、パラダキシン(paradaxin)、ブフォリン、CPF、ボンビニン-様ペプチド(BLP)、カテリシジン、セラトトキシン(ceratotoxin)、エボヤ(S.clava)ペプチド、メクラウナギ腸抗菌ペプチド(HFIAP)、マガイニン、ブレビニン-2、デルマセプチン、メリチン、プレウロシジン、HAペプチド、アフリカツメガエルペプチド、エスクレンチニス-1(esculentinis-1)、およびカエリンが挙げられる。好ましくは、多数の因子が、ヘリックス安定性の完全性を維持すると見なされる。例えば、最大数のヘリックス安定化残基(例えばleu、ala、またはlys)を利用し、最小数のヘリックス不安定化残基(例えばプロリン、または環状モノマー単位を利用する。キャッピング残基も考慮される(例えば、Glyは、例示的なN-キャッピング残基であり、かつ/またはC末端アミド化は、追加的な水素結合を実現してヘリックスを安定させるために使用することができる。i±3位、またはi±4位離間した、反対の電荷を有する残基間の塩架橋の形成によって安定させることができる。カチオン性残基、例えば、リジン、アルギニン、ホモ-アルギニン、オルニチン、またはヒスチジンは、アニオン性残基であるグルタミン酸またはアスパラギン酸と塩架橋を形成し得る。
【0157】
ペプチドリガンドおよびペプチド模倣体リガンドとしては、天然ペプチドまたは修飾ペプチド、例えば、DペプチドもしくはLペプチド;αペプチド、βペプチド、もしくはγペプチド;N-メチルペプチド;アザペプチド;1つ以上の尿素結合、チオ尿素結合、カルバミン酸結合、もしくはスルホニル尿素結合で置換された1つ以上のアミド結合、即ち、ペプチ結合を有するペプチド;または環状ペプチドを有するリガンドが挙げられる。
【0158】
標的化リガンドは、特定の受容体を標的とすることができるあらゆるリガンドであっても良い。例として、葉酸塩、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、糖クラスター、例えば、GalNAcクラスター、マンノースクラスター、ガラクトースクラスター、またはアプタマーが挙げられる。クラスターは、2つ以上の糖単位の組み合わせである。標的化リガンドは、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLリガンド、およびHDLリガンドも含む。リガンドは、核酸、例えば、アプタマーをベースにしても良い。アプタマーは、未修飾でも良いし、または本明細書に開示される修飾の任意の組み合わせを有しても良い。
【0159】
エンドソーム放出剤としては、イミダゾール、ポリまたはオリゴイミダゾール、PEI、ペプチド、融合性ペプチド、ポリカーボキシレート(polycaboxylate)、ポリカチオン(polyacation)、マスクオリゴまたはポリカチオンまたはアニオン、アセタール、ポリアセタール、ケタール/ポリケチアル(polyketyal)、オルトエステル、マスクまたは非マスクカチオンまたはアニオン電荷を有するポリマー、マスクまたは非マスクカチオンまたはアニオン電荷を有するデンドリマーが挙げられる。
【0160】
PKモジュレーターとは、薬物動態学的モジュレーターのことである。PKモジュレーターとしては、脂肪親和物、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPKモジュレーターとしては、限定されるものではないが、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられる。多数のホスホロチオエート連結を含むオリゴヌクレオチドも、血清タンパク質に結合することが知られており、したがって、骨格に多数のホスホロチオエート連結を含む短鎖オリゴヌクレオチド、例えば、約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基のオリゴヌクレオチドも、リガンドとして(例えば、PK調節リガンドとして)本発明に適用可能である。
【0161】
加えて、血清成分(例えば、血清タンパク質)に結合するアプタマーも、PK調節リガンドとして本発明に適用可能である。
【0162】
本発明に適用可能な他のリガンドコンジュゲートは、参照によりそれらの全開示内容が本明細書に組み入れられる、2004年8月10日出願の米国特許出願第10/916,185号明細書;2004年9月21日出願の同第10/946,873号明細書;2007年8月3日出願の同第10/833,934号明細書;2005年4月27日出願の同第11/115,989号明細書、および2007年11月21日出願の同第11/944,227号明細書に記載されている。
【0163】
2つ以上のリガンドが存在する場合、リガンドは、全て同じ特性を有しても良いし、全てが異なる特性を有しても良く、または一部のリガンドが、同じ特性を有する一方、他のリガンドが異なる特性を有しても良い。例えば、リガンドは、標的化特性を有しても良いし、エンドソーム的活性を有して良いし、またはPK調節特性を有しても良い。好ましい実施形態では、全てのリガンドが異なる特性を有する。
【0164】
リガンドは、様々な位置、例えば3’末端、5’末端、および/または内部位置で、オリゴヌクレオチドに結合することができる。好ましい実施形態では、リガンドは、介在テザー、例えば、本明細書に記載される担体を介してオリゴヌクレオチドに結合している。前記モノマーが成長している鎖に組み込まれる場合、リガンドまたはテザーリガンドは、このモノマーに存在しても良い。一部の実施形態では、リガンドは、「前駆体」モノマーが、成長している鎖に組み込まれた後で、前記「前駆体」モノマーへの結合によって組み込むことができる。例えば、末端がアミノであるテザー(即ち、リガンドが結合されていない)、例えば、TAP-(CHNHを有するモノマーを、成長しているオリゴヌクレオチド鎖に組み込むことができる。これに続く作業、即ち、前駆体モノマーが鎖に組み込まれた後で、リガンドの求電子基と前駆体モノマーのテザーの末端求核基との結合によって、求電子基、例えば、ペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドを、その後、前駆体モノマーに結合させることができる。
【0165】
別の例では、クリック化学反応に参加するのに適した化学基を有するモノマーを、例えば、末端がアジドまたはアルキンのテザー/リンカーに組み込むことができる。これに続く作業、即ち、前駆体モノマーが鎖に組み込まれた後で、相補的な化学基、例えば、アルキンまたはアジドを有するリガンドを、アルキンおよびアジドを共に結合することによって前駆体モノマーに結合することができる。
【0166】
二本鎖オリゴヌクレオチドの場合、リガンドは、一方または両方の鎖に結合することができる。一部の実施形態では、二本鎖iRNA剤は、センス鎖にコンジュゲートされたリガンドを含有する。他の実施形態では、二本鎖iRNA剤は、アンチセンス鎖にコンジュゲートされたリガンドを含有する。
【0167】
一部の実施形態では、リガンドは、核酸分子の核酸塩基、糖部分、またはヌクレオシド間結合にコンジュゲートすることができる。プリン核酸塩基またはその誘導体に対するコンジュゲーションは、環内原子および環外原子を含む任意の位置に生じ得る。一部の実施形態では、プリン核酸塩基の2位、6位、7位、または8位が、コンジュゲート部分に結合している。また、ピリミジン核酸塩基またはその誘導体に対するコンジュゲーションは、どの位置で生じても良い。一部の実施形態では、ピリミジン核酸塩基の2位、5位、および6位を、コンジュゲート部分と置換することができる。ヌクレオシドの糖部分に対するコンジュゲーションは、どの炭素原子で生じても良い。コンジュゲート部分に結合することができる糖部分の炭素原子の例には、2’、3’、および5’炭素原子が挙げられる。1’位も、コンジュゲート部分、例えば、脱塩基残基に結合することができる。ヌクレオシド間結合も、コンジュゲート部分を保持することができる。リン含有結合(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート(phosphorodithiotate)、およびホスホロアミデートなど)の場合、コンジュゲート部分は、リン原子に直接結合する、またはリン原子に結合しているO、N、またはS原子に結合することができる。アミンまたはアミドを含有するヌクレオシド間結合(例えば、PNA)の場合、コンジュゲート部分は、アミンまたはアミドの窒素原子に、または隣接する炭素原子に結合することができる。
【0168】
RNA干渉の分野におけるあらゆる適切なリガンドを使用することができるが、このようなリガンドは、典型的には、糖質、例えば、単糖(例えば、GalNAc)、二糖、三糖、四糖、多糖である。
【0169】
リガンドを核酸にコンジュゲートさせるリンカーは、上述のリンカーを含む。例えば、リガンドは、二価または三価の分岐リンカーによって付着された1つ以上のGalNAc(N-アセチルグルコサミン)誘導体であっても良い。
【0170】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、次の式(IV)~(VII)の何れかに示されている構造を含む二価および三価の分岐リンカーにコンジュゲートする:
【化1】
式中、
2A、q2B、q3A、q3B、q4、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは存在ごとに独立して、0~20を表し、反復単位は、同じであっても良いし、または異なっていても良く;
2A、P2B、P3A、P3B、P4A、P4B、P5A、P5B、P5C、T2A、T2B、T3A、T3B、T4A、T4B、T4A、T5B、T5Cはそれぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH、CHNH、またはCHOを表し;
2A、Q2B、Q3A、Q3B、Q4A、Q4B、Q5A、Q5B、Q5Cは存在ごとに独立して、存在しないか、アルキレン、置換アルキレンを表し、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO、N(R)、C(R’)=C(R’’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上によって中断または終了させることができ;
2A、R2B、R3A、R3B、R4A、R4B、R5A、R5B、R5Cはそれぞれ存在ごとに独立して、NH、O、S、CH、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R)C(O)、-C(O)-CH(R)-NH-、CO、CH=N-O、
【化2】
、またはヘテロシクリルを表し;
2A、L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L5A、L5B、およびL5Cは、リガンドを表す;即ち、それぞれ存在ごとに独立して、単糖(例えば、GalNAc)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖を表し;かつ
は、Hまたはアミノ酸側鎖である。
【0171】
三価コンジュゲートGalNAc誘導体、例えば、式(VII)のような誘導体は、標的遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤と共に使用すると特に有用である:
【化3】
式中、L5A、L5B、およびL5Cは、単糖、例えば、GalNAc誘導体を表す。
【0172】
適切な二価および三価分岐リンカー基コンジュゲートGalNAc誘導体は、限定されるものではないが、以下の化合物を含む:
【化4】
【化5】
【化6】
【0173】
定義
本明細書で使用される「dsRNA」、「siRNA」、および「iRNA剤」は、標的RNA、例えば、mRNA、例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写物のサイレンシングを媒介することができる作用剤と互換的に使用される。便宜上、このようなmRNAは、本明細書ではサイレンシングされるmRNAとも呼ばれる。このような遺伝子は、標的遺伝子とも呼ばれる。一般に、サイレンシングされるRNAは、内在性遺伝子または病原遺伝子である。加えて、mRNA以外のRNA、例えば、tRNA、およびウイルスRNAも標的とすることができる。
【0174】
本明細書で使用される「RNAiを媒介する」という句は、標的RNAを配列特異的にサイレンシングする能力を指す。理論に拘束されることを望むものではないが、サイレンシングは、RNAi機構またはプロセスおよびガイドRNA、例えば、21~23のヌクレオチドのsiRNA剤を使用すると考えられる。
【0175】
本明細書で使用される「特異的にハイブリダイズ可能な」および「相補的な」は、本発明の化合物と標的RNA分子との間に安定した特異的な結合が生じるような十分な相補性を示すために使用される語である。特異的な結合は、特異的な結合が望ましい条件下、即ち、アッセイもしくは治療の場合の生理的条件下、またはin vitroアッセイの場合、アッセイが行われる条件下、オリゴマー化合物の非標的配列への特異的な結合を回避するために十分な相補性を必要とする。非標的配列は、典型的には、少なくとも5つのヌクレオチドが異なる。
【0176】
一実施形態では、本発明のdsRNA剤は、このdsRNA剤が、標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をサイレンシングするように、標的RNA、例えば、標的mRNAに「十分に相補的」である。別の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、標的RNAに「厳密に相補的」である、例えば、標的RNAとdsRNA二重鎖剤とがアニーリングして、例えば、厳密に相補的な領域におけるワトソン-クリック型塩基対のみからなるハイブリッドを形成する。「十分に相補的な」標的RNAは、標的RNAに厳密に相補的な内部領域(例えば、少なくとも10のヌクレオチド)を含み得る。さらに、一部の実施形態では、本発明のdsRNA剤は、1つのヌクレオチドの違いを特異的に識別する。この場合、dsRNA剤は、厳密な相補性が、1つのヌクレオチドの違いがある領域(例えば、7つのヌクレオチド以内)で見られる場合にのみRNAiを媒介する。
【0177】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という語は、例えば、100未満、200未満、300未満、または400未満のヌクレオチドの核酸分子(RNAまたはDNA)を指す。
【0178】
「ハロ」という語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のあらゆるラジカルを指す。「アルキル」という語は、任意選択でN、O、またはSを挿入しても良い、指示数の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖であり得る飽和および不飽和非芳香族炭化水素鎖(これらには、限定されるものではないが、プロピル、アリル、またはプロパルギルが含まれる)を指す。例えば、C~C10は、基が、その中に1~10(全てを含む)の炭素原子を有し得ることを示す。「アルコキシ」という語は、-O-アルキルラジカルを指す。「アルキレン」という語は、二価アルキル(即ち、-R-)を指す。「アルキレンジオキソ」という語は、構造-O-R-O-の二価種を指し、Rは、アルキレンを表す。「アミノアルキル」という語は、アミノで置換されたアルキルを指す。「メルカプト」という語は、-SHラジカルを指す。「チオアルコキシ」という語は、S-アルキルラジカルを指す。
【0179】
「アリール」という語は、6炭素単環式または10炭素二環式芳香族環系を指し、各環の0、1つ、2つ、3つ、または4つの原子が置換基によって置換されても良い。アリール基の例としては、フェニルおよびナフチルなどが挙げられる。「アリールアルキル」または「アラルキル」という語は、アリールで置換されたアルキルを指す。「アリールアルコキシ」という語は、アリールで置換されたアルコキシを指す。
【0180】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という語は、3~12の炭素、例えば、3~8の炭素、および、例えば、3~6の炭素を有する飽和および部分飽和環式炭化水素基を含み、シクロアルキル基はさらに、任意選択で置換されても良い。シクロアルキル基としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0181】
「ヘテロアリール」という語は、単環式の場合には1~3のヘテロ原子、二環式の場合には1~6のヘテロ原子、または三環式の場合には1~9のヘテロ原子を有する芳香族の5~8員環単環式、8~12員環二環式、または11~14員環三環式環系を指し、前記へテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合にはそれぞれ、炭素原子およびN、O、またはSの1~3、1~6、または1~9のヘテロ原子)、各環の0、1つ、2つ、3つ、または4つの原子は、置換基で置換されても良い。ヘテロアリル基の例としては、ピリジル、フリルまたはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、キノリニル、インドリニル、およびチアゾリルなどが挙げられる。「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアラルキル」という語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0182】
「ヘテロシクリル」という語は、単環式の場合には1~3のヘテロ原子、二環式の場合には1~6のヘテロ原子、または三環式の場合には1~9のヘテロ原子を有する非芳香族の5~8員環単環式、8~12員環二環式、または11~14員環三環式環系を指し、前記へテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合にはそれぞれ、炭素原子およびN、O、またはSの1~3、1~6、または1~9のヘテロ原子)、各環の0、1つ、2つ、または3つの原子は、置換基で置換されても良い。ヘテロシクリル基の例としては、トリゾリル(trizolyl)、テトラゾリル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、およびテトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0183】
「オキソ」という語は、炭素に結合したときにカルボニルを形成し、窒素に結合したときにN-オキシドを形成し、硫黄に結合したときにスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子を指す。
【0184】
「アシル」という語は、アルキルカルボニル置換基、シクロアルキルカルボニル置換基、アリールカルボニル置換基、ヘテロシクリルカルボニル置換基、またはヘテロアリールカルボニル置換基を指し、これらの何れも、置換基でさらに置換されても良い。
【0185】
「置換された」という語は、所与の構造における1つ以上の水素ラジカルの特定の置換基のラジカルでの置換を指し、この特定の置換基としては、限定されるものではないが、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、複素環式、および脂肪族が挙げられる。置換基は、さらに置換され得ることを理解されたい。
【0186】
開裂可能連結基
開裂可能連結基は、細胞外で十分安定しているが、標的細胞に入ると開裂されてリンカーが一緒に保持する2つの部分を放出する、連結基である。好ましい実施形態では、開裂可能連結基は、対象の血液中または第2の基準条件下(例えば、血液または血清に存在する条件を模倣または実現するように選択することができる)よりも、標的細胞内または第1の基準条件下(例えば、細胞内の条件を模倣または実現するように選択することができる)において、少なくとも10倍以上、好ましくは、少なくとも100倍速く開裂する。
【0187】
開裂可能連結基は、開裂剤、例えば、pH、酸化還元電位、または分解性分子の存在の影響を受けやすい。一般に、開裂剤は、血清または血液中よりも細胞内において、より行き渡る、またはより高いレベルもしくは活性で存在する。このような分解剤の例としては、還元によって酸化還元性開裂可能連結基を分解することができる、例えば、細胞内に存在する、酸化酵素もしくは還元酵素または還元剤、例えば、メルカプタンを含む、特定の基質に対して選択されるか、もしくは基質特異性を有しない酸化還元剤;エステラーゼ;酸性環境を生じさせる、例えば、5以下のpHにすることができるエンドソームまたは作用剤;一般酸、ペプチダーゼ(基質特異的であっても良い)、およびホスファターゼとしての機能を果たすことによって酸性開裂可能連結基を加水分解または分解することができる酵素が挙げられる。
【0188】
開裂可能連結基、例えば、ジスルフィド結合は、pHの影響を受けやすい。ヒト血清のpHは、7.4であるが、平均細胞内pHは、わずかに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらに酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで開裂され、これにより、リガンドから細胞内へ、または細胞の所望の区画内にカチオン性脂質を放出する開裂可能連結基を有する。
【0189】
リンカーは、特定の酵素によって開裂可能である、開裂可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる開裂可能連結基の種類は、標的とされる細胞によって異なり得る。例えば、肝臓を標的とするリガンドは、エステル基を含むリンカーを介してカチオン性脂質に連結することができる。肝細胞は、エステラーゼが豊富であり、したがって、リンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも肝細胞でより効率的に開裂する。エステラーゼが豊富な他の細胞型としては、肺、腎皮質、および睾丸の細胞が挙げられる。
【0190】
ペプチダーゼが豊富な細胞型、例えば、肝細胞および滑膜細胞を標的とする場合は、ペプチド結合を含むリンカーを使用することができる。
【0191】
一般に、候補の開裂可能連結基の適合性は、候補連結基を開裂する分解剤(または条件)の能力を試験することによって評価することができる。また、血中での、または他の非標的組織と接触しているときの開裂に抵抗する能力について候補の開裂可能連結基を試験することも望ましい。したがって、第1の条件と第2の条件との間の相対的な開裂のしやすさを決定することができ、この第1の条件は、標的細胞内の開裂を示すために選択され、この第2の条件は、他の組織または体液、例えば、血液もしくは血清中での開裂を示すために選択される。無細胞系、細胞、細胞培養物、器官もしくは組織培養物、または動物全体で評価を行うことができる。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、動物全体でのさらなる評価によって確認することが有用であり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液もしくは血清(または細胞外の条件を模倣するように選択されるin vitroでの条件下)と比較して細胞内(または細胞内の条件を模倣するように選択されるin vitroでの条件下)で少なくとも2倍、4倍、10倍、または100倍速く開裂する。
【0192】
酸化還元性開裂可能連結基
開裂可能連結基の1つのクラスは、還元または酸化時に開裂する酸化還元性開裂可能連結基である。還元的に開裂可能な連結基の一例として、ジスルフィド連結基(-S-S-)が挙げられる。候補の開裂可能連結基が適切な「還元的に開裂可能な連結基」であるか否か、または、例えば、特定のiRNA部分および特定の標的作用剤と共に使用するのに適しているか否かを決定するために、本明細書に記載される方法を確認することができる。例えば、候補は、細胞、例えば、標的細胞で観察され得る開裂速度を模倣する当分野で公知の試薬を使用してジチオスレイトール(DTT)またはた他の還元剤と共にインキュベートすることによって評価することができる。候補はまた、血液または血清条件を模倣するために選択される条件下でも評価することができる。好ましい一実施形態では、候補化合物は、血中では最大で10%開裂する。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外の条件を模倣するように選択されるin vitroでの条件下)と比較して、細胞内(または細胞内の条件を模倣するように選択されるin vitroでの条件下)では少なくとも2倍、4倍、10倍、または100倍速く分解される。候補化合物の開裂速度は、細胞内培地を模倣するように選択される条件下で標準的な酵素反応速度アッセイを使用して決定して、細胞外培地を模倣するように選択される条件と比較することができる。
【0193】
リン酸塩系開裂可能連結基
リン酸塩系開裂可能連結基は、リン酸基を分解または加水分解する作用剤によって開裂する。細胞内のリン酸基を開裂する作用剤の一例として、細胞内の酵素、例えば、ホスファターゼが挙げられる。リン酸塩系の連結基の例としては、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-が挙げられる。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、-O-P(S)(H)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補は、上記の方法と類似した方法を使用して評価することができる。
【0194】
酸性開裂可能連結基
酸性開裂可能連結基は、酸性条件下で開裂する連結基である。好ましい実施形態では、酸性開裂可能連結基は、約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0、またはそれ以下)のpHの酸性環境において、または一般酸として機能し得る作用剤、例えば、酵素剤によって開裂する。細胞において、特定のpHの低い細胞小器官、例えば、エンドソームおよびリソソームは、酸性開裂可能連結基に開裂環境を提供することができる。酸性開裂可能連結基の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸エステルが挙げられる。酸性開裂可能な基は、一般式:-C=NN-、C(O)O、または-OC(O)を有し得る。好ましい一実施形態は、エステル(アルコキシ基)の酵素に結合した炭素が、アリール基、置換アルキル基、または第3級アルキル基、例えば、ジメチルペンチルもしくはt-ブチルである場合である。これらの候補は、上記の方法と類似した方法を使用して評価することができる。
【0195】
エステル系開裂可能連結基
エステル系開裂可能連結基は、細胞内の酵素、例えば、エステラーゼおよびアミダーゼによって開裂する。エステル系開裂可能連結基の例としては、限定されるものではないが、アルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基のエステルが挙げられる。エステル系開裂可能連結基は、一般式:-C(O)O-または-OC(O)-を有する。これらの候補は、上記の方法と類似した方法を使用して評価することができる。
【0196】
ペプチド系開裂連結基
ペプチド系開裂可能連結基は、細胞内の酵素、例えば、ペプチダーゼおよびプロテアーゼによって開裂する。ペプチド系開裂可能連結基は、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドが生じる、アミノ酸間に形成されるペプチド結合である。ペプチド系開裂可能連結基は、アミド基(-C(O)NH-)を含まない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン間で形成され得る。ペプチド結合は、ペプチドおよびタンパク質が生成するアミノ酸間に形成されるアミド結合の特別な種類である。ペプチド系開裂基は、一般に、ペプチドおよびタンパク質が生じる、アミノ酸間に形成されるペプチド結合(即ち、アミド結合)に限定され、アミド官能基全体を含むものではない。ペプチド系開裂可能連結基は、一般式:-NHCHRC(O)NHCHRC(O)-を有し、RおよびRは、2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上記の方法と類似した方法を使用して評価することができる。本明細書で使用される「糖質」は、それぞれの炭素原子に酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子が結合した少なくとも6つの炭素原子(直鎖、分岐鎖、もしくは環状でも良い)を有する1つ以上の単糖単位から形成される糖質自体;または、それぞれの炭素原子に酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子が結合した少なくとも6つの炭素原子(直鎖、分岐鎖、もしくは環状でも良い)をそれぞれ有する1つ以上の単糖単位から形成される糖質部分をその一部として有する化合物を指す。代表的な糖質としては、糖(単糖、二糖、三糖、および約4~9の単糖単位を含むオリゴ糖)、ならびに多糖、例えば、スターチ、グリコーゲン、セルロース、および多糖ガムが挙げられる。特定の単糖としては、Cおよび上記の(好ましくはC~C)糖が挙げられ;二糖および三糖としては、2つまたは3つの単糖単位(好ましくはC~C)を有する糖が挙げられる。
【0197】
代替の実施形態
別の実施形態では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。このdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。センス鎖およびアンチセンス鎖における各ヌクレオチドは修飾されている。センス鎖およびアンチセンス鎖における修飾はそれぞれ独立して、少なくとも2つの異なる修飾を有する。
【0198】
別の実施形態では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。このdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖の修飾パターンは、センス鎖の修飾パターンに対して1つ以上のヌクレオチドがずれている。
【0199】
別の実施形態では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。このdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも2つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、センス鎖の切断部位に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位またはその近傍のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。
【0200】
別の実施形態では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。このdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、14~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも2つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、センス鎖の切断部位に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在し、モチーフの少なくとも1つが、切断部位またはその近傍のモチーフから少なくともヌクレオチド1つ離れたアンチセンス鎖の別の部分に存在する。センス鎖の切断部位に存在するモチーフの修飾は、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在するモチーフの修飾とは異なる。別の実施形態では、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害することができるdsRNA剤に関する。このdsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、各鎖は、12~30のヌクレオチドを有する。センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-F修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも1つが、センス鎖の切断部位に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの2’-O-メチル修飾からなる少なくとも1つのモチーフを含む。
【0201】
センス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフを含み、1つ以上の追加的なモチーフが、切断部位の3つの2’-F修飾から少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。アンチセンス鎖は、3つの連続したヌクレオチドにおける3つの同一の修飾からなる1つ以上のモチーフを含み、1つ以上の追加的なモチーフが、3つの2’-O-メチルから少なくともヌクレオチド1つ離れたセンス鎖の別の部分に存在する。2’-F修飾を有するヌクレオチドの少なくとも1つは、2’-O-メチルを有するヌクレオチドの1つと塩基対を形成することができる。
【0202】
一実施形態では、本発明のdsRNAは、緩衝液に溶解して投与される。
【0203】
一実施形態では、本明細書に記載されるsiRNA化合物は、対象に投与するために製剤することができる。製剤されるsiRNA組成物は、様々な状態をとることができる。一部の例では、この組成物は、少なくとも部分的に結晶、均一に結晶、および/または無水(例えば、80%未満、50%未満、30%未満、20%未満、または10%未満の水)である。別の例では、siRNAは、水相、例えば、水を含む溶液に溶解される。
【0204】
水相および結晶性組成物は、例えば、送達ビヒクル、例えば、リポソーム(特に水相の場合)または粒子(例えば、結晶性組成物に適切であり得る微粒子)に含めることができる。一般に、siRNA組成物は、本明細書に記載される意図する投与法に適合するように製剤される。例えば、特定の実施形態では、この組成物は、少なくとも1つの次の方法によって調製される:噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、蒸発、流動床乾燥、もしくはこれらの技術の組み合わせ;または脂質を用いた超音波処理、フリーズドライ、凝縮、および他の自己集合。
【0205】
siRNA調製物は、別の作用剤、例えば、別の治療剤、またはsiRNAを安定させる作用剤、例えば、siRNAと複合体を形成してiRNPを形成するタンパク質と組み合わせて製剤することができる。なお他の作用剤としては、キレート剤、例えば、EDTA(例えば、二価のカチオン、例えば、Mg2+を除去するための)、塩、およびRNA分解酵素阻害剤(例えば、特異性の広いRNA分解酵素阻害剤、例えば、RNAsin)などが挙げられる。
【0206】
一実施形態では、siRNA調製物は、別のsiNA化合物、例えば、第2の遺伝子または同じ遺伝子に対してRNAiを媒介することができる第2のsiRNAを含む。なお他の調製物は、少なくとも3、5、10、20、50、または100以上の異なるsiRNA種を含み得る。このようなsiRNAは、同様の数の異なる遺伝子に対してRNAiを媒介することができる。
【0207】
一実施形態では、siRNA調製物は、少なくとも第2の治療剤(例えば、RNAまたはDNA以外の作用剤)を含む。例えば、ウイルス疾患、例えば、HIVの治療用のsiRNA組成物は、公知の抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤または逆転写酵素阻害剤)を含む。別の例では、癌治療用のsiRNA組成物は、化学療法剤をさらに含み得る。
【0208】
例示的な製剤を以下に説明する
リポソーム。説明を容易にするために、このセクションにおける製剤、組成物、および方法は、主に無修飾siRNA化合物に関して説明する。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のsiRNA化合物、例えば、修飾siRNAを用いて実施することができ、このような実施が、本発明の範囲内であることを理解できよう。siRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物、またはssiRNA化合物、(例えば、前駆体、例えば、ssiRNA化合物にプロセシングすることができるより大きなsiRNA化合物、またはsiRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物をコードするDNA、またはssiRNA化合物、またはそれらの前駆体)調製物は、送達するために膜分子集合体、例えば、リポソームまたはミセルに製剤することができる。本明細書で使用される「リポソーム」という語は、少なくとも1つの二重層、例えば、1つの二重層または複数の二重層で構成された両親媒性脂質からなる小胞を指す。リポソームは、親油性材料および水性内部から形成される膜を有する単層小胞および多層小胞を含む。水性部分は、siRNA組成物を含む。親油性材料は、水性内部を水性外部から隔離し、この水性外部は、典型的にはsiRNA組成物を含まないが、一部の例では含むこともある。リポソームは、有効成分の作用部位への移送および送達に有用である。リポソーム膜は、生体膜に構造的に類似しているため、リポソームが組織に接触すると、リポソーム二重層が、細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞との一体化が進むと、siRNAを含む内部水性成分が、細胞内に送達され、そこで、siRNAは、標的RNAに特異的に結合して、RNAiを媒介することができる。場合によって、リポソームは、特異的に標的化され、例えば、siRNAを特定の細胞型に誘導する。
【0209】
siRNAを含むリポソームは、様々な方法で調製することができる。一例では、リポソームの脂質成分は、洗剤に溶解され、これにより、ミセルが脂質成分で形成される。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン脂質または脂質コンジュゲートとすることができる。洗剤は、高い臨界ミセル濃度を有することができ、非イオン性であり得る。例示的な洗剤としては、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩、およびラウロイルサルコシンが挙げられる。次いで、siRNA調製物が、脂質成分を含むミセルに添加される。脂質上のカチオン基が、siRNAと相互作用して、siRNAの周りに凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、洗剤が、例えば、透析によって除去され、siRNAのリポソーム調製物が得られる。
【0210】
必要に応じて、凝縮を補助する担体化合物を、例えば、制御された添加によって、凝縮反応中に添加することができる。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)とすることができる。pHを、凝縮に適するように調整することもできる。
【0211】
送達ビヒクルの構造成分としてポリヌクレオチド/カチオン脂質複合体を包含する安定なポリヌクレオチド送達ビヒクルを形成するための方法のさらなる詳細が、国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。リポソームの形成は、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987; 米国特許第4,897,355号明細書;同第5,171,678号明細書;Bangham,et al.M.Mol.Biol.23:238,1965;Olson,et al.Biochim.Biophys.Acta 557:9,1979;Szoka,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194,1978;Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984;Kim,et al.Biochim.Biophys.Acta 728:339,1983;およびFukunaga,et al.Endocrinol.115:757,1984に記載されている例示的な方法の1つ以上の態様も含み得る。送達ビヒクルとして使用するのに適切なサイズの脂質凝集体を調製するために一般的に使用される技術は、超音波処理および凍結融解と押し出しを含む(例えば、Mayer,et al.Biochim.Biophys.Acta 858:161,1986を参照されたい)。一貫して小さく(50~200nm)比較的均一な凝集体が望ましい場合は、微小流動化を使用することができる(Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984)。このような方法は、siRNA剤調製物をリポソームの中にパッケージングするために容易に適合される。
【0212】
pH感受性または負に帯電したリポソームは、核酸分子と複合体を形成するのではなく、核酸分子を取り込む。核酸分子および脂質の両方が同様に帯電しているため、複合体が形成されるのではなく反発が起きる。とは言え、一部の核酸分子は、これらのリポソームの水性内部内に取り込まれる。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養中の細胞単層に送達するために使用される。外来遺伝子の発現が標的細胞で検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,19,(1992) 269-274)。
【0213】
1つの重要な種類のリポソーム組成物は、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。アニオン性リポソーム組成物は、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成され、アニオン性融合性リポソームは、主として、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別の種類のリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)、例えば、大豆PCおよび卵PCなどから形成される。別の種類は、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0214】
リポソームをin vitroで細胞に導入する他の方法の例として、米国特許第5,283,185号明細書;同第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;同第93/24640号パンフレット;同第91/16024号パンフレット;Felgner,J.Biol.Chem.269:2550,1994;Nabel,Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307,1993;Nabel,Human Gene Ther.3:649,1992;Gershon,Biochem.32:7143,1993;およびStrauss EMBO J.11:417,1992が挙げられる。
【0215】
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合できるという利点を有する。非カチオン性リポソームは、効率的には原形質膜と効率的に融合することができないが、in vivoでマクロファージによって取り込まれるため、siRNAをマクロファージに送達するために使用することができる。
【0216】
リポソームのさらなる利点としては:天然リン脂質から得られるリポソームが、生体適合性かつ生体分解性であること;リポソームが、種々の水溶性および脂溶性薬物を取り込むことができること;リポソームが、内部区画内に取り込まれたsiRNAを代謝および分解から保護できること(Rosoff,in”Pharmaceutical Dosage Forms,”Lieberman,RiegerおよびBanker (Eds.),1988,volume 1,p.245)が挙げられる。リポソーム製剤の調製における重要な考慮すべき事項は、脂質表面の電荷、小胞サイズ、およびリポソームの水中体積である。
【0217】
正に帯電した合成カチオン性脂質、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)を使用して、核酸と自然に相互作用して脂質-核酸複合体を形成する小型リポソームを形成することができ、この脂質-核酸複合体は、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合し、結果としてsiRNAを送達することができる(例えば、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987、ならびにDOTMAおよびそのDNAとの使用が記載されている米国特許第4,897,355号明細書を参照されたい)。
【0218】
DOTMA類似体、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用して、DNAと複合体を形成する小胞を形成することができる。Lipofectin(商標)Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,Md.)は、高度にアニオン性の核酸を生きた組織培養細胞に送達するための有効な作用剤であり、この組織培養細胞は、負に帯電したポリヌクレオチドと自然に相互作用して複合体を形成する正に帯電したDOTMAリポソームを含む。十分に正に帯電したリポソームが使用されると、得られる複合体の正味荷電も正である。このように調製される正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自然に付着し、原形質膜に融合し、そして機能性核酸を、例えば、組織培養細胞に有効に送達する。別の市販のカチオン性脂質、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,Indiana)は、オレオイル部分が、エーテル結合ではなくエステルによって結合されているという点でDOTMAとは異なる。
【0219】
他の報告されているカチオン性脂質化合物は、例えば、2種類のうちの1種類の脂質にコンジュゲートして、化合物、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標)、Promega,Madison,Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)を含むカルボキシスペルミンを含め、様々な部分にコンジュゲートしたものを含む(例えば、米国特許第5,171,678号明細書を参照されたい)。
【0220】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、DOPEと組み合わせてリポソーム内に含められて製剤されたコレステロール(「DC-Chol」)による脂質の誘導体を含む(Gao, X.and Huang,L.,Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280,1991を参照されたい)。ポリリシンをDOPEにコンジュゲートさせることによって形成されたリポポリリジンは、血清の存在下でのトランスフェクションに有効であることが報告されている(Zhou,X.et al.,Biochim.Biophys.Acta 1065:8,1991)。特定の細胞株では、コンジュゲートカチオン性脂質を含むこのようなリポソームは、DOTMA含有組成物よりも低い毒性を示し、かつより効率的なトランスフェクションを実現すると言われている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical,La Jolla,California)およびLipofectamine(DOSPA)(Life Technology,Inc.,Gaithersburg,Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に適した他のカチオン性脂質は、国際公開第98/39359号明細書および同第96/37194号明細書に記載されている。
【0221】
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームには、他の製剤よりもいくつかの利点が存在する。このような利点は、投与された薬物の高い全身吸収に関連した副作用の低下、所望の標的における投与された薬物の蓄積の増加、およびsiRNAを皮膚に投与する能力が挙げられる。一部の実施では、リポソームは、siRNAを上皮細胞に送達するために、そしてsiRNAの皮膚組織、例えば、皮膚への浸透を促進するためにも使用される。例えば、リポソームは、局所的に適用することができる。リポソームとして製剤された薬物の皮膚への局所送達は実証されている(例えば、Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,vol.2,405-410 and du Plessis et al.,Antiviral Research,18,1992,259-265;Mannino,R.J.and Fould-Fogerite,S.,Biotechniques 6:682-690,1988;Itani,T.et al.Gene 56:267-276.1987;Nicolau,C.et al.Meth.Enz.149:157-176,1987;Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.Meth.Enz.101:512-527,1983;Wang,C.Y.and Huang,L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851-7855,1987を参照されたい)。
【0222】
非イオン性リポソーム系もまた、特に、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系において、薬物の皮膚への送達における実用性を決定するために試験された。Novasome I(ジラウリル酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウスの皮膚の真皮に薬物を送達するために使用された。siRNAを含むこのような製剤は、皮膚障害を治療するのに有用である。
【0223】
siRNAを含むリポソームは、高度に変形可能に形成することができる。このような変形性は、リポソームの平均半径よりも小さい孔にリポソームが進入するのを可能にし得る。例えば、トランスファーソームは、変形可能なリポソームの1種である。トランスファーソームは、表面縁活性化因子、通常は界面活性剤を標準的なリポソーム組成物に添加することによって作製することができる。siRNAを含むトランスファーソームは、siRNAを皮膚内のケラチノサイトに送達するために、例えば、皮下注射によって送達することができる。無傷の哺乳動物の皮膚を通過するためには、脂質小胞は、適当な経皮勾配の影響下で、直径がそれぞれ50nm未満の一連の微孔を通って通過しなければならない。加えて、脂質の特性により、このようなトランスファーソームは、自己最適化性(例えば、皮膚の孔の形状に適応すること)、自己修復性であり得ると共に、多くの場合、断片化されずに標的に到達することができ、しばしば自己負荷性(self-loading)であり得る。
【0224】
本発明に適用可能な他の製剤は、2008年1月2日出願の米国仮特許出願第61/018,616号明細書;2008年1月2日出願の同第61/018,611号明細書;2008年3月26日出願の同第61/039,748号明細書;2008年4月22日出願の同第61/047,087号明細書;および2008年5月8日出願の同第61/051,528号明細書に記載されている。2007年10月3日出願の国際出願PCT/US2007/080331号パンフレットにも、本発明に適用可能な製剤が記載されている。
【0225】
界面活性剤。説明を容易にするために、このセクションにおける製剤、組成物、および方法は、主に無修飾siRNA化合物に関して説明する。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のsiRNA化合物、例えば、修飾siRNA化合物を用いて実施することができ、このような実施が、本発明の範囲内であることを理解できよう。界面活性剤は、製剤、例えば、エマルション(マイクロエマルションを含む)およびリポソーム(上記)において幅広い用途が見出されている。siRNA(または前駆体、例えば、プロセシングしてsiRNAにすることができるより大きなdsiRNA、またはsiRNAもしくは前駆体をコードするDNA)組成物は、界面活性剤を含み得る。一実施形態では、siRNAは、界面活性剤を含むエマルションとして製剤される。多数の異なる種類の天然および合成の両方の界面活性剤の特性を分類およびランク付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基の性質は、製剤に使用される異なる界面活性剤を分類するための最も有用な手段となる(Rieger, in “Pharmaceutical Dosage Forms,”Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0226】
界面活性剤分子がイオン化されない場合、この界面活性剤分子は、非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、薬学的製品において幅広い用途が見出されており、広範囲のpH値に対して使用可能である。一般に、これらのHLB値は、その構造によって2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、非イオン性エステル、例えば、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルが挙げられる。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル、例えば、脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスのうち最も一般的なメンバーである。
【0227】
界面活性剤分子が、水に溶解または分散されたときに負の電荷を有する場合、この界面活性剤分子は、アニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、例えば、石鹸、アシル乳酸塩、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル、例えば、硫酸アルキルおよび硫酸エトキシル化アルキル、スルホン酸塩、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アシルタウレート、およびスルホコハク酸塩、ならびにリン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスのうち最も重要なメンバーは、硫酸アルキルおよび石鹸である。
【0228】
界面活性剤分子が、水に溶解または分散されたときに正の電荷を有する場合、この界面活性剤分子は、カチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。四級アンモニウム塩は、このクラスのうちで最も使用されるメンバーである。
【0229】
界面活性剤分子が、正または負のいずれの電荷も有する能力がある場合、この界面活性剤分子は、両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、およびホスファチドが挙げられる。
【0230】
薬物製品、製剤、およびエマルションにおける界面活性剤の使用が概説されている(Rieger,in “Pharmaceutical Dosage Forms”,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0231】
ミセルおよび他の膜状製剤。説明を容易にするために、このセクションにおけるミセルおよび他の製剤、組成物、および方法は、主に無修飾siRNA化合物に関して説明する。しかしながら、これらのミセルおよび他の製剤、組成物、および方法は、他のsiRNA化合物、例えば、修飾siRNA化合物を用いて実施することができ、このような実施が、本発明の範囲内であることを理解できよう。siRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物、またはssiRNA化合物、(例えば、前駆体、例えば、ssiRNA化合物にプロセシングすることができるより大きなsiRNA化合物、またはsiRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物をコードするDNA、またはssiRNA化合物、またはそれらの前駆体)組成物は、ミセル製剤として提供することができる。「ミセル」は、本明細書では、特定の種類の分子集合体として定義され、この分子集合体では、両親媒性分子の全ての疎水性部分が内側を向き、親水性部分が周囲の水相に接触するように両親媒性分子が球体構造に構成されている。環境が疎水性である場合は、反対の構成で存在する。
【0232】
経皮膜を通る送達に適した混合ミセル製剤は、siRNA組成物の水溶液とアルカリ金属C~C22アルキル硫酸塩とミセル形成化合物との混合によって調製することができる。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびその薬学的に許容される塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩と同時または添加後に、添加することができる。混合ミセルは、実質的にあらゆる種類の成分の混合で形成されるが、より小さいサイズのミセルを提供するためには激しい混合が行われる。
【0233】
一方法では、siRNA組成物および少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩を含有する第1のミセル組成物が調製される。次いで、第1のミセル組成物が、少なくとも3種類のミセル形成化合物と混合されて混合ミセル組成物が形成される。別の方法では、ミセル組成物は、siRNA組成物とアルカリ金属アルキル硫酸塩と少なくとも1種類のミセル形成化合物と混合され、次いで、残りのミセル形成化合物を添加して激しく混合することによって調製される。
【0234】
フェノールおよび/またはm-クレゾールを混合ミセル組成物に添加して、製剤を安定させて、細菌の増殖から保護することができる。あるいは、フェノールおよび/またはm-クレゾールは、ミセル形成成分と共に添加しても良い。等張剤、例えば、グリセリンを、混合ミセル組成物の形成後に添加しても良い。
【0235】
ミセル製剤を噴霧として送達するために、製剤をエアロゾルディスペンサーに入れることができ、このディスペンサーに噴霧剤を充填する。加圧下の噴霧剤は、ディスペンサー内で液体の形態である。水相と噴霧剤相とが1つになる、即ち、1つの相のみが存在するように、成分比が調整される。2つの相が存在する場合、内容物の一部を、例えば、計量弁によってディスペンスする前にディスペンサーを振盪する必要がある。医薬品のディスペンス量が、計量弁から微細な霧状で噴霧される。
【0236】
噴霧剤としては、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルを挙げることができる。特定の実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2テトラフルオロエタン)を使用しても良い。
【0237】
必須成分の特定濃度を、比較的簡単な実験によって決定することができる。口腔からの吸収では、多くの場合、注射による投与または胃腸管を介した投与の投与量を、例えば、少なくとも2倍または3倍に増量するのが望ましい。
【0238】
粒子。説明を容易にするために、このセクションにおける粒子、製剤、組成物、および方法は、主に修飾siRNA化合物に関して説明する。しかしながら、これらの粒子、製剤、組成物、および方法は、他のsiRNA化合物、例えば、無修飾siRNA化合物を用いて実施することができ、このような実施が、本発明の範囲内であることを理解できよう。別の実施形態では、siRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物、またはssiRNA化合物、(例えば、前駆体、例えば、ssiRNA化合物にプロセシングすることができるより大きなsiRNA化合物、またはsiRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物をコードするDNA、またはssiRNA化合物、またはそれらの前駆体)調製物は、粒子、例えば、微粒子の中に含めることができる。微粒子は、噴霧乾燥によって製造することができるが、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技術の組み合わせを含む他の方法によって製造することもできる。
【0239】
医薬組成物
本発明のiRNA剤は、医薬用途用に製剤することができる。薬学的に許容される組成物は、単独で、あるいは1種以上の薬学的に許容される担体(添加剤)、賦形剤、および/または希釈剤と共に製剤される、前述の実施形態の何れかの1種以上のdsRNA剤を治療有効量、含む。
【0240】
医薬組成物は、以下のように適合された投与を含め、固体または液体の形態で投与されるように特別に製剤することができる:(1)例えば、水薬(水性もしくは非水性溶液、または懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下、および体内吸収用の錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌に適用するためのペーストの経口投与;(2)例えば、滅菌液もしくは懸濁液、または徐放製剤として、例えば、皮下注射、筋肉注射、静脈注射、もしくは硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、または放出制御パッチもしくはスプレーとしての局所適用;(4)例えば、ペッサリー、クリーム、フォームとして膣内または直腸内投与;(5)舌下投与;(6)眼内投与;(7)経皮的投与;あるいは(8)鼻内投与。皮下または点滴法を用いる送達は、特に有利であり得る。
【0241】
本明細書で使用される「治療有効量」という句は、あらゆる治療に適用可能な妥当な効果/リスク比で、動物の細胞の少なくとも亜集団においてある程度の望ましい治療効果を得るのに有効な、本発明の化合物を含む化合物、材料、または組成物の量のことである。
【0242】
「薬学的に許容される」という句は、本明細書では、妥当な効果/リスク比に見合った、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症が発生することなく、ヒトおよび動物の組織に接触させるのに適した、正当な医学的判断の範囲内である化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために利用される。
【0243】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という句は、目的の化合物をある器官または体の一部から別の器官または体の一部への運搬または輸送に関与する薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造補助剤(例えば、潤滑剤、タルク、マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、もしくはステアリン酸(steric acid))、もしくは材料を被包する溶媒を意味する。各担体は、製剤の他成分と適合性であって、患者に有害でないという点で「許容可能」ではなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の一部の例として:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)平滑剤、例えば、マグネシウムステート(magnesium state)、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬ワックス;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油;(10)グリコール、例えば、ポリエチレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天:(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物;(22)充填剤、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸;(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDL、およびLDL;(22)医薬製剤に利用される他の無毒適合物質が挙げられる。
【0244】
この製剤は、単位剤形で便利に提供することができ、薬学の分野で周知の任意の方法で調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療を受ける者および投与の特定の方式によって異なる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果が得られる化合物の量である。一般に、100%のうち、この量は、有効成分の約0.1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲である。
【0245】
特定の実施形態では、本発明の製剤としては、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、およびポリマー担体、例えば、ポリエステルおよびポリ無水物;および本発明の化合物からなる群から選択される賦形剤が挙げられる。特定の実施形態では、上述の製剤は、本発明の化合物を経口投与可能にする。
【0246】
iRNA剤調製物は、別の作用剤、例えば、別の治療剤、またはiRNAを安定させる作用剤、例えば、iRNAと複合体を形成してiRNPを形成するタンパク質と組み合わせて製剤することができる。なお他の作用剤としては、キレート剤、例えば、EDTA(例えば、二価のカチオン、例えば、Mg2+を除去するための)、塩、およびRNA分解酵素阻害剤(例えば、特異性の広いRNA分解酵素阻害剤、例えば、RNAsin)などが挙げられる。
【0247】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を担体、および任意選択で1種以上の補助成分と結合させるステップを含む。一般に、この組成物は、本発明の化合物を液体担体、細かく分割された固体担体、または両方を均一に密着させて結合させ、次いで、必要に応じて製品を成形することによって調製する。
【0248】
場合によっては、薬物の効果を持続させるために、皮下注射または筋肉注射による薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水に溶けにくい結晶または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度は、結晶のサイズおよび結晶の形態に依存し得る溶解速度によって決まる。あるいは、非経口投与される剤形(drug form)の遅延吸収は、油性ビヒクル中に薬剤を溶解または懸濁することによって達成される。
【0249】
本発明による化合物は、他の医薬品との類似性によって、ヒトまたは動物用の薬物に使用される任意の便利な方法で投与するために製剤することができる。
【0250】
「治療」という語は、予防、療法、および治癒も包含するものとする。この治療を受ける患者は、霊長類、特にヒト、および他の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ;ならびに一般的な家禽およびペットを含む、治療を必要とするあらゆる動物である。
【0251】
二本鎖RNAi剤は、例えば、細胞に送達される外来性DNA鋳型により、in vivoの細胞で産生される。例えば、DNA鋳型は、ベクターに挿入して、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)、または定位注入(例えば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054-3057を参照されたい)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容される希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含み得る、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放マトリックスを含み得る。例えば、DNA鋳型は、2つの転写単位を含み得、1つの転写単位は、dsRNA剤の上鎖を含む転写物を産生し、もう1つの転写単位は、dsRNA剤の下鎖を含む転写物を産生する。鋳型が転写されると、dsRNA剤が産生され、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA剤の断片にプロセシングされる。
【0252】
送達経路
iRNAを含む組成物は、様々な経路によって対象に送達することができる。例示的な経路としては:静脈、皮下、局所、直腸、肛門、膣、鼻、肺、眼が挙げられる。
【0253】
本発明のiRNA分子は、投与に適した医薬組成物に含めることができる。このような組成物は、典型的には、1種以上のiRNAおよび薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語は、医薬品投与に適合したあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性な物質用のこのような媒体および作用剤の使用は、当分野で周知である。あらゆる従来の媒体または作用剤が活性化合物と適合性でない場合を除き、その組成物中での使用が想定される。補助活性化合物を組成物に含めても良い。
【0254】
本発明の組成物は、局所治療または全身治療が望ましいか否か、および治療される領域に基づいて様々な方式で投与することができる。投与は、局所(眼、膣、直腸、鼻、経皮を含む)、経口、または非経口とすることができる。非経口投与としては、点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射、または気管支内もしくは脳室内投与が挙げられる。
【0255】
投与の経路および部位は、標的化を強めるために選択することができる。例えば、筋細胞を標的とするためには、目的の筋肉内への筋肉注射は、論理的な選択であろう。肺細胞は、iRNAを噴霧形態で投与することによって標的とすることができる。血管内皮細胞は、バルーンカテーテルをiRNAでコーティングして、DNAを機械的に導入することによって標的とすることができる。
【0256】
用量
一態様では、本発明は、dsRNA剤、例えば、siRNA剤を対象(例えば、ヒト対象)に投与する方法を取り上げる。この方法は、(a)二本鎖部分が、14~30のヌクレオチド長さ、例えば、21~23のヌクレオチド長さである、(b)標的RNA(例えば、外来性または病原体標的RNA)に対して相補的である、かつ、任意選択で、(c)1~5のヌクレオチド長さの少なくとも1つの3’オーバーハングを含む、dsRNA剤、例えば、siRNA剤、例えば、二本鎖siRNA剤の単位用量を投与するステップを含む。一実施形態では、単位用量は、体重1kg当たり10mg未満、または体重1kg当たり10mg未満、5mg未満、2mg未満、1mg未満、0.5mg未満、0.1mg未満、0.05mg未満、0.01mg未満、0.005mg未満、0.001mg未満、0.0005mg未満、0.0001mg未満、0.00005mg未満、または0.00001mg未満であり、かつ体重1kg当たり200nmol未満のRNA剤(例えば、約4.4×1016のコピー)、または体重1kg当たり1500nmol未満、750nmol未満、300nmol未満、150nmol未満、75nmol未満、15nmol未満、7.5nmol未満、1.5nmol未満、0.75nmol未満、0.15nmol未満、0.075nmol未満、0.015nmol未満、0.0075nmol未満、0.0015nmol未満、0.00075nmol未満、0.00015nmol未満のRNA剤である。
【0257】
規定量は、疾患または障害、例えば、標的RNAに関連した疾患または傷害を治療または予防するのに有効な量とすることができる。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内)、吸入投与、または局所適用によって投与することができる。一部の実施形態では、用量は、体重1kg当たり10mg未満、5mg未満、2mg未満、1mg未満、または0.1mg未満とすることができる。
【0258】
一部の実施形態では、単位用量は、1日に1回未満の頻度、例えば、2日に1回未満、4日に1回未満、8日に1回未満、または30日に1回未満投与される。別の実施形態では、単位用量は、一定の頻度では投与されない(例えば、定期的な頻度ではない)。例えば、単位用量は、1回で投与することができる。
【0259】
一実施形態では、有効量は、他の従来の治療様式で投与される。一実施形態では、対象は、ウイルス感染している患者であり、治療様式は、dsRNA剤以外、例えば、siRNA剤以外の抗ウイルス剤である。別の実施形態では、対象は、アテローム性動脈硬化症であり、有効量のdsRNA剤、例えば、siRNA剤が、例えば、外科介入後、例えば、血管形成術と組み合わせて投与される。
【0260】
一実施形態では、対象に、初回量および1回以上の維持量のdsRNA剤、例えば、siRNA剤、(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤にプロセシングすることができるより大きなdsRNA剤、またはdsRNA剤、例えば、siRNA剤をコードするDNA、またはその前駆体)が投与される。1または複数の維持量は、初回量と同じ、または初回量よりも少なくする、例えば、初回量の半分とすることができる。維持療法は、1日に付き体重1kg当たり0.01μg~15mgの範囲、例えば、1日に付き体重1kg当たり10mg、1mg、0.1mg、0.01mg、0.001mg、または0.00001mgの1または複数の用量を用いて対象を治療するステップを含み得る。維持量は、例えば、2日に1回以下、5日に1回以下、10日に1回以下、または30日に1回以下投与される。さらに、治療法は、一定期間継続することができ、この期間は、特定の疾患の性質、その重症度、および患者の全体的な状態によって異なり得る。特定の実施形態では、用量を、1日に1回以下、例えば、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上に1回、例えば、5日もしくは8日に1回投与することができる。治療後、患者の状態の変化および病態の症状の緩和について、患者を監視することができる。化合物の用量は、患者が現在の用量レベルに有意に応答しない場合は増量しても良いし、あるいは、疾患の状態の症状の緩和が観察された場合、疾患の状態が軽減された場合、または不所望の副作用が観察された場合は減量しても良い。
【0261】
有効量は、必要に応じて、または特定の状況下で適切と見なされる場合、単回または2回以上の投与で投与することができる。反復または頻繁な注入を容易にしたい場合は、送達装置、例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、嚢内、または関節内)、またはレザバーの植え込みを提案することができる。
【0262】
一実施形態では、組成物は、複数のdsRNA剤種を含む。別の実施形態では、dsRNA剤種は、天然の標的配列に関しては、別の種とオーバーラップも隣接もしていない配列を有する。別の実施形態では、複数のdsRNA剤種は、異なる天然の標的遺伝子に特異的である。別の実施形態では、dsRNA剤は、対立遺伝子特異的である。
【0263】
本明細書に記載される本発明のdsRNA剤は、哺乳動物、特に大きい動物、例えば、非ヒト霊長類またはヒトに様々な方法で投与することができる。
【0264】
一実施形態では、dsRNA剤、例えば、siRNA剤、組成物の投与は、非経口、例えば、静脈内(例えば、ボーラスとして、または拡散注入として)、皮内、腹腔内、筋肉内、くも膜下、脳室内、頭蓋内、皮下、経粘膜、頬側、舌下、内視鏡、直腸、経口、膣、局所、肺、鼻、尿道、または眼内である。投与は、対象によって、または別の人間、例えば、医療提供者によって行うことができる。薬物治療は、測定した用量で、または測定した用量を送達するディスペンサで行うことができる。選択される送達方式は、以下に詳細に説明される。
【0265】
本発明は、本明細書に記載されるdsRNA剤の直腸投与または送達のための方法、組成物、およびキットを提供する。
【0266】
標的遺伝子の発現を阻害する方法
本発明の実施形態は、標的遺伝子の発現を阻害する方法にも関する。この方法は、前述のいずれかの実施形態のdsRNA剤を、標的遺伝子の発現を阻害するのに有効な量、投与するステップを含む。
【0267】
別の態様では、本発明は、本発明のdsRNA剤を細胞に供給するステップを含む、前記細胞における標的遺伝子の発現を調節する方法に関する。一実施形態では、標的遺伝子は、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、ヘプシデン(hepciden)、活性化プロテインC、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、β-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子の突然変異、p21(WAF1/CIP1)遺伝子の突然変異、p27(KIP1)遺伝子の突然変異、PPM1D遺伝子の突然変異、RAS遺伝子の突然変異、カベオリンI遺伝子の突然変異、MIB I遺伝子の突然変異、MTAI遺伝子の突然変異、M68遺伝子の突然変異、腫瘍抑制遺伝子の突然変異、およびp53腫瘍抑制遺伝子の突然変異からなる群から選択される。
【0268】
本発明が、以下の実施例によってさらに例示されるが、これらの実施例は、さらなる限定と解釈されるべきものではない。本出願で言及される全ての参照文献、出願中の特許出願、および公開特許の開示内容は、参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
【実施例
【0269】
実施例1:siRNA二重鎖のin vitroでのスクリーニング
細胞の培養およびトランスフェクション:
ヒトHep3B細胞またはラットH.II.4.E細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%FBS、ストレプトマイシン、およびグルタミン(ATCC)が添加されたRPMI(ATCC)中、5%CO2の大気で、37℃でほぼコンフルエンスになるまで増殖させてから、トリプシン処理によりプレートから剥離させた。1ウェルに付き14.8μlのOpti-MEMと0.2μlのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen, Carlsbad CA.cat#13778-150)を、96ウェルプレートの5μlのsiRNA二重鎖が入っている各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートすることによってトランスフェクションを行った。約2×104 Hep3B細胞を含む、抗生物質無添加の80μlの完全増殖培地をsiRNA混合物に添加した。細胞を、24時間または120時間インキュベートしてから、RNAを精製した。単回投与実験を、10nMおよび0.1nMの最終二重鎖濃度で行い、用量反応実験を、10nMの最終二重鎖濃度の最大投与量で8倍、4倍の段階希釈を用いて行った。
【0270】
DYNABEADS mRNA単離キット(Invitrogen,part #:610-12)を用いた全RNAの単離
細胞を採取し、150μlの溶解/結合緩衝液中で溶解し、次いで、Eppendorf Thermomixerを用いて850rpmで5分間混合した(混合速度を全過程で同じとした)。10μlの磁気ビーズおよび80μlの溶解/結合緩衝液の混合物を丸底プレートに添加し、1分間混合した。磁気ビーズを、磁気スタンドを用いて捕捉し、ビーズをかく乱せずに上清を除去した。上清を除去した後、溶解した細胞を残りのビーズに添加し、5分間混合した。上清を除去した後、磁気ビーズを、150μlの洗浄緩衝液Aで2回洗浄し、1分間混合した。ビーズを再び捕捉し、上清を除去した。次いで、ビーズを150μlの洗浄緩衝液Bで洗浄し、ビーズを捕捉し、上清を除去した。次いで、ビーズを150μlの溶出緩衝液で洗浄し、捕捉し、上清を除去した。次に、ビーズを150μlの溶出緩衝液で洗浄し、捕捉し、上清を除去した。ビーズを2分間乾燥させた。乾燥後、50μlの溶出緩衝液を添加し、70℃で5分間混合した。ビーズを磁気上に5分間捕捉した。40μlの上清を取り出し、別の96ウェルプレートに添加した。
【0271】
ABI高性能cDNA逆転写キット(Applied Biosystems, Foster City, CA, Cat#4368813)を用いたcDNA合成:
1回の反応に付き、1μlの10×緩衝液、0.4μlの25×dTNP、1μlのランダムプライマー、0.5μlの逆転写酵素、0.5μlのRNA分解酵素阻害剤、および1.6μlのHOを含むマスターミックスを5μlの全RNAに添加した。cDNAを、Bio-Rad C-1000またはS-1000サーマルサイクラーを用いて、25℃で10分、37℃で120分、85℃で5秒、4℃に保持するステップによって作製した。
【0272】
リアルタイムPCR
2μlのcDNAを、384ウェルプレート((Roche cat#04887301001)の各ウェルの0.5μlのGAPDH TaqManプローブ(Applied Biosystems Cat#4326317E(ヒト) Cat#4308313(げっ歯類))、0.5μlのTTR TaqManプローブ(Applied Biosystems cat#HS00174914_m1(ヒト)cat#Rn00562124_m1(ラット))、および5μlのLightcycler 480プローブマスターミックス(Roche Cat#04887301001)を含むマスターミックスに添加した。リアルタイムPCRを、Roche LC 480 Real Time PCR装置(Roche)で行った。特段の記載がない限り、各二重鎖を、少なくとも2つの別個のトランスフェクションで試験し、各トランスフェクションを二連でアッセイした。
【0273】
相対的な倍数変化を計算するために、リアルタイムデータをΔΔCt法を用いて分析し、10nM AD-1955でトランスフェクトされた細胞または模擬トランスフェクト細胞を用いて行われたアッセイに対して正規化した。IC50を、XLFitを使用する4パラメーターフィットモデルを用いて計算し、同じ用量範囲もしくはそれ自体の最低用量に対して、AD-1955でトランスフェクトされた細胞または未処置細胞に対して正規化した。IC50を、個々のトランスフェクションおよび組み合わせに対して計算し、1つのIC50を両方のトランスフェクションからのデータに対してフィットさせた。
【0274】
本発明の様々なモチーフ修飾を有する例示的なsiRNA二重鎖の遺伝子サイレンシングの結果が、以下の表に示されている。
【0275】
実施例2.RNA合成および二重鎖アニーリング
1.オリゴヌクレオチド合成:
全てのオリゴヌクレオチドを、AKTAoligopilot合成機またはABI 394合成機で合成した。特段の記載がない限り、オリゴヌクレオチドの合成には、市販の制御された孔を有するガラス固体支持体(dT-CPG,500Å,Prime Synthesis)、および標準的な保護基を有するRNAホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル N6-ベンゾイル-2’-t-ブチルジメチルシリル-アデノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-t-ブチルジメチルシリル-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N2-イソブチリル(isobutryl)-2’-t-ブチルジメチルシリル-グアノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、および5’-O-ジメトキシトリチル-2’-t-ブチルジメチルシリル-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト(Pierce Nucleic Acids Technologies)を用いた。2’-F ホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-フルオロ-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホラミダイトおよび5’-O-ジメトキシトリチル-2’-フルオロ-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホラミダイトは(Promega)から購入した。全てのホスホラミダイトは、10% THF/ANC(v/v)中、0.2Mの濃度で使用したグアノシンを除いて、アセトニトリル(CHCN)中、0.2Mの濃度で使用した。16分のカップリング/リサイクリング時間を使用した。活性化物質は、5-エチルチオテトラゾール(0.75M、American International Chemicals)であり、PO酸化用にはヨウ素/水/ピリジンを使用し、PS酸化用には2,6-ルチジン/ACN(1:1 v/v)に溶解したPADS(2%)を使用した。
【0276】
リガンドコンジュゲート鎖を、対応するリガンドを含む固体支持体を用いて合成した。例えば、配列の3’末端の糖質部分/リガンド(例えば、GalNAc用)の導入は、対応する糖質固体支持体で合成を開始することによって達成した。同様に、3’末端のコレステロール部分を、コレステロール支持体で合成を開始することによって導入した。一般に、リガンド部分は、前述の実施例で説明されたものから選択されるテザーを介してトランス-4-ヒドロキシプロリノールに連結してヒドロキシプロリノール-リガンド部分を得た。次いで、ヒドロキシプロリノール-リガンド部分を、コハク酸リンカーを介して固体支持体に結合する、または標準的なホスフィチル化条件によってホスホラミダイトに変換して、所望の糖質コンジュゲート構成要素を得た。フルオロフォア標識siRNAを、Biosearch Technologiesから購入した対応するホスホラミダイトまたは固体支持体で合成した。オレイルリトコール酸(GalNAc)ポリマー支持体を、38.6μmol/グラムの添加(loading)で社内で作製した。マンノース(Man)ポリマー支持体も、42.0μmol/グラムの添加で社内で作製した。
【0277】
所望の位置、例えば、配列の5’末端での、選択されたリガンドのコンジュゲーションは、特段の記載がない限り、標準的なホスホラミダイト結合条件下で、対応するホスホラミダイトを成長中の鎖に結合させることによって達成した。固体結合オリゴヌクレオチドに対する、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール活性化物質の存在下での無水CHCN中の0.1Mのホスホラミダイト溶液の15分間の長時間の結合を行った。(1)に報告されているように標準的なヨウ素水を用いて、または10分の酸化待ち時間でコンジュゲートオリゴヌクレオチドをtert-ブチルヒドロペルオキシド/アセトニトリル/水(10:87:3)を用いる処理によって、ヌクレオチド間亜リン酸塩のリン酸塩への酸化を行った。ホスホロチオエートは、硫黄転移試薬、例えば、DDTT(AM Chemicals社から購入)、PADS、およびまたはBeaucage試薬を用いて、亜リン酸塩からホスホロチオエートへの酸化によって導入した。コレステロールホスホラミダイトは、社内で合成し、ジクロロメタン中、0.1Mの濃度で使用した。コレステロールホスホラミダイトの結合時間は16分とした。
【0278】
2.脱保護-I(ヌクレオ塩基脱保護)
合成の完了後、支持体を100mlガラスボトル(VWR)に移した。80mLのエタノールアンモニア[アンモニア:エタノール(3:1)]の混合物を用いて、55℃で6.5時間、塩基とリン酸基を脱保護すると同時にオリゴヌクレオチドを支持体から切断した。ボトルを氷上で短時間冷却し、次いで、エタノールアンモニア混合物を濾過して、新しい250mLのボトルに入れた。CPGを2×40mL部のエタノール/水(1:1 v/v)で洗浄した。次いで、混合物の容量をロトバップで約30mLにまで減らした。次いで、この混合物をドライアイス上で凍結させ、スピードバックにより真空下で乾燥させた。
【0279】
3.脱保護-II(2’TBDMS基の除去)
乾燥残渣を26mlのトリエチルアミン、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(TEA.3HF)、またはピリジン-HFとDMSO(3:4:6)に再懸濁し、60℃で90分間加熱して、2’位のtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基を除去した。次いで、反応を50mlの20mM酢酸ナトリウムでクエンチし、pHを6.5に調整し、精製までフリーザーで保存した。
【0280】
4.分析
オリゴヌクレオチドは、精製の前に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、緩衝液とカラムの選択は、配列およびまたはコンジュゲートしたリガンドの性質によって決まる。
【0281】
5.HPLCの精製
リガンドがコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドを、逆相分取HPLCによって精製した。非コンジュゲートオリゴヌクレオチドは、社内で充填されたTSKゲルカラム上のアニオン-交換HPLCによって精製した。緩衝液は、10%CHCN(緩衝液A)中の20mMのリン酸ナトリウム(pH8.5)および10%CHCN、1MのNaBr(緩衝液B)中の20mMのリン酸ナトリウム(pH8.5)とした。完全長オリゴヌクレオチドを含む分画をプールし、脱塩し、そして凍結乾燥させた。ODが約0.15の脱塩オリゴヌクレオチドを150μlになるまで水で希釈し、次いで、CGEおよびLC/MS分析用の特殊なバイアルにピペットで移した。最後に、化合物をLC-ESMSおよびCGEによって分析した。
【0282】
6.siRNAの調製
siRNAの調製のために、等モル量のセンス鎖およびアンチセンス鎖を、1×PBS中、95℃で5分間加熱し、ゆっくりと冷却して室温にした。二重鎖の完全性をHPLC分析によって確認した。
【0283】
【表1】
【0284】
【表2】
【0285】
【表3】
【0286】
【表4】
【0287】
【表5】
【0288】
【表6】
【0289】
【表7】
【0290】
【表8】
【0291】
【表9】
【0292】
【表10】
【0293】
【表11】
【0294】
【表12】
【0295】
【表13】
【0296】
【表14】
【0297】
【表15】
【0298】
【表16】
【0299】
実施例3:TTR siRNAに対する様々な化学修飾を用いたin vitroサイレンシング活性
各修飾siRNAのIC50は、Lipofectamine RNAiMAXを用いた標準的な逆トランスフェクションによってHep3B細胞で決定する。簡単に述べると、逆トランスフェクションは、96ウェルプレートの各ウェルの5μLのsiRNA二重鎖に5μLのOpti-MEMを、10μlのOpti-MEMと0.5μLのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA.cat#13778-150)と共に添加し、室温で15~20分間インキュベートすることによって行う。インキュベーション後、12,000~15,000のHep3B細胞を含む、抗生物質無添加の100μLの完全増殖培地を各ウェルに添加する。細胞を、5%CO2の大気、37℃で24時間インキュベートしてから溶解し、bDNA(Quantigene)によりApoBおよびGAPDH mRNAを分析する。10nM~0.6pMの範囲の7つの異なるsiRNA濃度を、IC50の決定のために評価し、ApoBトランスフェクト細胞のApoB/GAPDHを、10nMのLuc siRNAでトランスフェクトされた細胞に対して正規化する。
【0300】
【表17】
【0301】
【表18】
【0302】
【表19】
【0303】
【表20】
【0304】
【表21】
【0305】
【表22】
【0306】
【表23】
【0307】
【表24】
【0308】
実施例4:ANGPTL3 siRNAに対する様々な化学修飾を用いたin vitroサイレンシング活性
細胞培養およびトランスフェクション
Hep3B細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%FBS、ストレプトマイシン、およびグルタミン(ATCC)が添加されたRPMI(ATCC)中、5%COの大気で、37℃でほぼコンフルエンスになるまで増殖させてから、トリプシン処理によりプレートから剥離させた。1ウェルに付き14.8μlのOpti-MEMと0.2μlのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA.cat#13778-150)を、96ウェルプレートの5μlのsiRNA二重鎖が入っている各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートすることによってトランスフェクションを行った。約2×10のHep3B細胞を含む、抗生物質無添加の80μlの完全増殖培地をsiRNA混合物に添加した。細胞を、24時間または120時間インキュベートしてから、RNAを精製した。特段の記載がない限り、単回投与実験は、10nMおよび0.1nMの最終二重鎖濃度で行い、用量反応実験は、10nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、0.005nM、0.001nM、0.0005nM、0.0001nM、0.00005nM、および0.00001nMの最終二重鎖濃度で行った。
【0309】
ABI高性能cDNA逆転写キット(Applied Biosystems,Foster City,CA,Cat#4368813)を用いたcDNA合成
1回の反応に付き、2μlの10×緩衝液、0.8μlの25×dNTP、2μlのランダムプライマー、1μlの逆転写酵素、1μlのRNA分解酵素阻害剤、および3.2μlのHOを含むマスターミックスを10μlの全RNAに添加した。cDNAを、Bio-Rad C-1000またはS-1000サーマルサイクラー(Hercules,CA)を用いて次のステップ:25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5秒間、4℃に保持によって作製した。
【0310】
リアルタイムPCR
2μlのcDNAを、384ウェル50プレート(Roche cat#04887301001)の各ウェルのマスターミックス(0.5μlのGAPDH TaqManプローブ(Applied Biosystems Cat#4326317E)、0.5μlのANGPTL TaqManプローブ(Applied Biosystems cat#Hs00205581_m1)、および5μlのLightcycler 480プローブマスターミックス(Roche Cat#04887301001)を含む)に添加した。リアルタイムPCRを、ΔΔCt(RQ)アッセイを用いてABI 7900HT リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で行った。要約表に特段の記載がない限り、各二重鎖を2つの別個のトランスフェクションで試験し、各トランスフェクションを二連でアッセイした。
【0311】
相対的な倍数変化を計算するために、リアルタイムデータをΔΔCt法を用いて分析し、10nMのAD-1955でトランスフェクトされた細胞または模擬トランスフェクト細胞を用いて行われたアッセイに対して正規化した。IC50を、XLFitを使用する4パラメータフィットモデルを用いて計算し、同じ用量範囲もしくはそれ自体の最低用量に対してAD-1955でトランスフェクトされた細胞または未処置細胞に対して正規化した。負のコントロールとして使用されるAD-1955配列は、ルシフェラーゼを標的とし、以下の配列を有する:
センス鎖:cuuAcGcuGAGuAcuucGAdTsdT;
アンチセンス鎖:UCGAAGuACUcAGCGuAAGdTsdT。
【0312】
上記の様々な実施形態を組み合わせて別の実施形態を作成することができる。本明細書で言及される全ての米国特許、公開米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、参照によりそれらの全開示内容が本明細書に組み入れられるものとする。様々な特許、特許出願、および公開特許出願の概念を利用してなお別の実施形態を作成する必要がある場合は、実施形態の態様を変更することができる。
【0313】
上記の詳細な説明を鑑みて、これらおよび他の変更を実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される語は、以下の特許請求の範囲を本明細書および添付の特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定すると解釈されるべきものではなく、このような特許請求の範囲に付与される等価物の全範囲における全ての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【配列表】
0007518887000001.app